説明

プラスチックラベル用コーティング剤及びプラスチックラベル

【課題】本発明は、グラビア印刷やフレキソ印刷などの印刷適性に優れ、さらに硬化速度が速く生産性に優れ、シュリンク加工などの加工に対する追従性が良好なコーティング剤であり、硬化後は強靱性、耐傷つき性、耐薬品性に優れた強固なコーティング層を形成するコーティング剤を提供することにある。また、該コーティング剤を用いた表面の強靱性と耐薬品性、耐傷つき性に優れたプラスチックラベル、およびその製造方法を提供することにある。
【解決手段】本発明の活性エネルギー線硬化性のプラスチックラベル用コーティング剤は、オキセタン化合物、エポキシ化合物、及び、1分子中に(メタ)アクリロイル基とビニルエーテル基を少なくとも1つずつ有する化合物を含むことを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックラベル用コーティング剤及びプラスチックラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、お茶や清涼飲料水等の飲料用容器として、PETボトルなどのプラスチック製ボトルや、ボトル缶等の金属製ボトル等が広く用いられている。これらの容器には、表示や装飾性、機能性の付与のため、プラスチックラベルを装着する場合が多く、このプラスチックラベルには、装飾性、加工性(容器への追従性)、広い表示面積等のメリットから、シュリンクラベルやストレッチラベルが広く使用されている。通常これらのラベル表面には、文字やデザインなどの装飾性付与や、傷防止、滑り性などの機能性付与の目的で、インキをはじめとするコーティング剤が、塗布・印刷される。
【0003】
これらのコーティング剤には、シュリンク加工などそれぞれのラベル加工工程に適した加工適性が求められ、また、硬化後のコーティング層としては、流通過程で削れたりして、装飾性や機能が低下することのない強靱性が求められる。特に、シュリンクフィルムの分野では、近年、容器の形状の複雑化に伴って、シュリンク加工時の変形への追従性などの加工性の向上要求はますます厳しくなってきており、加工性と強靱性の高いレベルでの両立が急務である。さらには、耐薬品性、耐熱性など更なる機能付与の要求も高まってきている。
【0004】
また、これらのコーティング剤が、印刷インキとして用いられる場合等には、優れた印刷性(表現性)を有する観点などから、塗工方法としては、グラビア印刷が一般的に用いられている。グラビアインキは通常多量の有機溶剤を含んでいるため、製造工程において蒸発した溶剤等を処理する必要があり、装置自体や、触媒の交換等の維持費などが高価であるため、コスト面での負担が大きいことが問題となっている。他方、有機溶剤を用いない水性インキの場合には、乾燥に時間を要するため印刷速度が遅く、生産性の低下を招くという問題があった。
【0005】
上記の要求を満たすべく、エポキシ樹脂をベースとした実質的に溶剤を用いないコーティング剤の改良が進められており、比較的脆いエポキシ樹脂に柔軟性を付与したコーティング剤として、オキセタン化合物を混合したエポキシ化合物からなるエネルギー線硬化型組成物(例えば、特許文献1参照)が知られている。しかし、粘度および硬化物の引張強度といった基礎物性についての検討にとどまっており、実用上のコーティング加工性やシュリンク加工に対する追従性については何らの検討もなされておらず、ラベル用途、特に、シュリンクラベル用途に適用するには不十分であった。また、耐薬品性などの機能に関しては、何ら検討されていなかった。さらに、この組成物は硬化速度が十分でなく、特にグラビア印刷、フレキソ印刷においては工程速度の高速化が困難であり、生産性の向上を図るためには問題を有していた。
【0006】
一方、低粘度で耐溶剤性に優れた無溶剤型のコーティング剤としては、1分子中に1つ以上の(メタ)アクリレート基と1つ以上のビニルエーテル基とを有する化合物を含んでなる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物および該組成物からなるインクジェット用インキ(例えば、特許文献2参照)が知られている。しかし、該文献には、エポキシ樹脂やオキセタン化合物への適用や硬化速度に関しては何ら記載されていなかった。
【0007】
【特許文献1】特開平11−140279号公報
【特許文献2】特開2004−224841号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、低粘度であるためグラビア印刷やフレキソ印刷によるプラスチックフィルムへの印刷適性に優れ、さらに硬化速度が著しく向上するため生産性に優れ、また、硬化後には耐薬品性、耐傷付き性、強靱性及びシュリンク加工などに対する追従性に優れた強固なコーティング層を形成するプラスチックラベル用コーティング剤を提供することにある。また、表面の耐薬品性や耐傷つき性、強靱性に優れたプラスチックラベルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、オキセタン化合物、エポキシ化合物、及び、1分子中に(メタ)アクリロイル基とビニルエーテル基を少なくとも1つずつ有する化合物の3種の化合物を含有することにより、硬化速度が飛躍的に向上し、優れた生産性、加工適性と硬化後の強靱性を有するコーティング剤、および、該特性を有するプラスチックラベルを得ることができることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、オキセタン化合物、エポキシ化合物、及び、1分子中に(メタ)アクリロイル基とビニルエーテル基を少なくとも1つずつ有する化合物を含むことを特徴とする活性エネルギー線硬化性のプラスチックラベル用コーティング剤を提供する。
【0011】
さらに、本発明は、オキセタン化合物とエポキシ化合物の重量比が2:8〜8:2であって、オキセタン化合物とエポキシ化合物の合計量100重量部に対して、1分子中に(メタ)アクリロイル基とビニルエーテル基を少なくとも1つずつ有する化合物を、0.1〜30重量部含有する前記のプラスチックラベル用コーティング剤を提供する。
【0012】
さらに、本発明は、1分子中に(メタ)アクリロイル基とビニルエーテル基を少なくとも1つずつ有する化合物がメタクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル(VEEM)またはアクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル(VEEA)である前記のプラスチックラベル用コーティング剤を提供する。
【0013】
さらに、本発明は、グラビア印刷用又はフレキソ印刷用インキである前記のプラスチックラベル用コーティング剤を提供する。
【0014】
さらに、本発明は、さらに、増感剤および酸化チタンを含有する前記のプラスチックラベル用コーティング剤を提供する。
【0015】
さらに、本発明は、プラスチックラベルがシュリンクラベルである前記のプラスチックラベル用コーティング剤を提供する。
【0016】
さらに、本発明は、前記のプラスチックラベル用コーティング剤を塗布してなるプラスチックラベルを提供する。
【0017】
さらに、本発明は、少なくとも一方の最外層が前記のプラスチックラベル用コーティング剤からなるプラスチックラベルを提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明のプラスチックラベル用コーティング剤は、低粘度であるためグラビア印刷やフレキソ印刷などによるプラスチックフィルムへの塗布性に優れ、またシュリンク加工などの基材フィルムの変形に対する追従性が良好なため、プラスチックラベルの生産効率が向上する。また、硬化後は、強靱性、傷防止性や耐溶剤性に優れるため、本発明のコーティング剤を塗布したプラスチックラベルは、ガラス瓶やPETボトルなどのプラスチック容器などに用いられるラベル用途として特に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、さらに詳しく本発明のプラスチックラベル用コーティング剤及びプラスチックラベルについて説明する。
【0020】
本発明のプラスチックラベル用コーティング剤は、オキセタン化合物(以後、成分Aという)、エポキシ化合物(以後、成分Bという)、及び、1分子中に(メタ)アクリロイル基とビニルエーテル基を少なくとも1つずつ有する化合物(以後、成分Cという)を必須の構成成分として含有する。なお、ここでいう(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基のことを表す。以下においても同様である。
【0021】
本発明の成分Aは、分子内に少なくとも1つのオキセタン環を有する化合物であり、モノマーまたはオリゴマーのいずれでもよい。例えば、特開平8−85775号公報や特開平8−134405号公報に記載されたオキセタン化合物を用いることができ、中でも、1分子中にオキセタン環を1個または2個有する化合物が好ましい。1分子中にオキセタン環を1個有する化合物としては、3−エチル−3−[(フェノキシ)メチル]オキセタン、3−エチル−3−(ヘキシロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(ヒドロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(クロロメチル)オキセタンなどが挙げられる。1分子中にオキセタン環を2個有する化合物としては、1,4−ビス[(3−エチル−3オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、ビス{[1−エチル(3−オキセタニル)メチル]}エーテルなどが挙げられる。さらにこれらの中でも、コーティング加工適性の観点や、コーティング層の硬化性の観点から、特に好ましくは、3−エチル−3−(ヒドロキシメチル)オキセタン、ビス{[1−エチル(3−オキセタニル)メチル]}エーテルである。
【0022】
本発明の成分Bは、分子内に少なくとも1つのエポキシ基を有する公知のエポキシ化合物を用いることができ、例えば、脂肪族エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物や芳香族エポキシ化合物を用いることができる。中でも、高反応速度の観点から、グリシジル基を有する化合物やエポキシシクロヘキサン環を有する化合物が好ましく、2以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物が好ましい。例えば、脂肪族エポキシ化合物としては、プロピレングリコールグリシジルエーテルなどが挙げられる。また、脂環式エポキシ化合物としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス−(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペートなどが挙げられる。芳香族エポキシ化合物としては、ビスフェノールAグリシジルエーテル、ビスフェノールAのグリシジルエーテル縮合物、ノボラック樹脂やクレゾール樹脂のエピクロルヒドリン変性物などが挙げられる。
【0023】
本発明のコーティング剤における、成分Aと成分Bの配合比(重量比)は、2:8〜8:2(成分A/成分Bが0.25〜4)が好ましく、グラビア、フレキソ印刷でコーティングする場合は、4:6〜8:2(成分A/成分Bが2/3〜4)が好ましく、より好ましくは5:5〜8:2(成分A/成分Bが1〜4)である。上記範囲よりも成分Aの量が多くなると、コーティング剤の硬化反応の開始速度が遅くなって、硬化に時間がかかるため生産性が低下したり、通常の硬化工程では未硬化となる場合がある。また、上記範囲よりも成分Bの量が多くなると、コーティング剤の粘度が大きくなってグラビア印刷やフレキソ印刷などのコーティング法で均一に塗布することが困難となったり、硬化反応の停止反応が起こりやすく、低分子量の硬化物となり、硬化後のコーティング層がもろくなる場合がある。
【0024】
本発明の成分Aと成分Bの合計の添加量は、塗布性、硬化性等の観点から、コーティング層の全固形分に対して、30〜99重量%が好ましい。中でも、本発明のコーティング剤が透明コーティング剤であるある場合には、60〜99重量%が好ましく、より好ましくは70〜90重量%である。また、本発明のコーティング剤が顔料を含む印刷インキである場合には、30〜90重量%が好ましく、より好ましく40〜80重量%である。
【0025】
本発明の成分Cは、1分子中に(メタ)アクリロイル基とビニルエーテル基を少なくとも1つずつ有しておればよく、いずれか又は両方の官能基を2つ以上有していてもよい。成分Cとしては、特に限定されないが、下記一般式で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類が好ましく例示される。
【0026】
CH2=CR1−COO−R2−O−CH=CH−R3 (1)
【0027】
なお、式中、R1は水素原子又はメチル基を表す。R2は炭素数2〜20の2価の炭化水素基又は複数の炭化水素基が連結基(例えば、エーテル結合、エステル結合、カーボネート結合など)を介して結合した2価の基を表す。R3は水素原子又は炭素数1〜11の炭化水素基を表す。
【0028】
上記、R2としては、炭素数2〜20(好ましくは2〜15)の直鎖状、分岐鎖状、環状のアルキレン基、エーテル結合、エステル結合などの酸素原子を有する炭素数2〜20(好ましくは2〜15)の直鎖状、分岐鎖状、環状のアルキレン基、炭素数6〜11(好ましくは7〜10)の2価の芳香族炭化水素基などが挙げられる。中でも、炭素数2〜6のアルキレン基、エーテル結合を有する炭素数2〜9のアルキレン基が特に好ましい。
【0029】
上記、R3としては、水素原子又は炭素数1〜11(好ましくは1〜2)の直鎖状、分岐鎖状、環状のアルキル基、炭素数6〜11(好ましくは6〜8)の芳香族基が例示される。
【0030】
成分Cとしては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸1−メチル−3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−ビニロキシメチルプロピル、(メタ)アクリル酸2−メチル−3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1,1−ジメチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸6−ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸p−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸m−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸o−ビニロキシメチルフェニルメチル(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコールモノビニルエーテル等が例示される。
【0031】
中でも、溶解性や硬化性の観点から、特に好ましくは、メタクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル(VEEM)またはアクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル(VEEA)である。
【0032】
成分Cとしては、市販品を用いることも可能であり、例えば、日本触媒(株)製VEEAやVEEMなどが市場で入手可能である。
【0033】
本発明の成分Cの添加量は、グラビア、フレキソ印刷でコーティングする場合は、成分Aと成分Bの合計量(100重量部とする)に対して、0.1〜30重量部が好ましく、より好ましくは0.5〜25重量部である。成分Cの添加量が0.1重量部未満である場合には、成分C添加の効果が小さく、コーティング剤が高粘度となりグラビア、フレキソ印刷で均一に塗布することが困難となり「かすれ」などが生じたり、硬化後のコーティング層の強靱性や硬化速度などが低下する場合がある。また、30重量部を超える場合には、成分Aや成分Bの硬化を阻害してコーティング剤の硬化不良を生じたり、臭気により作業環境が悪化する場合がある。
【0034】
本発明において、成分Aは、硬化反応の停止反応が進みにくいため、高分子量の強靱なコーティング層を形成する特徴を有する反面、開始反応も進みにくいため硬化工程に時間がかかり生産性が低下したり、短い硬化時間では硬化が進まずコーティング層の強靱性が不足する欠点がある。これに対して、成分Bは、開始反応が速く、生産速度は速くなるものの、反応停止も起こりやすいため、硬化物は低分子量となりコーティング層の強靱性が不足する。これらの両者を混合することによっても、ある程度の硬化速度(生産性)と強靱性を得ることは出来るものの、工程速度を速くした場合には、コーティング層の十分な強靱性を得ることは不可能であった。本発明においては、さらに、所定量の成分Cを添加することにより、成分A、B、Cの3成分の相互作用によるものと考えられるが、成分A、成分Bのみの場合と比較して、硬化速度が飛躍的に向上する。このため、短時間の活性エネルギー線照射でコーティング層の硬化が進むため、工程速度の高速化が可能となり生産性が向上する。さらに、停止反応は抑制されるため、高分子量化が可能で高強靱性を達成できる。すなわち、生産性と強靱性を高いレベルで両立させることが可能である。なお、成分Aまたは成分Bのみに成分Cを加えた2成分系の場合には、上記のような効果を得ることはできず、3成分の混合系であることが必要である。さらに、成分Cの希釈効果により、コーティング剤の粘度を低減でき、グラビア、フレキソ印刷等における塗布性が良好となる。また、本発明の成分Cはラジカル反応性のアクリロイル基とカチオン反応性のビニルエーテル基を有する。このため、カチオン重合開始剤系、またはカチオン重合開始剤とラジカル重合開始剤の併用系においては、ラジカル重合とカチオン重合の両機構で重合が進行する。これにより、ラジカル重合反応の反応性の速さに起因して硬化速度が速くなる一方、反応はカチオン重合でも進行し、この反応は酸素硬化阻害などを受けにくいため、高分子量体が得られる。
【0035】
本発明においては、成分A、B、Cの混合により、硬化速度が著しく速くなるため、生産性が向上する。また、成分A、Cの効果により、高分子量体が得られるため、強靱性、耐傷付き性、耐薬品性、耐熱性が向上する。また、成分A、Cが低粘度であるため、グラビア、フレキソ印刷の際の塗布性が良好となる。さらに、カチオン重合することで得られたコーティング層は、カチオン重合特有の硬化収縮の低さ及び成分Cによる強靱性付与の相乗効果に起因すると考えられるが、シュリンク加工追従性が良好となる。
【0036】
本発明のコーティング剤には、耐溶剤性や滑り性、撥水性などを向上させる観点で、分子内に少なくとも1つのエポキシ基を有するシリコーン(エポキシ変性シリコーン)を添加してもよい。なお、ベースとなるシリコーンは、主鎖がシロキサン結合からなるポリシロキサンであればよい(例えば、全ての側鎖、末端がメチル基からなるジメチルシリコーン、側鎖の一部にフェニル基を含むメチルフェニルシリコーン、側鎖の一部が水素であるメチルハイドロジェンシリコーンなどが挙げられる)。また、エポキシ基は、主鎖の両末端または片末端に有していてもよいし、側鎖に有していてもよく、例えば、下記の構造式で表される化合物が挙げられる。
【0037】
【化1】

【0038】
なお、式中のR4、R5、R6は水素原子または炭化水素基であり、酸素原子、窒素原子、硫黄原子を含んでいてもよい。好ましくは水素原子、メチル基、フェニル基であり、特に好ましくはメチル基である。また、式中のm、nは、1以上の整数である。さらに、式中のX1、X2はエポキシ基であり、例えば、下記の構造式で示すように、エポキシ基の酸素原子が環状脂肪族骨格を含まないもの(左図:脂肪族エポキシ基と称する)であってもよいし、エポキシ基の酸素原子が環状脂肪族骨格を含んで形成されたもの(右図:脂環式エポキシ基と称する)であってもよい。
【0039】
【化2】

【0040】
なお、式中のR7、R8は水素原子または炭化水素基であり、酸素原子、窒素原子、硫黄原子を含んでいてもよい。また、例えば、特開平10−259239号公報に記載のエポキシ変性シリコーン化合物を用いることも可能である。
【0041】
上記の中でも、ジメチルシリコーンの側鎖の一部または少なくとも一つの末端基がエポキシ基であるものが特に好ましい。また、シリコーン樹脂中の、エポキシ基の官能基当量は、硬化性の観点から、300〜5000が好ましく、より好ましくは、400〜4000である。
【0042】
上記エポキシ変性シリコーンを添加する場合の含有量は、グラビア、フレキソ印刷でコーティングする場合は、成分Aと成分Bの合計量100重量部に対して、0.1〜20重量部が好ましく、より好ましくは0.2〜10重量部、さらに好ましくは、0.3〜5重量部である。含有量が0.1重量部未満である場合には、エポキシ変性シリコーン添加の効果が小さく、耐溶剤性や滑り性、撥水性などが低下する場合がある。また、20重量部を超える場合には、コーティング剤の粘度が高くなり、グラビア、フレキソ印刷で均一に塗布することが困難となる場合がある。
【0043】
本発明のコーティング剤は、可視光、紫外線、電子線などの活性エネルギー線によって硬化させることができ、シュリンクフィルムなどの熱により変形を起こしやすい基材にも用いやすい等、加工性の観点で好ましい。中でも、本発明のコーティング剤は紫外線硬化性、近紫外線硬化性であることが好ましい。好ましい吸収波長は300〜460nmである。
【0044】
上記のように、本発明のコーティング剤を、活性エネルギー線硬化性コーティング剤として用いるためには、コーティング剤中には、光重合開始剤を添加することが好ましい。本発明の光重合開始剤としては、特に限定されず、光ラジカル重合開始剤及び光カチオン重合開始剤のどちらを用いてもよいが、好ましくは光カチオン重合開始剤であり、両方の併用がさらに好ましい。本発明のコーティング剤に用いられる光ラジカル重合開始剤としては、特に限定されないが、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、アセトフェノン系、アシルフォスフィン系重合開始剤等が挙げられる。本発明のコーティング剤に用いられる光カチオン重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、ジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、シラノール/アルミニウム錯体、スルホン酸エステル、イミドスルホネートなどが挙げられる。中でも、反応性の観点から、ジアリールヨードニウム塩やトリアリールスルホニウム塩が特に好ましい。また、本発明の光重合開始剤の含有量は、特に限定されないが、コーティング剤全体に対して、0.5〜7重量%が好ましく、より好ましくは1〜5重量%である。
【0045】
本発明のコーティング剤を、印刷インキとして用いる場合には、要求に応じて、顔料、染料やその他の添加剤を添加することができる。例えば、コーティング剤には、顔料を含有することが好ましい。顔料としては、有機、無機の着色顔料が使用でき、酸化チタン(二酸化チタン)等の白顔料、銅フタロシアニンブルー等の藍顔料、カーボンブラック、アルミフレーク、雲母(マイカ)等が用途に合わせて選択、使用できる。また、顔料として、その他にも、光沢調製などの目的で、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカ、アクリルビーズ等の体質顔料も使用できる。顔料の含有量は、顔料の種類や目的の色の濃度等により任意に設計できるが、コーティング剤全体に対して、0.1〜70重量%程度が好ましい。
【0046】
中でも、本発明のコーティング剤を、白色印刷インキとして用いる場合には、顔料としては、酸化チタンが好ましく用いられる。酸化チタンとしては、ルチル型(正方晶高温型)、アナターゼ型(正方晶低温型)、ブルッカイト型(斜方晶)のいずれを用いてもよいが、例えば、石原産業(株)製酸化チタン粒子「タイペーク」等が入手可能である。また、酸化チタン粒子の平均粒径(凝集体を形成している場合には、凝集体の粒径、いわゆる2次粒径)は、例えば0.01〜1μm、好ましくは0.1〜0.5μm程度である。平均粒径が0.01μm未満では分散性が悪くなり、1μmを超えるとフィルム表面が粗くなり、外観が悪くなりやすい。また、本発明の白色印刷インキの酸化チタンの含有量は、隠蔽性と粗大突起形成抑制の観点から、コーティング剤全体に対して、20〜60重量%が好ましく、より好ましくは30〜55重量%である。
【0047】
また、本発明のコーティング剤には、生産効率を高める観点から、必要に応じて、増感剤を添加することが好ましい。上記酸化チタン顔料などを用いる場合には、特に有効である。その場合の増感剤は、用いる活性エネルギー線の種類などを勘案して、既存の増感剤から選択することができる。例えば、(1)脂肪族、芳香族アミン、ピペリジンなど窒素を環に含むアミンなどのアミン系増感剤、(2)アリル系、o−トリルチオ尿素などの尿素系増感剤、(3)ナトリウムジエチルジチオホスフェートなどのイオウ化合物系増感剤、(4)アントラセン系増感剤、(5)N,N−ジ置換−p−アミノベンゾニトリル系化合物などのニトリル系増感剤、(6)トリ−n−ブチルホスフィンなどのリン化合物系増感剤、(7)N−ニトロソヒドロキシルアミン誘導体、オキサゾリジン化合物などの窒素化合物系増感剤、(8)四塩化炭素などの塩素化合物系増感剤などの増感剤が挙げられる。上記でも、特に、アントラセン系増感剤は増感作用が強く好ましい。中でも、チオキサントンや9,10−ジブトキシアントラセンなどが好ましく使用される。また、増感剤の含有量としては、特に限定されないが、コーティング剤全体に対して、0.1〜5重量%が好ましく、特に好ましくは0.3〜3重量%である。
【0048】
また、本発明のコーティング剤は、必要に応じて、滑剤を含有してもよい。ここでいう滑剤とは、例えば、ポリエチレンワックス等のポリオレフィン系ワックス、脂肪酸アマイド、脂肪酸エステル、パラフィンワックス、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ワックス、カルナウバワックス等の各種ワックス類が例示される。
【0049】
本発明のコーティング剤には、上記の他にも、分散剤、酸化防止剤、香料、消臭剤、安定剤などを、本発明の効果を損なわない程度に、添加してもよい。
【0050】
本発明のコーティング剤中の、反応に関与せず主に分散剤として使用される溶剤の含有量は、5重量%以下であることが好ましく、より好ましくは1重量%以下であり、さらに、実質的に溶剤を含有しないことが最も好ましい。なお、ここでいう溶剤とは、例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、メチルアルコール、エチルアルコールなどの有機溶媒や水のことをいい、グラビア、フレキソ印刷インキ等では、塗布加工性やコーティング剤中の各成分の相溶性や分散性を改良する目的で通常用いられているものである。本発明のコーティング剤は、無溶剤でも、優れた塗布性、成分同士の分散性を発揮できるため、溶剤の量を極めて少なくできるため、溶媒の除去が不要となり、高速化、コストダウンがはかれるほか、環境負荷を少なくすることが可能である。なお、活性エネルギー線により反応してポリマー中に含まれる溶剤は、5重量%以上含まれる場合がある。
【0051】
本発明のコーティング剤の粘度(23±2℃)は、特に限定されないが、例えば、グラビア印刷によりコーティング層が形成される場合には、100〜2000mPa・sが好ましく、より好ましくは200〜1000mPa・sである。粘度が2000mPa・sを超える場合には、グラビア印刷性が低下し、「かすれ」などが生じて、加飾性が低下する場合がある。また、粘度が100mPa・s未満の場合には、顔料や添加剤が沈降しやすくなる等、貯蔵安定性が低下する場合がある。コーティング剤の粘度は、オキセタンとエポキシの配合比、増粘剤、減粘剤等によって制御することが可能である。なお、本明細書中、「粘度」とは、特に限定しない限り、B型粘度計(単一円筒形回転粘度計)を用い、23±2℃、円筒の回転数60回転の条件下、JIS Z 8803に準じて測定した値を意味している。
【0052】
本発明のコーティング剤は、コストや生産性、印刷の装飾性などの観点から、グラビア印刷またはフレキソ印刷方式でコーティングされることが好ましい。中でも、グラビア印刷方式が特に好ましい。
【0053】
本発明のコーティング剤は、装飾性付与のための印刷インキ、ラベル表面の滑り性を向上させるための透明コーティング剤(滑りメジウム)や、ラベルのつや消しのためのつや消しコーティング剤(マットニス)などとして使用することができる。中でも、表印刷、表メジウムなど、本発明のコーティング剤によるコーティング層がラベルの最外層(容器等の被着物側と反対側の最表層)として設けられる用途の場合に、本発明の耐傷付き性、強靱性の効果を最も顕著に発揮できるため好ましい。
【0054】
本発明のコーティング剤は、プラスチックラベル用途に用いられ、具体的には、ストレッチラベル、シュリンクラベル、ストレッチシュリンクラベル、インモールドラベル、タックラベル、ロールラベル(巻き付け方式の糊付ラベル)、感熱接着ラベル等に用いることができる。中でも、本発明のコーティング剤の耐熱性、強靱性や加工時の追従性の観点から、シュリンクラベル用途として、特に好ましく用いられる。
【0055】
本発明のプラスチックラベルは、プラスチックフィルムの少なくとも一方の面に、本発明のコーティング剤を塗布したコーティング層が設けられてなる。本発明のコーティング剤からなるコーティング層は、優れた耐傷付き性、強靱性などを有するため、ラベルの最表層(例えば、最外層や最内層)に設けられることが好ましく、中でも、ラベルの最外層(容器に装着した際に、容器に接触する側と反対側の最表層)に設けられることが特に好ましい。本発明のコーティング層を最外層としたプラスチックラベルは、製造工程、搬送工程や市場で使用される際に、表面が傷付きにくく、装飾性が損なわれにくいため好ましい。
【0056】
本発明のプラスチックラベルに用いられるプラスチックフィルムの種類は、要求物性、用途、コストなどに応じて、適宜選択することが可能であり、特に限定されないが、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、アラミド、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、アクリル等の樹脂を用いることができる。中でも好ましくは、ポリエステル系フィルム、ポリオレフィン系フィルム、ポリスチレン系フィルム、ポリ塩化ビニルフィルムであり、さらに好ましくは、ポリエステル系フィルム、ポリオレフィン系フィルムである。ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリ(エチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート)(PEN)等を用いることができ、ポリオレフィンとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン、環状オレフィン等を用いることが可能である。
【0057】
上記プラスチックフィルムは、単層フィルムであってもよいし、要求物性、用途などに応じて、複数のフィルム層を積層した積層フィルムであってもよい。また、積層フィルムの場合、異なる樹脂からなるフィルム層を積層していてもよい。例えば、中心層と表層部(内層、外層)からなる3層積層フィルムで、中心層がポリオレフィン系樹脂やポリスチレン系樹脂からなり、表層がポリエステル系樹脂からなるフィルム等であってもよい。また、要求物性、用途などに応じて、未延伸フィルム、1軸配向フィルム、2軸配向フィルムのいずれを用いてもよい。特に、プラスチックラベルがシュリンクラベルである場合には、1軸または2軸配向フィルムが用いられることが多く、中でも、フィルム幅方向(ラベル周方向となる方向)に強く配向しているフィルム(実質的に幅方向に1軸延伸されたフィルム)が一般的に用いられる。
【0058】
上記プラスチックフィルムの熱収縮率(90℃、10秒)は、特に限定されないが、例えばシュリンクラベル用途の場合であれば、シュリンク加工性等の観点から、長手方向が−3〜15%、幅方向が20〜80%が好ましい。
【0059】
上記プラスチックフィルムの厚みは、用途によって異なり、特に限定されないが、10〜200μmが好ましく、例えば、シュリンクラベル用途の場合には、20〜80μmが好ましく、さらに好ましくは30〜60μmである。
【0060】
本発明の樹脂層のコーティング層の厚みは、用途によっても異なり、特に限定されないが、0.1〜15μmが好ましく、特に好ましくは0.5〜10μmである。コーティング層の厚みが0.1μm未満である場合には、コーティング層を均一に設けることが困難である場合があり、印刷層として用いる場合などには、部分的な「かすれ」が起こったりして、装飾性が損なわれたり、デザイン通りの印刷が困難となる場合がある。また、コーティング層厚みが15μmを超える場合には、コーティング剤を多量に消費するため、コストが高くなったり、均一に塗布することが困難となったり、また、コーティング層がもろくなって、剥離しやすくなったりする。中でも、本発明のコーティング層が白色インキ層である場合には、厚みは、隠蔽性の観点から、3〜10μmが好ましく、コーティング層が透明コーティング層である場合には、透明性の観点から、0.2〜3μmが好ましい。なお、本発明のコーティング層は、硬化前後でコーティング層厚みは殆ど変化しない。
【0061】
本発明のコーティング層は、印刷インキ層の他、トップコート層、アンカーコート層など、様々な層として用いることができるが、特に、耐傷つき性を要する場合に好ましく用いられる。コーティング層が2層のフィルム層に挟まれて保護されている場合などには本発明の効果は発揮しにくいが、コーティング層が最外層に設けられる場合、例えば、表層印刷インキ層やトップコート層として用いる場合に、本発明の効果を最も発揮できるため好ましい。
【0062】
また、本発明のプラスチックラベルは、上述の通り、ストレッチラベル、シュリンクラベル、ストレッチシュリンクラベル、インモールドラベル、タックラベル、ロールラベル(巻き付け方式の糊付ラベル)、感熱接着ラベル等の何れであってもよいが、本発明のコーティング層はシュリンク加工などの加工時の変形に対する追従性が良好であるため、シュリンクラベルとして最も好適に用いられる。
【0063】
本発明のプラスチックラベルは、ラベルのコーティング層の表面を、メチルエチルケトンをしみこませた綿棒で、往復10回こすった(MEKラビング試験という)後にも、インキが剥がれないことが好ましい。上記MEKラビング試験において、コーティング層が剥がれる場合には、使用する際に印刷などが剥がれやすく、装飾性が低下する場合がある。
【0064】
本発明のプラスチックラベルには、他にも、本発明のコーティング層とは異なる印刷層が設けられていてもよい。本発明のコーティング層とは異なる印刷層を設ける場合に、印刷層は、グラビア印刷やフレキソ印刷等の慣用の印刷方法により形成することができる。該印刷層の形成に用いられる印刷インキは、例えば顔料、バインダー樹脂、溶剤からなり、前記バインダー樹脂としては、アクリル系、ウレタン系、ポリアミド系、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合系、セルロース系、ニトロセルロース系などの一般的な樹脂が使用できる。また、本発明のコーティング層と異なる印刷層は、本発明のコーティング層より内層(基材フィルムに近い側)として設けられることが好ましい。具体的には、基材フィルムに異なる印刷層を設け、さらに白色顔料を含む本発明のコーティング層により該印刷層を覆うように設けたものが例示される。印刷層の厚みとしては、特に制限されず、例えば0.1〜10μm程度である。
【0065】
本発明のプラスチックラベルには、他にも、本発明のコーティング層とは異なるアンカーコート層、プライマーコート層、不織布、紙等の層を必要に応じて設けてもよい。
【0066】
本発明のプラスチックラベルは、容器に装着し、ラベル付き容器として用いられる。このような容器には、例えば、PETボトルなどのソフトドリンク用ボトル、宅配用牛乳容器、調味料などの食品用容器、アルコール飲料用ボトル、医薬品容器、洗剤、スプレーなどの化学製品の容器、カップ麺容器などが含まれる。また容器の材質としても、PETなどのプラスチック製、ガラス製、金属製などが含まれる。中でも、自動販売機などで衝撃を受けやすいソフトドリンク用ボトルや化学薬品に接触する化学製品の容器用のラベルに用いられる場合には、本発明のコーティング層の耐傷つき性や耐薬品性が顕著に発揮されるため好ましい。なお、被着体は容器に限らない。
【0067】
以下に、本発明のプラスチックラベル用コーティング剤、及び、プラスチックラベルの製造方法を説明する。なお、ここでは、コーティング剤として酸化チタンを含有する白色印刷インキ、プラスチックフィルムとして熱収縮性のポリエステルフィルムを用いた筒状シュリンクラベルの例を示すが、製造方法はこれに限定されるものではない。
【0068】
なお、下記説明において、工程順に、延伸後のフィルム原反を「プラスチックフィルム」、これに本発明のコーティング層を設けたものを「(長尺状)プラスチックラベル」という。さらに容器への装着加工工程では、前記長尺状プラスチックラベルを長尺のまま筒状に加工したものを「長尺筒状プラスチックラベル」と記載する。
【0069】
[コーティング剤の作製]
本発明のコーティング剤に用いられる成分Aは、トリメチロールプロパンとジメチルカーボネートなどから製造されるオキセタンアルコールとハロゲン化物(例えば、キシレンジクロライド)によりの既知の方法に従って製造することができる。なお、成分Aとしては、既存のオキセタン化合物を用いてもよく、例えば、東亞合成(株)製「アロンオキセタン OXT−101、121、211、221、212」などが市販品として入手可能である。
【0070】
本発明のコーティング剤に用いられる成分Bは、エピクロルヒドリンおよびビスフェノールAからの合成など、一般的な方法によって合成されるものを用いることができ、例えば、ダイセル化学工業(株)製「セロキサイド 2021」、「セロキサイド 2080」、「エポリード GT400」やダウケミカル(株)製「UVR6110」などが市販品として入手可能である。
【0071】
本発明のコーティング剤に用いられる成分Cは、(メタ)アクリル酸と水酸基含有ビニルエーテル類のエステル化、(メタ)アクリル酸ハロゲン化物と水酸基含有ビニルエーテル類のエステル化、(メタ)アクリル酸無水物と水酸基含有ビニルエーテル類のエステル化、(メタ)アクリル酸エステル類と水酸基含有ビニルエーテル類のエステル交換反応、(メタ)アクリル酸とハロゲン含有ビニルエーテル類のエステル化、(メタ)アクリル酸アルカリ(土類)金属塩とハロゲン含有ビニルエーテル類のエステル化など既知の方法に従って製造することができる。なお、成分Cとしては、例えば、日本触媒(株)社製「VEEA、VEEM」などの既存のビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル化合物を用いてもよい。
【0072】
次に、得られた成分A、成分B、成分Cを混合してコーティング剤を製造する。また、顔料などの添加剤を用いる場合には、同時に混合する。混合は、バタフライミキサー、プラネタリーミキサー、ポニーミキサー、ディゾルバー、タンクミキサー、ホモミキサー、ホモディスパーなどのミキサーや、ロールミル、サンドミル、ボールミル、ビーズミル、ラインミルなどのミル、ニーダーなどが用いられる。混合の際の混合時間(滞留時間)は10〜120分が好ましい。得られたコーティング剤は、必要に応じて、濾過してから用いてもよい。
【0073】
[プラスチックフィルムの作製]
本発明のプラスチックフィルムは、溶融製膜または溶液製膜などの方法によって作製することもできるし、または、市場で販売されているポリエステルフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリオレフィンフィルム等を用いることもできる。
【0074】
例えば、溶融製膜法を用いて、ポリエステルフィルムを作製する場合は、以下のとおりである。
【0075】
フィルム原料は既知の手法を用いて重合する。例えば、ポリエステルはテレフタル酸とエチレングリコールを原料とし、直接エステル反応により、低分子量のポリエチレンテレフタレートを得、さらに、3酸化アンチモンなどを触媒に用いた重縮合反応によってポリマーを得るプロセスなどが用いられる。必要に応じて、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどを共重合してもよい。
【0076】
上記で得られたフィルム原料を1軸または2軸押出機を用いてTダイより押出して、未延伸フィルムを作成する。この際、共押出法などを用いることによって、多種多層に積層された未延伸フィルムを得ることが可能である。
【0077】
未延伸フィルムは用途によっては、さらに延伸を行うことによって、プラスチックフィルムを作製する。延伸は、長手方向(縦方向;MD方向)および幅方向(横方向;TD方向)の2軸延伸でもよいし、長手、または、幅方向の1軸延伸でもよい。また、延伸方式は、ロール方式、テンター方式、チューブ方式の何れの方式を用いてもよい。延伸処理は、用いるポリマーの種類にもよるが、例えば、シュリンクラベル用のプラスチックフィルムの場合は、ポリマーのガラス転移温度(Tg)〜Tg+50℃程度の温度で、必要に応じて長手方向に例えば1.01〜3倍、好ましくは1.05〜1.5倍程度に延伸した後、幅方向に3〜10倍、好ましくは4〜6倍程度延伸することにより行う場合が多い。
【0078】
本発明のプラスチックフィルムの表面には、必要に応じて、コロナ放電処理やプライマー処理等の慣用の表面処理が施されていてもよい。
【0079】
[コーティング剤の塗布・硬化]
得られたプラスチックフィルムに、上記のコーティング剤を塗布して、コーティング層層を形成する。塗布の方法は、コーティング層の用途によっても異なり、プラスチックフィルムの製造工程中(例えば、未延伸または縦1軸延伸後)に塗布を行うインラインコートによって設けてもよいし、フィルム製膜後に塗布を行うオフラインコートによって設けてもよく、特に限定されないが、生産性、また、硬化処理を含めた加工性の観点から、オフラインコートが好ましく、中でも、グラビア印刷またはフレキソ印刷が最も好ましい。
【0080】
次に、コーティング層の硬化を行う。硬化は、印刷工程と一連の工程で行うことが好ましい。硬化は、紫外線(UV)ランプ、紫外線LEDや紫外線レーザーなどを用いる活性エネルギー線硬化で行い、照射する活性エネルギー線は、コーティング剤の組成によっても異なり、特に限定されないが、硬化性の観点から、波長が300〜460nmの紫外線(近紫外線)が好ましく、また、照射強度は150mJ/cm2〜1000mJ/cm2、照射時間は0.1〜3秒が好ましい。
【0081】
上記のラベルは、所定の幅にスリットして、ロール状に巻回し、複数個のロール状物として、プラスチックラベルが得られる。
【0082】
なお、以下に得られたプラスチックラベルを容器に装着する加工の一例を示すが、製造方法は、これに限定されるものではない。
[長尺状プラスチックラベルの加工]
次に、上記ロール状物のひとつを繰り出しながら、長尺状プラスチックフィルムの幅方向が円周方向で、コーティング層が外側となるように円筒状に成形する。具体的には、長尺状シュリンクラベルを筒状に形成し、ラベルの一方の側縁部に、長手方向に帯状に約2〜4mm幅で、テトラヒドロフラン(THF)などの溶剤や接着剤(以下溶剤等)を内面に塗布し、筒状に丸めて、該溶剤等塗布部を、他方の側縁部から5〜10mmの位置に重ね合わせて外面に接着(センターシール)し、長尺筒状のプラスチックラベル連続体とし、長尺筒状プラスチックラベルを得る。なお、上記の溶剤などを塗工する部分及び接着する部分には、コーティング層が設けられていないことが好ましい。
【0083】
なお、ラベル切除用のミシン目を設ける場合は、所定の長さ及びピッチのミシン目を長手方向に形成する。ミシン目は慣用の方法(例えば、周囲に切断部と非切断部とが繰り返し形成された円板状の刃物を押し当てる方法やレーザーを用いる方法等)により施すことができる。ミシン目を施す工程段階は、印刷工程の後や、筒状加工工程の前後など、適宜選択ことができる。
【0084】
[ラベル付き容器]
最後に、上記で得られた長尺筒状プラスチックラベルを切断後、所定の容器に装着し、加熱処理によって、ラベルを収縮、容器に追従密着させることによってラベル付き容器を作製する。上記長尺筒状プラスチックラベルを、自動ラベル装着装置(シュリンクラベラー)に供給し、必要な長さに切断した後、内容物を充填した容器に外嵌し、所定温度の熱風トンネルやスチームトンネルを通過させたり、赤外線等の輻射熱で加熱して熱収縮させ、容器に密着させて、ラベル付き容器を得る。上記加熱処理としては、例えば、80〜100℃のスチームで処理する(スチームおよび湯気が充満した加熱トンネルを通過させる)ことなどが例示される。
【0085】
[物性の測定方法ならびに効果の評価方法]
【0086】
(1)グラビア印刷性
実施例、比較例のそれぞれのコーティング剤とプラスチックフィルムを用いて、下記の印刷条件で、グラビア印刷を施した後の印刷状態を観察し、版面どおりに印刷できた場合をグラビア印刷性良好(○)、版面どおりに印刷できなかった場合をグラビア印刷性不良(×)と判断した。
装置:(株)日商グラビア製卓上グラビア印刷機「GRAVO PROOF MINI」
グラビア版 :175線、版深30μm
工程速度 :80m/分
【0087】
(2)硬化性(表面タック性)
実施例、比較例で、80m/分で硬化処理を施した直後に、コーティング層を指で触り、指にインキがつくかどうかを目視にて観察し、指にインキが付かない場合は硬化性良好(○)、指にインキが付く場合には硬化性不良(×)と判断した。
【0088】
(3)耐薬品性(耐MEKラビング試験)
プラスチックラベルのコーティング層の表面を、メチルエチルケトンをしみこませた綿棒でこすり、往復10回こすった後、表面の状態を目視観察し、インキが剥がれていない場合は耐薬品性良好(○)、インキが剥がれている場合には耐薬品性不良(×)と判断した。
【0089】
(4)接着性(テープ剥離試験)
実施例、比較例で得られたプラスチックラベルをサンプルとして用いた。それぞれの実施例、比較例において、光照射時のコンベア速度が50m/分、80m/分の2種類のサンプルを作製し、測定に用いた。
碁盤目のクロスカットを入れない以外は、JIS K 5600に準じて、試験を行った。実施例、比較例で得られたプラスチックラベルのコーティング層側の表面に、ニチバンテープ(幅18mm)を貼り付け、90度方向に剥離し、5mm×5mmの領域において、コーティング層の残存した面積を観察し、下記の基準で判断した。
コンベア速度が50m/分、80m/分のいずれのサンプルにおいても、コーティング層の残存面積が90%以上である : 優れた接着性(◎)
コンベア速度が80m/分のサンプルではコーティング層の残存面積が90%未満であるが、50m/分のサンプルではコーティング層の残存面積が90%以上である : 接着性良好(○)
コンベア速度が50m/分、80m/分のいずれのサンプルにおいても、コーティング層の残存面積が90%未満である : 接着性不良(×)
【0090】
(5)耐もみ性
実施例で得られたプラスチックラベルから、長さ100mm×幅100mmのサンプル片を採取した。サンプル片の両端を両手でつかみ、10回手でもむ。コーティング層側表面のコーティング層の残存面積を目視で観察し、残存面積が90%以上であれば、耐もみ性良好(○)、90%未満であれば、耐もみ性不良(×)と判断した。
【0091】
(6)耐傷つき性(スクラッチ試験)
実施例で得られたプラスチックラベルから、長さ100mm×幅100mmのサンプル片を採取した。サンプルを平滑なテーブルの上に置き、ラベルの外側(容器に接触しない側)の表面を、手の爪の甲の部分で、10往復(長手方向20mmの区間)こすった後に表面を観察し、下記の基準で判断した。
コーティング層は全く剥離していない。 : 耐スクラッチ性良好(○)
コーティング層に一部剥離がみられる。 : 耐スクラッチ性はやや不良であるが使用可能なレベル(△)
コーティング層が著しく剥離している。 : 耐スクラッチ性不良(×)
【0092】
(7)シュリンク適性
実施例で得られたラベル付き容器からプラスチックラベルを外して、容器胴部に装着されていた部分のコーティング層のインキの剥離、割れ(大きな割れ)、透明インキの場合には微細なひび割れによる著しい白化、また、容器側へのコーティング層の転移の有無を観察した。それぞれ容器10本分について観察し、上記の割れなどが観察されなかった場合はシュリンク適性良好(○)、1本でも割れなどが観察された場合はシュリンク適性不良(×)と判断した。
【0093】
(8)フィルム層厚み、コーティング層厚み
フィルム厚みは、触針式厚みゲージを用いて測定した。コーティング層厚みは、コーティング層を設けた部分(塗布面)とコーティング層を設けていない部分(非塗布面)の段差を、3次元顕微鏡(キーエンス(株)製VK8510)を用いて測定した。
【0094】
(9)プラスチックフィルム熱収縮率(90℃)
プラスチックフィルムから、測定方向(長手方向または幅方向)に長さ200mm(標線間隔150mm)、幅10mmの長方形のサンプル片を作成する。
サンプル片を90℃の温水中で、10秒熱処理(無荷重下)し、熱処理前後の標線間隔の差を読み取り、以下の計算式で熱収縮率を算出する。
熱収縮率(%) = (L0−L1)/L0×100
L0 : 熱処理前の標線間隔
L1 : 熱処理後の標線間隔
【0095】
(10)粘度
粘度は、東機産業(株)製のB型粘度計(単一円筒形回転粘度計)を用い、23±2℃、円筒の回転数60回転の条件下、JIS Z 8803に準じて測定を行った。
【実施例】
【0096】
以下に、実施例に基づいて、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0097】
実施例1
成分Aとして、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(東亞合成(株)製、商品名「アロンオキセタン OXT−101」)、成分Bとしてエポキシモノマー(ダウケミカル(株)製、商品名「UVR−6110」)、成分Cとしてアクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル(VEEA)(日本触媒(株)製)、光重合開始剤(ダウケミカル(株)製、商品名「UVI−6992」)、白顔料として酸化チタン(石原産業(株)製、商品名「タイペークPF736」)及び増感剤(日本化薬(株)製、「KAYACURE CTX」)を、表1に示した配合量(重量部)に従い配合し、分散機にて30分間分散混合して、コーティング剤(白色インキ)を得た。なお、溶剤は使用しなかった。
得られたコーティング剤を、卓上グラビア印刷機((株)日商グラビア製、商品名「GRAVO PROOF MINI」)および175線、版深30μmのグラビア版を用いて、ポリエステル系シュリンクフィルム(東洋紡績(株)製、商品名「スペースクリーン S7042」:フィルム厚み50μm)の片面に、工程速度80m/分でグラビア印刷を施し、グラビア印刷性を評価した。
また、上記と同じグラビア版を用いて、工程速度50m/分で、上記と同様に、シュリンクフィルムにコーティング剤を塗工した後、有電極ランプ型紫外線照射装置(GSユアサライティング(株)製、商品名「4kW(160W/cm)UV照射装置」を用いて、120W/cmの条件で光照射を行い、プラスチックラベルを得た。なお、紫外線照射装置のコンベア速度は50m/分及び80m/分の2種類の条件で行った。コーティング層の厚みは3μmであった。得られたプラスチックラベルに対して、硬化性と基材に対する密着性を評価した。
続いて、得られたプラスチックラベル(コンベア速度50m/分で作製したもの)を、印刷面が内面になるように円筒状に形成し、PETボトルの胴部に20%熱収縮されて装着されるように周方向の長さを調整した後、両端を溶着し、筒状プラスチックラベルを得た。さらに、500mlPETボトルに装着し、雰囲気温度90℃のスチームトンネルでラベルを収縮させ、ラベル付き容器を得た。
表1に示すように、得られたコーティング剤は、グラビア印刷性に優れ、硬化性、密着性も良好であった。また、得られたラベル付き容器は優れた仕上がりであった。
【0098】
実施例2
表1に示すように、酸化チタンを用いず、各成分の配合量を変更し、実施例1と同様にして、透明コーティング剤、プラスチックラベル及びラベル付き容器を得た。
表1に示すように、得られたコーティング剤は、グラビア印刷性に優れ、硬化性、密着性も良好であった。また、得られたラベル付き容器は優れた仕上がりであった。
【0099】
実施例3、4
表1に示すように、成分Cの配合量を変更し、実施例1と同様にして、コーティング剤、プラスチックラベル及びラベル付き容器を得た。
表1に示すように、得られたコーティング剤は、良好なグラビア印刷性、硬化性、密着性を有していた。また、得られたラベル付き容器は優れた仕上がりであった。
【0100】
実施例5、6
表1に示すように、実施例5では光重合開始剤をチバスペシャルティケミカルズ(株)製「イルガキュア907」に変更し、実施例6では「UVI−6992」と「イルガキュア907」の併用に変更した以外は、実施例1と同様にして、コーティング剤、プラスチックラベル及びラベル付き容器を得た。
表1に示すように、得られたコーティング剤は、グラビア印刷性に優れ、硬化性、密着性も良好であった。また、得られたラベル付き容器は優れた仕上がりであった。
【0101】
実施例7
表1に示すように、成分Cを、メタクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル(VEEM)(日本触媒(株)製)に変更した以外は、実施例1と同様にして、コーティング剤、プラスチックラベル及びラベル付き容器を得た。
表1に示すように、得られたコーティング剤は、グラビア印刷性に優れ、硬化性、密着性も良好であった。また、得られたラベル付き容器は優れた仕上がりであった。
【0102】
実施例1〜7で得られたプラスチックラベルについては、更に、耐薬品性、耐もみ性、耐傷付き性、シュリンク適性の評価を行った。結果、これらのプラスチックラベルは、いずれも、優れた耐薬品性、耐もみ性、耐傷付き性、シュリンク適性を有していた。
【0103】
比較例1
表1に示すように、成分Aを使用せず成分Bの配合量を変更した以外は、実施例1と全く同様にして、コーティング剤を得た。
得られたコーティング剤は粘度が高く、塗布性に劣り、グラビア印刷すると「かすれ」が生じた。また、硬化性、密着性も劣っていた。
【0104】
比較例2
表1に示すように、成分Bを使用せず成分Aの配合量を変更した以外は、実施例1と全く同様にして、コーティング剤を得た。
得られたコーティング剤は硬化性が低下し、生産性の劣るものであった。また、密着性の劣るものであった。
【0105】
比較例3
表1に示すように、成分Cを使用しない以外は、実施例1と全く同様にして、コーティング剤を得た。
得られたコーティング剤は、硬化性、接着性は基準を満たしたが、グラビア印刷性が劣っていた。
【0106】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキセタン化合物、エポキシ化合物、及び、1分子中に(メタ)アクリロイル基とビニルエーテル基を少なくとも1つずつ有する化合物を含むことを特徴とする活性エネルギー線硬化性のプラスチックラベル用コーティング剤。
【請求項2】
オキセタン化合物とエポキシ化合物の重量比が2:8〜8:2であって、オキセタン化合物とエポキシ化合物の合計量100重量部に対して、1分子中に(メタ)アクリロイル基とビニルエーテル基を少なくとも1つずつ有する化合物を、0.1〜30重量部含有する請求項1に記載のプラスチックラベル用コーティング剤。
【請求項3】
1分子中に(メタ)アクリロイル基とビニルエーテル基を少なくとも1つずつ有する化合物がメタクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル(VEEM)またはアクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル(VEEA)である請求項1または2に記載のプラスチックラベル用コーティング剤。
【請求項4】
グラビア印刷用又はフレキソ印刷用インキである請求項1〜3のいずれかの項に記載のプラスチックラベル用コーティング剤。
【請求項5】
さらに、増感剤および酸化チタンを含有する請求項1〜4のいずれかの項に記載のプラスチックラベル用コーティング剤。
【請求項6】
プラスチックラベルがシュリンクラベルである請求項1〜5のいずれかの項に記載のプラスチックラベル用コーティング剤。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかの項に記載のプラスチックラベル用コーティング剤を塗布してなるプラスチックラベル。
【請求項8】
少なくとも一方の最外層が請求項1〜7のいずれかの項に記載のプラスチックラベル用コーティング剤からなるプラスチックラベル。

【公開番号】特開2007−177061(P2007−177061A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−376303(P2005−376303)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000238005)株式会社フジシールインターナショナル (641)
【Fターム(参考)】