説明

プラスチック素材用複層膜形成方法およびその塗装物

【課題】従来よりもクリヤー層からベース層へのポリイソシアネート化合物の移行量を増加させ、クリヤー層に要求される膜性能を保持しつつ水性ベース塗料の硬化性を高める、自動車用プラスチック素材の塗装方法を提供する。
【解決手段】本発明にかかる自動車用プラスチック素材の塗装方法は、水性プライマー塗料、自動車用金属素材に用いられる水性ベース塗料およびハイソリッドクリヤー塗料を、3コート1ベーク方式により70〜100℃の温度で焼付け硬化させる塗装方法であって、ハイソリッドクリヤー塗料は水酸基含有樹脂およびポリイソシアネート化合物を主成分とし、水酸基含有樹脂とポリイソシアネート化合物を特定の構成とし、ハイソリッドクリヤー塗料を塗装する際におけるプライマー塗料およびベース塗料の2層塗膜の不揮発分が75重量%以上である、ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック素材の塗装方法およびその塗装物に関する。詳しくは、自動車用プラスチック素材表面に複層膜を形成する方法およびその塗装物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、塗装工程の短縮や省エネルギー化を目指し、3ウェットオンウェット塗装が検討されている。3ウェットオンウェット塗装とは、3種の塗料をそれぞれ焼付け硬化させることなく順次塗り重ねることにより、各塗料からなる3層塗膜を形成した上で、該3層塗膜を同時に焼付け硬化させる塗装方法である。例えば、特許文献1では水性プライマー塗料、着色塗料およびクリヤー塗料を用いた3ウェットオンウェット塗装が提案されている。
しかしながら、特許文献1に記載されているような技術を用いたとしても、自動車用バンパーやモール等に用いられているプラスチック素材をベース塗料やクリヤー塗料などによって上塗りする場合、自動車用プラスチック素材(以下、単に「プラスチック素材」ということがある)用に用いられる前記上塗り塗料は、自動車用金属素材(以下、単に「金属素材」ということがある)用に用いられる塗料とは異なった塗料が使われている、という現状においては、以下のような問題があり、塗装工程の短縮化や省エネルギー化を完全には実現できていない。
【0003】
すなわち、自動車用塗料において、金属素材用塗料とプラスチック素材用塗料とは前記したように異なる塗料を用いているため、別々に製造されており、また、金属素材やプラスチック素材の塗装工程についても、別々のラインで塗装が施されているため、最終的にそれらを組み合わせて自動車を製造した場合、各素材の塗膜色が異なることがあり、前記金属素材とプラスチック素材の色調整に多大な時間と手間をかけねばならないという問題である。
金属素材用とプラスチック素材用とで異なった塗料が用いられているのは、金属素材は耐熱性に優れるため、十分な硬化性を確保するために比較的高温度で熱硬化する塗料が用いられているが、他方、プラスチック素材は熱に弱いため、熱変形が起こらない温度範囲での焼付け硬化で、素材に要求される膜性能を発揮できる塗料が用いられているからである。
【0004】
そこで、従来から、金属素材に用いられている塗料を用いても、プラスチック素材が変形しない程度の低温で十分な硬化を起こすことができる技術について、開発が試みられている。例えば、特許文献2では、常温もしくは約100℃以下の温度で硬化する2コート1ベーク方式の塗膜形成方法が開示されている。具体的には、特許文献2の技術は、トップコートとして水酸基含有樹脂とポリイソシアネート化合物とを主成分とする塗料を用い、そしてベースコートの樹脂成分として水酸基含有樹脂を用いたものであり、トップコート層では水酸基含有樹脂とポリイソシアネート化合物とが反応して硬化し、ベースコート層では、該ベースコート層に含まれている水酸基と、トップコート層から浸透してくるポリイソシアネート化合物とが反応して硬化するものである。
【特許文献1】特開平10−29671号公報
【特許文献2】特開昭61−161179号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献2の技術は、ベース塗料が溶剤型塗料(特許文献2中では「有機液状塗料」として表記されている)の場合にしか適用できない技術であって、吸水性の高い水性ベース塗料の場合には、十分な硬化ができないため、耐水性に劣るものとなってしまうという問題がある。しかも、ベース層に水分が多く存在すると、クリヤー層から浸透してくるポリイソシアネート化合物と前記水分が反応してしまい、ますますベース塗料の硬化が不十分となってしまう。
近年においては、環境保全を考慮して、溶剤型塗料から水性塗料への移行が求められていることから、上記課題を解決し、水性ベース塗料にも適用できる技術が必要である。
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、従来よりもクリヤー層からベース層へのポリイソシアネート化合物の移行量を増加させることができ、耐溶剤性や耐候性などのクリヤー層に要求される膜性能を保持しつつ水性ベース塗料の硬化性を高めることにより、自動車用金属素材に使用されている水性ベース塗料を、そのまま自動車用プラスチック素材に使用することができる、自動車用プラスチック素材用複層膜形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決するため、種々の実験を重ね、クリヤー塗料として、不揮発分の多いハイソリッドクリヤー塗料を用い、該ハイソリッドクリヤー塗料の主成分を水酸基含有樹脂およびポリイソシアネート化合物とし、それらの組成成分に工夫を凝らし、さらに、ハイソリッドクリヤー塗料を塗装する前において、プライマー塗料とベース塗料からなる2層塗膜の不揮発分を調整しておけば、ハイソリッドクリヤー層からベース層へのポリイソシアネート化合物の移行量を増加させ、水性ベース塗料を用いても、複層膜に十分な耐水性を付与できるだけでなく、耐溶剤性や耐候性などのクリヤー層に要求される膜性能を保持しつつベース塗料の硬化性を高めることも可能となり、結果、従来よりも低温での焼付け硬化を実現でき、自動車用金属素材に使用されている水性ベース塗料を、そのまま自動車用プラスチック素材に使用することができることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明の自動車用プラスチック素材の塗装方法は、
自動車用プラスチック素材表面に、水性プライマー塗料、自動車用金属素材に用いられる水性ベース塗料、ハイソリッドクリヤー塗料を順次塗り重ねて3層塗膜を形成した後、前記形成された3層塗膜を70〜100℃の温度で同時に焼付け硬化させる自動車用プラスチック素材の塗装方法であって、
前記ハイソリッドクリヤー塗料が、水酸基含有樹脂およびポリイソシアネート化合物を主成分とし、
前記水酸基含有樹脂は、その重量平均分子量が3500〜10000であり、その水酸基価が80〜180KOHmg/gであり、1級および2級の水酸基が水酸基価を基準として含有比率(1級水酸基/2級水酸基)10/90〜80/20で含まれ、
前記ポリイソシアネート化合物は、一分子あたりの平均イソシアネート基数が2.5〜3.4であり、かつ、
前記ポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基と前記水酸基含有樹脂中の水酸基との当量比(NCO/OH)が1.0〜3.0であるとともに、
該ハイソリッドクリヤー塗料を塗装する際における水性プライマー塗料および水性ベース塗料からなる2層塗膜の不揮発分が75重量%以上である、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来よりもクリヤー層からベース層へのポリイソシアネート化合物の移行量を増加させ、耐溶剤性や耐候性などのクリヤー層に要求される膜性能を保持しつつ水性ベース塗料の硬化性を高めることができることにより、自動車用金属素材に使用されている水性ベース塗料を、100℃以下の低温度で十分に硬化させることが可能となるため、プラスチック素材の変形を引き起こすこともなく、複層膜の耐水性が低下することもない。また、このように、金属素材に使用されている水性ベース塗料をそのままプラスチック素材に適用できる結果、自動車を組み立てたときに、金属素材とプラスチック素材の色が異なる事態を防止できるため、金属素材とプラスチック素材それぞれのベース塗料を別々に製造しなくても良くなり、製造工数の減少、さらには省資源化、省エネルギー化も可能となる。しかも、従来色の調整に要していた時間や手間が必要でなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のプラスチック素材の塗装方法は、塗膜形成工程と焼き付け工程とを含む。以下、この塗装方法を詳しく説明する。
〔塗膜形成工程〕
塗膜形成工程は、プラスチック素材表面に、水性プライマー塗料、水性ベース塗料およびハイソリッドクリヤー塗料を、この順番に塗り重ねて、各塗料を含む3つの塗料塗膜をプラスチック素材表面に形成する工程である。
まず、塗膜形成工程で用いられる、プラスチック素材、水性プライマー塗料、水性ベース塗料およびハイソリッドクリヤー塗料について、詳しく説明する。
【0011】
本発明で用いられるプラスチック素材は、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリスチレン、ABS、塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、PPO、ポリメチルメタクリレート、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。
本発明で用いられる水性プライマー塗料は、水性ベース塗料およびハイソリッドクリヤー塗料を上塗りするのに先立って、プラスチック素材表面に直接塗られる塗料である。水性プライマー塗料は、プライマー用樹脂および水を主成分として含み、適宜、顔料等が含まれている。プライマー用樹脂は、後述の硬化塗膜とプラスチック素材とを密着させ、硬化塗膜の耐水性、耐溶剤性等を向上させるものであり、エマルションおよび/または水溶性樹脂組成物の形態で水性プライマー塗料に含まれる。
【0012】
前記エマルションは、プライマー用樹脂が粒子状に水媒体中に分散し、その粒子表面が、乳化剤、界面活性剤、分散剤等で安定化されたものである。エマルションとしては、例えば、プライマー用樹脂としてアクリル樹脂を用いたアクリル樹脂エマルションや、同様にプライマー用樹脂としてそれぞれの樹脂を用いた、ポリエステル樹脂エマルション、ポリウレタン樹脂エマルション、ポリオレフィン樹脂エマルション、エポキシ樹脂エマルション、アミノ樹脂エマルション等が挙げられ、1種のみ、または、2種以上を併用してもよい。さらに必要に応じて、これらの樹脂を変性したものを含むものでもよく、諸性能を向上させるのに有効である。中でも、エマルションが、アクリル樹脂エマルション、ポリウレタン樹脂エマルションおよびポリオレフィン樹脂エマルションから選ばれる少なくとも1種のものであると、プライマー塗料塗膜が硬化した硬化塗膜と、プラスチック素材との密着性がさらに向上するため好ましい。
【0013】
前記水溶性樹脂組成物は、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、エーテル基等の極性官能基を有し、その親水性によって水媒体中に溶解することができる水溶性樹脂をプライマー用樹脂として含む組成物である。水溶性樹脂組成物に用いられるプライマー用樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アミノ樹脂、ビニル樹脂、繊維素樹脂等を基本構造として有する水溶性樹脂が挙げられ、1種のみ、または、2種以上を併用してもよい。中でも、水溶性樹脂組成物に含まれるプライマー用樹脂が、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂およびアミノ樹脂から選ばれる少なくとも1種を基本構造として有する水溶性樹脂であると、プラスチック素材に対する密着性をさらに向上させることができるため好ましい。
【0014】
水性プライマー塗料に含まれるエマルションおよび水溶性樹脂組成物の配合割合については、特に限定されないが、水性プライマー塗料が熱可塑性である場合は、エマルションを主成分として用いると、水の蒸発が速いので乾燥が容易となり、さらに、塗り重ねられる水性ベース塗料との混ざり合いが少なく、外観、密着性や耐水性等の塗膜性能が発現し易いため好ましく、エマルションのみを用いるとさらに好ましい。一方、水性プライマー塗料が熱硬化性である場合は、必ずしもエマルションを主成分として用いなくても、密着性や耐水性等の塗膜性能を付与することができる。また、エマルションを併用してもよく、水溶性樹脂と硬化剤のみでもよい。しかし、水性プライマー塗料が熱硬化性である場合は、水性ベース塗料およびハイソリッドクリヤー塗料を塗り重ねた後、焼き付け温度と時間とが重要となる。すなわち、水性プライマー塗料が十分硬化するのに必要な焼き付け条件を設定しなければならないが、過度に焼き付けるとプライマー塗料塗膜と、水性ベース塗料塗膜およびハイソリッドクリヤー塗料塗膜との硬化性が異なるため、外観や密着性が低下することがある。
【0015】
水性プライマー塗料に含まれるエマルションや水溶性樹脂組成物が、アミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、オキサゾリン化合物、ポリカルボジイミド化合物やヒドラジン化合物等の硬化剤を含む熱硬化性樹脂組成物であってもよい。
水性プライマー塗料中の水の配合割合は、水性プライマー塗料全体に対して、好ましくは50〜90重量%、さらに好ましくは60〜80重量%である。水の配合割合が50重量%未満であると、塗料粘度が高くなり、貯蔵安定性や、塗装作業性が低下する。他方、水の配合割合が90重量%を超えると、水性プライマー塗料中の不揮発分量の割合が低下し、塗装効率が悪くなり、タレ、ワキ等の外観異状が生じやすくなる。なお、水性プライマー塗料は、有機溶剤をさらに含んでもよく、その配合割合は、通常、水性プライマー塗料に含まれる水に対して40重量%以下である。
【0016】
前記有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロペンタン等の脂環式炭化水素類;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル等のエステル類;n−ブチルエーテル、イソブチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、n−プロピレングリコール、イソプロピレングリコール等のアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のセロソルブ類;ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のカービトール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のプロピレングリコールアルキルエーテル類;ジオキサン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジアセトンアルコール等のその他の溶剤類等を挙げることができる。
【0017】
水性プライマー塗料に含まれる顔料としては、例えば、カーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄、酸化クロム、紺青等の無機顔料;アゾ系、アントラキノン系、ペリレン系、キナクリドン系、インジゴ系、フタロシアニン系等の有機顔料等が挙げられ、1種のみ、または、2種以上を併用してもよい。
水性プライマー塗料は、必要に応じて、公知の補助配合剤を含有させることができる。補助配合剤としては、例えば、導電性カーボン、導電性フィラー、金属粉等の導電性付与剤;無機充填剤;有機改質剤;安定剤;可塑剤;添加剤等が挙げられる。特に、水性プライマー塗料が導電性付与剤を含有したものであると、水性プライマー塗料から得られる塗膜の水分含有量にかかわらず導電性が付与され、水性ベース塗料および/またはハイソリッドクリヤー塗料を容易に静電塗装法で塗り重ねることができるため好ましい。
【0018】
本発明で用いられる水性ベース塗料は、水性プライマー塗料を塗って形成したプライマー塗料塗膜を焼き付けて硬化させることなく、そのままプライマー塗料塗膜上に塗り重ねて水性ベース塗料塗膜を形成させるのに用いられる塗料であり、ハイソリッドクリヤー塗料に先立って使用される。
前記水性ベース塗料は、自動車用金属素材に用いられる水性ベース塗料と共通のものである。したがって、水性ベース塗料を、自動車用金属素材用とプラスチック素材用とで別々に製造する必要はなくなり、製造工数の減少、省資源化、省エネルギー化が可能となるうえ、自動車用金属素材もプラスチック素材も色に違いが生じないので、色の調整といった手間も省ける。
【0019】
前記水性ベース塗料に含まれる水性ベース塗料用樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、ビニル樹脂、繊維素樹脂等が挙げられ、1種のみ、または、2種以上を併用してもよい。水性ベース塗料用樹脂は、通常、エマルションおよび/または水溶性樹脂組成物の形態で塗料に配合される。なお、水性ベース塗料は、硬化剤をさらに含むものであってもよい。特に、金属素材用水性ベース塗料として用いられることが多いにもかかわらず、低温で十分な硬化ができなかったために、従来、プラスチック素材用水製ベース塗料として用いられることのなかった、アクリル樹脂系を主体とするメラミン硬化型の水性ベース塗料が、本発明にかかる水性ベース塗料として好適に用いられる。
【0020】
水性ベース塗料には、通常、メタリック顔料や水性ベース顔料が含まれている。メタリック顔料としては、例えば、アルミニウムフレーク、銅ブロンズフレーク、雲母状酸化鉄、マイカフレーク、金属酸化物を被覆した雲母状酸化鉄、金属酸化物を被覆したマイカフレーク等が挙げられ、1種のみ、または、2種以上を併用してもよい。水性ベース顔料としては、例えば、二酸化チタン、酸化鉄、酸化クロム、クロム酸鉛、カーボンブラック等の無機顔料;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、カルバゾールバイオレット、アントラペロミジンイエロー、フラバンスロンイエロー、インダンストロンブルー、キナクリドンバイオレット等の有機顔料等が挙げられ、1種のみ、または、2種以上を併用してもよい。
【0021】
水性ベース塗料は、必要に応じて、公知の補助配合剤を含有させることができる。補助配合剤としては、例えば、無機充填剤、有機改質剤、安定剤、可塑剤、添加剤等が挙げられる。
本発明で用いられるハイソリッドクリヤー塗料は、水性ベース塗料塗膜を焼き付けて硬化させることなく、そのまま水性ベース塗料塗膜上に塗り重ねてハイソリッドクリヤー塗料塗膜、つまり、3層塗膜のトップ層(最上層)を形成させるのに用いられる塗料であり、優れた耐候性や耐溶剤性等の物性を硬化塗膜に付与する。
前記ハイソリッドクリヤー塗料は水酸基含有樹脂およびポリイソシアネート化合物を主成分とする。
【0022】
前記水酸基含有樹脂は、水酸基含有不飽和モノマーからなる単量体成分を公知の方法で重合させて得ることができ、あるいは、それ以外の酸基含有不飽和モノマーおよびその他の不飽和モノマーから選択された不飽和モノマーからなる単量体成分と組み合わせて重合させて得ることもできる。
前記水酸基含有不飽和モノマーとしては、特に限定されず、例えば、1級水酸基含有不飽和モノマーとして、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、プラクセルFM1(εーカプロラクトン変性ヒドロキシエチルメタアクリレート、ダイセル化学社製)、ポリエチレングリコールモノアクリレートまたはモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレートまたはモノメタクリレートなどが挙げられ、2級水酸基含有不飽和モノマーとして、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレートなどが挙げられる。
【0023】
前記酸基含有不飽和モノマーとしては、特に限定されず、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸などのカルボン酸類などが挙げられる。
前記その他の不飽和モノマーとしては、特に限定されず、例えば、アクリル酸またはメタクリル酸のメチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、エチルヘキシル、ラウリルなどのエステル基含有アクリル系単量体;ビニルアルコールと酢酸、プロピオン酸などのカルボン酸とのビニルアルコールエステル系単量体;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ブタジエン、イソプレンなどの不飽和炭化水素系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル系単量体;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドなどのアクリルアミド系単量体などが挙げられる。
【0024】
前記水酸基含有樹脂の重量平均分子量は、3500〜10000であり、好ましくは、5000〜9000である。3500未満では、耐溶剤性、耐候性、外観といったクリヤー層に要求される膜性能を発揮できず、10000を超えると、塗料粘度が高くなり、このような高粘度の状態では塗装作業が困難となり、塗膜の外観が悪くなってしまう。揮発性有機溶剤を用いて塗料中の不揮発分の割合を少なくすることも可能であるが、その場合、有機溶剤による環境汚染という問題が生じる。
前記水酸基含有樹脂の水酸基価は80〜180KOHmg/gであり、好ましくは、120〜150KOHmg/gである。80KOHmg/g未満ではクリヤー層の架橋密度が不十分となり、複層膜の耐溶剤性、耐候性が低下し、180KOHmg/gを超えると多量のポリイソシアネート化合物が必要となる。
【0025】
さらに、前記水酸基含有樹脂中の水酸基は、1級および2級の水酸基を含み、その含有比率(1級水酸基/2級水酸基)が水酸基価を基準として10/90〜80/20であり、好ましくは、30/70〜50/50である。ここで、1級水酸基はポリイソシアネート化合物との反応性が高く、クリヤー層からベース層への移行が起こり難いという特性があり、2級水酸基はポリイソシアネート化合物との反応性が低く、クリヤー層からベース層への移行が起こり易いという特性がある。したがって、1級水酸基の含有比率が10/90未満では、移行はしやすいがクリヤー層での硬化が不十分となり、複層膜の耐溶剤性、耐候性が低下し、80/20を超えると、クリヤー層での硬化は十分であるが移行し難くなり、複層膜の耐水性が低下する。
【0026】
また、水酸基含有樹脂の酸価が1〜20KOHmg/gであることが好ましい。さらに好ましくは、2〜15KOHmg/gである。1KOHmg/g未満では、クリヤー塗料での硬化が不十分となるおそれがあり、20KOHmg/gを超えると、クリヤー塗料の硬化速度が速くなりすぎて、クリヤー層からベース層へのポリイソシアネート化合物の移行が不十分となって、複層膜の耐水性が低下するおそれがある。
前記水酸基含有樹脂のガラス転移温度(Tg)が−10℃〜50℃であることが好ましい。−10℃未満であると、塗膜の耐汚染性、耐擦り傷性が悪くなるおそれがあるとともに、粘着性が残ってしまうおそれもある。50℃を超えると、耐屈曲性が悪くなるおそれがあるとともに、塗膜にクラック(ひび割れ)が発生するおそれがある。
【0027】
前記ポリイソシアネート化合物としては、脂肪族または脂環族系のポリイソシアネート化合物が好ましく使用される。
脂肪族または脂環族系のポリイソシアネート化合物としては、特に限定されず、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビスシクロヘキシルイソシアネートなどが挙げられ、また、これらから誘導されるイソシアヌレート化合物、ウレトジオン化合物、ウレタン化合物、アロファナート化合物、ビュレット化合物、トリメチロールプロパンとの付加物などが挙げられる。
前記ポリイソシアネート化合物の一分子あたりの平均イソシアネート基数は2.5〜3.4であり、好ましくは、2.6〜3.2である。2.5未満ではクリヤー層の架橋密度が不十分となり、複層膜の耐溶剤性、耐候性が低下し、3.4を超えるとクリヤー層からベース層へのポリイソシアネート化合物の移行が起こり難くなり、複層膜の耐水性が低下する。
【0028】
さらに、前記ポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基と前記水酸基含有樹脂中の水酸基との当量比(NCO/OH)は1.0〜3.0であり、好ましくは、1.2〜2.8である。1.0未満では、クリヤー層からベース層へのポリイソシアネート化合物の移行が起こり難くなり、複層膜の耐水性が低下し、3.0を超えると、クリヤー層の架橋密度が不十分となり、複層膜の耐溶剤性、耐候性が低下する。
クリヤー塗料は、必要に応じて、公知の補助配合剤を含有させることができる。補助配合剤としては、例えば、有機改質剤、安定剤、添加剤等が挙げられる。
次に、塗膜形成工程の操作について詳しく説明する。
【0029】
塗膜形成工程は、さらに細分化すると、水性プライマー塗膜形成工程と、水性ベース塗膜形成工程と、クリヤー塗膜形成工程とに分けられる。
まず最初に、水性プライマー塗膜形成工程は、プラスチック素材を準備し、この表面に水性プライマー塗料を塗って、プライマー塗料塗膜を形成させる工程である。水性プライマー塗料を塗るのに先立って、必要に応じて、プラスチック素材を洗浄、脱脂しておいてもよい。水性プライマー塗料は、例えば、スプレー塗装、刷毛塗り、ロール塗り、流し塗り等の手法で塗ることができる。水性プライマー塗料の塗布量(乾燥膜厚)は、特に限定されないが、5〜20μmであると、密着性、耐水性および耐溶剤性等が向上するため好ましい。
【0030】
水性プライマー塗膜形成工程では、得られるプライマー塗料塗膜を焼き付けて硬化させずにそのままにしておき、次の水性ベース塗膜形成工程で水性ベース塗料がプライマー塗料塗膜上に塗り重ねられる。
次に、水性ベース塗膜形成工程は、水性プライマー塗膜形成工程で得られたプライマー塗料塗膜上に、水性ベース塗料を塗り重ねてプライマー塗料塗膜の表面に水性ベース塗料塗膜を形成させる工程である。
水性ベース塗料は、仕上がり外観を向上させ、優れた美粧性を得るために、通常は、エアースプレーまたはエアレススプレーを用いて、プライマー塗料塗膜の表面に塗り重ねられる。
【0031】
なお、静電スプレーで水性ベース塗料を塗り重ねる場合、水性プライマー塗料に導電性材料が配合されていると、導電性をプライマー塗料塗膜により確実に付与できるため好ましい。水性ベース塗料の塗布量(乾燥膜厚)は、特に限定されないが、10〜30μmであると、ポリイソシアネート化合物が含浸しやすくなり、また、耐溶剤性等が向上するため好ましい。
水性ベース塗膜形成工程では、得られた水性ベース塗料塗膜および水性プライマー塗膜形成工程で得られたプライマー塗料塗膜を焼き付けて硬化させずにそのままにしておく。そして、次のクリヤー塗膜形成工程でクリヤー塗料が水性ベース塗料塗膜上に塗り重ねられる。
【0032】
上記水性プライマー塗料および水性ベース塗料からなる2層塗膜の不揮発分は、後述のクリヤー塗料を塗装する際において、75重量%以上である。75重量%未満では、後述の焼付け工程の際に、クリヤー層から水性ベース層へと移行してくるポリイソシアネート化合物が、揮発分のうち、特に水分と反応を起こしてしまうため、ベース層での硬化が阻害されてしまい、さらに、クリヤー層のワキなどの外観不良が発生するからである。
前記不揮発分を調整するための方法としては、特に限定されないが、例えば、室温下または温風条件下、1〜20分間乾燥する方法などがある。このような乾燥処理を、プライマー塗料塗膜を形成した後、および/または、水性ベース塗料塗膜を形成した後に行えば、プライマー塗料塗膜の平滑性を確保し、泡抜け等を促進することができ、また、水性ベース塗料塗膜の平滑性を確保し、泡抜け等を促進し、メタリック顔料を用いた場合にこれを配向させることもでき、さらに、プラスチック素材の表面に形成される硬化塗膜の仕上がり外観を向上させることができるため、好ましい。
【0033】
なお、水性プライマー塗料および水性ベース塗料からなる2層塗膜の不揮発分は、以下のようにして算出される。
ポリプロピレン素材を用い、まず、前記素材の重量(g)を測定しておく(このときの測定値をAとする)。次に、プライマー塗料を塗装し、80℃で10分乾燥する。さらに、ベース塗料を塗装し、80℃で各所要時間乾燥した後、素材と2層塗膜の重量(g)を測定する(このときの測定値をBとする)。最後に95℃で3時間乾燥し、素材と2層塗膜の重量(g)を測定する(このときの測定値をCとする)。
以上の測定値A,B,Cを下式に代入し、得られる値を水性プライマー塗料および水性ベース塗料からなる2層塗膜の不揮発分とする。
【0034】

(水性プライマー塗料および水性ベース塗料からなる2層塗膜の不揮発分)
=(C−A)/(B−A)×100

最後に、クリヤー塗料形成工程は、水性ベース塗膜形成工程で得られた水性ベース塗料塗膜の表面に、クリヤー塗料を塗り重ねて水性ベース塗料塗膜上にクリヤー塗料塗膜を形成させる工程である。
クリヤー塗料は、通常は、エアースプレーまたはエアレススプレーを用いて、水性ベース塗料塗膜の表面に塗り重ねられるが、静電スプレーを用いて塗り重ねることもでき、エネルギーコストをさらに低くし、環境汚染を防止できるため好ましい。クリヤー塗料の塗布量(乾燥膜厚)は、特に限定されないが、15〜40μmであると、仕上がり外観、耐水性、耐溶剤性、耐候性等が向上するため好ましい。
【0035】
ハイソリッドクリヤー塗料は、塗装時の不揮発分が50〜60重量%であることが好ましい。50重量%未満であると、結果として溶剤の量が多くなり、環境上好ましくなく、ハイソリッドクリヤー塗料を用いることによる利点が生かされないおそれがあり、60重量%を超えると、塗料が高粘度となり塗装作業が困難となるおそれがある。
以上のようにして、プラスチック素材の表面に、水性プライマー塗料、水性ベース塗料およびハイソリッドクリヤー塗料をこの順番に塗り重ねて、各塗料成分を含む3つの塗料塗膜をプラスチック素材表面に形成し、次の焼き付け工程が行われる。
水性プライマー塗料、水性ベース塗料およびハイソリッドクリヤー塗料の選択に当たっては、焼き付け工程で十分に硬化乾燥できる塗料を選択する必要がある。乾燥が不十分で水または溶剤が硬化塗膜内部に残存すると、硬化塗膜において、耐候性、耐水性および耐溶剤性等の性能が低下し易くなる。
【0036】
〔焼き付け工程〕
焼き付け工程は、前述の塗膜形成工程で形成された、プライマー塗料塗膜、水性ベース塗料塗膜およびハイソリッドクリヤー塗料塗膜を同時に焼き付けて、プラスチック素材の表面に、プライマー塗料硬化塗膜、水性ベース塗料硬化塗膜およびハイソリッドクリヤー塗料硬化塗膜の3層から構成される硬化塗膜を形成する工程である。なお、本明細書において温度・時間というときは、プラスチック素材表面が実際に目的の温度を保持しつづけている時間を意味し、より具体的には、目的の温度に達するまでの時間は考慮せず、目的の温度に達してから該温度を保持しつづけているときの温度・時間を意味する。
【0037】
焼き付け温度は70〜100℃である。焼き付け温度が前記範囲内にあれば、プラスチック素材に変形を生じてしまうおそれがなく、短時間での十分な硬化が実現できる。より好ましくは、80〜90℃である。
焼き付け時間は、通常10〜60分間であり、好ましくは15〜50分間、さらに好ましくは20〜40分間である。焼き付け時間が10分間未満であると、塗膜の硬化が不十分であり、硬化塗膜において、耐候性、耐水性および耐溶剤性等の性能が低下する。他方、焼き付け時間が60分間を超えると、硬化しすぎでリコートにおける密着性等が低下し、塗装工程の全時間が長くなり、エネルギーコストが大きくなる。
【0038】
塗料塗膜を同時に焼き付けるのに用いる加熱装置としては、例えば、熱風、電気、ガス、赤外線等の加熱源を利用した乾燥炉等が挙げられ、また、これら加熱源を2種以上併用した乾燥炉を用いると、乾燥時間が短縮されるため好ましい。
【実施例】
【0039】
以下、製造例、実施例および比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。なお、部および%は、いずれも、重量部および重量%を意味する。また、表中の各物質の配合量に関する数値は全て重量部を意味する。
〔製造例1〕水性プライマー塗料の製造
下記のようにして、分散樹脂、分散ペーストを順次製造し、これを用いて、水性プライマー塗料を製造した。
<分散樹脂の製造>
撹拌羽根、温度計、滴下装置、温度制御装置、窒素ガス導入口および冷却管を備えた反応装置に、プロピレングリコールモノメチルエーテル137部を仕込み、窒素ガスを導入しつつ、撹拌下120℃まで昇温した。次に、2−ヒドロキシエチルメタクリレート29.0部、メタクリル酸23.0部、イソブチルメタクリレート86.6部、n−ブチルアクリレート110.7部からなる混合物と、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサナート2.5部をプロピレングリコールモノメチルエーテル20部に溶解した溶液とを、反応装置中に3時間かけて滴下した。
【0040】
滴下終了後、1時間熟成させ、さらに、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサナート0.25部をプロピレングリコールモノメチルエーテル10部に溶解し、得られた溶液を1時間かけて反応装置中に滴下した。
これを120℃に保ったまま2時間熟成させた後、70℃まで冷却し、これにジメチルアミノエタノール23.8部を加えて30分攪拌した。次に、温度を70℃に保ったままイオン交換水417部をゆっくり滴下後、冷却して水溶性アクリル樹脂を得た。
イオン交換水を用いて不揮発分を30%に調整した。得られた水溶性アクリル樹脂はpH8.2、重量平均分子量42000であった。
【0041】
<分散ペーストの製造>
攪拌機付き容器に、上記<分散樹脂の製造>で得られた水溶性アクリル樹脂100部(不揮発分30%)、カーボンブラックEC600JD(アクゾノーベル製)20部、酸化チタンタイピュアR−960(デュポン製)112部、サーフィノールGA(エアープロダクツ製)3部およびイオン交換水95部を投入し、30分攪拌して予備混合した後、サンドグライダーミルを用いて分散して、PWC(不揮発分中の顔料の重量分率)80%、不揮発分50%の分散ペーストを作製した。
<水性プライマー塗料の製造>
容器に上記<分散ペーストの製造>で作製した分散ペースト1000部を仕込み、攪拌しながらネオレッツR972(ウレタンディスパージョン、アビシア製、不揮発分34%)294部、スーパークロンENー432(塩素化ポリプロピレンエマルション、日本製紙ケミカル製、不揮発分30%)400部、エピレッツ6006W(エポキシエマルション、ジャパンエポキシレジン製、不揮発分70%)114部を順に仕込み、ノプコ8034L(サンノプコ製、有効成分100%)4部およびイオン交換水800部を加えた後、ジメチルアミノエタノールを用いてpHを8.0に調整した。
【0042】
これに、プライマルASE−60(日本アクリル化学製、不揮発分28%)をジメチルアミノエタノールを用いてプリゲル化したものを添加して、粘度をNo4のフォードカップにて20℃で30秒となるよう調整し、不揮発分30.1%、pH8.1の水性プライマーを作製した。
〔製造例2〕水性ベース塗料の製造
下記のようにして、コアシェルエマルションと、分散樹脂としての水溶性アクリル樹脂とを製造し、これらを用いて水性ベース塗料を製造した。
<コアシェルエマルションの製造>
攪拌羽根、温度計、滴下装置、温度制御装置、窒素ガス導入口および冷却管を備えた反応装置に、イオン交換水450部とHS−10(第一工業製薬社製)3.6部とを仕込み、窒素ガスを導入しつつ、攪拌下80℃まで昇温した。次に、コア部として、メチルメタクリレート75.6部、n−ブチルアクリレート21.6部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート5.4部、エチレングリコールジメタクリレート5.4部からなる混合物と、過硫酸アンモニウム1.08部をイオン交換水54部に溶解した溶液とを用い、前記混合物と前記溶液とを同時に、反応装置中に180分かけて滴下した。滴下終了後60分間熟成させた。
【0043】
次に、シェル部としてメチルメタクリレート36.0部、メタクリル酸5.5部、n−ブチルアクリレート30.5部からなる混合物と、過硫酸アンモニウム0.72部をイオン交換水36部に溶解した溶液とを用い、前記混合物と前記溶液とを同時に、反応装置中に60分かけて滴下した。
滴下終了後60分間熟成させた後、さらに、過硫酸アンモニウム0.18部をイオン交換水9部に溶解した溶液を反応装置中に5分間かけて滴下した。滴下終了後、60分間熟成させ、これを冷却して、不揮発分23%のコアシェルエマルションを得た。
<分散樹脂の製造>
攪拌羽根、温度計、滴下装置、温度制御装置、窒素ガス導入口および冷却管をつけた反応装置に、プロピレングリコールモノメチルエーテル137部を仕込み、窒素ガスを導入しつつ、攪拌下120℃まで昇温した。
【0044】
次に、2−ヒドロキシエチルメタクリレート29.0部、メタクリル酸23.0部、イソブチルメタクリレート86.6部、n−ブチルアクリレート110.7部からなる混合物と、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサナート2.5部をプロピレングリコールモノメチルエーテル20部に溶解した溶液とを、反応装置中に3時間かけて滴下した。
滴下終了後に1時間熟成させ、さらに、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサナート0.25部をプロピレングリコールモノメチルエーテル10部に溶解した溶液を、1時間かけて反応装置中に滴下した。その後120℃を保ったまま2時間熟成させて70℃まで冷却し、ジメチルアミノエタノール23.8部を加え30分攪拌した。
【0045】
30分撹拌後、温度を70℃に保ったままイオン交換水417部をゆっくり滴下し、これを冷却して水溶性アクリル樹脂を得た。
イオン交換水を用いて不揮発分を30%に調整した。得られた水溶性アクリル樹脂はpH8.2、重量平均分子量42000であった。
<水性ベース塗料の製造>
容器に上記<分散樹脂の製造>で作製した水溶性アクリル樹脂66.7部、アルミペーストWJE7640(東洋アルミ製)27.3部およびサーフィノール440(エアープロダクツ製)0.7部を投入し、十分攪拌してアルミを分散させた。
【0046】
次に、攪拌下、上記<コアシェルエマルションの製造>で作製したコアシェルエマルション217部を投入し、ジメチルアミノエタノールを用いてpHを8.5に調整した。
pH調整後、ウレタンディスパージョンRー9603(アビシア製)およびメチル化メラミンサイメル325(三井サイテック製)を順に投入し、さらに、2−エチルヘキシルグリコール20部、サーフィノール440 3.3部、BYK341(ビッグケミー・ジャパン社製)1.0部、BYK025(ビッグケミー・ジャパン社製)を投入して攪拌し、ジメチルアミノエタノールを用いて再びpHを8.5に合わせ、イオン交換水210部を加えて不揮発分を20%に調整した。その後、プライマルASE−60(日本アクリル化学製)をイオン交換水を用いて不揮発分20%に希釈し、ジメチルアミノエタノールを用いてプリゲル化したものを添加し、粘度をNo4のフォードカップにて20℃で45秒となるよう調整し、不揮発分25%、pH8.5の水性ベース塗料を作製した。
【0047】
〔製造例3〕ハイソリッドクリヤー塗料の製造
下記のようにして、水酸基含有樹脂とポリイソシアネート化合物を製造し、これらを用いて、ハイソリッドクリヤー塗料を製造した。
<水酸基含有樹脂の製造>
表1に示す配合により、水酸基含有樹脂であるアクリル樹脂AC−1〜AC−13を得た。なお、水酸基含有樹脂の不揮発分は、単純にモノマーのみを不揮発分とするのではなく、重合開始剤であるカヤエステルOも70重量%がモノマーと反応して不揮発分となるものとした。すなわち、具体的には、モノマーと、カヤエステルOの使用量のうち70重量%と、の合計を不揮発分の重量として、全体量に対する割合を算出した。
【0048】
さらに、カヤエステルOは前記したとおりモノマーと反応して、水酸基含有樹脂の一部を構成することになるが、カヤエステルOに起因する水酸基、酸基は、水酸基含有樹脂の特性に与える影響が小さいため、計算上無視した。
【0049】
【表1】

【0050】
具体的な製造例を以下に示す。
―AC−1の製造―
攪拌羽根、温度計、滴下装置、温度制御装置、窒素ガス導入口および冷却管を備えた反応装置に、溶剤として酢酸ブチル140部を仕込み、窒素ガスを導入しつつ、攪拌下125℃まで昇温した。次に、モノマーとして、2−ヒドロキシエチルメタクリレート58.5部、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート97.2部、スチレン45部、t−ブチルメタクリレート112.9部、n−ブチルアクリレート133.2部、メタクリル酸3.5部の混合物、および、重合開始剤として、カヤエステルO(t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサナート、化薬アクゾ社製)45部を酢酸ブチル90部に溶解した溶液を反応装置中に3時間かけて滴下した。
【0051】
滴下終了後1時間熟成させ、さらに、重合開始剤カヤエステルO(t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサナート)0.9部を酢酸ブチル10部に溶解して、1時間かけて反応装置中に滴下した。その後125℃を保ったまま2時間熟成させて冷却し、反応を終了した。
得られたアクリル樹脂の重量平均分子量は7000で、不揮発分は65%であった。
―AC−2〜13の製造―
上記AC−1の製造と同様の方法によりAC−2〜13を製造した。重合後、酢酸ブチルを用いて不揮発分を65%に調整した。
AC−12については、不揮発分を65%とすると粘度が高くなってしまうため、不揮発分を60%に調整した。
【0052】
<ポリイソシアネート化合物の製造>
表2に示す配合によりポリイソシアネート化合物NCO−1〜5を得た。
【0053】
【表2】

【0054】
具体的な製造例を以下に示す。
―NCO−1の製造―
容器にタケネートD178N(三井武田ケミカル株式会社製)16.65部を仕込み、よく攪拌しながら、デスモジュールN3600(住化バイエルウレタン株式会社製)83.35部を仕込み、NCO−1とした。
―NCO−2〜5の製造―
上記NCO−1と同様の方法により、NCO−2〜5を製造した。なお、NCO−4,5で使用されているスミジュールN3300は、住友バイエルウレタン株式会社製の硬化剤である。
【0055】
<ハイソリッドクリヤー塗料の製造>
表3および4に示す配合によりハイソリッドクリヤー塗料CL−1〜21を得た。
【0056】
【表3】

【0057】
【表4】

【0058】
具体的な製造例を以下に示す。
―CL−1の製造―
容器に<水酸基含有樹脂の製造>で作製したAC−1を54.64部仕込み、よく攪拌しながら、BYK−310(ビッグケミー・ジャパン社製)0.26部、ビケトールスペシャル(ビッグケミー・ジャパン社製)0.26部、1%ジブチルすずジラウレート(DBTDL)の酢酸ブチル溶液0.36部、チヌビン292(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)0.39部、チヌビン384−2(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)0.78部、酢酸ブチル13.45部、メチルエチルケトン(MEK)3.37部を順次容器に仕込み均一に攪拌し、クリヤー塗料の主剤とした。主剤の不揮発分は50%であった。
【0059】
また、別の容器に上記<ポリイソシアネート化合物の製造>で作製したポリイソシアナート化合物NCO−1を25.02部、酢酸カービトール8.70部、MEK11.57部を順次仕込み均一に攪拌し、トップコーティング用塗料主剤用の硬化剤とした。硬化剤の不揮発分は55%であった。
次に、上記の主剤73.51部と硬化剤45.29部とを混合し、ハイソリッドクリヤー塗料CL−1を得た。このとき、前記ハイソリッドクリヤー塗料の不揮発分は52%であった。
―CL−2〜21の製造―
上記CL−1と同様の方法により、CL−2〜21を製造した。
【0060】
〔実施例1〜19および比較例1〜13〕
下記のようにして、実施例1〜19に対応する塗板A1〜19と、比較例1〜13に対応する塗板B1〜13とを作製し、後述する試験に供した。以下において、各々の塗板作製に使用した水性プライマー塗料、水性ベース塗料、ハイソリッドクリヤー塗料は、実施例1〜19については表5および表6、比較例1〜13については表7および表8に示すとおりである。
【0061】
【表5】

【0062】
【表6】

【0063】
【表7】

【0064】
【表8】

【0065】
<実施例1>
イソプロプルアルコールで洗浄したポリプロピレン素材(TSOP−6、日本ポリプロ製)に、水性プライマー塗料を乾燥膜厚10μmとなるようにスプレー塗装した。水性プライマー塗料の塗装後、80℃で10分間乾燥した。次に、室温まで放置冷却した後、水性ベース塗料を乾燥膜厚15μmとなるようにスプレー塗装し、室温にて2分間放置後、80℃で10分間乾燥した。次に、室温まで放置冷却した後、ハイソリッドクリヤー塗料を乾燥膜厚25μmとなるようスプレー塗装し、室温で5分放置した。次に、90℃で20分間焼付け、硬化乾燥した最終塗板A1を得た。
【0066】
<実施例2〜15>
実施例1と同様の方法により最終塗板A2〜15を得た。
<実施例16>
水性ベース塗料の乾燥温度および時間を、「80℃で10分間」から、「80℃で5分間」へと変更した点以外は実施例1と同様にして、最終塗板A16を得た。
<実施例17>
水性ベース塗料の乾燥温度および時間を、「80℃で10分間」から、「80℃で20分間」へと変更した点以外は実施例1と同様にして、最終塗板A17を得た。
【0067】
<実施例18>
水性ベース塗料の乾燥温度および時間を、「80℃で10分間」から、「80℃で5分間」へと変更した点、および、水性プライマー塗料、水性ベース塗料およびハイソリッドクリヤー塗料により形成された3層塗膜を同時に焼付け硬化する際の温度および時間を、「90℃で20分間」から「75℃で20分間」へと変更した点以外は実施例1と同様にして、最終塗板A18を得た。
<実施例19>
水性ベース塗料の乾燥温度および時間を「80℃で10分間」から「80℃で5分間」へと変更した点、および、水性プライマー塗料、水性ベース塗料およびハイソリッドクリヤー塗料により形成された3層塗膜を同時に焼付け硬化する際の温度および時間を、「90℃で20分間」から「100℃で20分間」へと変更した点以外は実施例1と同様にして、最終塗板A19を得た。
【0068】
<比較例1〜10>
実施例1と同様の方法により最終塗板B1〜10を得た。
<比較例11>
水性ベース塗料の乾燥温度および時間を、「80℃で10分間」から、「80℃で2分間」へと変更した点以外は実施例1と同様にして、最終塗板B11を得た。
<比較例12>
水性プライマー塗料、水性ベース塗料、ハイソリッドクリヤー塗料により形成された3層塗膜を同時に焼付け硬化する際の温度および時間を、「90℃で20分間」から「60℃で60分間」へと変更した点以外は実施例1と同様にして、最終塗板B12を得た。
【0069】
<比較例13>
水性プライマー塗料、水性ベース塗料、ハイソリッドクリヤー塗料により形成された3層塗膜を同時に焼付け硬化する際の温度および時間を、「90℃で20分間」から「110℃で20分間」へと変更した点以外は実施例1と同様にして、最終塗板B13を得た。
実施例1〜19および比較例1〜13で作製した最終塗板A1〜A19およびB1〜B13を1日放置した後、硬化塗膜の物性を下記の試験方法で評価した。その結果は、表5〜表8において、各々の塗板作製に使用した水性プライマー塗料、水性ベース塗料、ハイソリッドクリヤー塗料の種類とともに示している。なお、表5〜表8において、「水酸基価」は水酸基含有樹脂の水酸基価、「1級水酸基/2級水酸基」は水酸基含有樹脂中の水酸基に含まれる1級水酸基と2級水酸基の含有比率(水酸基価を基準)、「平均NCO基数」はポリイソシアネート化合物の1分子あたりの平均イソシアネート基数、「NCO/OH」はポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基と水酸基含有樹脂中の水酸基との当量比、をそれぞれ意味する。
【0070】
〔試験方法〕
<初期密着性>
最終塗板について、JIS K5600の碁盤目テープ剥離試験を行った。
全く剥離がなかった場合を○、僅かでも剥離が認められた場合を×とした。
<耐水性>
最終塗板を40℃の温水に240時間浸漬した後、一日室温乾燥してブリスター(水浸透による塗膜の膨れ)をASTM D714に基づき目視評価するとともに、JIS K5600の碁盤目テープ剥離試験を行った。
【0071】
試験前と比較して外観に異常が認められず、かつ、剥離がなかった場合を○、外観異常が認められるか、または、僅かでも剥離が認められた場合を×とした。
<耐溶剤性>
最終塗板に対し、キシレンを含んだガーゼで500gの荷重を加え、学振摩擦試験機(スガ試験機製)にて、8往復ラビング試験を行い、粘着性、しわ、フクレ、ハガレなどの異常の有無を評価した。
異常が認められない場合を○、少しでも異常が認められた場合を×とした。
<外観>
最終塗板について、目視でベース層とクリヤー層の界面の混層の程度を評価した。
【0072】
混層の程度が低いものを○、混層の程度が高いものを×とした。
<耐候性>
最終塗板について、屋外にて暴露試験を行い、光沢の変化、色差の変化、密着性、ワレ、ブリスターなどの異常の有無を評価した。
さらに、促進耐候性試験として、サンシャインカーボンウェザーメーター(SWOM、スガ試験機製)とキセノンウェザーメーター(キセノン、スガ試験機製)を用いて、前記暴露試験と同様の評価を行った。
初期光沢との比較において光沢維持率が85%以上で、色差(ΔE)が3以下であり、密着性の評価において剥離が認められず、その他ワレ、ブリスターなどの外観異常も認められない場合を○、1項目でも上記条件を満たさない場合を×とした。
【0073】
<VOC>
ハイソリッドクリヤー塗料の粘度をフォードカップ#4で25秒に合わせた時の不揮発分の量を算出し、不揮発分が50重量%以上であった場合を○、50重量%未満であった場合を×とした。
ここで、溶剤型塗料において、塗料1L中に含まれる揮発性有機溶剤分の重さ(g)を「VOC」といい、前記VOCは塗料に含まれる上記不揮発分の割合から算出できる。具体的には、ASTM D3960に準拠して、下式により算出される。

VOC=1000×(塗料比重値)×(1−塗料不揮発分率/100)

上式における塗料比重値は、JIS K5600に準拠して測定される値である。
【0074】
したがって、不揮発分が少ないほど、VOCの値が大きくなる(多量の有機溶剤を必要とする)こととなり、環境保全の観点から好ましくないものとされる。
〔評価〕
(1)本発明にかかる実施例1〜19は全ての試験で基準を満たしており、本発明を用いることにより、プラスチック素材上に極めて優れた複層膜を形成できるということを裏付けている。
(2)いずれの比較例についても、いずれかの試験において、基準を満たしていない。具体的には以下に述べるとおりである。
【0075】
比較例1および2は、クリヤー塗料の主成分の一つである水酸基含有樹脂の水酸基価が80〜180KOHmg/gの範囲内となっていない。そのため、80KOHmg/g未満である比較例1は、耐溶剤性、耐候性に劣っており、180KOHmg/gを超えている比較例2は、外観に劣っている。
比較例3および4は、前記水酸基含有樹脂中に含まれる1級および2級水酸基の含有比率(1級水酸基/2級水酸基)が10/90〜80/20(水酸基価を基準)の範囲内となっていない。そのため、1級水酸基の割合が10/90未満である比較例3は、耐水性に劣っており、80/20を超えている比較例4は、耐溶剤性、耐候性に劣っている。
【0076】
比較例5および6は、クリヤー塗料の主成分の一つであるポリイソシアネート化合物の1分子あたりの平均イソシアネート基数が2.5〜3.4の範囲内となっていない。そのため、2.5未満である比較例5は、耐溶剤性、耐候性に劣っており、3.4を超えている比較例6は、耐水性に劣っている。
比較例7および8は、ポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基と水酸基含有樹脂中の水酸基との当量比(NCO/OH)が1.0〜3.0の範囲内となっていない。そのため、1.0未満である比較例7は、耐水性に劣っており、3.0を超えている比較例8は、耐溶剤性、耐候性、外観に劣っている。
【0077】
比較例9および10は、前記水酸基含有樹脂の重量平均分子量が3500〜10000の範囲内となっていない。そのため、12000を超えている比較例9は、粘度が高く、他の実施例や比較例と同等の粘度とするために、不揮発分を低下させる必要が生じていることがわかる。3500未満である比較例10は、耐水性、外観に劣っている。
比較例11は、水性プライマー塗膜と水性ベース塗膜からなる2層塗膜の不揮発分が65%であるため、耐水性、外観に劣っている。
比較例12および13は、3層塗膜を同時に焼付け硬化する際の焼付け温度が70〜100℃の範囲内となっていない。そのため、70℃未満である比較例12は、初期密着性、耐水性、耐溶剤性、耐候性に劣っており、100℃を超えている比較例13は、プラスチック素材に変形を生じ、外観に劣っている。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明にかかるプラスチック素材用複層膜形成方法は、例えば、高温では素材の熱変形を招き、低温では硬化が不十分として、従来は使用されていなかった金属素材用のベース塗料を用いた、プラスチック素材表面への複層膜の形成に好適に使用でき、多種多様な複層膜をプラスチック素材に適用できる可能性がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用プラスチック素材表面に、水性プライマー塗料、自動車用金属素材に用いられる水性ベース塗料、ハイソリッドクリヤー塗料を順次塗り重ねて3層塗膜を形成した後、前記形成された3層塗膜を70〜100℃の温度で同時に焼付け硬化させる自動車用プラスチック素材の塗装方法であって、
前記ハイソリッドクリヤー塗料が、水酸基含有樹脂およびポリイソシアネート化合物を主成分とし、
前記水酸基含有樹脂は、その重量平均分子量が3500〜10000であり、その水酸基価が80〜180KOHmg/gであり、1級および2級の水酸基が水酸基価を基準として含有比率(1級水酸基/2級水酸基)10/90〜80/20で含まれ、
前記ポリイソシアネート化合物は、一分子あたりの平均イソシアネート基数が2.5〜3.4であり、かつ、
前記ポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基と前記水酸基含有樹脂中の水酸基との当量比(NCO/OH)が1.0〜3.0であるとともに、
該ハイソリッドクリヤー塗料を塗装する際における水性プライマー塗料および水性ベース塗料からなる2層塗膜の不揮発分が75重量%以上である、
ことを特徴とする、自動車用プラスチック素材の塗装方法。
【請求項2】
前記水酸基含有樹脂の酸価が1〜20KOHmg/gである、請求項1に記載の自動車用プラスチック素材の塗装方法。
【請求項3】
前記ハイソリッドクリヤー塗料の塗装時の不揮発分は50〜60重量%である、請求項1または2に記載の自動車用プラスチック素材の塗装方法。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれかに記載の方法により塗装された自動車用プラスチック素材。

【公開番号】特開2008−62118(P2008−62118A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−239486(P2006−239486)
【出願日】平成18年9月4日(2006.9.4)
【出願人】(593135125)日本ビー・ケミカル株式会社 (52)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】