説明

プラグ

【課題】パネルの表面に沿って滑らせて容易に移動させることができ、パネルの孔への装着を容易に行うことができるとともに、安価に提供できるプラグを提供する。
【解決手段】プラグ10の挿入部11の先端面13aには、半球状の突出部17が複数一体形成されている。プラグ10の車体パネルへの装着時においては、突出部17の先端が車体パネルに当てられる。従って、挿入部11の先端面13aと車体パネルの表面との間の摩擦力が小さく抑えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば車両の車体パネルに形成された孔を塞ぐために同孔に装着されるプラグに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のプラグとしては、例えば特許文献1に開示されたものがある。図6に示すように、このプラグ50は、車体パネルPの孔Hに挿入される有底短円筒状の挿入部51を備え、この挿入部51の基端側には鍔部52が形成されている。また、挿入部51の外周には、テーパ部53が一体形成されている。そして、挿入部51は、テーパ部53の弾性変形によって孔H内を通過可能であり、挿入部51が孔Hに押し込まれた状態において、テーパ部53と鍔部52とにより車体パネルPが挟持される。
【特許文献1】特開平8―086359号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、プラグを装着する孔Hが車体パネルPの外部から見えにくい位置にある場合、作業者は、プラグの挿入部の先端面を車体パネルPの表面に当接させ、この状態のプラグを車体パネルPの表面に沿って滑らせて孔Hに向かって移動させる。そして、プラグの挿入部の先端が孔Hに入ったことを手で感じ取ったときに、プラグの挿入部を孔Hに押し込んでプラグを孔Hに装着する。ところが、上記特許文献1に記載されたプラグ50の挿入部51の先端面を車体パネルPの表面に当接させた場合には、挿入部51の先端面全体が車体パネルPに当接する。このため、プラグ50を車体パネルPの表面に沿って滑らせたときに、プラグ50と車体パネルPとの間に大きな摩擦力が生じ易い。この摩擦力が大きいと、プラグ50を車体パネルPの表面に沿って円滑に滑らせることができず、車体パネルPの見えない位置にある孔への装着を容易に行うことができない。
【0004】
しかし、特許文献1のプラグ50は、高級脂肪酸アミド1.8〜8phrを配合したゴム配合物の加硫組成物であるため、摩擦係数が一般的な合成ゴムよりも小さく抑えられている。このため、プラグ50と車体パネルPとの間に生じる摩擦力の増大が抑制される。しかしながら、このプラグ50は、特殊な材料を含むゴム配合物からなるため、コストが高くなっている。
【0005】
この発明の目的は、パネルの表面に沿って滑らせて容易に移動させることができ、パネルの孔への装着を容易に行うことができるとともに、安価に提供できるプラグを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、パネルの孔に挿入される挿入部を備えたプラグにおいて、前記挿入部の先端面上には、摩擦力を低減する摩擦低減部を設けたことを特徴とする。
【0007】
この発明においては、プラグが、摩擦低減部をパネルの表面に押し当てた状態でパネルの表面に沿って滑らせて移動される。このため、プラグの先端面とパネルの表面との間の摩擦力が低減される。従って、プラグをパネルの表面に沿って円滑に滑らせて移動させることができ、パネルの孔への装着を容易に行うことができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記摩擦低減部は、前記先端面から突出させた複数の突出部であることを特徴とする。
この発明においては、挿入部の先端面から突出した複数の突出部により、パネルに対する接触面積が低減され、このため摩擦力が低減される。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記突出部を、前記挿入部に一体形成したことを特徴とする。
この発明においては、突出部をプラグとは別の部材によって形成する必要がないため、プラグの製作が容易となる。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は請求項3に記載の発明において、前記突出部を、半球状に形成したことを特徴とする。
この発明においては、半球状の突出部がパネルの表面にほぼ点接触するため、パネルに対する接触面積が有効に低減され、このため摩擦力が有効に低減される。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項2又は請求項3に記載の発明において、前記突出部を、前記挿入部の先端面から外周面に沿って基端側へ延びるように形成されたリブによって形成したことを特徴とする。
【0012】
この発明においては、パネルの孔に挿入部を押し込むときに、挿入部の外周側に設けられたリブが孔の内周に摺接するため、孔の内周面に対する接触面積が低減される。このため孔との間の摩擦力が小さく抑えられ、挿入部が容易に孔を通過する。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記摩擦低減部を、前記挿入部とは別部材によって構成したことを特徴とする。
この発明においては、挿入部の材質よりも摩擦係数が小さい部材によって、プラグとパネルとの間の摩擦力が低減される。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、プラグをパネルの表面に沿って滑らせて容易に移動させることができ、パネルの孔へのプラグの装着を容易に行うことができるとともに、安価に提供できる効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(第1実施形態)
次に、この発明を具体化した第1実施形態について図1〜図3を用いて説明する。
図1及び図3に示すプラグ10は、高分子弾性材により一体成形されている。この高分子弾性材は、例えばエチレンプロピレンゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム等の合成ゴムや、天然ゴムである。このプラグ10は、例えば車両の車体パネルPに形成された孔Hに挿入される短円筒状の挿入部11を備えている。その挿入部11は、孔Hの内周に接する周壁部12と、底壁部13と、周壁部12の内側に配置されるように底壁部13から上方へ突出する押圧部14とを備えている。押圧部14は、有蓋円筒状に形成されている。そして、底壁部13が、プラグ10の先端面13aを形成している。
【0016】
前記周壁部12の基端には、車体パネルPの表面(図3における上面)に圧接される鍔部15が形成されるとともに、周壁部12の外周には、車体パネルPの裏面に圧接される副鍔部16が形成されている。
【0017】
前記挿入部11の先端面13a上には、摩擦低減部としての半球状の突出部17が、等角度間隔に複数(この実施形態では4)一体形成されている。この突出部17の半径は、0.3〜1.5mmの範囲であることが好ましい。
【0018】
次に、上記のように構成されたこの実施形態のプラグ10を車体パネルPの孔Hに装着するときの作用について説明する。
車体パネルPにおいて作業者の見えない位置に形成された孔Hにプラグ10を装着する場合、図2に示すように、プラグ10は、突出部17を車体パネルPの表面に当てた状態で車体パネルPの表面に沿って滑らせて孔Hに向かって移動される。従って、各突出部17が車体パネルPの表面に点接触し、プラグ10と車体パネルPとの接触面積が小さく制限される。このため、プラグ10と車体パネルPとの間の摩擦力が小さく抑えられ、プラグ10が車体パネルPの表面に沿って円滑に移動する。
【0019】
プラグ10が孔Hに達すると、挿入部11の先端側が孔Hに入る。ここで、プラグ10が、作業者によって孔Hに押し込まれる。すると、副鍔部16及び周壁部12が挿入部11の中心側へ撓むように弾性変形し、挿入部11が孔Hに挿入される。そして、鍔部15が車体パネルPの表面に圧接されるまで挿入部11を孔Hに挿入すると、副鍔部16が孔Hを通過して車体パネルPの裏側において元の形状に復帰する。この状態において、図3に示すように、鍔部15と副鍔部16とにより車体パネルPが挟持されるとともに、鍔部15と副鍔部16とにより孔Hが塞がれる。
【0020】
以上詳述したこの実施形態のプラグ10は、以下の効果を発揮する。
(1) プラグ10の挿入部11の先端面13aに設けた複数の突出部17により、プラグ10と車体パネルPの表面との接触面積が小さく制限される。従って、プラグ10を車体パネルPの表面に沿ってプラグ10を移動させるときの摩擦力が低減され、プラグ10を円滑に滑らせて移動させることができる。従って、車体パネルPにおいて見えにくい位置にある孔Hへのプラグ10の装着を容易に行うことができる。
【0021】
(2) 突出部17を挿入部11に一体形成したため、この突出部17をプラグ10とは別の部材によって形成する必要がなく、プラグ10の製作が容易となる。
(3) エチレンプロピレンゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム等の合成ゴムや、天然ゴム等の一般的なゴム材料によりプラグ10を構成できるため、安価に提供できる。
【0022】
(4) 突出部17を半球状に形成したので、突出部17は車体パネルPの表面にほぼ点接触する状態となり、挿入部と車体パネルPとの間の摩擦力が有効に小さくなる。このため、プラグ10を車体パネルPの表面に沿って円滑に移動させて孔Hに装着することができる。
【0023】
(第2実施形態)
次に、この発明を具体化した第2実施形態について図4を用いて説明する。なお、この実施形態は、上記第1実施形態のプラグ10において、突出部17に代えてリブ18を設けたことのみが異なる。
【0024】
図4(a),(b)に示すように、挿入部11には、周壁部12及び副鍔部16の外周面に沿って延びるリブ18が、等角度間隔に複数(この実施形態では8)一体形成されている。リブ18は、1つおき毎に底壁部13の先端面13aまで延長されている。この実施形態においては、先端面13aまで延長されたリブ18の先端部によって摩擦低減部としての突出部が構成されている。従って、複数のリブ18の先端部が車体パネルPの表面を摺接するため、その接触面積が小さく制限される。このため、プラグ10と車体パネルPとの間の摩擦力が小さく抑えられ、プラグ10が車体パネルPの表面に沿って円滑に移動する。
【0025】
また、挿入部11を孔Hに押し込む際には、副鍔部16の外周面に形成されている複数のリブ18が孔Hの内周に摺接する。このため、挿入部11と孔Hの内周面との接触面積が小さくなり、摺動抵抗が低減される。
【0026】
以上詳述したこの実施形態のプラグ10は、前記第1実施形態の(1),(2)に記載した効果の他に、以下の効果を発揮する。
(5) リブ18により、挿入部11を孔Hに押し込むときの摺動抵抗を低減できるため、プラグ10を容易に孔Hに押し込むことができる。
【0027】
(第3実施形態)
次に、この発明を具体化した第3実施形態について図5を用いて説明する。
図5(a),(b)に示すように、プラグ10は、有底短円筒状の挿入部11を備え、前記押圧部14は設けられていない。前記挿入部11の先端面13aの突出部17は、先端面13aの外周縁に沿って等角度間隔に一体形成されるとともに、その中心部に1つが一体形成されている。
【0028】
この実施形態は、前記第1実施形態の(1),(2)に記載した効果の他に、以下の効果を発揮する。
(6) プラグ10が車体パネルPの表面に押し付けられたときに、先端面13aの中心部に形成した突出部17により、先端面13aの中央部が車体パネルPの表面に対し面接触的に接触することが防止される。従って、円形の先端面13aを有するプラグ10であっても、車体パネルPの表面に沿ってプラグ10を円滑に移動させて孔Hに装着することができる。
【0029】
(変形例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 第1実施形態において、突出部17の数を、3個、又は、5個以上とする。なお、突出部17の数が少ないほど、プラグ10と車体パネルPとの間の摩擦力がより小さく抑えられる。
【0030】
・ プラグ10を、高分子弾性材としてのプラスチックまたは熱可塑性エラストマー(動的架橋型熱可塑性エラストマーを含む)によって一体形成する。熱可塑性エラストマーによってプラグ10を形成した場合には、再成形が可能であるため、リサイクル性が向上する。
【0031】
・ 第1又は第2実施形態のプラグ10を、合成ゴムにより成形されるとともに周壁部12、底壁部13、鍔部15、副鍔部16及び突出部17を形成する第1部材と、プラスチック又は金属により成形されるとともに押圧部14を形成する第2部材とを、分解可能又は分解不能に合体させて構成する。
【0032】
また、第3実施形態のプラグ10における底壁部13の中央部分をプラスチック又は金属によって構成する。
・ この発明を、隅丸長方形、隅丸正方形、楕円形等の孔Hに装着されるプラグに実施する。
【0033】
・ 摩擦低減部を、プラグ10における挿入部11の先端面13aに被覆処理した別部材としてのシリコーン、PTFE(polytetrafluoroethylene ;ポリテトラフルオロエチレン)等の低摩擦係数材のフィルム、あるいは、コーティングや焼き付け処理により形成した被覆膜とする。
【0034】
・ 摩擦低減部を、別部材としての低摩擦係数材によって二色成形する。
・ 摩擦低減部を、プラグ10の射出成形時において挿入部11の先端面13aに埋め込まれた別部材としての金属、セラミック等の高硬度材のボールやピンとする。
【0035】
以下、前記各実施形態から把握される技術的思想を記載する。
(1) 請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載のプラグにおいて、高分子弾性材により一体成形されていることを特徴とするプラグ。
【0036】
(2) 請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載のプラグにおいて、前記挿入部は、短筒状であることを特徴とするプラグ。
(3) 請求項6に記載のプラグにおいて、前記摩擦低減部は、前記突出部の先端面に被覆した摩擦低減材であることを特徴とするプラグ。
【0037】
(4) 請求項6に記載のプラグに置いて、前記突出部は、前記挿入部に埋め込まれた摩擦低減材であることを特徴とするプラグ。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】(a)は第1実施形態のプラグを示す一部を断面化した側面図、(b)は同じく正面図。
【図2】プラグの装着作業を説明するための模式図。
【図3】パネルの孔に装着された状態のプラグを示す一部を断面化した側面図。
【図4】(a)は第2実施形態のプラグを示す一部を断面化した側面図、(b)は同じく正面図。
【図5】(a)は第3実施形態のプラグを示す一部を断面化した側面図、(b)は同じく正面図。
【図6】従来のプラグを示す縦断面図。
【符号の説明】
【0039】
10…プラグ、11…挿入部、13a…先端面、17…摩擦低減部としての突出部、18…同じくリブ、H…孔、P…パネルとしての車体パネル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネルの孔に挿入される挿入部を備えたプラグにおいて、
前記挿入部の先端面上には、摩擦力を低減する摩擦低減部を設けたことを特徴とするプラグ。
【請求項2】
前記摩擦低減部は、前記先端面から突出させた複数の突出部であることを特徴とする請求項1に記載のプラグ。
【請求項3】
前記突出部を、前記挿入部に一体形成したことを特徴とする請求項2に記載のプラグ。
【請求項4】
前記突出部を、半球状に形成したことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のプラグ。
【請求項5】
前記突出部を、前記挿入部の先端面から外周面に沿って基端側へ延びるように形成されたリブによって形成したことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のプラグ。
【請求項6】
前記摩擦低減部を、前記挿入部とは別部材によって構成したことを特徴とする請求項1に記載のプラグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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