説明

プラスチックキャップ

【課題】タンパーエビデントバンドを備えているプラスチックキャップにおいて、キャッピングに際してのブリッジ破断を有効に防止すると同時に、その開栓性を向上させる。
【解決手段】キャップスカート部3の下端に破断可能なブリッジ5を介して連結されたTEバンド7を備え、TEバンド7の内面には、内方且つ上方を指向している複数のフラップ片11が周方向に間隔をおいて配列されているプラスチックキャップにおいて、複数のフラップ片11は、その付け根からの長さに分布を有しており、最も長さの長い長フラップ片11aに対して対向する側に位置するフラップ片は、長フラップ片より短い長さの短フラップ片11b、11cとなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパーエビデントバンド(TEバンド)を備えたプラスチックキャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、飲料等が収容された容器に装着されるプラスチックキャップには、いたずら防止や内容物の品質保証のためにTEバンドが設けられているものが多い。このTEバンドはキャップのスカート部の下端に破断可能なブリッジを介して連結されており、またTEバンドが連結されているスカート部の内面には容器口部の外面に形成されている容器の雄螺条と螺子係合するキャップの雌螺条が形成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記のようなTEバンドの内面には、内方且つ上方を指向している複数のフラップ片が周方向に間隔をおいて配列されており、キャップの開栓に際して、このフラップ片が容器口部の外面に形成されている容器の顎部と係合することにより、TE性が発揮される。即ち、開栓に際して、フラップ片が容器の顎部と係合するとTEバンドの上昇が抑制され、TEバンドの上のスカート部のみが上昇する。この結果、TEバンドをつないでいるブリッジが破断し、TEバンドが切り離された状態でキャップが開封される。従って、一般の需要者はTEバンドが切り離されていることによりキャップが開封された事実を認識することができるわけである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第2526433号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のようなTEバンドを備えたプラスチックキャップでは、開栓に際してスカート部とTEバンドとをつないでいるブリッジを破断しなければならないため、開栓トルクが大きく、開封しにくいという欠点がある。特に、握力の弱い老人や子供にとってはこの欠点は極めて大きな問題である。
【0006】
上記のような欠点を改善するためには、例えばブリッジの強度を弱くすることが考えられる。しかるに、ブリッジの強度を弱くすることは、容器内容物を容器に充填したのちのキャッピングに際してブリッジの破断を生じやすくなってしまうため、採用することができない。
【0007】
従って、本発明の目的は、タンパーエビデントバンドを備えているプラスチックキャップにおいて、キャッピングに際してのブリッジ破断を有効に防止すると同時に、その開栓性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、頂板部と、該頂板部の周縁から降下したスカート部と、該スカート部の下端に破断可能な複数のブリッジを介して連結されたタンパーエビデントバンドとを備え、該タンパーエビデントバンドの内面には、内方且つ上方を指向している複数のフラップ片が周方向に間隔をおいて配列されており、該スカート部内面に容器口部の外面に形成されている容器の雄螺条と螺子係合するキャップの雌螺条が形成されているプラスチックキャップにおいて、
前記複数のフラップ片は、その付け根からの長さに分布を有しており、最も長さの長い長フラップ片に対して対向する側に位置するフラップ片は、長フラップ片より短い長さの短フラップ片となっていることを特徴とするプラスチックキャップが提供される。
【0009】
本発明のプラスチックキャップにおいては、
(1)前記キャップの雌螺条は、一巻きより長く且つ螺条開始点と螺条終点とが同一軸線上には位置しないように延びており、前記長フラップ片を含む位置でのスカート部の側断面における該雌螺条の数が、前記短フラップ片を含む位置でのスカート部の側断面における該雌螺条の数よりも少なくなるように、前記長フラップ片及び短フラップ片の位置が設定されていること、
が好適であり、さらに、
(2)前記長フラップ片が形成されている部分に対応する位置に形成されているブリッジには、前記短フラップ片が形成されている部分に対応する位置に形成されているブリッジに比して、幅広に形成されている高強度ブリッジが含まれていること、
或いは、
(3)前記長フラップ片が形成されている部分に対応する位置に形成されているブリッジは、前記短フラップ片が形成されている部分に対応する位置に形成されているブリッジに比して、低強度に形成されていること、
(4)前記短フラップ片は、前記長フラップ片に対して対向する側に位置する最短フラップ片と該長フラップ片と該最短フラップ片との間に位置し、該最短フラップ片よい長さの長い中短フラップ片とからなること、
という態様を採り得る。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては、タンパーエビデントバンド(TEバンド)の内面に設けられている複数のフラップ片が付け根からの長さに分布を有しており、最も長さの長い長フラップ片と長フラップ片より長さの短い短フラップ片が形成されている。
即ち、このようなTEバンドではフラップ片の長さが長フラップ片側と短フラップ片側とで異なっているのである。従って、容器口部に装着されたキャップを開栓していくと、まず長フラップ片が容器顎部の下側に当接し、この部分での上昇が制限され、次いで長フラップ片に続く短フラップ片が容器顎部に当接する。このようにして開栓が行われていくため、長フラップ片が位置する部分の軸線上に位置するブリッジが破断し、このブリッジを起点としてその両隣のブリッジが破断していくこととなる。
このことから理解されるように、本発明のキャップでは、開栓に際して、TEバンドをつないでいる多数のブリッジは一挙に破断するのではなく、長フラップ片が位置する部分の軸線上に位置するブリッジから順々に破断されていく。
従って、本発明のキャップでは、多数のブリッジを一気に破断して開栓が行われる従来のキャップに比して、小さな力で開栓を行うことができ、優れた開栓性を有する。
【0011】
また、本発明においては、上記のようなフラップ片の長さ分布を最大限に活かし、キャップの開栓性を著しく高めるためには、キャップの雌螺条が、一巻きより長く且つ螺条開始点と螺条終点とが同一軸線上には位置しないように延びており、前記長フラップ片を含む位置でのスカート部の側断面における該雌螺条の数が、前記短フラップ片を含む位置でのスカート部の側断面における該雌螺条の数よりも少なくなるように、前記長フラップ片及び短フラップ片の位置が設定されていることが最適である。
【0012】
具体的に説明すると、キャップの雌螺条は、容器口部の雄螺条にしっかりと螺子係合せしめるために一巻きより長く形成されるが(即ち、キャップのスカート部の内面に1周以上の長さで延びている)、該雌螺条の螺条開始点と螺条終点とが同一軸線上には位置しないように設定すると、スカート部の側断面の位置によって、該側断面で観察されるキャップの雌螺条の数が異なったものとなる。例えば、雌螺条の周方向長さが2周未満のときには、雌螺条が1つだけ存在する側断面と、雌螺条が2つ存在する側断面とを形成することができる。
本発明においては、このように、スカート部の側断面における雌螺条の数が異なる側断面を形成し得るような構造とした上で、前記長フラップ片を含むスカート部の側断面で形成される前記雌螺条の数が、前記短フラップ片を含む位置でのスカート部の側断面における該雌螺条の数よりも少なくなるように、前記長フラップ片及び短フラップ片の位置が設定するのである。
即ち、キャップの雌螺条の数が少ない側断面の位置は、該雌螺条と容器口部の雄螺条との係合箇所が他の部分よりも少ない位置であるため、キャップを開栓方向に旋回して開封していくときに、スカート部が最も上方に可動し易い部分であり、側断面でキャップの雌螺条の数が多い位置は、スカート部が最も上方に可動し難い部分である。このことから理解されるように、上記の態様では、キャップの開封に際して、スカート部が最も上方に可動し易い部分に、長フラップ片が位置しており、スカート部が最も上昇し易いこの部分で、真っ先に、開封に際してのTEバンドの上昇が制限される。従って、キャップの開封を行ったときに、この長フラップ片が形成されている部分を始点として、ブリッジの破断が速やかに進行し、優れた開栓性を確保することができるのである。
【0013】
本発明のキャップは、優れた開栓性を有しているため、ブリッジ強度に関しての自由度が高く、ブリッジ強度について種々の設定が可能であるという利点がある。即ち、上記ブリッジの強度を高くした場合にも開栓を容易に行うことができるため、この特性を活用して、キャッピングに際してのブリッジの破断を効果的に防止するなど、種々の目的を達成することができる。
【0014】
例えば、上記の長フラップ片に対応する部分のブリッジ(即ち、開封に際して最初に破断するブリッジ)について、そのブリッジ幅を大きくしてブリッジ強度を高めることにより、一般の需要者に、キャップを開封したときの開封感を与えることができる。ブリッジの伸びが小さいため、キャップの開封に際して、このブリッジが一気に破断するため、一般の需要者は、その破断の前後での触感の変化を確実に認識することができるからである。また、場合によっては、この幅広のブリッジが破断するときに「パチッ」という音を発生することもあるからである。
【0015】
また、上記の長フラップ片に対応する部分のブリッジ(開封に際して最初に破断するブリッジ)についてのブリッジ強度を弱く設定しておき、他のブリッジのブリッジ強度を高く設定しておくことにより、優れた開栓性を損なわずに、TE性を向上させると同時に、キャッピングに際してのブリッジ破断を有効に防止することができる。即ち、開封に際して最初に破断するブリッジのブリッジ強度が弱く設定されているため、キャップの開封に際して、最初のブリッジの破断が確実にシールブレークに先立って行われるようになり、これにより、TE性が向上する。また、他のブリッジのブリッジ強度は高く設定されているため、キャッピングに際してのブリッジ破断が有効に防止される。
キャッピングに際してのブリッジ破断を防止するために、ブリッジ強度を高めるという手段を採用すると、当然、開封性の低下を招いてしまうのであるが、本発明においては、長フラップ片が容器顎部に当接したときに、これに対応するブリッジが容易に破断するため、このようなブリッジ強度を高めるという手段を採用することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のプラスチックキャップの側面を容器口部と共に示す図。
【図2】図1のキャップの側断面を容器口部と共に示す図。
【図3】図1のキャップの底面図。
【図4】図1のキャップのTEバンドの上端面を示す図。
【図5】図1のキャップの斜視図。
【図6】図2の要部を拡大して示す図であり、(a)は、長フラップ片の側断面を拡大して示し、(b)は、短フラップ片の側断面を拡大して示す図。
【図7】図7は、図1のキャップのTEバンドの展開図。
【図8】キャップの開栓途中でのTEバンドの形態を説明するための側面図。
【図9】図8の側断面図。
【図10】本発明のプラスチックキャップに用いられる他のTEバンドの展開図。
【図11】本発明のプラスチックキャップに用いられるさらに他のTEバンドの展開図。
【図12】図1とは異なる形態のブリッジにより接合されるTEバンドの上端面を示す図。
【図13】図1とはさらに異なる形態のブリッジにより接合されるTEバンドの上端面を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1乃至図5を参照して、本発明のプラスチックキャップは、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンの一体成形により形成されるものであり、頂板部1及び頂板部1の周縁から降下するスカート部3を備えており、スカート部3の下端には、破断可能な複数のブリッジ5を介してタンパーエビデントバンド(TEバンド)7が設けられている。
また、図1及び図2に示されているように、容器口部51の外面には、キャップとの螺子係合用の雄螺条53、TEバンドとの係合用の顎部55及び容器を容易に搬送するためのサポートリング57が、上から順に形成されている。
【0018】
上記のキャップにおいて、スカート部3の内面には、容器口部51の雄螺条53と螺子係合する雌螺条9が形成されており、TEバンド7の内面には、内方且つ上方を指向しているフラップ片11が適当な間隔をおいて複数形成されている。このフラップ片11は、キャップの開栓時に、容器口部51の外面であって容器螺条53の下方に形成されている顎部55と係合するものであり、これにより、TEバンド7の上方への移動が制限され、ブリッジ5が破断し、スカート部3からTEバンド7が切り離され、キャップが開封されたことを示すものである。
尚、このフラップ片11が一つの環状片として形成されておらず、複数の片として形成されているのは(図3に示されているように、この例では4つのフラップ片11が形成されている)、容器顎部55との係合性を考慮しているからである。即ち、このようなフラップ片11は、下方を指向した状態で成形され、成形後に、所定の治具を用いて上方に反転させることにより形成される。このようなフラップ片11において、これが環状形状を有している場合には、上方に反転されたとき、ほぼ直立に近い状態となるため、容器顎部55と係合したとき、フラップ片11の僅かな変形等によってTEバンド7がすっぽ抜けてしまうなどの不都合が生じ易くなってしまう。しかるに、フラップ片11を環状に形成せず、複数の片に分割した形態とすることで、フラップ片11を上方に反転したとき、各フラップ片11を直立状態ではなく、斜めに傾斜した状態とすることができ、これにより、容器顎部55との係合力を高め、TEバンド7のすっぽ抜け等の不都合を確実に防止することができるからである。
【0019】
また、図3から理解されるように、各フラップ片11には、中央部分に切欠き部13が形成されているが、この切欠き部13は、キャップを容器口部51に装着するに際し、フラップ片11が容器雄螺条53及び顎部55を乗り越えるときの抵抗を緩和し、閉栓性を高めるために設けられているものである。また、このような切欠き13の代わりに、フラップ片11の内面(キャップ中心側の面)に適当な溝を形成することによってもフラップ片11が容器の雄螺条53や顎部55を乗り越えるときの抵抗を緩和することができる。
尚、TEバンド7の切欠き部13は、図5の斜視図では省略されている。
【0020】
また、印照数字では示していないが、スカート部3の外面には、図1に示されているように、滑り止め用のローレットが形成されており、キャップを手で握っての開栓或いは閉栓方向への回転を容易に行い得るようになっている。
さらに、スカート部3の外面には、その上方に洗浄用のスリット14が適当な間隔で複数形成されている。即ち、このキャップが容器口部51に装着された後、シャワー等により洗浄水をスリット14からキャップの内面に導入し、これにより、キャップと容器口部51との間にこぼれた内容液等を洗浄除去することが可能となる。尚、フラップ片11を環状に形成せず、複数形成することは、このようにして洗浄を行ったとき、洗浄水を容易に除去できるという利点もある。
【0021】
一方、頂板部1の内面には、スカート部3とは間隔をおいて下方に延びているインナーリング15が形成されている。このインナーリング15は、図2に示されているように、その外面(スカート部3側の面)が外方に膨らんだ形状を有している。即ち、上記のキャップ雌螺条9と容器雄螺条53との螺子係合を利用してキャップを容器口部51に装着したとき(即ち、閉栓)、図1に示されているように、スカート部3とインナーリング15との間に容器口部51の上方部分が侵入し、インナーリング15の外面が容器口部51の内面に密着し、これにより、密封性が確保されるというものである。
【0022】
また、頂板部1の内面には、インナーリング15とスカート部3との間の部分にアウターリング17が形成されている。アウターリング17は、キャップを閉栓したとき、容器口部51の上端部がガタツクことなくインナーリング15の外面に密着するようにキャップ内に容器口部51を誘導するためのものである。
【0023】
アウターリング17の付け根部分の近傍には、環状の小突起19が形成されている。この環状の小突起19は、キャップが閉栓されている状態において、容器口部51の上端のコーナー部に密着するように形成されており、容器口部51は、インナーリング15の外面と環状の小突起19との間でしっかりと挟持されるのであり、環状の小突起19により密封性が補強される。
【0024】
さらに、頂板部1の内面の中央部分には、図3に示されているように、キャップ中心Oから放射状に延びており、且つ先端部が環状に連なった形状のリブ21が形成されている。このリブ21は、例えば印刷時における高さ調整等のために設けられているものであり、例えば、このキャップを所定のマンドレル等に保持したとき、頂板部1の外面がフラットに保持され、印刷作業をスムーズに行い得るようにしたものである。
【0025】
本発明においては、TEバンド7の内面に形成されている複数のフラップ片11に長さ分布が形成されていることが重要な特徴である。
即ち、図1乃至図5と共に、図6の要部拡大図、及び図7のTEバンド7の展開図を併せて参照して、複数のフラップ片11は、その付け根からの長さLが長い長フラップ片11aと、長フラップ片11aより長さの短い短フラップ片からなり、短フラップ片は、この長さLが最も短い最短フラップ片11bと、両フラップ片11a、11bの間の長さを有している中短フラップ片11cとからなる。さらに、図6及び図7から明らかなように、長フラップ片11aと最短フラップ片11bは径方向に対して互いに対向しており、中短フラップ片11cは、長フラップ片11aと最短フラップ片11bとの間に位置している。例えば、図6(a)に示されているように、長フラップ片11aの先端は、容器顎部55の近傍に位置しているが、長フラップ片11aに対向している最短フラップ片11bの先端は、図6(b)に示されているように、容器顎部55からはやや離れて位置している。従って、中短フラップ片11cについては、図示されていないが、その先端は、図6(a)と図6(b)との中間位で容器顎部55から離れている。
このような長フラップ片11a、最短フラップ片11b、中短フラップ片11cには、それぞれ、その周方向中心部分に前述した切欠き部13が形成され(図7参照)、キャップを容器口部51に装着する際の抵抗を緩和し、閉栓性が高められるようになっている。
【0026】
上記のようなフラップ片11a〜cを備えたTEバンド7を有する本発明のキャップを開栓していくと、まず開栓初期において、長フラップ片11aが容器顎部55の下側に当接し、この部分での上昇が制限され、従って、長フラップ片11aが位置する部分の軸線上に位置するブリッジ5がまず破断される。この状態では、最短フラップ片11bや中短フラップ片11cは、容器顎部55の下側には当接しておらず、これらのフラップ片11b、11cが位置する部分の軸線上に位置するブリッジ5は破断していない。
上記の開栓初期の状態からさらにキャップを回転させて開栓を行っていくと、開栓途中でのTEバンド7の形態を示す図8及び9を参照して、長フラップ片11aに隣接する中短フラップ片11cが容器顎部55の下側に当接し、中短フラップ片11cの上方に位置するブリッジ5が破断されるが、この状態では、最短フラップ片11bの先端は容器顎部55に当接していないか或いは軽く接触している程度であり、最短フラップ片11bの上方に位置するブリッジ5は未だ破断していない。従って、図8及び9に示されているように、開栓途中では、TEバンド7は、所謂半開きの状態でスカート部3の下端に連なった状態となっている。
このような開栓を続けていくと、最後に、最短フラップ片11bが容器顎部55の下側に当接し、最短フラップ片11bの上方に位置するブリッジ5が破断し、これにより、TEバンド7がスカート部3から完全に切り離されることとなり、TEバンド7が切り離されていること(或いはブリッジ5が破断していること)という事実から、一般の需要者はキャップが開封されたという事実を明瞭に認識することができるのである。
【0027】
このように、フラップ片11に長さ分布を持たせている本発明のキャップでは、開栓が行われると、TEバンド7をつないでいる多数のブリッジ5は一挙に破断するのではなく、長フラップ片11aの上方に位置するブリッジ5を始点として、中短フラップ片11cの上方に位置するブリッジ5及び最短フラップ片11bの上方に位置するブリッジ5へと、徐々に破断されていくため、開栓に要する力(開栓トルク)が低く、容易に開栓が行われるのである。
例えば、従来公知のTEバンド付プラスチックキャップは、複数のフラップ片11に長さ分布が形成されておらず、その長さが均等であるため、キャップを開栓すると、TEバンド7をつないでいるブリッジ5が一気に破断されて、TEバンド7がキャップから切り離されるようになっている。このため、キャップの開栓に大きな力が必要であったが、本発明では、フラップ片11に長さ分布を持たせることにより、小さな力で開栓を行い得るようになっているのである。
【0028】
本発明の上述した実施態様においては、各フラップ片11a〜11cの周方向幅や数は、長フラップ片11aと最短フラップ片11bとが互いに対向するように位置し、且つ、長フラップ片11aと最短フラップ片11bとの間に中短フラップ片11cが位置している限りにおいて、特に制限はされないが、一般的には、各フラップ片11a〜11cの周方向幅を同程度とし、長フラップ片11aと最短フラップ片11bとの対の間に、それぞれ1〜2の中短フラップ片11cが存在し、トータルで4〜6枚程度のフラップ片11が形成されるようにすることが、成形性や容器顎部55との係合の程度を良好なものとする上で好ましい。因みに、上述した例のキャップでは、図3や図7に示されているように、4枚のフラップ片11が形成されている。
【0029】
また、上述した各フラップ片11a〜11cの位置関係も特に制限されるものではないが、上述した長さ分布による開栓性の向上効果を最大限に発揮させるために、キャップを開栓したときに、スカート部3が最も上方に可動し易い部分が形成されるように、キャップの雌螺条9を設け、この可動し易い部分に長フラップ片11aが位置するような構造とすることが好適である。
【0030】
例えば、キャップの雌螺条9は、スカート部3の内面に1周以上(一巻き以上)の長さで延びており、これにより、容器口部51の雄螺条53との間にしっかりと螺子係合し得るが、このような雌螺条9について、その開始点9a(図5参照)の軸線方向下方に、終点が位置しないように、その長さを設定する。このように雌螺条9の長さを設定すると、スカート部3の側断面では、その位置によって、側断面に存在する雌螺条9の数に大小が生じる。例えば、雌螺条9の長さをスカート部3の1周以上で2周未満の長さとすると、スカート部3の側断面の位置によって、雌螺条9の数は1或いは2となる。因みに、図2において、スカート部3の右側の側断面に、1つの雌螺条9が存在しており、左側の側断面では、2つの雌螺条9が存在している。
即ち、雌螺条9が、その開始点と終点とが同一軸線上に位置するような長さで延びている場合には、スカート部3の側断面の位置によって雌螺条9の数が異なるということはなく、どの位置での側断面においても、雌螺条9の数は、その巻き数に相当する。
【0031】
上記のように、スカート部3の側断面の位置によって、該側断面におけるキャップ雌螺条9の数が異なったものとなる構造としたとき、雌螺条9の数が少ない位置(例えば、図2における右側の側断面に相当する部分)は、雌螺条9と容器の雄螺条53との係合箇所が他の部分よりも少ない位置であるため、キャップを開栓方向に旋回して開封していくときに、スカート部3が最も上方に可動し易い部分となっており、キャップの雌螺条の数が多く観察される位置(例えば、図2における左側の側断面に相当する部分)は、スカート部3が最も上方に可動し難い部分となっている。
【0032】
本発明においては、前述した長フラップ片11aの位置を、キャップの開封に際して、スカート部3が最も上方に可動し易い部分に設定することが望ましく、これにより、スカート部3が最も上昇し易い部分で、真っ先に、開封に際してのTEバンド7の上昇が制限され、この部分でのブリッジ5に大きな応力が作用することとなる。従って、キャップの開封を行ったときに、この長フラップ片11cが形成されている部分の上方に位置するブリッジ5を始点として、ブリッジ5の破断が速やかに進行し、優れた開栓性を確保することができるのである。
【0033】
また、上述した例では、図7に示されているように、長フラップ片11aから中短フラップ片11c及び最短フラップ片11bへと、その長さは段階的に短くなっているが、このような長さ分布をテーパー状に設定することもできる。
例えば、図10のTEバンド7の展開図に示されているように、長フラップ片11aの中心部での長さLを最も長くし、これに対向する最短フラップ片11bの中心部での長さLを最も短くし、長フラップ片11aの中心部から最短フラップ片11bの中心部に向かって、長フラップ片11a,中短フラップ片11c及び最短フラップ片11bの長さが漸次短くなるようにすることも可能である。特に、長さ分布を図10に示されているようにテーパー状に設定する態様は、成形型を作り易いというメリットがある。
【0034】
さらに、本発明において、フラップ片11の厚み分布の程度は、フラップ片11の長さが極端に変化してガタツキや成形不良などが生じない程度であれば特に制限されず、またキャップの大きさによっても異なるが、通常は、長フラップ片11aの長さL(図10の例では最大長さL)に対して、最短フラップ片11bの長さL(図10の例では最大長さL)が50乃至70%程度となるように設定される。
【0035】
さらに、本発明において、フラップ片11の厚み分布は、上述したように3段階にすることなく、例えば、図11のTEバンド7の展開図に示されているように、長フラップ片11aと中短フラップ片11cの2段階にすることもできるのである。この場合においても本発明の作用効果を有することができるのである。
【0036】
上述した構造を有している本発明のキャップは、優れた開栓性を有しており、このため、スカート部3とTEバンド7とを繋ぐブリッジ5の強度を種々変更できるという設計上の利点がある。先にも述べたように、ブリッジ5の強度を高くした場合にも開栓を容易に行うことができるからである。
【0037】
例えば、スカート部3とTEバンド5とを繋ぐ多数のブリッジ5は、開栓時に容易に破断し得るように低強度に設定する必要があるが、あまり低強度に設定すると、キャッピング時にTEバンド7が容器顎部55を乗り越える際にブリッジ5の破断を生じてしまう。このため、通常は、図4に示されているように、ブリッジ幅dが比較的大きい太ブリッジ5aとブリッジ幅dが小さい細ブリッジ5bとが交互に位置するようにして周方向全体に均等に分散させ、太ブリッジ5aのブリッジ幅dでも2.0乃至2.5mm程度として、開栓性とキャッピング時のブリッジ破断防止とのバランスを確保している。
【0038】
しかるに、本発明では、図12に示されているように、長フラップ片11aに対応する部分のブリッジ5(開封に際して最初に破断するブリッジ5)については、その中に、ブリッジ幅dが著しく大きい高強度ブリッジ5cを設けることができる。即ち、この高強度ブリッジ5cのブリッジ幅dは、0.5乃至0.7mm程度とかなり太く設定されており、このような高強度ブリッジ5cを設けることにより、一般の需要者に、キャップを開封したときの開封感を与えることができる。
即ち、図4等に示されているようにブリッジ強度を設定した場合には、ブリッジ5の伸びが大きいため、ブリッジ5が最初に破断したときの触感の変化が乏しく、一般の需要者がキャップの開放感を感じることはない。しかるに、上記のようなブリッジ幅の著しく大きい高強度ブリッジ5cは伸びが少なく、一気に破断するものであり、しかも、キャップの開封に際して最初に破断する位置に設けられている。従って、一般の需要者は、キャップの開封に際して、その破断の前後での触感の変化を最初に且つ確実に認識することができる。また、ブリッジ5cが一気に破断したときには、「パチッ」という音を発生することもある。従って、図12のように高強度ブリッジ5cを設けることにより、キャップを開封したときの開封感を与えることができる。
【0039】
尚、図12の例では、長フラップ片11aに対応する部分のブリッジ5については、そのブリッジ間隔Lを大きく設定すると同時に、高強度ブリッジ5c以外のブリッジ5については、図4の例と同様、太ブリッジ5aとブリッジ幅dが交互に位置するように小幅で等間隔に配置しておけばよい。
【0040】
さらに、図13の例では、長フラップ片11cに対応する部分のブリッジ5は、全て細幅の細ブリッジ5bとして、この部分でのブリッジ強度が全体的に弱く設定され、他の部分のブリッジ5は、ブリッジ幅dが比較的大きい太ブリッジ5aとなっている。かかる態様では、開封に際して最初に破断するブリッジ5(5b)のブリッジ強度が弱く設定されているため、キャップの開封に際して、ブリッジ5の最初の破断が確実にシールブレークに先立って行われるようになり、これにより、TE性が向上する。また、他のブリッジ5(5a)については、そのブリッジ強度は高く設定されているため、キャッピングに際してのブリッジ破断が有効に防止されるわけである。
【0041】
このように、本発明のプラスチックキャップは、開封に際して切り離されるTEバンドが設けられているにもかかわらず、優れた開栓性が得られるため、その設計の自由度が極めて高く、キャップの開栓性を損なわず、種々の構造を採用することが可能となっている。
【符号の説明】
【0042】
1:頂板部
3:スカート部
5:ブリッジ
5a:太ブリッジ
5b:細ブリッジ
5c:高強度ブリッジ
7:タンパーエビデントバンド(TEバンド)
9:雌螺条
11:フラップ片
11a:長フラップ片
11b:最短フラップ片
11c:中短フラップ片
21:容器口部
23:雄螺条
25:容器顎部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
頂板部と、該頂板部の周縁から降下したスカート部と、該スカート部の下端に破断可能な複数のブリッジを介して連結されたタンパーエビデントバンドとを備え、該タンパーエビデントバンドの内面には、内方且つ上方を指向している複数のフラップ片が周方向に間隔をおいて配列されており、該スカート部内面に容器口部の外面に形成されている容器の雄螺条と螺子係合するキャップの雌螺条が形成されているプラスチックキャップにおいて、
前記複数のフラップ片は、その付け根からの長さに分布を有しており、最も長さの長い長フラップ片に対して対向する側に位置するフラップ片は、長フラップ片より短い長さの短フラップ片となっていることを特徴とするプラスチックキャップ。
【請求項2】
前記キャップの雌螺条は、一巻きより長く且つ螺条開始点と螺条終点とが同一軸線上には位置しないように延びており、前記長フラップ片を含む位置でのスカート部の側断面における該雌螺条の数が、前記短フラップ片を含む位置でのスカート部の側断面における該雌螺条の数よりも少なくなるように、前記長フラップ片及び短フラップ片の位置が設定されている請求項1に記載のプラスチックキャップ。
【請求項3】
前記長フラップ片が形成されている部分に対応する位置に形成されているブリッジには、前記短フラップ片が形成されている部分に対応する位置に形成されているブリッジに比して、幅広に形成されている高強度ブリッジが含まれている請求項1または2に記載のプラスチックキャップ。
【請求項4】
前記長フラップ片が形成されている部分に対応する位置に形成されているブリッジは、前記短フラップ片が形成されている部分に対応する位置に形成されているブリッジに比して、低強度に形成されている請求項1または2に記載のプラスチックキャップ。
【請求項5】
前記短フラップ片は、前記長フラップ片に対して対向する側に位置する最短フラップ片と該長フラップ片と該最短フラップ片との間に位置し、該最短フラップ片より長さの長い中短フラップ片とからなる請求項1乃至4に記載のプラスチックキャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−197087(P2012−197087A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61075(P2011−61075)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000228442)日本クラウンコルク株式会社 (382)
【Fターム(参考)】