説明

プッシュラッチ装置

【課題】フック受け部材をケースから殆ど突出せずに良好な外観を確保することができ、プッシュ操作時の異音の発生を防止することができるプッシュラッチ装置を提供することを目的とする。
【解決手段】フック部材12の上面に係止凹部12aが形成され、フック受け部材7には係止凹部12aに嵌合して係止され係止爪部73が設けられる。フック受け部材7はプッシュラッチ本体1内で前後に移動可能に配設され、フック受け部材7の後方にスライド部材6が移動可能に配設される。フック部材12はスライド部材6に対し移動方向と直角方向に摺動可能に連結される。フック部材12の進入によりフック受け部材7が押し込まれて後方に移動したとき、フック受け部材7が係止爪部73をフック部材12の係止凹部12aに押し付けて係止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家具の扉などに使用されるプッシュラッチ装置に関し、特に本体ケースから正面に突出するフック受け部材の突出し長を少なくし、異音の発生を防止することができるプッシュラッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
家具などの扉を閉じた状態でロックし、ロック状態で扉を押すと、ロックが解除されて扉が開放するように動作するプッシュラッチが、従来、下記特許文献1などで知られている。この種のプッシュラッチは、通常、扉の自由端の内側にフック部が筐体側に向けて取り付けられ、本体ケースが筐体の開口面内側に、正面を向けて取り付けられ、本体ケースの前部には、恰も昆虫の鋏のような1対の保持アームが正面に大きく開くように突出している。
【0003】
このため、特に扉を開放した状態において、本体ケースから大きく突き出す1対の保持アームが非常に目立ち、本体ケースの見栄えが悪く、それに伴い、家具などの外観も悪化するという課題があった。
【特許文献1】特開平7−34746号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さらに、この種の従来のプッシュラッチは、本体ケース内にばね性金属線材からなるレバー部材が内蔵され、このレバー部材の先端がばね弾性をもってハート形の溝内を摺動して、扉の開放動作とロック動作が行なわれる。このため、扉のフック部をプッシュする毎に、溝内の保持位置にレバー部材の先端が嵌まり込むことにより、そのプッシュ操作のたびに、カチカチという異音が比較的大きく発生するという課題があった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、フック受け部材をケースから殆ど突出せずに良好な外観を確保することができるプッシュラッチ装置を提供することを目的とする。さらに、本発明は、プッシュ操作時の異音の発生を防止することができるプッシュラッチ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の発明に係るプッシュラッチ装置は、プッシュラッチ本体内にフック部材を進入させ、該プッシュラッチ本体内のフック受け部材を押し込むことにより、該フック部材を該フック受け部材に係止させてロックし、当該ロック状態での該フック部材の再押し込みにより、該フック部材のロックを解除するプッシュラッチ装置において、該フック部材の一部に係止凹部が形成される一方、該フック受け部材には該係止凹部に嵌合して係止され係止爪部が設けられ、該フック受け部材はプッシュラッチ本体内で前後に移動可能に配設されると共に、該プッシュラッチ本体内の該フック受け部材の後方にスライド部材が移動可能に配設され、該フック部材は該スライド部材に対し該移動方向と直角方向に摺動可能に連結され、ばね部材により該スライド部材が前方に付勢され、該フック部材の進入により該フック受け部材が押し込まれて後方に移動したとき、該フック受け部材が該係止爪部を該フック部材の係止凹部に押し付ける方向に移動することを特徴とする。
【0007】
ここで、上記のプッシュラッチ装置では、上記プッシュラッチ本体内の両側にガイド溝を形成し、上記フック受け部材の両側に該ガイド溝に係合可能なガイドピンを突設し、該フック受け部材が押し込まれて後方に移動したとき、該フック受け部材が該係止爪部を該フック部材の係止凹部に押し付ける方向に移動するように、該ガイド溝を曲げて形成することができる。
【0008】
また、第2発明のプッシュラッチ装置は、プッシュラッチ本体内にフック部材を進入させ、該プッシュラッチ本体内のフック受け部材を押し込むことにより、該フック部材を該フック受け部材に係止させてロックし、当該ロック状態での該フック部材の再押し込みにより、該フック部材のロックを解除するプッシュラッチ装置において、該プッシュラッチ本体内の該フック受け部材の後方にスライド部材が移動可能に配設され、該フック部材の該プッシュラッチ本体内への押し込み時に、該フック部材が該フック受け部材に係止されたとき、該スライド部材をロックし、当該ロック状態での該フック部材の再押し込みにより、該スライド部材のロックを解除するロック機構が設けられ、該ロック機構は、該プッシュラッチ本体内またはその蓋体の内側に合成樹脂製の円板係合部材が回転可能に軸支され、該円板係合部材には該円板係合部材の軸から偏倚した位置に係合ピンが突設され、該係合ピンが係合する環状ガイド溝が上記スライド部材の一部に形成され、該環状ガイド溝には該スライド部材をロックしたときに係合ピンが保持されるロック保持部が設けられ、且つ該スライド部材のロックを開放して該スライド部材が前進したときに該係合ピンが保持される開放保持部が設けられたことを特徴とする。
【0009】
ここで、上記プッシュラッチ装置においては、上記プッシュラッチ本体内またはプッシュラッチ本体の蓋体の内側に、上記円板係合部材が挿入可能な円形凹部を形成すると共に軸孔を形成し、円板係合部材の軸を該軸孔に挿入すると共に、該円形凹部内に円板係合部材を回転可能に挿入するように構成することができる。
【発明の効果】
【0010】
本願の第1発明のプッシュラッチ装置によれば、フック部材の進入によりフック受け部材が押し込まれて後方に移動したとき、フック受け部材がその係止爪部をフック部材の係止凹部に押し付ける方向に移動し、フック部材がフック受け部材に係止されてロックされるから、従来の装置のように、1対の保持アームを本体の正面に開くように突出させておく必要が無く、プッシュラッチ本体内にフック受け部材を待機させた状態で、フック部材を本体内に進入させてロックさせることができ、フック受け部材をケースから殆ど突出せずにプッシュラッチ装置の見栄えを良くし、家具などの外観も良好に保持することができる。
【0011】
また、第2発明のプッシュラッチ装置によれば、ロックする際のプッシュ操作時、合成樹脂製の円板係合部材の係合ピンがスライド部材の環状ガイド溝のロック保持部に保持されてスライド部材及びフック受け部材がロックされ、ロック解除する際のプッシュ操作時においても、当該円板係合部材の係合ピンがスライド部材の環状ガイド溝の開放保持部に保持されてフック受け部材が開放されるから、ばね性金属線材からなるレバー部材の先端を、ばね弾性をもってハート形の溝内に係合させた従来のプッシュラッチ装置と比べ、プッシュ操作時のカチカチという異音を殆どなくすことができ、静かに違和感なく快適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1はプッシュラッチ装置の斜視図を示し、図2はそのプッシュラッチ本体1の分解側面図を示し、図3はその分解平面図を示している。プッシュラッチ本体1の本体ケース2は、略直方体形状の箱型に形成され、その正面には矩形の正面開口部22が形成され、さらに、その底面に底面開口部が形成される。正面開口部22には扉側のフック部材12がラッチ可能に進入し、底面開口部は、各部材をケース内に組み付けた状態で、蓋体5によって閉鎖される。
【0013】
なお、本体ケース2は、その取付面が底面となり、家具などの被取付面(キャビネットなどの上面、下面、側面などの各種の面)に、各種の姿勢で取り付けられるが、上下関係については便宜上、プッシュラッチ装置の底部を下に、本体ケース2の反底面側を上にして説明する。
【0014】
本体ケース2の両側部には、取付孔(長孔)を設けた取付部21が両側に突き出すように突設され、取付ねじをこの取付孔に挿通し、被取付面にねじ込んで本体ケース2を固定する。取付部21には側壁に添ってリブ23が立設され、取付部21を補強している。本体ケース2の内部には、末端の壁部に、ばね部材(圧縮コイルばね)9の端部を保持するためのばね保持部が設けられ、ケース内側壁には1対の板状のガイド溝部材3,4を組み付けるために、組み付け凹部が形成されている。
【0015】
1対のガイド溝部材3,4は、図5に示すように、長方形の板状部材に形成され、各々の部材の一面には、2本のガイド溝31,32、ガイド溝41,42が各々並行に形成されている。これらのガイド溝31,32,41,42は、正面開口部22に近い前部から水平に奥に向かって延設されており、中間部付近から底部側に徐々に曲げられ、ガイド溝31,32,41,42の後部奥側の末端部は、前面側より一段下側(底部側)に位置するように形成されている。ガイド溝部材3,4は、本体ケース2内の両側壁部に取着され、両側壁部にガイド溝31,32,41,42を各々向かい合わせるように組み付けられる。これらのガイド溝31,32,41,42には、後述のフック受け部材7の両側部に突設される2対のガイドピン71,72が、摺動可能に嵌め込まれる。
【0016】
フック受け部材7は、ガイド溝31,32,41,42にガイドされながら本体ケース2内を前後に摺動し、前方正面側に移動したとき、扉側のフック部材12の係止を解除し、後部奥側に移動したとき、フック受け部材7に扉側のフック部材12が保持係止されるように構成される。フック受け部材7の係止爪部73は、その下側部分をフック部材12の係止凹部12aに係止させるように、下側に突起が突設されている。
【0017】
このため、本体ケース2内の両側壁に装着されるガイド溝部材3,4の2対のガイド溝31,32,41,42には、その正面側に位置する前部近傍に、フック受け部材7を反底部側に移動させるための、係止解除用溝部が、反底部側つまり上面側に位置して形成される。一方、その後部奥側に位置する奥部近傍には、フック受け部材7を底部側に移動させるように、係止用溝部が底部側に位置して形成される。
【0018】
本体ケース2内には、スライド部材6とフック受け部材7が、スライド部材6を奥に、フック受け部材7を前部に連結した状態で、共に前後方向に摺動可能に収容される。スライド部材6は、図8に示すように、本体ケース2内に収容され、前後方向につまり図12の左右方向に摺動可能に、略直方体形状に形成され、その底面には、略ハート状の環状ガイド溝61が形成され、その後面から内部にかけて、ばね部材9を収容するためのばね収容部62が形成される。また、スライド部材6の前部(正面側)には、フック受け部材7と係合連結するためのアリ溝63が形成されている。このアリ溝63には後述のフック受け部材7の嵌合部74が上下方向に、つまりフック受け部材7の前後移動方向と直角方向に摺動可能に嵌合され連結される。
【0019】
略ハート形の環状ガイド溝61には、図14のように、円板係合部材8の係合ピン81が係合する。そして、フック受け部材7が扉側のフック部材12によって後方に押し込まれたとき、スライド部材6が奥に摺動してフック受け部材7をフック係止位置で停止させるように、係合ピン81を環状ガイド溝61が保持し、次に押し込まれたときには、その保持状態を解除して、フック解除位置までスライド部材6とフック受け部材7を摺動可能とするように構成される。
【0020】
このために、ハート状の環状ガイド溝61には、図14に示すように、係合ピン81を開放位置に保持する開放保持部61aとロック位置に保持するロック保持部61bが設けられる。環状ガイド溝61の開放保持部61aは、フック受け部材7が最前部に押し出された開放位置で係合ピン81を保持してスライド部材6を停止させるように形成される。また、ロック保持部61bは、フック受け部材7が本体ケース2内の奥に押し込まれてフック部材12がロックされたとき、スライド部材6をそのロック位置で保持するように、環状ガイド溝61に形成されている。
【0021】
また、スライド部材6の前部には、扉側のフック部材12を受けて係止させるフック受け部材7が連結される。フック受け部材7は、図12に示すように、本体ケース2内に収容されて前後方向に摺動可能に形成され、その前部には係止爪部73が前方に向けて形成され、扉側のフック部材12が押し込まれたとき、係止爪部73がそのフック部材12を受けて係止する構造である。
【0022】
フック部材12には、図1に示すように、その先端部近傍の上面に係止凹部12aが形成され、その係止凹部12aに係止爪部73が嵌合して係止される。つまり、係止爪部73はその下側にフック部材12を係止させるように、下側に係止用の膨出部を設けて形成される。そして、本体ケース2内の前部の開口部に近い位置で、フック部材12を受け入れ、フック受け部材7が後方に移動しながら下降したとき、フック部材12がフック受け部材7の係止爪部73に係止される構造となっている。フック受け部材7の両側に、2対のガイドピン71,72が突設され、これらを本体ケース2の両側壁部に位置するガイド溝31,32,41,42内に摺動自在に嵌入し、これらのガイド溝とガイドピンによってフック受け部材7のフック受け動作が付与される。
【0023】
このために、フック受け部材7の後部にアリほぞ形の嵌合部74が形成され、この嵌合部74は、上記スライド部材6のアリ溝63に対し、上下に摺動可能に連結される。つまり、この嵌合部74はアリ溝63に緩く嵌合し、フック受け部材7とスライド部材6が前後に移動する間、フック受け部材7は、ガイドピン71,72とガイド溝31,32,41,42の作用により、上下に摺動する構造となっている。これにより、フック受け部材7とスライド部材6が前部に位置するとき、フック受け部材7は、本体ケース2内の上方に位置し、後部に押し込まれたときにケース内を下降して、扉側のフック部材12に当接嵌合し、これを係止することができる。
【0024】
上記フック受け部材7とスライド部材6を本体ケース2内に組み付ける場合、図2,3に示すように、先ず、フック受け部材7とスライド部材6をそのアリ溝63に嵌合部74を上又は下から嵌め込み、ばね部材9をスライド部材6のばね収容部62内に装着した状態で、スライド部材6とフック受け部材7を本体ケース2内にその正面開口部22から挿入する。このとき、ばね部材9の末端部は本体ケース2内の後部中央の保持部に嵌めこみ、フック受け部材7の両側に突出した2対のガイドピン71,72を、本体ケース2内の両側壁部のガイド溝31,32,41,42に嵌入させる。
【0025】
そして、本体ケース2の底部の開口部に、円板係合部材8を取り付けた蓋体5を被せるように嵌着する。このとき、円板係合部材8の係合ピン81はスライド部材6の底面の環状ガイド溝61に嵌め込むように、蓋体5は装着される。蓋体5は、図6に示すように、略長方形の板状に形成され、その後部側の上面に円形凹部51が形成され、その円形凹部51内に円板係合部材8が回動自在に嵌め込まれる。このとき、円板係合部材8の下面に突設された軸82は、円形凹部51の中央に設けた軸孔に嵌入される。
【0026】
また、蓋体5の前部の上面には、押し上げ部52が上方に円弧状に突き出して形成される。蓋体5は、本体ケース2の底部の開口部を閉じるように嵌着されるが、このとき、円弧状に上方に突出した押し上げ部52は、図12に示すように、フック受け部材7の真下に位置する。これにより、扉側のフック部材12が正面開口部22からフック受け部材7の下側に進入したとき、フック部材12はこの押し上げ部52により上方に押し上げられ、フック受け部材7の係止爪部73とフック部材12との係止を確実に保持することができる。
【0027】
一方、扉側に取り付けられるフック部10は、図10に示すように、フック取付部11に、フック部材12を僅かな調整範囲ではあるが、上下動可能に取り付けられる。フック取付部11は板状に形成されると共に、中央に矩形の開口部14が形成され、その開口部14にフック部材12のフランジ15が上下動可能に嵌合される。
【0028】
フック取付部11の中央開口部の両側には、取付ねじを挿入するための取付孔13が長孔として形成される。フック部材12は、先端の上面に係止凹部12aを上向きに設けて形成され、その元部には溝16を介して矩形板状のフランジ15が設けられている。
【0029】
一方、フック取付部11の開口部14にはその内側に沿って、厚さの薄い縁部が形成され、フック部材12の元部の溝16にその開口部14の縁部を嵌合させ、これによって、フック部材12をフック取付部11に対し上下に僅かな範囲で移動可能としている。また、フック部材12のフランジ15は、装着時にフック取付部11の開口部14内に入り、フランジ15の背面はフック取付部11の取付面と略一致するように形成されている。これにより、フック部10を扉の内側に取り付ける際、その仮止め時に、フック部材12の上下位置を最良な状態に調整可能となっている。また、上記のように構成されたプッシュラッチ本体1及びフック部10の各部材は、ばね部材9を除き、例えばポリアセタール樹脂などの合成樹脂により、型成形されて製造される。
【0030】
次に、上記構成のプッシュラッチ装置の動作を説明する。上記構成のプッシュラッチ本体1は、図12に示すように、例えば家具のキャビネットなどの底板、上板、側板などの被取付面90に固定され、フック部10はキャビネット用扉の内側の被取付面91に固定されて使用される。プッシュラッチ本体1は被取付面90の正面前部位置に、その正面開口部22が位置するように、本体ケース2の両側の取付部21に取付ねじを挿入し、被取付面90にねじ込み固定される。
【0031】
一方、フック部10を、対応する扉などの被取付面91に取り付ける場合、取付ねじを取付孔13に挿入してフック取付部11とフック部材12を固定するが、先ず取付ねじを緩く仮止めし、フック部材12が若干上下に移動可能としておく。この状態で、プッシュラッチ本体1内にフック部材12を進入させてロックとロック解除が実際に可能なように、フック部材12の上下位置を調整した後、取付ねじを完全に締め付けてフック部10を完全に固定する。これにより、プッシュラッチ本体1の正面開口部22の挿入高さ位置とフック部10のフック部材12の高さ位置が正確に合わせた状態で各部材が取着される。
【0032】
図1、図12に示すように、被取付面90に取り付けられたプッシュラッチ本体1は、その前部が正面側に向いて取り付けられるが、その正面開口部22から正面側には、フック受け部材7の係止爪部73が僅かに覗くのみで、従来のプッシュラッチ装置のように大形の鋏状の保持アームが露出することはい。このため、プッシュラッチ本体1の外観が目立つことはなく、見栄えが悪くなることもない。
【0033】
扉をキャビネットなどに対し閉じると、図12、図13に示すように、その被取付面91に固定されたフック部10のフック部材12が、プッシュラッチ本体1の正面開口部22に進入する。このとき、プッシュラッチ本体1では、フック受け部材7が本体ケース2内の最上部に位置し、その下側に空間が形成される。フック部材12はフック受け部材7の係止爪部73の下側の空間に進入し、フック受け部材7に当接してこれを奥(後方)に押し込む。
【0034】
このとき、フック受け部材7は、その両側のガイドピン71,72とガイド溝31,32,41,42の作用により、後方に移動しながら本体ケース2内を下降し、これにより、図12の中図に示すように、フック受け部材7の係止爪部73の位置が下降する。また、同時に、フック部材12が本体ケース2内を進入する間、蓋体5の押し上げ部52により上方に押し上げられ、これによって、フック部材12と係止爪部73が係止され、ロックされる。
【0035】
このとき、スライド部材6はフック受け部材7と共に後方に移動し、この際、図14aから図14bに示すように環状ガイド溝61が係合ピン81に対して移動し、扉を閉じる際のプッシュ操作力を解除したとき、係合ピン81は環状ガイド溝61のロック保持部61bに保持された状態となる。また上記のように、フック部材12は図12の如く下から押し上げ部52によって押し上げられるから、フック受け部材7に対し確実に係止され、ロック状態が保持される。
【0036】
このように、フック部材12と係止爪部73が係止されてロックされるとき、合成樹脂製の円板係合部材8が僅かに回動してその係合ピン81が環状ガイド溝61のロック保持部61bに入るのみであるため、ロック動作はスムーズに行なわれ、しかも、従来のようなカチカチという異音は発生せず、静かにロック状態となる。
【0037】
一方、上記の如く扉がロックされた状態で、ロックを外す場合、図12,13の下図のように扉をプッシュする。このとき、フック部材12、フック受け部材7を介してスライド部材6が僅かに後方に移動し、これにより、環状ガイド溝61が図14bから図14cに示すように、係合ピン81に対して移動し、係合ピン81がロック保持部61bから脱出する。次にプッシュした扉からプッシュ操作力を解除したとき、ばね部材9のばね力によりスライド部材6がフック受け部材7と共に前方に移動し、このとき、係合ピン81は環状ガイド溝61を通り、図14aの開放保持部61aに入り、図12の上図の状態となる。
【0038】
つまり、フック受け部材7は、ガイドピン71,72とガイド溝31,32,41,42の作用により、前方に移動しながら本体ケース2内を上昇し、これにより、図12の上図に示すように、フック部材12と係止爪部73の係合が外れ、フック部材12が前方に押し出され、扉が開放される。この際も、合成樹脂製の円板係合部材8が僅かに回動して、その係合ピン81が環状ガイド溝61を通り、図14aの開放保持部61aに入るのみであるため、ロックの解除はスムーズに行なわれ、しかも、従来のようなカチカチといった異音は発生せず、静かにロックが解除される。
【0039】
このように、上記構成のプッシュラッチ装置によれば、従来のプッシュラッチ装置のように、1対の保持アームを本体の正面に開くように突出させておく必要が無く、プッシュラッチ本体1内にフック受け部材7を待機させた状態で、フック部材12を本体内に進入させてロックさせることができ、フック受け部材7を本体ケース2から殆ど突出せずにプッシュラッチ装置の見栄えを良くし、家具などの外観も良好に保持することができる。
【0040】
また、ロックする際のプッシュ操作時、合成樹脂製の円板係合部材8の係合ピン81がスライド部材6の環状ガイド溝61のロック保持部61bに保持されてスライド部材6及びフック受け部材7がロックされ、ロック解除する際のプッシュ操作時においても、円板係合部材8の係合ピン81がスライド部材6の環状ガイド溝61の開放保持部61aに保持されてフック受け部材7が開放されるから、ばね性金属線材からなるレバー部材の先端を、ばね弾性をもってハート形の溝内に係合させた従来のプッシュラッチ装置と比べ、プッシュ操作時のカチカチという異音を殆どなくすことができ、静かに違和感なく快適に使用することができる。
【0041】
なお、上記実施形態では、フック部材12の先端部近傍の上面に係止凹部12aを設け、フック受け部材7にはその係止爪部73を下向きに形成し、その下側の空間にフック部材12を進入させてそれを係止しロックしたが、フック部材を進入させてロックする空間は、フック受け部材の上側、左側、或いは右側に設けることもでき、その場合、係止爪部はその対応した側に形成し、フック部材の係止凹部はフック受け部材の側に設けるようにすればよい。
【0042】
また、上記実施形態では、本体ケース2内に別部材としてのガイド溝部材3,4を組み付けたが、本体ケースの内壁に、ガイド溝を形成することもできる。また、上記実施形態では、本体ケース2の蓋体5の内側に、押し上げ部52と円板係合部材8用の円形凹部を設けたが、これらは本体ケースの内側に設けることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態を示すプッシュラッチ装置の斜視図である。
【図2】同プッシュラッチ装置の分解側面図である。
【図3】同プッシュラッチ装置の分解平面図である。
【図4】プッシュラッチ本体の本体ケースの平面図(a)と右側面図(b)である。
【図5】ガイド溝部材3の平面図(a)と右側面図(b)及びガイド溝部材4の平面図(c)と右側面図(d)である。
【図6】蓋体の平面図(a)と右側面図(b)と正面図(c)である。
【図7】円板係合部材の平面図(a)と右側面図(b)である。
【図8】スライド部材の平面図(a)と右側面図(b)と底面図(c)である。
【図9】フック受け部材の平面図(a)と右側面図(b)と正面図(c)である。
【図10】フック部の正面図(a)とフック部の分解左側面図(b)と分解平面図(c)である。
【図11】フック部10の使用時の断面図である。
【図12】プッシュラッチ装置の使用状態を示す縦断面説明図である。
【図13】プッシュラッチ装置の使用状態を示す水平断面説明図である。
【図14】環状ガイド溝61と係合ピン81との係合状態を示す動作説明図である。
【符号の説明】
【0044】
1 プッシュラッチ本体
2 本体ケース
3 ガイド溝部材
4 ガイド溝部材
5 蓋体
6 スライド部材
7 フック受け部材
8 円板係合部材
10 フック部
12 フック部材
21 取付部
22 正面開口部
31 ガイド溝
41 ガイド溝
51 円形凹部
61 環状ガイド溝
61a 開放保持部
61b ロック保持部
71 ガイドピン
73 係止爪部
74 嵌合部
81 係合ピン
82 軸



【特許請求の範囲】
【請求項1】
プッシュラッチ本体内にフック部材を進入させ、該プッシュラッチ本体内のフック受け部材を押し込むことにより、該フック部材を該フック受け部材に係止させてロックし、当該ロック状態での該フック部材の再押し込みにより、該フック部材のロックを解除するプッシュラッチ装置において、
該フック部材の一部に係止凹部が形成される一方、該フック受け部材には該係止凹部に嵌合して係止され係止爪部が設けられ、該フック受け部材はプッシュラッチ本体内で前後に移動可能に配設されると共に、該プッシュラッチ本体内の該フック受け部材の後方にスライド部材が移動可能に配設され、該フック部材は該スライド部材に対し該移動方向と直角方向に摺動可能に連結され、ばね部材により該スライド部材が前方に付勢され、該フック部材の進入により該フック受け部材が押し込まれて後方に移動したとき、該フック受け部材が該係止爪部を該フック部材の係止凹部に押し付ける方向に移動することを特徴とするプッシュラッチ装置。
【請求項2】
前記プッシュラッチ本体内の両側にガイド溝が形成され、前記フック受け部材の両側に該ガイド溝に係合可能なガイドピンが突設され、該フック受け部材が押し込まれて後方に移動したとき、該フック受け部材が該係止爪部を該フック部材の係止凹部に押し付ける方向に移動するように該ガイド溝が曲げられて形成されたことを特徴とする請求項1記載のプッシュラッチ装置。
【請求項3】
プッシュラッチ本体内にフック部材を進入させ、該プッシュラッチ本体内のフック受け部材を押し込むことにより、該フック部材を該フック受け部材に係止させてロックし、当該ロック状態での該フック部材の再押し込みにより、該フック部材のロックを解除するプッシュラッチ装置において、
該プッシュラッチ本体内の該フック受け部材の後方にスライド部材が移動可能に配設され、該フック部材の該プッシュラッチ本体内への押し込み時に、該フック部材が該フック受け部材に係止されたとき、該スライド部材をロックし、当該ロック状態での該フック部材の再押し込みにより、該スライド部材のロックを解除するロック機構が設けられ、該ロック機構は、該プッシュラッチ本体内または該プッシュラッチ本体の蓋体の内側に合成樹脂製の円板係合部材が回転可能に軸支され、該円板係合部材には該円板係合部材の軸から偏倚した位置に係合ピンが突設され、該係合ピンが係合する環状ガイド溝が上記スライド部材の一部に形成され、該環状ガイド溝には該スライド部材をロックしたときに係合ピンが保持されるロック保持部が設けられ、且つ該スライド部材のロックを開放して該スライド部材が前進したときに該係合ピンが保持される開放保持部が該環状ガイド溝に設けられたことを特徴とするプッシュラッチ装置。
【請求項4】
前記プッシュラッチ本体内またはプッシュラッチ本体の蓋体の内側に前記円板係合部材が挿入可能な円形凹部が形成されると共に軸孔が形成され、前記円板係合部材がその軸を該軸孔に挿入すると共に、該円形凹部内に回転可能に挿入されたことを特徴とする請求項3記載のプッシュラッチ装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−261131(P2008−261131A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−104077(P2007−104077)
【出願日】平成19年4月11日(2007.4.11)
【出願人】(592245890)井上金物株式会社 (7)
【Fターム(参考)】