説明

プラグの抜出し方法

【課題】積層体からプラグを容易に抜き出すこと。
【解決手段】免震装置に一方向Xにせん断力を作用させてプラグ5を塑性変形させた後、該せん断力を解除することによりプラグ5の外周面5aと積層体4の内周面4aとを離反させる第1離反工程と、該第1離反工程でプラグ5の外周面5aと積層体4の内周面4aとの間に形成された第1空隙に、介在部材11を配設する配設工程と、免震装置に一方向Xに交差する他方向Yにせん断力を作用させてプラグ5を塑性変形させた後、該せん断力を解除することによりプラグ5の外周面5aと積層体4の内周面4aとを離反させる第2離反工程と、プラグ5を積層体4から積層方向に抜き出す抜出し工程と、を備え、配設工程は、第2離反工程の前に行うプラグの抜出し方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟質板と硬質板とが交互に積層された積層体と、該積層体に、その積層方向に貫通するように圧入されたプラグと、を備える免震装置の積層体からプラグを抜き出すプラグの抜出し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の免震装置の廃棄時には、積層体に圧入されたプラグを積層体から抜き出して、積層体とプラグとを分別する必要がある。
そこで、例えば下記特許文献1に示されるような、積層体に一方向にせん断力を作用させてプラグとともにせん断変形させる変形工程と、積層体をせん断変形前の形状に復元させる復元工程と、プラグを積層方向に抜き出す抜出し工程と、を備えるプラグの抜出し方法が知られている。
この方法によれば、変形工程時に、プラグは、一方向に沿った大きさが小さくなるように塑性変形させられる。その後、復元工程時に、積層ゴムが、せん断変形前の形状に復元変形するものの、プラグが、せん断変形後の形状を維持することとなり、プラグの一方向に沿った大きさが、積層体の内径よりも小さくなり、プラグの外周面と積層体の内周面とが離反することとなる。したがって、抜出し工程時に、プラグを積層体から積層方向に抜き出すことができる。
さらにこの方法では、抜出し工程の前に、変形工程および復元工程を2回ずつ行っている。すなわち、1度目の変形工程として、積層体に一方向にせん断力を作用させた後、1度目の復元工程を行い、その後、2度目の変形工程として、積層体に一方向と交差する他方向にせん断力を作用させた後、2度目の復元工程を行っている。これにより、プラグの一方向および他方向に沿った大きさをそれぞれ小さくすることが可能になり、プラグを積層体から積層方向に容易に抜き出すことができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−58850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来のプラグの抜出し方法では、2度目の変形工程時にプラグを他方向にせん断変形させたときに、このプラグが、他方向と直交する方向に拡幅変形し、積層体の内周面を形成する軟質板に食い込んで密着してしまうため、プラグを積層体から容易に抜き出すことは困難であった。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、積層体からプラグを容易に抜き出すことができるプラグの抜出し方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係るプラグの抜出し方法は、軟質板と硬質板とが交互に積層された積層体と、該積層体に、その積層方向に貫通するように圧入されたプラグと、を備える免震装置の積層体からプラグを抜き出すプラグの抜出し方法であって、前記免震装置に一方向にせん断力を作用させて前記プラグを塑性変形させた後、該せん断力を解除することにより前記プラグの外周面と前記積層体の内周面とを離反させる第1離反工程と、該第1離反工程で前記プラグの外周面と前記積層体の内周面との間に形成された第1空隙に、介在部材を配設する配設工程と、前記免震装置に前記一方向に交差する他方向にせん断力を作用させて前記プラグを塑性変形させた後、該せん断力を解除することにより前記プラグの外周面と前記積層体の内周面とを離反させる第2離反工程と、前記プラグを前記積層体から前記積層方向に抜き出す抜出し工程と、を備え、前記配設工程は、前記第2離反工程の前に行うことを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、第2離反工程の前に、第1空隙に介在部材を配設する配設工程を行うので、第2離反工程時にプラグを他方向にせん断変形させるときに、プラグが、他方向に直交する方向に拡幅変形しても、プラグの外周面と積層体の内周面との間に介在部材が介在することとなり、プラグが、積層体の内周面を形成する軟質板に食い込んで密着してしまうことが抑制される。これにより、プラグの外周面と積層体の内周面とを全周にわたって密着させず離反させることが可能になり、抜出し工程時に、プラグを積層体から積層方向に容易に抜き出すことができる。
【0008】
なお、他方向が、一方向に直交している場合、第1離反工程時にプラグを一方向にせん断変形させたときに該プラグが拡幅変形する方向と、第2離反工程時にプラグをせん断変形させる方向と、が一致することとなる。したがって、第2離反工程時に、プラグの外周面と積層体の内周面とを全周にわたって確実に離反させることが可能になり、プラグを積層体からより容易に抜き出すことができる。
【0009】
また、前記配設工程は、前記第1空隙に未硬化状態の樹脂材料を注入した後に硬化させることで、前記第1空隙に前記介在部材を配設しても良い。
【0010】
この場合、配設工程時に、第1空隙に未硬化状態の樹脂材料を注入した後に硬化させることで介在部材を配設するので、第1空隙を介在部材で密に埋め込むことができる。これにより、第2離反工程時に、プラグが、積層体の内周面を形成する軟質板に食い込んで密着してしまうのを確実に抑制することができる。
【0011】
なお、介在部材が、第1空隙に未加硫状態で注入された樹脂材料が硬化することで形成されているので、仮に、第1離反工程時にプラグの外周面と積層体の内周面とを離反させたときに、積層体の内周面にプラグの破片が残存した場合であっても、この破片を介在部材に密着させることができる。したがって、例えば抜出し工程時に、プラグとともに介在部材を抜き出すことで、プラグの破片を積層体から除去することができる。
【0012】
また介在部材が、樹脂材料で形成されているので、プラグが積層体に圧入されるときに、積層体の内周面を形成する軟質板に食い込むことで、積層体の内周面が、積層方向に交互に並ぶ凹凸状をなしていても、介在部材を、積層体からプラグとともに積層方向に容易に抜き出すことができる。すなわち、介在部材が、積層体の内周面に倣って凹凸状をなすものの、介在部材が樹脂材料で形成されているので、積層体の内周面の凸部と介在部材の凸部とを、介在部材の凸部を弾性変形させながら積層方向に互いに乗り越えさせることができる。
【0013】
また、前記第2離反工程で前記プラグの外周面と前記積層体の内周面との間に形成された第2空隙に、未硬化状態の樹脂材料を注入した後に硬化させることで充填部材を配設する充填工程を備え、前記抜出し工程は、前記充填部材を前記プラグとともに前記積層体から前記積層方向に抜き出しても良い。
【0014】
この場合、充填部材が、第2空隙に未加硫状態で注入された樹脂材料が硬化することで形成されているので、仮に、第2離反工程時にプラグの外周面と積層体の内周面とを離反させたときに、積層体の内周面にプラグの破片が残存した場合であっても、この破片を充填部材に密着させることができる。したがって、抜出し工程時に、プラグとともに充填部材を抜き出すことで、プラグの破片を積層体から除去することができる。
なお、第1離反工程時にプラグを一方向にせん断変形させたときに、このプラグが一方向に直交する方向に拡幅変形することで、プラグの外周面が積層体の内周面に押し込められているため、第2離反工程時にプラグの外周面が積層体の内周面から離反するときには、プラグの破片が積層体の内周面に残存し易くなっていることから、前述の作用効果は顕著に奏功されることとなる。
【0015】
また充填部材が、樹脂材料で形成されているので、プラグが積層体に圧入されるときに、積層体の内周面を形成する軟質板に食い込むことで、積層体の内周面が、積層方向に交互に並ぶ凹凸状をなしていても、充填部材を、積層体からプラグとともに積層方向に容易に抜き出すことができる。すなわち、充填部材が、積層体の内周面に倣って凹凸状をなすものの、充填部材が樹脂材料で形成されているので、積層体の内周面の凸部と充填部材の凸部とを、充填部材の凸部を弾性変形させながら積層方向に互いに乗り越えさせることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るプラグの抜出し方法によれば、積層体からプラグを容易に抜き出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係るプラグの抜出し方法によってプラグを抜き出す免震装置を一部破断した斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るプラグの抜出し方法を説明するための免震装置の縦断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るプラグの抜出し方法を説明するための免震装置の上面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るプラグの抜出し方法を説明するための免震装置の縦断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るプラグの抜出し方法を説明するための免震装置の縦断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るプラグの抜出し方法を説明するための免震装置の上面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るプラグの抜出し方法を説明するための免震装置の上面図である。
【図8】本発明の一実施形態に係るプラグの抜出し方法を説明するための免震装置の上面図である。
【図9】本発明の一実施形態に係るプラグの抜出し方法を説明するための免震装置の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係るプラグの抜出し方法によってプラグを抜き出す免震装置について説明する。
図1に示すように、免震装置1は、ゴム層(軟質板)2と金属板(硬質板)3とが交互に積層された積層ゴム(積層体)4と、該積層ゴム4の積層方向Zに貫通するように該積層ゴム4に圧入された鉛プラグ(プラグ)5と、積層ゴム4の積層方向Zの両端に固着された取付けプレート6と、を備えている。
【0019】
積層ゴム4は円柱状とされ、その外周面は、ゴム層2と一体に形成された円筒状の被覆ゴム7により被覆されている。また、鉛プラグ5は円柱状とされ、積層ゴム4の径方向の中央部に積層方向Zに貫設されている。なお鉛プラグ5が、積層ゴム4に圧入されるときに積層ゴム4の内周面4aを形成するゴム層2に食い込むことで、積層ゴム4の内周面は、積層方向Zに交互に並ぶ凹凸状をなしている。
【0020】
両取付けプレート6において鉛プラグ5の積層方向Zの両外側に位置する部分には、キャップ孔6aが形成されており、各キャップ孔6a内には、鉛プラグ5の積層方向Zの両端面を覆うとともに取付けプレート6に溶接されたキャップ8が各別に配設されている。両取付けプレート6はそれぞれ、例えば、図示しない上部構造および下部構造に固定される。
【0021】
以上のように構成された免震装置1では、地震動が入力されたときに、積層ゴム4がせん断変形することで、上部構造の固有周期が長くなり、上部構造が受ける地震応力が緩和される。なおこの際、鉛プラグ5が塑性変形し、ダンパとして機能する。
【0022】
次に、この免震装置1の積層ゴム4から鉛プラグ5を抜き出す方法について説明する。
まず、図2および図3に示すように、キャップ8と、取付けプレート6との溶接を切ってキャップ8を外す。
【0023】
次いで、免震装置1に一方向Xにせん断力を作用させ、鉛プラグ5の外周面5aと積層ゴム4の内周面4aとを離反させる第1離反工程を行う。
この工程では、まず図4に示すように、例えば、一般的な免震装置1の試験機を用いて、免震装置1に一方向Xにせん断力を作用させて積層ゴム4および鉛プラグ5をせん断変形させる。これにより、鉛プラグ5は、一方向Xに沿った縦断面視形状が平行四辺形状となるように、塑性変形させられる。
【0024】
その後、前記せん断力を解除する。すると、図5に示すように、積層ゴム4はせん断変形前の形状に復元変形するものの、鉛プラグ5は、せん断変形後の形状を維持することとなり、鉛プラグ5の一部が、積層ゴム4の積層方向Zの外側に食み出す。この食み出し分に対応して、図6に示すように、鉛プラグ5の一方向Xに沿った大きさが、積層ゴム4の内径よりも小さくなり、鉛プラグ5の外周面5aと積層ゴム4の内周面4aとが離反する。これにより、鉛プラグ5の一方向Xの両外側に第1空隙10が形成される。図示の例では、第1空隙10は、平面視三日月状となっており、一方向Xと直交する他方向Yの中央部から両外側に向かうに従い、一方向Xに沿った大きさが漸次、小さくなっている。
なおこの際、例えば、前記せん断力を解除するとともに積層ゴム4を強制的にせん断変形前の形状に復元しても良い。
以上で第1離反工程が終了する。
【0025】
次いで、図7に示すように、第1空隙10に介在部材11を配設する配設工程を行う。本実施形態では、第1空隙10に未硬化状態の樹脂材料を注入した後に硬化させることで、第1空隙10に介在部材11を配設する。これにより、介在部材11が、鉛プラグ5の外周面5aの一方向Xの両外側に、該外周面5aに密着した状態でそれぞれ形成される。
【0026】
なお前記樹脂材料は、未硬化状態での粘度が、第1空隙10に注入可能な程度に低く、かつ硬化後の硬度が、鉛プラグ5と同等であるとともに、硬化後の降伏応力が、鉛プラグ5と同等以上であることが好ましい。このような樹脂材料としては、例えば、エポキシ樹脂やフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂、およびフッ素樹脂やポリエチレン樹脂などの熱可塑性樹脂などが挙げられる。なおこれらのうち、熱硬化性樹脂を採用した場合、第1空隙10への注入時に樹脂材料を加熱しなくても良い。
【0027】
次いで、免震装置1に他方向Yにせん断力を作用させ、鉛プラグ5の外周面5aと積層ゴム4の内周面4aとを離反させる第2離反工程を行う。
この工程では、まず、免震装置1に他方向Yにせん断力を作用させて積層ゴム4および鉛プラグ5をせん断変形させることで、鉛プラグ5を塑性変形させる。ここで本実施形態では、第2離反工程の前に配設工程を行っているので、第2離反工程時に鉛プラグ5を他方向Yにせん断変形させるときに、鉛プラグ5が、他方向Yに直交する一方向Xに拡幅変形しても、鉛プラグ5の外周面5aと積層ゴム4の内周面4aとの間に介在部材11が介在することとなり、鉛プラグ5が、積層ゴム4のゴム層2に食い込んでしまうことが抑制される。
【0028】
その後、前記せん断力を解除すると、前記第1離反工程と同様に、積層ゴム4はせん断変形前の形状に復元変形するものの、鉛プラグ5は、せん断変形後の形状を維持することとなる。したがって、図8に示すように、鉛プラグ5の他方向Yに沿った大きさが、積層ゴム4の内径よりも小さくなり、鉛プラグ5の外周面5aと積層ゴム4の内周面4aとが離反する。なおこの際、本実施形態では、鉛プラグ5の外周面5aとともに介在部材11もあわせて積層ゴム4の内周面4aと離反する。
これにより、鉛プラグ5の他方向Yの両外側において、鉛プラグ5および介在部材11と積層ゴム4の内周面4aとの間に第2空隙12が形成される。図示の例では、第2空隙12は、平面視三日月状となっており、一方向Xの中央部から両外側に向かうに従い、他方向Yに沿った大きさが漸次、小さくなっている。
【0029】
次いで、図9に示すように、第2空隙12に未硬化状態の樹脂材料を注入した後に硬化させることで、介在部材11と一体的に形成された充填部材13を配設する充填工程を行う。これにより、充填部材13が、鉛プラグ5の他方向Yの両外側に、鉛プラグ5の外周面5aおよび介在部材11に密着した状態でそれぞれ形成される。
なお前記樹脂材料としては、配設工程で介在部材11に採用した樹脂材料と同様のものを採用することができる。
【0030】
そして、鉛プラグ5を積層ゴム4から積層方向Zに抜き出す抜出し工程を行う。本実施形態では、この抜出し工程時に、介在部材11および充填部材13を鉛プラグ5とともに積層方向Zに押し込むことで、積層ゴム4から抜き出す。
ここで本実施形態では、介在部材11および充填部材13が、樹脂材料で形成されているので、鉛プラグ5が積層ゴム4に圧入されるときに、積層ゴム4の内周面4aを形成するゴム層2に食い込むことで、積層ゴム4の内周面4aが、積層方向Zに交互に並ぶ凹凸状をなしていても、介在部材11および充填部材13を、積層ゴム4から鉛プラグ5とともに積層方向Zに容易に抜き出すことができる。すなわち、介在部材11および充填部材13が、積層ゴム4の内周面4aに倣って凹凸状をなすものの、介在部材11および充填部材13が樹脂材料で形成されているので、積層ゴム4の内周面4aの凸部と介在部材11の凸部とを、介在部材11の凸部を弾性変形させながら積層方向Zに互いに乗り越えさせることができるとともに、積層ゴム4の内周面4aの凸部と充填部材13の凸部とを、充填部材13の凸部を弾性変形させながら積層方向Zに互いに乗り越えさせることができる。
以上により、免震装置1の積層ゴム4から鉛プラグ5を抜き出すことができる。
【0031】
以上説明したように、本実施形態に係る鉛プラグ5の抜出し方法によれば、第2離反工程の前に、第1空隙10に介在部材11を配設する配設工程を行うので、第2離反工程時に鉛プラグ5を他方向Yにせん断変形させるときに、鉛プラグ5が、他方向Yに直交する一方向Xに拡幅変形しても、鉛プラグ5の外周面5aと積層ゴム4の内周面4aとの間に介在部材11が介在することとなり、鉛プラグ5が、積層ゴム4の内周面4aを形成するゴム層2に食い込んで密着してしまうことが抑制される。これにより、鉛プラグ5の外周面5aと積層ゴム4の内周面4aとを全周にわたって密着させず離反させることが可能になり、抜出し工程時に、鉛プラグ5を積層ゴム4から積層方向Zに容易に抜き出すことができる。
【0032】
また本実施形態のように、他方向Yが、一方向Xに直交している場合、第1離反工程時に鉛プラグ5を一方向Xにせん断変形させたときに該鉛プラグ5が拡幅変形する方向と、第2離反工程時に鉛プラグ5をせん断変形させる方向と、が一致することとなる。したがって、第2離反工程時に、鉛プラグ5の外周面5aと積層ゴム4の内周面4aとを全周にわたって確実に離反させることが可能になり、鉛プラグ5を積層ゴム4からより容易に抜き出すことができる。
【0033】
また、配設工程時に、第1空隙10に未硬化状態の樹脂材料を注入した後に硬化させることで介在部材11を配設するので、第1空隙10を介在部材11で密に埋め込むことができる。これにより、第2離反工程時に、鉛プラグ5が、積層ゴム4の内周面4aを形成するゴム層2に食い込んで密着してしまうのを確実に抑制することができる。
【0034】
また、介在部材11が、第1空隙10に未加硫状態で注入された樹脂材料が硬化することで形成されているので、仮に、第1離反工程時に鉛プラグ5の外周面5aと積層ゴム4の内周面4aとを離反させたときに、積層ゴム4の内周面4aに鉛プラグ5の破片が残存した場合であっても、この破片を介在部材11に密着させることができる。したがって、例えば抜出し工程時に、鉛プラグ5とともに介在部材11を抜き出すことで、鉛プラグ5の破片を積層ゴム4から除去することができる。
【0035】
さらに、充填部材13が、第2空隙12に未加硫状態で注入された樹脂材料が硬化することで形成されているので、仮に、第2離反工程時に鉛プラグ5の外周面5aと積層ゴム4の内周面4aとを離反させたときに、積層ゴム4の内周面4aに鉛プラグ5の破片が残存した場合であっても、この破片を充填部材13に密着させることができる。したがって、抜出し工程時に、鉛プラグ5とともに充填部材13を抜き出すことで、鉛プラグ5の破片を積層ゴム4から除去することができる。
なお、第1離反工程時に鉛プラグ5を一方向Xにせん断変形させたときに、この鉛プラグ5が一方向Xに直交する他方向Yに拡幅変形することで、鉛プラグ5の外周面5aが積層ゴム4の内周面4aに押し込められているため、第2離反工程時に鉛プラグ5の外周面5aが積層ゴム4の内周面4aから離反するときには、鉛プラグ5の破片が積層ゴム4の内周面4aに残存し易くなっていることから、前述の作用効果は顕著に奏功されることとなる。
【0036】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、前記実施形態では、充填工程を備えているものとしたが、充填工程はなくても良い。
また前記実施形態では、他方向Yは、一方向Xに直交しているものとしたが、積層方向Zに直交しかつ一方向Xに交差していれば、これに限られるものではない。
【0037】
また前記実施形態では、配設工程は、第1空隙10に未硬化状態の樹脂材料を注入した後に硬化させることで、第1空隙10に介在部材11を配設するものとしたが、これに限られるものではない。例えば、介在部材11をゴム材料で形成しても良い。
また前記実施形態では、抜出し工程時に、介在部材11を鉛プラグ5とともに積層ゴム4から抜き出すものとしたが、介在部材11は積層ゴム4から抜き出されなくても良い。
【0038】
また前記実施形態では、免震装置1は、軟質板であるゴム層2と硬質板である金属板3とが交互に積層された積層ゴム4を備えるものとしたが、これに限られるものではない。例えば、軟質板を樹脂材料で形成しても良く、また硬質板を高硬度樹脂材料で形成しても良い。
【0039】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 免震装置
2 ゴム層(軟質板)
3 金属板(硬質板)
4 積層ゴム(積層体)
4a 内周面
5 プラグ
5a 外周面
10 第1空隙
11 介在部材
12 第2空隙
13 充填部材
X 一方向
Y 他方向
Z 積層方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟質板と硬質板とが交互に積層された積層体と、
該積層体に、その積層方向に貫通するように圧入されたプラグと、を備える免震装置の積層体からプラグを抜き出すプラグの抜出し方法であって、
前記免震装置に一方向にせん断力を作用させて前記プラグを塑性変形させた後、該せん断力を解除することにより前記プラグの外周面と前記積層体の内周面とを離反させる第1離反工程と、
該第1離反工程で前記プラグの外周面と前記積層体の内周面との間に形成された第1空隙に、介在部材を配設する配設工程と、
前記免震装置に前記一方向に交差する他方向にせん断力を作用させて前記プラグを塑性変形させた後、該せん断力を解除することにより前記プラグの外周面と前記積層体の内周面とを離反させる第2離反工程と、
前記プラグを前記積層体から前記積層方向に抜き出す抜出し工程と、を備え、
前記配設工程は、前記第2離反工程の前に行うことを特徴とするプラグの抜出し方法。
【請求項2】
請求項1記載のプラグの抜出し方法であって、
前記配設工程は、前記第1空隙に未硬化状態の樹脂材料を注入した後に硬化させることで、前記第1空隙に前記介在部材を配設することを特徴とするプラグの抜出し方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のプラグの抜出し方法であって、
前記第2離反工程で前記プラグの外周面と前記積層体の内周面との間に形成された第2空隙に、未硬化状態の樹脂材料を注入した後に硬化させることで充填部材を配設する充填工程を備え、
前記抜出し工程は、前記充填部材を前記プラグとともに前記積層体から前記積層方向に抜き出すことを特徴とするプラグの抜出し方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−131123(P2011−131123A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290611(P2009−290611)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】