説明

プラスチック・ウィンドウ・パネルのためのアンテナ

無線信号を受信することができるウィンドウ・アセンブリが説明されている。ウィンドウ・アセンブリは、第1の面及び第2の面を有するプラスチック基板を備えている。プラスチック基板の第1の面にコーティングが結合されている。アンテナは、プラスチック基板の第1の面に隣接して配置されている。アンテナは、プラスチック基板の第1の面とコーティングの間に配置することができ、或いはコーティングの中に埋め込むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に自動車アンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート(PC)及びポリメタクリル酸メチル(PMMA)などの可塑材は、現在、B−ピラー、ヘッドランプ及びサン・ルーフなどの多くの自動車用パーツ及びコンポーネントの製造に使用されている。自動車用ウィンドウ・モジュールは、これらの可塑材の新しいアプリケーションの中でも代表的なアプリケーションであるが、それは、スタイリング/デザイン、重量削減及び安全性/防護性の分野におけるこれらの可塑材の様々な利点によるものである。より詳細には、これらの可塑材は、機能コンポーネントを成形プラスチック・モジュールに統合することによってウィンドウ・アセンブリの複雑性を軽減する能力を自動車メーカに提供し、また、デザイン及び形状を総合的により複雑にすることにより、競合メーカの車両に対して自己の車両を特徴付ける能力を自動車メーカに提供している。軽量のプラスチック・ウィンドウ・モジュールを使用することにより、車両の重心を容易により低くすることができ、且つ、燃料の経済性を容易に改善することができる。また、プラスチック・ウィンドウ・モジュールを使用することにより、転倒事故の際の搭乗者の保護が強化されるため、車両の総合的な安全性が向上する。
【0003】
自動車の遠隔通信システムは、最近まで、いくつかのシステムに限定され、主としてアナログ無線受信(AM/FM帯域)に限定されていた。これらのシステムに対する最も一般的な解決法は、車の屋根又は車体に取り付けられた典型的な鞭形アンテナである。自動車分野における現在の傾向は、アンテナの外形を低くし、且つ、アンテナを車両構造の中に埋め込むことにより、これらのアンテナによる美観及び空気力学に対する影響を小さくすることである。さらに、単一のアンテナへの複数の遠隔通信サービスの主要な統合により、製造コストの削減が促進され、或いは野蛮な行為及び洗車設備による損傷の抑制が促進される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、美観又は空気力学に対する影響が最小であること、野蛮な行為から保護されることを特徴とし、製造の費用有効性が高いアンテナ・システムが提供されることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、従来技術の欠点及び制限を克服するために、中にアンテナが埋め込まれたウィンドウ・アセンブリを有する自動車が提供される。ウィンドウ・アセンブリは、頂面及び底面を有するプラスチック基板を備えている。プラスチック基板は、それらに限定されないが、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂及びポリスルホン樹脂、並びにそれらの共重合体及びそれらの任意の組合せを始めとする熱可塑性樹脂を使用して構築することができる。プラスチック基板は透明であることが好ましい。
【0006】
プラスチック基板の外面は、耐候層を含む1つ又は複数の保護層になっている。耐候層は、優れた耐候性及び長期間にわたる紫外線(UV)保護を提供する。摩耗層で耐候層を覆うことができる。摩耗層は、「ガラス様」耐摩耗性を提供する。
【0007】
アンテナ・トレースは、ウィンドウ・アセンブリ内の多くの位置に配置することができる。アンテナ・トレースは、銀顔料インクを使用して構築されることが好ましい。しかしながら、アンテナ・トレースは、無線信号の受信に適した、メタリック顔料インク、導電性フィルム又は導電性重合体などの任意の材料を使用して構築することができる。
【0008】
本発明の他の目的、特徴及び利点は、本明細書に添付され、本明細書の一部を形成している図面及び特許請求の範囲を参照して以下の説明を考察することにより、当業者には容易に明らかになるであろう。
【実施例】
【0009】
図1を参照すると、本発明を組み込んだ自動車10が示されている。自動車10は、フレーム14を介して自動車10に取り付けられたウィンドウ・アセンブリ12を備えている。ウィンドウ・アセンブリ12の中にはアンテナ16が埋め込まれている。
【0010】
既に言及したように、ウィンドウ・アセンブリ12は、ウィンドウ・アセンブリ12の中に埋め込まれたアンテナ16を有している。アンテナ16は、それらに限定されないが、AM、FM、衛星無線(XM(商標)及びSirius(商標)など)、GSM、CDMA、IEEE802.11a、IEEE802.11b、IEEE802.11g、IEEE802.11x、HomeRF(商標)及びBluetooth(商標)を始めとする任意の数の無線信号を受信することができる。アンテナ16は、通常、フラクタル形アンテナであるが、適切な任意の形のアンテナを使用することができる。
【0011】
インタフェース18はアンテナ16に接続されている。インタフェースは、無線信号を処理することができる無線受信器などのデバイスをアンテナ16に接続する役割を果たしている。たとえば、無線受信器(図示せず)がインタフェース18に接続されると、その無線受信器は、AM及びFMなどの無線信号をインタフェース18を介してアンテナ16から受信することができる。
【0012】
この説明は、自動車10のサイド・ウィンドウとしてのウィンドウ・アセンブリ14を使用して記述されているが、本発明は、自動車10の他の領域にも等しく適用することができる。たとえば、ウィンドウ・アセンブリ14は、適切に配置し、且つ、寸法化することにより、ムーン/サン・ルーフ、運転者側ウィンドウ、同乗者側ウィンドウ、リア・ウィンドウ、フロント風防ガラス及び/又は自動車10が有することができる他のあらゆるウィンドウとして使用することができる。
【0013】
図2Aを参照すると、概ね図1の線2−2に沿って取った断面が示されている。ウィンドウ・アセンブリ14は、頂面21及び底面23を有するプラスチック基板20を備えている。プラスチック基板20は、それらに限定されないが、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂及びポリスルホン樹脂、並びにそれらの共重合体及びそれらの任意の組合せを始めとする熱可塑性樹脂を使用して構築することができる。プラスチック基板20は透明であることが好ましい。
【0014】
プラスチック基板20の頂面21の上にはアンテナ・トレース22が配置されている。このアンテナ・トレース22は、図1に示されているアンテナ16の断面部分である。アンテナ・トレース22は、銀顔料インクを使用して構築されることが好ましい。しかしながら、アンテナ・トレース22は、無線信号の受信に適した任意の材料を使用して構築することができる。メタリック顔料インク、導電性フィルム又は導電性重合体などの他のアンテナ材料も可能である。メタリック顔料インクのいくつかの例には、銅、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、スズ又はそれらの混合物及び合金の顔料を含有したインクがある。導電性フィルムは、それらに限定されないが、酸化インジウム・スズ(ITO)、インジウム・ドープ酸化亜鉛(IZO)及びアルミニウム・ドープ酸化亜鉛を含有することができる。導電性重合体の例には、それらに限定されないが、ポリアニリン及びポリチオフェン(つまりドイツのH.C.Starck社のBaytron(登録商標)重合体)がある。アンテナ・トレース22は、通常、スクリーン印刷、インクジェット印刷又はディスペンスなどの適切な印刷方法を使用して、プラスチック基板20(或いは追って説明するように他の任意の層)の上に印刷される。アンテナ・トレース22の寸法は設計特化寸法であり、変更が可能である。たとえば、アンテナ・トレース22は、一般的により平らで、且つ、リボン様であるフラクタル・アンテナであってもよい。しかしながら、アンテナ・トレース22は、より薄く、且つ、よりワイヤ様であるダイポール・アンテナであってもよい。参照により本明細書に組み込まれている米国特許第6,809,692号に、異なるタイプ及び異なる形状のアンテナが開示されている。
【0015】
アンテナ・トレース22の上は耐候層24である。耐候層24は、プライマー層26及びハードコート層28の2つの層から構築することができる。プライマー層26の一例は、Connecticut州Wilton所在のGeneral Electric SiliconesのSHP401又はMichigan州Wixom所在のExatec L.L.C.のSHP9Xなどのアクリル・プライマーである。ハードコート層28は、通常、General Electric SiliconesのAS4000又はExatec,L.L.C.のSHXなどのシリコーン・ハードコートである。しかしながら、プライマー層の頂部に加えられるか、或いはアンテナ及びプラスチック基板に直接加えられるポリウレタンなどの他のハードコート組成を利用することも可能である。
【0016】
耐候層24は、優れた耐候性及び長期間にわたるUV保護を提供する。また、耐候層24は、ロノマー化学作用を有する材料又は類似した材料を含有することも可能である。さらに、本発明の他の実施例では、ケイ素/微小粒子を耐候層24の材料に配合することができ、或いは重合によって耐候層24の中にシリオキサン共重合体が形成される。耐候層は、それらに限定されないが、スプレー・コーティング、フロー・コーティング、浸漬被覆、スピン塗布及びカーテン・コーティングを始めとする当業者に知られている任意の技法によって加えることができる。
【0017】
耐候層24は摩耗層30で覆われている。摩耗層は、ウィンドウ・アセンブリ14に「ガラス様」耐摩耗性を提供する。プラズマ層30は、プラズマ促進化学気相蒸着(PECVD)によって付着したSiO膜であってもよい。摩耗層30は、個々の層が若干異なる組成を含有している多層システムであってもよい。摩耗層は、それらに限定されないが、プラズマ促進化学気相蒸着、イオン・アシスト・プラズマ蒸着、マグネトロン・スパッタリング、電子ビーム蒸着及びイオン・ビーム・スパッタリングを始めとする当業者に知られている任意の技法によって加えることができる。
【0018】
図2Bを参照すると、ウィンドウ・アセンブリ14の代替実施例が示されている。本開示全体を通して言えることであるが、同様のアイテムの参照には同様の参照符号が利用されている。ここでは、様式化されたインク層32がアンテナ・トレース22とプラスチック基板20の頂面21の間に配置されている。様式化されたインク層32は、ウィンドウ・アセンブリ14を透過する光を防止し、且つ/又はその量を最少にする役割を果たしている。また、様式化されたインク層32には、場合によっては、ウィンドウ・アセンブリ14の美的品質を付与する方法で加えることができる追加利点がある。
【0019】
図2C及び2Dを参照すると、ウィンドウ・アセンブリ14の代替実施例が示されている。これらの実施例では、耐候層24と摩耗層30の間にアンテナ・トレース22が配置されている。また、ここでは、耐候層24は、プラスチック基板20の頂面21に直接加えられている。図2Dに示されている実施例は、様式化されたインクの層が耐候層24とプラスチック基板20の頂面21の間に配置されている点のみを除き、それ以外は同様である。
【0020】
図2E及び2Fを参照すると、ウィンドウ・アセンブリ14の代替実施例が示されている。これらの実施例では、プライマー層26とハードコート層28の間にアンテナ・トレース22が配置されている。また、ここでは、プライマー層26は、プラスチック基板20の頂面21に直接加えられている。図2Fは、様式化されたインクの層がプライマー層26とプラスチック基板20の頂面21の間に配置されている点のみを除き、それ以外は同様である。
【0021】
図2Gを参照すると、ウィンドウ・アセンブリ14のもう1つの代替実施例が示されている。この実施例は、図2Aに示されている実施例と類似している。これらの実施例の相違は、この実施例が、プラスチック基板20の底面23に結合された第2の耐候層24’及び第2の摩耗層30’を有していることである。図2Aに示されている実施例と同様、第2の耐候層24’は、プライマー層26’及びハードコート層28’でできている。プラスチック基板20の底面23に結合されたこの第2の耐候層24’及び第2の摩耗層30’の追加は、本開示の中で説明されているすべての実施例に等しく適用することができることを理解されたい。
【0022】
当業者には容易に理解されるように、以上の説明は、本発明の原理の実施態様を実例で示したものである。以上の説明は、本発明には、特許請求の範囲で定義されている本発明の精神を逸脱することなく、改変、変形形態及び変更が可能である点で、何ら本発明の範囲又はアプリケーションを制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の原理を具体化した統合アンテナを備えたウィンドウ・パネル・アセンブリを有する自動車の斜視図である。
【図2A】概ね図1の線2−2に沿って取ったウィンドウ・アセンブリの一部の横断面図である。
【図2B】図2Aと同様の、ブラック・アウト・インク層を有するウィンドウ・アセンブリの横断面図である。
【図2C】図2Aと同様の、摩耗層と耐候層の間にアンテナ・トレースが配置されたウィンドウの横断面図である。
【図2D】図2Cと同様の、ブラック・アウト・インク層を有するウィンドウ・アセンブリの横断面図である。
【図2E】図2Aと同様の、プライマー層とハードコート層の間にアンテナ・トレースが配置されたウィンドウの横断面図である。
【図2F】図2Eと同様の、ブラック・アウト・インク層を有するウィンドウ・アセンブリの横断面図である。
【図2G】図2Aと同様の、基板の両面に耐候層及び摩耗層を有するウィンドウ・アセンブリの横断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線信号を受信することができるウィンドウ・アセンブリであって、
第1の面及び第2の面を有するプラスチック基板と、
前記プラスチック基板の前記第1の面に結合された第1のコーティングと、
前記プラスチック基板の前記第1の面に隣接して配置されたアンテナと
を備えたウィンドウ・アセンブリ。
【請求項2】
前記プラスチック基板が、ポリカーボネート、アクリル、ポリアリレート、ポリエステル、ポリスルホン及びそれらの組合せのうちの少なくとも1つでできている、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項3】
前記アンテナが、メタリック顔料インク、導電性フィルム又は導電性重合体のうちの少なくとも1つでできている、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項4】
前記メタリック顔料インクが、銀、銅、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、スズ及びそれらの合金のうちの1つから選択されるメタリック顔料を含有している、請求項3に記載のアセンブリ。
【請求項5】
前記メタリック顔料インクが銀顔料インクを含有している、請求項3に記載のアセンブリ。
【請求項6】
前記導電性フィルムが、酸化インジウム・スズ(ITO)、インジウム・ドープ酸化亜鉛(IZO)及びアルミニウム・ドープ酸化亜鉛から選択される1つを含有している、請求項3に記載のアセンブリ。
【請求項7】
前記導電性重合体が、ポリアニリン及びポリチオフェンから選択される1つである、請求項3に記載のアセンブリ。
【請求項8】
前記導電性ポリチオフェン重合体がBaytron(登録商標)重合体である、請求項7に記載のアセンブリ。
【請求項9】
前記アンテナがフラクタル形アンテナである、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項10】
前記第1のコーティングが耐候層及び摩耗層を備え、前記耐候層が前記摩耗層と前記プラスチック基板の前記第1の面の間に配置された、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項11】
前記アンテナが前記耐候層と前記プラスチック基板の前記第1の面の間に配置された、請求項10に記載のアセンブリ。
【請求項12】
前記アンテナが前記耐候層と前記摩耗層の間に配置された、請求項10に記載のアセンブリ。
【請求項13】
前記摩耗層がSiO膜である、請求項10に記載のアセンブリ。
【請求項14】
前記耐候層がプライマー層及びハードコート層をさらに備え、前記プライマー層が前記プラスチック基板の前記第1の面に結合され、前記ハードコート層が前記プライマー層に結合され、それにより前記ハードコート層が前記プライマー層と前記摩耗層の間に位置している、請求項10に記載のアセンブリ。
【請求項15】
前記アンテナが前記プライマー層と前記ハードコート層の間に配置された、請求項14に記載のアセンブリ。
【請求項16】
前記プライマーがアクリル・プライマーである、請求項10に記載のアセンブリ。
【請求項17】
前記ハードコートがケイ素ベース・ハードコートである、請求項10に記載のアセンブリ。
【請求項18】
前記プラスチック基板の前記第1の面と前記コーティングの間に配置された装飾インク層をさらに備えた、請求項1に記載のウィンドウ・アセンブリ。
【請求項19】
前記プラスチック基板の前記第2の面に結合された第2のコーティング層をさらに備えた、請求項1に記載のウィンドウ・アセンブリ。
【請求項20】
前記第2のコーティング層が耐候層及び摩耗層を備え、前記耐候層が前記摩耗層と前記プラスチック基板の前記第2の面の間に配置された、請求項19に記載のアセンブリ。
【請求項21】
前記摩耗層がSiO膜である、請求項20に記載のアセンブリ。
【請求項22】
前記耐候層がプライマー層及びハードコート層をさらに備えた、請求項20に記載のアセンブリ。
【請求項23】
前記プライマーがアクリル・プライマーである、請求項22に記載のアセンブリ。
【請求項24】
前記ハードコートがケイ素ベース・ハードコートである、請求項22に記載のアセンブリ。
【請求項25】
前記プラスチック基板が透明である、請求項1に記載のアセンブリ。


【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図2G】
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【公表番号】特表2009−522878(P2009−522878A)
【公表日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−548827(P2008−548827)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【国際出願番号】PCT/US2006/062596
【国際公開番号】WO2007/076499
【国際公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(505365404)エクスアテック、エル.エル.シー. (51)
【Fターム(参考)】