説明

プライマー組成物

【課題】鉄、銅等の金属、またはこれらにメッキしたメッキ鋼板、特に亜鉛メッキ鋼板に対する付着性に優れ、かつ、ポリアミド(ナイロン)樹脂を上塗り被膜とする場合の上塗り被膜との付着性にも優れ、特に、ガソホール性に優れたプライマー塗膜を形成できるプライマー組成物を提供する。
【解決手段】
(A)ポリイミド樹脂および/またはポリエステルイミド樹脂、(B)ナイロン樹脂ビーズ、(C)エポキシ樹脂及び(D)硬化剤を含有し、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の樹脂固形分の総質量に対して、(A)成分の含有比率が10〜30質量%、(B)成分の含有比率が79〜20質量%、(C)成分の含有比率が10〜30質量%、(D)成分の含有比率が1〜20質量%であることを特徴とするプライマー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
鉄、銅等の金属、またはこれらにメッキしたメッキ鋼板、特に亜鉛メッキ鋼板に対する付着性に優れ、かつ、ポリアミド(ナイロン)樹脂を上塗り被膜とする場合の上塗り被膜との付着性にも優れ、ガソリン等の耐溶剤性にも優れたプライマー塗膜を形成できるプライマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のブレーキ系統、燃料系統または油圧系統の配管として、外側のプラスチックジャケット層が、内側の金属管の外周面上のクロメート層の上に押出された熱可塑性材料、特にポリアミド樹脂からなる層であることを特徴とする配管が知られている(例えば特許文献1参照)。しかしながら、この配管では、ガソホール(低濃度エタノール混合ガソリン;米国、ブラジルで、オクタン価及び二酸化窒素排出量低減等を目的に開発され実用化されている燃料をいう。)の浸漬後の付着性が不十分という欠点があった。
【0003】
金属管の表面処理方法として、金属管の外周面上に形成した亜鉛または亜鉛・ニッケル鍍金層と、該鍍金層上に形成した三価クロム化合物およびリン酸化合物を主成分とする化成処理層と、該化成処理層上に形成した縮合リン酸塩およびケイ酸マグネシウム系化合物を主成分とする防錆顔料を添加したエポキシ系樹脂塗料からなるエポキシ系樹脂中間層と、前記エポキシ系樹脂中間層上に形成された樹脂層(ポリフッ化ビニル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂又はポリアミド樹脂からなる層)とを形成する金属管の表面処理方法が知られている(例えば特許文献2参照)。しかしながら、この方法では、処理及び塗装に六価クロムは含まないものの、三価クロムを含んでおり、市場が要求する完全なクロムフリーではないという欠点と、ガソホールの浸漬後の付着性が不十分という欠点があった。
【0004】
また、自動車に使用する液体、特に燃料および圧液のための、金属製の内管と、内管の外面に形成されたアルミコートと、アルミコートに連結されたポリアミド層とから成る導管に関するものとして、アルミコートとポリアミド樹脂層との間に、クロムを含有しない表面処理層および/あるいは、市販のポリアミドプライマーを用いたプライマーコートを間挿する方法が知られている(例えば特許文献3参照)。しかしながら、耐ガソホール性(ガソホール浸漬後の塗膜付着性試験)が不十分であるという欠点があった。
【0005】
また、ポリアミドイミド樹脂にエポキシ樹脂を加えることにより、低温硬化性と高付着性を得られることが知られている(例えば、特許文献4参照)。しかしながら、塗膜が脆く折り曲げ加工性が不十分であるという欠点があった。
【0006】
また、金属物体被塗装面に、エポキシ樹脂とアミノ樹脂及び/又はフェノール樹脂とを含むバインダー成分(A);ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂を含むバインダー成分(B)及びα−オレフィン・α,β−エチレン性不飽和カルボン酸共重合体樹脂を含むバインダー成分(C)よりなる群から選ばれる少なくとも1種のバインダー成分に、無機防錆剤を配合してなるプライマー組成物を塗布し、得られたプライマー塗膜層を介して熱可塑性樹脂系塗料(フッ化ビニル樹脂系塗料、フッ化ビニリデン樹脂系塗料、ポリアミド樹脂系塗料のいずれか)を被覆し、熱可塑性樹脂被膜を形成することを特徴とする金属物体被覆方法が知られている(例えば特許文献5参照)。しかしながら、この方法では、ポリアミド樹脂系塗料を被覆した複層塗膜の耐ガソホール性が不十分という欠点があった。
【0007】
【特許文献1】特表平9−509723号公報
【特許文献2】特開2003−194288号公報
【特許文献3】特開2003−343767号公報
【特許文献4】特開平9−302226号公報
【特許文献5】再公表WO2003−033173号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、鉄、銅等の金属、またはこれらにメッキしたメッキ鋼板、特に亜鉛メッキ鋼板に対する付着性に優れ、かつ、ポリアミド(ナイロン)樹脂を上塗り被膜とする場合の上塗り被膜との付着性にも優れ、特に、ガソホール性に優れたプライマー塗膜を形成できるプライマー組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、ポリイミド樹脂および/またはポリエステルイミド樹脂、ナイロン樹脂ビーズ、エポキシ樹脂及び硬化剤を特定割合で含有するプライマー組成物によって、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに到った。
すなわち、本発明は、(A)ポリイミド樹脂および/またはポリエステルイミド樹脂、(B)ナイロン樹脂ビーズ、(C)エポキシ樹脂及び(D)硬化剤を含有し、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の樹脂固形分の総質量に対して、(A)成分の含有比率が10〜30質量%、(B)成分の含有比率が79〜20質量%、(C)成分の含有比率が10〜30質量%、(D)成分の含有比率が1〜20質量%であることを特徴とするプライマー組成物を提供するものである。
また、本発明は、上記プライマー組成物において、(E)成分が、フェノール樹脂及び/又はアミノ樹脂であるプライマー組成物を提供するものである。
また、本発明は、上記プライマー組成物において、プライマー組成物が、ポリアミド樹脂被膜の下塗り塗料として用いられるプライマー組成物であるプライマー組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のプライマー組成物は、鉄、銅等の金属、またはこれらにメッキしたメッキ鋼板、特に亜鉛メッキ鋼板に対する付着性に優れ、かつ、ポリアミド(ナイロン)樹脂を上塗り被膜とする場合の上塗り被膜との付着性にも優れ、特に、ガソホール性に優れた性能を示すプライマー塗膜を形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、ポリイミド樹脂および/またはポリエステルイミド樹脂、ナイロン樹脂ビーズ、エポキシ樹脂、及び硬化剤を含有したプライマー組成物である。
本発明に用いる(A)成分のポリイミド樹脂および/またはポリエステルイミド樹脂は、特に制限がなく、エステル、ケトン類等の溶剤に可溶であるものが好ましい。
本発明で用いられる本発明で用いられるポリイミド樹脂は、耐熱性を特徴とするエンジニアリングプラスチックの一種として知られ、一般的には、ジアミンとテトラカルボン酸二無水物を溶媒中で反応させて、ポリアミド酸を生成し、これを脱水閉環して得られるポリイミド樹脂や、ジイソシアネートとテトラカルボン酸二無水物を反応させて直接得られるポリイミド樹脂等が挙げられる。
【0012】
具体的なポリイミド樹脂の製法としては、特開平5−017576号公報、特開平7−026141号公報、特開2006−307114号等に記載されているものがある。
ポリイミド樹脂の好適な具体例としては、置換基を有する芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸化合物との反応により得られるものが挙げられる。置換基を有する芳香族ジアミンとしては、2,2−ビス〔3,5−ジメチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔3,5−ジブロモ−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔3,5−ジブロモ−4−(β−p−アミノフェノキシエトキシ)フェニル〕プロパン、及び置換ビスフェノールAエチレンオキシド付加物のビスアミノフェノキシエーテル化誘導体等が挙げられる。これらのジアミンは、単独で又は2種以上を混合して用いることができ、更に他のジアミンと併用することもできる。
【0013】
他の芳香族ジアミンとしては、フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、2,2−ビス(アミノフェノキシフェニル)プロパン、ビス(アミノフェノキシフェニル)スルホン等が挙げられる。芳香族テトラカルボン酸化合物としては、3,3’、4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、ビス(ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物等が挙げられる。置換基を有する芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸化合物のモル比は、1.00:0.95〜1.00:1.05とすることが好ましい。
【0014】
また、別のポリイミド樹脂の好適な具体例としては、芳香族ジアミンと3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物及び/又は3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物を反応させて得られるポリアミド酸を熱閉環させて得られるポリイミド樹脂等が挙げられる。ここで、芳香族ジアミンとしては、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、ビス(3−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン、ビス(4−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン、ビス(3−アミノフェノキシ)ジフェニルエーテル、ビス(4−アミノフェノキシ)ジフェニルエーテル等が挙げられる。芳香族ジアミンと3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物及び/又は3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物のモル比は、1.00:0.95〜1.00:1.05とすることが好ましい。
【0015】
さらに、他のポリイミド樹脂の好適な具体例としては、3,4’−ジアミノジフェニルエーテルを芳香族ジアミン全量を基準として5モル%以上含有する芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物とを反応させて得られるポリイミド樹脂が挙げられる。芳香族ジアミンとしては、上記のものと同様なものが挙げられる。芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物とのモル比は、1.00:0.95〜1.00:1.05とすることが好ましい。
市販されているポリイミド樹脂としては、SKYBOND700、SKYBOND703、SKYBOND705(いずれも、Industrial
Summit Technology(株)製)などが挙げられる。
(A)成分のポリイミド樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
本発明で用いられるポリエステルイミド樹脂としては、アルコール成分とイミド基含有ポリカルボン酸とを加熱反応して得られる樹脂が挙げられる。具体的なポリエステルイミドの製法としては、特開平9−059512号公報、特開平9−194562号公報等に記載されている製法などが挙げられる。
アルコール成分としては、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジエタノール、1,3−シクロペンタンジメタノール等の炭素環含有グリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等の2価アルコール、グリセリン、トリス−2−ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ペンタエリスリトール等の3価以上のアルコール等が挙げられる。アルコール成分は、前記炭素環含有グリコールを5〜50当量%含むことが好ましく、10〜30当量%含むことがより好ましい。また、アルコール成分は、3価以上のアルコールを30〜80当量%含むことが好ましい。
【0017】
イミド基含有ポリカルボン酸としては、例えば、トリカルボン酸無水物2モルとジアミンまたはジイソシアネート1モルとを反応させて得られる化合物が挙げられる。トリカルボン酸無水物とジアミンまたはジイソシアネートは、予めイミド基含有ジカルボン酸としないで、ポリエステルイミド樹脂の製造時に加えてもよい。トリカルボン酸無水物としては、トリメリット酸無水物、3,4,4’−ベンゾフェノントリカルボン酸無水物、3,4,4’−ビフェニルトリカルボン酸無水物などが用いられる。
ジアミンとしては、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルスルホン、m−キシレンジアミン、p−キシリレンジアミン等が挙げられる。ジイソシアネートとしては、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等が挙げられる。イミド基含有ポリカルボン酸の使用量は、酸成分の10〜70当量%が好ましく、30〜50当量%がより好ましい。イミド基含有ポリカルボン酸以外の酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸ジメチル、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸等が挙げられる。
【0018】
アルコール成分と酸成分の配合割合は、カルボキシル基に対する水酸基の当量比を1.2〜2.4にすることが好ましく、1.4〜1.8にすることがより好ましい。
市販されているポリエステルイミド樹脂としては、EH460(大日精化工業(株)製)などが挙げられる。
(A)成分のポリエステルイミド樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、(A)成分のポリイミド樹脂および/またはポリエステルイミド樹脂は、それぞれ単独で用いてもよいし、両者を併用してもよい。
【0019】
本発明に用いる(B)成分のナイロン樹脂ビーズの溶融温度は150℃以上が好ましく、より好ましくは170℃以上である。溶融温度が150℃未満では高温焼付時の樹脂の熱安定性が低下する傾向があり、好ましくない。
また、(B)成分のナイロン樹脂ビーズは、アルコール、エステル、ケトン類等の溶剤に不溶なナイロン樹脂ビーズが好ましい。
また、(B)成分のナイロン樹脂ビーズの平均粒径は5〜100μmが好ましく、より好ましくは10〜50μmである。平均粒径が5μm未満では塗料粘度が高くなる傾向があり、好ましくなく、100μmを超える場合は、貯蔵安定性が低下する傾向があり、好ましくない。
本発明における(B)成分のナイロン樹脂ビーズの役割は、プライマー塗膜と上塗り被膜、特にポリアミド樹脂被膜との付着性を確保することにある。
【0020】
ナイロン樹脂ビーズとしては、ε−カプロラクタムの開環重合によるポリアミド6、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の縮重合によるポリアミド66、ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸の縮重合によるポリアミド610、11−アミノウンデカン酸の縮重合によるポリアミド11、ω−ラウロラクタムの開環重合又は12−アミノドデカン酸の縮重合によるポリアミド12などが挙げられる。
【0021】
市販されているナイロン樹脂ビーズとしては、Rilsan Fine PowderD30 NATURELL、Rilsan Fine PowderD40NATURELL、Rilsan Fine PowderD50NATURELL、オルガソール1002DNAT1、オルガソール1002ES4NAT1、オルガソール2002ES4NAT3、オルガソール2002ES3NAT3、オルガソール3501EDXNAD1、3502DNAD1(いずれも、アルケマ(株)製)、SNPパウダー13、SNPパウダー19(いずれも、(株)メタルカラー製)、A1020LP(ユニチカ(株)社製)などが挙げられる。
(B)成分のナイロン樹脂ビーズは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0022】
本発明に用いる(C)成分のエポキシ樹脂のエポキシ基価は、30〜250mgKOH/gが好ましく、より好ましくは50〜130mgKOH/gである。エポキシ基価が、250mgKOH/gを超えると、メッキ鋼板に対する付着性が低下する傾向があり、また30mgKOH/g未満では塗装作業性が低下する傾向がある。
本発明における(C)成分のエポキシ樹脂の役割は、プライマー塗膜とメッキ鋼板との付着性を確保することにある。
【0023】
本発明に用いるエポキシ樹脂としては、1分子内にエポキシ基を2個以上有するものが好ましく、液状エポキシ、固体状エポキシ樹脂など従来より公知のものを特に制限なしに使用することができる。また、固体状エポキシ樹脂を使用する場合には、該樹脂を溶解もしくは分散可能な有機溶剤に溶解もしくは分散して使用する。
市販されているエポキシ樹脂としては、jER1001、jER1002、jER1003、jER1055、jER1004、jER1007(いずれも、ジャパンエポキシレジン(株)社製)、エポトートYD−134、エポトートYD−011、エポトートYD−012、エポトートYD−013、エポトートYD−014、エポトートYD−017、エポトートYD−7011R、エポトートYD−907(いずれも、東都化成(株)社製)、D.E.R662E、D.E.R663UE、D.E.R664U、D.E.R667E(いずれも、ダウケミカル社製)等のビスフェノール/エピクロルヒドリン型エポキシ樹脂などが挙げられる。
(C)成分のエポキシ樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0024】
本発明に用いる(D)成分の硬化剤としては、フェノール樹脂及びアミノ樹脂が好ましく、それぞれ単独で用いてもよく、あるいは併用してもよい。
本発明における(D)成分の硬化剤の役割は、配合樹脂中の樹脂成分と反応し熱硬化性塗膜を得ることにある。
フェノール樹脂の数平均分子量としては、300〜1,500が好ましく、より好ましくは400〜1,000である。数平均分子量が300未満では、硬化塗膜の折り曲げ性が低下する傾向があり、1,500を超える場合は、50℃での塗料の貯蔵安定性が低下する傾向があり、好ましくない。
【0025】
フェノール樹脂は、フェノール類とホルムアルデヒド類とを反応させて得られる。フェノール樹脂を得るために用いられるフェノール類としては、例えば、フェノール、メチルフェノール、p−エチルフェノール、p−n−プロピルフェノール、p−イソプロピルフェノール、p−n−ブチルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−tert−アミルフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、p−シクロヘキシルフェノール、p−オクチルフェノール、p−ノニルフェノール、3,5−キシレノール、レゾルシノール、カテコールなどの1分子中にベンゼン環を1個有するフェノール類;フェニルo−クレゾール、p−フェニルフェノールなどの1分子中にベンゼン環を2個有するフェノール類;ビスフェノールA、ビスフェノールFなどを挙げられ、これらは、単独でも2種類以上を混合しても使用することができる。また、ホルムアルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサンなどが挙げられる。
【0026】
上記フェノール類とホルムアルデヒド類との反応には触媒として無機酸、有機酸及び有機酸金属塩等を使用することができる。
フェノール類は、レゾール型フェノール樹脂でもノボラック型フェノール樹脂であっても良い。中でもレゾール型フェノール樹脂であることが好適である。また、必要に応じて、天然樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等で適宜変性されたフェノール樹脂であっても良い。上記フェノール樹脂は単独でも、2種類以上を選択して、使用してもよい。
【0027】
また、アミノ樹脂の重量平均分子量としては、600〜20,000が好ましく、より好ましくは1,000〜10,000である。重量平均分子量が800未満では硬化塗膜の折り曲げ性が低下する傾向があり、20,000を超える場合は、ガソホール性が低下する傾向があり、好ましくない。
アミノ樹脂としては、メラミン樹脂、尿素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、アセトグアナミン樹脂、ステログアナミン樹脂、スピログアナミン樹脂、ジシアンジアミド等のアミノ成分とアルデヒドとの反応によって得られるメチロール化アミノ樹脂が挙げられるが、アミノ樹脂はエポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等で変性されていても良い。折り曲げ加工性の点で、メラミン樹脂が好ましい。上記アミノ樹脂は単独でも、2種類以上を選択して、使用してもよい。
(D)成分の硬化剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0028】
(A)ポリイミド樹脂および/またはポリエステルイミド樹脂、(B)ナイロン樹脂ビーズ、(C)エポキシ樹脂、(D)硬化剤のプライマー組成物中の含有比率は、(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分の樹脂固形分の総質量に対して、(A)成分が10〜30質量%、(B)成分が79〜20質量%、(C)成分が10〜30質量%、(D)成分が1〜20質量%である。
より好ましくは、(A)成分が15〜22質量%、(B)成分が65〜40質量%、(C)成分が15〜25質量%、(D)成分が3〜13質量%である。(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分の含有比率の合計は100質量%となる。なお、樹脂固形分は、JIS K5601−1−2に記載された方法で測定された加熱残分をいう。
【0029】
(A)成分が、10質量%未満の場合、ガソホール浸漬後のプライマー塗膜と上塗り被膜との付着性(二次付着)が低下し、30質量%を超えると、プライマー塗膜と上塗り被膜との初期の付着性(一次付着)が低下し好ましくない。
(B)成分が、20質量%未満の場合、プライマー塗膜と上塗り被膜との初期の付着性(一次付着)が低下し、79質量%を超えると、ガソホール浸漬後のプライマー塗膜と上塗り被膜との付着性(二次付着)が低下し好ましくない。
(C)成分が、10質量%未満の場合、プライマー塗膜とメッキ鋼板との付着性が低下し、30質量%を超えると、折り曲げ加工性が低下し好ましくない。
(D)成分が、1質量%未満の場合、ガソホール浸漬後のプライマー塗膜と上塗り被膜との付着性が低下し、20質量%を超えると折り曲げ加工性が低下し好ましくない。
【0030】
本発明のプライマー組成物には、耐食性を向上させる目的で、防錆顔料を配合することができる。防錆顔料としては、通常、下塗り塗料に用いる防錆顔料が使用できる。
具体的な防錆顔料としては、例えば、ジンククロメート、ストロンチウムクロメートなどのクロム系顔料、及びクロムを含まない無公害型の防錆顔料のいずれも使用できるが、環境保全の点から無公害型防錆顔料の使用が好ましい。
無公害型防錆顔料としては、例えばリン酸亜鉛系防錆顔料、リン酸マグネシウム系防錆顔料、燐酸アルミニウム系防錆顔料、リン酸カルシウム系防錆顔料、亜燐酸亜鉛系防錆顔料、亜燐酸マグネシウム系防錆顔料、亜燐酸カルシウム系防錆顔料、亜燐酸アルミニウム系防錆顔料等の縮合燐酸塩系防錆顔料、縮合燐酸塩の表面を金属化合物で処理した顔料;モリブデン酸亜鉛系防錆顔料、シアナミド亜鉛系防錆顔料、シアナミド亜鉛カルシウム系防錆顔料等の亜鉛系防錆顔料;シリカ等が挙げられる。これらは単独で、又は2種類以上を混合して、使用できる。
【0031】
本発明のプライマー組成物には、防錆顔料以外の無機顔料、有機顔料、加工顔料等、従来から塗料用として使用される顔料が必要に応じて配合できる。有機顔料としては、例えば、アゾレーキ系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ系顔料、ペリレン系顔料、キノフタロン系顔料、ジオキサジン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属錯体顔料等が挙げられる。また、無機顔料としては、例えば、黄色酸化鉄、べんがら、二酸化チタン、カーボンブラック等が挙げられる。
また、必要であれば、アルミ顔料、パール顔料等の鱗片状顔料も配合できる。これらの顔料は、特に限定されることなく、単独で、又は2種類以上を混合して、使用できる。
【0032】
本発明のプライマー組成物は、(A)成分、(C)成分及び(D)成分の各成分を有機溶剤に溶解もしくは分散して使用することが好ましい。該有機溶剤としてはヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、不飽和脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、(o−、m−、p−)シクロヘキサン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、2−メトキシエタノール2−ブトキシエタノールジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、アセトンメチルエチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、3−メトキシブチルアセテート、2−エチルヘキシルアセテート、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、エチレングリコールモノアセテート、酢酸セロソルブ、酢酸カルビトール、アセト酢酸エチル、ピリジン、N−メチル−2−ピロリドン、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミドなどが挙げられる。
【0033】
本発明のプライマー組成物を塗布する素材としては、鉄、銅などの金属板、またはこれらにメッキしたメッキ鋼板が好ましく用いられるが、特に、亜鉛メッキ鋼板が好ましい。プライマー組成物を塗布する際には、素材の表面に塗装前処理を施すことが好ましく、この塗装前処理としては、プレコートメタル用前処理として用いられる化成処理ならいずれでもよく、例えばクロメート化成処理、リン酸塩化成処理、複合酸化皮膜処理などが挙げられる。
【0034】
本発明のプライマー組成物の塗装方法は、種々の塗装方法により行うことができ、例えば、ロールコーター、フローコーター、ディッピング、又は、スプレー等による塗装方法が用いられる。なかでも、ロールコーターによる塗装が、膜厚制御と均一性を得る点で好ましい。プライマー組成物を塗布した塗膜は、通常100〜300℃で、5秒〜5分間の硬化条件で焼付けを行えばよく、例えばロールコーターによって塗装するプレコート塗装分野においては、通常、素材到達最高温度が120〜260℃で、15〜120秒間の硬化条件で硬化すれば良い。
本発明のプライマー組成物を塗布して得られるプライマー塗膜の乾燥塗膜厚は、通常1〜10μmの範囲が好ましく、より好ましくは3〜7μmである。
【0035】
本発明のプライマー塗膜の上に被覆する被膜としては、ポリアミド(ナイロン)樹脂の被膜が、付着性の点で好ましい。ポリアミド(ナイロン)樹脂としては、本発明のプライマー組成物に用いた溶剤不溶なナイロン樹脂ビーズと同じ組成のε−カプロラクタムの開環重合によるポリアミド6、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の縮重合によるポリアミド66、ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸の縮重合によるポリアミド610、11−アミノウンデカン酸の縮重合によるポリアミド11、ω−ラウロラクタムの開環重合又は12−アミノドデカン酸の縮重合によるポリアミド12などが挙げられ挙げられる。ポリアミド樹脂の被膜を形成する方法としては、例えば、ポリアミド樹脂の融点以上の温度で加熱して溶融したものをシート状にして、被膜を形成する方法が挙げられるが、これに限定されず、種々の方法が挙げられる。
ポリアミド樹脂の被膜の膜厚は、50〜200μmが好ましく、より好ましくは、80〜150μmである。
【実施例】
【0036】
以下に、本発明を製造例、実施例、比較例により更に具体的に説明する。尚、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下、特に明記しない限り、「部」および「%」はそれぞれ「質量部」および「質量%」を意味する。また、表1〜表3において、各成分の配合量を示す数値の単位は、質量部である。
なお、実施例、比較例において、各項目の評価は下記の方法にて行なった。
【0037】
<塗装作業性および塗膜の評価方法>
(プライマー組成物の塗装作業性)
希釈溶剤(N−メチルピロリドン/イソホロン=50/50(質量比)の混合溶剤)でプライマー組成物をフォードカップNo.4(25℃)で60秒に希釈し、その希釈したプライマー組成物を、電気亜鉛メッキ鋼板(縦100mm、横67mm、厚さ0.3mm)の表面に乾燥塗膜厚が4〜6μmになるようにバーコーター塗装する。この時のプライマー塗膜の肌を、以下の基準に従って評価し、プライマー組成物の塗装作業性の評価とした。
◎:問題なし。
○:実用上問題なし。
×:ラウンド肌になり、実用上問題がある。
【0038】
一次付着性能
希釈溶剤(N−メチルピロリドン/イソホロン=50/50(質量比)の混合溶剤)でプライマー組成物をフォードカップNo.4(25℃)で60秒に希釈し、その希釈されたプライマー組成物を電気亜鉛メッキ鋼板(縦100mm、横67mm、厚さ0.3mm)の表面に乾燥塗膜厚が4〜6μmになるようにバーコーター塗装した後、ただちに260℃で40秒間、焼付硬化する。このとき、縦40mm程度、プライマー組成物が塗装されていない部分を作成しておく。
次に、ナイロンペレット(商品名:Rilsan B BMF O(アルケマ社製))を300℃で溶融し、100〜110μmになるようにアプリケーターで塗装する。このとき、プライマー組成物が塗装されていない部分も同時に塗装し連続膜として、試験板を得た。得られた試験板の縦方向に10mm幅で塗膜に切り込みを入れ、プライマー組成物が塗装されていない部位からナイロン塗膜を一定速度で引っ張り、プライマー組成物が塗装されている部位の剥離状態を下記の基準により評価した。
【0039】
(i)メッキ鋼板とプライマー塗膜の付着性
◎:プライマー塗膜部位でナイロン塗膜が破断する。
○:プライマー塗膜部位で凝集破壊または界面剥離した後、ナイロン塗膜が破断する。
×:メッキ鋼板とプライマー塗膜との界面剥離はあるが、ナイロン塗膜は破断しない。
【0040】
(ii)プライマー塗膜と上塗り被膜との初期の付着性
メッキ鋼板とプライマー塗膜の付着性(一次付着)と同様にして試験板を作成し、プライマー塗膜とナイロン塗膜との初期の付着性(一次付着)を下記の基準により評価した。
◎:プライマー塗膜部位でナイロン塗膜が破断する。
○:プライマー塗膜部位で凝集破壊または界面剥離した後、ナイロン塗膜が破断する。
×:プライマー塗膜とナイロン塗膜との界面剥離はあるが、ナイロン塗膜は破断しない。
【0041】
(折り曲げ性)
希釈溶剤(N−メチルピロリドン/イソホロン=50/50(質量比)の混合溶剤)でプライマー組成物をフォードカップNo.4(25℃)で60秒に希釈し、その希釈したプライマー組成物を電気亜鉛メッキ鋼板(縦100mm、横67mm、厚さ0.3mm)の表面に乾燥塗膜厚が4〜6μmになるようにバーコーター塗装した後、ただちに260℃で40秒間、焼付硬化し、折り曲げ性用の試験板とした。
折り曲げ性試験として、20℃の室温にて、幅5cmに切断した試験片について、0Tでは何も挟まず、1Tでは試験片と同ーの塗板を1枚、2Tでは試験片と同ーの塗板を2枚内側にはさみ塗膜を外側にして180度密着曲げを行い、4Tでは同一の塗板を4枚内側にはさみ塗膜を外側にし180度密着曲げを行う試験を行った。折り曲げ性は、この折り曲げ試験結果を、下記基準に従って評価した。
◎:4Tで亀裂の発生がない。
○:4T折り曲げ時僅かに亀裂があるが、実用上問題なし。
×:クラックを生じ、実用上問題がある。
【0042】
(ガソホール浸漬後のプライマー塗膜と上塗り被膜との付着性(二次付着))
希釈溶剤(N−メチルピロリドン/イソホロン=50/50(質量比)の混合溶剤)でプライマー組成物をフォードカップNo.4(25℃)で60秒に希釈し、その希釈されたプライマー組成物を電気亜鉛メッキ鋼板(縦100mm、横67mm、厚さ0.3mm)の表面に乾燥塗膜厚が4〜6μmになるようにバーコーター塗装した後、ただちに260℃で40秒間、焼付硬化する。このとき、縦40mm程度、プライマー組成物が塗装されていない部分を作成しておく。
【0043】
次に、ナイロンペレット(商品名:Rilsan B BMF O(アルケマ社製))を300℃で溶融し、100〜110μmになるようにアプリケーターで塗装する。このとき、プライマー組成物が塗装されていない部分も同時に塗装し連続膜として試験板を得た。得られた試験板を、20℃×120時間、ガソホールに浸漬した後、1時間室温に放置し、縦方向に10mm幅で塗膜に切り込みを入れ、プライマー組成物が塗装されていない部位からナイロン塗膜を一定速度でひっぱり、プライマー組成物が塗装されている部位の剥離状態を下記の基準により評価した。
◎:プライマー塗膜部位でナイロン塗膜が破断する。
○:プライマー塗膜部位で凝集破壊または界面剥離した後、ナイロン塗膜が破断する。
×:プライマー塗膜部位での界面剥離または凝集破壊はあるが、ナイロン塗膜は破断しない。
【0044】
プライマー組成物の製造例 P−1
分散機にSKYBOND700(ポリイミド樹脂、登録商標、Industrial Summit Technology(株)製、樹脂固形分46.5質量%)68.4部、EH460(ポリエステルイミド樹脂、商品名、大日精化工業(株)製、樹脂固形分50.5質量%)63部、硫酸バリウムSS−50(体質顔料、商品名、堺化学社製)9.5部、艶消し剤HK125(防錆顔料、商品名、デグサ社製)22.3部、N−メチルピロリドン150部、およびイソホロンを150部仕込み、粒度が30μm以下になるまで分散する。目的の粒度になったら、分散を止め、Rilsan
Fine Powder D30 NATURELL(ナイロン樹脂ビーズ、商品名、アルケマ社製、平均粒径25μm)159.1部、N−メチルピロリドン50部、イソホロン50部を混合した溶剤とjER1001(エポキシ樹脂、商品名、ジャパンエポキシレジン社製;エポキシ価118、樹脂固形分100質量%)63.6部を溶解してなる溶液、ショウノールCKS−704(フェノール樹脂、昭和高分子社製、数平均分子量430、樹脂固形分59質量%)27部、ユーバン80S(メラミン樹脂、商品名、三井化学社製、重量平均分子量3700、樹脂固形分60質量%)31.8部、N−メチルピロリドン77.7部、イソホロン77.6部を加えて取り出し、充分攪拌し、表1に示すプライマー組成物の製造例のP−1を得た。
なお、表1〜3に示すプライマー組成物の特性値の欄に記載されている加熱残分の数値は、プライマー組成物の全質量に対する加熱残分の含有割合(質量%)を示したものであり、加熱残分の内訳は、樹脂と顔料であり、樹脂と顔料の含有割合(質量%)の数値を合計すると加熱残分の含有割合(質量%)になる。
【0045】
プライマー組成物の製造例 P−2〜P−3、P−5〜P−22
プライマー製造例P−1と同様にして、表1および表2に示すP−2〜P−3、P−5〜P−22を得た。
【0046】
プライマー組成物の製造例 P−4
攪拌機にSKYBOND703(ポリイミド樹脂、登録商標、Industrial Summit Technology(株)製、樹脂固形分50質量%)55.7部、EH460(ポリエステルイミド樹脂、商品名、大日精化工業(株)製、樹脂固形分50.5質量%)55.1部、オルガソール2002ES3NAT3(ナイロン樹脂ビーズ、アルケマ社製、平均粒径40μm)122.4部、N−メチルピロリドン50部、イソホロン50部を混合した溶剤とjER1001(エポキシ樹脂、商品名、ジャパンエポキシレジン社製、エポキシ価118、樹脂固形分100質量%)66.8部を溶解してなる溶液、ショウノールCKS−704(フェノール樹脂、昭和高分子社製、数平均分子量430、樹脂固形分59質量%)28.3部、ユーバン20SB(メラミン樹脂、三井化学社製、重量平均分子量5780、樹脂固形分50質量%)33.4部、N−メチルピロリドン269.2部、イソホロン269.1部を加えて、充分攪拌し、表1に示すプライマー組成物の製造例のP−4を得た。
【0047】
実施例 1
プライマー組成物の製造例P−1を用い、(プライマー組成物の塗装作業性)に記載の方法で、プライマー組成物の作業性を評価し、その結果を表4に示した。
次に、(折り曲げ性)に記載の方法で、折り曲げ性を評価し、その結果を表4に示した。次に、(メッキ鋼板とプライマー塗膜の付着性(一次付着))および(プライマー塗膜と上塗り被膜との初期の付着性(一次付着))に記載の方法で、付着性を評価し、その結果を表4に示した。さらに、(ガソホール浸漬後のプライマー塗膜と上塗り被膜との付着性(二次付着))に記載の方法で付着性を評価し、その結果を表4に示した。
【0048】
実施例2〜14、比較例1〜9
実施例1と同様にして、各項目を評価し、その結果を表4及び表5に示した。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
【表3】

【0052】
表中のカッコ付き数字は、以下に示すものである。
1):SKYBOND700:ポリイミド樹脂、登録商標、Industrial Summit
Technology(株)製、樹脂固形分46.5質量%
2):SKYBOND703:ポリイミド樹脂、登録商標、Industrial Summit Technology(株)製、樹脂固形分50質量%
3):EH460:ポリエステルイミド樹脂、商品名、大日精化工業(株)製、樹脂固形分50.5質量%
4):Rilsan Fine Powder D30 NATURELL:ナイロン樹脂ビーズ、商品名、アルケマ社製、平均粒径25μm
5):オルガソール 2002ES4NAT3:ナイロン樹脂ビーズ、商品名、アルケマ社製、平均粒径40μm
【0053】
6):オルガソール 2002ES3NAT3:ナイロン樹脂ビーズ、商品名、アルケマ社製、平均粒径30μm
7):jER1001:エポキシ樹脂、商品名、ジャパンエポキシレジン(株)製、エポキシ価118、樹脂固形分100質量%
8):jER1002:エポキシ樹脂、商品名、ジャパンエポキシレジン(株)製、エポキシ価87、樹脂固形分質量100%
9):jER834 :エポキシ樹脂、商品名、ジャパンエポキシレジン(株)製、エポキシ価226、樹脂固形分質量100%
10):YD−907 :エポキシ樹脂、商品名、東都化成(株)製、エポキシ価38、樹脂固形分質量100%
【0054】
11):ショウノール CKS−704:フェノール樹脂、昭和高分子(株)製、数平均分子量430、樹脂固形分59質量%
12):ショウノール CRG−951:フェノール樹脂、昭和高分子(株)製、数平均分子量750、樹脂固形分100質量%
13):ユーバン80S:メラミン樹脂、商品名、三井化学(株)製、重量平均分子量3,700、樹脂固形分50質量%
14):ユーバン20SB:メラミン樹脂、商品名、三井化学(株)製、重量平均分子量5,780、樹脂固形分50質量%
15):ユーバン122:メラミン樹脂、商品名、三井化学(株)製、重量平均分子量1560、樹脂固形分60質量%
【0055】
16):硫酸バリウム SS−50:体質顔料、商品名、堺化学(株)製、
17):艶消し剤HK−125:防錆顔料、商品名、デグサ社製
18):タイピュアR−706:酸化チタン、商品名、デュポン社製、
19):カーブンブラックFW200:カーボンブラック、商品名、デグサ社製
20):jER828:エポキシ樹脂、商品名、ジャパンエポキシレジン(株)製、エポキシ価297、樹脂固形分100質量%
【0056】
【表4】

【0057】
【表5】

【0058】
本発明のプライマー組成物は、表4の実施例1〜14に示すように、本発明の請求範囲内であれば、何れの場合も実用上問題のないレベル以上の性能が得られている。
しかし、ポリイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂、ナイロン樹脂ビーズの含有比率が請求範囲以外の場合、比較例1〜4に示すようにプライマー塗膜と上塗り被膜との初期の付着性あるいはガソホール浸漬後のプライマ−塗膜と上塗り被膜との付着性が不良となる。また、エポキシ樹脂の含有比率が請求範囲以外の場合、比較例5および6に示すように、プライマー塗膜とメッキ鋼板との付着性が不良になったり折り曲げ性が不良になる。さらに、硬化剤成分が請求範囲以外の場合、比較例7、8に示すようにガソホール後の上塗りとの付着性あるいは折り曲げ性が不良となる。
【0059】
上記の通り、プライマー組成物の各成分が本発明の特許請求範囲内にあれば、プライマー組成物の塗装作業性に優れ、メッキ鋼板とプライマー塗膜の付着性(一次付着)、プライマー塗膜と上塗り被膜との初期の付着性(一次付着)、折り曲げ性、ガソホール浸漬後のプライマー塗膜と上塗り被膜との付着性(二次付着)に優れるプライマー塗膜を形成できる、ポリアミド樹脂被膜の下塗り塗料として有用なプライマー組成物が得られる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリイミド樹脂および/またはポリエステルイミド樹脂、(B)ナイロン樹脂ビーズ、(C)エポキシ樹脂及び(D)硬化剤を含有し、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の樹脂固形分の総質量に対して、(A)成分の含有比率が10〜30質量%、(B)成分の含有比率が79〜20質量%、(C)成分の含有比率が10〜30質量%、(D)成分の含有比率が1〜20質量%であることを特徴とするプライマー組成物。
【請求項2】
(D)成分が、フェノール樹脂及び/又はアミノ樹脂である請求項1に記載のプライマー組成物。
【請求項3】
プライマー組成物が、ポリアミド樹脂被膜の下塗塗料として用いられるプライマー組成物である請求項1または2に記載の記載のプライマー組成物。

【公開番号】特開2009−1648(P2009−1648A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−163115(P2007−163115)
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【出願人】(599076424)BASFコーティングスジャパン株式会社 (59)
【Fターム(参考)】