説明

プラスチックレンズの製造方法

【課題】芳香族ポリイソシアナート化合物を原料として使用しても、濁りやクモリのない透明性に優れたプラスチックレンズを複雑な工程を経ることなく製造することができる方法を提供する。
【解決手段】少なくとも1種のポリイソシアネート化合物及び少なくとも1種のポリチオール化合物を含む原料を混合して反応させるプラスチックレンズの製造方法において、前記ポリイソシアネート化合物として少なくとも1種の芳香族ポリイソシアネート化合物を用い、前記芳香族ポリイソシアネート化合物を前記ポリチオール化合物と混合する前に濾過精製することを特徴とするプラスチックレンズの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックレンズの製造方法に関する。詳しくは、濁りやクモリのない透明性に優れたプラスチックレンズを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックは、ガラスに比べて軽量であり、加工性に優れ、割れにくく安全性が高いなどの利点から、眼鏡などの各種レンズに使用されている。
しかし、プラスチックレンズは上記のような利点があるものの、製造過程において生じる不純物が原因で、レンズに濁りやクモリが生じる場合があり、透明性に優れたレンズを得るために種々の検討が行われてきた。
例えば、エピチオ基を有する化合物とポリイソシアネート化合物やポリチオール化合物などを原料とし、これらを重合反応させることより高屈折率、高アッベ数で、透明性に優れた眼鏡用プラスチックレンズが得られることが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−330701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、芳香族ポリイソシアナート化合物を原料として使用した場合、得られたレンズ全体に微粒子状の不純物が析出し、レンズのクモリや濁りの原因となることがあり、上記特許文献1においてもポリイソシアネート化合物として、芳香族ポリイソシアナート化合物を使用した例の開示はされていない。
上記の微粒子状不純物は、芳香族ポリイソシアナート化合物を含む原料を反応させる前の原料混合物中では確認されないため、レンズの製造工程において不純物を取り除くことは困難であるという問題を有していた。そのため、各種レンズの製造において、芳香族ポリイソシアナート化合物を原料として使用することが好ましくない場合があった。
【0005】
本発明は、上述の問題に鑑み、芳香族ポリイソシアナート化合物を原料として使用しても、濁りやクモリのない透明性に優れたプラスチックレンズを複雑な工程を経ることなく製造することができる方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、芳香族ポリイソシアネート化合物を含むポリイソシアネート化合物及びポリチオール化合物などの原料を混合し、反応させるプラスチックレンズの製造方法において、芳香族ポリイソシアネート化合物を特定の段階で濾過精製することにより上記不純物を取り除くことができることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、少なくとも1種のポリイソシアネート化合物及び少なくとも1種のポリチオール化合物を含む原料を混合して反応させるプラスチックレンズの製造方法において、前記ポリイソシアネート化合物として少なくとも1種の芳香族ポリイソシアネート化合物を用い、前記芳香族ポリイソシアネート化合物を前記ポリチオール化合物と混合する前に濾過精製することを特徴とするプラスチックレンズの製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造方法によれば、芳香族ポリイソシアナート化合物を原料として使用しても、濁りやクモリのない透明性に優れたプラスチックレンズを、複雑な工程を経ることなく製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のプラスチックレンズの製造方法は、少なくとも1種のポリイソシアネート化合物及び少なくとも1種のポリチオール化合物を含む原料を混合して反応させる製造方法において、ポリイソシアネート化合物として少なくとも1種の芳香族ポリイソシアネート化合物を用い、該芳香族ポリイソシアネート化合物をポリチオール化合物と混合する前に濾過精製することを特徴とするものである。
【0010】
ポリイソシアネート化合物は反応性に富み、ウレアやオリゴマー(オリゴマーの凝集物を含む)を生成しやすい。特に、芳香族ポリイソシアネート化合物はその傾向が顕著であり、中には経時と共にオリゴマーが形成されるものがある。
このことから、本発明者は、芳香族ポリイソシアネート化合物をプラスチックレンズ製造用の原料とした場合、レンズの濁りやクモリの原因の一つとなる不純物は、芳香族ポリイソシアネート化合物のオリゴマー(以下、単にオリゴマーと称すことがある。)であることを解明した。さらに発明者は、上記オリゴマーは、ポリチオール化合物を始めとする各種原料の混合物中では溶解し、重合反応の際に析出することを解明した。
上記から、ポリイソシアネート化合物とポリチオール化合物を原料として用いる本発明において、芳香族ポリイソシアネート化合物を原料として使用してもレンズに不純物を析出させないためには、芳香族ポリイソシアネート化合物をポリチオール化合物と混合する前に、オリゴマーを除去することが重要である。
混合物中におけるオリゴマー含有量は少ないほど良く、ポリイソシアネート化合物及びポリチオール化合物との混合比にもよるが、一般的には混合物中のオリゴマー含有率が0.5質量%以上であると、クモリや濁りが発生しやすい。
【0011】
[濾過精製]
本発明において、芳香族ポリイソシアネート化合物からオリゴマーを除去する方法として、芳香族ポリイソシアネート化合物の濾過精製を行う。濾過精製は、複雑な操作を必要としない簡便な精製方法であるため、効率的かつ容易にオリゴマーを除去することができる。また、上記濾過精製によって、オリゴマー以外のレンズの濁りやクモリの原因となる不純物も除去することができる。
【0012】
濾過精製の温度は、芳香族ポリイソシアネート化合物の凝固点温度以上であればよく、芳香族ポリイソシアネート化合物の種類によって適宜調整すればよいが、温度が高すぎるとオリゴマーが溶解し除去することができなくなり、逆に温度が低すぎるとモノマーが結晶化してしまい収率が低下する。そのため、好ましい濾過精製の温度は、芳香族ポリイソシアネート化合物の凝固点温度プラス10℃以内であり、より好ましくは凝固点温度プラス5℃以内、さらに好ましくは凝固点温度プラス3℃以内である。
複数の芳香族ポリイソシアネート化合物を用いる場合、濾過精製は2種以上混合して行ってもよいが、1種をそれぞれ単独で行うことが好ましい。さらに、濾過精製は芳香族ポリイソシアネート化合物以外のポリイソシアネート化合物を1種以上混合してから行ってもよい。
【0013】
オリゴマーは原料モノマー、特にポリチオール化合物に溶解しやすいため、濾過精製はポリチオール化合物と混合する前に行うが、本発明の効果を損なわない範囲でオリゴマーが溶解しない程度の量のポリチオール化合物を、芳香族ポリイソシアネート化合物と混合してから濾過精製を行っても差し支えない。
本発明においてポリイソシアネート化合物及びポリチオール化合物以外の原料モノマーを併用する場合、濾過精製はポリイソシアネート化合物以外の原料モノマーと混合する前に行うことが好ましく、芳香族ポリイソシアネート化合物由来のレンズに濁りやクモリを生じさる不純物をより確かに除去するためには、ポリイソシアネート化合物以外の原料、すなわちポリイソシアネート化合物以外の原料モノマー及び各種添加物と混合する前に濾過精製を行うことがより好ましい。
また、オリゴマーは経時と共に形成されやすいため、濾過精製は他の原料と反応させる直前に行うことが好ましい。
【0014】
濾過精製の方法としては、例えば、加圧濾過、減圧濾過、遠心濾過、自然濾過などのいずれの方法によってもよい。また、濾材としては、使用する原料に耐性があるものであれば特に制限はなく、例えば、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ガラス繊維などを用いることができる。
フィルターの濾過径は、小さいものほどオリゴマーを除去するのに効果的であり、好ましくは5.0μm以下であるが、あまり小さすぎても濾過精製に時間が掛かり過ぎ、また加圧濾過の場合圧力が上昇するおそれがあるので、より好ましくは0.05μm以上1.0μm以下であり、さらに好ましくは0.05μm以上0.5μm以下である。
また、濾過精製の回数は、オリゴマーを除去することができれば通常1回でよいが、複数回繰り返し行ってもよい。
【0015】
[ポリイソシアネート化合物]
本発明において原料であるポリイソシアネート化合物としては、少なくとも1種の芳香族ポリイソシアネート化合物を用いる。
芳香族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、o−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、エチルフェニレンジイソシアネート、イソプロピルフェニレンジイソシアネート、ジエチルフェニレンジイソシアネート、ジイソプロピルフェニレンジイソシアネート、トリメチルベンゼントリイソシアネート、ベンゼントリイソシアネートなどを用いることができる。これらの芳香族ポリイソシアネート化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
上記例示の中でも、工業的に入手が容易である4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを用いることが好ましい。4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートは、経時と共にオリゴマーを形成しやすいため、本発明の製造方法によれば効果を顕著に発揮することができる。
【0016】
また、ポリイソシアネート化合物として、芳香族ポリイソシアネート化合物に加えて脂肪族及び脂環式ポリイソシアネート化合物を用いることができる。
脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、メシチレントリイソシアネート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネートなどを用いることができ、脂環式ポリイソシアネート化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン4,4’−ジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,2−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,3,5−トリス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ビシクロヘプタントリイソシアネートなどを用いることができる。これらの脂肪族及び脂環式ポリイソシアネート化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0017】
[ポリチオール化合物]
本発明において原料であるポリチオール化合物としては、例えば、エチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2−メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタントリス(2−メルカプトアセテート)、トリメチロールエタントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ジクロロネオペンチルグリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、ジブロモネオペンチルグリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(2−メルカプトアセテート)、2,5−ビスメルカプトメチル−1,4−ジチアン、4,5−ビスメルカプトメチル−1,3−ジチアン、ビス[(2−メルカプトエチル)チオ]−3−メルカプトプロパン、ビス(メルカプトメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン−1,11−ジチオールなどを用いることができる。これらのポリチオール化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0018】
ポリイソシアネート化合物及びポリチオール化合物の配合割合は、NCO基/SH基のモル比が通常0.5〜2.0となる割合であればよく、好ましくは0.95〜1.05である。NCO基/SH基のモル比が0.95以上であれば未反応のNCO基がほぼ残らず、1.05以下であれば未反応のSH基がほぼ残らない。この範囲であれば未反応基の少ない理想的なポリマーを得ることが出来る。
【0019】
また、本発明において、上記ポリイソシアネート化合物及びポリチオール化合物以外の原料モノマーを用いることができ、一般的にプラスチックレンズの原料モノマーとして用いられるものであれば特に制限はない。
【0020】
[添加物]
本発明において、上記ポリイソシアネート化合物及びポリチオール化合物以外に、重合触媒、紫外線吸収剤及び離型剤などの添加物を必要に応じ原料として使用することができ、これら添加物は併用してもよい。
重合触媒としては、有機錫化合物が好ましく、例えば、ジブチル錫ジアセテ−ト、ジブチル錫ジラウレ−ト、ジブチル錫ジクロライド、ジメチル錫ジクロライド、モノメチル錫トリクロライド、トリメチル錫クロライド、トリブチル錫クロライド、トリブチル錫フロライド、ジメチル錫ジブロマイドなどを用いることができる。これらの重合触媒は、単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
重合触媒の配合割合は、モノマー組成物全量100質量部に対し、通常0.001〜1.00質量部の範囲である。上記範囲内であれば、重合速度の調整が容易である。
【0021】
紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホニックアシッド、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン及び2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどの各種ベンゾフェノン系化合物;2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール及び2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)ベンゾトリアゾールなどの各種ベンゾトリアゾール化合物;ジベンゾイルメタン、4−tert−ブチル−4’−メトキシベンゾイルメタンなどを用いることができる。これらの紫外線吸収剤は、単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
紫外線吸収剤の配合割合は、モノマー組成物全量100質量部に対し、通常0.01〜10.00質量部の範囲である。より好ましい範囲は0.05〜1.00であり、配合割合が0.05以上であれば十分な紫外線吸収効果が得られ、1.00以下であれば樹脂が著しく着色することがない。
【0022】
離型剤としては、例えば、イソプロピルアシッドフォスフェート、ブチルアシッドフォスフェート、オクチルアシッドフォスフェート、ノニルアシッドフォスフェート、デシルアシッドフォスフェート、イソデシルアシッドフォスフェート、トリデシルアシッドフォスフェート、ステアリルアシッドフォスフェート、プロピルフェニルアシッドフォスフェート及びブチルフェニルアシッドフォスフェートなどのリン酸モノエステル化合物;ジイソプロピルアシッドフォスフェート、ジブチルアシッドフォスフェート、ジオクチルアシッドフォスフェート、ジイソデシルアシッドフォスフェート、ビス(トリデシルアシッドフォスフェート)、ジステアリルアシッドフォスフェート、ジプロピルフェニルアシッドフォスフェート、ジブチルフェニルアシッドフォスフェート及びブトキシエチルアシッドフォスフェートなどのリン酸ジエステル化合物などを用いることができる。これらの離型剤は、単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
離型剤の配合割合は、モノマー組成物全量100質量部に対し、通常0.01〜1.00質量部の範囲である。上記範囲内であれば離型促進を効果的に発揮することができ、作業に無理が生じない。
【0023】
[混合方法及び重合反応]
本発明において、原料として、上述のポリイソシアネート化合物、ポリチオール化合物及び必要に応じて用いられる添加物などの原料の混合順序には特に制限はない。例えば、ポリイソシアネート化合物及びポリチオール化合物を混合した後に添加物を添加し混合してもよく、ポリイソシアネート化合物及びポリチオール化合物のどちらか一方と添加物とを混合した後に残りの他方を添加し混合してもよい。
【0024】
少なくともポリイソシアネート化合物、ポリチオール化合物及び添加物を混合した混合物の反応は、混合物を必要に応じて加熱することにより行われる重合反応であり、注型重合であることが好ましい。
この注型重合は、例えば、ポリイソシアネート化合物、ポリチオール化合物及び添加物を混合した混合物をガラス又は金属製のモールドと樹脂製のガスケットとを組み合わせたモールド型に注入して重合を行う。重合温度及び重合時間は使用する原料の種類にもよるが、一般に0〜150℃で0.5〜72時間程度である。
上述の本発明の製造方法によれば、芳香族ポリイソシアナート化合物を原料として使用しても、濁りやクモリのない透明性に優れたプラスチックレンズを、複雑な工程を経ることなく製造することができる。
【実施例】
【0025】
実施例により本発明を説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
実施例及び比較例において、下記の方法により物性評価を行った。
(1)外観
原料を混合した混合物の重合直前外観を目視により観察し、また重合後の得られたレンズを暗室内、蛍光灯下で目視により観察し、重合前外観及び重合後外観の色及び透明性を評価した。
(2)濁度
得られたレンズの濁度をJIS規格(JIS K0101 工業用水試験法の規格)に基づき目視により測定した。
【0026】
[実施例1]
濾過精製として、温浴で融解させた4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート〔MDI〕を、濾過精製温度40℃で、濾過径0.2μmのポリテトラフルオロエチレン〔PTFE〕メンブランフィルターを用い加圧濾過を行った。次に、500mlナス型フラスコに、濾過精製したMDIを53.95g仕込み、離型剤としてJP−513(商品名、城北化学工業株式会社製)0.05g、ジメチル錫ジクロライド0.03gを添加し撹拌した。これらが完全に溶解したところで2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン〔DMMD〕29.74g、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)〔PETMA〕16.31gを配合し、0.13kPa(1.0Torr)で20分減圧撹拌を行い混合物とした。
この混合物を中心肉厚が2mmのレンズ型に1.0μmのPTFEメンブランフィルターを通して注型し、24時間かけて初期温度30℃から最終温度120℃の温度プログラムにて重合を行い、レンズを得た。得られたレンズの上記物性評価の結果を表1に示す。
【0027】
[実施例2]
濾過精製として、温浴で融解させた4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート〔MDI〕44.74gと1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート〔HDI〕7.52gとを混合し、濾過精製温度40℃で、濾過径0.2μmのポリテトラフルオロエチレン〔PTFE〕メンブランフィルターを用い加圧濾過を行った。次に、500mlナス型フラスコに、濾過精製したMDI及びHDIの全量を仕込み、離型剤としてJP−513(商品名、城北化学工業株式会社製)0.05g、ジメチル錫ジクロライド0.03gを添加し撹拌した。これらが完全に溶解したところで2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン〔DMMD〕30.83g、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)〔PETMA〕16.91gを配合し、0.13kPaで20分減圧撹拌を行い混合物とした。
この混合物を中心肉厚が2mmのレンズ型に1.0μmのPTFEメンブランフィルターを通して注型し、24時間かけて初期温度30℃から最終温度120℃の温度プログラムにて重合を行い、レンズを得た。得られたレンズの上記物性評価の結果を表1に示す。
【0028】
[実施例3]
実施例1において、濾過径0.2μmのPTFEメンブランフィルターを、濾過径1.0μmのPTFEメンブランフィルターに変更した以外は同方法にてレンズを得た。得られたレンズの上記物性評価の結果を表1に示す。
【0029】
[実施例4]
実施例2において、濾過径0.2μmのPTFEメンブランフィルターを、濾過径1.0μmのPTFEメンブランフィルターに変更した以外は同方法にてレンズを得た。得られたレンズの上記物性評価の結果を表1に示す。
【0030】
[比較例1]
500mlナス型フラスコに、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート〔MDI〕53.95gを仕込み、撹拌しながら温浴で融解させたのち、離型剤としてJP−513(商品名、城北化学工業株式会社製)0.05g、ジメチル錫ジクロライド0.03gを添加し撹拌を続けた。これらが完全に溶解したところで2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン〔DMMD〕29.74g、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)〔PETMA〕16.31gを配合し、0.13kPaで20分減圧撹拌を行い混合物とした。
この混合物を中心肉厚が2mmのレンズ型に1.0μmのPTFEメンブランフィルターを通して注型し、24時間かけて初期温度30℃から最終温度120℃の温度プログラムにて重合を行い、レンズを得た。得られたレンズの上記物性評価の結果を表1に示す。
【0031】
[比較例2]
500mlナス型フラスコに、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート〔MDI〕44.74g、ヘキサメチレンジイソシアネート〔HDI〕7.52gを仕込み、撹拌しながら温浴で融解させたのち、離型剤としてJP−513(商品名、城北化学工業株式会社製)0.05g、ジメチル錫ジクロライド0.03gを添加し撹拌を続けた。これらが完全に溶解したところで2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン〔DMMD〕30.83g、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)〔PETMA〕16.91gを配合し、0.13kPaで20分減圧撹拌を行い混合物とした。
この混合物を中心肉厚が2mmのレンズ型に1.0μmのPTFEメンブランフィルターを通して注型し、24時間かけて初期温度30℃から最終温度120℃の温度プログラムにて重合を行い、レンズを得た。得られたレンズの上記物性評価の結果を表1に示す。
【0032】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の製造方法によれば、芳香族ポリイソシアナート化合物を原料として使用しても、不純物が析出せず、濁りやクモリのない透明性に優れたプラスチックレンズを、複雑な工程を経ることなく製造することができるため、本発明は眼鏡やカメラなどの各種プラスチックレンズの分野において有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のポリイソシアネート化合物及び少なくとも1種のポリチオール化合物を含む原料を混合して反応させるプラスチックレンズの製造方法において、前記ポリイソシアネート化合物として少なくとも1種の芳香族ポリイソシアネート化合物を用い、前記芳香族ポリイソシアネート化合物を前記ポリチオール化合物と混合する前に濾過精製することを特徴とするプラスチックレンズの製造方法。
【請求項2】
前記芳香族ポリイソシアネート化合物をポリイソシアネート化合物以外の原料と混合する前に濾過精製することを特徴とする、請求項1に記載のプラスチックレンズの製造方法。
【請求項3】
前記濾過精製が、濾過径1.0μm以下のフィルターを用いて、芳香族ポリイソシアネート化合物の凝固点温度プラス5℃以内で行うものである、請求項1又は2に記載のプラスチックレンズの製造方法。
【請求項4】
前記濾過精製が、芳香族ポリイソシアネート化合物のオリゴマー及び/又はオリゴマーの凝集物を除去するものである、請求項1〜3のいずれかに記載のプラスチックレンズの製造方法。
【請求項5】
前記芳香族ポリイソシアネート化合物が、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートである、請求項1〜4のいずれかに記載のプラスチックレンズの製造方法。

【公開番号】特開2012−82415(P2012−82415A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205375(P2011−205375)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】