説明

プラスチックキャップ

【課題】液切れ性が一層高められ、容器内容液の注ぎ出しを繰り返し行った場合にも安定した液切れ性を有していると共に、上蓋を開放する場合にクチバシ部が指に当たることによって使用者に与える不快感が防止され、しかも成形性にも優れているプラスチックキャップを提供する。
【解決手段】キャップ本体1の頂板部5の上面に容器内容液の注ぎ出し用案内となる注出突部15が設けられており、注出突部15の上端には、径方向外方に突出しており且つ上面から見て中心部に頂点を有している全体として三角形状のクチバシ部30が形成され、クチバシ部30の側断面は、上端よりも低い位置に径方向外方に最も突出した最突出部60を有しており、最突出部60から下方の領域には、最突出部60を含む下に凸の曲率面63が形成され、最突出部60から上方に延びている面が、キャップを45度傾斜したとき、最突出部60よりも上方の領域に径方向外方に最も突出したシフト突出部70が形成されるような形状を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックキャップに関するものであり、より詳細には、容器内容液の注ぎ出し用案内となる注出突部の上端に、外方に突出したクチバシ部が注ぎ口として形成されている注出突部付キャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
容器内容液の注ぎ出し用案内となる注出突部を備えたプラスチックキャップは、広く使用されている。このような注出突部付プラスチックキャップの代表的なものは、例えば容器口部に固定されるキャップ本体と、該キャップ本体に開閉可能にヒンジ連結された上蓋とからなり、該キャップ本体に注出突部が設けられた構造を有している。即ち、キャップ本体は、筒状側壁と、該筒状側壁の上端を閉じるようにして形成されている頂板部とを有しており、この頂板部の上面に注出突部が形成されており、頂板部の注出突部で囲まれた部分には、無端状のスコアで区画された開口予定部が形成されている。容器口部に固定されているキャップ本体の上記スコアを引き裂くことにより開口が形成され、この開口を通して容器内容液の注ぎ出しを行うと、注ぎ出された液は、注出突部の壁面に沿って流れ、飛び散り等を生じることなく、スムーズに内容液の注ぎ出しが行われることとなる。
【0003】
上記のような注出突部においては、一般に、その上端の少なくとも一部は、注出突部の付け根部分よりも外方に突出して注ぎ口となっており、該注ぎ口では、その上端部分が、ラッパ状に外方に湾曲しているが、最近では、注出突部の上端に、外方に大きく突出したクチバシ部を形成し、このようなクチバシ部を注ぎ口とすることが提案されており、クチバシ部の形成により液切れ性が高められることが知られている(特許文献1、2参照)。
【0004】
しかるに、特許文献1,2のように注出突部にクチバシ部が設けられたプラスチックキャップでは、閉じられた上蓋を開けるときに、指が尖ったクチバシ部に当り、使用者に不快感を与えるという問題がある。
この問題が解決されたプラスチックキャップとして、上端にクチバシ部を備えた注出突部の外面に、外方に突出した緩衝用突部が設けられたものが提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−40299号公報
【特許文献2】特開2004−352284号公報
【特許文献3】特開2010−36932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1〜3などで提案されているクチバシ部を備えた従来公知のキャップは、確かに、それまでのキャップと比較して液切れ性が改善されているのであるが、閉じられた上蓋を開けるときに、指が尖ったクチバシ部に当り、使用者に不快感を与えるという問題がある。
【0007】
また、特許文献3で提案されているキャップでは、上蓋を開放する場合にクチバシ部が指に当たることによって使用者に与える不快感が防止されている。しかしながら、クチバシ部が指に当ることを防止するために、注出突部の外面であってクチバシ部よりも下方の部分に緩衝用突部を設けているため、成形後の型抜きが無理抜きとなるため、成形性に若干問題があった。また、内容液によっては、注ぎ出しを行った後、正立状態に戻す際に、注出突部の側面から下面側に内容液が裏回りして、注出突部の外面に沿って垂れ落ちる場合があった。
【0008】
従って、本発明の目的は、液切れ性が一層高められ、容器内容液の注ぎ出しを繰り返し行った場合にも安定した液切れ性を有していると共に、上蓋を開放する場合にクチバシ部が指に当たることによって使用者に与える不快感が防止され、しかも成形性にも優れており、容易に成形することが可能なプラスチックキャップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、容器口部に固定されるキャップ本体と、該キャップ本体に開閉可能に装着される上蓋とからなり、キャップ本体は、頂板部と頂板部の周縁部から降下したスカート部とを備えていると共に、該頂板部には、容器内容液を注ぎ出すための開口或いは開口予定部が形成されており、該頂板部の上面には、該開口或いは開口予定部の外側部分に、上方に突出して容器内容液の注ぎ出し用案内となる注出突部が設けられているプラスチックキャップにおいて、
前記注出突部の上端には、径方向外方に突出しており且つ上面から見て中心部に頂点を有している全体として三角形状のクチバシ部が形成されており、
前記クチバシ部の側断面は、プラスチックキャップの正立状態において、上端よりも低い位置に径方向外方に最も突出した最突出部を有しており、該最突出部から下方の領域には、該最突出部を含む下に凸の曲率面が形成されていると共に、該最突出部から上方に延びている面は、プラスチックキャップを45度傾斜したとき、該最突出部よりも上方の領域に径方向外方に最も突出したシフト突出部が形成されるような形状を有していることを特徴とするプラスチックキャップが提供される。
【0010】
本発明においては、
(1)前記注出突部は、前記クチバシ部の下方部分に下方から上方に向かって外方に傾斜している傾斜壁を有しており、該傾斜壁の傾斜角度は、周方向両端から前記クチバシ部の中心に位置する部分に向かって漸次大きくなっていること、
が好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のプラスチックキャップにおいては、注出突部の上端に形成されているクチバシ部の側断面は、該キャップの正立状態において、上端よりも低い位置に径方向外方に最も突出した最突出部を有しており、キャップを45度傾斜したとき、該最突出部よりも上方の領域に径方向外方に最も突出したシフト突出部が形成されるように、最突出部から上方の領域に傾斜面もしくは曲率面が形成されている。即ち、このキャップが装着されている容器を傾けて容器内容液の注ぎ出しを行う場合、そのときの容器(キャップ)の傾斜角度は45度以上であるため、クチバシ部を通って注ぎ出される内容液は、クチバシ部の最突出部から離れたシフト突出部で下方に落下することとなる。この結果、注ぎ出される内容液が最突出部の裏側に裏回りすることがなく、内容液が注出突部の外面に沿って流れ落ちてしまうという不都合を有効に防止することができる。
【0012】
また、本発明では、該最突出部から下方の領域には、該最突出部を含む下に凸の曲率面となっている。この結果、キャップを開封するときに開封者の指がクチバシ部に当たったとしても、指が当る部分が曲率面となるため、開封者に与える不快感を有効に防止することができる。即ち、本発明においては、開封者の指がクチバシ部に当たることを防止するための緩衝用突部をクチバシ部の下側に設ける必要が無いため、このような突出部分の形成による成形性の低下も有効に解消されており、例えば通常の金型を用いての無理抜きにより成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のプラスチックキャップを、上蓋が開放された状態で示す平面図。
【図2】図1のプラスチックキャップの側断面図。
【図3】図1のプラスチックキャップを、上蓋を閉じた状態で示す側断面図。
【図4】図1のプラスチックキャップの要部であるクチバシ部を拡大して示す側断面図。
【図5】図1のプラスチックキャップの液切れ性を説明するための説明図であり、(a)は、キャップを45度傾けて内容液の注ぎ出しを行っているときのクチバシ部の側断面を拡大して示す図であり、(b)は、内容液の注ぎ出し後、キャップを正立状態に復帰したときのクチバシ部の側断面を拡大して示す図。
【図6】比較例のプラスチックキャップの液切れ性を説明するための説明図であり、(a)は、キャップを45度傾けて内容液の注ぎ出しを行っているときのクチバシ部の側断面を拡大して示す図であり、(b)は、内容液の注ぎ出し後、キャップを正立状態に復帰したときのクチバシ部の側断面を拡大して示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1乃至図4を参照して、このキャップは、キャップ本体1と、キャップ本体1にヒンジ連結された上蓋3とからなっている。かかるキャップは、それ自体公知の合成樹脂、例えば、低−、中−または高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、アイソタクティックポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリブテン−1、エチレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のオレフィン系樹脂や、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、ABS樹脂、熱可塑性ポリエステル、ポリアミド等を用いての射出成形等により、上蓋3が開栓された状態(図2参照)で成形される。
【0015】
キャップ本体1は、頂板部5と、頂板部5の周縁部から垂下しているスカート部7とを有しており、上蓋3は、スカート部7の上端部分にヒンジ連結部9を介してヒンジ連結されている。このヒンジ連結部9は、スカート部7の上端に連結された中央バンド9aと、この中央バンド9aの両側に位置し且つスカート部7の上端より若干下方に連結されている1対の補助バンド9b,9bとから形成されている。このようにしてスカート部7にヒンジ連結されている上蓋3を旋回することにより、キャップ本体1の頂板部5は、上蓋3によって閉じられる。
【0016】
尚、中央バンド9aの中心部上面側には矩形状の浅い溝9cが中央バンド9aの両端近傍まで延びている。この溝9cはヒンジの折れ曲がり易さを向上させるために設けられている。溝9cが中央バンド9aの両端に至らないように形成されているのは、上蓋3の開閉を多数行った場合においても、このバンド9aが破断しないようにするためである。
【0017】
キャップ本体1のスカート部7の内面には、係止突起10が形成されており、また、頂板部5の内面の周縁部分には、スカート部7とは間隔を置いて下方に延びているインナーリング11が形成されている。即ち、このインナーリング11とスカート部7との間の空間に容器口部(図示せず)が嵌め込まれ、且つ係止突起10と容器口部の外面との係合により、キャップ本体1は、容器口部にしっかりと固定されるものである。
【0018】
また、スカート部7には、その厚み部分に上端から下方に向かって延びているスリットAが形成されており、かかるスリットAによって、スカート部7は、内側壁7aと外側壁7bとに区画された2重壁構造となっており、図2に示されているように、内側壁7aと外側壁7bとは下端で連なっている。このようにスカート部7を2重壁構造とすることにより、キャップの分別廃棄に際して、キャップを容器口部から容易に取り除くことが可能となる。
【0019】
例えば、図1及び図3から理解されるように、ヒンジ連結部9(補助バンド9b)の近傍位置に、外側壁7bにスコア13が軸方向に延びるように形成されており、上蓋3を引き降ろすことにより、スコア13を引き裂いて外側壁7bを破断することによって、キャップ本体1を容器から容易に取り除くことができるような構造となっている。
【0020】
さらに、外側壁7bの外面には、上記スコア13の近傍部分(ヒンジ連結部9の近傍)に、軸方向に延びているリブZが形成されている。このリブZは、キャップ本体1を容器口部に嵌合固定する際の位置決め部材として使用されるものである。
【0021】
キャップ本体1の頂板部5の上面には、上方に突出して内容液を注ぎ出す際に注ぎ出される液の案内となる注出突部15が形成されており、注出突部15の外側には、上蓋3との係合用の環状小突起17が形成されている。
【0022】
この注出突部15は、ヒンジ連結部9側が切欠かれており(図1参照)、また、図2及び図3から理解されるように、注出突部15の内側部分において、頂板部5は、ヒンジ連結部9側が低くなるように傾斜している。
【0023】
さらに、注出突部15の内側領域には、注出用開口を形成するための無端状スコア19が形成されている。また、頂板部5の外面には、無端状スコア19の内側となる領域に形成された支柱20を介してスコア破断用タブリング21が設けられている。即ち、このタブリング21を引っ張り上げることにより、スコア19が破断して注出用開口が形成されるわけである。
【0024】
従って、スコア19の破断によって形成された注出用開口から流れ出た内容液は、注出突部15によって案内され、その内面に沿って注ぎ出される。先に述べたように、注出突部15は、ヒンジ連結部9側が切欠かれて背が低くなっている。即ち、ヒンジ連結部9とは反対側の部分から内容液の注ぎ出しが行なわれるため、この部分には案内壁は必要ではなく、従って、この部分の背を低くしておくことにより、上蓋3を閉じる際に、注出突部15が邪魔にならないようにしたものである。
【0025】
また、注出突部15の内面の下方部分は、全周に渡ってフラットであり且つ略直立したシール面23となっており(特に図2参照)、上蓋3を閉じたとき、注出突部15と頂板部5に形成されたシール面23に上蓋3の一部が密着し、スコア19を破断して注出用開口が形成された後の密封性が確保されるようになっている。
【0026】
図1乃至図3から理解されるように、注出突部15のヒンジ連結部9側とは反対側部分には、上端部分の一部が外方に突出し、上面からみて三角形状のクチバシ部30が形成されている。このクチバシ部30の頂点部分30aは、ヒンジ連結部9を通るキャップの中心線X上に位置している。
【0027】
また、図4の部分拡大図に示されているように、クチバシ部30の内面の下方部分には、下方から上方に向かって外方に傾斜している傾斜壁31が形成されており、この傾斜壁31の上端にクチバシ部30が位置している。この傾斜壁31の内面31aが前記シール面23の上端部分に位置しており、この傾斜面31aの上端部分(クチバシ部30の内面)には、注ぎ出される液がスムーズに流れるように溝30bが形成されている。また、このクチバシ部30の頂点部分30aの上面は、溝30bの形成により他の部分よりも低くなっている。このようにしてクチバシ部30を形成することにより、注出突部15の付け根部分よりも外方に大きく突出しているクチバシ部30が注ぎ口となり、頂点部分30aに液が集中するようにして内容液の注ぎ出しをスムーズに行うことができる。
【0028】
一方、上蓋3は、天板40と、天板40の周縁部から延びている筒状側壁41とから形成されており、天板40の内面には、シール用リング43が形成されている。即ち、上蓋3を閉じたとき、このシール用リング43の外面が注出突部15の内面下方のシール面23に密着し、この密着により、スコア19の破断により注出用開口を形成した後のシール性が確保される。尚、注出突部15のヒンジ連結部9側部分の背が低くなっているため、この上蓋3を閉じる際にシール用リング43はスムーズに注出突部15内に入り込み、シール面23と密着することとなる。
【0029】
また、図1及び図3に示されているように、上蓋3の天板40の中央部分はドーム状に膨出した膨出部40aとなっている。このような膨出部40aを形成することにより、シール用リング43の内面からシール用リング43で囲まれた天板40の内面を角部のない球状面にすることができ、スコア19の破断後に天板40の内面に付着した内容液を速やかに容器内に戻すことができるようになっている。
【0030】
さらに、天板40の上端には、ヒンジ連結部9とは反対側部分(注出突部15のクチバシ部30が位置する側)に鍔45が形成されており、これにより、上蓋3の開閉操作を容易に行うことができるようになっている。また、これにより、上蓋3を開封する際に、手の指が注出突部15のクチバシ部30の先端30aに触れ難くしている。
【0031】
上蓋3の筒状側壁41の下端面の先端部側(ヒンジ連結部9とは反対側部分)には、小突起47が適当な間隔で設けられている。即ち、内容液の注出を行ったとき、キャップ本体1のスカート部の上面部分、特にヒンジ連結部9とは反対側部分には、注ぎ出された液が付着する場合がある。このような場合、上蓋3を閉じた時に、筒状側壁41の下端面が全体にわたってスカート部の上面部分に密着してしまうと、付着している液がはじき飛ばされてしまい、周囲を汚してしまうなどの不都合を生じることがある。しかるに、上記のような小突起47を形成しておけば、付着した液のはじき飛ばしを有効に回避することができる。
【0032】
尚、筒状側壁41の下端面のヒンジ連結部9側には、上記のような小突起47の形成による傾きを回避するための高さ調整用の弧状突起49が形成されている。
【0033】
また、筒状側壁41の下方部分の内面には、凸部50が周状に形成されている。即ち、上蓋3を閉じたとき、この凸部50が頂板部5の外面に形成されている小突起17と係合し、これにより上蓋3の閉栓状態が保持されることとなる。
【0034】
さらに、上記の筒状側壁41の内面には、ヒンジ連結部9とは反対側の部分、即ち、天板40に鍔45が形成されている部分には、肉抜きにより溝51が形成されている。このような溝51を形成しておくことにより、上蓋3を閉じたときに、注出突部15に形成されているクチバシ部30の先端30aが上蓋3の筒状側壁41の内面に接触せず、スムーズに上蓋3が閉じられるようになっている。
【0035】
上述した構造のプラスチックキャップにおいて、本発明では、クチバシ部30の形状が従来公知のものとは異なっており、この形状に新規な特徴を有している。
即ち、このクチバシ部30の先端部分(頂点部分30a)の側断面を拡大して示す図4を参照して、このクチバシ部30には、キャップの正立状態において、その上端よりも低い位置に径方向外方に最も突出した最突出部60を有しており、この最突出部60から上方に延びている面61について、該最突出部60を起点として接線Sを引いた時、該接線Sの垂直軸に対する角αが45度未満となっている。また、最突出部60から下方に延びている面は下に凸の曲率面63となっており、この曲率面63を介してクチバシ部30の外面は、傾斜壁31の上端に連続している。従って、このような曲率面63の形成により、最突出部60よりも下方に最下端部65が形成され、最下端部65よりも径方向内方側には、傾斜壁31の上端部分と最下端部65との間に凹部67が形成されることとなる。
【0036】
本発明では、クチバシ部30が上記のような形状を有している結果、容器内容液を注ぎ出したときの液切れ性が一層高められ、また、上蓋3を開封するに際して、開封者の指先がクチバシ部30に当接することにより使用者に与える不快感が有効に緩和されている。
【0037】
即ち、このキャップが装着されている容器を傾けて内容液の注ぎ出しを行う場合、その傾斜角(水平線に対する角)は、容器内容液の量によって異なり、注ぎ出しが行われて容器内容液が少なくなってくるにしたがい、その傾斜角は大きくなり、容器を大きく傾けて内容液の注ぎ出しが行われるようになる。従って、内容液の注ぎ出しが行われていない初期の状態での傾斜角が最も小さく、45度程度である。
【0038】
しかるに、図5を参照して、上述した形状を有しているクチバシ部30を備えた本発明のキャップを45度に傾けて内容液の注ぎ出しを行うと、このクチバシ部30の径方向外方に最も突出した部分は、図5(a)に示されているように、前述した最突出部60の位置から70で示される部分(シフト突出部)に移行することとなる。即ち、シフト突出部70とは、注ぎ出しの際に容器を傾けた時のクチバシ部30の径方向外方に最も突出した位置のことであり、容器を傾けた角度に応じて位置が移行する。よって、注ぎ出された内容液80は、このシフト突出部70から下方に滴下することとなる。このようにして、内容液を注ぎ出した後、キャップ(容器)を正立状態に戻すと、クチバシ部30の上面に残った液内容液80は、図5(b)に示されている様に、最突出部60に沿って最下端部65に流れ、この最下端部65から落下することとなる。
【0039】
上記の説明から理解されるように、本発明のキャップでは、キャップを45度傾けて内容液80の注ぎ出しを行った場合、最突出部60から離れたシフト突出部70から内容液80が落下するため、この内容液80がクチバシ部30の裏側(即ち凹部67の部分)に裏回りすることがなく、例えば正立状態に復帰させた場合にも内容液80は最下端部65から速やかに落下し、何れの場合にも、内容液80が注出突部15の外面(傾斜壁31の外面31b)に沿って流れ落ちるという不都合が有効に防止される。また、内容液80のクチバシ部30の裏回りが有効に防止されているため、内容液80の注ぎ出し操作を繰り返し行った場合においても、内容液80が注出突部15の外面に沿って流れ落ちるという不都合を生じることはない。
また、容器内に残る内容液の量が減ってくると、注ぎ出しのためのキャップの傾斜角度はさらに大きくなるが、この傾斜が大きくなるほど、キャップを傾けたときのシフト突出部70の位置は最突出部から離れた上方位置にシフトするため、益々、内容液80の裏回りが防止されることとなる。
従って、本発明では、容器内に内容液が一杯に充填されている初期状態から内容液の量が僅かとなった最後の段階にわたって、安定した液切れ性を示すわけである。
【0040】
一方、図6に示されているように、最突出部60での接線Sでの傾斜角αが45度以上となっており、また最突出部60の下側に下方に凸の曲率面63が形成されていない比較例のキャップでは、該キャップを45度傾けたときにも、最突出部60の位置はシフトせず、シフト突出部は形成されず、この最突出部60に隣接してクチバシ部30の裏面が存在している。従って、キャップを45度傾けて内容液の注ぎ出しを行った場合、この最突出部60から内容液80が落下することとなり(図6(a)参照)、このため、内容液80の裏回りを生じ易く、内容液80が注出突部15の外面に沿って流れ落ちるという不都合を生じ易い。また、内容液80が注出突部15の外面に沿って流れ落ちるには至らないとしても、クチバシ部30の裏面に内容液80が付着残存してしまう。従って、内容液80の注ぎ出し後、キャップを正立状態に復帰させたときにも、残った内容液80も最突出部60から落下するため、クチバシ部30の裏側に付着した内容液80が呼び水となり、一層裏回りが生じ易くなっている。この結果、初期段階では液切れ性が良好であったとしても、内容液80の注ぎ出し操作を繰り返し行った場合には、クチバシ部30の裏側に付着した液が多くなってしまうため、内容液80が注出突部15の外面に沿って流れ落ちるという不都合を生じてしまうのである。
【0041】
以上の説明から理解されるように、本発明のキャップは、優れた液切れ性を示すが、最突出部60よりも下方の領域が下に凸の曲率面63となっているため、上蓋3を開封する際に、開封者の指がクチバシ部30に当たったとしても、当る部分が曲率面63となるため、開封者に与える不快感は有効に緩和されることとなる。
【0042】
上述した本発明において、内容液の注ぎ出しに際しての液切れ性は、キャップを45度傾けたときに形成されるシフト突出部70の位置が最突出部60から径方向に離れるほど向上する。従って、この最突出部60とシフト突出部70との間隔d(図5(a)参照)が1mm以上、特に2mm以上、最も好ましくは3mm以上となるように、前述した最突出部60での接線Sの傾斜角αを設定するのがよい。勿論、このような傾斜角αの大きさが確保される限り、最突出部60から上方に延びている面61はフラットな傾斜面であってもよし、曲率面であってもよい。
【0043】
また、本発明においては、クチバシ部30の下方部分には、注出突部15の外面がフラットな面となっており、突出した部分や凹んだ部分は全く形成されていない。従って、複雑な構造の割金型を用いることなく、通常の無理抜きにより成形後の型抜きを行うことができ、成形性にも極めて優れている。
【0044】
尚、本発明においては、上述したクチバシ部30が形成されている部分の下方の注出突部15の傾斜壁31は、その外面31bの傾斜角θが、周方向両端からクチバシ部30の中心(30a)に位置する部分に向かって漸次大きくなっていることが好適である。このように傾斜角θが変化するように傾斜壁31を形成することにより、クチバシ部30を径方向外方に大きく突出させた場合においても、成形後の型抜きを無理抜きによりスムーズに行うことができる。
【0045】
上述した本発明のキャップは、各種飲料や醤油等の調味液などが充填された容器のキャップとして効果的に使用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1:キャップ本体
3:上蓋
15:注出突部
30:クチバシ部
60:最突出部
63:下に凸の曲率面
70:シフト突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器口部に固定されるキャップ本体と、該キャップ本体に開閉可能に装着される上蓋とからなり、キャップ本体は、頂板部と頂板部の周縁部から降下したスカート部とを備えていると共に、該頂板部には、容器内容液を注ぎ出すための開口或いは開口予定部が形成されており、該頂板部の上面には、該開口或いは開口予定部の外側部分に、上方に突出して容器内容液の注ぎ出し用案内となる注出突部が設けられているプラスチックキャップにおいて、
前記注出突部の上端には、径方向外方に突出しており且つ上面から見て中心部に頂点を有している全体として三角形状のクチバシ部が形成されており、
前記クチバシ部の側断面は、プラスチックキャップの正立状態において、上端よりも低い位置に径方向外方に最も突出した最突出部を有しており、該最突出部から下方の領域には、該最突出部を含む下に凸の曲率面が形成されていると共に、該最突出部から上方に延びている面は、プラスチックキャップを45度傾斜したとき、該最突出部よりも上方の領域に径方向外方に最も突出したシフト突出部が形成されるような形状を有していることを特徴とするプラスチックキャップ。
【請求項2】
前記注出突部は、前記クチバシ部の下方部分に下方から上方に向かって外方に傾斜している傾斜壁を有しており、該傾斜壁の外面の傾斜角度は、周方向両端から前記クチバシ部の中心に位置する部分に向かって漸次大きくなっている請求項1に記載のプラスチックキャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−213369(P2011−213369A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−81796(P2010−81796)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000228442)日本クラウンコルク株式会社 (382)
【Fターム(参考)】