説明

プラスチック容器

【課題】 底部を容易に押上げて変形させることができるプラスチック容器を提供する。
【解決手段】 プラスチック容器10は口部11と、胴部12と、底部13とを有している。底部13は接地部13aと、接地部13aの外側に位置する円周突部13bとを有している。底部13を押上げた場合、円周突部13bを基部として底部13がへこむようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック容器に係り、とりわけ底部を容易に変形させることができるプラスチック容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より口部と、胴部と、底部とを有するプラスチック容器が知られている。このようなプラスチック容器においては、底部を押上げて変形させた状態で、低温状態で内容物を充てんしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
同じ容量の容器に対して、ホット充てんは冷却後減圧する事により液面が上昇する。一方無菌充てんは、常温充てんする為減圧せず液面が上昇しない。充てん方法の違いによる液面の高さを調整する為に底部を押上げているが、従来のプラスチック容器の場合、底部の押上げにあたっては大きな押上力を必要としている。
【0004】
他方、内容物を保温するためプラスチック容器を加熱する場合、予めプラスチック容器を減圧させると便利なことがある。
【0005】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、底部を容易に変形させることができるプラスチック容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、口部と、胴部と、陥没部を有する底部とを備え、底部は陥没部の周縁に沿って配置された接地部と、外方へ突出する円周突部とを有し、この円周突部は底部を内側へ押圧した際に底部がへこむ基部となり、円周突部は接地部の半径方向外側に位置することを特徴とするプラスチック容器である。
【0007】
本発明は、円周突部と接地部との間に平坦面が形成されていることを特徴とするプラスチック容器である。
【0008】
本発明は、胴部の下方部に円周方向に延びる横リブが設けられ、陥没部の天壁は横リブの上方に位置することを特徴とするプラスチック容器である。
【0009】
本発明は、底部の陥没部の天壁と接地部との間の距離は、胴部の外径の25〜40%であり、底部の接地部の直径は胴部の外径の50〜75%であることを特徴とするプラスチック容器である。
【0010】
本発明は、胴部の外径は55〜70mmとなっており、加温用容器に用いられることを特徴とするプラスチック容器である。
【0011】
本発明は、口部は白化されていることを特徴とするプラスチック容器である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、底部を容易に押上げて変形させることができる。このため常温充てん時に容易に底部を押上げた状態で充てんすることができ、かつ容器の減圧時に底部を変形させて、この減圧を容易に吸収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
第1の実施の形態
以下、図面を参照して本発明の第1の実施の形態について説明する。図1および図2は本発明によるプラスチック容器の一実施の形態を示す図である。
【0014】
図1および図2に示すように、プラスチック容器10は全体として円筒状をなすとともに、PETをブロー成形することにより形成される。このようなプラスチック容器10は、口部11と、胴部12と、陥没部13dを有する底部13とを備えている。このうち胴部12には内圧の増減により胴部12を容易に変形させるための複数の凹部12aが形成されている。
【0015】
さらに胴部12の下方部に円周方向に延びる横リブ21が設けられ、この横リブ21により胴部12の強度を補強している。
【0016】
また底部13は、テーブル等の装置台に当接するとともに、陥没部13d周縁に円周方向に延びる接地部13aと、接地部13aの半径方向外側に位置する円周突部13bとを有している。円周突部13bは底部13の円周方向にわたって形成され、底部13から外方へ突出している。この円周突部13bは後述のように底部13を押上げた場合に、底部13が内方へへこむ際の基部として機能する。なお、図2に示すように、円周突部13bは底部13の周縁近傍に配置されている。
【0017】
また接地部13aと円周突部13bとの間には、平坦面13cが円周方向に沿って形成されている。
【0018】
次にこのような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。
【0019】
プラスチック容器10内に内容物を常温充てんする場合、容器10の底部13が押上げられ、この状態で内容物が容器10内に注入される。
【0020】
その後、口部11がキャップ(図示せず)により容閉され、容器10内は減圧状態に保たれる。
【0021】
上述したように内容物の充てん時に、底部13が押上げられるが、本実施の形態によれば、接地部13aの半径方向外側に、外方へ突出する円周突部13bが設けられているため、底部13を容易に上方へ押上げることができる。
【0022】
すなわち、底部13を押上げる際、円周突部13bが内方へへこむ際の基部となって、底部13全体を容易に押上げることができる。
【0023】
次に図3および図4により本発明の変形例について説明する。図3および図4に示す変形例において、円周突部13bは、底部13の周縁よりも接地部13c近傍に接近した位置に設けられている。
【0024】
図3および図4において、他の構成は図1および図2に示す実施の形態と略同一である。
【0025】
また図3において、接地部13aと円周突部13bとの間に設けられた平坦面13cの傾斜角αは16°となっており、図4において平坦面13cの傾斜角αは10°となっている。
【0026】
次に本発明の具体的実施例について説明する。
【0027】
まず図1および図2に示す実施の形態に対応するプラスチック容器10を準備し(実施例1−1)、図3に示す実施の形態に対応するプラスチック容器10を準備し(実施例1−2)、図4に示す実施の形態に対応するプラスチック容器10を準備した(実施例1−3)。
【0028】
次に比較例として、図5に示すように外方へ突出する円周突部を設けていない従来形のプラスチック容器10を準備した(比較例1−1)。また図6に示すように、接地部13aの半径方向内側に、内方へ引込む円周状の凹部15を設けたプラスチック容器10を準備した(比較例1−2)。さらに図7に示すように、接地部13aの半径方向内側に、円周突部13bを設けたプラスチック容器10を準備した(比較例1−3)。図7に示す比較例1−3において平坦面13cの傾斜角αは7°〜14°となっている。
【0029】
次に上記実施例1−1〜1−3および比較例1−1〜1−3のプラスチック容器10に対して、底部13の押上試験を行なった。さらに、実施例1−1〜1−3および比較例1−1〜1−3のプラスチック容器10に対して、85℃のお湯を充てんした後、減圧現象を確認する減圧吸収試験を行なった。この減圧吸収試験では底部13の上昇を確認した。上昇は充てん前後のボトルの高さの違いで判断した。0.15mm以上の差があれば良好と判断した。
【0030】
これらの結果を下記に示す。
【表1】

【0031】
上記試験結果より明らかなように、実施例1−1〜1−3においては、比較例1−1〜1−3に比べて、(1)小さな荷重により底部を押上げることができた。(2)また減圧時に底部が良好に上昇した。
【0032】
第2の実施の形態
図8は本発明の第2の実施の形態のプラスチック容器の側面図を示す。図9はプラスチック容器の底面図である。図10はプラスチック容器の底部の断面図である。図11はプラスチック容器の斜視図である。図12乃至図14は本発明のプラスチック容器の別の底部の形状を示し、図12はテーパー状周壁が4角形に形成された実施の形態の底面図であり、図13はテーパー状周壁が6角形に形成された実施の形態の底面図であり、図14はテーパー状周壁が8角形に形成された実施の形態の底面図である。
【0033】
図8乃至11に示す本発明のプラスチック容器101は口部101aと、胴部102と、底部103とを有し、全体としてポリエチレンテレフタレートからなっている。胴部102の外径(胴径)は55〜70mm、好ましくは60乃至70mm(容量240ml乃至360ml)となっている。このプラスチック容器101は、底部103の中央部に、内部に向けて傾斜したテーパー状周壁104とその上端に連接する天壁105とからなる内部に向けて陥没するワイングラス状の形状の陥没部106を備えている。尚、102はプラスチック容器101の胴部を示す。また、103aは陥没部106を包囲している環状のテーパー底壁であり、このテーパー底壁103aの内側に環状の接地部103Sが形成されている。また陥没部106の接地部103Sから天壁105までの距離Hは胴径の25〜40%、好ましくは25〜35%であり、陥没部106の下端の環状の接地部106Cの径Rは胴径の50〜75%、好ましくは55〜70%である。また、テーパー状周壁104は、互いに連接したプラスチック容器の接地面118に対して互いに異なる角度で傾斜した複数の周壁部分104a、104bからなり、且つ5角形に形成され、稜線108が設けられている。
【0034】
距離Hが胴径の25%よりも小さいと、加温された内容物からの重力と熱の影響を受けて陥没部106が接地面118に達するまで下方に垂れ下がり、プラスチック容器101の座りが悪くなる。一方距離Hが胴径の40%を越えると成形性の安定が悪くなり、底部103の形状が出にくいので好ましくない。
【0035】
テーパー状周壁104は、プラスチック容器101の接地部103Sから移行領域103bを介して接地面から約3mmのところから起立した接地面118に対して傾斜した第1の周壁部分104aと、第1の周壁部分104aとは異なる角度で接地面118に対して傾斜した第2の周壁部分104bからなり、ワイングラスの側壁形状の様に形成されている。各周壁部分104a、104bの傾斜角度は45°乃至70°が適当である。尚、108は周壁部分104aと周壁部分104a間の移行領域、107は周壁部分104bと天壁105間の移行領域を示す。
【0036】
また、接地径Rが胴径の50%よりも小さいとプラスチック容器101がホットウォーマー等の傾斜のついた加熱プレート上で倒れやすくなるので好ましくない。一方接地径Rが胴径の75%よりも大きくなると、加温された内容物からの重力と熱の影響を受けて陥没部106が接地部103Sに達するまで下方に垂れ下がりやすくなる。
【0037】
本発明の特徴として、小さな径の天壁105をテーパー状周壁104で支え、天壁105は胴部102側壁の下方に設けた強度アップのための横リブ111よりも上に位置していること、及び多角形の稜線108が内容物の重力を支えていることが挙げられる。それに対して、従来のプラスチック容器においては天壁105に相当する部分が横リブ111と同等又はそれ以下の高さのところに位置している。また、このように底部103の陥没部106を高くシンプルな形状にしたために、天壁105から底部103までの部分の延伸率を高めることができ、このことがプラスチック容器101の耐熱性アップにつながったものと考えられる。
【0038】
テーパー状周壁104は5角形に形成されているが、図12に示すようなテーパー状周壁が4角形に形成された底部、図13に示すようなテーパー状周壁が6角形に形成された底部、図14に示すようなテーパー状周壁が8角形に形成された底部も可能である。稜線108は内容物の重力を受ける梁としての作用をし、陥没部106の下方への垂れ下がりを防止する効果を高める。尚、多角形の稜線108及び角の辺112は、直線でも、緩やかなRでも、或いは凹み曲線でもよい。
【0039】
また、本発明において、図15に示すように、底部103の環状のテーパー底壁103aとその外側の湾曲底壁103cの間に変曲点103dを設けることが望ましい。このような変曲点が存在することにより、内容物の充填後に、底部103を一点鎖線119で示す形状に変形させ、底部の陥没部106を押し上げた状態で、キャッピングし、その後底部103を押す力を除くことにより減圧状態で内容物を密封包装することができる。これによってホットウォーマー機器による加熱により内圧の上昇が起こっても内圧上昇は減圧状態から出発するので底部中央のグート部が出っ張る程度が少なくなり、本発明の底部の陥没部の垂れ下がりを防止する効果を更に高めることができる。
【0040】
図16はプラスチック容器101の製造方法において、吹込成形型内にパリソンを挿入した状態を示す略断面図である。
【0041】
図16に示すように、ポリエチレンテレフタレート等からなる射出成形したパリソン109を成形型110内に挿入し、吹込成形することにより本発明のプラスチック容器101を製造することができる。その場合、成形型110の底部の形状が比較的シンプルであるので容易にプラスチック容器101を成形することができる。尚、本発明のプラスチック容器101は、角プラスチック容器101(四角筒形のプラスチック容器101)でも成形できるが、丸径のプラスチック容器101(六面以上の面からなる多面筒形胴部を有するプラスチック容器101又は円筒形胴部を有するプラスチック容器101)のほうが成形性がよい。
【0042】
また、ホットウォーマー機器等による加温用のプラスチック容器101としては、口部101a(プラスチック容器101の天面からサポートリング下までの領域)を結晶化(白化)したプラスチック容器101が望ましい。その理由は、ホットウォーマー機器等による加温用のプラスチック容器101は、加温の過程でプラスチック容器101にガラス転移点以上の温度が加わるため、プラスチック容器101の口部101aが変形してキャップとの密栓部がなくなり、内容物の腐敗・液漏れ等の不具合を起こす可能性があり、これを解消するために、口部101aを結晶化するのが望ましいからである。
【0043】
口部101aの結晶化は従来法のように口部101a全体を結晶化する方法によってもよいが、望ましくは、サポートリング以外の口部及び後部に続く移行部を結晶化させるのが良い。サポートリングを非結晶のままに残して口部を結晶化したものは、サポートリングが非結晶のままに残されているので、良好な耐衝撃性を保持し、衝撃を受けた際にも破損することはないという利点を有する。
【0044】
サポートリング以外の口部及び後部に続く移行部を結晶化させる方法として、(1)パリソンの段階で口部に加熱結晶化処理を施す方法、(2)吹込成形後に口部に加熱結晶化処理を施す方法及び、(3)パリソンの段階で口部の内側だけ加熱処理し、次いで吹込成形後にサポートリング以外の口部の外側を加熱処理する方法がある。以下、各方法について説明する。
【0045】
(1)パリソンの段階で口部に加熱結晶化処理を施す方法
先ず、図17に示すように口部型131と、インジェクションキャビティ型132と、インジェクションコア型133とからなる射出成形型113を用いて、通常の射出成形法によりパリソン109を成形する。
【0046】
成形したパリソン109がガラス転移温度より低い温度まで冷却したら、インジェクションコア型133及びインジェクションキャビティ型132を離型する。このとき、図18に示すように、口部型131はパリソン9の口部191を把持したままとする。
【0047】
次に図19に示すように、口部型131で把持したパリソン109を冷却型114内に入れることが好ましい。そのとき、口部型131のみならず、パリソン109の胴部及び底部も冷却するのが好ましい。冷却温度は、樹脂の結晶化温度より低ければ良く、具体的に10〜50℃程度が好ましい。
【0048】
上記のようにパリソンを外側から冷却した状態で、図19に示すようにパリソン109の口部191からロッドヒータ115を挿入し、口部191及びサポートリング192下の胴部への移行部193を内側から加熱し、口部191及びサポートリング192下の胴部への移行部193の内側部分だけを結晶化し、結晶化部120aを形成する。このとき、パリソンの表面温度が100〜190℃となるように加熱するのが好ましい。100〜190℃で加熱処理することにより結晶化処理を行うことができる。その場合において、100℃未満では、口部の樹脂は結晶化せず、一方、190℃を超えると結晶化が遅くなると共にパリソンが軟化、変形し易くなる。また、加熱時間は、樹脂が部分的結晶化を起こすように設定するが、具体的には0.5〜3分程度が好ましい。
【0049】
次に、口部型121をパリソン109から取りはずし、図20に示すように、サポートリング192をサポートリング型117a、117bで把持する。この状態で口部191を外側からリングヒータ116で加熱する。その場合、口部外側からの加熱は、リングヒータに代えて熱風ヒータ、赤外線ヒータ等を用いて行ってもよい。加熱温度は、上記と同様に100〜190℃程度で良い。また、口部外層中の未結晶の樹脂が結晶化するのに十分な時間であればよいが、具体的には0.5〜3分程度が好ましい。また、このとき、サポートリング型117a、117aは樹脂の結晶化温度より低い温度に冷却するのが好ましい。具体的にはサポートリング191の冷却温度は、10〜40℃程度が好ましい。
【0050】
このような方法で口部191を加熱することにより、図21に示すように、サポートリング192中の樹脂は非結晶のままで、それ以外の口部191が結晶化する。120bは非結晶化部を示す。
【0051】
サポートリング192は、加熱すると自重で変形し易くなるが、図20に示すように、サポートリング192は、加熱処理過程でサポートリング型117a、117bで把持されているので、変形は防止される。
【0052】
次いで、このようにして得られたパリソン109を通常の方法で吹込成形するが、その際、移行部193からその下の肩部に掛けて急峻な肉厚差が生じない。
【0053】
(2)吹込成形後に口部に加熱結晶化処理を施す方法
プラスチック容器101の吹込成形後、プラスチック容器101を口部型で把持したまたま金型から取り出し、次の加熱結晶化処理を行う。加熱結晶化処理では、口部型で保持したプラスチック容器101を冷却型内に入れ、上記した(1)の方法と同様にしてプラスチック容器101の口部101aからヒータを挿入して口部及び移行部を内側から加熱し、その部分の樹脂を結晶化する。加熱結晶化条件は(1)の方法で良い。
【0054】
次に、口部型をプラスチック容器から離型した後、プラスチック容器のサポートリングをサポートリング型で把持する。この状態で口部を外側から加熱し、口部外層中の未結晶の樹脂を結晶化する。加熱結晶化条件は(1)の方法と同様で良い。
【0055】
(3)パリソンの段階で口部の内側だけ結晶化し、次いで吹込成形後にサポートリング以外の口部の外側を結晶化する方法
パリソン製造後、口部型でパリソンを把持した状態でインジェクションコア型及びインジェクションキャビティ型を取り外し、口部及び移行部を内側から加熱し、その部分の樹脂を結晶化する。加熱結晶化条件は(1)の方法と同様で良い。
【0056】
上記パリソンを用いて吹込成形を行った後、プラスチック容器のサポートリングをサポートリング型で把持する。この状態でサポートリング以外の口部を外側から加熱し、口部外層中の未結晶の樹脂を結晶化する。加熱結晶化条件は(1)の方法で良い。
【0057】
本発明のプラスチック容器101の成形用樹脂としては、飽和ジカルボン酸と飽和二価アルコールとからなるポリエステル樹脂を適用することができる。飽和ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−1,4−又は2,6ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸類・ジフェノキシエタンジエタンジカルボン酸類等の芳香族ジカルボン酸類、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、デカン−1,10−ジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸等を使用することができる。また、飽和二価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ドデカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族グリコール、2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、その他の芳香族ジオール類等を使用することができる。このような飽和ジカルボン酸と飽和二価アルコールとからなるポリエステル樹脂としては、テレフタル酸とエチレングリコールとからなるポリエチレンテレフタレートを用いるのが好ましい。
【0058】
また、本発明のプラスチック容器101は、2層、3層の多層成形プラスチック容器として形成することもできる。即ち共射出成形により、例えば、ポリエチレンテレフタレート/MXD6、MXD6+コバルト塩、PGA(ポリグリコール酸)、EVOH(エチレンビニルアルコール共重合体)又はPEN(ポリエチレンナフタレート)等の酸素バリア性及び紫外線バリア性を有する樹脂/ポリエチレンテレフタレートの三層からなるパリソンを押出成形後、吹込成形することにより酸素バリア性及び紫外線バリア性を有する多層プラスチック容器101を形成しても良い。
【0059】
また吹込成形型にインモールドラベル成形用ラベルを取付けインモールドラベル二軸延伸吹込成形を行いバリア性を有するホットウォーマー用プラスチック容器を形成することができる。
【0060】
インモールドラベル成形用ラベルとして基材層と接着層からなるものが用いられ、接着層は130℃以下で軟化して延伸吹込成形品の表面に接着する熱接着性材料からなる。
【0061】
ここにおいて、熱接着性材料として、(a)低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、メタロセン触媒を使用して重合したエチレン−αオレフィン共重合体、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレンーアクリル酸エチル共重合体、エチレン−メチルメタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、フマール酸その他の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、熱可塑性ポリエステル系樹脂、熱可塑性ポリアミド系樹脂の1種乃至複数種からなるもの、(b)ヒートシール層を有する、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の未延伸又は延伸プラスチックフィルム、(c)エチレン−酢酸ビニル共重合体を含むホットメルト接着剤層、或いは(d)エチレン−酢酸ビニル共重合体を含むヒートシール剤層などを適用することができる。
【0062】
基材層はバリア層、紫外線防止層、遮光層、印刷基材層などを含むものである。
【0063】
本発明のプラスチック容器101は、底部103の中央部に、プラスチック容器101内部に向けて傾斜した周壁部分104a、104bからなるテーパー状周壁104とその上端に連接する天壁105とからなるプラスチック容器101内部に向けて陥没するワイングラス状の形状の陥没部106を備えている。陥没部106のプラスチック容器101の接地面118から天壁105までの距離Hは胴径の25〜40%、好ましくは25〜35%であり、陥没部106の下端の環状の接地径Rは胴径の50〜75%、好ましくは55〜70%である。このため、テーパー状壁によって底部の機械的強度は確保されているのみならず、陥没部106のプラスチック容器101の接地面118から天壁105までの距離Hは従来の胴径の23%よりも高いので、液体内容物が高温に加熱され、内容物からの重力と熱の影響を受けて陥没部が下方に垂れ下がり、プラスチック容器101の座りが悪くなることが防止される。且つ75℃乃至80℃の温度の下の長時間保温に耐え、底部の陥没部が下方に垂れ下がり、プラスチック容器101の座りが悪くなることはなく、ホットウォーマー加温用容器として活用することができる。
【0064】
実施例2−1
次に実施例及び比較例をあげて本発明につき説明する。
【0065】
ポリエチレンテレフタレート樹脂を用い、2軸延伸吹込成形により、図8乃至11に示すように、胴径66mmを有し、底部3の中央部に、内部に向けて傾斜したテーパー状周壁104とその上端に連接する天壁105とからなる内部に向けて陥没するワイングラス状の形状の陥没部106を備え、テーパー状周壁は5角形に形成されており、陥没部106のプラスチック容器101の接地面118から天壁105までの距離Hは20mm(胴径の30.3%)であり、陥没部106の下端の環状の接地径Rは40mm(胴径の60.6%)である、内容量350ml(高さ163mm)のプラスチック容器及び内容量280ml(高さ136mm)のプラスチック容器101を成形した。内容量350mlのプラスチック容器101に350mlの水を入れ、また、内容量280mlのプラスチック容器101に280mlの水を入れ、温度80℃の恒温槽内にいれて10時間放置した。しかし、加温された内容物からの重力と熱の影響を受けて底部が垂れ下がり座りが悪くなることはおこらなかった。
【0066】
実施例2−2
ポリエチレンテレフタレート樹脂を用い、2軸延伸吹込成形により、図8に示すように、胴径66mmを有し、底部103の中央部に、内部に向けて傾斜したテーパー状周壁104とその上端に連接する天壁105とからなる内部に向けて陥没するワイングラス状の形状の陥没部106を備え、テーパー状周壁は5角形に形成されており、陥没部106のプラスチック容器101の接地面118から天壁105までの距離Hは17.5mm(胴径の26.5%)であり、陥没部106の下端の環状の接地径Rは40mm(胴径の60.6%)である、内容量350ml(高さ163mm)のプラスチック容器101、及び内容量280ml(高さ136mm)のプラスチック容器101を成形した。内容量350mlのプラスチック容器101に350mlの水を入れ、また、内容量280mlのプラスチック容器101に280mlの水を入れ、78℃の恒温槽内にいれて10時間放置した。しかし、加温された内容物からの重力と熱の影響を受けて底部が垂れ下がり座りが悪くなることはおこらなかった。
【0067】
実施例2−3
ポリエチレンテレフタレート樹脂を用い、2軸延伸吹込成形により、図8乃至11に示すように、胴径66mmを有し、底部103の中央部に、内部に向けて傾斜したテーパー状周壁104とその上端に連接する天壁105とからなる内部に向けて陥没するワイングラス状の形状の陥没部106を備え、テーパー状周壁は5角形に形成されており、陥没部106のプラスチック容器101の接地面118から天壁105までの距離Hは20mm(胴径の30.3%)であり、陥没部106の下端の環状の接地径Rは45mm(胴径の68.1%)である、内容量350ml(高さ163mm)のプラスチック容器101、及び内容量280ml(高さ136mm)のプラスチック容器101を成形した。内容量350mlのプラスチック容器101に350mlの水を入れ、また、内容量280mlのプラスチック容器101に280mlの水を入れ、75℃の恒温槽内にいれて10時間放置した。しかし、加温された内容物からの重力と熱の影響を受けて底部が垂れ下がり座りが悪くなることはおこらなかった。
【0068】
実施例2−4
ポリエチレンテレフタレート樹脂を用い、2軸延伸吹込成形により、図8乃至11に示すように、胴径66mmを有し、底部103の中央部に、内部に向けて傾斜したテーパー状周壁104とその上端に連接する天壁105とからなる内部に向けて陥没するワイングラス状の形状の陥没部106を備え、テーパー状周壁は5角形に形成されており、陥没部106のプラスチック容器の接地面から天壁までの距離Hは16.5mm(胴径の25%)であり、陥没部106の下端の環状の接地径Rは50mm(胴径の75.8%)である、内容量350ml(高さ163mm)のプラスチック容器101、及び内容量280ml(高さ136mm)のプラスチック容器101を成形した。内容量350mlのプラスチック容器101に350mlの水を入れ、また、内容量280mlのプラスチック容器101に280mlの水を入れ、75℃の恒温槽内にいれて10時間放置した。しかし、加温された内容物からの重力と熱の影響を受けて底部が垂れ下がり座りが悪くなることはおこらなかった。
【0069】
実施例2−5
ポリエチレンテレフタレート樹脂を用い2軸延伸吹込成形により、図8乃至11に示すように、胴径66mmを有し、底部103の中央部に、内部に向けて傾斜したテーパー状周壁104とその上端に連接する天壁105とからなる内部に向けて陥没するワイングラス状の形状の陥没部106を備え、テーパー状周壁は5角形に形成されており、陥没部106のプラスチック容器101の接地面118から天壁までの距離Hは22mm(胴径の33.3%)であり、陥没部106の下端の環状の接地径Rは45mmである、内容量350ml(高さ163mm)のプラスチック容器101、及び内容量280ml(高さ136mm)のプラスチック容器101を成形した。内容量350mlのプラスチック容器101に350mlの水を入れ、また、内容量280mlのプラスチック容器101に280mlの水を入れ、温度80℃の恒温槽内にいれて10時間放置した。しかし、加温された内容物からの重力と熱の影響を受けて底部が垂れ下がり座りが悪くなることはおこらなかった。
【0070】
実施例2−6
ポリエチレンテレフタレート樹脂を用い2軸延伸吹込成形により、図8乃至11に示すように、胴径66mmを有し、底部103の中央部に、内部に向けて傾斜したテーパー状周壁104とその上端に連接する天壁105とからなる内部に向けて陥没するワイングラス状の形状の陥没部106を備え、陥没部106のプラスチック容器101の接地面118から天壁105までの距離Hは15mm(胴径の22.8%)であり、陥没部106の下端の環状の接地径Rは50mm(胴径の75.8%)であり、但しテーパー状周壁は多角形ではなく円錐状に形成された、内容量350mlのプラスチック容器101を成形した。このプラスチック容器101内に水350mlを入れ、75℃の恒温槽内にいれて10時間放置した。
【0071】
実施例2−7
ポリエチレンテレフタレート樹脂を用い2軸延伸吹込成形により、図8乃至11に示すように、胴径66mmを有し、底部103の中央部に、内部に向けて傾斜したテーパー状周壁104とその上端に連接する天壁105とからなる内部に向けて陥没するワイングラス状の形状の陥没部106を備え、陥没部106のプラスチック容器101の接地面118から天壁105までの距離Hは16.5mm(胴径の25%)であり、陥没部106の下端の環状の接地径Rは53mm(胴径の80.3%)である、但しテーパー状周壁は多角形ではなく円錐状に形成された、内容量350mlのプラスチック容器101を成形した。このプラスチック容器101内に水350mlを入れ、75℃の恒温槽内にいれて10時間放置した。
【0072】
図22は75℃に温度を維持した恒温層(ヤマト科学(株)製DN43)内で内容物入りプラスチック容器を加温した時の(加温)経過時間対ゲート部深さ変化率((プラスチック容器の接地部からプラスチック容器中央部にあるゲート部までの距離(以下ゲート部深さと称する)の初期値−加温後のプラスチック容器のゲート部深さの測定値)/ゲート部深さの初期値×100(%))のグラフを示す。尚、ゲート部深さは、(株)ミツトヨ製デプスケージを使用して測定した。図22において、−◎−は実施例2−6、−〇−は実施例2−7、−△−は実施例2−1、−×−は実施例2−2、−◇−は実施例2−3、−□−は実施例2−4を示す。この図から明らかなように、実施例2−1乃至2−4の場合、10時間加温後のゲート変化率は70%以下であり、底部の陥没部が接地面に至るまで垂れ下がり座りが悪くなることはない。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明によるプラスチック容器の一実施の形態を示す概略図。
【図2】本発明によるプラスチック容器の底部を示す図。
【図3】本発明によるプラスチック容器の底部の変形例を示す図。
【図4】本発明によるプラスチック容器の底部の変形例を示す図。
【図5】プラスチック容器の比較例を示す図。
【図6】プラスチック容器の比較例を示す図。
【図7】プラスチック容器の比較例を示す図。
【図8】本発明のプラスチック容器の側面図である。
【図9】本発明のプラスチック容器の底面図である。
【図10】本発明のプラスチック容器の底部の断面図である。
【図11】本発明のプラスチック容器の斜視図である。
【図12】テーパー状周壁が4角形に形成された実施の形態の底面図である。
【図13】テーパー状周壁が6角形に形成された実施の形態の底面図である。
【図14】テーパー周壁が8角形に形成された実施の形態の底面図である。
【図15】本発明のプラスチック容器の変曲点を有する底部の形状を示す略図である。
【図16】プラスチック容器の成形過程において、吹込成形型内にパリソンを挿入した状態を示す略断面図である。
【図17】本発明のプラスチック容器のパリソンの製造過程を示す略図である。
【図18】成形したパリソンの口部型で把持した状態を示す略図である。
【図19】パリソンの口部の内側を結晶化する過程を示す略図である。
【図20】パリソンの口部の外側を結晶化する過程を示す略図である。
【図21】口部を結晶化した後吹込成形したプラスチック容器の口部の拡大図である。
【図22】プラスチック容器の加温の経過時間対ゲート部深さ変化率のグラフである。
【符号の説明】
【0074】
10 プラスチック容器
11 口部
12 胴部
13 底部
13a 接地部
13b 円周突部
13c 平坦面
101 プラスチック容器
102 胴部
103 底部
103a 環状のテーパー底壁
103b 移行領域
103c 湾曲底壁
103d 変曲点
104 テーパー状周壁
104a 周壁部分
104b 周壁部分
105 天壁
106 陥没部
107 移行領域
108 稜線
109 パリソン
110 吹込成形形
111 横リブ
112 多角形の辺
113 射出成形形
118 接地面
119 接地面のほうへ押圧され変形した底部の輪郭を示す線
120a 結晶化領域
120b 非結晶化領域
121 底部
122 周壁
123 壜内部
124 壜の側壁
125 陥没部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
口部と、
胴部と、
陥没部を有する底部とを備え、
底部は陥没部の周縁に沿って配置された接地部と、外方へ突出する円周突部とを有し、この円周突部は底部を内側へ押圧した際に底部がへこむ基部となり、
円周突部は接地部の半径方向外側に位置することを特徴とするプラスチック容器。
【請求項2】
円周突部と接地部との間に平坦面が形成されていることを特徴とする請求項1記載のプラスチック容器。
【請求項3】
胴部の下方部に円周方向に延びる横リブが設けられ、陥没部の天壁は横リブの上方に位置することを特徴とする請求項1記載のプラスチック容器。
【請求項4】
底部の陥没部の天壁と接地部との間の距離は、胴部の外径の25〜40%であり、底部の接地部の直径は胴部の外径の50〜75%であることを特徴とする請求項1記載のプラスチック容器。
【請求項5】
胴部の外径は55〜70mmとなっており、加温用容器に用いられることを特徴とする請求項1記載のプラスチック容器。
【請求項6】
口部は白化されていることを特徴とする請求項1記載のプラスチック容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2006−8200(P2006−8200A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−189495(P2004−189495)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】