説明

プラスチック気泡ボードを材料とする容器

【課題】プラスチックシートを熱成形して多数のキャップ状の突起を形成したキャップシート(2)の両面に、平坦なバックシート(1)およびライナーシート(3)を貼り合わせてなるプラスチック気泡ボードを材料として使用した容器、とくに搬送用容器において、直射日光に当たっても、容器それ自体の温度上昇が問題にならず、したがって容器の内容物の温度が上昇することがなく、かつ、内容物に紫外線の影響が及ぶこともなく、容器の劣化が遅く耐久性が高いものを提供する。再生プラスチックの利用を通じて、資源の再利用にも資する。
【解決手段】プラスチック気泡ボードとして、そのキャップシート(2)が黒色に着色されたプラスチックからなり、バックシート(1)およびライナーシート(3)の一方または両方が、白色に着色されたプラスチックからなるものを使用して容器を製作し、容器の少なくとも外側に位置するシートが、白色に着色されたシートであるように、プラスチック気泡ボードを配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック気泡ボードを材料として製作した容器、とくに搬送用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックシートを熱成形して多数のキャップ状の突起を形成したキャップシートの、キャップの底部にプラスチックの平坦なバックシートを貼り合わせるとともに、キャップの頂を連ねて別の平坦なプラスチックの平坦なライナーシートを貼り合わせた構造をもつプラスチック気泡ボードが、その、軽量でありながら高い剛性を有するという利点を買われ、主として構造材料として、建築および構築、自動車部品、さらには種々の容器を製作するために使用されている。
【0003】
プラスチック気泡ボードの用途の例を挙げれば、この材料を角筒状に加工して胴部材とし、それに射出成形により製作した底部材および蓋部材を組み合わせて、組み立ておよび解体が容易な搬送用容器がある(特許文献1)。別の例としては、この材料の長方形の板に、少なくとも対向する二辺から外側に垂直に突出する枠部を一体に形成してコンクリート型枠材料としたものがあり、この板を組み立てて、上記の枠部を外側からクランプすることによりコンクリート打設用の型枠を形成する(特許文献2)。
【特許文献1】特開2003−63528
【特許文献2】特開2005−350946
【0004】
このプラスチック気泡ボードで、上述したような容器を構成したとき、使用にともなって、種々の問題に遭遇する。プラスチック気泡ボードの製造に当たって、特段の着色を行なわないプラスチックをそのまま使用して製作した容器においては、容器を屋外に放置して直射日光に当たるままにしておくと、容器内部の温度上昇が生じる。同時に、紫外線の透過により、内容物への影響もさることながら、材料のプラスチック気泡ボードそれ自体が劣化する。低比重で剛性が高いという点で、プラスチック気泡ボードの材料として現在のところ最適と考えられるポリプロピレンは、とりわけ紫外線による劣化が激しいという悩みがある。とくに、比較的重量のある物を収容する搬送用容器においては、使用中の強度の低下は、危機的な事態を招きかねない。
【0005】
このような紫外線劣化を中心とする耐候性の不足という問題への対策としては、プラスチックに紫外線吸収剤をはじめとする、耐候性向上剤を混和することが考えられる。紫外線吸収剤としてはさまざまな有機化合物が開発されており、効果的ではあるものの、共通の問題として、それぞれの有機化合物の構造から、それぞれが特定波長の紫外線に対しては有用であるが、それと異なる波長の紫外線に対しては効果が低い、ということが挙げられる。無機系の紫外線吸収剤であれば、そういう問題はないが、吸収効果を高くしようとすると、原理的にいって大量の無機物質をプラスチックに配合しなければならず、それに伴いプラスチックの加工性および機械的特性の低下が避けられない。
【0006】
一方、原油価格の高騰や、資源の利用度を向上させるという観点からの運動に促されて、使用済みポリプロピレンなどを回収して再使用することが、盛んに行なわれるようになってきている。再使用するプラスチックは、種々の色に着色されたものが混合されるため、回収品をブレンドして溶融押出ししたとき、ダイスを出るシートは、さまざまな色調になり、しばしば黒色に近い暗色となることが避けがたい。そこで、色調を統一するため、この種の再生プラスチックは、黒色に着色することが多い。
【0007】
プラスチック気泡ボードの材料として、この黒色に着色されたプラスチックを使用し、容器を構成した場合、直射日光が当たれば、容器それ自体の温度が上昇する。紫外線の透過はないから、容器に収容した内容物が紫外線で影響を受ける心配はないが、容器の温度上昇により内容物の温度も上昇する、という問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、プラスチック気泡ボードを材料とする容器において、上記の諸問題を解決し、直射日光に当たっても、容器それ自体の温度上昇が問題にならず、したがって容器の内容物の温度が上昇することがなく、かつ、内容物に紫外線の影響が及ぶこともなく、容器の劣化が遅く、耐久性が高いものを提供するとともに、資源の再利用に資することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記のようなさまざまな目的を達成する本発明の容器は、図1および図2に示すような、プラスチックシートを熱成形して多数のキャップ状の突起を形成したキャップシート(2)の、キャップの底部に、プラスチックの平坦なバックシート(1)を貼り合わせるとともに、キャップの頂を連ねて別の平坦なプラスチックの平坦なライナーシート(3)を貼り合わせてなるプラスチック気泡ボードを材料として使用した容器において、プラスチック気泡ボードのキャップシート(2)が黒色に着色されたプラスチックからなり、バックシート(1)およびライナーシート(3)の一方または両方が、白色に着色されたプラスチックからなり、容器の少なくとも外側に位置するシートが、白色に着色されたシートであるように、プラスチック気泡ボードを配置して製作した容器である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のプラスチック気泡ボードを材料として使用した容器は、外側に位置したバックシート(1)またはライナーシート(3)が白色に着色されたプラスチックからなるため、外側の層で大部分の紫外線を反射する。外側の層を透過した紫外線も、そのつぎの黒色のキャップシート(2)で吸収されるから、内容物に紫外線が到達することはない。赤外線もかなり反射され、したがって、容器自体の温度が上昇することはほとんどない。外側の白色の層を透過して黒色のキャップシート(2)に至る赤外線の割合は低いから、黒色の層の温度上昇も知れている。
【0011】
このようにして、本発明の容器は、外側に白色に着色されたシートが配置される結果、容器それ自体に耐久性があるとともに、内容物の保護に欠けることがない。黒色のシートは、前述のように、再生品を使用することができるから、本発明の容器はコスト面で有利である上、資源の有効利用に役立つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の容器は、図1に示したような、容器を構成するプラスチック気泡ボードが、バックシート(1)およびライナーシート(3)の両方が白色に着色されたプラスチックを材料として使用したものである場合、外観上は、黒色のキャップシートの層がその端面しか見えないから、美感にすぐれ、再生品を使用していることを感じさせないほどである。なお、図1の態様は、バックシート(1)が容器の外側の層を構成する構造であり、この構造が代表的である。
【0013】
いまひとつの態様である、図2に示したような、容器を構成するプラスチック気泡ボードが、バックシート(1)およびライナーシート(3)の一方が、白色に着色されたシートであり、他方が、黒色に着色されたシートであるプラスチック気泡ボードを材料として使用したものである場合、容器内部も黒色であるが、かえって汚れが目立たなくてよいという利点がある。この場合も、バックシート(1)が容器の外側の層を構成する構造である。
【0014】
バックシート(1)および(または)ライナーシート(3)を白色に着色する物質は、白色顔料であれば任意に選択できるが、その中ではチタンホワイトが、高い隠蔽力を有していて紫外線および赤外線を反射する割合も高いから、好適である。本発明の目的にとって、チタンホワイトの添加量は、プラスチックに対して2〜15重量%の範囲が一般に適切である。白色顔料に加えて、耐候性ないし耐久力をいっそう高めるために、耐候性向上剤たとえば酸化防止剤などを添加することは好ましい。容器の使用の態様により、必要であれば、そのような対策を講じるべきであろう。
【0015】
本発明の容器を構成するプラスチック気泡ボードの材料とするプラスチックは、最もよく使用されているポリプロピレンが、その軽量であることと製品の剛性が高いことにより、やはり最適である。成形に当たって、任意の添加剤、たとえば上記した酸化防止剤のほか、難燃材などを添加することができることはいうまでもない。プラスチック気泡ボードの仕様は、製品とする容器の大きさ、形状、用途などにより選択すべきであるが、一般に、各シートの厚さが0.2〜1.0mmで全体の厚さが3.5〜15.5mm、キャップのサイズは径が5.0〜15.0mmで高さは3.0〜10.0mm程度、目付としては450〜4000g/mの範囲が代表的である。
【0016】
この容器は、必要な箇所に上記の構造のプラスチック気泡ボードが、その白色に着色されたシートが存在すれば、必ずしも、上下・周囲の全面にわたって上記のプラスチック気泡ボードを存在させる必要はなく、たとえば底面は、直射日光に当たる可能性がほとんどないような使用をされるのであれば、異なる構造のプラスチック気泡ボードであってもよいし、全く別の材料で製作することさえできる。内側の層となるシートは、典型的な構造では白色または黒色であるが、所望により、ナチュラルカラーすなわち未着色のプラスチックを使用してもよいし、白色に他の色を加えものであってもよい。
【0017】
本発明を適用した容器の代表例は、前掲の特許文献に開示された搬送用容器である。この場合、本発明にしたがったプラスチック気泡ボードを胴部材の材料として使用し、これに射出成形により製作した底部材および蓋部材を組み合わせて搬送用容器を構成する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のひとつの態様について、容器を構成するプラスチック気泡ボードの構造を示す、胴部分の観念的な断面図。
【図2】本発明の別の態様について、容器を構成するプラスチック気泡ボードの構造を示す、図1と同様な、胴部分の観念的な断面図。
【符号の説明】
【0019】
1 バックシート
2 キャップシート
3 ライナーシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックシートを熱成形して多数のキャップ状の突起を形成したキャップシート(2)の、キャップの底部にプラスチックの平坦なバックシート(1)を貼り合わせるとともに、キャップの頂を連ねて別の平坦なプラスチックの平坦なライナーシート(3)を貼り合わせてなるプラスチック気泡ボードを材料として使用した容器において、
プラスチック気泡ボードのキャップシート(2)が黒色に着色されたプラスチックからなり、バックシート(1)およびライナーシート(3)の一方または両方が、白色に着色されたプラスチックからなり、容器の少なくとも外側に位置するシートが、白色に着色されたシートであるようにプラスチック気泡ボードを配置して製作した容器。
【請求項2】
バックシート(1)およびライナーシート(3)の両方が白色に着色されたプラスチックからなるプラスチック気泡ボードを材料として使用した請求項1の容器。
【請求項3】
バックシート(1)およびライナーシート(3)の一方が白色に着色されたシートであり、他方が黒色に着色したシートであるプラスチック気泡ボードを材料として使用した請求項1の容器。
【請求項4】
バックシート(1)および(または)ライナーシート(3)を白色に着色した物質が、チタンホワイトであって、プラスチックに対して2〜15重量%を添加してあるプラスチック気泡ボードを材料として使用した請求項1ないし3のいずれかの容器。
【請求項5】
容器が、プラスチック気泡ボードを胴部材の材料として使用し、これに射出成形により製作した底部材および蓋部材を組み合わせて構成した構造をもつ搬送用容器である、請求項1〜4のいずれかの容器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−208789(P2009−208789A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−51266(P2008−51266)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000199979)川上産業株式会社 (203)
【Fターム(参考)】