説明

プラスチック成形組立て装置

【課題】設置の省スペース化が可能であり、微細加工に適し、清浄なプラスチック成形品を製造できるプラスチック成形組立て装置を実現する。
【解決手段】型締めユニット10と、注入ユニット20と、成形された成形品に対する後加工を行う後加工ユニット30と、後加工された加工成形品に対して所定の組立てを行う組立てユニット40と、これら各ユニットを制御する制御手段70とを有し、型締めユニット10と注入ユニット20とを、これらの長手方向が互いに略直交するように配置するとともに、これら長手方向を2辺の方向として挟まれた領域に、後加工ユニット30と組立てユニット40とをコンパクトに配置し、型締めユニット10で成形された成形品が後加工ユニット30・組立てユニット40へ自動搬送されるようにし、コンパクトに配置されたユニット全体が外装カバー50で被覆されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はプラスチック成形組立て装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック成形品の製造では、成形と、成形品の後加工、後加工された加工成形品に対する組立ての工程が実行されるが、従来、上記各工程は別個の装置で行っており、このため全工程を実施するための装置の配置に大きなスペースを必要としていた。
【0003】
近来、情報通信機器や医療機器にもプラスチック成形品が多用されているが、これらの機器に用いられるプラスチック成形品は加工が微細であり、また、製品の清浄性に対する要求も厳しい。
【0004】
従来のように、微細加工と清浄性とを要求されるプラスチック成形品の成形・後加工・組立てを互いに別個の装置で行う場合、成形品を後加工装置にセットする際や、後加工された加工成形品を組立て装置にセットする際に、成形品や加工成形品に不用意に機械力が作用してこれら成形品の微細加工を損なったり、塵埃の付着により成形品が汚染されて清浄性を損なったりする虞がある。
このような問題を解消する技術は発明者が知る限りに於いて存在していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、プラスチック成形品の成形・後加工・組立てを自動的に行うプラスチック成形組立て装置であって、設置の省スペース化が可能で、微細加工に適し、清浄なプラスチック成形品を製造できるプラスチック成形組立て装置の実現を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明のプラスチック成形組立て装置は、プラスチック成形品の成形・後加工・組立てを自動的に行うプラスチック成形組立て装置であって、型締めユニットと、注入ユニットと、後加工ユニットと、組立てユニットと、制御手段とを有する。
【0007】
型締めユニットは、型締めを行うユニットである。
注入ユニットは、型締めユニットに、成形されるべき樹脂材料を注入するユニットである。
【0008】
後加工ユニットは、型締めユニットにより成形された成形品に対する後加工を行うユニットである。後加工は、成形された成形品の注入口(ゲート)部の形状を切断し、研磨等の仕上げを行う加工である。後加工ユニットはまた、後加工された加工成形品をトレイ等の保持具の上に所望の配列に整列して配置させる機能を有することができる。
組立てユニットは、後加工ユニットにより後加工された加工成形品(即ち、上記成形品に対して後加工が施されたもの)に対して所定の組立てを行うユニットである。
【0009】
制御手段は、上記各ユニットを制御する手段であり、コンピュータや専用のCPU等として構成される。
【0010】
型締めユニットと注入ユニットとは、型締めユニットの長手方向と注入ユニットの長手方向が略直交するように配置され、これらユニットの長手方向を2辺の方向として挟まれた領域に、後加工ユニットと組立てユニットとがコンパクトに配置される。
【0011】
そして、これらコンパクトに配置されたユニット全体(即ち、型締めユニット・注入ユニット・後加工ユニット・組立てユニットの全体)が外装カバーで被覆され、型締めユニットで成形された成形品は、後加工ユニット・組立てユニットへ自動搬送される。
【0012】
上記請求項1記載のプラスチック成形組立て装置は、注入ユニットにおいて型締めユニットに注入するべき樹脂材料を混練するバレルのスクリュに沿って、スクリュの回転方向に合わせたスパイラル状の溝をフィードゾーンまで形成し、スパイラル状の溝に不活性ガスを外部から流通させるように構成することができる(請求項2)。
【0013】
なお、上記型締めユニットと注入ユニットを1組として、これらユニットによる2組以上を、上下方向に複数段に重ねて配置することも可能である。この場合、後加工ユニットや組立てユニットは複数段に共通化してもよいし、各段ごとに設けても良い。
【発明の効果】
【0014】
上記の如く、この発明によるプラスチック成形組立て装置では、型締めユニットと注入ユニットとが、型締めユニットの長手方向と注入ユニットの長手方向を略直交するようにして配置され、これらユニットの長手方向を2辺の方向として挟まれた領域に、後加工ユニットと組立てユニットとが配置されるので、各ユニットを互いに近接させ、無駄なスペースを生じることなく全体としてコンパクトに配置でき、ユニット配置のスペースを小さくすることができる。
【0015】
また、型締めユニットで成形された成形品が、後加工ユニット・組立てユニットへ自動搬送されるので、成形品や加工成形品に不用意な機械力が作用して、成形品や加工成形品の微細加工を物理的に損なう虞がない。さらに、コンパクトに配置されたユニット全体が外装カバーで被覆されるので、樹脂の注入から成形・後加工・組立てのプロセスが一貫して外装カバー内で行われることになり、成形品や加工成形品に塵埃が付着して清浄性を損なう虞がない。
【0016】
プラスチック成形が行われるときに酸素が存在すると、成形の際に成形品に「焼け」が発生する原因となる。請求項2記載の発明のように、バレルのスクリュに沿って、スクリュの回転方向に合わせたスパイラル状の溝をフィードゾーンまで形成し、スパイラル状の溝に不活性ガスを外部から流通させるように構成すると、成形部から不要な酸素をパージできるので、成形品の焼けを有効に防止でき、製品の歩留まりを高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、実施の形態を説明する。
図1はプラスチック成形組立て装置の実施の1形態を示している。成形により製造される製品は、情報通信機器や医療機器に用いられるプラスチック成形品で、加工が微細で清浄性の要求されるものである。例えば、カテーテル用のチューブ等である。
【0018】
図1(a)は、装置の平面図的構成を模式的に簡単化して描いている。図1(b)は、図1(a)の状態を図の下方から見た状態を略示している。
即ち、図1に示す装置は、プラスチック成形品の成形・後加工・組立てを自動的に行うプラスチック成形組立て装置であって、型締めを行う型締めユニット10と、型締めユニットに成形されるべき樹脂材料を注入する注入ユニット20と、型締めユニット10により成形された成形品に対する後加工を行う後加工ユニット30と、この後加工ユニット30により後加工された加工成形品に対して所定の組立てを行う組立てユニット40と、これら各ユニットを制御する制御手段70とを有する。
【0019】
図1(a)に示すように、型締めユニット10と注入ユニット20とは、型締めユニット10の長手方向(図の左右方向)と注入ユニット20の長手方向(図の上下方向)が略直交するように配置され、これらユニット10、20の長手方向を2辺の方向として挟まれた領域に、後加工ユニット30と組立てユニット40とがコンパクトに配置され、これらユニットの全体は、外装カバー50により被覆されている。そして、型締めユニット10で成形された成形品は後加工ユニット30・組立てユニット40へ自動搬送されるように構成されている。
【0020】
なお、図1(b)において符号60は装置下部を示し、符号61は操作部を示す。上記各ユニットは装置下部60の上部面上に固定的に配設されている。
型締めユニット10は、成形型の一方を固定位置に保持する固定保持部14と、他方の型を固定的に保持し、固定保持部14に保持された型に対して図の左右方向へ変位する移動保持部12と、この移動保持部12を図の左右方向へ変位させる駆動部11と、移動保持部12の変位をガイドする棒状のガイド13を有している。
【0021】
注入ユニット20は、ペレット状の材料樹脂を保持供給するホッパー21と、ホッパー21から供給される材料樹脂を混練して液状としフィードゾーンへ移送する混練部22と、混練部22により混練された樹脂をフィードゾーンから固定保持部14の注入口(ゲート部)へ注入する注入管23とを有している。
【0022】
成形型の一方を固定保持部14に保持し、他方の成形型を移動保持部12に保持させて操作部61により装置を稼動させると、コンピュータ等として構成され、装置下部60に配設された制御手段70により制御される駆動部11が移動保持部12をガイド13に沿って図1(a)の右方へ変位させて、保持した成形型を固定保持部14側に保持されている成形型と合わせて成形用の空間を形成する。
【0023】
注入ユニット20は、ホッパー21から供給されるペレット状の材料樹脂をフィードゾーンへ向けて搬送しつつ攪拌する。材料樹脂は搬送されつつ注入ユニット内で加熱され、この加熱による熱と、攪拌搬送に伴い発生する摩擦熱等により溶融して液状となり、注入管23から固定保持部14のゲート部を通って上記成形用の空間に射出される。このとき、駆動部11は移動保持部12に押圧力を作用させて「型締め」を行う。このようにして成形がなされる。
【0024】
成形後、樹脂材料の冷却を待って、移動保持部12が駆動部11側へ所定距離変位させられる。このとき、成形品(成形された樹脂でゲート部に対応する部分を有している。)は、移動固定部12の側に保持された成形型と一体となって、固定保持部14側から離れる。この状態において、俗に「突き出し」と呼ばれる操作が駆動部11により行われ、移動固定部12に保持された成形型から成形品が押し出され、成形品は上記成形型に「辛うじて保持された状態」となる。
【0025】
この状態に於いて、後加工ユニット30の側から、チャック機能を持った腕31が図1(a)の下方へ伸びだし、上記「辛うじて保持された状態」にある成形品をチャックして後加工ユニット30へ搬送する。このように搬送された成形品は、後加工ユニット30の加工部において、成形品に残されている「ゲート部成形形状」をカットし、カット痕を仕上げ加工し、仕上げ加工された加工成形品をトレイ等の保持具上に所望の配列に整列して配置させる。
【0026】
この間、上記腕31は成形品をチャックして保持し、このように保持された成形品が後加工されて加工成形品となる。そして腕31はチャックされた加工成形品を保持具上に所望の配列に整列させる。このような工程を実行するために、腕31や加工部の動作は制御手段70による制御を受ける。このようにして、後加工を受けた状態では、加工成形品は後加工ユニット30内の保持具上に整列している。
【0027】
次いで、このように整列した加工成形品を、組立てユニット40の組立て機構41が個別的に取り出して組立てユニット40内に搬送し、組立てユニット40内に予め用意された「組立ての相手部材」に対して加工成形品を組付ける組立て作業を実施する。このようにして、組立てられた製品が得られる。
【0028】
上記の説明から明らかなように、後加工ユニット30や組立てユニット40は、所定の作業を行うロボットとして構成され、制御手段70の制御を受けて、上に説明した各動作を実行する。
【0029】
外装カバー50の内部は空気圧に対して若干「正圧状態」とされ、外装カバー50内部に外部から塵埃が侵入しないようにされる。この目的のために、装置下部60側から塵埃を除かれた清浄な空気が常時、外装カバー50内に送り込まれている。
【0030】
図2は、請求項2記載の発明の特徴部分を説明するための図である。
図2に示しているのは、ホッパー21の部分と混練部22のバレルの一部である。
バレルは混練部22内に設けられ、材料樹脂を混練しつつフィードゾーンへ移送する部分であり、シリンダ210とスクリュ212と、図示されないヒータにより構成されている。スクリュ212はシリンダ210の内周部に対し滑らかに摺動するように設けられ、その周面部に搬送用のスクリュ溝213を形成されている。
【0031】
ホッパー21はその供給口をスクリュ212の上流側端部の、スクリュ溝213の上部に望ませており、保持した材料樹脂のペレットPLをスクリュ溝213部分に供給する。スクリュ212が制御手段70による制御を受ける駆動手段(図示されず)により回転すると、供給されたペレットPLはスクリュ溝213により送られ、シリンダ210の内周面からの機械力により徐々に粉砕される。
【0032】
図示されないヒータは発熱線であってシリンダ210の外周部に巻きついており、シリンダ210を外部から加熱する。シリンダ210により移送されるペレットPLは上記粉砕の際に生じる熱とヒータによる熱とにより溶融し、液状となってフィードゾーンへ送られ、前述の如く注入管により成形用型内部に注入される。
【0033】
図2に示すように、注入ユニットにおいて型締めユニットに注入するべき樹脂材料を混練するバレルのスクリュ212に沿って、スクリュの回転方向に合わせたスパイラル状の溝215がフィードゾーンまで、シリンダ210の内周面に形成されている。一方、ホッパー21には通気路216が形成され、通気路216の端部は、スパイラル状の溝215の上流側端部に臨んでいる。
【0034】
装置下部60には図示されない窒素ガス発生器が設けられ、発生された窒素ガスは図示されない供給管によりホッパー21の通気路216へ「不活性ガス」として供給される。供給される窒素ガスは上記スパイラル状の溝215を流れ、フィードゾーンの部分で外部へ放出される。このため、フィードゾーンから成形型内へ注入される材料樹脂は不活性ガスとともに有り、酸素をパージされた状態で注入が行われるので、成形品の焼けが有効に防止される。
【0035】
なお、図1に実施の形態を示すプラスチック成形組立て装置の大きさは、1例を挙げれば、図1(a)の左右方向の長さ:1500mm、同図上下方向の長さ:950mm、図1(b)における上下方向(鉛直方向)高さ:1800mm、装置下部60の鉛直方向高さ:1100mmである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】プラスチック成形組立て装置の実施の1形態を説明するための図である。
【図2】請求項2記載の発明の特徴部分を説明するための図である。
【符号の説明】
【0037】
10 型締めユニット
20 注入ユニット
30 後加工ユニット
40 組立てユニット
50 外装カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック成形品の成形・後加工・組立てを自動的に行うプラスチック成形組立て装置であって、
型締めを行う型締めユニットと、上記型締めユニットに成形されるべき樹脂材料を注入する注入ユニットと、上記型締めユニットにより成形された成形品に対する後加工を行う後加工ユニットと、この後加工ユニットにより後加工された加工成形品に対して所定の組立てを行う組立てユニットと、これら各ユニットを制御する制御手段とを有し、
上記型締めユニットと注入ユニットとを、上記型締めユニットの長手方向と上記注入ユニットの長手方向が略直交するように配置するとともに、これらユニットの長手方向を2辺の方向として挟まれた領域に、上記後加工ユニットと組立てユニットとをコンパクトに配置し、上記型締めユニットで成形された成形品が上記後加工ユニット・組立てユニットへ自動搬送されるようにし、上記コンパクトに配置されたユニット全体を外装カバーで被覆したことを特徴とするプラスチック成形組立て装置。
【請求項2】
請求項1記載のプラスチック成形組立て装置において、
注入ユニットにおいて型締めユニットに注入するべき樹脂材料を混練するバレルのスクリュに沿って、スクリュの回転方向に合わせたスパイラル状の溝をフィードゾーンまで形成し、上記スパイラル状の溝に不活性ガスを外部から流通させるように構成したことを特徴とするプラスチック成形組立て装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−103138(P2006−103138A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−292576(P2004−292576)
【出願日】平成16年10月5日(2004.10.5)
【出願人】(594097804)株式会社ハマ製作所 (1)
【Fターム(参考)】