プラスチックボトル及びそれを用いた飲料製品
【課題】本発明の目的は、胴部に減圧吸収部を設けたプラスチックボトルにおいて、減圧吸収部のみならず、ボトル胴部全体を均等に変形させることで、軽量で薄肉厚のボトルであっても高い減圧吸収能力を持たせることである。
【解決手段】本発明に係るプラスチックボトルは、柱部32のいずれか1つを第1柱部32aとし、第1柱部32aの2つ隣の一方の柱部を第3柱部32gとし、第1柱部32aと第3柱部32gとの間に位置する柱部を第2柱部32hと表記したとき、胴部30の水平断面上の、第2柱部32h側の傾斜壁A(31a2)の内面aと第2柱部32h側の傾斜壁B(31h1)の内面bとがなすパネル間角度αが180°以上である。
【解決手段】本発明に係るプラスチックボトルは、柱部32のいずれか1つを第1柱部32aとし、第1柱部32aの2つ隣の一方の柱部を第3柱部32gとし、第1柱部32aと第3柱部32gとの間に位置する柱部を第2柱部32hと表記したとき、胴部30の水平断面上の、第2柱部32h側の傾斜壁A(31a2)の内面aと第2柱部32h側の傾斜壁B(31h1)の内面bとがなすパネル間角度αが180°以上である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックボトル、例えば加熱した飲料等の内容物を充填した後に生じる負圧(減圧)又は内容物の酸化に伴って生じる負圧に対して、スムーズにボトルを変形させることで、外観品質を維持することができるプラスチックボトルに関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックボトルに内容物を充填する時に加熱した状態で行う充填方式がある。このようなホット充填を行うと、内容物が温度低下して室温に戻ったときにボトルに負圧が生じる。ボトルに負圧が生じると、ボトルが内側に変形し、外観を損ねてしまう。
【0003】
また、ボトル内部に残存する酸素によって内容物が酸化される場合がある。このような酸化反応が生じると、消費された酸素の分だけ、体積が小さくなり、結果としてボトルに負圧が生じる。ボトルに負圧が生じると、前記温度降下の場合と同様にボトルが内側に変形し、外観を損ねてしまう。
【0004】
そこで、ボトルに負圧がかかっても、特定の部分に変形を生じさせ、ボトル全体としては外観を損ねる変形の発生を阻止する技術がある。このような変形を生じさせるための特定の部分を減圧吸収部、減圧吸収パネルなどと称する(以下、減圧吸収部という)。減圧吸収部を有するプラスチックボトルとしては多くの形態がある(その一例として例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−63516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
減圧吸収部のみで応力を緩和するとなれば、減圧吸収部を大きくする方法が考えられるが、減圧吸収部を大きくし過ぎると容器容量が少なくなるという欠点がある。また、デザイン上の制約が大きくなるという欠点もある。したがって、減圧吸収部の大きさには限度があるため、その形状及び配置について工夫が凝らされている。
【0007】
減圧吸収部を胴部に複数配置した特許文献1などをはじめとするプラスチックボトルは、所定限度の負圧までは減圧吸収部の変形によってボトル全体の形状を維持するが、当該所定限度の負圧を超えると変形についての臨界点を越えたこととなり、ボトル全体で大きな変形を生じて外観不良を起こしやすい。すなわち、プラスチック容器は周方向に肉厚分布を持っているため、変形が大きくなると、負圧に耐える構造部分が周方向でそれぞれバランスが崩れた変形挙動を示すことなり、その結果、いびつな変形が誘発される。また、当該所定限度の負圧を超えていなくても、プラスチックボトルに衝撃等の外力が加わったときに、変形についての臨界点を容易に越えてボトル全体で大きな変形を生じて外観不良を起こしやすい。
【0008】
そして、一旦、臨界点を越えて変形が生じると、もとの形状に復元するためには、再度臨界点を超える必要があるため、変形状態が保持されるという外観不良を起こしやすい。
【0009】
そこで本発明の目的は、胴部に減圧吸収部を設けたプラスチックボトルにおいて、減圧吸収部のみならず、ボトル胴部全体を均等に変形させることで、軽量で薄肉厚のボトルであっても高い減圧吸収能力を持たせることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の課題を解決するために、鋭意検討した結果、減圧吸収部のパネル面同士がなすパネル間角度に着目し、パネル間角度を180°以上とすることで、プラスチックボトルが負圧によって容器内部側に変形させられるときに、柱部同士の間隔が広がらないようにすることができ、この結果、減圧吸収部のみならず、ボトル胴部全体を均等に変形させることができることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明に係るプラスチックボトルは、熱可塑性合成樹脂をボトル状にブロー成形して得られ、口部と、該口部から拡径した肩部と、胴部と、底部とが順に連接された形状を有し、かつ、前記胴部に、胴部内側に凹ませた減圧吸収部を周方向に複数配列し、減圧吸収部同士の間を容器高さ方向に伸びる柱部としたプラスチックボトルにおいて、前記柱部のいずれか1つを第1柱部とし、第1柱部の2つ隣の一方の柱部を第3柱部とし、第1柱部と第3柱部との間に位置する柱部を第2柱部と表記したとき、前記胴部の水平断面上の、第1柱部に接続された減圧吸収部の傾斜壁のうち第2柱部側の傾斜壁Aの内面aと第3柱部に接続された減圧吸収部の傾斜壁のうち第2柱部側の傾斜壁Bの内面bとがなすパネル間角度αが180°以上であることを特徴とする。
【0011】
本発明に係るプラスチックボトルでは、前記胴部が、胴部の中央方向に向けて縮径する絞り形状を有することが好ましい。プラスチックボトルが負圧によって容器内部側に変形させられる、すなわち、胴径が小さくなるように変形させられるときに、絞り形状を有する胴部とすれば、減圧吸収面の上端と下端とをスムーズに近づき合うように変形させることができる。この結果、ボトル胴部全体をより均等に変形させることができる。
【0012】
本発明に係るプラスチックボトルでは、前記減圧吸収部の上端に胴部内側に傾斜させた上端側傾斜壁を有し、前記減圧吸収部の下端に胴部内側に傾斜させた下端側傾斜壁を有し、かつ、前記柱部と前記減圧吸収部の傾斜壁とが接続される境界線が、ボトル正面視で、垂直線であるか又は該減圧吸収部の中央側に湾曲した弧線であることが好ましい。プラスチックボトルが負圧によって容器内部側に変形させられる、すなわち、胴径が小さくなるように変形させられるときに、前記境界線をこのような形状とすれば、減圧吸収面の上端と下端とを遠ざけることなく変形初期からスムーズに近づき合うように変形させることができる。この結果、ボトル胴部全体をより均等に変形させることができる。
【0013】
本発明に係るプラスチックボトルでは、前記減圧吸収部の上端の上側に全周連続した環状リブを有し、かつ、前記減圧吸収部の下端の下側に全周連続した環状リブを有することが好ましい。プラスチックボトルを容器内部側に変形させる応力に抗う剛性箇所となり、容器の強度を高め、容器外観が保たれやすくなる。
【0014】
本発明に係る飲料製品は、本発明に係るプラスチックボトルに飲料が加熱充填されたか又は無菌充填システムによって充填されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、胴部に減圧吸収部を設けたプラスチックボトルにおいて、減圧吸収部のみならず、ボトル胴部全体を均等に変形させることで、軽量で薄肉厚のボトルであっても高い減圧吸収能力を持たせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係るプラスチックボトルの一例の概略形状を示す正面図である。
【図2】図1のA−A破断面である。
【図3】図1のA−A破断面であり、パネル間角度αを説明する為の図である。
【図4】パネル間角度αが180°未満の例を示す。図4は比較例である。
【図5】図2に相当するA−A破断面(実線)と、容器内部が負圧となったときの変形後のA−A破断面(点線)とを比較する図である。
【図6】本実施形態に係るプラスチックボトル(図2に相当するA−A破断面を有する)が、負圧による応力を受けたときの柱部が受ける力を説明するための説明図である。
【図7】比較例のプラスチックボトル(図4に相当するA−A破断面を有する)が負圧による応力を受けたときの柱部が受ける力を説明するための図である。
【図8】図1の減圧吸収部の接続部31a3を通る縦破断面を示し、(a)は体積収縮前の状態、(b)は負圧による体積収縮後の状態を示した。
【図9】減圧吸収部の形状の例を示す図であり、(a)は柱部と減圧吸収部の傾斜壁とが接続される境界線(以下単に境界線という。)が直線状である場合、(b)境界線が減圧吸収部の中央側に湾曲した弧線である場合、(c)境界線が減圧吸収部の外側に湾曲した弧線である場合、を示す。
【図10】実施例における減圧時の変形量の測定箇所(A〜G)の位置を示す図である。
【図11】各測定位置における非減圧時の横断面の形状及びパネル間角度を示すずである。
【図12】各測定位置における減圧時の変形量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について実施形態を示して詳細に説明するが本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
【0018】
図1は、本実施形態に係るプラスチックボトルの一例の概略形状を示す正面図である。図2は、図1のA−A破断面である。図3は、図1のA−A破断面であり、パネル間角度αを説明する為の図である。図1〜図3に示すように、本実施形態に係るプラスチックボトル100は、熱可塑性合成樹脂をボトル状にブロー成形して得られ、口部10と、口部10から拡径した肩部20と、胴部30と、底部40とが順に連接された形状を有し、かつ、胴部30に、胴部内側に凹ませた減圧吸収部31(31a〜31h)を周方向S1に複数配列し、減圧吸収部31同士の間を容器高さ方向Hに伸びる柱部32(32a〜32h)としたプラスチックボトルにおいて、柱部32のいずれか1つを第1柱部32aとし、第1柱部32aの2つ隣の一方の柱部を第3柱部32gとし、第1柱部32aと第3柱部32gとの間に位置する柱部を第2柱部32hと表記したとき、胴部30の水平断面上の、第1柱部32aに接続された減圧吸収部(31a,31b)の傾斜壁(31a2,31b1)のうち第2柱部32h側の傾斜壁A(31a2)の内面aと第3柱部32gに接続された減圧吸収部(31h,31g)の傾斜壁(31h1,31g2)のうち第2柱部32h側の傾斜壁B(31h1)の内面bとがなすパネル間角度αが180°以上である。
【0019】
プラスチックボトル100は、熱可塑性合成樹脂をボトル状にブロー成形して得られる。より具体的には、まず、プリフォームを射出成型によって製造し、次にプリフォームをブロー成形することによってプラスチックボトル100を製造する。熱可塑性合成樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂(PP)、シクロオレフィンコポリマー樹脂(COC、環状オレフィン共重合)、アイオノマ樹脂、ポリ‐4‐メチルペンテン−1樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリスチレン樹脂、エチレン‐ビニルアルコール共重合樹脂、アクリロニトリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、又は、4弗化エチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂、アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン樹脂を例示することができる。この中で、PETが特に好ましい。プラスチックボトル100は、例えば200ml〜2000mlの容量とすることが好ましい。
【0020】
プラスチックボトル100は、口部10、肩部20、胴部30及び底部40が順に連接された形状を有する。口部10は中身の飲料を注ぎやすいように通常、1.5〜4cmの直径で形成されており、キャップ(不図示)が装着されることによってボトルの密閉がなされる。なお、図1では、キャップと螺合するネジ部及びネックサポートリングについては図示を省略している。また肩部20は、胴部30につながるように胴部30に向かって胴径を拡径させて錐体形状をしている。なお、図1に示したボトルの肩部20は曲面で形成しているが、複数のカット面から形成されていてもよい。胴部30は、主として消費者に把持される箇所であり、胴部30には、その外側にシュリンクラベル又はロールラベル等の商品表示ラベルが装着される(ラベルは不図示)。底部40は、胴部30とほぼ同じ胴径にて連接されているが、周方向S1に、環状リブ(41a,41b)が複数設けられている。底部40に設けられた環状リブ(41a,41b)は、特に側面からの応力に対する強度を向上させ、ボトル底面が変形することを防止する。
【0021】
減圧吸収部31(31a〜31h)は、胴部30に、その周方向S1に複数配列して設けられている。図1及び図2で示したプラスチックボトル100の場合、8個の減圧吸収部が配列している。本実施形態は減圧吸収部の個数に制限されず、他の形態としては、6個の減圧吸収部が配列する形態、10個の減圧吸収部が配列する形態が例示できる(いずれも不図示。)図2に示すように減圧吸収部31(31a〜31h)は、胴部内側に凹ませた形状を有しており、例えば、減圧吸収部31aは、ほぼ平面状の傾斜壁31a1と傾斜壁31a2を有する。傾斜壁31a1と傾斜壁31a2との接続部31a3は、R部として曲面で接続しているが、ブロー成形の金型に角を設けて、角張らせてもよい。また、接続部31a3に相当する箇所に平坦底を設けてもよい(不図示)。平坦底を設けた場合には、接続部31a3の代わりに、傾斜壁と平坦底との境界に接続部が存在することとなる(当該平坦底を挟んで2箇所に接続部が存在する。)。なお、減圧吸収部31aについて説明したが他の減圧吸収部についても同様である。
【0022】
柱部32(32a〜32h)は、減圧吸収部31同士の間に設けられており、容器高さ方向Hに伸びている。柱部32(32a〜32h)は、容器高さ方向Hに伸びた形状を有することから、特にボトルの積載荷重を支える剛性部となる支柱の役割をなす。柱部32(32a〜32h)の周方向S1の形状は、ボトル主軸の横断面上において円弧状である。なお、柱部の表面を平坦面としてもよく、この場合、柱部の周方向S1の形状は、ボトル主軸の横断面上においてボトル主軸を頂点とする二等辺三角形の底辺に相当する直線状である(不図示)。
【0023】
柱部32(32a〜32h)は、図2に示すように、ボトル主軸の横断面上においてボトル主軸を中心として、同一幅のものが均等間隔で同一円周上に配列されていることが好ましい。また、減圧吸収部31(31a〜31h)は、図2に示すように、ボトル主軸の横断面上においてボトル主軸を中心として、同一幅のものが均等間隔で同一円周上に配列されていることが好ましい。
【0024】
次にパネル間角度αについてさらに図3も参照して説明する。図2に示すように、柱部32(32a〜32h)と減圧吸収部31(31a〜31h)とが、それぞれ同一幅であり、かつ、それぞれ均等間隔で同一円周上に配列されている場合で説明する。任意の柱部32のいずれか1つを第1柱部(ここでは柱部32aとする。)とし、第1柱部32aの2つ隣の一方の柱部を第3柱部(柱部32cと柱部32gが候補としてあがるが、ここでは柱部32gとする。)とし、第1柱部32aと第3柱部32gとの間に位置する柱部を第2柱部32hと表記する。胴部30の水平断面上(ボトル主軸の横断面上)の、第1柱部32aに接続された減圧吸収部(31a,31b)の傾斜壁(31a2,31b1)のうち第2柱部32h側の傾斜壁A(31a2)の内面aと第3柱部32gに接続された減圧吸収部(31h,31g)の傾斜壁(31h1,31g2)のうち第2柱部32h側の傾斜壁B(31h1)の内面bとがなすパネル間角度αを180°以上とする。ここで図4にパネル間角度αが180°未満の例を示す。図4は比較例である。
【0025】
次に、図5に、図2に相当するA−A破断面(実線)と、容器内部が負圧となったときの変形後のA−A破断面(点線)とを比較する図を示す。図5では、容器内部の負圧によって、胴部の断面がほぼ均等に一回り縮んだ状態(体積収縮の状態)を示している。また、図6に、本実施形態に係るプラスチックボトル(図2に相当するA−A破断面を有する)が、負圧による応力を受けたときの柱部が受ける力を説明するための説明図を示す。図7に、比較例のプラスチックボトル(図4に相当するA−A破断面を有する)が負圧による応力を受けたときの柱部が受ける力を説明するための図を示す。
【0026】
本実施形態に係るプラスチックボトルでは、図5に示した、体積収縮前の状態(実線)から、体積収縮後の状態(点線)への移行する過程において、図6に示すように、パネル間角度αが180°以上であるため、柱部と減圧吸収部との接続部である頂点Sと頂点Tとが移行開始時から移行完了時の間において常に近づき合う関係にある。図6において頂点Sと頂点Tとが移行開始時において働く、「近づき合う応力」を太矢印1で表記し、移行完了時において働く、「近づき合う応力」を太矢印2で表記した。
【0027】
一方、図4に示したパネル間角度αが180°未満の比較例のプラスチックボトルでは、図7に示すように、パネル間角度αが180°未満であるため、柱部と減圧吸収部との接続部である頂点Sと頂点Tとが移行開始時から移行完了時の間において、当初は離れ合う関係にあり、収縮途中においてパネル間角度αが180°となるまで離れ合う関係にある。次に収縮途中においてパネル間角度αが180°以上となると、近づき合う関係に変化する。図7において頂点Sと頂点Tとが離れ合う関係にあるときに働く、「離れ合う応力」を太矢印1で表記し、次に頂点Sと頂点Tとが近づき合う関係にあるときに働く、「近づき合う応力」を太矢印2で表記した。
【0028】
図6及び図7を比較すると明らかなように、負圧がかかっていない体積収縮前のプラスチックボトルの形状について、パネル間角度を180°以上とすることで、プラスチックボトルが負圧によって容器内部側に変形させられるときに、柱部同士の間隔が広がらないようにすることができ、この結果、減圧吸収部のみならず、ボトル胴部全体を均等に変形させることができる。本実施形態に係るプラスチックボトルでは、このようにスムーズに体積収縮がなされるため、形状の復元が難しいほどの大きな変形が生じる境界を示す限界変形量が大きい。よって、負圧が大きくなっても形状の復元が難しいほどの大きな変形が生じない。一方、図7に示す比較例のプラスチックボトルを例とするパネル間角度が180°未満の場合、離れ合う応力(太矢印1)から近づき合う応力(太矢印2)に変化するなど応力の変動が生じるため、スムーズに体積収縮がなされない。その結果、前記限界変形量は本実施形態に係るプラスチックボトルと比較すると小さい。よって、負圧が大きくなるにつれて、形状の復元が難しいほどの大きな変形が容易に生じてしまうこととなる。なお、ボトルの胴部の周方向には成形誤差による肉厚差があるため、肉厚が薄いなどの理由で胴部の周方向のうち強度が弱い箇所から限界を越えて大きな変形に至ることが多い。
【0029】
なお、本発明において、傾斜壁Aの内面aと傾斜壁Bの内面bとがなすパネル間角度αを180°以上であるか否かの判断は、図6及び図7で説明したように、ボトルの体積収縮過程において、頂点Sと頂点Tとが常に近づき合う関係にあれば、パネル間角度αを180°以上とし、頂点Sと頂点Tとが初期は離れ合い、次いで近づき合う関係に変化すれば、パネル間角度αを180°未満であると判定を下してもよい。
【0030】
本実施形態に係るプラスチックボトルでは、図1に示したプラスチックボトル100のように、胴部30が、胴部30の中央方向に向けて縮径する絞り形状を有することが好ましい。なお、本実施形態に係るプラスチックボトルは、最細部分が胴部30の中央である形態に限定されない。図8に、図1の減圧吸収部の接続部31a3を通る縦破断面を示し、(a)は体積収縮前の状態、(b)は負圧による体積収縮後の状態を示した。プラスチックボトル100が負圧によって容器内部側に変形させられる、すなわち、胴径が小さくなるように変形させられるときに、絞り形状を有する胴部とすれば、図8に示すように、減圧吸収面の上端35aと下端35bとをスムーズに近づき合うように変形させることができる。つまり、図8(a)の状態から図8(b)の状態に移行するときに、当該変形に対して応力の変動を生じさせるような剛性部が除かれているため、スムーズな変形が可能である。この結果、ボトル胴部全体をより均等に変形させることができる。なお、胴部30が寸胴の場合は、減圧吸収面の上端35aと下端35bとが近づくに際して、減圧吸収面自体がそれを阻止する剛性部として働くため、当該剛性部が変形するときに応力の変動が生じる場合がある。例えば、この剛性部が変形の限界を越えたときに生じる応力の変動である。
【0031】
図9は、減圧吸収部の形状の例を示す図であり、(a)は柱部と減圧吸収部の傾斜壁とが接続される境界線(以下単に境界線という。)が垂直線である場合、(b)境界線が減圧吸収部の中央側に湾曲した弧線である場合、(c)境界線が減圧吸収部の外側に湾曲した弧線である場合、を示す。本実施形態に係るプラスチックボトルは、図1に示したプラスチックボトル100のように、減圧吸収部31aの上端に胴部内側に傾斜させた上端側傾斜壁36aを有し、減圧吸収部31aの下端に胴部内側に傾斜させた下端側傾斜壁36bを有することが好ましい。なお、減圧吸収部31a以外の他の減圧吸収部についても同様である。以降、減圧吸収部31aを代表として説明するが、他の減圧吸収部についても同様である。ここで図9に示したように、柱部32aと減圧吸収部31aの傾斜壁31a2とが接続される境界線(31a4,31a5)が、ボトル正面視で、垂直線であるか(図9(a))又は減圧吸収部31aの中央側に湾曲した弧線(図9(b))であることが好ましい。境界線をこのような形状とすることによって、プラスチックボトルが負圧によって容器内部側に変形させられる、すなわち、胴径が小さくなるように変形させられるときに、減圧吸収面31aの上端35aと下端35bとを遠ざけることなく変形初期からスムーズに近づき合うように変形させることができる(M,Nの動きを太矢印で表記した。)。この結果、ボトル胴部全体をより均等に変形させることができる。境界線(31a4,31a5)を図9(a)(b)の形状とするためには、前述のとおり、上端側傾斜壁36aと下端側傾斜壁36bとを設けることによって、境界線(31a4,31a5)の上端と下端を胴部周方向に移動させることが容易となる。
【0032】
一方、上端側傾斜壁36aと下端側傾斜壁36bの有無にかかわらず、境界線が減圧吸収部の外側に湾曲した弧線である場合(図9(c)は上端側傾斜壁36aと下端側傾斜壁36bとが無しであり、かつ、境界線が減圧吸収部の外側に湾曲した弧線である場合を図示している。上端側傾斜壁36aと下端側傾斜壁36bとが有りであり、かつ、境界線が減圧吸収部の外側に湾曲した弧線である場合は不図示である。)、境界線が内側に三角形PMNに相当する形状を包含し、プラスチックボトルが負圧によって容器内部側に変形させられる、すなわち、プラスチックボトルが、胴径が小さくなるように変形させられるときに、同時に、減圧吸収面31aの上端35aと下端35bとを離すように変形させられる(M,Nの動きを太矢印で表記した。)この変形は、胴径が小さくなるような変形に対して抗力を発生させるため、すなわち、境界線の箇所が剛性部として働くため、プラスチックボトルは、負圧を受けたときにスムーズに変形しにくく、当該剛性部が変形するときに応力の変動が生じる場合がある。例えば、この剛性部が変形の限界を越えたときに生じる応力の変動である。
【0033】
本実施形態に係るプラスチックボトルでは、図1に示したように、減圧吸収部31aの上端35aの上側に全周連続した環状リブ33aを有し、かつ、減圧吸収部31aの下端35bの下側に全周連続した環状リブ33bを有することが好ましい。減圧吸収部31a以外の他の減圧吸収部についても同じ位置関係とする。プラスチックボトル100を容器内部側に変形させる応力に抗う剛性箇所となり、容器の強度を高め、容器外観が保たれやすくなる。
【0034】
以上のとおり、本実施形態に係るプラスチックボトルは、飲料を加熱充填(例えば充填温度80℃、その後5℃へ冷却)したときに、体積収縮をスムーズに行うことができるため、十分な減圧吸収がなされる。なお、本実施形態に係るプラスチックボトルは、飲料を加熱充填するためのボトルに限定されず、無菌充填システムにおいて飲料を充填するためのボトルであってもよい。無菌充填システムにおいて飲料を充填するためのボトルは、加熱充填されるボトルと比べて減圧吸収量は少なくてよいが、特に、肉厚が0.2mm〜0.25mm(例えば350ml容器で樹脂量15g〜20gの場合)のように、軽量化ボトルとした場合、外観を維持することが可能である。
【実施例】
【0035】
以下、実施例を示しながら本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明は実施例に限定して解釈されない。
【0036】
(実施例)
図1に示した形状の350ml容量のポリエチレンテレフタレート製ボトル(樹脂量18g)を準備した。パネル間角度αを182°とした。(1)このボトルの胴部にシュリンクフィルムを巻き、試験用PETボトルを準備した。(2)試験用PETボトルに満注容量まで室温の水を充填した。(3)そして、数1で計算される容量を満注から抜き取った。
(数1)抜き取り容量= {ヘッドスペース容量−(吸収される酸素量,ml+冷却による体積収縮量,ml)}
(4)(3)で作製したボトルの入り味線部分にマーキングを行った。(5)(4)で作製したボトルから(吸収される酸素量,ml+冷却による体積収縮量,ml)で計算される容量を抜き取った。(6)(5)で作製したボトルを強く把持し、実液面を入り味線まで上昇させた状態で、キャッピングを行った。(7)(6)で作製したボトルから手を離し、容器外観の変形状態を目視確認した。入り味が平均の場合と、入り味が下限の場合についてそれぞれ10本のボトルについて評価を行った結果、減圧吸収後のボトル変形はいずれの場合においても0本/10本であった。なお、表1において、入り味が平均の場合及び入り味が下限の場合の各種の量を示した。
【0037】
【表1】
【0038】
また、ボトルの内部空間を減圧した場合、変形開始時の負圧は0.0175MPaであった。
【0039】
(比較例)
パネル間角度αを129°とした以外は実施例1と同じのポリエチレンテレフタレート製ボトルを準備した。同様に、減圧吸収後の変形の有無の評価試験を行った。入り味が平均の場合と、入り味が下限の場合についてそれぞれ10本のボトルについて評価を行った結果、減圧吸収後のボトル変形はいずれの場合においても10本/10本であった。また、ボトルの内部空間を減圧した場合、変形開始時の負圧は0.0120MPaであった。
【0040】
次に実施例のPETボトルについて、減圧吸収前後の変形量について測定した。図10に測定箇所(A〜G)の位置を示し、図11に各測定位置における非減圧時の横断面の形状及び(360°−パネル間角度α)の値を示した。さらに図12に各測定位置における減圧時の変形量を示した。なお、変形量とは、ボトル主軸と減圧吸収部の底(図2の符号31a3で示した箇所に相当)との距離の減圧前後での差の平均値(1ボトルについて、減圧吸収部の底は8箇所あるため、その8個のデータの平均値)である。表2に図11のパネル間角度αを示した。表3に図12の各測定位置における減圧時の変形量のデータをまとめた。
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】
実施例と比較例を比較すると明らかなように、実施例は、変形開始時の負圧が比較例よりも高く、また、減圧吸収させたときのボトル変形が起こっていない。図12及び表2の結果から、減圧吸収部のみではなくボトルの胴部の全体が変形することが可能であり、軽量で薄肉厚のボトルであっても高い減圧吸収能力を有している。図1に示したボトルでは、胴部を絞り形状としているため、胴部の中心部に近づくほど変形量が大きいことがわかる。また、高さ方向に検討すると、減圧吸収部を設けた箇所では変形量の大小差はあるが、いずれの箇所においても、減圧吸収能力が発揮されていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本実施形態に係るプラスチックボトルは、加熱充填される飲料製品に好適に使用される。また、無菌充填システムによる充填方式であっても軽量ボトルとする場合には、好適に使用される。
【符号の説明】
【0045】
100,プラスチックボトル
10,口部
20,肩部
30,胴部
31(31a〜31h),減圧吸収部
31a2,31b1,31h1,31g2,傾斜壁
31a3,傾斜壁31a1と傾斜壁31a2との接続部
31a4,31a5,柱部32aと減圧吸収部31aの傾斜壁31a2とが接続される境界線
32(32a〜32h),柱部
33a,33b,41a,41b,環状リブ
35a,減圧吸収面の上端
35b,減圧吸収面の下端
36a,上端側傾斜壁
36b,下端側傾斜壁
40,底部
S,T,頂点
S1,周方向
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックボトル、例えば加熱した飲料等の内容物を充填した後に生じる負圧(減圧)又は内容物の酸化に伴って生じる負圧に対して、スムーズにボトルを変形させることで、外観品質を維持することができるプラスチックボトルに関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックボトルに内容物を充填する時に加熱した状態で行う充填方式がある。このようなホット充填を行うと、内容物が温度低下して室温に戻ったときにボトルに負圧が生じる。ボトルに負圧が生じると、ボトルが内側に変形し、外観を損ねてしまう。
【0003】
また、ボトル内部に残存する酸素によって内容物が酸化される場合がある。このような酸化反応が生じると、消費された酸素の分だけ、体積が小さくなり、結果としてボトルに負圧が生じる。ボトルに負圧が生じると、前記温度降下の場合と同様にボトルが内側に変形し、外観を損ねてしまう。
【0004】
そこで、ボトルに負圧がかかっても、特定の部分に変形を生じさせ、ボトル全体としては外観を損ねる変形の発生を阻止する技術がある。このような変形を生じさせるための特定の部分を減圧吸収部、減圧吸収パネルなどと称する(以下、減圧吸収部という)。減圧吸収部を有するプラスチックボトルとしては多くの形態がある(その一例として例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−63516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
減圧吸収部のみで応力を緩和するとなれば、減圧吸収部を大きくする方法が考えられるが、減圧吸収部を大きくし過ぎると容器容量が少なくなるという欠点がある。また、デザイン上の制約が大きくなるという欠点もある。したがって、減圧吸収部の大きさには限度があるため、その形状及び配置について工夫が凝らされている。
【0007】
減圧吸収部を胴部に複数配置した特許文献1などをはじめとするプラスチックボトルは、所定限度の負圧までは減圧吸収部の変形によってボトル全体の形状を維持するが、当該所定限度の負圧を超えると変形についての臨界点を越えたこととなり、ボトル全体で大きな変形を生じて外観不良を起こしやすい。すなわち、プラスチック容器は周方向に肉厚分布を持っているため、変形が大きくなると、負圧に耐える構造部分が周方向でそれぞれバランスが崩れた変形挙動を示すことなり、その結果、いびつな変形が誘発される。また、当該所定限度の負圧を超えていなくても、プラスチックボトルに衝撃等の外力が加わったときに、変形についての臨界点を容易に越えてボトル全体で大きな変形を生じて外観不良を起こしやすい。
【0008】
そして、一旦、臨界点を越えて変形が生じると、もとの形状に復元するためには、再度臨界点を超える必要があるため、変形状態が保持されるという外観不良を起こしやすい。
【0009】
そこで本発明の目的は、胴部に減圧吸収部を設けたプラスチックボトルにおいて、減圧吸収部のみならず、ボトル胴部全体を均等に変形させることで、軽量で薄肉厚のボトルであっても高い減圧吸収能力を持たせることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の課題を解決するために、鋭意検討した結果、減圧吸収部のパネル面同士がなすパネル間角度に着目し、パネル間角度を180°以上とすることで、プラスチックボトルが負圧によって容器内部側に変形させられるときに、柱部同士の間隔が広がらないようにすることができ、この結果、減圧吸収部のみならず、ボトル胴部全体を均等に変形させることができることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明に係るプラスチックボトルは、熱可塑性合成樹脂をボトル状にブロー成形して得られ、口部と、該口部から拡径した肩部と、胴部と、底部とが順に連接された形状を有し、かつ、前記胴部に、胴部内側に凹ませた減圧吸収部を周方向に複数配列し、減圧吸収部同士の間を容器高さ方向に伸びる柱部としたプラスチックボトルにおいて、前記柱部のいずれか1つを第1柱部とし、第1柱部の2つ隣の一方の柱部を第3柱部とし、第1柱部と第3柱部との間に位置する柱部を第2柱部と表記したとき、前記胴部の水平断面上の、第1柱部に接続された減圧吸収部の傾斜壁のうち第2柱部側の傾斜壁Aの内面aと第3柱部に接続された減圧吸収部の傾斜壁のうち第2柱部側の傾斜壁Bの内面bとがなすパネル間角度αが180°以上であることを特徴とする。
【0011】
本発明に係るプラスチックボトルでは、前記胴部が、胴部の中央方向に向けて縮径する絞り形状を有することが好ましい。プラスチックボトルが負圧によって容器内部側に変形させられる、すなわち、胴径が小さくなるように変形させられるときに、絞り形状を有する胴部とすれば、減圧吸収面の上端と下端とをスムーズに近づき合うように変形させることができる。この結果、ボトル胴部全体をより均等に変形させることができる。
【0012】
本発明に係るプラスチックボトルでは、前記減圧吸収部の上端に胴部内側に傾斜させた上端側傾斜壁を有し、前記減圧吸収部の下端に胴部内側に傾斜させた下端側傾斜壁を有し、かつ、前記柱部と前記減圧吸収部の傾斜壁とが接続される境界線が、ボトル正面視で、垂直線であるか又は該減圧吸収部の中央側に湾曲した弧線であることが好ましい。プラスチックボトルが負圧によって容器内部側に変形させられる、すなわち、胴径が小さくなるように変形させられるときに、前記境界線をこのような形状とすれば、減圧吸収面の上端と下端とを遠ざけることなく変形初期からスムーズに近づき合うように変形させることができる。この結果、ボトル胴部全体をより均等に変形させることができる。
【0013】
本発明に係るプラスチックボトルでは、前記減圧吸収部の上端の上側に全周連続した環状リブを有し、かつ、前記減圧吸収部の下端の下側に全周連続した環状リブを有することが好ましい。プラスチックボトルを容器内部側に変形させる応力に抗う剛性箇所となり、容器の強度を高め、容器外観が保たれやすくなる。
【0014】
本発明に係る飲料製品は、本発明に係るプラスチックボトルに飲料が加熱充填されたか又は無菌充填システムによって充填されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、胴部に減圧吸収部を設けたプラスチックボトルにおいて、減圧吸収部のみならず、ボトル胴部全体を均等に変形させることで、軽量で薄肉厚のボトルであっても高い減圧吸収能力を持たせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係るプラスチックボトルの一例の概略形状を示す正面図である。
【図2】図1のA−A破断面である。
【図3】図1のA−A破断面であり、パネル間角度αを説明する為の図である。
【図4】パネル間角度αが180°未満の例を示す。図4は比較例である。
【図5】図2に相当するA−A破断面(実線)と、容器内部が負圧となったときの変形後のA−A破断面(点線)とを比較する図である。
【図6】本実施形態に係るプラスチックボトル(図2に相当するA−A破断面を有する)が、負圧による応力を受けたときの柱部が受ける力を説明するための説明図である。
【図7】比較例のプラスチックボトル(図4に相当するA−A破断面を有する)が負圧による応力を受けたときの柱部が受ける力を説明するための図である。
【図8】図1の減圧吸収部の接続部31a3を通る縦破断面を示し、(a)は体積収縮前の状態、(b)は負圧による体積収縮後の状態を示した。
【図9】減圧吸収部の形状の例を示す図であり、(a)は柱部と減圧吸収部の傾斜壁とが接続される境界線(以下単に境界線という。)が直線状である場合、(b)境界線が減圧吸収部の中央側に湾曲した弧線である場合、(c)境界線が減圧吸収部の外側に湾曲した弧線である場合、を示す。
【図10】実施例における減圧時の変形量の測定箇所(A〜G)の位置を示す図である。
【図11】各測定位置における非減圧時の横断面の形状及びパネル間角度を示すずである。
【図12】各測定位置における減圧時の変形量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について実施形態を示して詳細に説明するが本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
【0018】
図1は、本実施形態に係るプラスチックボトルの一例の概略形状を示す正面図である。図2は、図1のA−A破断面である。図3は、図1のA−A破断面であり、パネル間角度αを説明する為の図である。図1〜図3に示すように、本実施形態に係るプラスチックボトル100は、熱可塑性合成樹脂をボトル状にブロー成形して得られ、口部10と、口部10から拡径した肩部20と、胴部30と、底部40とが順に連接された形状を有し、かつ、胴部30に、胴部内側に凹ませた減圧吸収部31(31a〜31h)を周方向S1に複数配列し、減圧吸収部31同士の間を容器高さ方向Hに伸びる柱部32(32a〜32h)としたプラスチックボトルにおいて、柱部32のいずれか1つを第1柱部32aとし、第1柱部32aの2つ隣の一方の柱部を第3柱部32gとし、第1柱部32aと第3柱部32gとの間に位置する柱部を第2柱部32hと表記したとき、胴部30の水平断面上の、第1柱部32aに接続された減圧吸収部(31a,31b)の傾斜壁(31a2,31b1)のうち第2柱部32h側の傾斜壁A(31a2)の内面aと第3柱部32gに接続された減圧吸収部(31h,31g)の傾斜壁(31h1,31g2)のうち第2柱部32h側の傾斜壁B(31h1)の内面bとがなすパネル間角度αが180°以上である。
【0019】
プラスチックボトル100は、熱可塑性合成樹脂をボトル状にブロー成形して得られる。より具体的には、まず、プリフォームを射出成型によって製造し、次にプリフォームをブロー成形することによってプラスチックボトル100を製造する。熱可塑性合成樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂(PP)、シクロオレフィンコポリマー樹脂(COC、環状オレフィン共重合)、アイオノマ樹脂、ポリ‐4‐メチルペンテン−1樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリスチレン樹脂、エチレン‐ビニルアルコール共重合樹脂、アクリロニトリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、又は、4弗化エチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂、アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン樹脂を例示することができる。この中で、PETが特に好ましい。プラスチックボトル100は、例えば200ml〜2000mlの容量とすることが好ましい。
【0020】
プラスチックボトル100は、口部10、肩部20、胴部30及び底部40が順に連接された形状を有する。口部10は中身の飲料を注ぎやすいように通常、1.5〜4cmの直径で形成されており、キャップ(不図示)が装着されることによってボトルの密閉がなされる。なお、図1では、キャップと螺合するネジ部及びネックサポートリングについては図示を省略している。また肩部20は、胴部30につながるように胴部30に向かって胴径を拡径させて錐体形状をしている。なお、図1に示したボトルの肩部20は曲面で形成しているが、複数のカット面から形成されていてもよい。胴部30は、主として消費者に把持される箇所であり、胴部30には、その外側にシュリンクラベル又はロールラベル等の商品表示ラベルが装着される(ラベルは不図示)。底部40は、胴部30とほぼ同じ胴径にて連接されているが、周方向S1に、環状リブ(41a,41b)が複数設けられている。底部40に設けられた環状リブ(41a,41b)は、特に側面からの応力に対する強度を向上させ、ボトル底面が変形することを防止する。
【0021】
減圧吸収部31(31a〜31h)は、胴部30に、その周方向S1に複数配列して設けられている。図1及び図2で示したプラスチックボトル100の場合、8個の減圧吸収部が配列している。本実施形態は減圧吸収部の個数に制限されず、他の形態としては、6個の減圧吸収部が配列する形態、10個の減圧吸収部が配列する形態が例示できる(いずれも不図示。)図2に示すように減圧吸収部31(31a〜31h)は、胴部内側に凹ませた形状を有しており、例えば、減圧吸収部31aは、ほぼ平面状の傾斜壁31a1と傾斜壁31a2を有する。傾斜壁31a1と傾斜壁31a2との接続部31a3は、R部として曲面で接続しているが、ブロー成形の金型に角を設けて、角張らせてもよい。また、接続部31a3に相当する箇所に平坦底を設けてもよい(不図示)。平坦底を設けた場合には、接続部31a3の代わりに、傾斜壁と平坦底との境界に接続部が存在することとなる(当該平坦底を挟んで2箇所に接続部が存在する。)。なお、減圧吸収部31aについて説明したが他の減圧吸収部についても同様である。
【0022】
柱部32(32a〜32h)は、減圧吸収部31同士の間に設けられており、容器高さ方向Hに伸びている。柱部32(32a〜32h)は、容器高さ方向Hに伸びた形状を有することから、特にボトルの積載荷重を支える剛性部となる支柱の役割をなす。柱部32(32a〜32h)の周方向S1の形状は、ボトル主軸の横断面上において円弧状である。なお、柱部の表面を平坦面としてもよく、この場合、柱部の周方向S1の形状は、ボトル主軸の横断面上においてボトル主軸を頂点とする二等辺三角形の底辺に相当する直線状である(不図示)。
【0023】
柱部32(32a〜32h)は、図2に示すように、ボトル主軸の横断面上においてボトル主軸を中心として、同一幅のものが均等間隔で同一円周上に配列されていることが好ましい。また、減圧吸収部31(31a〜31h)は、図2に示すように、ボトル主軸の横断面上においてボトル主軸を中心として、同一幅のものが均等間隔で同一円周上に配列されていることが好ましい。
【0024】
次にパネル間角度αについてさらに図3も参照して説明する。図2に示すように、柱部32(32a〜32h)と減圧吸収部31(31a〜31h)とが、それぞれ同一幅であり、かつ、それぞれ均等間隔で同一円周上に配列されている場合で説明する。任意の柱部32のいずれか1つを第1柱部(ここでは柱部32aとする。)とし、第1柱部32aの2つ隣の一方の柱部を第3柱部(柱部32cと柱部32gが候補としてあがるが、ここでは柱部32gとする。)とし、第1柱部32aと第3柱部32gとの間に位置する柱部を第2柱部32hと表記する。胴部30の水平断面上(ボトル主軸の横断面上)の、第1柱部32aに接続された減圧吸収部(31a,31b)の傾斜壁(31a2,31b1)のうち第2柱部32h側の傾斜壁A(31a2)の内面aと第3柱部32gに接続された減圧吸収部(31h,31g)の傾斜壁(31h1,31g2)のうち第2柱部32h側の傾斜壁B(31h1)の内面bとがなすパネル間角度αを180°以上とする。ここで図4にパネル間角度αが180°未満の例を示す。図4は比較例である。
【0025】
次に、図5に、図2に相当するA−A破断面(実線)と、容器内部が負圧となったときの変形後のA−A破断面(点線)とを比較する図を示す。図5では、容器内部の負圧によって、胴部の断面がほぼ均等に一回り縮んだ状態(体積収縮の状態)を示している。また、図6に、本実施形態に係るプラスチックボトル(図2に相当するA−A破断面を有する)が、負圧による応力を受けたときの柱部が受ける力を説明するための説明図を示す。図7に、比較例のプラスチックボトル(図4に相当するA−A破断面を有する)が負圧による応力を受けたときの柱部が受ける力を説明するための図を示す。
【0026】
本実施形態に係るプラスチックボトルでは、図5に示した、体積収縮前の状態(実線)から、体積収縮後の状態(点線)への移行する過程において、図6に示すように、パネル間角度αが180°以上であるため、柱部と減圧吸収部との接続部である頂点Sと頂点Tとが移行開始時から移行完了時の間において常に近づき合う関係にある。図6において頂点Sと頂点Tとが移行開始時において働く、「近づき合う応力」を太矢印1で表記し、移行完了時において働く、「近づき合う応力」を太矢印2で表記した。
【0027】
一方、図4に示したパネル間角度αが180°未満の比較例のプラスチックボトルでは、図7に示すように、パネル間角度αが180°未満であるため、柱部と減圧吸収部との接続部である頂点Sと頂点Tとが移行開始時から移行完了時の間において、当初は離れ合う関係にあり、収縮途中においてパネル間角度αが180°となるまで離れ合う関係にある。次に収縮途中においてパネル間角度αが180°以上となると、近づき合う関係に変化する。図7において頂点Sと頂点Tとが離れ合う関係にあるときに働く、「離れ合う応力」を太矢印1で表記し、次に頂点Sと頂点Tとが近づき合う関係にあるときに働く、「近づき合う応力」を太矢印2で表記した。
【0028】
図6及び図7を比較すると明らかなように、負圧がかかっていない体積収縮前のプラスチックボトルの形状について、パネル間角度を180°以上とすることで、プラスチックボトルが負圧によって容器内部側に変形させられるときに、柱部同士の間隔が広がらないようにすることができ、この結果、減圧吸収部のみならず、ボトル胴部全体を均等に変形させることができる。本実施形態に係るプラスチックボトルでは、このようにスムーズに体積収縮がなされるため、形状の復元が難しいほどの大きな変形が生じる境界を示す限界変形量が大きい。よって、負圧が大きくなっても形状の復元が難しいほどの大きな変形が生じない。一方、図7に示す比較例のプラスチックボトルを例とするパネル間角度が180°未満の場合、離れ合う応力(太矢印1)から近づき合う応力(太矢印2)に変化するなど応力の変動が生じるため、スムーズに体積収縮がなされない。その結果、前記限界変形量は本実施形態に係るプラスチックボトルと比較すると小さい。よって、負圧が大きくなるにつれて、形状の復元が難しいほどの大きな変形が容易に生じてしまうこととなる。なお、ボトルの胴部の周方向には成形誤差による肉厚差があるため、肉厚が薄いなどの理由で胴部の周方向のうち強度が弱い箇所から限界を越えて大きな変形に至ることが多い。
【0029】
なお、本発明において、傾斜壁Aの内面aと傾斜壁Bの内面bとがなすパネル間角度αを180°以上であるか否かの判断は、図6及び図7で説明したように、ボトルの体積収縮過程において、頂点Sと頂点Tとが常に近づき合う関係にあれば、パネル間角度αを180°以上とし、頂点Sと頂点Tとが初期は離れ合い、次いで近づき合う関係に変化すれば、パネル間角度αを180°未満であると判定を下してもよい。
【0030】
本実施形態に係るプラスチックボトルでは、図1に示したプラスチックボトル100のように、胴部30が、胴部30の中央方向に向けて縮径する絞り形状を有することが好ましい。なお、本実施形態に係るプラスチックボトルは、最細部分が胴部30の中央である形態に限定されない。図8に、図1の減圧吸収部の接続部31a3を通る縦破断面を示し、(a)は体積収縮前の状態、(b)は負圧による体積収縮後の状態を示した。プラスチックボトル100が負圧によって容器内部側に変形させられる、すなわち、胴径が小さくなるように変形させられるときに、絞り形状を有する胴部とすれば、図8に示すように、減圧吸収面の上端35aと下端35bとをスムーズに近づき合うように変形させることができる。つまり、図8(a)の状態から図8(b)の状態に移行するときに、当該変形に対して応力の変動を生じさせるような剛性部が除かれているため、スムーズな変形が可能である。この結果、ボトル胴部全体をより均等に変形させることができる。なお、胴部30が寸胴の場合は、減圧吸収面の上端35aと下端35bとが近づくに際して、減圧吸収面自体がそれを阻止する剛性部として働くため、当該剛性部が変形するときに応力の変動が生じる場合がある。例えば、この剛性部が変形の限界を越えたときに生じる応力の変動である。
【0031】
図9は、減圧吸収部の形状の例を示す図であり、(a)は柱部と減圧吸収部の傾斜壁とが接続される境界線(以下単に境界線という。)が垂直線である場合、(b)境界線が減圧吸収部の中央側に湾曲した弧線である場合、(c)境界線が減圧吸収部の外側に湾曲した弧線である場合、を示す。本実施形態に係るプラスチックボトルは、図1に示したプラスチックボトル100のように、減圧吸収部31aの上端に胴部内側に傾斜させた上端側傾斜壁36aを有し、減圧吸収部31aの下端に胴部内側に傾斜させた下端側傾斜壁36bを有することが好ましい。なお、減圧吸収部31a以外の他の減圧吸収部についても同様である。以降、減圧吸収部31aを代表として説明するが、他の減圧吸収部についても同様である。ここで図9に示したように、柱部32aと減圧吸収部31aの傾斜壁31a2とが接続される境界線(31a4,31a5)が、ボトル正面視で、垂直線であるか(図9(a))又は減圧吸収部31aの中央側に湾曲した弧線(図9(b))であることが好ましい。境界線をこのような形状とすることによって、プラスチックボトルが負圧によって容器内部側に変形させられる、すなわち、胴径が小さくなるように変形させられるときに、減圧吸収面31aの上端35aと下端35bとを遠ざけることなく変形初期からスムーズに近づき合うように変形させることができる(M,Nの動きを太矢印で表記した。)。この結果、ボトル胴部全体をより均等に変形させることができる。境界線(31a4,31a5)を図9(a)(b)の形状とするためには、前述のとおり、上端側傾斜壁36aと下端側傾斜壁36bとを設けることによって、境界線(31a4,31a5)の上端と下端を胴部周方向に移動させることが容易となる。
【0032】
一方、上端側傾斜壁36aと下端側傾斜壁36bの有無にかかわらず、境界線が減圧吸収部の外側に湾曲した弧線である場合(図9(c)は上端側傾斜壁36aと下端側傾斜壁36bとが無しであり、かつ、境界線が減圧吸収部の外側に湾曲した弧線である場合を図示している。上端側傾斜壁36aと下端側傾斜壁36bとが有りであり、かつ、境界線が減圧吸収部の外側に湾曲した弧線である場合は不図示である。)、境界線が内側に三角形PMNに相当する形状を包含し、プラスチックボトルが負圧によって容器内部側に変形させられる、すなわち、プラスチックボトルが、胴径が小さくなるように変形させられるときに、同時に、減圧吸収面31aの上端35aと下端35bとを離すように変形させられる(M,Nの動きを太矢印で表記した。)この変形は、胴径が小さくなるような変形に対して抗力を発生させるため、すなわち、境界線の箇所が剛性部として働くため、プラスチックボトルは、負圧を受けたときにスムーズに変形しにくく、当該剛性部が変形するときに応力の変動が生じる場合がある。例えば、この剛性部が変形の限界を越えたときに生じる応力の変動である。
【0033】
本実施形態に係るプラスチックボトルでは、図1に示したように、減圧吸収部31aの上端35aの上側に全周連続した環状リブ33aを有し、かつ、減圧吸収部31aの下端35bの下側に全周連続した環状リブ33bを有することが好ましい。減圧吸収部31a以外の他の減圧吸収部についても同じ位置関係とする。プラスチックボトル100を容器内部側に変形させる応力に抗う剛性箇所となり、容器の強度を高め、容器外観が保たれやすくなる。
【0034】
以上のとおり、本実施形態に係るプラスチックボトルは、飲料を加熱充填(例えば充填温度80℃、その後5℃へ冷却)したときに、体積収縮をスムーズに行うことができるため、十分な減圧吸収がなされる。なお、本実施形態に係るプラスチックボトルは、飲料を加熱充填するためのボトルに限定されず、無菌充填システムにおいて飲料を充填するためのボトルであってもよい。無菌充填システムにおいて飲料を充填するためのボトルは、加熱充填されるボトルと比べて減圧吸収量は少なくてよいが、特に、肉厚が0.2mm〜0.25mm(例えば350ml容器で樹脂量15g〜20gの場合)のように、軽量化ボトルとした場合、外観を維持することが可能である。
【実施例】
【0035】
以下、実施例を示しながら本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明は実施例に限定して解釈されない。
【0036】
(実施例)
図1に示した形状の350ml容量のポリエチレンテレフタレート製ボトル(樹脂量18g)を準備した。パネル間角度αを182°とした。(1)このボトルの胴部にシュリンクフィルムを巻き、試験用PETボトルを準備した。(2)試験用PETボトルに満注容量まで室温の水を充填した。(3)そして、数1で計算される容量を満注から抜き取った。
(数1)抜き取り容量= {ヘッドスペース容量−(吸収される酸素量,ml+冷却による体積収縮量,ml)}
(4)(3)で作製したボトルの入り味線部分にマーキングを行った。(5)(4)で作製したボトルから(吸収される酸素量,ml+冷却による体積収縮量,ml)で計算される容量を抜き取った。(6)(5)で作製したボトルを強く把持し、実液面を入り味線まで上昇させた状態で、キャッピングを行った。(7)(6)で作製したボトルから手を離し、容器外観の変形状態を目視確認した。入り味が平均の場合と、入り味が下限の場合についてそれぞれ10本のボトルについて評価を行った結果、減圧吸収後のボトル変形はいずれの場合においても0本/10本であった。なお、表1において、入り味が平均の場合及び入り味が下限の場合の各種の量を示した。
【0037】
【表1】
【0038】
また、ボトルの内部空間を減圧した場合、変形開始時の負圧は0.0175MPaであった。
【0039】
(比較例)
パネル間角度αを129°とした以外は実施例1と同じのポリエチレンテレフタレート製ボトルを準備した。同様に、減圧吸収後の変形の有無の評価試験を行った。入り味が平均の場合と、入り味が下限の場合についてそれぞれ10本のボトルについて評価を行った結果、減圧吸収後のボトル変形はいずれの場合においても10本/10本であった。また、ボトルの内部空間を減圧した場合、変形開始時の負圧は0.0120MPaであった。
【0040】
次に実施例のPETボトルについて、減圧吸収前後の変形量について測定した。図10に測定箇所(A〜G)の位置を示し、図11に各測定位置における非減圧時の横断面の形状及び(360°−パネル間角度α)の値を示した。さらに図12に各測定位置における減圧時の変形量を示した。なお、変形量とは、ボトル主軸と減圧吸収部の底(図2の符号31a3で示した箇所に相当)との距離の減圧前後での差の平均値(1ボトルについて、減圧吸収部の底は8箇所あるため、その8個のデータの平均値)である。表2に図11のパネル間角度αを示した。表3に図12の各測定位置における減圧時の変形量のデータをまとめた。
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】
実施例と比較例を比較すると明らかなように、実施例は、変形開始時の負圧が比較例よりも高く、また、減圧吸収させたときのボトル変形が起こっていない。図12及び表2の結果から、減圧吸収部のみではなくボトルの胴部の全体が変形することが可能であり、軽量で薄肉厚のボトルであっても高い減圧吸収能力を有している。図1に示したボトルでは、胴部を絞り形状としているため、胴部の中心部に近づくほど変形量が大きいことがわかる。また、高さ方向に検討すると、減圧吸収部を設けた箇所では変形量の大小差はあるが、いずれの箇所においても、減圧吸収能力が発揮されていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本実施形態に係るプラスチックボトルは、加熱充填される飲料製品に好適に使用される。また、無菌充填システムによる充填方式であっても軽量ボトルとする場合には、好適に使用される。
【符号の説明】
【0045】
100,プラスチックボトル
10,口部
20,肩部
30,胴部
31(31a〜31h),減圧吸収部
31a2,31b1,31h1,31g2,傾斜壁
31a3,傾斜壁31a1と傾斜壁31a2との接続部
31a4,31a5,柱部32aと減圧吸収部31aの傾斜壁31a2とが接続される境界線
32(32a〜32h),柱部
33a,33b,41a,41b,環状リブ
35a,減圧吸収面の上端
35b,減圧吸収面の下端
36a,上端側傾斜壁
36b,下端側傾斜壁
40,底部
S,T,頂点
S1,周方向
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性合成樹脂をボトル状にブロー成形して得られ、口部と、該口部から拡径した肩部と、胴部と、底部とが順に連接された形状を有し、かつ、前記胴部に、胴部内側に凹ませた減圧吸収部を周方向に複数配列し、減圧吸収部同士の間を容器高さ方向に伸びる柱部としたプラスチックボトルにおいて、
前記柱部のいずれか1つを第1柱部とし、第1柱部の2つ隣の一方の柱部を第3柱部とし、第1柱部と第3柱部との間に位置する柱部を第2柱部と表記したとき、前記胴部の水平断面上の、第1柱部に接続された減圧吸収部の傾斜壁のうち第2柱部側の傾斜壁Aの内面aと第3柱部に接続された減圧吸収部の傾斜壁のうち第2柱部側の傾斜壁Bの内面bとがなすパネル間角度αが180°以上であることを特徴とするプラスチックボトル。
【請求項2】
前記胴部が、胴部の中央方向に向けて縮径する絞り形状を有することを特徴とする請求項1に記載のプラスチックボトル。
【請求項3】
前記減圧吸収部の上端に胴部内側に傾斜させた上端側傾斜壁を有し、前記減圧吸収部の下端に胴部内側に傾斜させた下端側傾斜壁を有し、かつ、前記柱部と前記減圧吸収部の傾斜壁とが接続される境界線が、ボトル正面視で、垂直線であるか又は該減圧吸収部の中央側に湾曲した弧線であることを特徴とする請求項1又は2に記載のプラスチックボトル。
【請求項4】
前記減圧吸収部の上端の上側に全周連続した環状リブを有し、かつ、前記減圧吸収部の下端の下側に全周連続した環状リブを有することを特徴とする請求項1、2又は3に記載のプラスチックボトル。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載のプラスチックボトルに飲料が加熱充填されたか又は無菌充填システムによって充填されたことを特徴とする飲料製品。
【請求項1】
熱可塑性合成樹脂をボトル状にブロー成形して得られ、口部と、該口部から拡径した肩部と、胴部と、底部とが順に連接された形状を有し、かつ、前記胴部に、胴部内側に凹ませた減圧吸収部を周方向に複数配列し、減圧吸収部同士の間を容器高さ方向に伸びる柱部としたプラスチックボトルにおいて、
前記柱部のいずれか1つを第1柱部とし、第1柱部の2つ隣の一方の柱部を第3柱部とし、第1柱部と第3柱部との間に位置する柱部を第2柱部と表記したとき、前記胴部の水平断面上の、第1柱部に接続された減圧吸収部の傾斜壁のうち第2柱部側の傾斜壁Aの内面aと第3柱部に接続された減圧吸収部の傾斜壁のうち第2柱部側の傾斜壁Bの内面bとがなすパネル間角度αが180°以上であることを特徴とするプラスチックボトル。
【請求項2】
前記胴部が、胴部の中央方向に向けて縮径する絞り形状を有することを特徴とする請求項1に記載のプラスチックボトル。
【請求項3】
前記減圧吸収部の上端に胴部内側に傾斜させた上端側傾斜壁を有し、前記減圧吸収部の下端に胴部内側に傾斜させた下端側傾斜壁を有し、かつ、前記柱部と前記減圧吸収部の傾斜壁とが接続される境界線が、ボトル正面視で、垂直線であるか又は該減圧吸収部の中央側に湾曲した弧線であることを特徴とする請求項1又は2に記載のプラスチックボトル。
【請求項4】
前記減圧吸収部の上端の上側に全周連続した環状リブを有し、かつ、前記減圧吸収部の下端の下側に全周連続した環状リブを有することを特徴とする請求項1、2又は3に記載のプラスチックボトル。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載のプラスチックボトルに飲料が加熱充填されたか又は無菌充填システムによって充填されたことを特徴とする飲料製品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−285207(P2010−285207A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−142560(P2009−142560)
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【出願人】(307027577)麒麟麦酒株式会社 (350)
【出願人】(391058381)キリンビバレッジ株式会社 (94)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【出願人】(307027577)麒麟麦酒株式会社 (350)
【出願人】(391058381)キリンビバレッジ株式会社 (94)
【Fターム(参考)】
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