説明

プラスチゾル組成物およびその成形品

【課題】優れた成形性を示し、機械的物性が優れた成形品を与えるプラスチゾル組成物を提供する。
【解決手段】重合体微粒子(P)を含むプラスチゾル組成物であって、25℃での粘度がせん断速度2.6sec-1において15Pa・s以下であり、その成形品の式(1)で表されるパラメーターI(T)が60℃〜100℃の範囲内において0.01以上であるプラスチゾル組成物;及びこのプラスチゾル組成物をスラッシュ成形法、ディップ成形法またはローテーション成形法により成形して得られる成形品。I(T)=G'(T)−5×106-0.0189T(1)[G'(T)はプラスチゾル組成物を成形して得た成形品の温度Tにおける貯蔵弾性率(Pa)、温度Tは摂氏温度(℃)]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引張強度や引裂強度等の機械的物性に優れた成形品を得る為の成形材料として有用なプラスチゾル組成物、およびそのプラスチゾル組成物を用いて得られる成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
重合体微粒子を可塑剤に分散してなるプラスチゾル組成物は、一般にペーストレジンと称され、現在、工業的に広く用いられている。具体的には、例えば、自動車用、床材用、壁紙用、鋼板用等の用途に使用するコーティング剤として、あるいはスラッシュ成形用、ディップ成形用、ローテーション成形用等の成型材料として用いられている。特に、重合体微粒子として塩化ビニル重合体微粒子を用いた塩化ビニル系プラスチゾル組成物が、広く使用されている。
【0003】
しかしながら、塩化ビニル樹脂は、低温で焼却すると猛毒物質であるダイオキシンが発生するなどの問題を有している。ダイオキシンの発生量を減らすためには、塩化ビニル系樹脂の使用量を削減することが有効とされている。そこで、重合体微粒子としてアクリル系樹脂微粒子を用いたアクリル系プラスチゾル組成物が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2等)。
【特許文献1】特開平8−73601号公報
【特許文献2】国際公開00/01748号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、アクリル系プラスチゾル組成物への要求性能はさらに高くなって来ている。特にスラッシュ成形法、ディップ成形法、ローテーション成形法等の成形法によって玩具やキャップ等の成形品を製造する場合は、プラスチゾル組成物が低粘度であることが要求されかつ成形品が優れた引張強度や引裂強度等の機械的物性を有することが要求される。
【0005】
すなわち、本発明の目的は、例えばスラッシュ成形法、ディップ成形法、ローテーション成形法などの成形材料に低粘度が要求されるような成形法において、優れた成形性を示し、かつ引張強度や引裂強度等の機械的物性が優れた成形品を与えることができるプラスチゾル組成物、およびその成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、特定の物性を有するプラスチゾル組成物を用いることによって優れた効果が得られることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、重合体微粒子(P)を含むプラスチゾル組成物であって、25℃での粘度がせん断速度2.6sec-1において15Pa・s以下であり、該プラスチゾル組成物を成形して得られる成形品の下記式(1)で表されるパラメーターI(T)が、60℃〜100℃の範囲内において、0.01以上であることを特徴とするプラスチゾル組成物である。
I(T)=G'(T)−5×106-0.0189T (1)
(ただし、G'(T)はプラスチゾル組成物を成形して得た成形品の温度Tにおける貯蔵弾性率(Pa)であり、温度Tは摂氏温度(℃)である)。
【0008】
さらに本発明は、上記プラスチゾル組成物を、スラッシュ成形法、ディップ成形法またはローテーション成形法により成形して得られる成形品である。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、成形前のプラスチゾル組成物の低粘度化と、成形後の成形品の特定温度範囲での粘弾性挙動の制御によって、型転写性、成形品肉厚のコントロール等について優れた成形性を示し、かつ引張強度や引裂強度等の機械的物性に優れた成形品を与えるプラスチゾル組成物を提供できる。本発明は、工業的な面で非常に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明において、パラメーターI(T)は、まずプラスチゾル組成物を成形して得られる成形品の貯蔵弾性率G'(T)を測定し、その測定値を用いて前記式(1)に従って計算して得たものである。
【0011】
プラスチゾル組成物を成形して得られる成形品の動的粘弾性挙動を表わす貯蔵弾性率G'(T)は、温度に依存する。したがって、温度Tで補正したものがパラメーターI(T)である。貯蔵弾性率G'(T)は、具体的には、市販の動的粘弾性率測定装置[(株)ユービーエム製、商品名Rheosol−G3000]を用いて測定した。測定条件の詳細は後述する。
【0012】
本発明において、プラスチゾル組成物の25℃での粘度は、せん断速度2.6sec-1において15Pa・s以下であり、プラスチゾル組成物を成形して得られる成形品の式(1)で表されるパラメーターI(T)は60℃〜100℃の範囲内において、0.01以上である。これにより、プラスチゾル組成物の金型内での流動性と、成形品の引張強度、引裂強度等の機械的物性が良好となり、かつスラッシュ成形法、ディップ成形法、ローテーション成形法等におけるプラスチゾル組成物の成形性が向上し、外観が良好な成形品が得られる。
【0013】
プラスチゾル組成物の25℃での粘度がせん断速度2.6sec-1において15Pa・sを超える場合は、プラスチゾル組成物の金型内での流動性が劣り、型転写性が悪く、成形品の肉厚のコントロールが困難となり、成形性が劣る成形材料となる。また、成形品のパラメーターI(T)が60℃〜100℃の範囲内において0.01未満の場合は、成形品の引張強度や引裂強度等の機械的物性が十分でなく、成形時(特に成形品を金型から脱型する際)に成形品が破断し易くなる。
【0014】
例えば、スラッシュ成形法、ディップ成形法、ローテーション成形法等の成形法においては、金型内にプラスチゾル組成物を投入し、160℃〜200℃程度の温度で加熱成形する。そして、成形品を金型から脱型する際は、生産性および成形品の変形のし易さを考慮して、成形品を60℃〜100℃の範囲まで冷却してから脱型する。しかしながら、成形品を脱型する際に、パラメーターI(T)が60℃〜100℃の範囲内(特に金型から成形品を脱型する際の温度)において0.01以下であると、成形品の機械的物性が十分ではなく、脱型時に成形品が破断し易くなる。
【0015】
本発明者らは以上のような知見を得た上で、成形前のプラスチゾル組成物の低粘度化と、成形後の成形品の特定温度範囲での粘弾性挙動の制御によって、型転写性、成形品肉厚のコントロール等について優れた成形性を示し、かつ引張強度や引裂強度等の機械的物性に優れた成形品を与えるプラスチゾル組成物を見い出したのである。
【0016】
本発明において、プラスチゾル組成物の25℃での粘度は、せん断速度2.6sec-1において15Pa・s以下であり、12Pa・s以下が好ましく、10Pa・s以下がより好ましく、8Pa・s以下が特に好ましい。
【0017】
成形品のパラメーターI(T)は、60℃〜100℃の範囲内において、0.01以上であり、1以上が好ましく、10以上がより好ましい。パラメーターI(T)の上限値については特に制限されない。また、60℃未満あるいは100℃を超える温度においては、パラメーターI(T)は特に制限されない。これは、60℃〜100℃の範囲外の温度における粘弾性挙動は、通常は成形に影響を及ぼさないからである。
【0018】
パラメーターI(T)は、後に詳述するように、例えばプラスチゾル組成物中の重合体微粒子(P)の種類および添加量、あるいは、プラスチゾル組成物中の特定の液状ブロック化ウレタンプレポリマー等の種類および添加量などにより自由に制御できる。
【0019】
重合体微粒子(P)の種類は特に制限されず、プラスチゾル組成物が本発明の物性を示すように適宜選定すればよい。特に、重合体微粒子(P)として、アクリル系重合体微粒子と塩化ビニル重合体微粒子を併用すると、60℃〜100℃の範囲内の温度TにおけるパラメーターI(T)が0.01以上となり易いので好ましい。
【0020】
さらに、重合体微粒子(P)として、体積平均一次粒子径が10μm以上300μm未満のアクリル系重合体微粒子と、体積平均一次粒子径が0.1μm以上10μm未満の塩化ビニル重合体微粒子とを併用することが好ましい。この場合、成形品のマトリックス相が塩化ビニル重合体により形成され、60℃〜100℃の範囲内の温度TにおけるパラメーターI(T)がさらに向上する傾向にある。また、一次粒子径が比較的大きいアクリル系重合体微粒子と、一次粒子径が比較的小さい塩化ビニル重合体微粒子を併用することで、プラスチゾル組成物の25℃での粘度がせん断速度2.6sec-1において15Pa・s以下になり易くなり、金型内での流動性が向上し、型転写性、成形品の肉厚のコントロール等の成形性が向上すると共に、可塑剤を減量することが可能となり、成形品の機械的物性が向上する。
【0021】
アクリル系重合体微粒子の体積平均一次粒子径の下限は、プラスチゾル組成物の粘度が低下し、可塑剤の減量が可能となり、成形品の機械的物性を向上させることが容易になる点から、20μm以上が好ましく、30μm以上がより好ましい。また、その上限は、プラスチゾル組成物の貯蔵中でのアクリル系重合体微粒子の沈降を防ぐ点から、250μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましい。
【0022】
アクリル系重合体微粒子の重量平均分子量は、特に制限されない。プラスチゾル組成物の貯蔵安定性の点からは、30万以上が好ましく、50万以上がより好ましい。
【0023】
アクリル系重合体微粒子とは、アクリル系モノマーを主成分として得た重合体からなる微粒子である。代表的なアクリル系モノマーとしては、(メタ)アクリレート類が挙げられる。具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート等の直鎖アルキルアルコールの(メタ)アクリレート類;シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の環式アルキルアルコールの(メタ)アクリレート類;などが挙げられる。中でも、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートは、容易に入手することができ、工業的な実用化の点で好ましい。ただし、これらモノマーに限定されるものではない。なお「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートとメタクリレートの総称である。
【0024】
さらに、上記以外のモノマーを、単独であるいは上記モノマーと併用することもできる。そのモノマーの例としては、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、メタクリル酸2−サクシノロイルオキシエチル、メタクリル酸2−マレイノイルオキシエチル、メタクリル酸2−フタロイルオキシエチル、メタクリル酸2−ヘキサヒドロフタロイルオキシエチル等のカルボキシル基含有モノマー;アリルスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー;アセトアセトキエチル(メタ)アクリレート等のカルボニル基含有(メタ)アクリレート類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート類;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリレート類;N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート類;アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド等のアクリルアミドおよびその誘導体;ウレタン変性アクリレート類;エポキシ変性アクリレート類;シリコーン変性アクリレート類;などが挙げられる。これらモノマーは、用途に応じて使い分けることが可能である。
【0025】
アクリル系重合体微粒子の製造方法は特に限定されない。例えば、乳化重合を行った後で噴霧乾燥する方法、微細懸濁重合法、懸濁重合法など、公知の方法を用いることができる。
【0026】
塩化ビニル重合体微粒子としては、従来よりプラスチゾル組成物に使用可能なことが知られている各種の塩化ビニル重合体微粒子をそのまま使用することができる。塩化ビニル重合体微粒子の体積平均一次粒子径は、プラスチゾル組成物の粘度および流動性の点から、0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましく、0.3μm以上が特に好ましい。また、塩化ビニル重合体により成形品のマトリックス相を形成する点から、10μm未満が好ましく、8μm以下がより好ましく、5μm以下が特に好ましい。
【0027】
塩化ビニル重合体微粒子の重量平均分子量は、特に制限されない。成形品の機械的物性の点からは、5万以上が好ましく、10万以上がより好ましい。
【0028】
塩化ビニル重合体微粒子とは、塩化ビニルの単独重合体または塩化ビニルと他のビニル単量体との共重合体からなる微粒子である。塩化ビニルと共重合し得るビニル単量体の例としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸またはその無水物;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類;マレイン酸エステル、フマル酸エステル、桂皮酸エステル等の不飽和カルボン酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルアミルエーテル、ビニルフェニルエーテル等のビニルエーテル類;エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン等のモノオレフィン類;塩化ビニリデン;スチレン、スチレン誘導体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル;などが挙げられる。
【0029】
塩化ビニル重合体微粒子の製造方法は特に限定されない。例えば、乳化重合を行った後で噴霧乾燥する方法、微細懸濁重合法、懸濁重合法など、公知の方法を用いることができる。
【0030】
アクリル系重合体微粒子と塩化ビニル重合体微粒子の混合比率は、特に制限されない。特にプラスチゾル組成物の粘度の点から、アクリル系重合体微粒子/塩化ビニル重合体微粒子=10〜90/90〜10質量%の範囲内の比率にて混合することが好ましい。
【0031】
重合体微粒子(P)としてアクリル系重合体微粒子を用いる場合は、さらに、末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの遊離イソシアネート基をブロック化した液状ブロック化ウレタンプレポリマーとヒドラジド化合物、および/または環状構造を有するアミンからなる群より選ばれる一種以上の成分を配合することによって、60℃〜100℃の範囲内の温度TにおけるパラメーターI(T)を0.01以上に調整することもできる。
【0032】
液状ブロック化ウレタンプレポリマーを配合したプラスチゾル組成物の場合は、アクリル系重合体微粒子は何らかの粒子構造を有することが望ましい。好ましい粒子構造の例としては、組成が異なる複数の重合体層からなるコアシェル構造または多段構造、あるいは重合体組成が連続的に変化するグラディエント型構造が挙げられる。これらの粒子構造を効果的に用いることにより、プラスチゾル組成物中での貯蔵安定性が向上し易くなる。
【0033】
アクリル系重合体微粒子は、乾燥粉体としての性状や構造は問わない。例えば重合で得られた一次粒子が多数集合して凝集粒子(二次粒子)を形成していても構わないし、またそれ以上の高次構造も可能である。ただし、このような凝集構造の場合、一次粒子同士が強固に結合せず、緩く凝集している状態が好ましく、これにより可塑剤中で一次粒子が均一に分散可能となる為である。
【0034】
液状ブロック化ウレタンプレポリマーは、代表的には、1分子当たり2個以上の水酸基を有するポリオールにポリイソシアネートを反応させて末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーとし、さらにその遊離のイソシアネート基をブロック化剤と反応せしめて得られる液状のプレポリマーである。
【0035】
液状ブロック化ウレタンプレポリマーの合成に用いるポリオールとしては、例えば、1,3−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等の2価アルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、モノ、ジまたはトリエタノールアミン、ジグリセリン、ソルビトール、庶糖等の単独若しくは混合物にプロピレンオキシド若しくはエチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加重合させたポリオール、ヒマシ油等が挙げられる。さらに、アジピン酸、無水フタル酸等の二塩基酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチロールプロパン等のグリコールやトリオールとの脱水縮合反応により得られるポリエステルポリオール、ε−カプロラクタムの開環重合により得られるラクトン系ポリエステルポリオール、ポリオールのホスゲン化物、ジフェニルカーボネートによるエステル交換法で合成されるポリカーボネートジオール、テトラヒドロフランの開環重合により得られるポリブチレングリコール、アクリルポリオール、ポリブタジエン系ポリオール等が挙げられる。
【0036】
液状ブロック化ウレタンプレポリマーの合成に用いるポリイソシアネートとしては、従来より知られる芳香族、脂肪族または脂環族の有機ポリイソシアネートを使用することができる。具体例としては、ナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等の有機ポリイソシアネート、もしくは、これらのビュレット化物、イソシアヌレート化物またはカルボジイミド変性体、およびこれらの混合物等が挙げられる。これらポリイソシアネートの中で、芳香族ジイソシアネートは、ブロック剤の解離温度が低く、かつ反応速度が大きいという利点があるので好ましい。
【0037】
液状ブロック化ウレタンプレポリマーにおける末端イソシアネート基の含有量は、架橋性が向上し、60℃〜100℃の範囲内の温度TにおけるパラメーターI(T)が0.01以上になる点から、ウレタンプレポリマー中1.0質量%以上が好ましく、1.5質量%以上がより好ましい。含有量の上限については、発泡現象の点から、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましい。
【0038】
液状ブロック化ウレタンプレポリマーの合成に用いるブロック化剤としては、例えば、フェノール系、ラクタム系、オキシム系、活性メチレン系、アルコール系、ベンゾトリアゾール、メルカプタン系、酸アミド系、イミド系、アミン系、イミダゾール系、尿素系のブロック化剤を使用できる。フェノール系ブロック化剤の例としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、エチルフェノール等が挙げられる。ラクタム系ブロック化剤の例としては、カプロラクタム、バレロラクタム、ブチロラクタム、プロピオラクタム等が挙げられる。オキシム系ブロック化剤の例としては、ホルムアミドオキシム、アセトアミドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサノンオキシム等が挙げられる。活性メチレン系ブロック化剤の例としては、マロン酸ジエチル、マロン酸ジメチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトン等が挙げられる。アルコール系ブロック化剤の例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、2−エチルヘキサノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。アミン系化合物の例としては、ジシクロヘキシルアミン、3,5−ジメチルピラゾールが挙げられる。これらのうち、好ましいものは、オキシム系、フェノール系、活性メチレン系、アミン系のブロック化剤であり、特に好ましいものはオキシム系ブロック化剤である。
【0039】
液状ブロック化ウレタンプレポリマーの製造に際して、粘度が上昇する場合には、予め粘度低下剤として可塑剤を添加してもよい。
【0040】
本発明において、ヒドラジド化合物、環状構造を有するアミンは、特に制限されない。ヒドラジド化合物の例としては、アジピン酸ジヒドラジド、セパチン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントイン、エイコサン二酸ジヒドラジド、ハイドロキノンジグリコール酸ジヒドラジド、レゾルシノールジグリコール酸ジヒドラジド、4,4'−エチリデンビスフェノールジグリコール酸ジヒドラジド等が挙げられる。環状構造を有するアミンの例としては、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ジアミノシクロヘキサン、ジ−(アミノメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0041】
ヒドラジド化合物、環状構造を有するアミンの使用量は、上記遊離イソシアネート含有量に対し0.8〜2.0当量となるように選定すればよい。
【0042】
重合体微粒子[特にアクリル系重合体微粒子]と液状ブロック化ウレタンプレポリマーの混合比率は、特に制限されない。特に60℃〜100℃の範囲内の温度TにおけるパラメーターI(T)が0.01以上となる点から、アクリル系重合体微粒子/液状ブロック化ウレタンプレポリマー=10〜90/90〜10質量%の範囲内の比率にて混合することが好ましい。
【0043】
本発明のプラスチゾル組成物には、各種の可塑剤および、用途に応じて各種の添加剤または充填剤を配合できる。
【0044】
本発明のプラスチゾル組成物に用いる可塑剤は特に限定されず、公知の可塑剤から適宜選択して使用すれば良い。その具体例としては、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジ−n−オクチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジイソデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート等のフタル酸エステル系可塑剤;ジメチルアジペート、ジブチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジヘキシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソノニルアジペート、ジブチルジグリコールアジペート等のアジピン酸エステル系可塑剤;トリメチルホスフェート、トリエチルオスフェート、トリブチルホスフェート、トリ−2−エチルヘキシルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート等のリン酸エステル系可塑剤;トリ−2−エチルヘキシルトリメリテート等のトリメリット酸エステル系可塑剤;ジメチルセバケート、ジブチルセバケート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート等のセバチン酸エステル系可塑剤;ポリ−1,3−ブタンジオールアジペート等の脂肪族系ポリエステル可塑剤;エポキシ化大豆油等のエポキシ化エステル系可塑剤;アルキルスルホン酸フェニルエステル等のアルキルスルホン酸フェニルエステル系可塑剤;脂環式二塩基酸エステル系可塑剤;ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテル系可塑剤;クエン酸アセチルトリブチル等が挙げられる。
【0045】
可塑剤は、必要に応じて1種で又は2種以上を混合して用いることができ、またその配合量も所望に応じて適宜変更することができる。
【0046】
可塑剤の配合量は、重合体微粒子(P)100質量部に対して、35〜150質量部が好ましく、45〜100質量部がより好ましい。
【0047】
添加剤、充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、バライタ、クレー、コロイダルシリカ、マイカ粉、珪砂、珪藻土、カオリン、タルク、ベントナイト、ガラス粉末、酸化アルミニウム等の無機フィラー類、酸化チタン、カーボンブラック等の顔料、ミネラルターペン、ミネラルスピリット等の希釈剤、さらに消泡剤、防黴剤、防臭剤、抗菌剤、界面活性剤、滑剤、紫外線吸収剤、香料、発泡剤、レベリング剤、接着剤等を必要に応じて配合できる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。各例中、「部」は「質量部」を意味する。また、各評価は以下の方法により実施した。
【0049】
[重量平均分子量]
GPC(ゲル・パーミエイション・クロマトグラフィ)法により、以下の条件で測定したポリスチレン換算値を、重合体の重量平均分子量とした。
・装置:東ソー(株)製、高速GPC装置HLC−8020
・カラム:東ソー(株)製、TSKgelGMHXLを3本直列に連結
・オーブン温度:38℃
・溶離液:テトラヒドロフラン
・試料濃度:0.4質量%
・流速:1mL/分
・注入量:0.1mL
・検出器:RI(示差屈折計)。
【0050】
[重合体微粒子の体積平均一次粒子径]
レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所製LA−910)を用いて、水を分散媒として、重合体微粒子の体積平均一次粒子径を測定した。なお、重合体微粒子が二次凝集している場合は、超音波を5分照射した後に測定を行った。
【0051】
[成形品のパラメーターI(T):動的粘弾性]
プラスチゾル組成物をフッ素樹脂で処理された鉄板(厚さ約1mm)上に約2mm厚になるようにキャストし、これをギヤーオーブン内で160℃で10分加熱し、シート状成形体を作製した。このシート状成形体を幅10mm×長さ20mmの短冊形状に切り出し、動的粘弾性率測定装置[(株)ユービーエム製、商品名Rheosol−G3000]を用い、以下の条件で、60℃〜100℃の範囲にわたって動的粘弾性の測定を行い、温度Tの貯蔵弾性率G'(T)(単位Pa)を得た。そして、前記式(1)に従い、貯蔵弾性率G'からパラメーターI(T)を算出した。なお、測定時の捻り角度は、材料の硬さの変化により自動調整を行った。パラメーターI(T)は以下の基準により評価した。
・測定治具:パラレルプレート(直径18mm)
・測定治具間の上下ギャップ:1mm
・周波数:1Hz
・昇温速度:4℃/min
・掴み部:各5mm
「○」:パラメーターI(T)が0.01以上。
「×」:パラメーターI(T)が0.01未満。
【0052】
[プラスチゾル組成物の粘度]
プラスチゾル組成物を25℃の恒温槽で3時間保温した後、BL型粘度計(トキメック(株)製、ローターNo.4)を用いて、回転数12rpm(せん断速度2.6sec-1)で、1分後の粘度(単位mPa・s)を測定し、以下の基準により評価した。
「◎」:8Pa・s以下。
「○」:8Pa・s超、15Pa・s以下。
「×」:15Pa・s超。
【0053】
[成形品の金型転写性]
得られた成形品の外観を、以下の基準により目視により評価した。
「○」:金型の細部まで転写性されている。
「×」:金型の細部まで転写されておらず、表面に凹凸が見られる。
【0054】
[成形品の肉厚]
得られた成形品の肉厚を、以下の基準により目視により評価した。
「○」:肉厚が均一である。
「×」:肉厚が不均一である。
【0055】
[成形品の脱型性]
金型から成形品を脱型する際の状態を、以下の基準により評価した。
「○」:金型から成形品を脱型する際、成形品に破断が無く脱型が容易である。
「×」:金型から成形品を脱型する際、成形品に破断が生じる。
【0056】
[調製例1:アクリル系重合体微粒子(M1)の調製]
冷却管、温度計、撹拌機および窒素導入管を備えた2リットルのフラスコに、純水800部を入れ、さらにポリビニルアルコール(けん化度88%、重合度1000)3部を溶解させた。次いで、メチルメタクリレート260部およびi−ブチルメタクリレート140部に対してアゾビスイソブチロニトリル0.2部を溶解させて得た単量体溶液を投入し、窒素雰囲気下、450rpmで撹拌しながら1時間で60℃まで昇温し、さらに60℃で2時間加熱し、95℃に昇温して2時間加熱し、120℃に昇温して残存モノマーを水と共に留去して懸濁重合を終了し、スラリーを得た。このスラリーを、濾過、洗浄し、50℃の熱風乾燥機で乾燥して、体積平均一次粒子径が80μm、重量平均分子量が60万の重合体微粒子(M1)を得た。組成および物性を表1に示す。
【0057】
[調製例2:アクリル系重合体微粒子(M2)の調製]
ポリビニルアルコールの量を5部、撹拌速度を700rpmに変更したこと以外は、調製例1と同様にして、体積平均一次粒子径が30μm、重量平均分子量が65万の重合体微粒子(M2)を得た。組成および物性を表1に示す。
【0058】
[調製例3:アクリル系重合体微粒子(M3)の調製]
温度計、窒素ガス導入管、攪拌棒、滴下漏斗および冷却管を備えた2リットルの4つ口フラスコに、純水500部を入れ、30分間十分に窒素ガスをバブリングし、純水中の溶存酸素を置換した。次に、窒素ガスをフローに変えた後、メチルメタクリレート16.3部およびn−ブチルメタクリレート12.5部を入れ、200rpmで攪拌しながら80℃に昇温した。内温が80℃に達した時点で、純水10部に過硫酸カリウム0.25部を溶解して得た溶液をフラスコ内に一度に添加し、重合を開始させた。その後、80℃にて60分攪拌し、シード粒子分散液を得た。
【0059】
次いで、シード粒子分散液に、メチルメタクリレート175.0部と、n−ブチルメタクリレート175.0部と、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム2.50部と、純水125.0部とを混合攪拌して乳化して得たモノマー乳化液を3.5時間かけて滴下し、引き続き80℃にて1時間攪拌して、コア粒子の重合体分散液を得た。
【0060】
次いで、このコア粒子の重合体分散液に、メチルメタクリレート142.5部と、メタクリル酸7.5部と、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム2.50部と、純水125.0部とを混合攪拌して乳化して得たモノマー乳化液を1.5時間かけて滴下し、引き続き80℃にて1時間攪拌して、コアシェル型重合体分散液を得た。
【0061】
このコアシェル型重合体分散液を室温まで冷却し、スプレードライヤによって、入口温度150℃、出口温度65℃で噴霧乾燥して、体積平均一次粒子径が0.8μm、重量平均分子量が61万のアクリル系重合体微粒子(M3)を得た。組成および物性を表1に示す。
【0062】
【表1】

【0063】
表1中の略号
・「MMA」:メチルメタクリレート
・「iBMA」:i−ブチルメタクリレート
・「nBMA」:n−ブチルメタクリレート
・「MAA」:メタクリル酸。
【0064】
[調製例4:塩化ビニル重合体微粒子(V1)の調製]
予め脱気したステンレス製撹拌機付き耐圧容器に、塩化ビニル単量体100部、イオン交換水300部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部、セチルアルコール1部およびジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート0.05部を仕込み、高圧式ホモジナイザーを用いて90分間均質化した。次いで60℃に昇温して重合を開始し、重合圧力が降下した時点で未反応の単量体を除去し、重合を終了させて、塩化ビニル重合体分散液を得た。この分散液をスプレードライヤによって、入口温度160℃、出口温度50℃の条件で噴霧乾燥して、体積平均一次粒子径が1.1μm、重量平均分子量が15万の塩化ビニル重合体微粒子(V1)を得た。組成および物性を表2に示す。
【0065】
[調製例5:塩化ビニル重合体微粒子(V2)の調製]
予め脱気したステンレス製撹拌機付き耐圧容器に、けん化度88%のポリビニルアルコール4質量%水溶液0.315部と、けん化度78%のポリビニルアルコール4質量%水溶液0.035部とを水140部に溶解して得た溶液を仕込んだ。さらに、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート0.037部および3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド0.019部を添加した。次いで容器内を脱気し、塩化ビニル単量体100部を仕込み、60℃に昇温して重合を開始し、重合圧が降下した時点で未反応単量体を除去し、重合を終了させて、重合体のスラリーを得た。さらに、このスラリーを脱水、乾燥して、体積平均一次粒子径が30μm、重量平均分子量が10万の塩化ビニル樹脂微粒子(V2)を得た。組成および物性を表2に示す。
【0066】
【表2】

【0067】
[調製例6:液状ブロック化ウレタンプレポリマー(U1)の調製]
攪拌機、温度計および窒素導入管を備えたフラスコに、トリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業(株)製、商品名コロネートT−100)226.0部、重量平均分子量1000のポリブチレングリコール(保土ヶ谷化学工業(株)製、商品名PTG−100)466.5部、重量平均分子量400のポリプロピレングリコール変性グリセリントリオール(旭電化(株)製、商品名G−300)50.0部、および、ジブチル錫ジラウレート0.3部を加え、窒素気流下50℃〜80℃で攪拌して反応させた。さらに、この反応混合物に、メチルエチルケトオキシム(宇部興産(株)製、商品名MEKオキシム)118.0部を滴下して反応させた。そして、赤外吸収スペクトル測定による2260cm-1のイソシアネート基の吸収ピークが観測されなくなるまで反応混合物を反応させて、液状ブロック化ウレタンプレポリマー(U1)を得た。ウレタンプレポリマー(U1)の末端イソシアネート基の含有量は5.4質量%であった。組成を表3に示す。
【0068】
【表3】

【0069】
表3中の略号
・「TDI」:トリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業(株)製、商品名コロネートT−100)
・「PTMG」:ポリブチレングリコール(重量平均分子量1000、保土ヶ谷化学工業(株)製、商品名PTG−1000)
・「G−300」:ポリプロピレングリコール変性グリセリントリオール(重量平均分子量400、旭電化(株)製、商品名G−300)
・「MEKO」:メチルエチルケトオキシム(宇部興産(株)製、商品名MEKオキシム)
[実施例1]
アクリル系重合体微粒子(M1)55部、塩化ビニル重合体微粒子(V1)45部、可塑剤としてクエン酸アセチルトリブチル(大日本インキ化学工業(株)製、商品名モノサイザーATBC)55部、および、熱安定剤(旭電化(株)製、商品名アデカスタブSC−71)1.5部を計量し、真空ミキサー((株)シンキー製、商品名ARV−200)に投入した。これを大気圧(760mmHg)で10秒間混合し、さらに20mmHgに減圧して50秒間混合し、均一なアクリル系プラスチゾル組成物を得た。このプラスチゾル組成物の25℃での粘度は、せん断速度2.6sec-1において、3120mPa・sであった。
【0070】
得られたプラスチゾル組成物をキャスト成形し、その成形品の60℃、80℃、100℃の各温度における貯蔵弾性率G'(T)を測定し、パラメーターI(T)を計算して求めたところ、各々、5.1×106(60℃)、9.4×105(80℃)、5.2×105(60℃)であった。
【0071】
また、得られたプラスチゾル組成物を人型のスラッシュ成形用金型内に投入し、160℃に加熱したオイルバスに10秒間浸漬した。その後、オイルバスから金型を引き上げ、余剰の未硬化のプラスチゾル組成物を金型から排出した。この排出後、再び金型を160℃に加熱したオイルバスに浸漬し、5分間本硬化させた。その後、金型を引き上げ、水を張った冷却槽にて金型を冷却し、成形品の温度が60℃〜100℃の範囲内になったところで金型から脱型して、人型の成形品を得た。その際の転写性、肉厚、脱型性について評価した。組成および評価結果を表4に示す。
【0072】
[実施例2]
表4記載の配合に変更したこと以外は実施例1と同様にして、均一なプラスチゾル組成物を製造し、成形し、評価した。組成および評価結果を表4に示す。
【0073】
[実施例3]
プラスチゾル組成物の配合成分として、アクリル系重合体微粒子(M3)50部、液状ブロック化ウレタンプレポリマー(U1)50部、硬化剤として3,3'−ジメチルメチレンジ(シクロヘキシルアミン)(エアープロダクツジャパン(株)製、商品名アンカミン2049)8.2部、および、可塑剤としてクエン酸アセチルトリブチル50部を用い、熱安定剤は使用しなかったこと以外は、実施例1と同様にして均一なプラスチゾル組成物を製造し、成形し、評価した。組成および評価結果を表4に示す。
【0074】
[比較例1〜3]
表4記載の配合に変更したこと以外は実施例1と同様にして、均一なプラスチゾル組成物を製造し、成形し、評価した。組成および評価結果を表4に示す。
【0075】
[各例の考察]
実施例1および2は、重合体微粒子(P)としてアクリル系重合体微粒子と塩化ビニル重合体微粒子を用いた例であり、60℃〜100℃の範囲内の代表的な温度におけるパラメーターI(T)は0.01以上である。これらの例においては、プラスチゾル組成物は低粘度で、成形品の金型転写性は良好で、成形品肉厚も均一であり、金型から成形品を脱型する際の破断もなく、脱型性が極めて優れていた。
【0076】
実施例3は、重合体微粒子(P)としてアクリル系重合体微粒子を用い、さらに液状ブロック化ウレタンプレポリマーを配合した例であり、60℃〜100℃の範囲内の代表的な温度におけるパラメーターI(T)は0.01以上である。この例においては、プラスチゾル組成物は低粘度で、成形品の金型転写性は良好で、成形品肉厚も均一であり、金型から成形品を脱型する際の破断もなく、脱型性が極めて優れていた。
【0077】
比較例1は、体積平均一次粒子径80μmのアクリル系重合体微粒子(M1)の代わりに体積平均一次粒子径0.8μmのアクリル系重合体微粒子(M3)を使用した点が実施例1と異なる例である。この例においては、混合時にプラスチゾル組成物の粘度が急激に上昇し、湿粉状態となり、粘度を測定することができず、また成形することもできなかった。
【0078】
比較例2は、体積平均一次粒子径80μmのアクリル系重合体微粒子(M1)の代わりに体積平均一次粒子径0.8μmのアクリル系重合体微粒子(M3)を使用し、かつ、体積平均一次粒子径が1.1μmの塩化ビニル重合体微粒子(V1)の代わりに体積平均一次粒子径が30μmの塩化ビニル樹脂微粒子(V2)を使用した点が実施例1と異なる例であり、60℃〜100℃の範囲内の80℃、100℃におけるパラメーターI(T)は0.01未満である。この例においては、プラスチゾル組成物は低粘度で、成形品の金型転写性は良好で、成形品肉厚も均一であった。しかし、金型から成形品を脱型する際に破断が生じ、金型から完全に成形品を脱型することができなかった。
【0079】
比較例3は、体積平均一次粒子径0.8μmのアクリル系重合体微粒子(M3)のみを重合体微粒子(P)として使用した点が実施例1と異なる例であり、60℃〜100℃の範囲内の代表的な温度におけるパラメーターI(T)は0.01未満である。この例においては、プラスチゾル組成物の粘度が高く、成形品の金型転写性は細部までは転写されておらず、表面に凹凸が見られ、成形品肉厚も不均一であった。さらに金型から成形品を脱型する際に破断が生じ、完全に成形品を脱型することはできなかった。
【0080】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合体微粒子(P)を含むプラスチゾル組成物であって、25℃での粘度がせん断速度2.6sec-1において15Pa・s以下であり、該プラスチゾル組成物を成形して得られる成形品の下記式(1)で表されるパラメーターI(T)が、60℃〜100℃の範囲内において、0.01以上であることを特徴とするプラスチゾル組成物。
I(T)=G'(T)−5×106-0.0189T (1)
(ただし、G'(T)はプラスチゾル組成物を成形して得た成形品の温度Tにおける貯蔵弾性率(Pa)であり、温度Tは摂氏温度(℃)である。)
【請求項2】
請求項1記載のプラスチゾル組成物を、スラッシュ成形法、ディップ成形法またはローテーション成形法により成形して得られる成形品。

【公開番号】特開2006−36844(P2006−36844A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−215838(P2004−215838)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】