プラスミド高生産性大腸菌クローンの遺伝子選択方法。
本発明は、形質転換クローナルサブタイプのプラスミドDNAまたはゲノムDNA内部のIS1トランスポゾン挿入性突然変異原性の頻度を測定する段階を含む、プラスミドDNA産生用大腸菌の高生産性クローンの選択方法に関する。IS1挿入性突然変異原性の増加は、低い比産生率を示すと考えられるクローナルサブタイプと相関関係を有している。本発明に開示したPCRに基づく遺伝子選択アッセイは高スループット分析が可能であり、工業規模の大量のプラスミドDNAを培養できる高生産性クローンの同定に要する時間を短縮する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同じ菌株のクローナルサブタイプ間のIS1転位活性を比較する段階を含む、プラスミドDNAを内包する大腸菌(E.coli)の1つの菌株の高生産性クローナルサブタイプの選択方法に関する。該方法で相対的に低い転位活性を示すクローンは有力な高生産性クローナルサブタイプを表す。形質転換クローナルサブタイプのプラスミドDNAまたはゲノムDNAの内部のIS1トランスポゾン挿入性突然変異原性の頻度を測定するPCRに基づくアッセイが開示されている。これらの遺伝子選択アッセイは、高スループット分析が可能であり、大量のプラスミドDNAを工業規模で培養できる高生産性クローナルサブタイプを同定するために要する時間を短縮できる。
【背景技術】
【0002】
ポリヌクレオチドワクチンおよび遺伝子治療プロトコルの双方を治療用途に応用するためには医薬品質のプラスミドDNAの量産および精製が極めて重要である。従って、DNAワクチンおよび遺伝子治療という治療選択肢によって得られる筈の利点を十分に引き出して利用するためには高収率のプラスミドDNAの製造および精製方法が必要である(Shamlou,2003,Biotechnol.Appl.Biochem.77:207−218)。
【0003】
裸のDNAワクチンは十分に研究されたグラム陰性菌である大腸菌(“E.coli”)中でプラスミド分子として容易に繁殖する。しかしながら、DNAワクチン構築物による細菌の形質転換は、プラスミド含量に関して不均質なクローナルサブタイプ集団を生じる。この不均質集団からプラスミドDNAを高レベルで複製し維持できる形質転換大腸菌クローンを単離するために役立つスクリーンプロセスは以前から開発されている(参照、同時係属国際出願PCT/US2005/002911、出願日2005年1月31日;国際公開WO 2005/078115として2005年8月25日に公開)。簡単に説明すると、化学的限定培地中の形質転換大腸菌クローンの産生率は、コロンビア血液寒天上の形態学的表現型とゆるやかな相関関係を有していた。滑らかで隆起した白色の円形コロニーを形成したクローン(“ホワイト”クローン)はフェッドバッチ発酵でプラスミドDNAを増幅することができなかった。これに対して、扁平で半透明な灰色の不規則形コロニーを形成したクローン(“グレー”クローン)はプラスミドDNAを高レベルで複製したと考えられる。その後、固体および液体の双方の培地中の多数の培養サイクルによって所望の形態学を安定に示す“グレー”クローンを同定するためのスクリーニングプロトコル(以後の本文中で“高生産体スクリーン”と呼ぶ)が確立した。次に、振盪フラスコ中のフェッドバッチ培養後のプラスミド含量を判定するために形態学に関して安定であったクローンを試験した。
【0004】
高生産体スクリーンは、いくつかのDNAワクチン候補の高生産性クローンの単離に成功することはできたが、このプロセスには多大な労力および時間が必要である。固体限定培地上の増殖にはサイクルあたり3日から5日の温置期間が必要であり、また、アッセイプレートとして血液寒天の使用が必要であることはこのような培養が“行き止まり”であることを意味しており、形質転換体から発酵槽シードまでクローンが無血液培地中に維持されるように平行培養しなければならない。従って、本文中に開示したようなより確実で高速のスクリーニングプロトコルの開発を最終目的として、高生産現象の特性を解明するための実験を行った。本発明は、高生産現象の遺伝子基盤を理解することによって、プラスミド高生産性大腸菌クローナルサブタイプをより迅速に同定する改良スクリーニングプロトコルを開示する。プラスミド低生産性大腸菌DH5クローン中でIS1転位が増加しているという観察は、形質転換大腸菌クローンのプラスミドDNAおよびゲノムDNA中のIS1挿入性突然変異原性を測定するための様々なPCRに基づくアッセイの開発に導いた。本文中に記載したように、IS1挿入性突然変異原性を低頻度で有している同じプラスミドDNAを含有する同じ菌株のクローンが、有力なプラスミド高生産性クローナルサブタイプとして同定される。次に、この有力な高生産性クローナルサブタイプの比産生率を試験して、それらが実際に高プラスミドコピー数/細胞を示すことを判定し、その時点でプラスミド高生産性クローンであると同定する。
【発明の開示】
【0005】
発明の要旨
本発明は、一般に、プラスミドDNAを内包する大腸菌の1つの菌株の高生産性クローナルサブタイプの選択方法に関し、この方法は、該クローナルサブタイプのプラスミドDNAまたはゲノムDNAの内部のIS1トランスポゾン挿入性突然変異原性の頻度を測定する段階を含む。該方法において、IS1挿入性突然変異原性の増加が、低プラスミドコピー数/細胞(すなわち低い比産生率)を示すと考えられるクローナルサブタイプと相関関係を有している。重要なことは、本文中に記載したクローナルサブタイプのプラスミドおよび/またはゲノムDNA中のIS1転位を測定するアッセイは高スループット分析が可能であり、従って医薬品質のプラスミドDNAを大規模産生できる高生産性クローナルサブタイプの同定に要する時間が短縮されることである。
【0006】
本発明は、プラスミドDNAを内包する大腸菌の1つの菌株の高生産性クローナルサブタイプの選択方法に関し、この方法は、(a)同じプラスミドDNAを内包する同じ菌株の少なくとも2つのクローナルサブタイプのIS1転位活性を比較し、相対的に低い転位活性を示すクローナルサブタイプが有力な高生産性クローナルサブタイプを表す段階と、(b)該有力な高生産性クローナルサブタイプの産生率を試験する段階とを含む。ここにおいて、高生産性クローナルサブタイプは高プラスミドコピー数/細胞を示す。本発明の1つの実施態様において、クローナルサブタイプのIS1転位活性は、該クローンから単離したプラスミドDNAサンプル中のIS1トランスポゾンコピー数を測定することによって判定され、相対的に低いIS1トランスポゾンコピー数は相対的に低いIS1転位活性を示すクローンを表す。本発明の別の実施態様において、クローナルサブタイプのIS1転位活性は、該クローンのゲノムDNAの予め決定されたIS1挿入領域内部のIS1トランスポゾン配列の有無を測定することによって判定され、該予め決定された領域内部に1つ以上のIS1挿入配列が存在しないクローナルサブタイプは相対的に低いIS1転位活性を示すクローンを表す。
【0007】
本発明はさらに、プラスミドDNAを内包する大腸菌の1つの菌株の高生産性クローナルサブタイプの選択方法に関し、この方法は、(a)同じプラスミドDNAを内包する同じ菌株の少なくとも2つのクローナルサブタイプからプラスミドDNAを単離する段階と、(b)該単離プラスミドDNAサンプル中のIS1トランスポゾンコピー数を測定し、相対的に低いIS1トランスポゾンコピー数を示すクローナルサブタイプが有力な高生産性クローナルサブタイプを表す段階と、(c)該有力な高生産性クローナルサブタイプの産生率を試験する段階とを含む。ここにおいて、高生産性クローナルサブタイプは高プラスミドコピー数/細胞を示す。本発明によれば、プラスミドDNAを内包している大腸菌(DH5株を含むが、これに限定されない。)の菌株の高生産性クローナルサブタイプは、同様に試験した同じ菌株の非選択形質転換大腸菌サブタイプに比べて高いプラスミドコピー数/細胞を示す。本発明の1つの実施態様において、単離プラスミドDNAサンプル中のIS1トランスポゾンコピー数は、プラスミドコピー数に基づくIS1トランスポゾンコピーの相対量を測定するQ−PCRアッセイを非限定的に含む定量的PCR(“Q−PCR”)によって測定される。この実施態様において、プラスミドコピー数に基づくIS1トランスポゾンコピーの相対量は、記載のQ−PCRアッセイの一部として測定されたIS1トランスポゾンコピー数を表す。
【0008】
本発明の1つの実施態様において、Q−PCRアッセイが単離プラスミドDNAサンプル中のプラスミドコピー数に基づくIS1トランスポゾンコピーの相対量を測定するために使用される。該アッセイは、IS1ヌクレオチド配列内部に局在するプラスミドDNAの第一ヌクレオチド配列とIS1挿入が存在しないと予め決定されたプラスミドDNAの第二ヌクレオチド配列との双方を増幅する段階を含み、特定の大腸菌クローナルサブタイプのIS1トランスポゾンコピー数を表すIS1/プラスミドコピー比を生成する。このQ−PCRアッセイは単一反応管で第一および第二のヌクレオチド配列を同時に増幅する多重モードで行うことができ、変動性が少ない。IS1ヌクレオチド配列内部に局在するプラスミドDNAの第一ヌクレオチド配列は、核酸ポリメラーゼとならびに(i)IS1ヌクレオチド配列の第一場所にハイブリド形成する順方向PCRプライマー、(ii)第一場所の下流のIS1ヌクレオチド配列の第二場所にハイブリド形成する逆方向PCRプライマーおよび(iii)消去剤分子と固有発光極大にエネルギーを放出するフルオロホアによって標識された蛍光プローブから構成されるオリゴヌクレオチドセットとの存在下で増幅される。該プローブは第一場所と第二場所との間のIS1ヌクレオチド配列内部の1つの場所にハイブリド形成する。該核酸ポリメラーゼは、増幅中に蛍光プローブを消化して該フルオロホアを該消去剤分子から解離させ、フルオロホアと消去剤分子とが解離したときの蛍光変化が検出される。該蛍光変化はIS1増幅の発生に対応する。IS1挿入非含有と判定されたプラスミドDNAの第二ヌクレオチドも、核酸ポリメラーゼとならびに(i)第二ヌクレオチド配列の第一場所にハイブリド形成する順方向PCRプライマー、(ii)第一場所の下流の第二ヌクレオチド配列の第二場所にハイブリド形成する逆方向PCRプライマーおよび(iii)消去剤分子と固有発光極大にエネルギーを放出するフルオロホアによって標識された蛍光プローブから構成されるオリゴヌクレオチドセットとの存在下で増幅される。該プローブは第一場所と第二場所との間の第二ヌクレオチド配列内部の1つの場所にハイブリド形成する。該核酸ポリメラーゼは、増幅中に蛍光プローブを消化して該フルオロホアを該消去剤分子から解離させ、フルオロホアと消去剤分子とが解離したときの蛍光変化が検出される。該蛍光変化が第二ヌクレオチド配列増幅の発生に対応する。1つの実施態様において、IS1ヌクレオチド配列と共に増幅されるプラスミドDNAの第二ヌクレオチド配列は、プラスミドDNAのCMVプロモーター内部に局在するヌクレオチド配列を非限定的に含むプラスミドDNAのプロモーター配列内部に局在し、従って、IS1/CMVプラスミドコピー比が生成される。
【0009】
同じプラスミドDNAを内包している同じ菌株の少なくとも2つの細菌クローナルサブタイプ中のIS1トランスポゾンコピー数の測定後、上記に定義したように、相対的に低いIS1トランスポゾンコピー数を有していると判定されたクローナルサブタイプを“有力な”高生産性クローナルサブタイプとして同定する。次に、発酵系、好ましくは小規模発酵系で該クローナルサブタイプを培養することによって該有力な高生産性クローナルサブタイプの比産生率(すなわち、プラスミドコピー数/細胞)を試験し、同定されたこのクローンが実際に高生産性(すなわち、高プラスミドコピー数/細胞)を示すか否かを判定する。本発明の1つの実施態様において、この小規模発酵系は、栄養補給を伴う振盪フラスコ発酵系から成る(同時係属国際出願PCT/US2005/002911に詳細に記載、これは国際公開WO2005/078115として公開されている。)。小規模発酵系は理想的には、所望のプラスミドDNAを生成するように計画した大規模生産方法の模擬発酵方式である。
【0010】
本発明の1つの実施態様において、記載のQ−PCRアッセイで単離プラスミドDNAサンプル由来のIS1トランスポゾン配列を増幅するために使用される順方向および逆方向のPCRプライマーがそれぞれIS1−QF(配列6)およびIS1−Q−R(配列7)から成り、蛍光プローブがIS1−Q−P2(配列8)から成る。本発明の別の実施態様において、記載のQ−PCRアッセイで単離プラスミドDNAサンプル由来の第二ヌクレオチド配列を増幅するために使用される順方向および逆方向のPCRプライマーがそれぞれCMV−Q−F(配列3)およびCMV−Q−R(配列4)から成り、蛍光プローブがCMV−Q−P2(配列5)から成る。蛍光プローブはフルオロホアと消去剤分子との双方によって標識されている。
【0011】
本発明はさらに、細菌クローナルサブタイプから単離したプラスミドDNAサンプル中に存在する残留ゲノムDNAに起因するIS1トランスポゾンコピーの予測量を間接に計算する段階を含む上記同様のIS1定量PCRアッセイに関する。該アッセイにおいて、IS1トランスポゾンコピー数の予測量がIS1/プラスミドコピー数から減算され、補正IS1/プラスミドコピー比が生成する。本発明のこの部分の1つの実施態様において、プラスミドDNAサンプル中に存在する残留ゲノムDNAに起因するIS1トランスポゾンコピーの予測量は、第二のQ−PCRアッセイを使用して間接的に測定される。該アッセイは、プラスミドコピー数に基づく23s rDNAの相対量を測定し、23s rDNA/プラスミドコピー比を生成する。この23s rDNA/プラスミドコピー比をIS1/プラスミドコピー比から減算すると補正IS1/プラスミドコピー比が得られる。このQ−PCRアッセイは、23s rDNA配列とIS1挿入非含有と判定されたプラスミドDNAの同じヌクレオチド配列(前出)との双方を同時に増幅する多重モードで行うことができる。本発明の1つの実施態様において、ここに記載のQ−PCRアッセイで23s rDNA配列の増幅に使用される順方向および逆方向のPCRプライマーはそれぞれ23s−F1D(配列11)および23s−R1D(配列12)から成り、蛍光プローブは23s−Pfam(配列13)から成る。本発明の別の実施態様において、IS1挿入非含有と判定された配列はプラスミドDNAのCMVプロモーター領域に内包され、23s rDNA/CMVコピー比を与えるので、これをIS1/CMVコピー比から減算して補正IS1/CMVコピー比を生成する。
【0012】
本発明はまた、IS1挿入領域であると予め決定された細菌ゲノムDNAの領域内部の1つ以上のIS1トランスポゾン挿入配列の有無を検出する段階を含む、プラスミドDNAを内包する大腸菌の菌株の高生産性クローナルサブタイプの選択方法に関する。該IS1挿入領域内部にIS1トランスポゾン配列が存在しないクローナルサブタイプは有力な高生産性クローナルサブタイプを表す。予め決定されたIS1挿入領域内部に挿入されたIS1トランスポゾン配列の有無を検出できるPCRに基づくアッセイが開示されている。これらのアッセイは高スループット分析が可能である。従って本発明はさらに、プラスミドDNAを内包する大腸菌の1つの菌株の高生産性クローナルサブタイプの選択方法に関し、この方法は、(a)該クローナルサブタイプのゲノムDNAの予め決定されたIS1挿入領域内部のIS1トランスポゾン配列の有無を検出し、該IS1挿入領域内部にIS1トランスポゾン配列が存在しないクローナルサブタイプが有力な高生産性クローナルサブタイプを表す段階と、(b)該有力な高生産性クローナルサブタイプの産生率を試験する段階とを含み、高生産性クローナルサブタイプが高プラスミドコピー数/細胞を示す。
【0013】
別の実施態様において、大腸菌クローナルサブタイプのゲノムDNAの1つの領域内部のIS1挿入性配列の有無を検出するためにTaqManに基づくQ−PCRアッセイを使用する。このアッセイにおいて、ゲノムDNAの該領域は、IS1挿入を受容すると予め決定されており、該ゲノムDNAの約20未満の連続ヌクレオチドの範囲である(すなわち、“IS1挿入部位”を表す)。該IS1挿入領域の内部の特異的IS1挿入の有無を検出するQ−PCRアッセイは、核酸ポリメラーゼとならびに(i)消去剤分子と固有発光極大にエネルギーを放出するフルオロホアとによって標識されており、ゲノムDNAの該領域にIS1トランスポゾン配列が存在しないときにだけIS1挿入領域にまたがるゲノムDNA内部の1つの場所にハイブリド形成する蛍光プローブ、(ii)蛍光プローブの上流のゲノムDNAの1つの場所にハイブリド形成する順方向PCRプライマーおよび(iii)蛍光プローブの下流のゲノムDNAの1つの場所にハイブリド形成する逆方向PCRプライマーから構成されたオリゴヌクレオチドセットとの存在下で、該領域を含有するゲノムDNAの一部分を増幅する。該核酸ポリメラーゼは、増幅中に蛍光プローブを消化して前記フルオロホアを前記消去剤分子から解離させ、フルオロホアと消去剤分子とが解離したときの蛍光変化が検出され、該蛍光変化がゲノムDNAの増幅およびIS1挿入領域内部のIS1トランスポゾン配列の不在に対応する。このアッセイは多重化を必要とせず、全細胞溶解液を用いて行うことができるので、該クローンからゲノムDNAを単離する必要性が削除される。IS1挿入領域内部にIS1トランスポゾン配列が存在しないクローナルサブタイプを有力な高生産性クローナルサブタイプとして同定し、それらの比産生率を確認する試験を行う。
【0014】
本発明の別の実施態様において、大腸菌クローナルサブタイプのゲノムDNAの1つの領域内部のIS1挿入性配列の有無を検出するためにPCRに基づくアッセイを使用する。このアッセイでは、ゲノムDNAの該領域はIS1挿入を受容すると予め決定されており、この領域は該ゲノムDNAの約20以上の連続ヌクレオチドの範囲である(すなわち、“IS1挿入ホットスポット”を表す)。このPCRアッセイは、核酸ポリメラーゼとならびに(i)IS1挿入領域外部(すなわち、IS1挿入ホットスポットの外部)のゲノムDNAの1つの場所にハイブリド形成する第一のPCRプライマーおよび(ii)IS1トランスポゾン配列内部の1つの場所にハイブリド形成する第二のPCRプライマーから構成されるオリゴヌクレオチドセットとの存在下で、ゲノムDNAの1つの領域を増幅する。IS1挿入領域内部のIS1トランスポゾン配列の存在は、双方のPCRプライマーのハイブリド形成および増幅によるゲノムDNAの該部分の指数関数的増幅という結果を与える。IS1挿入領域内部のIS1トランスポゾン配列の不在は、第一PCRプライマーだけのハイブリド形成によるゲノムDNAの1つの鎖だけの一次関数的増幅という結果を与える。ゲノムDNAの指数関数的増幅はほぼ目標サイズの増幅核酸フラグメントを同定することによって目視検出する、または、二重鎖DNAに結合する核酸染料(例えば、SYBR(登録商標) Green)を添加することによってリアルタイムで蛍光検出できる。IS1挿入領域内部にIS1トランスポゾン配列が存在しないクローナルサブタイプを有力な高生産性クローナルサブタイプとして同定し、それらの比産生率を確認する試験を行う。
【0015】
本発明はさらに、プラスミドDNAを内包する大腸菌の1つの菌株の高生産性クローナルサブタイプを生成するための、該プラスミドDNAによる細菌株の形質転換に先立って細菌ゲノムからIS1配列の全コピーを除去するように大腸菌宿主株を変異させる段階を含む方法に関する。本発明はさらに、すべてのIS1コピーが除去された変異大腸菌宿主菌株(DH5菌株を含むが、これに限定されない。)、および、プラスミドDNAを繁殖させるための該菌株の使用に関する。
【0016】
ここに使用した“オリゴヌクレオチド”という用語は、ワトソン・クリック型塩基対合のようなモノマー対モノマー相互作用の規則的パターンによって標的ポリヌクレオチドに特異的に結合できる天然または修飾されたモノマーまたは連鎖の直鎖状オリゴマーを表し、デオキシリボヌクレオシド、リボヌクレオシドなどを含む。本発明ではオリゴヌクレオチドという用語がオリゴヌクレオチドプローブおよびオリゴヌクレオチドプライマーの双方を含む。
【0017】
ここに使用した“プライマー”という用語は、核酸鎖に相補的なプライマー伸長産物の合成が触媒される条件下に置かれたときに相補鎖に沿った合成起点として作用できるオリゴヌクレオチドを表す。このような条件は、適当な温度の適当なバッファ中の異なる4つのデオキシリボヌクレオチド三リン酸塩とDNAポリメラーゼまたは逆転写酵素のような重合誘導物質の存在を含む(“バッファ”は補因子となる成分、または、イオン強度、pHなどを左右する成分を含む)。本発明に使用されるオリゴヌクレオチドプライマーは例えば、精製した制限消化物中に存在するような天然産生プライマーでもよくまたは合成的に作製されてもよい。プライマーは最大増幅効率を与えるように一本鎖であるのが好ましい。
【0018】
本発明のフルオロホアに関して本文中に使用した“固有(unique)”という用語は、各フルオロホアが特定アッセイに使用された他のすべてのフルオロホアに比べて異なる発光極大にエネルギーを放出することを意味する。固有発光極大をもつフルオロホアを使用すると、特定アッセイに使用した複数のフルオロホアのおのおのによって放出された蛍光エネルギーを同時検出できる。
【0019】
ここに使用した“アンプリコン”という用語は、核酸ポリメラーゼと特異的プライマー対との存在下に核酸を含むサンプルのPCR増幅によって産生されるPCR反応の特異的産物を表す。
【0020】
ここに使用した“オリゴヌクレオチドセット”または“オリゴヌクレオチドのセット”という用語は、特異的標的ヌクレオチド配列にハイブリド形成する一対のオリゴヌクレオチドプライマーと1つのオリゴヌクレオチドプローブとの組合せを表す。該オリゴヌクレオチドセットは、(a)標的DNAの第一場所にハイブリド形成する順方向プライマーと、(b)同じ標的DNAの第一場所の下流の第二場所にハイブリド形成する逆方向プライマーとおよび(c)フルオロホアと消去剤とによって標識され標的DNAのプライマー間の1つの場所にハイブリド形成する蛍光プローブとから構成される。言い換えると、オリゴヌクレオチドセットは、特異的標的DNA配列例えばIS1トランスポゾン配列に特異的なアンプリコンの合成を開始できる特異的PCRプライマーのセットとアンプリコンにハイブリド形成する蛍光プローブとから構成される。
【0021】
オリゴヌクレオチドセット、オリゴヌクレオチドプライマーまたはオリゴヌクレオチドプローブに関して本文中に使用した“特異的にハイブリド形成する”という用語は、該オリゴヌクレオチドセット、プライマーまたはプローブが単一の標的DNAにハイブリド形成することを意味する。
【0022】
ここに使用した“遺伝子”という用語は、ポリペプチド鎖の産生に関与する核酸のセグメントを意味する。これは、翻訳された配列(コード領域)、5’および3’の非翻訳配列(非コード領域)、ならびに、個々のコードセグメント(エキソン)間の介在配列(イントロン)を含む。
【0023】
ここに使用した“フルオロホア”という用語は、レーザー、タングステン、水銀もしくはキセノンランプまたは発光ダイオードで励起されたときに限定スペクトルをもつ光の形態でエネルギーを放出する蛍光リポーター分子を表す。フルオロホアから放出された光は、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)のプロセスを介して、フルオロホアの発光スペクトルに部分的に重なる励起スペクトルをもつ第二分子を励起できる。フルオロホアから別の分子への放出エネルギーの移動がフルオロホアの発光を消去する。第二分子は消去剤分子として知られる。本文中では“フルオロホア”という用語を“蛍光リポーター”という用語と互換的に使用する。
【0024】
ここに使用した“消去剤”または“消去剤分子”という用語は、フルオロホアを含む蛍光プローブに連結されたときに、フルオロホアから放出されたエネルギーを受容しこれによってフルオロホアの発光を消去できる分子を表す。消去剤は、受容エネルギーを光として放出する蛍光剤でもよく、または、受容エネルギーを熱として放出する非蛍光剤でもよく、プローブの長さに沿ったいずれかの場所に付着できる。
【0025】
ここに使用した“プローブ”という用語は、標的領域すなわち検出すべき領域中の配列に対するプローブの少なくとも1つの配列の相補性によって標的核酸中の配列と共に二重鎖構造を形成できるオリゴヌクレオチドを表す。“プローブ”という用語は、付着したフルオロホアおよび消去剤分子を伴うかまたは伴わない上述のオリゴヌクレオチドを含む。“蛍光プローブ”という用語は、フルオロホアと消去剤分子とを含むプローブを表す。
【0026】
ここに使用した“FAM”は、フルオロホア6−カルボキシフルオレセインを表す。“JOE”はフルオロホア6−カルボキシ−4’,5’ジクロロ−2’,7’−ジメトキシフルオレセインを表す。“TET”はフルオロホア5−テトラクロロフルオレセインを表す。“VIC”はApplied Biosystemsによって開発された同社が専有権をもつフルオロホアを表す。“TAMRA”はフルオロホア6−カルボキシ−テトラメチル−ローダミンを表す。
【0027】
ここに使用した“RFLP”は制限断片長多型を表す。
【0028】
ここに使用した“DCW”は乾燥細胞重量を表す。
【0029】
ここに使用した“OD2ペレット”は1mLの溶液に再懸濁したときに600nmでOD=2を与える細胞集落を表す。
【0030】
(発明の詳細な説明)
プラスミドDNAを産生する大腸菌の高生産性クローンの新規な選択方法がここに開示されている。本発明の発明者/出願人は、IS1転位増加が低生産性細菌クローン集団に相関関係を有することを知見し、この情報を使用して、有力なプラスミド高生産性大腸菌クローナルサブタイプを同定するための遺伝子選択アッセイを組込んだ改良スクリーニング方法を創作した。次に、該有力な高生産性クローナルサブタイプが実際に高生産性である(すなわち、高いプラスミドコピー数/細胞を示す)ことを確認するためにそれらを評価する。重要なことは、新規な選択方法の一部として本文中に記載したアッセイが高スループット分析を可能にし、従って、高生産性クローンの同定に要する時間が短縮されることである。最後に、プラスミドDNAを含有する大腸菌の1つの菌株の高生産性クローナルサブタイプすなわち形質転換大腸菌クローンは、同じプラスミドDNAを含有する同じ菌株の非選択形質転換大腸菌クローナルサブタイプに比べてより高いプラスミドコピー数/細胞を示す能力を有すると定義される。この高生産性クローナルサブタイプは、例えば治療用ポリヌクレオチドワクチンおよび/または遺伝子治療プロトコルを用途とするプラスミドDNAの商業規模生産に使用できる。ここでは本発明の選択方法が大腸菌のDH5株を使用して例示される。しかしながらこの例示は、本発明の範囲を大腸菌DH5株に由来の高プラスミド生産性クローンの遺伝子選択だけに限定するものではない。本発明の選択方法を使用するために大腸菌の別の菌株を調達してもよいことが当業者には理解されよう。
【0031】
本発明は、多数のプラスミドDNAワクチン候補によって形質転換された大腸菌DH5細胞が培養異質性を示すこと、鑑別培地および/または化学的限定培地で平板培養されたときに形態学的に異なる少なくとも2つのコロニー表現型を示すという以前の観察に部分的に由来する。この現象はU.S.暫定出願No.60/541,894として2004年2月4日に出願された同時係属出願に詳細に記載されている。該出願はすでに放棄され、国際出願PCT/US2005/002911、出願日2005年1月31日、に対応している(国際公開WO 2005/078115として2005年8月25日に公開)。後者の記載内容は参照によって本発明に組込まれるものとする。各表現型のコロニー単離およびその後の試験が、発酵中のプラスミド増幅を増加でき臨床品質のプラスミドDNAを量産できる特異的表現型クローナル単離物の発見に導いた。この発見がPCT/US2005/002911(前出)に詳細に記載された本文中で高生産体スクリーンと呼ぶ高プラスミドコピー数/細胞を示す高生産性クローナルサブタイプを同定するスクリーニング方法の開発に導いた。高生産体スクリーンは、大腸菌の有力な高生産性クローナルサブタイプを単離する第一選択段階を含み、次いで、第一段階で単離した該有力な高生産性クローナルサブタイプを発酵系好ましくは小規模発酵系で評価してどのクローナルサブタイプが実際に高生産性であるかを判定する第二選択段階を含む。すなわち、第一選択段階は可能な高生産性大腸菌クローナルサブタイプのプールを縮小し、該プールが、同様の発酵条件で増殖させた非選択形質転換大腸菌細胞に比べてより大きいプラスミドコピー数/細胞を生じる能力を示す可能性が最も高いクローナル変異体だけを含むようにする。
【0032】
細菌クローナルサブタイプは科学文献に記載されている。キャンディダ・アルビカンス(Candida albicans)の表現型切換は遺伝子発現差異の直接結果として生じる(Soll,D.ら,1995,Can.J.Bot.73:1049−1057)。2つの不透明特異的遺伝子(PEP1およびOP4)ならびに1つの白色特異的遺伝子(WH11)は病原性キャンディダの白色から不透明への表現型切換に関与している。これは、キャンディダの毒性を伴い、一方比産生率が高いほうの細菌クローンを選択する場合にも同様の現象が存在する。ナイゼリア・メニンギチジス(Neisseria meningitidis)の病原性菌株でもコロニー変異体が同定された。この場合は、表現型の多様性はリポ多糖およびクラス5外膜タンパク質の菌株内異質性を伴っている(Poolman,J.T.ら,1985,J.Med.Microbiol.19:203−209)。大腸菌DH5の増殖および酵素活性に対するプラスミド存在の効果が、Mason,C.A.らによって記載され(1989,Appl.Microbiol.Biotechnol.32:54−60)、プラスミドコピー数が炭素代謝に関与する宿主細胞酵素の発現に直接影響を与えることを示している。従って、異なる増殖特性値をもつ大腸菌クローナルサブタイプの生成は、DNA形質転換プロセスによって誘導された変異または選択的濃縮培地中で細菌を培養することによって与えられたストレスなどを非限定的に含む様々のイベントの結果であろう。
【0033】
形質転換大腸菌DH5細胞中で以前から観察されていた細菌異質性は主要な2つのタイプのコロニーを示す(PCT/US2005/002911;前出に記載)。後にプラスミド高生産性クローンとして同定される可能性を少なくとも有しているクローンは、コロンビア血液寒天に平板培養し28−30℃で培養したときに表現型的に灰色コロニーを形成する(“グレー”クローン)。これらの“グレー”コロニーは、不規則形状、扁平および半透明である。これに比べて、形質転換大腸菌DH5細胞集団の主要成分によって形成されたコロニーは、コロンビア血液寒天に平板培養し28−30℃で培養したときに白色、円形で隆起し滑らかな組織を有している(“ホワイト”クローン)。これらの“ホワイト”クローンは、プラスミド低生産性大腸菌クローンであると同定された。“グレー”クローンによって形成される有力な高生産性クローナル単離物を表すコロニーは、化学的限定寒天培地で平板培養したときにプラスミド低生産性“ホワイト”コロニーから識別できない。有力な高生産性“グレー”クローンはコロンビア血液寒天(Colombia Blood Agar)プレートから直接精製できるが、ヒト治療用製品を製造する商業用発酵プロセスに使用される細胞と何らかの血液由来材料との接触を完全に避けることがしばしば望ましい。従って、有力な高生産性クローナルサブタイプ(“グレー”クローン)を精製するために、最終発酵プロセスに使用した最終“グレー”クローナルサブタイプがいかなる血液製品とも接触しないことを確保するためのある程度集約的な労力および時間を要する重複平板培養技術が開発された(PCT/US2005/002911;前出、に記載)。プラスミドDNAを内包する大腸菌の有力な高生産性クローナルサブタイプ(すなわち、“グレー”クローン)の選択後、高生産体スクリーンでこれらのクローナルサブタイプを評価し、第一選択段階で同定されたクローンが同じプラスミドで形質転換し同じ発酵条件下で増殖した同じ菌株の非選択大腸菌細胞の比産生率よりも大きい比産生率(すなわち、プラスミドコピー数/細胞)を実際に有するか否かを判定する必要がある。DNAプラスミドを内包する非選択大腸菌細胞の比産生率は、同じプラスミドDNAを内包する該細菌株のクローナル単離物集団の平均産生率を計算することによって容易に決定できる。
【0034】
当業者は、有力な高生産性細菌クローンを単離するために多くの異なる選択戦略が利用可能であることを理解されよう。PCT/US2005/002911(前出)に記載された高生産体スクリーンはいくつかのDNAワクチンプログラム用プラスミドを産生する高収率クローンの選択に極めて有用であることが立証されている。従って、形態学的表現型と高生産性クローン富化集団との相関関係はこのようなクローンの選択メカニズムを提供する。高生産体スクリーンはいくつかのDNAワクチン候補についての高生産性シード材料をもたらしたが、本発明の発明者/出願人は、スクリーニングプロセスの特性をより詳細に解明しおよびできれば改良するという意図で異質形質転換集団出現の背後にある理由の究明を試みた。本発明の発明者/出願人のこのような目的に沿う初期の1つの観察は、大腸菌DH5細胞の形質転換効率、すなわち、回収したプラスミド含有細胞の総数が、限定培地では複合ブロスよりも3桁も少ないことであった。従って、細胞を形質転換させ、成功した形質転換体の収率が最大になるように回収するという目的で、DH5宿主細胞を電気受容性にし、複合培地中でDNAワクチンプラスミドによって形質転換し、次いで限定培地に移すという実験を行った。しかしながら、限定培地での再適応および増殖延長の後、複数のクローンから抽出したプラスミドDNAの画分は大腸菌トランスポゾン配列IS1を含有することが判明した。プラスミドDNA含量を検査するために小規模発酵系で培養したとき(例えば栄養補給を伴う振盪フラスコ(“SFF”)系、PCT/US200S/002911;前出、に詳細に記載)、IS1転位の増加したクローンはすべて低生産体(上記のホワイトクローン同様)であると特性決定された。従って、IS1転位増加と低生産性集団との間に相関関係が存在すると考えられる。この情報を使用して有力なプラスミド高生産性大腸菌クローンの遺伝子選択を組込んだ本発明の代替的スクリーニングプロトコルを創作した。
【0035】
本発明は、同じプラスミドDNAを内包する同じ菌株のクローナルサブタイプ間のIS1転位活性を比較し、相対的に低い転位活性を示すクローナルサブタイプが有力な高生産性クローナルサブタイプを表す段階を含む、プラスミドDNAを内包する大腸菌の菌株の高生産性クローナルサブタイプの選択方法に関する。相対的に低い転位活性は、同じプラスミドDNAを内包する該細菌株のクローナル単離物の集団の平均転位活性を計算することによって容易に決定でき、この平均よりも低い転位活性を有すると判定されたクローナルサブタイプが相対的に低い転位活性を示すと同定する。従って本発明は、プラスミドDNAを内包する大腸菌の菌株の高生産性クローナルサブタイプの選択方法に関し、この方法は、(a)同じプラスミドDNAを内包する同じ菌株の少なくとも2つのクローナルサブタイプのIS1転位活性を比較し、相対的に低い転位活性を示すクローナルサブタイプが有力な高生産性クローナルサブタイプを表す段階とおよび(b)該有力な高生産性クローナルサブタイプの産生率を試験する段階とを含む。ここにおいて、高生産性クローナルサブタイプは高プラスミドコピー数/細胞を示す。
【0036】
本発明のこの部分の1つの実施態様において、IS1転位活性がクローナルサブタイプから単離したプラスミドDNAサンプル中のIS1トランスポゾンコピー数を測定することによって判定され、相対的に低いIS1トランスポゾンコピー数は相対的に低いIS1転位活性を表す。相対的に低いIS1トランスポゾンコピー数を有するクローンは、同じプラスミドDNAを内包する該細菌株のクローナル単離物の集団の平均IS1トランスポゾンコピー数を計算することによって容易に決定でき、該平均よりも低いIS1トランスポゾンコピー数を有すると判定されたクローナルサブタイプが相対的に低いIS1トランスポゾンコピー数を示すと同定される。本発明の別の実施態様において、IS1転位活性は、該クローナルサブタイプのゲノムDNA内部の予め決定されたIS1挿入領域内部の1つ以上のIS1トランスポゾン配列の有無を測定することによって判定され、IS1挿入配列の不在は、相対的に低いIS1転位活性を表す。IS1配列挿入を受容するクローナルサブタイプのゲノムDNA内部の特異的場所の正確な決定方法は後出の実施例5に詳細に記載する。
【0037】
本発明の1つの実施態様は、プラスミドDNAを内包する大腸菌の菌株の高生産性クローナルサブタイプの選択方法に関し、この方法は、該クローナルタイプのプラスミドDNA中のIS1トランスポゾン挿入性突然変異原性の相対量を測定する段階を含む。ここにおいて、IS1トランスポゾン挿入性変異原性の量が少ないことを有力な高生産性クローナルサブタイプの指標とする。従って、本発明の1つの実施態様は、プラスミドDNAを内包する大腸菌の1つの菌株の高生産性クローナルサブタイプの選択方法に関し、この方法は、(a)同じプラスミドDNAを内包する同じ菌株の少なくとも2つのクローナルサブタイプからプラスミドDNAを単離する段階と、(b)該単離プラスミドDNAサンプル中のIS1トランスポゾンコピー数を測定し、相対的に低いIS1トランスポゾンコピー数を示すクローナルサブタイプが有力な高生産性クローナルサブタイプを表す段階とおよび(c)該有力な高生産性クローナルサブタイプの産生率を試験する段階とを含む。ここにおいて、高生産性クローナルサブタイプは高プラスミドコピー数/細胞を示す。相対的に低いIS1トランスポゾンコピー数は、試験したクローナル単離物の集団の平均IS1トランスポゾンコピー数を計算することによって容易に決定でき、該平均よりも低いプラスミドIS1トランスポゾンコピー数を有すると判定されたクローナルサブタイプが相対的に低いIS1トランスポゾンコピー数を表すと同定される。あるいは、2つだけのクローナルサブタイプに由来のプラスミドDNAサンプルのIS1トランスポゾンコピー数を試験するならば、最も低いIS1トランスポゾンコピー数をもつクローンが相対的に低いIS1トランスポゾンコピー数を示すクローナルサブタイプを表す。
【0038】
IS1は細菌挿入配列のうちで最小であることがわかっている768塩基対の転位性要素である(Ohtsubo and Sekine,Transposable Elements,Ed.H.Saedler and A.Gierl,Berlin:Springer,1996,1−26)。IS1トランスポゾン配列の実例は、NCBI GenBank Nucleotide Databaseに登録番号X52534、X52537およびU49270(IS1A/IS1E);X17345およびX52535(IS1B/IS1C);X52536(IS1D);X52538(IS1F);およびV00609(包囲配列のないIS1のクリーンコピー)に見出すことができる。IS1は天然には、大腸菌ゲノム中にコピー数10以下で見出される。野生型K−12株では6から8コピーが同定されている(Deonier,Escherichia coli and Salmonella typhimurium:Cellular and Molecular Biology,Ed.F.Neidhardt,Washington D.C.:American Society for Microbiology,1987,2:982−989)。転位が生じると、通常は標的配列の9bpの複製が挿入部位に生成される(Ohtsubo and Sekine,1996,前出)。大腸菌に見出されるIS1は4つの型に群別できるが、IS1A/ISIE型(参照:Genbank登録番号X52534、X52537およびU49270)だけが染色体からプラスミドDNAに転位することを示した(Chen and Yeh,1997,FEMS Microbiol.Lett.36:275−280)。IS1は他の挿入配列よりはるかに高い頻度で自然挿入突然変異を生じ(Ohtsubo and Sekine,1996,前出)、プラスミドおよび染色体の双方のDNAの突然変異の原因物質であると同定された。例えば、このような突然変異は、毒性またはストレス誘発遺伝子の発現を(全面的または部分的に)抑制する(Nakamura and Inouye,1981,Mol.Gen.Genet.183:107−114;Nakahamaら,1986,Appl.Microbiol.Biotechnol.25:262−266;および、Toba−Minowa,1992,Gene 121:25−33)、調節要素または遠位転写リードスルーの破壊によって遺伝子発現を活性化する(Hall,1998,Mol.Biol.Evol.15:1−5;および、Kobayashiら,2001,J.Bacterial.183:2646−2653)、宿主細胞の重金属抵抗性を増す(Itohら,1994,J.Ferment.Bioeng.78:466−468)、ならびに、プラスミド分泌安定性を強化する(Chewら,1986,FEMS Microbiol.Lett.36:275−280)ことを示した。11の非反復挿入部位がDNAワクチン候補の1つのサンプル中で同定され、これらはいずれもネオマイシン耐性遺伝子nptIIの翻訳領域の100塩基対にまたはその内部に存在した(実施例3参照)。従って、IS1転位が高生産体および低生産体(すなわち、グレークローンおよびホワイトクローン)の分化に導く遺伝子突然変異を生じさせるメカニズムである可能性は極めて高い。
【0039】
プラスミドDNA中のトランスポゾンの存在は、アガロースゲル上の高分子量バンドとして注目されたのが最初である(実施例1参照)。IS1の標準増幅反応にいわゆる“不完全一致プライマー”を使用するエンドポイントPCRアッセイが使用された。これらのプライマーは、5’端から順次に9bpの非一致ヌクレオチド、7または9bpの完全一致ヌクレオチドから構成されていた。このようなプライマーを使用した結果として、鋳型DNA濃度が未決の閾値レベルを上回るならばIS1だけが増幅される濃度感受性アッセイが得られた。これらのアッセイは定性的結果だけを送達した。従って、トランスポゾン含量に関するいくつかのDNAワクチンクローンの挙動をより十分に特性決定する意図で、DNAワクチン候補内部(すなわち、プラスミドDNA自体の内部)のIS1コピーの相対量をプラスミドコピー数に基づいて測定する定量的PCR(“Q−PCR”)アッセイを設計した。このIS1/プラスミドQ−PCRアッセイは、形質転換大腸菌クローナルサブタイプから単離したプラスミドDNAサンプル中のIS1トランスポゾンコピー数の測定値を表すIS1/プラスミドコピー比を生成する。このアッセイは、PCR中に累積する特異的産物を検出できる蛍光発生TaqManプローブテクノロジイを利用する。蛍光は、蛍光発生プローブを消化し5’端のリポーター色素を3’端の消去剤色素から分離するTaq DNAポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ活性によって発生する。PCR処理の進行中にリポーター色素からの蛍光は指数関数的に累積され、リアルタイムでモニターされる。蛍光振幅をサイクル数に関してグラフ化し、振幅が閾値サイクル(CT)と呼ぶユーザー規定の整定値に到達した点によって定量が確定される。次に、サンプルプレート中の鋳型の一連の既知量から作成した外部標準曲線から鋳型DNAコピー数を外挿する、または、多重モードで処理し反応ウェルに基準鋳型の定量を組込むことによって相対的コピー数を決定する。プラスミド調製物中の残留ゲノムDNAに起因するIS1の予測量を計算するために第二の多重Q−PCRアッセイを同様にして開発した。このアッセイは、プラスミドDNAコピー数に標準化した大腸菌宿主細胞23s rDNAを定量し、23s rDNA/プラスミドコピー比を生成する。この23s rDNA/プラスミドコピー比をIS1/プラスミドコピー比から減算して、単離プラスミドDNAサンプル中の残留ゲノムDNAに起因すると予想されたIS1の増幅を算入した“補正”IS1/プラスミドコピー比を生成し、プラスミドIS1含量のより正確な読みを与える。これらのアッセイを使用すると、103−108コピー/μLの範囲のプラスミドDNAコピー数であるときにすべての標的の定量が直線状であり、100%(1:1)から0.001%(1:105)までの範囲のIS1/プラスミドコピー比を検出できることが知見された。このアッセイは高感度であるが、結果はアガロースゲルで視認可能にするためには5−10%のオーダのIS1画分が必要であることを示唆する。
【0040】
特定の理論に制約されないが、プラスミドDNAへのIS1挿入、特に、V1Jnsプラスミドで観察された(実施例3参照)ように、抗生物質耐性遺伝子内部で主として生じるこのような挿入がプラスミドコピー数に強い影響を与えたりまたはクローンの増幅特性に影響を与えたりすることは考えられない。しかしながら、プラスミドDNAに挿入配列が転位するとその結果として、IS1コピー数が増加し、転位がゲノムに逆戻りする能力が増加することは考えられる。この挙動は、1つの大腸菌株のカドミウム耐性の獲得で観察された(Itohら,1994;前出)。シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)のカドミウム耐性の原因となる遺伝子をクローニングする目的で、0.8Kbの挿入をもつpBR322を内包する耐性大腸菌形質転換体を作製した。宿主からプラスミドを除去してもカドミウム耐性は維持されていた。しかしながら、挿入はシュードモナス・プチダ由来のDNAでなく大腸菌のIS1であることが後になって同定された。染色体再編成も同定され、これは、プラスミドからゲノムに逆戻りしたIS1の転位が表現型を変化させたという結論に導く。従って、本文中に記載するように、いかなる特定の理論にも制約されないが、ゲノムからプラスミドDNAへのIS1の転位およびその逆戻りがプラスミド低生産性大腸菌クローナルサブタイプ形成の一因であり得る。
【0041】
上述のQ−PCRは、クローンに内包されているプラスミドDNA内部のIS1トランスポゾンコピー数を定量することによって細菌クローナルサブタイプ中のIS1挿入性突然変異原性の増加を間接に測定するために使用される。有意な転位活性をもつプラスミドDNAサンプルはすべてプラスミド低生産性クローンから単離されたものでありプラスミド高生産性クローンは低レベルのプラスミド由来IS1を含有していたという観察は、低生産性クローンがIS1挿入性突然変異と相関関係を有しているという提唱理論を裏付ける。以前から記載されていた高生産体スクリーンの第一選択基準は形態学的表現型の分析を含んでいたが、これはプラスミド増幅挙動の代用品でしかない。従って、本文中に記載したように、大腸菌クローナルサブタイプはさらに、IS1転位に関する安定性に従っておよびそれらの高いプラスミド力価の保存に従って特性決定できる。プラスミドDNAサンプル中のIS1を測定する記載のQ−PCRアッセイは、アガロースゲル電気泳動およびエンドポイントPCR分析の双方を凌駕するいくつかの重要な利点を提供する。第一に、アッセイが高度に特異的である。該アッセイは、IS1トランスポゾン含有サンプル、他のトランスポゾン(例えばIS5)含有サンプルおよびトランスポゾン陰性サンプルを、特別設計のオリゴヌクレオチドプライマーと蛍光プローブとに依存して容易に識別できる。第二に、Q−PCRテクノロジイによって提供される高レベル感度は、少なくとも100コピー/μL(例えばV1Jns−nefの場合0.6pg/ml)という低い濃度の標的を検出しながら鋳型DNA濃度の6対数以上までIS1転位を定量することが可能である。
【0042】
従って本発明は、プラスミドDNAを内包している大腸菌(大腸菌K−12株を非限定的に含む。)の菌株例えばDH5株の高生産性クローナルサブタイプを同定するための選択プロトコルに関する。このプロトコルは、同じプラスミドDNAを内包している同じ菌株の少なくとも2つのクローナルサブタイプから単離したプラスミドDNAサンプル中のIS1トランスポゾンコピーの相対量(すなわち、IS1トランスポゾンコピー数)を測定する段階とおよび相対的に低いIS1トランスポゾンコピー数を示すクローナルサブタイプを選択する段階とを含む。ここにおいて、相対的に低いIS1トランスポゾンコピー数を示すクローンが有力な高生産性クローナルサブタイプとして同定される。次に、有力な高生産性クローナルサブタイプの比産生率(すなわち、プラスミドコピー数/細胞)を評価して、それが実際に高生産性クローナルサブタイプであるか否かを判定する。このQ−PCRに基づく遺伝子選択方法は、同じプラスミドDNAを内包している同じ大腸菌の菌株の3つ以上のクローナルサブタイプの分析に使用できると考えられ、IS1トランスポゾンコピー数の数量範囲を生成する。このような場合、最も低いIS1トランスポゾンコピー数を示すクローナルサブタイプの比産生率だけでなく、アッセイにかけたクローンの平均IS1トランスポゾンコピー数よりも低いクローナルサブタイプの比産生率を処理可能な数のクローナルサブタイプについて評価するという選択もある。
【0043】
有力な高生産性クローナル単離物は発酵系、好ましくは小規模発酵系を使用して評価される。発酵系のサイズは使用すべき最終発酵プロセスのサイズにゆるやかに従属するであろう。例えば、“大規模”プラスミドDNA産生プロセス(すなわち、約1000Lよりも多い発酵量を収容でき、10,000から100,000Lの大きさの発酵容器を含み得る標準実験用バイオリアクターよりも多い全発酵量)に使用されるクローンの同定を支援するために、一般にはこの小規模評価段階で約250mLから約1Lの範囲のフラスコが使用される。小規模発酵系はまた、最終的商業用大規模発酵プロセスをシミュレートしなければならない。高生産体スクリーンを開示する同時係属出願(PCT/US2005/002911;前出)に詳細に記載されているように、有力な高生産性クローナル単離物は、発酵中の各フラスコに連続栄養補給が付随する栄養補給型振盪フラスコ(“SFF”)を使用する発酵系で評価できる。振盪フラスコ系は、クローナル単離物が約1000mL以下のバフル付き振盪フラスコ、好ましくは250mLのバフル付き振盪フラスコで培養される小規模発酵系を表す。1つの実施態様において、高プラスミドコピー数/細胞を示す高生産性クローナルサブタイプは約20μg DNA/μg DCW以上の比産生率を有すると判定される。比産生率を評価するために小規模発酵で典型的に使用される代替的測定方法は、1mLの溶液に再懸濁したときの600nmにOD=2を与える細胞集落を表すOD2ペレットに基づく。従って別の実施態様において、高プラスミドコピー数/細胞を示す高生産性クローナルサブタイプは約15μg DNA/μg OD2ペレット以上の比産生率を有すると判定する。
【0044】
上述したように、本発明はTaqMan PCRアッセイのような定量的PCR(“Q−PCR”)アッセイに関するものであり、DNAワクチン候補のプラスミドDNAサンプル内部のIS1トランスポゾンコピー数を測定するために該アッセイを使用する。該Q−PCRアッセイは、IS1ヌクレオチド配列内部に局在するプラスミドDNAの第一ヌクレオチド配列と、IS1挿入が存在しないと予め決定されたプラスミドDNAの第二ヌクレオチド配列とを増幅することによってプラスミドコピー数に基づくIS1トランスポゾンの相対量を測定し、大腸菌クローナルサブタイプから単離したプラスミドDNAサンプル中のIS1トランスポゾンコピーの数(すなわち、IS1トランスポゾンコピー数)を表すIS1/プラスミドコピー比を生成する。当業者は、IS1挿入を受容する確率の低いプラスミドDNA内部の場所を容易に同定できる(例えば、実施例3参照)。1つの実施態様においてアッセイを多重モードで行う。その結果として、第一(すなわち、IS1配列)および第二(すなわち、IS1非含有配列)のヌクレオチド配列を同一反応管で増幅することができ、変動性が小さい。PCR産物をリアルタイムで検出でき放射能の必要性を排除する5’エキソヌクレアーゼ蛍光発生PCRに基づくアッセイ(TaqMan PCR)は当業界で記載されている。参照文献は例えば、U.S.特許5,538,848;およびHollandら,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:7276−7280である。この方法は、蛍光リポーター(フルオロホア)と消去剤とを含みPCRプライマー間で標的DNAにハイブリド形成する標識プローブを利用する。フルオロホアが励起されると、フルオロホアによって蛍光シグナルが放出され、消去剤によって消去される。アンプリコンは、Taq DNAポリメラーゼの5’から3’への方向のエキソヌクレアーゼ活性によって検出できる。該ポリメラーゼは、PCRプライマーの伸長中に出会った二重鎖DNAを分解し、従ってプローブからフルオロホアを遊離する。その後、蛍光シグナルはもはや消去されないので、標的DNAの量に直接的に相関する蛍光シグナルが累積され、これは全自動蛍光計によってリアルタイムで検出できる。
【0045】
TaqMan PCR反応を実行する全自動蛍光計は当業界で公知であり、この特異的アッセイに適用できる。例えば、Bio−Rad Laboratories(Hercules,CA)製のiCyclerおよびStratagene(La Jolla,CA)製のMx4000がある。本発明の1つの実施態様において、本発明の一部として記載したQ−PCRアッセイをABI Prism(登録商標) 7900HT配列検出器(Applied Biosystems,Foster City,CA)で実行できる。この計器は、蛍光発光(波長に基づく)を電荷結合デバイス(CCD)カメラで予測空間パターンに分離するスペクトログラフを使用する。ABI Prism(登録商標) 7900HTの配列検出システムアプリケーションはCCDカメラから蛍光シグナルを収集し、データ解析アルゴリズムを適用する。
【0046】
本発明の一部として記載したQ−PCRアッセイに使用する核酸ポリメラーゼは、5’から3’への方向のエキソヌクレアーゼ活性を有していなければならない。いくつかの適切なポリメラーゼが当業界で公知であり、例えば、Taq(Thermus aquaticus)、Tbr(Thermus brockianus)およびTth(Thermits thermophilics)ポリメラーゼがある。Taq DNAポリメラーゼは本発明に使用するための好ましいポリメラーゼである。5’から3’への方向のエキソヌクレアーゼ活性は、PCRプライマーの伸長中に出会った二重鎖DNAの分解によって特性決定される。アンプリコンにアニーリングされた蛍光プローブは同様にして分解され、従ってオリゴヌクレオチドからフルオロホアを遊離する。フルオロホアと消去剤とが解離すると、フルオロホアによって放出された蛍光がもはや消去されないので、その結果として検出可能な蛍光変化が生じる。PCR産物の指数関数的増殖中にアンプリコン特異的蛍光がある点まで増加したとき、配列検出アプリケーションが、複合スペクトルに多成分化アルゴリズムを適用し、その後、該蛍光は非増幅サンプルのバックグラウンド蛍光から識別できる。ABI Prism(登録商標) 7900HT配列検出器はまた、サンプル用の閾値サイクル(CT)(蛍光が予め決定された閾値以上に増加するサイクル)を決定するソフトウェアアプリケーションを含む。PCR陰性サンプルは、実行された全サイクル数に等しいCTを有しており、PCR陽性サンプルは実行された全サイクル数よりも少ないCTを有している。
【0047】
本発明のオリゴヌクレオチドプローブおよびプライマーは、多くの方法によって合成できる。例えば、Ozakiら,1992,Nucleic Acids Research 20:5205−5214;Agrawalら,1990,Nucleic Acids Research 18:5419−5423である。例えば、オリゴヌクレオチドプローブは、ABI 3900 DNAシンセサイザー(Applied Biosystems,Foster City,CA)のような全自動DNAシンセサイザーで合成できる。得られるオリゴヌクレオチドのハイブリド形成効率に不利な影響を与えることがなければ、ホスホロチオエート、ホスホラミデートなどのような非天然主鎖基を生じる代替化学薬品も使用できる。
【0048】
本発明のPCR増幅段階は当業界で公知の標準技術によって実行できる(参照:例えばSambrook,E.F.ら,Molecular Cloning:A Laboratory−Manual,2nd edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989);U.S.特許4,683,202;およびPCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,Eds.Innisら,San Diego:Academic Press,Inc.(1990);これらの文献はいずれも参照によって本発明に組込まれるものとする)。PCRサイクル反復条件は典型的には、PCR反応混合物を約80℃から約105℃までの範囲の温度で約1から約10分間加熱することによって行う初期変性段階を含む。熱変性後に典型的には約20から約50サイクルの範囲の複数サイクルを行う。各サイクルは通常は、初期変性段階、プライマーアニーリング段階を順次に含み、プライマー伸長段階で終了する。あるいは、各サイクルが、約80℃から約105℃までの範囲の1つの温度での変性段階、次いで、約60℃から約75℃までの範囲のより低い温度でのプライマーアニーリング/伸長段階を含んでもよい。核酸ポリメラーゼ例えばTaqポリメラーゼによるプライマーの酵素伸長はその後のサイクルで鋳型として使用できる鋳型のコピーを産生する。誤ったプライミングおよび非特異的アンプリコンの生成を排除するために本発明の方法に組合せて“ホットスタート”PCR反応を使用するとよい。このために、本発明の好ましい実施態様において、核酸ポリメラーゼがAmpliTaq Gold DNAポリメラーゼであり、PCRサイクル反復条件が“ホットスタート”PCR反応を含む。該ポリメラーゼは、活性化までは不活性であり、PCRサイクル反復に先立ってPCR反応成分を95℃で約10分間温置することによって活性化できる。同様の初期温置段階を含むPCR方法は当業界で“ホットスタート”PCRアッセイとして知られている。
【0049】
本発明の1つの実施態様において、ここに記載したTaqMan Q−PCRアッセイ用のオリゴヌクレオチドプローブは長さ約15から40ヌクレオチドの範囲である。別の実施態様において、オリゴヌクレオチドプローブは長さ約15から30ヌクレオチドの範囲である。本発明の第三の実施態様において、オリゴヌクレオチドプローブは長さ約18から28ヌクレオチドの範囲である。本発明のオリゴヌクレオチドプローブの正確な配列および長さは、それが結合する標的ポリヌクレオチドの種類に部分的に左右される。結合場所および長さは特定の実施態様に適したアニーリングおよびメルティング特性が得られるように変更し得る。オリゴヌクレオチドプローブの3’末端は好ましくは阻止するようにまたは核酸ポリメラーゼによる伸長ができないようにする。DNAポリメラーゼはヌクレオチドを3’ヒドロキシルだけに付加できるが3’ホスフェートには付加できないので、このようなブ阻止は3’末端ヌクレオチドのリン酸化によって行うのが好都合である。
【0050】
本発明のフルオロホアは5’端、3’端またはどちらかの末端の内側を含むプローブのいずれかの場所でプローブに付着できる。すなわち、該フルオロホアはプローブがその検出を目的として設計された標的DNAにハイブリド形成できる特異的ヌクレオチド配列を含むヌクレオチドのいずれかに付着できる。本発明の1つの実施態様において、フルオロホアは特異的ヌクレオチド配列の5’末端ヌクレオチドに付着され、消去剤は、特異的ヌクレオチド配列の3’末端ヌクレオチドに付着される。本発明に使用されるフルオロホアは好ましくは、連結部分を介してプローブの3’炭素または末端5’炭素に付着するように誘導体化された有機蛍光色素である。消去剤分子もまた好ましくは有機色素であり、これは蛍光性でも非蛍光性でもよい。一般に、消去剤が蛍光性であるかまたはリポーターから移動してきたエネルギーを非放射状減衰によって放出するだけであるかにかかわりなく、消去剤の吸光バンドはリポーター分子の蛍光発生バンドと実質的に重なり合っていなければならない。励起リポーター分子からエネルギーを吸収するが放射状にエネルギーを放出しない非蛍光消去剤分子を“暗消去剤”または“非蛍光消去剤”と呼ぶ。
【0051】
いくつかのフルオロホア−消去剤の組合せが当業界で記載されている。参考文献は例えば、Pesceら,editors,Fluorescence Spectroscopy,Marcel Dekker,New York(1971);Whiteら,Fluorescence Analysis:A Practical Approach,Marcel Dekker,New 20 York(1970);などである。文献はまた、蛍光および非蛍光分子とそれらの対応光学特性を網羅したリストを与える参考書、例えばBerlman,Handbook of Fluorescence Sprectra of Aromatic Molecules,2nd edition,New York:Academic Press(1971)を含む。さらに文献のうちには、オリゴヌクレオチドに付加できる共通反応性基を介して共有結合するようにリポーター分子および消去剤分子を誘導体化するための広汎な指導書が存在する。参照:例えばU.S.特許3,996,345および4,351,760。代表的なフルオロホア−消去剤の組合せは、フルオレセインを含むキサンテン色素およびローダミン色素から選択し得る。オリゴヌクレオチドに付着する結合部位または結合性官能基として使用できるフェニル部分に置換基をもつこれらの化合物の多くの適当な形態が広く入手可能である。別のグループの蛍光化合物はアルファまたはベータ位にアミノ基を有しているナフチルアミンである。このようなナフチルアミノ化合物は、1−ジメチルアミノナフチル−5−スルホネート、1−アニリノ8−ナフタレンスルホネートおよび2−p−トルイジニル−6−ナフタレンスルホネートを含む。他の色素としては、3−フェニル−7−イソシアナトクマリン、アクリジン類例えば9−イソチオシアナトアクリジンおよびアクリジンオレンジ;N−(p−(2−ベンズオキサゾリル)フェニル)マレイミド;ベンズオキサジアゾール、Dスチルベン、ピレンなどがある。
【0052】
本発明の1つの実施態様において、フルオロホアおよび消去剤分子はフルオレセインおよびローダミン色素から選択される。これらの色素およびオリゴヌクレオチドに付着させる適当な連結方法は当業界で公知である。参照:例えばMarshall,1975,Histochemical J.7:299−303;およびU.S特許5,188,934。本発明の好ましい1つの実施態様において、フルオロホアは、6−カルボキシ−フルオレセイン(FAM);Applied Biosystems社が専有権をもつフルオロホアVIC;6−カルボキシ−4’, 5’−ジクロロ−2’,7’ジメトキシフルオレセイン(JOE);および、5−テトラクロロ−フルオレセイン(TET)から成るグループから選択される。本発明の別の実施態様において、消去剤分子は6−カルボキシ−テトラメチル−ローダミン(TAMRA)のような蛍光性である。好ましくは、例えばClontech Laboratories(Palo Alto,Calif.)から入手可能な、合成中にオリゴヌクレオチドに付着できる市販の連結性部分を使用する。
【0053】
本発明の1つの実施態様において、IS1/プラスミドコピー比は、IS1ヌクレオチド配列内部に局在するプラスミドDNAの第一ヌクレオチド配列とIS1挿入非含有と判定されたプラスミドDNAの第二ヌクレオチド配列とを増幅することによって決定される。この場合、プラスミドDNAの第一および第二のヌクレオチド配列が核酸ポリメラーゼとオリゴヌクレオチドセットとの存在下で個別に増幅される。第一ヌクレオチド配列の増幅に使用されるオリゴヌクレオチドセットは、(i)IS1ヌクレオチド配列の第一場所にハイブリド形成する順方向PCRプライマーと、(ii)第一場所の下流のIS1ヌクレオチド配列の第二場所にハイブリド形成する逆方向PCRプライマーとおよび(iii)消去剤分子と固有発光極大にエネルギーを放出するフルオロホアとによって標識された蛍光プローブとから構成され、該プローブは第一場所と第二場所との間のIS1ヌクレオチド配列内部の1つの場所にハイブリド形成する。第二ヌクレオチド配列の増幅に使用されるオリゴヌクレオチドセットは、(i)第二ヌクレオチド配列の第一場所にハイブリド形成する順方向PCRプライマーと、(ii)第一場所の下流の第二ヌクレオチド配列の第二場所にハイブリド形成する逆方向PCRプライマーとおよび(iii)消去剤分子と固有発光極大にエネルギーを放出するフルオロホアとによって標識された蛍光プローブとから構成され、該プローブは第一場所と第二場所との間の第二ヌクレオチド配列内部の1つの場所にハイブリド形成する。核酸ポリメラーゼは、増幅中に蛍光プローブを消化して該フルオロホアを該消去剤分子から解離させ、フルオロホアと消去剤分子とが解離したときの蛍光変化が検出され、該蛍光変化が第一および/または第二のヌクレオチド配列の増幅の発生に対応する。別の実施態様において、第一および第二のヌクレオチド配列が多重モードで同時に増幅される。
【0054】
本発明の別の実施態様において、IS1のヌクレオチド配列を増幅できる順方向および逆方向のPCRプライマーは、それぞれIS1−Q−F(5’−AGGCTCATAAGACGCCCCA−3’;配列6)およびIS1−Q−R(5’−ACGGTTGTTGCGCACGTAT−3’;配列7)から構成され、蛍光プローブはIS1−Q−P2(5’−CGTCGCCATAGTGCGTTCACCG−3’;配列8)から構成されており、該プローブは上述のようにフルオロホアと消去剤分子とによって標識されている。1つの実施態様において、IS1−Q−Fプローブの3’末端が消去剤分子TAMRAで標識され5’末端がフルオロホアFAMで標識されている。本発明のこの部分の別の実施態様において、IS1ヌクレオチド配列と共に増幅されるIS1挿入非含有と判定されたプラスミドDNAのヌクレオチド配列が、CMVプロモーター配列(例えばヒトCMVプロモーター)を非限定的に含むプラスミドDNAのプロモーター配列である。1つの実施態様において、CMVプロモーターのヌクレオチド配列を増幅できる順方向および逆方向のPCRプライマーは、それぞれCMV−Q−F(5’−GTACGGTGGGAGGTCTATATAAGCA−3’;配列3)およびCMV−Q−R(5’−GGAGGTCAAAACAGCGTGGAT−3’;配列4)から構成され、蛍光プローブはCMV−Q−P2(5’−TCGTTTAGTGAACCGTCAGATCGCCTG−3’;配列5)から構成され、該プローブは、上述のようにフルオロホアと消去剤分子とによって標識されている。1つの実施態様において、IS1−Q−Fプローブの3’末端が消去剤分子TAMRAで標識され5’末端がフルオロホアVICで標識されている。
【0055】
従って本発明はさらに、プラスミドDNAを内包する大腸菌の1つの菌株の高生産性クローナルサブタイプの選択方法に関し、この方法は、(a)同じプラスミドDNAを内包する同じ菌株の少なくとも2つのクローナルサブタイプからプラスミドDNAを単離する段階と、(b)第一クローナルサブタイプから単離したプラスミドDNAサンプル中のプラスミドコピー数に基づくIS1トランスポゾンコピーの相対量を定量的PCRアッセイによって測定し、該アッセイでIS1ヌクレオチド内部に局在するプラスミドDNAの第一ヌクレオチド配列とIS1挿入非含有と判定されたプラスミドDNAの第二ヌクレオチド配列とを増幅してIS1/プラスミドコピー比を生成する段階と、(c)第一クローナルサブタイプのIS1/プラスミドコピー比を同じプラスミドDNAを内包する同じ菌株の少なくとも1つの第二クローナルサブタイプのIS1/プラスミドコピー比に比較する段階と、(d)相対的に低いIS1/プラスミドコピー比を示すクローンを選択し、この相対的に低いIS1/プラスミドコピー比を示すクローンを有力な高生産性クローナルサブタイプとして同定する段階とおよび(e)該有力な高生産性クローナルサブタイプの産生率を試験する段階とを含む。ここにおいて、高生産性クローナルサブタイプは高プラスミドコピー数/細胞を示す。
【0056】
先に記載したように、第二の多重Q−PCRアッセイは、試験した大腸菌クローナルサブタイプのプラスミドDNAサンプル中の残留ゲノムDNAに起因するIS1の予測量を計算するために開発され、IS1転位活性の増加をより正確に定量することによって開示した遺伝子選択プロセスの特異性を増強できる。標準のプラスミドDNAの調製において、ゲノムDNAは変性タンパク質と共沈され、プラスミドDNAから分離され、廃棄される。従って、細菌細胞発酵物から単離されたプラスミドDNAサンプルは主としてプラスミドDNAを含み、少量のゲノムDNAが混入し得る。例えばQIAGENカラムで精製したプラスミドDNAは3.3重量%までのゲノムDNAを含有するであろう(Vilaltaら,2002,Analytical Biochem.301:151−153)。ゲノムDNAの混入は少量であろうが、本発明のQ−PCRアッセイは高感度なのでこの残留ゲノムDNA内部に局在するIS1トランスポゾンを検出できるであろう。本文中に記載のIS1/プラスミドコピー比アッセイは、プラスミドDNA内部に局在するIS1とゲノム/染色体DNA内部に局在するIS1とを識別できないので、ベースライン残留ゲノムDNAに起因するIS1の量を知るためにこの第二の多重Q−PCRを開発した。従って、本発明の1つの実施態様において、プラスミドDNAサンプル中に存在する残留ゲノムDNAに起因するIS1コピーの予測量が定量的PCRアッセイを使用して測定され、プラスミドコピー数に基づくIS1コピーの相対量(すなわちIS1トランスポゾンコピー数)を表す上述のIS1/プラスミドコピー比が、プラスミドDNAサンプル中に存在する残留ゲノムDNAに起因するIS1コピーの予測量を減算することによって補正される。上述のように、IS1/プラスミドコピー比アッセイはプラスミドに基づくIS1と染色体に基づくIS1とを識別できないので、Q−PCRアッセイは、残留ゲノムDNAに起因すると思われるIS1の量を補正するために、染色体DNA中のベースラインIS1と同様の量で存在すると考えられる染色体DNAの成分を測定する。例えば、大腸菌K−12ゲノム中には6から8コピーのIS1が存在し(Ohtsubo and Sekine,1996;前出)、発明者/出願人によるサザンブロット実験はDH5細胞中のIS1コピー数が6または7であることを示した(実施例2参照)。同様に、23s rDNA遺伝子が大腸菌ゲノム中に7コピー/細胞で存在する(Jinks−Robertson and Nomura,Escherichia coli and Salmonella typhimurium:Cellular and Molecular Biology,Ed.F.Neidhardt,Washington D.C.:American Society for Microbiology,1987,2:1358−1385)。従って、単離プラスミドDNAサンプル中の23s rDNAコピーの定量は、開示したQ−PCRアッセイで測定される残留ゲノムDNAに起因するIS1コピー数の適正な概数を与える。
【0057】
従って、本発明の1つの実施態様において、上述のように、IS1/プラスミドコピー比が、プラスミドDNAサンプル中に存在する残留ゲノムDNAに起因するIS1コピーの予測量を減算することによって補正され、この場合、プラスミドDNAサンプル中に存在する残留ゲノムDNAに起因するIS1コピーの予測量がQ−PCRアッセイで測定される。別の実施態様において、該Q−PCRアッセイは、23s rDNA配列内部のゲノムDNAのヌクレオチド配列とIS1/プラスミドコピー比を生成するために使用したIS1挿入非含有と判定されたプラスミドDNAの同じヌクレオチド配列とを増幅することによってプラスミドコピー数に基づく23s rDNAの相対量を測定して23s rDNA/プラスミドコピー比を生成し、これをIS1/プラスミドコピー比から減算して“補正”IS1/プラスミドコピー比を与える。
【0058】
本発明の別の実施態様において、23s rDNA/プラスミドコピー比は、23s rDNA配列内部のゲノムDNAのヌクレオチド配列とIS1挿入非含有と判定されたプラスミドDNAの同じヌクレオチド配列(すなわち、IS1/プラスミドコピー比を生成するときに増幅された第二ヌクレオチド配列)とを増幅することによって決定され、この場合、23s rDNA配列内部に局在するヌクレオチド配列および第二ヌクレオチド配列が、核酸ポリメラーゼとオリゴヌクレオチドセットとの存在下で個別に増幅される。23s rDNAヌクレオチド配列の増幅に使用されるオリゴヌクレオチドセットは、(i)23s rDNA配列の第一場所にハイブリド形成する順方向PCRプライマーと、(ii)第一場所の下流の23s rDNA配列の第二場所にハイブリド形成する逆方向PCRプライマーとおよび(iii)消去剤分子と固有発光極大にエネルギーを放出するフルオロホアとによって標識された蛍光プローブとから構成され、該プローブは第一場所と第二場所との間の23s rDNA配列内部の1つの場所にハイブリド形成する。第二ヌクレオチド配列の増幅に使用されるオリゴヌクレオチドセットは、(i)第二ヌクレオチド配列の第一場所にハイブリド形成する順方向PCRプライマーと、(ii)第一場所の下流の第二ヌクレオチド配列の第二場所にハイブリド形成する逆方向PCRプライマーと、(iii)消去剤分子と固有発光極大にエネルギーを放出するフルオロホアとによって標識された蛍光プローブとから構成され、該プローブは第一場所と第二場所との間の第二ヌクレオチド配列内部の1つの場所にハイブリド形成する。核酸ポリメラーゼは、増幅中の蛍光プローブを消化して該フルオロホアを該消去剤分子から解離させ、フルオロホアと消去剤分子とが解離したときの蛍光変化が検出される。ここにおいて該蛍光変化は、23s rDNA配列および/または第二ヌクレオチド配列の増幅に対応する。別の実施態様において、該23s rDNA配列および第二ヌクレオチド配列が多重モードで同時に増幅される。
【0059】
別の実施態様において、大腸菌ゲノムDNA内部の23s rDNAのヌクレオチド配列を増幅できる順方向および逆方向のPCRプライマーは、それぞれ23s−F1D(5’−GAAAGGCGCGCGATACAG−3’;配列11)および23s−R1D(5’−GTCCCGCCCTACTCATCGA−3’;配列12)から構成され、蛍光プローブは、23s−Pfam(5’−CCCCGTACACAAAAATGCACATGCTG−3’;配列13)から構成され、該プローブは上述のようにフルオロホアおよび消去剤分子の双方によって標識されている。1つの実施態様において、23s−Pfamプローブの3’末端が消去剤分子TAMRAで、5’末端がフルオロホアFAMで標識されている。本発明のこの部分の別の実施態様において、23s rDNAヌクレオチド配列と共に増幅されるIS1挿入非含有と判定されたプラスミドDNAのヌクレオチド配列が、CMVプロモーター配列(例えばヒトCMVプロモーター)を非限定的に含むプラスミドDNAのプロモーター配列であり、23s rDNA/CMVコピー比が生成される。
【0060】
本発明はさらに、プラスミドDNAを内包する大腸菌の菌株の高生産性クローナルサブタイプの選択方法に関し、この方法は、(a)同じプラスミドDNAを内包する同じ菌株の少なくとも2つのクローナルサブタイプからプラスミドDNAを単離する段階と、(b)第一プラスミドDNAサンプル中のプラスミドコピー数に基づくIS1トランスポゾンコピーの相対量を定量的PCRアッセイによって測定し、該アッセイがIS1ヌクレオチド配列内部に局在するプラスミドDNAの第一ヌクレオチド配列とIS1挿入非含有と判定されたプラスミドDNAの第二ヌクレオチド配列とを増幅してIS1/プラスミドコピー比を生成する段階と、(c)該第一プラスミドDNAサンプル中に存在する残留ゲノムDNAに起因するIS1トランスポゾンコピーの予測量を、プラスミドコピー数に基づく23s rDNAの相対量を測定する定量的PCRアッセイで計算し、該アッセイが23s rDNA配列内部に局在するゲノムDNAのヌクレオチド配列と段階(b)の第二ヌクレオチド配列との双方を増幅して23s rDNA/プラスミドコピー比を生成する段階と、(d)23s rDNA/プラスミドコピー比をIS1/プラスミドコピー比から減算して補正IS1/プラスミドコピー比を生成する段階と、(e)第一プラスミドDNAサンプルから得られた補正IS1/プラスミドコピー比を第二プラスミドDNAサンプルから得られた補正IS1/プラスミドコピー比に比較する段階と、(f)相対的に低い補正IS1/プラスミドコピー比を示すクローンを選択し、相対的に低い補正IS1/プラスミドコピー比を示すクローンを有力な高生産性クローナルサブタイプとして同定する段階とおよび(g)該有力な高生産性クローナルサブタイプの産生率を試験する段階とを含む。ここにおいて、高生産性クローナルサブタイプは高プラスミドコピー数/細胞を示す。本発明のこの部分の1つの実施態様において、IS1トランスポゾン挿入非含有と判定されたプラスミドDNAのヌクレオチド配列は、プラスミドDNAのプロモーター領域(CMVプロモーター領域を含むが、これに限定されない。)であり、従って例えばIS1/CMVおよび/または補正IS1/CMVコピー比が生成される。
【0061】
詳細に上述した遺伝子選択方法は、一方で、プラスミドDNAを内包する大腸菌サブタイプ中のIS1挿入性突然変異原性の程度がプラスミドDNA自体のIS1トランスポゾンコピー数を測定することによって評価される段階を含み、本発明はさらに、クローナルサブタイプのゲノムDNA中のIS1挿入性突然変異原性の増加を検出する段階を含む、プラスミドDNAを内包する大腸菌の菌株の高生産性クローナルサブタイプを選択するためのより進歩した方法に関する。高スループット分析が可能なPCRに基づくアッセイは、IS1挿入を受容すると予め決定されたゲノムDNAの領域(すなわち、“予め決定されたIS1挿入領域”)内部のIS1トランスポゾン配列の有無を検出すると期待される。この予め決定された領域内部のIS1トランスポゾン挿入の有無を非形質転換細菌株のゲノムDNAに存在するベースラインIS1トランスポゾンと混同してはならない。どちらかと言えばこの予め決定されたIS1挿入領域へのIS1挿入はプラスミドDNAによる細菌細胞の形質転換後に生じる。後出の実施例2で参照できるように、RFLPプロファイルは、低生産性DNAワクチンクローンと細菌ゲノムDNA内部のIS1コピー数の増加との間に相関関係があることを示す。従って本発明はさらに、クローナルサブタイプのゲノムDNAのIS1挿入領域として予め決定された領域(すなわち、“予め決定されたIS1挿入領域”)内部の1つ以上のIS1トランスポゾン挿入配列の有無を検出する段階を含む、プラスミドDNAを内包する大腸菌の菌株の高生産性クローナルサブタイプの選択方法に関する。この方法において、IS1挿入領域内部にIS1トランスポゾン配列が存在しないクローナルサブタイプは高生産性クローナルサブタイプを表す。
【0062】
この目的の本発明は、プラスミドDNAを内包する大腸菌の1つの菌株の高生産性クローナルサブタイプの選択方法に関し、この方法は、(a)該クローナルサブタイプのゲノムDNAの予め決定されたIS1挿入領域内部のIS1トランスポゾン配列の有無を検出し、該IS1挿入領域内部にIS1トランスポゾン配列が存在しないクローナルサブタイプが有力な高生産性クローナルサブタイプを表す段階と、(b)該有力な高生産性クローナルサブタイプの産生率を試験する段階とを含む。ここにおいて高生産性クローナルサブタイプは高プラスミドコピー数/細胞を示す。PCR(定量的PCRアッセイ(“Q−PCR”)を含むが、これに限定されない。)に基づくアッセイは、ゲノムDNAの該所定IS1挿入領域の内部のIS1トランスポゾン配列の有無を検出するために使用できる。細菌クローナルサブタイプのゲノムDNA内部のIS1挿入領域の場所を決定するプロセスは後出の実施例5に詳細に記載する。
【0063】
本発明の1つの実施態様において、大腸菌の形質転換後のIS1挿入を受容すると予め決定された大腸菌クローナルサブタイプのゲノムDNAの部分の内部のIS1挿入性突然変異原性を検出するためにQ−PCRアッセイを使用する。この予め決定されたIS1挿入領域は該ゲノムDNAの約20未満の連続ヌクレオチドの範囲である。該IS1挿入領域が該ゲノムDNAの約20未満の連続ヌクレオチドの範囲であるとき、ここで該領域を特異的“IS1挿入部位”と呼ぶ。TaqMan Q−PCRアッセイは、この予め決定されたIS1挿入領域(すなわち、IS1挿入部位)を含有するゲノムDNAの部分の増幅を試みることによってこのIS1挿入部位内部のIS1挿入配列の有無を検出するように意図されている。考察アッセイの概略図を図7Aに示す。IS1挿入部位にまたがるように設計された蛍光プローブを使用するならば予め決定されたIS1挿入部位にIS1挿入配列が全く挿入されていないときだけ正常な増幅およびシグナル発生が存在する。
【0064】
従って本発明の1つの実施態様において、核酸ポリメラーゼとならびに(i)消去剤分子と固有発光極大にエネルギーを放出するフルオロホアとによって標識されておりゲノムDNAのIS1挿入領域内部にIS1トランスポゾン配列が存在しないときにだけIS1挿入領域にまたがるゲノムDNA内部の1つの場所にハイブリド形成する蛍光プローブ、(ii)蛍光プローブの上流のゲノムDNAの1つの場所にハイブリド形成する順方向PCRプライマーおよび(iii)蛍光プローブの下流のゲノムDNAの1つの場所にハイブリド形成する逆方向PCRプライマーから構成されたオリゴヌクレオチドセットとの存在下で、IS1トランスポゾン領域を受容することが予め決定されたゲノムDNAの領域を増幅する段階を含む定量的PCRアッセイを意図する。蛍光プローブがゲノムDNAにハイブリド形成したときに、核酸ポリメラーゼは、増幅中の蛍光プローブを消化して該フルオロホアを該消去剤分子から解離させ、フルオロホアと消去剤分子とが解離したときの蛍光変化が検出される。この蛍光変化は、ゲノムDNAの増幅に対応し、したがって、IS1挿入部位がIS1トランスポゾン配列を含有しないことを確証する。このように、蛍光の変化は、有力な高生産性クローナルサブタイプの同定を表し、したがって、それが実際に高生産性クローンであるか否かを確認するためにその比産生率を小規模発酵系で評価できる。あるいは、推定低生産性クローン(すなわち、予め決定されたIS1挿入部位内部にIS1トランスポゾンを含有するクローン)のゲノムDNAに順方向および逆方向PCRプライマーだけのハイブリド形成が生じるとき、ゲノム鋳型は容易に増幅されるが、蛍光プローブはIS1挿入部位にハイブリド形成できないので、蛍光シグナルは検出されない(図7A)。重要なことは、このアッセイが多重化を必要としないこと、および、全細胞溶解液で行うことができるのでゲノムDNA単離の必要性が削除されることである。このアッセイに使用するTaqManプローブは典型的には約15から約40ヌクレオチドの範囲の長さなので、ゲノム特異的プローブの適正な結合を確保するためには、同定されたIS1挿入部位がゲノムDNA配列の比較的狭い領域、好ましくは約20未満のヌクレオチド内部に局在しなければならない。
【0065】
本発明の別の実施態様において、形質転換後にIS1挿入を受容することが予め決定された大腸菌クローナルサブタイプのゲノムDNAの部分内部のIS1挿入性突然変異原性の増加を検出するためPCRに基づくアッセイを使用する。この予め決定されたIS1挿入領域は該ゲノムDNAの約20以上の連続ヌクレオチドの範囲である。意図されたアッセイの概略図を図7Bに示す。該IS1挿入領域が該ゲノムDNAの約20ヌクレオチド以上の範囲であるならば、ここではこの領域を“IS1挿入ホットスポット”と呼ぶ。意図されたPCRアッセイは、IS1挿入領域の外部(すなわち、IS1挿入ホットスポットの外部)のゲノムDNAの1つの場所にハイブリド形成する1つのPCRプライマーと、IS1挿入ホットスポットの内部に局在するゲノムDNAのIS1トランスポゾン配列にハイブリド形成する第二のPCRプライマーとを使用する。双方のプライマーのハイブリド形成は、ほぼ既知の目標鎖長のプライマー鋳型のフラグメントの指数関数的増幅を生じ、したがって、推定低生産性クローンの同定という結果を与える。あるいは、IS1挿入ホットスポット内部のIS1トランスポゾン配列が存在しないと、1つのプライマーだけがゲノムDNAにハイブリド形成し、鋳型DNAの1つの鎖の一次関数的増幅を生じ、したがって、有力な高生産性クローナルサブタイプの同定という結果を与える。理論的にはIS1挿入ホットスポット内部のIS1トランスポゾン配列にハイブリド形成すると意図された第二PCRプライマーが、該挿入ホットスポット外部のIS1トランスポゾン配列(すなわち、非形質転換細胞のゲノム内部に存在するベースラインIS1トランスポゾン)にハイブリド形成することもあり得るが、2つのPCRプライマーがハイブリド形成するゲノムDNA内部の特異的場所およびIS1ホットスポットの場所を知ることによって、推定低生産性クローンから増幅されたDNAの目標鎖長は、該アッセイを全細胞溶解液または精製ゲノムDNAを使用して行うときに容易に概算できる。
【0066】
従って、本発明の1つの実施態様において、(i)IS1挿入領域外部(すなわち、IS1挿入ホットスポットの外部)のゲノムDNAの場所にハイブリド形成する第一PCRプライマーと、(ii)所定IS1挿入領域のIS1トランスポゾン配列内部の場所にハイブリド形成する第二PCRプライマーとから構成されるオリゴヌクレオチドセットを使用し、予め決定されたIS1挿入領域内部のIS1トランスポゾン配列の有無を検出するPCRアッセイが意図されている。このアッセイでは、IS1挿入領域内部のIS1トランスポゾン配列の存在は双方のPCRプライマーのハイブリド形成および増幅による該ゲノムDNAの指数関数的増幅という結果を与え、IS1挿入領域内部のIS1トランスポゾン配列の不在は第一のPCRプライマーだけのハイブリド形成および増幅によるゲノムDNAの一本鎖だけの一次関数的増幅という結果を与える。ゲノムDNAの指数関数的増幅は、ほぼ目標サイズの増幅核酸フラグメントの同定によって目視検出される、または、二重鎖増幅DNAに結合する核酸染料(例えばSYBR(登録商標) Green)を添加することによってリアルタイムで蛍光的に検出できる。あるいは、蛍光発生プライマー(例えばLUXTMプライマー(Invitrogen))を使用して蛍光の指数関数的増加を測定できる。IS1挿入ホットスポット内部にIS1トランスポゾン配列が存在しないクローンにおいても蛍光シグナルが予想されることに留意しなければならない。しかしながら、このような情況のシグナル増加は、双方のPCRプライマーのハイブリド形成から生じる指数関数的増加でなく一次関数的増加であろう。アッセイはまた、IS1挿入ホットスポット内部でIS1トランスポゾン配列がどちらの配向でも挿入できることを考慮しなければならない。この可能性を考慮して内部IS1プライマーを両方向で使用し、個々のプライマーでサンプル毎に個別の2つのアッセイを行うかまたは両方のプライマーを使用してクローン集団をスクリーニングすることもできる。
【0067】
低産生現象はIS1挿入性突然変異に相関関係を有するので、IS1コピーが完全に除去された大腸菌宿主株は高生産性クローンのより均一な集団を生じると見込まれる。このため、本発明はさらに、該プラスミドDNAによる細菌株の形質転換に先立って細菌ゲノムIS1のコピーを完全除去するために大腸菌宿主菌株を変異させる段階を含む、プラスミドDNAを内包する大腸菌の菌株の高生産性クローナルサブタイプの生成方法に関する。本発明はさらに、IS1コピーが完全除去された突然変異大腸菌宿主菌株(変異DH5株を含むが、これに限定されない。)および、プラスミドDNAを繁殖させるための該菌株の使用に関する。
【0068】
大腸菌の欠失的または破壊的変異を構築するためにはP1ファージ形質導入、トランスポゾン媒介ランダム変異原性および普遍(RecA介在)相同的組換えを含むいくつかの方法が存在する。通常各変異に選択可能マーカー例えば抗生物質耐性が必要なので、これらの方法は単一変異だけに適している。代替方法は、所望破壊部位の周囲のフランキング配列に相同なプライマーに36−から50−ntの伸長をもつPCR産物と、ラムダ−Redリコンビナーゼとの使用を含む(Datsenko and Wanner,2000,PNAS 97:6640−6645)。この場合にも選択可能マーカーをやはり使用する。しかしながら、マーカーは後で除去することができ、以後の変異サイクルにはその使用が免除される。残留“瘢痕”を除去する修正方法は、選択可能マーカーを除去するために内因性二重鎖の破壊修復プロセスを利用する(Kolisnychenkoら,2002,Genome Res.12:640−647)。この方法は、44のうちの24の転位可能要素の除去を含む8.1%のゲノムサイズ短縮を伴う大腸菌のK−12株を産生するために使用された。この菌株では7つのIS1コピーのうちの3つが除去された。残りの4コピーの除去が菌株の生存適性またはフェッドバッチ発酵プロセスでの使用適性に有害な効果を与えない可能性は極めて高い。しかしながら、Kolisnychenkoらの修正方法は、二重鎖の破壊修復プロセスにRecAを必要とするので大腸菌DH5株には適していないことに注目されたい。別の方法は、グループIIイントロン、いわゆる“ターゲトロン”を使用して相補的配列の14−から16−nt領域に基づく変異を生じさせる(Zhongら,2003,Nucleic Acids Res.31:1656−1664)。この方法も選択可能マーカーを使用するが多重挿入ができるように後で除去できる。しかしながら、この方法は、上記の2つの方法のように標的部位の欠失を生じるのでなく破壊を生じるものである。この方法の使用では、トランスポゾンによってコードされている主要トランスポザーゼ遺伝子(insAB)中に破壊されている7つの非機能IS1コピーを内包する菌株が与得られるであろう。
【0069】
ここに記載の形質転換大腸菌クローンに内包されたプラスミドDNAベクターは、有益なバイオ化合物をコードする(1つ以上の)遺伝子、すなわちトランスジーンを含有するいかなる染色体外DNA分子でもよい。プラスミドは、微生物細胞(例えば大腸菌)中のその維持および繁殖と以後の動物宿主体内でのトランスジーンの発現との双方に必要な要素を含有する。細菌繁殖のためには、適格な形質転換体選択用の選択可能マーカーのようなプラスミドにコードされた複製に必要な機能に加えて複製起点が必要である。遺伝子発現のためには、プラスミドが動物体内に導入されたときにトランスジーンの一過性産生が最大になるようにプラスミドを設計しなければならない。遺伝子発現に役立つプラスミドの成分は非限定的に、真核性プロモーター、転写終結およびポリアデニル化シグナル、(1つ以上の)エンハンサー要素を含む。動物細胞での組換遺伝子発現のために選択されたプロモーターは同種でも異種でもよく、構成性でも誘導性でもよく、非限定的に、ヒトサイトメガロウイルス/前初期(CMVlE)、サルウイルス/初期(SV40)、ヒト伸長因子−1α(EF−1α)およびヒトユビキチンC(UbC)由来のプロモーターを含む。プラスミドDNAは平均的な技量の当業者に公知の技術を使用して組換え操作できる。参照:例えば、Sambrookら,前出;Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Assoc.& Wiley(1987)。双方の文献は参照によって本発明に組込まれるものとする。
【0070】
本発明に関係して使用し得る方法および材料を記載および開示する目的でここに引用したすべての刊行物は参照によって組込まれる。しかしながら、本発明が、従来発明によるこのような開示のために、先行していないと認めたと解釈してはならない。
【0071】
本発明の好ましい実施態様を添付図面に基づいて記載したが、本発明がこれらの具体的な実施態様に限定されないこと、特許請求の範囲に記載の本発明の範囲または要旨を逸脱することなく当業者による本発明の様々な変更および修正が可能であることを理解されたい。
【0072】
本発明の代表として以下の実施例を与えたが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【実施例1】
【0073】
DNAワクチンプラスミド中のIS1トランスポゾンの同定
菌株、DNAワクチンプラスミドおよび増殖培地−すべてのDNAワクチン構築物の宿主菌株は大腸菌DH5[F’deoR reckA1 endA1 hsdR17(rk−,mk+)supE44λ−thi−1 gyrA96 relA1]である。この菌株は先ずInvitrogen(Carlsbad,CA;以前のGibco BRL)から購入し、限定培地DME−P5に適応させ、後で形質転換させるために電気受容性にした。大腸菌DH5α[F−φ80lacZΔM15Δ(lacZYA−argF)U169 deoR recA1 endA1 hsdR17(rk−,mk+)gal− phoA supE44 λ− thi−1 gyrA96 relA1]はInvitrogen(Carlsbad,CA)から購入した電気受容性細胞であった。HTV DNAワクチンプラスミドV1Jns−nefの構築は国際特許出願PCT/US00/34162、2000年12月15日出願(国際公開WO 01/43693、2001年6月21日公開)に詳細に記載されている。簡単に説明すると、DNAワクチンプラスミドは、pUC−19由来の細菌性複製起点と、大腸菌中の維持および選択用のネオマイシン/カナマイシン耐性遺伝子(nptII)と、CMV−IEプロモーターと、イントロンAと、HIV由来トランスジーンの真核性発現用のウシ成長ホルモンターミネーター/ポリアデニル化シグナルとから構成されている。形質転換は、標準プラクティスに従って電気穿孔で行った。脱水LBブロスおよびLB寒天はBecton−Dickinson(Franklin Lakes,NJ)から購入し、製造業者の指示通りに調製した。滅菌SOC培地(形質転換後の回収用)はInvitrogenから購入した。限定培地DME−P5は、7g/lのKH2PO4、7g/lのK2HPO4、6g/lの(NH4)2SO4、5g/lのL−グルタミン酸、10g/lのグリセロールおよび0.5g/lのNaClを含有し、NaOHでpH7.2に調整する。滅菌後1リットルあたり8.3mlのネオマイシン/サイアミン/MgSO4溶液および1mlの微量元素溶液を添加した。120×のネオマイシン/サイアミン/MgSO4溶液は24g/lのサイアミン−HCl、240g/lのMgSO4・7H2Oおよび9.6g/lの硫酸ネオマイシンを含有している。1000×の微量元素溶液を1.2NのHClに溶解した。これは、27g/lのFeCl3・6H2O、2g/lのZnCl2、2g/lのCoCl2・6H2O、2g/lのNa2MoO4−2H2O、1g/lのCaCl2・2H2O、1.3g/lのCuCl2・2H2Oおよび0.5g/lのH3BO3を含有する。
【0074】
結果
LB培地で調製した大腸菌DH5を1μlのV1Jns−nefで形質転換し、SOC培地に回収した。形質転換体をLB/ネオマイシン寒天で平板培養した。ランダムに選択したコロニー(NLB−1からNLB−10)を使用して10mlのLB/neo液体培地に接種し、一夜増殖させた。プラスミドDNAの単離用に1ミリリットルのアリコートを採取し、凍結グリセロール予製液も調製した。グリセロール予製液を接種物として使用して新しいLB培養物を調製し、増殖するLB培養物を使用して振盪フラスコ中の25mlのDME−P5培地に接種した。培地シフトに適応するように培養物をDME−P5中で3回継代させた。三回目の継代後に、1mlのアリコートを採取し、QIAGENプラスミドミニプレップキットでプラスミドDNAを単離した。LB増殖培養物およびDME−P5増殖培養物に由来のDNAサンプルを0.7%アガロースゲルに流し、プラスミド含量を確認した(それぞれ図1Aおよび1B)。2つのゲルの比較から、DME−P5サンプルのいくつかは優位種に比べて高い分子量をもつ少数種を含有することが判明したが、LBサンプルでは明らかでなかった(参照:NLB−1、−3、−5、−7および−8;図1Bの星印の付いたレーン)。1つのサンプルNLB−8はまた、出発分子のDNAの再編成および排除から形成されたと思われる低分子量の多数種を含有している。サンプルNLB−10は主に二量体化分子として存在すると考えられる点で独特であり、これは共有結合または単なる強い物理的会合を表す。
【0075】
異なる分子量をもつ2つの種の存在はHTV gagを含むDNAワクチンプラスミドの同様の培養物中で以前から観察されていた。該培養物は長い緩徐な増殖期を伴うフェッドバッチ培養後にプラスミドDNAの増殖に成功しなかった(“低生産体”または“LP”と表す)(データ示さず)。この観察後に同様のDNAワクチンプラスミドのサンプル中で転位可能要素IS1が発見された。V1Jns−nefのDME−P5増殖培養プレップ中のIS1挿入の可能性を検討するために、高分子量の少数種を含有する5つのNLB DNAサンプルをMluIで制限酵素消化した。制限消化物は、1μlのプラスミドDNA、7μlのH2O、1μlの10×反応バッファ、1μlの酵素から構成した。消化物を37℃で〜1時間温置し、次いでゲルに充填するためにおのおのに2μlの充填用バッファを添加した。ヌクレオチド配列の比較に基づいて、この酵素はIS1フラグメントの内部を切断するが、V1Jns−nef配列の内部を切断しないようである。従って、高分子量バンドがIS1を含有するならば、MluI制限酵素消化は、アガロースゲル上のこれらのバンドが直鎖化し移動するという結果を与える筈である。IS1非含有種は非消化サンプルに対して移動しない筈である。実際、MluI消化後、試験した5サンプル全部が直鎖化に符合する高分子量バンドの特徴的移動を示したが、低いバンドはシフトしなかった(図1C)。
【0076】
オリゴヌクレオチドプライマーが、IS1含有フラグメントを増幅し、その存在を追認できる証拠を提供するように設計された。設計されたプライマーは、9bpの非相補的ヌクレオチドとIS1配列の末端に相補的な7または9bpのヌクレオチドとの連鎖から構成されたいわゆる“不完全一致”プライマーであった。このように設計したプライマーは鋳型濃度に感受性であるという明白な効果を有していた。従って、不特定な1つの量よりも多いIS1含量のサンプルだけが増幅されるであろう。LB増殖細胞およびDME−P5増殖細胞に由来のNLB−1およびNLB−2サンプルをPCR反応の鋳型として選択した。LB増殖細胞から単離したNLB−1またはNLB−2中ではアガロースゲル上の高分子量バンドが明白でなかった。しかしながら、DME−P5増殖細胞から単離したNLB−1中では該バンドが明白であったがNLB−2中ではそうでなかった。pUC19サンプル中に高分子バンドの証拠は存在しなかった(データ示さず)。従って、これを陰性対照として加えた。おそらくIS1はゲノムからプラスミドに転位すると推定できる。従って、ゲノムDNAプレップが大腸菌DH5およびDH5αに導入された。ゲノムDNAの単離に先立って双方の菌株をLB中で増殖させた。QIAGEN製のHotStarTaqTM Master Mix試薬を製造業者の指示通りに使用して全量50μlのPCR反応を設定した。5μlの各反応液を0.7%アガロースゲルに充填した(図2A)。アガロースゲル分析に符合して、どのNLBサンプルのLB増殖プレップからもIS1の長さに対応するフラグメントの有意な増殖はなかった(レーン2および4)。しかしながら、DME−P5増殖培養物のNLB−1およびNLB−2のプレップの双方から650と850bpとの間の移動フラグメントが増幅された(レーン3および5)。pUC19からもどちらのゲノムDNAプレップからも増幅はなく、試験したプラスミドDNAのこれらの調製物中の混入残留ゲノムDNAに見出されたIS1をプライマーが増幅できないことが確認された。増幅フラグメントの同一性を確認するために、2つの陽性サンプルをMluI制限酵素で消化した(3μlのPCR反応、5μlのH2O、1μlの10×反応バッファ、1μlの酵素、37℃で2時間温置)。この酵素はIS1を1回切断して〜0.44および〜0.34Kbのバンドを産生するはずであるが、増幅サンプルではこれらが実際に観察された(図2B)。
【0077】
NLB−2サンプルのDME−P5増殖プレップ中のIS1の存在は、すべてのDME−P5増殖細胞中に挿入配列が極めて少数ではあるが有意なパーセンテージの集団でまだ存在するという可能性を高めた。この可能性を試験するために、LB−およびDME−P5増殖細胞の双方からのNLB−3からNLB−10サンプルを鋳型としてPCR反応を行った。結果は、NLBプレップの10個のDME−P5増殖サンプル全部にIS1フラグメントが実際に存在することを示す(図C)。LB増殖プレップからの結果はそれほど明白でない(図2D)。これらのサンプルの全部で650と850bpとの間に不鮮明なバンドが存在する。しかしながら、増幅の程度は、IS1が極めて少量で存在し、プラスミドプレップの染色体混入の結果かもしれないことを示唆する。これらの不鮮明なバンドはまた、プライマーの非特異的結合から生じた伸長を表すものかもしれない。しかしながら、DME−P5調製物中にIS1配列が存在することは明らかである。また、LBからDME−P5培地へのシフトがプラスミド集団中のIS1の増加を誘導する可能性も極めて高い。
【0078】
DME−P5培地で継代させたNLBサンプルを次にSFF(参照:国際出願PCT/US2005/002911;前出)アセンブリで培養してプラスミドDNA含量を検査した。10個のサンプル全部が“低生産性”であると特性決定され、プラスミドDNA含量は0.8から2.4μg DNA/OD2ペレットであった。これらの各サンプル中のIS1転位可能要素の同定は、IS1の存在が低産生現象の原因ではないかという疑問を浮上させる。
【実施例2】
【0079】
制限断片長多型(RFLP)分析を使用する高生産性および低生産性のゲノム中のIS1含量の比較
菌株、DNAワクチンプラスミドおよび増殖培地については前出の実施例1参照。さらに、不適応の非形質転換細胞はInvitrogenから購入しLB培地に維持した。HTV DNAワクチンプラスミドV1Jns−tpa−nef(5540bp)の構築は国際PCT出願PCT/US00/34162(前出)に詳細に記載されている。HTV DNAワクチンプラスミドV1Jns−tpa−pol(7516bp)の構築は国際PCT出願PCT/US00/34724、出願日2000年12月21日(国際公開WO 01/45748として2001年6月28日に公開)に詳細に記載されている。HTV DNAワクチンプラスミドV1Jns−tpa−gag(6375bp)の構築は国際PCT出願PCT/US98/02293、出願日1998年2月3日(国際公開WO 98/34640として1998年8月13日に公開)に詳細に記載されている。
【0080】
HIV DNAワクチン培養物の振盪フラスコ培養およびそのDNA単離
V1Jns−tpa−gagのHlV DNAワクチン高生産体(−HP)および低生産体(−LP)のクローンを、国際出願PCT/US2005/002911(前出)に記載された標準高生産体スクリーンを使用して従来同様に単離した。凍結グリセロール予製液の25μlのアリコートを使用して250ml振盪フラスコ中の25mlのDME−P5に接種した。Kuehnerキャビネット振盪機で37℃、220RPMで細胞を一夜増殖させ、中期から後期の対数増殖期に採集し、DNA単離に使用した。V1Jns−tpa−polおよびV1Jns−tpa−nefの低生産体(−LP)クローンは、適応大腸菌DH5細胞を精製プラスミドDNAで最初に形質転換することによって調製した。形質転換体を回収してDME−P5に平板培養し、振盪フラスコ増殖用の5から10個の単個コロニーを選択した。対数増殖期の中期から後期に細胞を採取し次サイクルの接種に使用した。このようにして培養物を合計3回継代した。低生産体候補中でプラスミドDNAが増幅できないことは、国際出願PCT/US2005/002911(前出)に記載されているように振盪フラスコ中のフェッドバッチ培養によって確認されており、各構築物あたり1つのクローンを代表的低生産体として保存した。上述したように、これらの凍結グリセロール予製液の25μlのアリコートをフラスコ接種に使用し、DNA単離用培養物を採取した。Promega Wizard(登録商標)ゲノムDNA精製キット(Madison,WI)を使用して全DNAを単離した。DNAペレットを10mMのTris−HCl,pH8.5に再水和した。Qiagen Miniprep Spin Kit(Valencia,CA)を使用して高生産性および低生産性サンプルのおのおのからプラスミドDNAを単離した。
【0081】
制限断片長多型(RFLP)分析
非放射性修飾DIG−11−dUTPをPCRによってDNAに組込むために、PCR DIGプローブ合成キット(Roche Molecular Biosystems,Mannheim,Germany)を使用してIS1特異的プローブ(0.7Kb)を作製した。プライマーはSigma Genosys(The Woodlands,TX)から入手し、プラスミドpIS1を鋳型DNAとして使用した。プライマー配列は以下の通りであった:IS1−F2,5’−GGTAATGACTCCAACTTATTG−3’(配列1);IS1−R2,5’−GGTGATGCTGCCAACTTA−3’(配列2)。使用したPCR条件は製造業者の指示通りにした。DNA消化用制限酵素はNew England Biolabs(Beverly,MA)から購入した。各サンプルから消化した全DNAおよびプラスミド単独DNAを0.7%アガロースゲルで34V、4℃で一夜(〜16時間)処理した。Schleicher and Schull Turboblotter(登録商標) Rapid Downward Transfer System(Keene,NH)を製造業者のプロトコル通りに使用してDNAをNytran SuPerChargeナイロン膜に1時間転移させた。BioRad GS Gene Linker(登録商標)(Hercules,CA)を使用し150mJouleでUV照射することによってDNAが膜に架橋した。一夜温置を伴うフィルターハイブリド形成プロトコルに従ってDIG標識IS1プローブをサザンブロット上の標的DNAにハイブリド形成させた(Roche Molecular Biosystems,Mannheim,Germany)。プローブ−標的ハイブリッドを、抗DIGアルカリホスファターゼ抗体およびアルカリホスファターゼ基質CSPDを使用するエンザイムリンクト化学発光アッセイによって可視化した(フィルターハイブリド形成プロトコル、Roche Molecular Biosystems,Mannheim,Germany)。
【0082】
結果
V1Jns−tpa−polクローンのIS1 RFLPプロファイル
酵素AflIIおよびAgeIの組合せを使用してDNAワクチン構築物V1Jns−tpa−polの高生産体および低生産体クローンのIS1特異的RFLP分析用フラグメントを作製した。高生産体クローン(tpa−pol−HP)は国際出願PCT/US2005/002911(前出)に詳述された標準スクリーニング方法によって従来同様に単離され、凍結実用シードバイアルとして得られた。DME−P5中で増殖させた高生産体(tpa−pol−HP)および低生産体(tpa−pol−LP)培養物に由来の全DNAプレップを制限酵素AflIIおよびAgeIで消化し、各培養物から単離されたプラスミドDNAはAflIIで消化した。また対照として、予めDME−P5に適応させないLB培地中で増殖させたDH5細胞からゲノムDNAを単離した。サザンブロットを調製し、DIG標識IS1プローブとハイブリド形成させた(図3A)。DH5(レーン2)およびtpa−pol−HP(レーン4)のサンプルに6つのIS1含有フラグメントが出現する。最も低い分子量のバンドは他のバンドのほぼ2倍の強度を有しており、このバンドが2つ以上のIS1挿入配列を含有することを示唆する。しかしながらこのフラグメントは2Kb未満であり、2つの768bpのIS1挿入を収容できる十分な大きさではない。最も低い分子量バンドのほうが高い濃度であることは、オーバーラップするIS1含有バンドを示している、または、高分子量バンドに比べて小さいフラグメントのほうがNytran膜への転移効率が高いことを表す。従って、非形質転換DH5のIS1コピー数は6から7という小さい値であろう。tpa−pol−LPのIS1プロファイル(レーン6)は、DH5対照にもtpa−pol−HPサンプルにも見出されなかった2つの追加IS1陽性バンドを含有している。tpa−pol−LPプラスミド単独対照(レーン5)との比較に基づくと、これらの2つのうちの高いほうの分子量のバンド(7−8kb)がプラスミドDNAに符合する。しかしながら低いほうの3−4kbのバンドは他のサンプルでは全く観察されないので、tpa−pol−LPゲノム中に追加のIS1挿入部位が存在することを強く示唆する。
【0083】
V1Jns−tpa−nefクローンのIS1 RFLPプロファイル
酵素AflIIおよびAgeIを使用してV1Jns−tpa−nefクローンのIS1挿入をプロファイリングすると(図3B)、V1Jns−tpa−polクローン4で得られた結果と同様の結果が得られた。DH5対照(レーン2)およびtpa−nef−HP(レーン4)の双方で6つのIS1含有バンドが明白であり、最も小さいバンドが他のバンドよりも高い強度で存在する。tpa−nef−LPサンプル中では7つのバンドが可視化され、3番目に大きいバンドは他のバンドよりも明らかに高い強度を有している(レーン6)。このクローンをプラスミド単独サンプル(レーン5)に比較すると、IS1含有プラスミドはIS1を内包するゲノムDNAフラグメントに極めて近接していることが示される。従って、最も高い強度のバンドは実際には、プラスミドおよびゲノムのDNAフラグメントのバンドの重なり合いの結果である。しかしながら、DH5対照にもtpa−nef−HPサンプルにも見出されない3−4kbのバンドが残っており、これは上記のtpa−pol−LPサンプルで観察された未同定バンドとほぼ同じ大きさである。これは、低生産性ゲノム中のIS1挿入性突然変異の別の指標である。
【0084】
V1Jns−tpa−gagクローンのIS1 RFLPプロファイル
V1Jns−tpa−polおよびV1Jns−tpa−nefの双方の低生産体クローンのAflII−AgeI IS1プロファイルが低生産体のゲノム内部の追加IS1挿入部位を示したので、V1Jns−tpa−gagクローンについても試験し、突然変異が3つのV1Jns−tpa構築物全部に存在するか否かを判定した。しかしながらこの場合の高生産体および低生産体クローンのソースはV1Jns−tpa−polおよびV1Jns−tpa−nefとは違っていた。双方のクローンは何年も前に単離され、それ以来、実験用シード(ラボシードサンプル)として繁殖され、補給を伴う振盪フラスコ(SFF)発酵ステージで高生産体スクリーンの対照として役立てられてきた(参照:国際出願PCT/US2005/002911;前出)。従って、これらのクローンのDME−P5接触時間はtpa−polおよびtpa−nefクローンよりもはるかに長い。以前に評価された高生産体と同等の継代時間の凍結実用シードバイアル(実用シードサンプル)も分析のために取得した。RFLP結果は、双方の高生産体クローン由来の全DNAのIS1プロファイルが同様であることを示すが(図3C)、ラボシードサンプルには、実用シードサンプル中の3番目に大きいフラグメント(レーン4および5)よりもやや高い位置に不鮮明バンド(レーン7および8)が存在する。このバンドは高生産体ラボシードのプラスミド単独サンプル中にも存在し(レーン6)、従ってプラスミドDNAに起因すると考えられる。実用シードのプラスミド単独サンプル中では、もっと明るいバンドがかろうじて視認できる(レーン3)。このRFLP分析はQ−PCR結果に符合し(参照、後出、実施例4)、限定培地中の高生産体の培養時間の延長に伴ってIS1含有プラスミドの画分が増加することを示す。双方の高生産体サンプルのゲノムプロファイルは不適応DH5対照(レーン1)にも類似している。
【0085】
上述のtpa−polおよびtpa−nefサンプルに等価のtpa−gag低生産体は入手できなかったので、この場合にはラボシードだけを評価した(図3C)。RFLP結果は、tpa−pol−LPおよびtpa−nef−LPと同様に、tpa−gag−LP IS1プロファイル中にプラスミドDNAに対応しない追加バンドが存在することを示す(レーン10および11)。しかしながらこのバンドは2−3kbであり、他のクローンで観察されるものよりも小さい。tpa−polおよびtpa−nefと違って、IS1プローブはtpa−gag−LPサンプルから単離されたプラスミドDNAに結合しなかった(レーン9)。高生産体スクリーンのSFFステージ用低生産体対照という役割のtpa−gag−LPラボシードは、1mgの乾燥細胞重量(DCW)あたり<<1mcgのプラスミドDNAを終始産生するが、tpa−polおよびtpa−nefの低生産体は〜2mcgプラスミドDNA/mg DCWを含有していた。後者の値はランダムに選択した低生産体でより典型的である。従って、tpa−gag−LPに見出された挿入性突然変異はtpa−pol−LPおよびtpa−nef−LPに見出されたものとは違っている可能性があり、その結果として、クローンのプラスミドDNA増幅能力にいっそう大きい影響力を有しているコピー数抑制表現型が生じる。
【0086】
DME−P5に適応した大腸菌DH5のIS1 RFLPプロファイル
3つの異なるDNAワクチン構築物の高生産体および低生産体のIS1プロファイルは、全部の低生産体クローンがIS1挿入性突然変異を含有するが、高生産体は不適応DH5と同様であることを示す。適応の結果としてゲノムのIS1のコピー数が増加する可能性がある。これを試験するために、AflIIおよびAgeIによるゲノムDNAの消化後に不適応DH5およびDME−P5適応DH5の双方のIS1プロファイルを分析した(図3C)。RFLP結果は、2つの大腸菌ゲノムのIS1の場所に違いがないことを示す(レーン1および2)。従って、低生産体はゲノムのIS1挿入性突然変異に相関関係を有しており、この挿入は形質転換段階後に生じると考えられる。
【実施例3】
【0087】
V1Jnsプラスミド中のIS1トランスポゾン組込み部位
材料および方法
DME−P5中で繁殖したV1Jns−nefクローンNLB−5に由来のプラスミドDNAは実施例1に記載の手順で得られた。挿入非含有の完全プラスミドに相補的な合計16のオリゴヌクレオチドプライマーを順方向(8)および逆方向(8)の双方で〜700bp増加としてアニーリングするように設計した。第二セットのプライマーはIS1挿入配列の順方向端および逆方向端に特異的であった。一連のPCR反応を以下の構成に設定した:(i)16のV1Jns−nef特異的プライマーの1つと2つのIS1特異的プライマーの1つ、(ii)鋳型としてクローンNLB−5プラスミドDNA、(iii)HotStar Taq PCR Master Mix試薬(Qiagen)。PCR反応は標準プロトコルで行った。各サンプルを0.7%アガロースゲルで分析して増幅フラグメントを同定した。増幅フラグメントの存在はベクター−IS1接合を表す予備指標であるが、ミスプライミングイベント(擬陽性)の可能性は排除できない。使用したプライマーはプラスミドDNAの双方のストランドおよびトランスポゾンの可能な双方の挿入方向をカバーしたので、相補的ストランド上の同じ挿入の増幅に符合する第二増幅フラグメントの存在を使用して擬陽性の可能性を削減した。確認された増幅フラグメントのサイズが予備挿入マップを与えた。次に、pCR(登録商標)2.1−TOPO(登録商標)ベクター(Invitrogen)にクローニングするいくつかの増幅フラグメントを選択し、その後Applied Biosystems 310 Genetic Analyzerを使用して配列決定し、IS1挿入の正確な場所および配向を同定した。
【0088】
結果
1つのIS1特異的プライマーと1つのV1Jns特異的プライマーとによる一連のPCR反応を使用し、引き続いて増幅産物を配列決定し、NLB−5クローンを使用してIS1挿入場所を同定した(実施例1参照)。部分接合および完全接合の双方が分解され、配列決定によって、トランスポゾンが9bpの標的複製を挿入部位に産生することが確認された。11の非反復組込み部位が双方の配向のトランスポゾンの挿入と共に同定された。1つの挿入部位が双方の配向で観察された、全部の部位がネオマイシン耐性遺伝子nptIIのコーディング領域の85塩基対中またはその内部に存在していた。IS1挿入は、pUC19のampR遺伝子(bla)(New England Biolabs)をpUC4KのneoR遺伝子(nptII)(Amersham Pharmacia;Piscataway,NJ)で置換することによって構築されたpUC−neoクローンには見出されなかったので、ネオマイシン耐性遺伝子の存在だけではプラスミド分子に転位を誘発するために十分でない。
【実施例4】
【0089】
リアルタイムQ−PCRを使用するプラスミドコピー数に基づくIS1の相対的定量
菌株、DNAワクチンプラスミドおよび増殖培地−前出の実施例1および2参照。
プラスミド標準の構築
すべての分子生物学操作は標準プロトコル(Sambrookら,1989,前出)に従って行った。酵素はNew England Biolabs(Beverly,MA)から購入した。pUC−neoはpUC19のampR遺伝子(bla)(New England Biolabs)をpUC4KのneoR遺伝子(nptII)(Amersham Pharmacia;Piscataway,NJ)で置換することによって構築した。トランスポゾンを含有するプラスミドV1Jns−nefのサンプルからIS1の768−bp配列をPCR−増幅した。該フラグメントをpCR(登録商標)2.1−TOPO(登録商標)ベクター(Invitrogen)にクローニングしたIS1プラスミド標準pIS1を作製し、次いで制限酵素EcoRIを使用して切り出し、T4 DNAリガーゼを使用してpUC−neoのEcoRI制限部位に結合してプラスミド標準pnIQ1を作製した。部分的CMVプロモーターはV1Jns−nefから0.7KbのSpeI−SphIフラグメントとして抽出し、XbaIおよびSphIで二重消化したpnIQ1に結合させてプラスミド標準pnIQ2を作製した。23s rDNAのフラグメントは、GenBank(登録番号M25458)の大腸菌K−12配列用に設計された以下のプライマーを使用してDH5ゲノムDNAからPCR増幅した:23s−F1(5’−GGATCCAACCCAGTGTGTTTCGACAC−3’:配列9)および23s−R1(5’−GGATCCAGACAGGATACCACGTGTCC−3’:配列10)。結合を促進するために23s rDNAフラグメントの両端にBamHI制限部位(下線)を含ませた。0.3KbのPCRフラグメントをpCR(登録商標)2.1−TOPO(登録商標)ベクター(プラスミドp23sTA)にクローニングし、次いでBamHIで切り出し、pnIQ2のBamI部位に結合して最終プラスミド標準pnIQ3v2を作製した(図4)。このプラスミドは、完全IS1配列とCMVプロモーターおよび23s rDNA配列の部分とを含有しており、これらのすべてがQ−PCRアッセイの標的である。プラスミド標準のDNA濃度を、260nmのUV吸光度(A260=1〜50μg/mL)によって測定し、標準溶液を得るために103−108コピー/μLの希釈液を調製した。
【0090】
DH5(V1Jns−nef)の振盪フラスコ培養−前出の実施例2参照。
リアルタイム定量的PCR−配列検出プライマーおよびプローブは、Applied Biosystems(Foster City,CA)のPrimer Expressソフトウェアv.2.0を使用して設計された。非標識プライマーはSigma−Genosys(The Woodlands,TX)から購入し、蛍光標識プローブはApplied Biosystemsから購入した。TaqManプローブは、鋳型DNAのプライマー間にアニーリングするように設計し、リポーター色素6−カルボキシフルオレセイン(FAM)またはApplied Biosystemsが専有権をもつ色素“VIC”を5’端、6−カルボキシテトラメチルローダミン(TAMRA)を3’に含ませた。プライマーCMV−Q−F(5’−GTACGGTGGGAGGTCTATATAAGCA−3’;配列3)およびCMV−Q−R(5’−GGAGGTCAAAACAGCGTGGAT−3’;配列4)とVIC−標識TaqManプローブCMV−Q−P2(5’−VIC−TCGTTTAGTGAACCGTCAGATCGCCTG−3’−TAMRA;配列5)とはCMVプロモーターをマーカーとして用いてプラスミドDNAを定量するように設計した。プライマーIS1−Q−F(5’−AGGCTCATAAGACGCCCCA−3’;配列6)およびIS1−Q−R(5’−ACGGTTGTTGCGCACGTAT−3’;配列7)とFAM−標識TaqManプローブIS1−Q−P2(5’−FAM−CGTCGCCATAGTGCGTTCACCG−3’−TAMRA;配列8)とはIS1を定量するように設計した。CMVおよびIS1プライマー−プローブセットは、全プラスミドおよびトランスポゾンコピーを定量するために多重モードで使用した。
【0091】
残留ゲノムIS1の判定に使用する第二アッセイを進めるために、23s rDNAを定量するプライマーおよびプローブを以下のように設計した:23s−F1D(5’−GAAAGGCGCGCGATACAG;配列11)、23s−R1D(5’−GTCCCGCCCTACTCATCGA;配列12)およびFAM−標識TaqManプローブ23s−Pfam(5’−FAM−CCCCGTACACAAAAATGCACATGCTG−TAMRA;配列13)。残留ゲノムDNAアッセイでは23s rDNAおよびCMVプライマー−プローブセット(上記参照)を多重モードで使用した。
【0092】
PCRは20μL反応容量中に一定容量の10μLの2×Universal PCR Master Mix(Applied Biosystems)および2μLのサンプルDNA、および、種々の量のプライマーおよびプローブを使用して行った。384−ウェルプレートフォーマットを6つのpnIQ3v2標準の10倍希釈液と共に使用し、サンプルあたり4から6の重複を行った。サンプルの増幅および蛍光検出はABI 7900HT配列検出システム(Applied Biosystems)で以下の熱サイクル条件で行った:50℃で2分、95℃で10分、次いで、95℃で15秒、60℃で1分を40サイクル。
【0093】
リアルタイム定量的PCRの分析
ABI Prism 7900HT配列検出システム(SDS)v.2.0ソフトウェアを使用してデータ解析を完了した。PCR閾値サイクル数(CT)は、サンプルの蛍光がユーザー限定閾値限界に交差した増幅プロット上の点から計算した。絶対的定量実験では、コピー数対CTの標準曲線プロットを使用して鋳型コピー数を計算した。サンプルの相対的定量は、2−ΔΔCT法(Livak and Schmittgen,2001,Methods 25:402−408)を使用して行った。簡単に説明すると、内在基準に正規化され校正サンプルcbに相対的なサンプルqについて、
【0094】
【数1】
式中、
ΔCT=CT,X−CT,R、標的分子と基準分子との閾値サイクルの差、
ΔΔCT=ΔCT,q−ΔCT,cb、
XN=内在基準(R0)に相対的な標的の正規化量(X0/R0)、
E=反応の増幅効率。
【0095】
これらのコピー比アッセイで、IS1(または23s rDNA)は標的配列であった。CMVプロモーターは内在基準であった。全部の未知サンプルは標準物質であるプラスミド標準pnIQ2またpnIQ3v2に比較した(全標的のコピー比1:1)。この方法が正確であるためには、2つの仮定が妥当でなければならない。第一に、すべての反応の増幅効率がほぼ100%でなければならない。Primer Expressソフトウェアを使用するプライマーおよびプローブの設計はこの要件を満たす高効率試薬を産生した。第二に、標的および内在基準の双方の効率がほぼ同等でその差が0.1以下でなければならない。
【0096】
プラスミド定量の標的となるCMVプロモーターの配列妥当性検査
完全V1Jns−nefプラスミドのこれまでのスキャンでは11の非反復IS1挿入部位が同定され、これらはいずれもネオマイシン耐性遺伝子の翻訳領域の100塩基対中または内部に存在しCMVプロモーターから>550塩基対が除去されていた(実施例3)。このプロモーターがQ−PCR標的として(すなわち、IS1挿入非含有鋳型として)適性を有することを確認するためにV1Jns−nefのこの領域のIS1挿入を再度試験した。所期の増幅配列内部で挿入が生じるならば、CMVプライマーおよびプローブは結合せず、コピー数比の計算に有意な誤差が生じるであろう。トランスポゾンを含有することがわかっているV1Jns−nefのサンプルを鋳型DNAとして使用し、CMVプロモーターに相補的な3つのプライマーの1つとIS1の末端に特異的な2つのプライマーの1つとを用いてPCR反応を行った。挿入配列(768bp)よりも大きいアンプリコンはIS1−プラスミド連結を含有するであろう。しかしながら、プライマーの非特異的結合が擬陽性を生じるであろう。CMVプロモーター配列に沿った多数の点でプライマーを使用することによって、相補的プライマー対が類似結果を生じないならば非特異的結合に由来の増幅フラグメントは除去できる。0.7Kbよりも大きい5つのアンプリコンが得られたが、2つ以外は上記の判断基準によって非特異的結合の結果として除去された。最後の2つを配列決定し、IS1挿入がCMVプロモーターの上流のネオマイシン耐性遺伝子の翻訳領域またはその近傍の部位に存在することが知見された。2つの部位の1つは過去の記録がある。従って、CMVプロモーター領域は、トランスポゾンからの妨害を懸念することなくQ−PCRアッセイ中に蛍光プローブの標的として使用できる。
【0097】
単一反応および多重反応用プライマー−プローブ濃度の最適化
最小量の試薬で最低閾値サイクル(CT)が得られるように双方の標的配列セット用のプライマーおよびプローブの濃度を最適化した。双方のアッセイの単一反応および多重反応用のIS1、23s rDNAおよびCMVプロモーターなどのプローブ濃度は200nMに最適化された。CMV−Qプライマーは100nMという最適濃度でIS1/CMVおよび23s rDNA/CMVの双方のアッセイで多重化中のスペクトル干渉を減少させることが知見された。次に、pIS1またはp23sTAとV1Jns−tpa−gag(CMVプロモーター標的)との調節比混合物に対してCMVプライマー−プローブセットを用い、双方のアッセイのIS1および23s rDNA用の目標プライマー濃度を多重反応中の100から700nMまでの範囲で試験した。500nMのIS1−Qは、IS1−およびCMV−単独反応から決定したコピー比に比較したときにCMV−Qプライマーとの多重反応中に最も正確な結果を与え、200nMの23s rDNAプライマーは、23s rDNA/CMV多重反応中に同等の正確度を与えた(データ示さず)。
【0098】
Q−PCRアッセイ感度
IS1/CMVおよび23s rDNA/CMVの双方の多重Q−PCRアッセイの感度試験を行った。プラスミドDNAに相対的な23s rDNAの定量をスペクトル干渉が有意に阻害する点を決定するためには、23s rDNA/CMV Q−PCRコピー比アッセイで広い分析範囲にわたる23s rDNA対CMVフラグメント比を使用する必要がある。プラスミドがCMVプロモーター鋳型のソースであるならば、プラスミド調製物中の残留ゲノムDNAが試験できる比の範囲を限定する。従って、プラスミドV1Jns−tpa−gagのCMVプロモーター領域をPCR増幅し(プライマー5’−CACTGTTAGGAGCAAGGAGC−3’(配列14)および5’−TGACGACTGAATCCGGTGAG3’(配列15))、23s rDNA/CMV比を<1.7×10−5に減少させた。次に、増幅CMVプロモーターフラグメントをCMV鋳型として使用し1:1から1:105の23s rDNA/CMV比のサンプルを調製した。試験した全部のサンプルの単一および多重(CMVプライマー−限定)反応結果は同等であり、応答は5桁まで直線状であった(図5)。IS1/CMVの感度も同様にして、108コピーのCMVプロモーターフラグメント/μLに組合せた103−108コピーのpIS1/μLの混合物を使用して試験し、すべての比のサンプルについて単一反応および多重反応の双方で同等の結果を得た。従ってアッセイは、1コピーのCMVあたり1:105(0.001%)コピーのIS1または23s rDNAという定量限度が適正であった。
【0099】
Q−PCRアッセイ感度対アガロースゲル電気泳動−IS1トランスポゾンは、複合培地から限定培地にシフトされ〜30継代培養された培養物から単離したプラスミドV1Jns−nefの実験サンプル中で最初に観察された(実施例1参照)。これらの10個のクローン(サンプルNLB−1からNLB−10)に由来のプラスミドDNAのアガロースゲル電気泳動分析は、高分子量バンドの出現に基づいて少なくとも5つのクローンにトランスポゾンの存在を示した(図1Bの星印の付いたレーン;実施例1も参照)。10個のNLBサンプル全部をIS1/CMVコピー比アッセイで分析した(表1参照)。7つのサンプルが>1%のIS1−陽性プラスミドDNAを含有していた。視認できるトランスポゾンを含む5つのサンプルは>5%のIS1−陽性分子を含有していた。これらの結果は、アガロースゲルの臭化エチジウム染色で異常を可視化するためには5から10%のオーダのプラスミドDNAが変質しなければならないことを示す。
【0100】
【表1】
【0101】
要約
IS1/CMV Q−PCRコピー比アッセイは、DNAワクチンクローンの特性を解明するための有効なツールである。該アッセイは高度に特異的である。該アッセイは、特別設計のオリゴヌクレオチドプライマーおよび蛍光プローブを頼りにしてIS1トランスポゾン含有サンプル、IS5のような他のトランスポゾン含有サンプルおよびトランスポゾン陰性サンプルを容易に識別できる。23s rDNA/CMVコピー比アッセイの採用は特異性をいっそう強化し、IS1トランスポゾン活性の増加を正確に定量できる。Q−PCRテクノロジイによって与えられる高レベル感度は、少なくとも100コピー/μL(V1Jns−nefの場合0.6pg/ml)という低濃度の標的を検出すると共に。鋳型DNA濃度の6対数にわたるIS1転位の定量を可能にする。
【実施例5】
【0102】
ゲノムDNA中のIS1挿入性突然変異の同定
有力な高生産性クローンを単離する従来のスクリーニング方法は、28から30℃で約48時間温置後にコロンビア血液寒天プレートに出現する“グレー”クローンと“ホワイト”クローンとの形態学的差異を基盤とする(同時係属国際出願PCT/US2005/002911,前出参照)。線毛形成に関する遺伝子の挿入配列突然変異はコロニー形態学に影響を与えることが知られている(La Ragioneら,1999,FEMS Microbiol.Lett.175:247−253;Stentebjerg−Olsonら,2000,FEMS Microbiol.Lett.182:319−325)。さらに、fimA遺伝子の調節配列の1つの領域の逆位によって生じる位相転換も線毛の発現の違いに導く(Stentebjerg−Olesenら,2000,前出)。PCRを使用し、fimBEAオペロンおよびcsgB遺伝子中の挿入要素の存在をナイーブDH5細胞およびDME−P5適応DH5細胞中で28から30℃および37℃で試験した。適応細胞は血液寒天プレート上で28から30℃と37℃との間に形態学的転換を示す。従って、線毛遺伝子の違いはこの転換に相関関係を有するものであろう。双方の細胞の37℃の振盪フラスコ培養物と双方の温度の静止(血液寒天で増殖)培養物とから単離したゲノムDNAを使用すると、fimA位相転換についても挿入要素についてもサンプル間の違いは観察されなかった。それぞれ代表的な高生産体および低生産体であるtpa−gag−grayおよびtpa−gag−whiteのプロファイリングでも違いは観察されなかった。注目すべきは、IS1挿入が大部分のfimE遺伝子と上流配列とを含む増幅領域の制限消化物に基づいて同定されたことである(図6、領域P1’−P3’間)。この部位は、GenBankで入手可能な非病原性K−12株MG1655またはW3110の公表された大腸菌配列に報告されていない。周囲のAflIIおよびAgeI制限部位に基づくとこのIS1挿入を含有するフラグメントは〜2.3Kbまたは〜1.7Kbの長さであろう。後者のフラグメント長は形質転換菌株およびプラスミド非含有菌株の双方のRFLPプロファイルの最小バンドに符合する(実施例2参照)。挿入が全部のサンプルに見出され、関連フラグメントが以後のIS1特異的酵素による消化で同等のバンドを生成したので、観察されたコロニー形態学的差異の原因が挿入配列にあるとは考え難い。
【0103】
pMCS2クローニングベクターの構築
ネオマイシン耐性を与えるpUC19−に基づくベクターを構築した(pUC−neo)。pUC19(New England Biolabs)のampR遺伝子(bla)をpUC−4Kプラスミド(Amersham Pharmacia Biotech)から採取したkanR/neoR遺伝子(nptII)によって置換した。pUC19中のampR遺伝子は、制限酵素AhdI(Eam11051)およびSspIで消化することによって除去し、neoR遺伝子は制限酵素PstIで消化することによってpUC−4Kプラスミドから除去した。大腸菌DNAポリメラーゼのクレノウフラグメントを使用して双方のフラグメントに平滑末端を設けた。複製機構を含有する1.8kbのpUC19フラグメントとpUC−4Kに由来のnptII遺伝子を含有している1.2kbフラグメントをアガロースゲル電気泳動によって精製し、次いでT4 DNAリガーゼで結合した。得られたプラスミドをスクリーニングして出発bla遺伝子と同じ配向でnptII挿入を含むプラスミドを同定し、pUC−neoの構築を完成した。
【0104】
pMCS2を構築するために、EcoRI、AflIIおよびBamHI(5’から3’への方向)の制限部位を大腸菌のhisC遺伝子を増幅する順方向プライマーの5’端に組込んだ(MCS2−hisC−For:5’−GAATTCTTAAGATAGGATCCAAGGAGCAAGCATGAGCACC−3’;配列16)。hisC遺伝子はこのために任意に選択した。XbaI、AgeIおよびBamHI(5’から3’への方向)部位は同様にして逆方向プライマーに組込んだ(MCS2−hisC−Rev:5’−TCTAGACCGGTATGGATCCCGCGATCGATAAAAAGATAC−3’;配列17)。PCR増幅を使用し、AflIIとAgeIとを含有しBamHI部位間にhisC遺伝子が介在している新しいマルチクローニング部位から成る1.1Kbフラグメントを作製した。hisC遺伝子は長い結合性フラグメントを与えるために含有させたものであり、BamHI部位はこの遺伝子を除去してブルー/ホワイト選択用のlacZα ORFを回復するために使用した。得られたフラグメントをpCR2.1−TOPOベクター(Invitrogen,Carlsbad,CA)に結合させた。1.1KbのEcoRI−XbaIフラグメントを切り出し、pUC−neoに首尾よく結合させた。得られたプラスミドpMCS2−hisCをBamHIで消化してhisC遺伝子を除去し、最大(3.1Kb)のフラグメントをゲル抽出し再結合させてプラスミドpMCS2を形成した。上述のように、pMCS2マルチクローニング部位は、lacZα遺伝子の読み取り枠(ORF)を保存するように設計しブルー−ホワイト選択を維持した。pMCS2結合の形質転換体を、IPTGおよびX−galを補充したLB/neo寒天に回収すると、得られたコロニーはブルーであり、lacZ ORFが保存されていることを示した。次にベクターpMCS2を部分的配列決定して多重クローニング部位の構造を確認した。
【0105】
IS1挿入部位のスクリーニング
RFLP分析は、問題の挿入性突然変異がゲノムDNAを制限酵素AglIIおよびAgeIで消化したときの〜3および4Kbの制限フラグメントに存在することを示した(実施例2参照)。ゲノムDNAの挿入性突然変異の(1つ以上の)部位を同定する戦略は、以下の段階に従って関連クローンからゲノムDNAのライブラリーを収集しスクリーニングする操作から構成される。
1.IS1挿入性突然変異を示すと同定された低生産性クローンからゲノムDNAを抽出する。選択した方法次第では、ゲノムDNAの抽出によってプラスミドDNAを含む混合物が得られるであろう。
2.DNAをAflIIおよびAgeIで消化して先に同定した3から4KbのサイズのIS1含有制限フラグメントを作製する。
3.制限フラグメントのプールから所望サイズのフラグメントを抽出する。これは例えばフラグメントをサイズに基づいて分離するゲル電気泳動、次いで所望範囲のフラグメントを含有するゲル部分の切り出し、および切り出したゲルからのフラグメントの単離という順序で行うとよい。プラスミドDNAが出発ゲノムDNA調製物中に維持されているならば、所望のゲノムDNAフラグメントを混合物から単離して、直鎖化プラスミドDNAの再結合および形質転換に付随する高いバックグラウンドを除去しなければならない。
4.所望のフラグメントのプールを、制限酵素AglIIおよびAgeIで直鎖化したベクターの多重クローニング部位に結合させる。ベクターpMCS2はこの目的で作製した(上記参照)。結合させたプールを使用してコンピテント大腸菌細胞を形質転換させる。形質転換体は高速増殖および維持に好適な固体LBまたは他の複合培地で繁殖させることができる。
5.得られたライブラリーのスクリーニングはいくつかの方法で行うことができる。非限定例は、(a)IS1特異的Q−PCRアッセイの使用、および、(b)IS1プラスミド接合特異的コロニーまたはプラスミドPCRを含む。これらの有力なスクリーニング方法をより詳細に以下に記載する。
【0106】
ゲノムDNAライブラリーのIS1特異的QPCRアッセイ
上述のようにゲノムDNAライブラリーを構築するために作製されたベクターpMC32は、ネオマイシン耐性遺伝子(neoR)を含有している。pMC32ベクターに結合したIS1陽性ゲノムDNAフラグメントから構成されるライブラリーのプラスミドはIS1とneoRとを1:1比で含有するであろう。IS1陰性プラスミドは残留ゲノムDNAに由来のバックグラウンド量のIS1だけを含有するであろう。pMC32は高コピー数プラスミドなのでゲノムDNAに起因するIS1の画分はプラスミドDNAに起因する量に比べて少ないはずである。従って、実施例4に記載したものと同様のQ−PCRアッセイは精製プラスミドDNAまたは全細胞に対して実行できる。Q−PCRアッセイは以下のプライマー/プローブ配列を使用して多重モードでIS1:neoRコピー比を判定できると考えられる。
IS1プライマー/プローブセット:
IS1−Q−For:5’−AGGCTCATAAGACGCCCCA−3’(配列18);
IS1−Q−Rev:5’−ACGGTTGTTGCGCACGTAT−3’(配列19);および
IS1−Q−Probe:5’−VIC−CGTCGCCATAGTGCGTTCACCG−TAMRA−3’(配列20)
neoRプライマー/プローブセット:
neo−Q−For:5’−CAACCTATTAATTTCCCCTCGTCA−3’(配列21);
neo−Q−Rev:5’−CTGGCCTGTTGAACAAGTCTG−3’(配列22);および
neo−Q−Probe:5’−FAM−CCATGAGTGACGACTGAATCCGGTG−TAMRA−3’(配列23)。
【0107】
最初に多重最適化実験を行って、IS1およびneoの双方のプローブを200nMにしてIS1−Qプライマーは100nMおよびneo−Qプライマーは300nMという最適プライマー濃度を同定した。これらの条件は、100nMから400nMの範囲のneo−Qプライマー濃度を試験しながらIS1−Qプライマー濃度を100nMに限定することによって決定した。IS1−Qは多重プライマー最適化実験を通じて、特にneo−Qプライマー濃度を限定したとき、neo−Qにマイナスに影響することを示した。新しく最適化した値でもIS1−Qスペクトル干渉はまだneo−Q閾値サイクル(CT)値を0.1%IS1/neoコピー比で70%まで変化させるが、結果は十分にスクリーンに必要な許容差の範囲内である。
【0108】
IS1:プラスミド連結に特異的なコロニーおよびプラスミドPCR−全細胞および精製プラスミドDNAの双方がゲノムDNAを含有すると予想されるので、IS1陽性ゲノムDNAフラグメントがプラスミドライブラリーに存在するか否かにかかわりなく、IS1特異的PCRは全サンプルから増幅するという結果を与えると予想される。しかしながら、1つのプラスミド特異的プライマーと1つのIS1特異的プライマーとを使用するPCRは、組換プラスミドがIS1フラグメントを含有するときにのみシグナルを生じる。プラスミド特異的プライマーはいくつかの方法で設計できる。該プライマーは、トランスポゾンがフラグメントの対向末端の近くに存在するときに〜4Kbまでの不都合に大きいアンプリコンサイズを回避するために挿入部位(すなわち、AflII−AgeI認識部位)の近傍のプラスミドの領域にアニーリングできる。この場合、充分な増幅を確保するために、長い標的の増幅に有利な傾向のポリメラーゼを使用する。あるいは、異常に小さいフラグメントの増幅を避けるために、プライマーは挿入部位から除去された領域のどちらの側にもアニーリングできる。いずれの場合にも、IS1:プラスミド接合の同定にPCRを使用するアッセイでは、プライマー設計の際にIS1の異なる配向の可能性を考慮することが重要である。この問題の解決としては、双方の配向のトランスポゾン挿入の検出を確保するために、トランスポゾンの中央領域に相補的であるがどちらかの方向に伸長する2つのIS1特異的プライマーを使用する。内部プライマーの使用も少なくとも〜380bpの標的の増幅を確保する。このスクリーニングアッセイはIS1:プラスミド連結に特異的なので、全細胞(“コロニーPCR”)または精製プラスミドDNAで行うことができる。ゲノムDNAに存在するIS1がシグナルを返すとは考えられない。
【実施例6】
【0109】
高生産性クローン用のゲノムに基づく高スループットスクリーン
実施例2に開示したRFLPプロファイルは、低生産性DNAワクチンクローンとゲノムDNAのIS1挿入性突然変異との間の相関関係を示した。従って、高生産性クローンの高スループットスクリーンは、挿入性突然変異を内包しないクローンの選択および同定から構成されるであろう。このようなスクリーンには、例えば実施例5に記載のような突然変異/挿入部位の同定が必要であろう。その後、このスクリーニングプロセスのためにいくつかのアッセイを開発できた。
【0110】
TaqManのQ−PCRに基づく高スループットスクリーン
IS1突然変異を内包しない細菌クローンを同定するTaqMan Q−PCR高スループットアッセイの一例は、2つのプライマーと蛍光シグナル増幅用の1つの内部プローブとを必要とする(図7Aに概略図として示す)。IS1挿入突然変異がゲノムDNA内部に同定された単一の部位に局在するならば、TaqManプローブはゲノムのこの部分を認識するように設計できる。相補的プライマーを使用する増幅は、その結果として前述のようにプローブの分解に因る蛍光シグナルを蓄積するであろう(実施例4参照)。問題の部位のIS1挿入の存在は結合部位を破壊し、蛍光の蓄積を阻止するであろう。従って、有力な高生産性クローンは増幅シグナルを与えるが、低生産体は系の固有ノイズに起因するバックグラウンド蛍光だけを示すであろう。アッセイは多重化を必要とせず、全細胞溶解液を使用して行うことができるので、ゲノムDNA単離の必要性が削除される。TagManプローブは典型的には約15から約40ヌクレオチドの範囲の様々な長さを有し得る。従って、ゲノムDNA特異的プローブの適正結合を確保するためにIS1突然変異の同定ホットスポットは配列の狭い範囲、好ましくは10ヌクレオチド以内に局在しなければならない。
【0111】
IS1:ゲノム連結のPCRアッセイ
挿入部位がゲノムDNAの極めて狭い領域に局在していないならば、IS1:ゲノムDNA連結を同定するために内部プローブを使用しないPCRアッセイを使用できる。1つのプライマーはIS1挿入ホットスポットから除去された短いゲノムDNAにアニーリングするように設計できる。第二のプライマーはトランスポゾンにアニーリングしなければならない。挿入が存在するならば(すなわち、推定“低生産体”)、IS1:ゲノムDNA連結に対応する増幅フラグメントが産生されるであろう。目標サイズのフラグメントを同定するために得られた増幅産物を目視分析できる。あるいは、SYBR(登録商標) Greenのような色素をアッセイに加えてリアルタイムPCR計器を使用し、対応する蛍光増加に基づいて有力な高生産性クローンを同定できる(例えば、蛍光の欠如はIS1挿入の欠如−推定“高生産体”を表す指標である)。同様に、蛍光の指数関数的増加を測定するために蛍光発生LUXTMプライマー(Invitrogen)を使用できる。この場合、LUXTMプライマーに由来のシグナルは単一プライマーの伸長から発生するのでゲノム:IS1連結のないクローン中でも蛍光シグナルが予想されることに留意されたい。しかしながら、シグナル増幅フラグメントを産生する相補的プライマーが存在しないのでシグナルは指数関数的でなく一次関数的に増加する。
【0112】
増幅フラグメントを目視分析する必要性を回避するために、同定された挿入突然変異をゲノム中の7つの静止IS1コピーから十分に除去して擬陽性を防止しなければならない。実施例2に開示したRFLPプロファイルに基づくと、干渉を生じる突然変異に静止コピーが十分に近接していれば擬陽性は出現しない。このアッセイはまた、突然変異がどちらの配向でも挿入され得る可能性があることを考慮しなければならない。この分析は、内部IS1プライマーを双方の配向で使用することによって行うことができる。この場合、サンプル毎に2つの個別アッセイを行ってもよく、または、クローン集団を完全にスクリーニングするために2つのプライマーを同時に使用してもよい。
【実施例7】
【0113】
DNAワクチン産生用最適化菌株の構築
低生産性集団はIS1挿入性突然変異に相関関係を有しているので、IS1コピーのない大腸菌宿主菌株が高生産性クローンのより均一な集団を生じると考えられる。従って、高生産性クローンの収率を向上させる1つの戦略は、IS1コピー全部が除去された大腸菌の1つの菌株を構築し、この菌株をDNAワクチンベクターの繁殖に使用することである。P1ファージ形質導入、トランスポゾン媒介ランダム突然変異原性および普遍(RecA介在)相同的組換えを含む大腸菌の欠失的または破壊的突然変異を構築するためのいくつかの方法が存在する。これらの方法は典型的には、単一突然変異には適当であるが、多重突然変異では各突然変異に各1つの選択可能マーカー例えば抗生物質耐性が必要なので適当でない。代替方法は、所望破壊部位の周囲のフランキング配列に相同なプライマーに36−から50−ntの伸長をもつPCR産物と、ラムダ−Redリコンビナーゼとの使用を含む(Datsenko and Wanner,2000,PNAS 97:6640−6645)。この場合にもやはり選択可能マーカーを使用する。しかしながら、マーカーは後で除去することができ、追加の突然変異サイクルではその使用が免除される。残留“瘢痕”を除去する修正方法は、選択可能マーカーを除去するために内在二重鎖の破壊修復プロセスを利用する(Kolisnychenkoら,2002,Genome Res.12:640−647)。この方法は、44のうちの24の転位可能要素の除去を含みゲノムサイズが8.1%短縮した大腸菌のK−12株を産生するために使用された。この菌株では7つのIS1コピーのうちの3つが除去された。残りの4コピーの除去が菌株の生存適性またはフェッドバッチ発酵プロセスでの使用適性に有害な効果を与えない可能性は極めて高い。しかしながら、Kolisnychenkoらの修正方法は二重鎖の破壊修復プロセスにRecAを必要とするので大腸菌DH5株には適していないことに注目されたい。別の方法はグループIIイントロン、いわゆる“ターゲトロン”を使用して相補的配列の14−から16−nt領域に基づく突然変異を生じさせる(Zhongら,2003,Nucleic Acids Res.31:1656−1664)。この方法も選択可能マーカーを使用するが多重挿入ができるように後で除去できる。しかしながら、この方法は、上記の2つの方法のように標的部位の欠失を生じるのでなく破壊を生じるものである。この方法の使用は結果として、トランスポゾンによってコードされている主要トランスポザーゼ遺伝子(insAB)中に破壊された7つの非機能IS1コピーを内包する菌株を与えるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1A】図1Aは、LB増殖培養物(A)またはDME−P5増殖培養物(B)から単離したV1Jns−nefプラスミドDNA、NLB−1からNLB−10(左から右に)を示す。ゲル(A)中の各サンプルレーンは、10培養物の平均OD600が3.7に等しい1mlのQIAGEN培養プレップから採取した1μlのプラスミドを含む。サンプルNLB−10はレーン13の分子量マーカーに添加された。ゲル(B)中の各サンプルレーンは、10培養物の平均OD600が12.5に等しい1mlのQIAGEN培養プレップから採取した2μlのプラスミドを含む。(A)レーン1、5、9、13および(B)レーン1、7、13−New England Biolabs 1 Kb DNAラダー(0.5μl).scDNA−スーパーコイルドDNA。星印の付いたレーンは、視認できるISl陽性バンドを含む。
【図1B】図1Bは、LB増殖培養物(A)またはDME−P5増殖培養物(B)から単離したV1Jns−nefプラスミドDNA、NLB−1からNLB−10(左から右に)を示す。ゲル(A)中の各サンプルレーンは、10培養物の平均OD600が3.7に等しい1mlのQIAGEN培養プレップから採取した1μlのプラスミドを含む。サンプルNLB−10はレーン13の分子量マーカーに添加された。ゲル(B)中の各サンプルレーンは、10培養物の平均OD600が12.5に等しい1mlのQIAGEN培養プレップから採取した2μlのプラスミドを含む。(A)レーン1、5、9、13および(B)レーン1、7、13−New England Biolabs 1 Kb DNAラダー(0.5μl).scDNA−スーパーコイルドDNA。星印の付いたレーンは、視認できるISl陽性バンドを含む。
【図1C】図1Cは、選択したNLBサンプルのMluI消化を示す。レーン2、4、7、9、12−NLB−1、NLB−3、NLB−5、NLB−7、NLB−8;非消化。レーン3、5、8、10、13−NLB−1,NLB−3、NLB−5、NLB−7、NLB−8;消化。レーン1、6、11、14−New England Biolabs 1Kb DNAラダー(0.5μl)。
【図2A】図2Aは、選択されたサンプル由来のIS1のPCR増幅を示す。レーン2−LB増殖NLB−1。レーン3−DME−P5増殖NLB−1。レーン4−LB増殖NLB−2。レーン5−DME−P5増殖NLB−2。レーン6−LB増殖pUC19。レーン7−DH5ゲノムDNA。レーン8−DH5αゲノムDNA。レーン1、9−GibcoBRL 1Kb Plus DNAラダー(0.5μl)。
【図2B】図2Bは、NLB−1およびNLB−2のDME−P5増殖培養物から採取したプラスミドプレップを使用したPCR反応のMluI消化を示す。レーン2、3−NLB−1非消化、消化。レーン4、5−NLB−2非消化、消化。レーン1、6−GibcoBRL 1Kb Plus DNAラダー(0.5μl)。
【図2C】図2Cは、(C)DME−P5増殖または(D)LB増殖した細胞プレップを使用したNLB−3からNLB−10まで(左から右)のIS1のPCR増幅を示す。レーン1、6、11−GibcoBRL 1Kb Plus DNAラダー(0.5μl)。
【図2D】図2Dは、(C)DME−P5増殖または(D)LB増殖した細胞プレップを使用したNLB−3からNLB−10まで(左から右)のIS1のPCR増幅を示す。レーン1、6、11−GibcoBRL 1Kb Plus DNAラダー(0.5μl)。
【図3A】図3Aは、制限酵素AflIIおよびAgeIによるVlJns−tpa−polクローンのIS1 RFLPプロファイルを示す。レーン1−pIS1陽性対照。レーン2−非形質転換DH5対照。レーン3−tpa−pol−HPプラスミドDNA。レーン4−tpa−pol−HP全DNA。レーン5−tpa−pol−LPプラスミドDNA。レーン6−tpa−pol−LP全DNA。DIG標識分子量マーカーは図示されていないが露光時間の延長に伴って視認可能になる。
【図3B】図3Bは、制限酵素AflIIおよびAgeIによるVlJns−tpa−nefクローンのIS1 RFLPプロファイルを示す。レーン1−pIS1陽性対照。レーン2−非形質転換DH5対照。レーン3−tpa−nef−HPプラスミドDNA。レーン4−tpa−nef−HP全DNA。レーン5−tpa−nef−LPプラスミドDNA。レーン6−tpa−nef−LP全DNA。DIG標識分子量マーカーは図示されていないが露光時間の延長に伴って視認可能になる。
【図3C】図3Cは、制限酵素AflIIおよびAgeIによる非形質転換DH5およびVlJns−tpa−gagクローンのIS1 RFLPプロファイルを示す。レーン1−不適応の非形質転換DH5対照。レーン2−限定培地DME−P5に適応した非形質転換DH5。レーン3−tpa−gag−HP実用シードプラスミドDNA。レーン4、5−tpa−gag−HP実用シード全DNA。レーン6−tpa−gag−HP実験用シードプラスミドDNA。レーン7、8−tpa−gag−HP実験用シード全DNA。レーン9−tpa−gag−LPプラスミドDNA。レーン10、11−tpa−gag−LP全DNA。DIG標識分子量マーカーは図示されていないが露光時間の延長に伴って視認可能になる。
【図4】図4は、標準pnlQ3v2のプラスミドマップを示す。プライマーおよびプローブの結合部位が示されている。
【図5】図5は、23s rDNA/CMVコピー比アッセイの定量限度の決定を示す。(白丸)1つのプライマー−プローブセットとの反応から決定した比。(黒丸)2つのプライマー−プローブセットとの反応(多重)から決定した比。表示のコピー比を準備するためにプラスミドp23sTAおよびPCR−増幅CMVプロモーターフラグメントを鋳型として使用した。1:105コピー比までの直線性が定量限度を確立する。
【図6】図6は、fimBEAオペロンの概略図を示す(配列詳細に関してはGenBank Nucleotide Database Accession Number Y 10902参照)。オペロンの様々な領域をPCR増幅するために使用したプライマーの場所は、公表された報告書に基づいて選択されたプライマー場所P1’、P1’−Rev、P3’、P3’−Rev、P4’およびP5として示す(Stentebjerg−Olesenら,2000,FEMS Microbiol.Lett.182:319−325)。IS1挿入はプライマーP1’とP3’との間の領域で観察された。
【図7A】図7Aは、TaqManに基づく有力な高生産性細菌クローンの高スループットスクリーニングアッセイの概略図である。IS1挿入領域はゲノムDNAの少数のヌクレオチドの範囲である(“IS1挿入部位”)。
【図7B】図7Bは、PCRに基づく有力な高生産性細菌クローンのスクリーニングアッセイの概略図である。IS1挿入領域はゲノムDNAの多数の連続ヌクレオチドの範囲である(“IS1ホットスポット”)。7Bに示すアッセイでは、挿入の配向が双方向で可能であることを考慮して逆方向のIS1−特異的プライマーを使用する第二アッセイも行わなければならない。
【技術分野】
【0001】
本発明は、同じ菌株のクローナルサブタイプ間のIS1転位活性を比較する段階を含む、プラスミドDNAを内包する大腸菌(E.coli)の1つの菌株の高生産性クローナルサブタイプの選択方法に関する。該方法で相対的に低い転位活性を示すクローンは有力な高生産性クローナルサブタイプを表す。形質転換クローナルサブタイプのプラスミドDNAまたはゲノムDNAの内部のIS1トランスポゾン挿入性突然変異原性の頻度を測定するPCRに基づくアッセイが開示されている。これらの遺伝子選択アッセイは、高スループット分析が可能であり、大量のプラスミドDNAを工業規模で培養できる高生産性クローナルサブタイプを同定するために要する時間を短縮できる。
【背景技術】
【0002】
ポリヌクレオチドワクチンおよび遺伝子治療プロトコルの双方を治療用途に応用するためには医薬品質のプラスミドDNAの量産および精製が極めて重要である。従って、DNAワクチンおよび遺伝子治療という治療選択肢によって得られる筈の利点を十分に引き出して利用するためには高収率のプラスミドDNAの製造および精製方法が必要である(Shamlou,2003,Biotechnol.Appl.Biochem.77:207−218)。
【0003】
裸のDNAワクチンは十分に研究されたグラム陰性菌である大腸菌(“E.coli”)中でプラスミド分子として容易に繁殖する。しかしながら、DNAワクチン構築物による細菌の形質転換は、プラスミド含量に関して不均質なクローナルサブタイプ集団を生じる。この不均質集団からプラスミドDNAを高レベルで複製し維持できる形質転換大腸菌クローンを単離するために役立つスクリーンプロセスは以前から開発されている(参照、同時係属国際出願PCT/US2005/002911、出願日2005年1月31日;国際公開WO 2005/078115として2005年8月25日に公開)。簡単に説明すると、化学的限定培地中の形質転換大腸菌クローンの産生率は、コロンビア血液寒天上の形態学的表現型とゆるやかな相関関係を有していた。滑らかで隆起した白色の円形コロニーを形成したクローン(“ホワイト”クローン)はフェッドバッチ発酵でプラスミドDNAを増幅することができなかった。これに対して、扁平で半透明な灰色の不規則形コロニーを形成したクローン(“グレー”クローン)はプラスミドDNAを高レベルで複製したと考えられる。その後、固体および液体の双方の培地中の多数の培養サイクルによって所望の形態学を安定に示す“グレー”クローンを同定するためのスクリーニングプロトコル(以後の本文中で“高生産体スクリーン”と呼ぶ)が確立した。次に、振盪フラスコ中のフェッドバッチ培養後のプラスミド含量を判定するために形態学に関して安定であったクローンを試験した。
【0004】
高生産体スクリーンは、いくつかのDNAワクチン候補の高生産性クローンの単離に成功することはできたが、このプロセスには多大な労力および時間が必要である。固体限定培地上の増殖にはサイクルあたり3日から5日の温置期間が必要であり、また、アッセイプレートとして血液寒天の使用が必要であることはこのような培養が“行き止まり”であることを意味しており、形質転換体から発酵槽シードまでクローンが無血液培地中に維持されるように平行培養しなければならない。従って、本文中に開示したようなより確実で高速のスクリーニングプロトコルの開発を最終目的として、高生産現象の特性を解明するための実験を行った。本発明は、高生産現象の遺伝子基盤を理解することによって、プラスミド高生産性大腸菌クローナルサブタイプをより迅速に同定する改良スクリーニングプロトコルを開示する。プラスミド低生産性大腸菌DH5クローン中でIS1転位が増加しているという観察は、形質転換大腸菌クローンのプラスミドDNAおよびゲノムDNA中のIS1挿入性突然変異原性を測定するための様々なPCRに基づくアッセイの開発に導いた。本文中に記載したように、IS1挿入性突然変異原性を低頻度で有している同じプラスミドDNAを含有する同じ菌株のクローンが、有力なプラスミド高生産性クローナルサブタイプとして同定される。次に、この有力な高生産性クローナルサブタイプの比産生率を試験して、それらが実際に高プラスミドコピー数/細胞を示すことを判定し、その時点でプラスミド高生産性クローンであると同定する。
【発明の開示】
【0005】
発明の要旨
本発明は、一般に、プラスミドDNAを内包する大腸菌の1つの菌株の高生産性クローナルサブタイプの選択方法に関し、この方法は、該クローナルサブタイプのプラスミドDNAまたはゲノムDNAの内部のIS1トランスポゾン挿入性突然変異原性の頻度を測定する段階を含む。該方法において、IS1挿入性突然変異原性の増加が、低プラスミドコピー数/細胞(すなわち低い比産生率)を示すと考えられるクローナルサブタイプと相関関係を有している。重要なことは、本文中に記載したクローナルサブタイプのプラスミドおよび/またはゲノムDNA中のIS1転位を測定するアッセイは高スループット分析が可能であり、従って医薬品質のプラスミドDNAを大規模産生できる高生産性クローナルサブタイプの同定に要する時間が短縮されることである。
【0006】
本発明は、プラスミドDNAを内包する大腸菌の1つの菌株の高生産性クローナルサブタイプの選択方法に関し、この方法は、(a)同じプラスミドDNAを内包する同じ菌株の少なくとも2つのクローナルサブタイプのIS1転位活性を比較し、相対的に低い転位活性を示すクローナルサブタイプが有力な高生産性クローナルサブタイプを表す段階と、(b)該有力な高生産性クローナルサブタイプの産生率を試験する段階とを含む。ここにおいて、高生産性クローナルサブタイプは高プラスミドコピー数/細胞を示す。本発明の1つの実施態様において、クローナルサブタイプのIS1転位活性は、該クローンから単離したプラスミドDNAサンプル中のIS1トランスポゾンコピー数を測定することによって判定され、相対的に低いIS1トランスポゾンコピー数は相対的に低いIS1転位活性を示すクローンを表す。本発明の別の実施態様において、クローナルサブタイプのIS1転位活性は、該クローンのゲノムDNAの予め決定されたIS1挿入領域内部のIS1トランスポゾン配列の有無を測定することによって判定され、該予め決定された領域内部に1つ以上のIS1挿入配列が存在しないクローナルサブタイプは相対的に低いIS1転位活性を示すクローンを表す。
【0007】
本発明はさらに、プラスミドDNAを内包する大腸菌の1つの菌株の高生産性クローナルサブタイプの選択方法に関し、この方法は、(a)同じプラスミドDNAを内包する同じ菌株の少なくとも2つのクローナルサブタイプからプラスミドDNAを単離する段階と、(b)該単離プラスミドDNAサンプル中のIS1トランスポゾンコピー数を測定し、相対的に低いIS1トランスポゾンコピー数を示すクローナルサブタイプが有力な高生産性クローナルサブタイプを表す段階と、(c)該有力な高生産性クローナルサブタイプの産生率を試験する段階とを含む。ここにおいて、高生産性クローナルサブタイプは高プラスミドコピー数/細胞を示す。本発明によれば、プラスミドDNAを内包している大腸菌(DH5株を含むが、これに限定されない。)の菌株の高生産性クローナルサブタイプは、同様に試験した同じ菌株の非選択形質転換大腸菌サブタイプに比べて高いプラスミドコピー数/細胞を示す。本発明の1つの実施態様において、単離プラスミドDNAサンプル中のIS1トランスポゾンコピー数は、プラスミドコピー数に基づくIS1トランスポゾンコピーの相対量を測定するQ−PCRアッセイを非限定的に含む定量的PCR(“Q−PCR”)によって測定される。この実施態様において、プラスミドコピー数に基づくIS1トランスポゾンコピーの相対量は、記載のQ−PCRアッセイの一部として測定されたIS1トランスポゾンコピー数を表す。
【0008】
本発明の1つの実施態様において、Q−PCRアッセイが単離プラスミドDNAサンプル中のプラスミドコピー数に基づくIS1トランスポゾンコピーの相対量を測定するために使用される。該アッセイは、IS1ヌクレオチド配列内部に局在するプラスミドDNAの第一ヌクレオチド配列とIS1挿入が存在しないと予め決定されたプラスミドDNAの第二ヌクレオチド配列との双方を増幅する段階を含み、特定の大腸菌クローナルサブタイプのIS1トランスポゾンコピー数を表すIS1/プラスミドコピー比を生成する。このQ−PCRアッセイは単一反応管で第一および第二のヌクレオチド配列を同時に増幅する多重モードで行うことができ、変動性が少ない。IS1ヌクレオチド配列内部に局在するプラスミドDNAの第一ヌクレオチド配列は、核酸ポリメラーゼとならびに(i)IS1ヌクレオチド配列の第一場所にハイブリド形成する順方向PCRプライマー、(ii)第一場所の下流のIS1ヌクレオチド配列の第二場所にハイブリド形成する逆方向PCRプライマーおよび(iii)消去剤分子と固有発光極大にエネルギーを放出するフルオロホアによって標識された蛍光プローブから構成されるオリゴヌクレオチドセットとの存在下で増幅される。該プローブは第一場所と第二場所との間のIS1ヌクレオチド配列内部の1つの場所にハイブリド形成する。該核酸ポリメラーゼは、増幅中に蛍光プローブを消化して該フルオロホアを該消去剤分子から解離させ、フルオロホアと消去剤分子とが解離したときの蛍光変化が検出される。該蛍光変化はIS1増幅の発生に対応する。IS1挿入非含有と判定されたプラスミドDNAの第二ヌクレオチドも、核酸ポリメラーゼとならびに(i)第二ヌクレオチド配列の第一場所にハイブリド形成する順方向PCRプライマー、(ii)第一場所の下流の第二ヌクレオチド配列の第二場所にハイブリド形成する逆方向PCRプライマーおよび(iii)消去剤分子と固有発光極大にエネルギーを放出するフルオロホアによって標識された蛍光プローブから構成されるオリゴヌクレオチドセットとの存在下で増幅される。該プローブは第一場所と第二場所との間の第二ヌクレオチド配列内部の1つの場所にハイブリド形成する。該核酸ポリメラーゼは、増幅中に蛍光プローブを消化して該フルオロホアを該消去剤分子から解離させ、フルオロホアと消去剤分子とが解離したときの蛍光変化が検出される。該蛍光変化が第二ヌクレオチド配列増幅の発生に対応する。1つの実施態様において、IS1ヌクレオチド配列と共に増幅されるプラスミドDNAの第二ヌクレオチド配列は、プラスミドDNAのCMVプロモーター内部に局在するヌクレオチド配列を非限定的に含むプラスミドDNAのプロモーター配列内部に局在し、従って、IS1/CMVプラスミドコピー比が生成される。
【0009】
同じプラスミドDNAを内包している同じ菌株の少なくとも2つの細菌クローナルサブタイプ中のIS1トランスポゾンコピー数の測定後、上記に定義したように、相対的に低いIS1トランスポゾンコピー数を有していると判定されたクローナルサブタイプを“有力な”高生産性クローナルサブタイプとして同定する。次に、発酵系、好ましくは小規模発酵系で該クローナルサブタイプを培養することによって該有力な高生産性クローナルサブタイプの比産生率(すなわち、プラスミドコピー数/細胞)を試験し、同定されたこのクローンが実際に高生産性(すなわち、高プラスミドコピー数/細胞)を示すか否かを判定する。本発明の1つの実施態様において、この小規模発酵系は、栄養補給を伴う振盪フラスコ発酵系から成る(同時係属国際出願PCT/US2005/002911に詳細に記載、これは国際公開WO2005/078115として公開されている。)。小規模発酵系は理想的には、所望のプラスミドDNAを生成するように計画した大規模生産方法の模擬発酵方式である。
【0010】
本発明の1つの実施態様において、記載のQ−PCRアッセイで単離プラスミドDNAサンプル由来のIS1トランスポゾン配列を増幅するために使用される順方向および逆方向のPCRプライマーがそれぞれIS1−QF(配列6)およびIS1−Q−R(配列7)から成り、蛍光プローブがIS1−Q−P2(配列8)から成る。本発明の別の実施態様において、記載のQ−PCRアッセイで単離プラスミドDNAサンプル由来の第二ヌクレオチド配列を増幅するために使用される順方向および逆方向のPCRプライマーがそれぞれCMV−Q−F(配列3)およびCMV−Q−R(配列4)から成り、蛍光プローブがCMV−Q−P2(配列5)から成る。蛍光プローブはフルオロホアと消去剤分子との双方によって標識されている。
【0011】
本発明はさらに、細菌クローナルサブタイプから単離したプラスミドDNAサンプル中に存在する残留ゲノムDNAに起因するIS1トランスポゾンコピーの予測量を間接に計算する段階を含む上記同様のIS1定量PCRアッセイに関する。該アッセイにおいて、IS1トランスポゾンコピー数の予測量がIS1/プラスミドコピー数から減算され、補正IS1/プラスミドコピー比が生成する。本発明のこの部分の1つの実施態様において、プラスミドDNAサンプル中に存在する残留ゲノムDNAに起因するIS1トランスポゾンコピーの予測量は、第二のQ−PCRアッセイを使用して間接的に測定される。該アッセイは、プラスミドコピー数に基づく23s rDNAの相対量を測定し、23s rDNA/プラスミドコピー比を生成する。この23s rDNA/プラスミドコピー比をIS1/プラスミドコピー比から減算すると補正IS1/プラスミドコピー比が得られる。このQ−PCRアッセイは、23s rDNA配列とIS1挿入非含有と判定されたプラスミドDNAの同じヌクレオチド配列(前出)との双方を同時に増幅する多重モードで行うことができる。本発明の1つの実施態様において、ここに記載のQ−PCRアッセイで23s rDNA配列の増幅に使用される順方向および逆方向のPCRプライマーはそれぞれ23s−F1D(配列11)および23s−R1D(配列12)から成り、蛍光プローブは23s−Pfam(配列13)から成る。本発明の別の実施態様において、IS1挿入非含有と判定された配列はプラスミドDNAのCMVプロモーター領域に内包され、23s rDNA/CMVコピー比を与えるので、これをIS1/CMVコピー比から減算して補正IS1/CMVコピー比を生成する。
【0012】
本発明はまた、IS1挿入領域であると予め決定された細菌ゲノムDNAの領域内部の1つ以上のIS1トランスポゾン挿入配列の有無を検出する段階を含む、プラスミドDNAを内包する大腸菌の菌株の高生産性クローナルサブタイプの選択方法に関する。該IS1挿入領域内部にIS1トランスポゾン配列が存在しないクローナルサブタイプは有力な高生産性クローナルサブタイプを表す。予め決定されたIS1挿入領域内部に挿入されたIS1トランスポゾン配列の有無を検出できるPCRに基づくアッセイが開示されている。これらのアッセイは高スループット分析が可能である。従って本発明はさらに、プラスミドDNAを内包する大腸菌の1つの菌株の高生産性クローナルサブタイプの選択方法に関し、この方法は、(a)該クローナルサブタイプのゲノムDNAの予め決定されたIS1挿入領域内部のIS1トランスポゾン配列の有無を検出し、該IS1挿入領域内部にIS1トランスポゾン配列が存在しないクローナルサブタイプが有力な高生産性クローナルサブタイプを表す段階と、(b)該有力な高生産性クローナルサブタイプの産生率を試験する段階とを含み、高生産性クローナルサブタイプが高プラスミドコピー数/細胞を示す。
【0013】
別の実施態様において、大腸菌クローナルサブタイプのゲノムDNAの1つの領域内部のIS1挿入性配列の有無を検出するためにTaqManに基づくQ−PCRアッセイを使用する。このアッセイにおいて、ゲノムDNAの該領域は、IS1挿入を受容すると予め決定されており、該ゲノムDNAの約20未満の連続ヌクレオチドの範囲である(すなわち、“IS1挿入部位”を表す)。該IS1挿入領域の内部の特異的IS1挿入の有無を検出するQ−PCRアッセイは、核酸ポリメラーゼとならびに(i)消去剤分子と固有発光極大にエネルギーを放出するフルオロホアとによって標識されており、ゲノムDNAの該領域にIS1トランスポゾン配列が存在しないときにだけIS1挿入領域にまたがるゲノムDNA内部の1つの場所にハイブリド形成する蛍光プローブ、(ii)蛍光プローブの上流のゲノムDNAの1つの場所にハイブリド形成する順方向PCRプライマーおよび(iii)蛍光プローブの下流のゲノムDNAの1つの場所にハイブリド形成する逆方向PCRプライマーから構成されたオリゴヌクレオチドセットとの存在下で、該領域を含有するゲノムDNAの一部分を増幅する。該核酸ポリメラーゼは、増幅中に蛍光プローブを消化して前記フルオロホアを前記消去剤分子から解離させ、フルオロホアと消去剤分子とが解離したときの蛍光変化が検出され、該蛍光変化がゲノムDNAの増幅およびIS1挿入領域内部のIS1トランスポゾン配列の不在に対応する。このアッセイは多重化を必要とせず、全細胞溶解液を用いて行うことができるので、該クローンからゲノムDNAを単離する必要性が削除される。IS1挿入領域内部にIS1トランスポゾン配列が存在しないクローナルサブタイプを有力な高生産性クローナルサブタイプとして同定し、それらの比産生率を確認する試験を行う。
【0014】
本発明の別の実施態様において、大腸菌クローナルサブタイプのゲノムDNAの1つの領域内部のIS1挿入性配列の有無を検出するためにPCRに基づくアッセイを使用する。このアッセイでは、ゲノムDNAの該領域はIS1挿入を受容すると予め決定されており、この領域は該ゲノムDNAの約20以上の連続ヌクレオチドの範囲である(すなわち、“IS1挿入ホットスポット”を表す)。このPCRアッセイは、核酸ポリメラーゼとならびに(i)IS1挿入領域外部(すなわち、IS1挿入ホットスポットの外部)のゲノムDNAの1つの場所にハイブリド形成する第一のPCRプライマーおよび(ii)IS1トランスポゾン配列内部の1つの場所にハイブリド形成する第二のPCRプライマーから構成されるオリゴヌクレオチドセットとの存在下で、ゲノムDNAの1つの領域を増幅する。IS1挿入領域内部のIS1トランスポゾン配列の存在は、双方のPCRプライマーのハイブリド形成および増幅によるゲノムDNAの該部分の指数関数的増幅という結果を与える。IS1挿入領域内部のIS1トランスポゾン配列の不在は、第一PCRプライマーだけのハイブリド形成によるゲノムDNAの1つの鎖だけの一次関数的増幅という結果を与える。ゲノムDNAの指数関数的増幅はほぼ目標サイズの増幅核酸フラグメントを同定することによって目視検出する、または、二重鎖DNAに結合する核酸染料(例えば、SYBR(登録商標) Green)を添加することによってリアルタイムで蛍光検出できる。IS1挿入領域内部にIS1トランスポゾン配列が存在しないクローナルサブタイプを有力な高生産性クローナルサブタイプとして同定し、それらの比産生率を確認する試験を行う。
【0015】
本発明はさらに、プラスミドDNAを内包する大腸菌の1つの菌株の高生産性クローナルサブタイプを生成するための、該プラスミドDNAによる細菌株の形質転換に先立って細菌ゲノムからIS1配列の全コピーを除去するように大腸菌宿主株を変異させる段階を含む方法に関する。本発明はさらに、すべてのIS1コピーが除去された変異大腸菌宿主菌株(DH5菌株を含むが、これに限定されない。)、および、プラスミドDNAを繁殖させるための該菌株の使用に関する。
【0016】
ここに使用した“オリゴヌクレオチド”という用語は、ワトソン・クリック型塩基対合のようなモノマー対モノマー相互作用の規則的パターンによって標的ポリヌクレオチドに特異的に結合できる天然または修飾されたモノマーまたは連鎖の直鎖状オリゴマーを表し、デオキシリボヌクレオシド、リボヌクレオシドなどを含む。本発明ではオリゴヌクレオチドという用語がオリゴヌクレオチドプローブおよびオリゴヌクレオチドプライマーの双方を含む。
【0017】
ここに使用した“プライマー”という用語は、核酸鎖に相補的なプライマー伸長産物の合成が触媒される条件下に置かれたときに相補鎖に沿った合成起点として作用できるオリゴヌクレオチドを表す。このような条件は、適当な温度の適当なバッファ中の異なる4つのデオキシリボヌクレオチド三リン酸塩とDNAポリメラーゼまたは逆転写酵素のような重合誘導物質の存在を含む(“バッファ”は補因子となる成分、または、イオン強度、pHなどを左右する成分を含む)。本発明に使用されるオリゴヌクレオチドプライマーは例えば、精製した制限消化物中に存在するような天然産生プライマーでもよくまたは合成的に作製されてもよい。プライマーは最大増幅効率を与えるように一本鎖であるのが好ましい。
【0018】
本発明のフルオロホアに関して本文中に使用した“固有(unique)”という用語は、各フルオロホアが特定アッセイに使用された他のすべてのフルオロホアに比べて異なる発光極大にエネルギーを放出することを意味する。固有発光極大をもつフルオロホアを使用すると、特定アッセイに使用した複数のフルオロホアのおのおのによって放出された蛍光エネルギーを同時検出できる。
【0019】
ここに使用した“アンプリコン”という用語は、核酸ポリメラーゼと特異的プライマー対との存在下に核酸を含むサンプルのPCR増幅によって産生されるPCR反応の特異的産物を表す。
【0020】
ここに使用した“オリゴヌクレオチドセット”または“オリゴヌクレオチドのセット”という用語は、特異的標的ヌクレオチド配列にハイブリド形成する一対のオリゴヌクレオチドプライマーと1つのオリゴヌクレオチドプローブとの組合せを表す。該オリゴヌクレオチドセットは、(a)標的DNAの第一場所にハイブリド形成する順方向プライマーと、(b)同じ標的DNAの第一場所の下流の第二場所にハイブリド形成する逆方向プライマーとおよび(c)フルオロホアと消去剤とによって標識され標的DNAのプライマー間の1つの場所にハイブリド形成する蛍光プローブとから構成される。言い換えると、オリゴヌクレオチドセットは、特異的標的DNA配列例えばIS1トランスポゾン配列に特異的なアンプリコンの合成を開始できる特異的PCRプライマーのセットとアンプリコンにハイブリド形成する蛍光プローブとから構成される。
【0021】
オリゴヌクレオチドセット、オリゴヌクレオチドプライマーまたはオリゴヌクレオチドプローブに関して本文中に使用した“特異的にハイブリド形成する”という用語は、該オリゴヌクレオチドセット、プライマーまたはプローブが単一の標的DNAにハイブリド形成することを意味する。
【0022】
ここに使用した“遺伝子”という用語は、ポリペプチド鎖の産生に関与する核酸のセグメントを意味する。これは、翻訳された配列(コード領域)、5’および3’の非翻訳配列(非コード領域)、ならびに、個々のコードセグメント(エキソン)間の介在配列(イントロン)を含む。
【0023】
ここに使用した“フルオロホア”という用語は、レーザー、タングステン、水銀もしくはキセノンランプまたは発光ダイオードで励起されたときに限定スペクトルをもつ光の形態でエネルギーを放出する蛍光リポーター分子を表す。フルオロホアから放出された光は、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)のプロセスを介して、フルオロホアの発光スペクトルに部分的に重なる励起スペクトルをもつ第二分子を励起できる。フルオロホアから別の分子への放出エネルギーの移動がフルオロホアの発光を消去する。第二分子は消去剤分子として知られる。本文中では“フルオロホア”という用語を“蛍光リポーター”という用語と互換的に使用する。
【0024】
ここに使用した“消去剤”または“消去剤分子”という用語は、フルオロホアを含む蛍光プローブに連結されたときに、フルオロホアから放出されたエネルギーを受容しこれによってフルオロホアの発光を消去できる分子を表す。消去剤は、受容エネルギーを光として放出する蛍光剤でもよく、または、受容エネルギーを熱として放出する非蛍光剤でもよく、プローブの長さに沿ったいずれかの場所に付着できる。
【0025】
ここに使用した“プローブ”という用語は、標的領域すなわち検出すべき領域中の配列に対するプローブの少なくとも1つの配列の相補性によって標的核酸中の配列と共に二重鎖構造を形成できるオリゴヌクレオチドを表す。“プローブ”という用語は、付着したフルオロホアおよび消去剤分子を伴うかまたは伴わない上述のオリゴヌクレオチドを含む。“蛍光プローブ”という用語は、フルオロホアと消去剤分子とを含むプローブを表す。
【0026】
ここに使用した“FAM”は、フルオロホア6−カルボキシフルオレセインを表す。“JOE”はフルオロホア6−カルボキシ−4’,5’ジクロロ−2’,7’−ジメトキシフルオレセインを表す。“TET”はフルオロホア5−テトラクロロフルオレセインを表す。“VIC”はApplied Biosystemsによって開発された同社が専有権をもつフルオロホアを表す。“TAMRA”はフルオロホア6−カルボキシ−テトラメチル−ローダミンを表す。
【0027】
ここに使用した“RFLP”は制限断片長多型を表す。
【0028】
ここに使用した“DCW”は乾燥細胞重量を表す。
【0029】
ここに使用した“OD2ペレット”は1mLの溶液に再懸濁したときに600nmでOD=2を与える細胞集落を表す。
【0030】
(発明の詳細な説明)
プラスミドDNAを産生する大腸菌の高生産性クローンの新規な選択方法がここに開示されている。本発明の発明者/出願人は、IS1転位増加が低生産性細菌クローン集団に相関関係を有することを知見し、この情報を使用して、有力なプラスミド高生産性大腸菌クローナルサブタイプを同定するための遺伝子選択アッセイを組込んだ改良スクリーニング方法を創作した。次に、該有力な高生産性クローナルサブタイプが実際に高生産性である(すなわち、高いプラスミドコピー数/細胞を示す)ことを確認するためにそれらを評価する。重要なことは、新規な選択方法の一部として本文中に記載したアッセイが高スループット分析を可能にし、従って、高生産性クローンの同定に要する時間が短縮されることである。最後に、プラスミドDNAを含有する大腸菌の1つの菌株の高生産性クローナルサブタイプすなわち形質転換大腸菌クローンは、同じプラスミドDNAを含有する同じ菌株の非選択形質転換大腸菌クローナルサブタイプに比べてより高いプラスミドコピー数/細胞を示す能力を有すると定義される。この高生産性クローナルサブタイプは、例えば治療用ポリヌクレオチドワクチンおよび/または遺伝子治療プロトコルを用途とするプラスミドDNAの商業規模生産に使用できる。ここでは本発明の選択方法が大腸菌のDH5株を使用して例示される。しかしながらこの例示は、本発明の範囲を大腸菌DH5株に由来の高プラスミド生産性クローンの遺伝子選択だけに限定するものではない。本発明の選択方法を使用するために大腸菌の別の菌株を調達してもよいことが当業者には理解されよう。
【0031】
本発明は、多数のプラスミドDNAワクチン候補によって形質転換された大腸菌DH5細胞が培養異質性を示すこと、鑑別培地および/または化学的限定培地で平板培養されたときに形態学的に異なる少なくとも2つのコロニー表現型を示すという以前の観察に部分的に由来する。この現象はU.S.暫定出願No.60/541,894として2004年2月4日に出願された同時係属出願に詳細に記載されている。該出願はすでに放棄され、国際出願PCT/US2005/002911、出願日2005年1月31日、に対応している(国際公開WO 2005/078115として2005年8月25日に公開)。後者の記載内容は参照によって本発明に組込まれるものとする。各表現型のコロニー単離およびその後の試験が、発酵中のプラスミド増幅を増加でき臨床品質のプラスミドDNAを量産できる特異的表現型クローナル単離物の発見に導いた。この発見がPCT/US2005/002911(前出)に詳細に記載された本文中で高生産体スクリーンと呼ぶ高プラスミドコピー数/細胞を示す高生産性クローナルサブタイプを同定するスクリーニング方法の開発に導いた。高生産体スクリーンは、大腸菌の有力な高生産性クローナルサブタイプを単離する第一選択段階を含み、次いで、第一段階で単離した該有力な高生産性クローナルサブタイプを発酵系好ましくは小規模発酵系で評価してどのクローナルサブタイプが実際に高生産性であるかを判定する第二選択段階を含む。すなわち、第一選択段階は可能な高生産性大腸菌クローナルサブタイプのプールを縮小し、該プールが、同様の発酵条件で増殖させた非選択形質転換大腸菌細胞に比べてより大きいプラスミドコピー数/細胞を生じる能力を示す可能性が最も高いクローナル変異体だけを含むようにする。
【0032】
細菌クローナルサブタイプは科学文献に記載されている。キャンディダ・アルビカンス(Candida albicans)の表現型切換は遺伝子発現差異の直接結果として生じる(Soll,D.ら,1995,Can.J.Bot.73:1049−1057)。2つの不透明特異的遺伝子(PEP1およびOP4)ならびに1つの白色特異的遺伝子(WH11)は病原性キャンディダの白色から不透明への表現型切換に関与している。これは、キャンディダの毒性を伴い、一方比産生率が高いほうの細菌クローンを選択する場合にも同様の現象が存在する。ナイゼリア・メニンギチジス(Neisseria meningitidis)の病原性菌株でもコロニー変異体が同定された。この場合は、表現型の多様性はリポ多糖およびクラス5外膜タンパク質の菌株内異質性を伴っている(Poolman,J.T.ら,1985,J.Med.Microbiol.19:203−209)。大腸菌DH5の増殖および酵素活性に対するプラスミド存在の効果が、Mason,C.A.らによって記載され(1989,Appl.Microbiol.Biotechnol.32:54−60)、プラスミドコピー数が炭素代謝に関与する宿主細胞酵素の発現に直接影響を与えることを示している。従って、異なる増殖特性値をもつ大腸菌クローナルサブタイプの生成は、DNA形質転換プロセスによって誘導された変異または選択的濃縮培地中で細菌を培養することによって与えられたストレスなどを非限定的に含む様々のイベントの結果であろう。
【0033】
形質転換大腸菌DH5細胞中で以前から観察されていた細菌異質性は主要な2つのタイプのコロニーを示す(PCT/US2005/002911;前出に記載)。後にプラスミド高生産性クローンとして同定される可能性を少なくとも有しているクローンは、コロンビア血液寒天に平板培養し28−30℃で培養したときに表現型的に灰色コロニーを形成する(“グレー”クローン)。これらの“グレー”コロニーは、不規則形状、扁平および半透明である。これに比べて、形質転換大腸菌DH5細胞集団の主要成分によって形成されたコロニーは、コロンビア血液寒天に平板培養し28−30℃で培養したときに白色、円形で隆起し滑らかな組織を有している(“ホワイト”クローン)。これらの“ホワイト”クローンは、プラスミド低生産性大腸菌クローンであると同定された。“グレー”クローンによって形成される有力な高生産性クローナル単離物を表すコロニーは、化学的限定寒天培地で平板培養したときにプラスミド低生産性“ホワイト”コロニーから識別できない。有力な高生産性“グレー”クローンはコロンビア血液寒天(Colombia Blood Agar)プレートから直接精製できるが、ヒト治療用製品を製造する商業用発酵プロセスに使用される細胞と何らかの血液由来材料との接触を完全に避けることがしばしば望ましい。従って、有力な高生産性クローナルサブタイプ(“グレー”クローン)を精製するために、最終発酵プロセスに使用した最終“グレー”クローナルサブタイプがいかなる血液製品とも接触しないことを確保するためのある程度集約的な労力および時間を要する重複平板培養技術が開発された(PCT/US2005/002911;前出、に記載)。プラスミドDNAを内包する大腸菌の有力な高生産性クローナルサブタイプ(すなわち、“グレー”クローン)の選択後、高生産体スクリーンでこれらのクローナルサブタイプを評価し、第一選択段階で同定されたクローンが同じプラスミドで形質転換し同じ発酵条件下で増殖した同じ菌株の非選択大腸菌細胞の比産生率よりも大きい比産生率(すなわち、プラスミドコピー数/細胞)を実際に有するか否かを判定する必要がある。DNAプラスミドを内包する非選択大腸菌細胞の比産生率は、同じプラスミドDNAを内包する該細菌株のクローナル単離物集団の平均産生率を計算することによって容易に決定できる。
【0034】
当業者は、有力な高生産性細菌クローンを単離するために多くの異なる選択戦略が利用可能であることを理解されよう。PCT/US2005/002911(前出)に記載された高生産体スクリーンはいくつかのDNAワクチンプログラム用プラスミドを産生する高収率クローンの選択に極めて有用であることが立証されている。従って、形態学的表現型と高生産性クローン富化集団との相関関係はこのようなクローンの選択メカニズムを提供する。高生産体スクリーンはいくつかのDNAワクチン候補についての高生産性シード材料をもたらしたが、本発明の発明者/出願人は、スクリーニングプロセスの特性をより詳細に解明しおよびできれば改良するという意図で異質形質転換集団出現の背後にある理由の究明を試みた。本発明の発明者/出願人のこのような目的に沿う初期の1つの観察は、大腸菌DH5細胞の形質転換効率、すなわち、回収したプラスミド含有細胞の総数が、限定培地では複合ブロスよりも3桁も少ないことであった。従って、細胞を形質転換させ、成功した形質転換体の収率が最大になるように回収するという目的で、DH5宿主細胞を電気受容性にし、複合培地中でDNAワクチンプラスミドによって形質転換し、次いで限定培地に移すという実験を行った。しかしながら、限定培地での再適応および増殖延長の後、複数のクローンから抽出したプラスミドDNAの画分は大腸菌トランスポゾン配列IS1を含有することが判明した。プラスミドDNA含量を検査するために小規模発酵系で培養したとき(例えば栄養補給を伴う振盪フラスコ(“SFF”)系、PCT/US200S/002911;前出、に詳細に記載)、IS1転位の増加したクローンはすべて低生産体(上記のホワイトクローン同様)であると特性決定された。従って、IS1転位増加と低生産性集団との間に相関関係が存在すると考えられる。この情報を使用して有力なプラスミド高生産性大腸菌クローンの遺伝子選択を組込んだ本発明の代替的スクリーニングプロトコルを創作した。
【0035】
本発明は、同じプラスミドDNAを内包する同じ菌株のクローナルサブタイプ間のIS1転位活性を比較し、相対的に低い転位活性を示すクローナルサブタイプが有力な高生産性クローナルサブタイプを表す段階を含む、プラスミドDNAを内包する大腸菌の菌株の高生産性クローナルサブタイプの選択方法に関する。相対的に低い転位活性は、同じプラスミドDNAを内包する該細菌株のクローナル単離物の集団の平均転位活性を計算することによって容易に決定でき、この平均よりも低い転位活性を有すると判定されたクローナルサブタイプが相対的に低い転位活性を示すと同定する。従って本発明は、プラスミドDNAを内包する大腸菌の菌株の高生産性クローナルサブタイプの選択方法に関し、この方法は、(a)同じプラスミドDNAを内包する同じ菌株の少なくとも2つのクローナルサブタイプのIS1転位活性を比較し、相対的に低い転位活性を示すクローナルサブタイプが有力な高生産性クローナルサブタイプを表す段階とおよび(b)該有力な高生産性クローナルサブタイプの産生率を試験する段階とを含む。ここにおいて、高生産性クローナルサブタイプは高プラスミドコピー数/細胞を示す。
【0036】
本発明のこの部分の1つの実施態様において、IS1転位活性がクローナルサブタイプから単離したプラスミドDNAサンプル中のIS1トランスポゾンコピー数を測定することによって判定され、相対的に低いIS1トランスポゾンコピー数は相対的に低いIS1転位活性を表す。相対的に低いIS1トランスポゾンコピー数を有するクローンは、同じプラスミドDNAを内包する該細菌株のクローナル単離物の集団の平均IS1トランスポゾンコピー数を計算することによって容易に決定でき、該平均よりも低いIS1トランスポゾンコピー数を有すると判定されたクローナルサブタイプが相対的に低いIS1トランスポゾンコピー数を示すと同定される。本発明の別の実施態様において、IS1転位活性は、該クローナルサブタイプのゲノムDNA内部の予め決定されたIS1挿入領域内部の1つ以上のIS1トランスポゾン配列の有無を測定することによって判定され、IS1挿入配列の不在は、相対的に低いIS1転位活性を表す。IS1配列挿入を受容するクローナルサブタイプのゲノムDNA内部の特異的場所の正確な決定方法は後出の実施例5に詳細に記載する。
【0037】
本発明の1つの実施態様は、プラスミドDNAを内包する大腸菌の菌株の高生産性クローナルサブタイプの選択方法に関し、この方法は、該クローナルタイプのプラスミドDNA中のIS1トランスポゾン挿入性突然変異原性の相対量を測定する段階を含む。ここにおいて、IS1トランスポゾン挿入性変異原性の量が少ないことを有力な高生産性クローナルサブタイプの指標とする。従って、本発明の1つの実施態様は、プラスミドDNAを内包する大腸菌の1つの菌株の高生産性クローナルサブタイプの選択方法に関し、この方法は、(a)同じプラスミドDNAを内包する同じ菌株の少なくとも2つのクローナルサブタイプからプラスミドDNAを単離する段階と、(b)該単離プラスミドDNAサンプル中のIS1トランスポゾンコピー数を測定し、相対的に低いIS1トランスポゾンコピー数を示すクローナルサブタイプが有力な高生産性クローナルサブタイプを表す段階とおよび(c)該有力な高生産性クローナルサブタイプの産生率を試験する段階とを含む。ここにおいて、高生産性クローナルサブタイプは高プラスミドコピー数/細胞を示す。相対的に低いIS1トランスポゾンコピー数は、試験したクローナル単離物の集団の平均IS1トランスポゾンコピー数を計算することによって容易に決定でき、該平均よりも低いプラスミドIS1トランスポゾンコピー数を有すると判定されたクローナルサブタイプが相対的に低いIS1トランスポゾンコピー数を表すと同定される。あるいは、2つだけのクローナルサブタイプに由来のプラスミドDNAサンプルのIS1トランスポゾンコピー数を試験するならば、最も低いIS1トランスポゾンコピー数をもつクローンが相対的に低いIS1トランスポゾンコピー数を示すクローナルサブタイプを表す。
【0038】
IS1は細菌挿入配列のうちで最小であることがわかっている768塩基対の転位性要素である(Ohtsubo and Sekine,Transposable Elements,Ed.H.Saedler and A.Gierl,Berlin:Springer,1996,1−26)。IS1トランスポゾン配列の実例は、NCBI GenBank Nucleotide Databaseに登録番号X52534、X52537およびU49270(IS1A/IS1E);X17345およびX52535(IS1B/IS1C);X52536(IS1D);X52538(IS1F);およびV00609(包囲配列のないIS1のクリーンコピー)に見出すことができる。IS1は天然には、大腸菌ゲノム中にコピー数10以下で見出される。野生型K−12株では6から8コピーが同定されている(Deonier,Escherichia coli and Salmonella typhimurium:Cellular and Molecular Biology,Ed.F.Neidhardt,Washington D.C.:American Society for Microbiology,1987,2:982−989)。転位が生じると、通常は標的配列の9bpの複製が挿入部位に生成される(Ohtsubo and Sekine,1996,前出)。大腸菌に見出されるIS1は4つの型に群別できるが、IS1A/ISIE型(参照:Genbank登録番号X52534、X52537およびU49270)だけが染色体からプラスミドDNAに転位することを示した(Chen and Yeh,1997,FEMS Microbiol.Lett.36:275−280)。IS1は他の挿入配列よりはるかに高い頻度で自然挿入突然変異を生じ(Ohtsubo and Sekine,1996,前出)、プラスミドおよび染色体の双方のDNAの突然変異の原因物質であると同定された。例えば、このような突然変異は、毒性またはストレス誘発遺伝子の発現を(全面的または部分的に)抑制する(Nakamura and Inouye,1981,Mol.Gen.Genet.183:107−114;Nakahamaら,1986,Appl.Microbiol.Biotechnol.25:262−266;および、Toba−Minowa,1992,Gene 121:25−33)、調節要素または遠位転写リードスルーの破壊によって遺伝子発現を活性化する(Hall,1998,Mol.Biol.Evol.15:1−5;および、Kobayashiら,2001,J.Bacterial.183:2646−2653)、宿主細胞の重金属抵抗性を増す(Itohら,1994,J.Ferment.Bioeng.78:466−468)、ならびに、プラスミド分泌安定性を強化する(Chewら,1986,FEMS Microbiol.Lett.36:275−280)ことを示した。11の非反復挿入部位がDNAワクチン候補の1つのサンプル中で同定され、これらはいずれもネオマイシン耐性遺伝子nptIIの翻訳領域の100塩基対にまたはその内部に存在した(実施例3参照)。従って、IS1転位が高生産体および低生産体(すなわち、グレークローンおよびホワイトクローン)の分化に導く遺伝子突然変異を生じさせるメカニズムである可能性は極めて高い。
【0039】
プラスミドDNA中のトランスポゾンの存在は、アガロースゲル上の高分子量バンドとして注目されたのが最初である(実施例1参照)。IS1の標準増幅反応にいわゆる“不完全一致プライマー”を使用するエンドポイントPCRアッセイが使用された。これらのプライマーは、5’端から順次に9bpの非一致ヌクレオチド、7または9bpの完全一致ヌクレオチドから構成されていた。このようなプライマーを使用した結果として、鋳型DNA濃度が未決の閾値レベルを上回るならばIS1だけが増幅される濃度感受性アッセイが得られた。これらのアッセイは定性的結果だけを送達した。従って、トランスポゾン含量に関するいくつかのDNAワクチンクローンの挙動をより十分に特性決定する意図で、DNAワクチン候補内部(すなわち、プラスミドDNA自体の内部)のIS1コピーの相対量をプラスミドコピー数に基づいて測定する定量的PCR(“Q−PCR”)アッセイを設計した。このIS1/プラスミドQ−PCRアッセイは、形質転換大腸菌クローナルサブタイプから単離したプラスミドDNAサンプル中のIS1トランスポゾンコピー数の測定値を表すIS1/プラスミドコピー比を生成する。このアッセイは、PCR中に累積する特異的産物を検出できる蛍光発生TaqManプローブテクノロジイを利用する。蛍光は、蛍光発生プローブを消化し5’端のリポーター色素を3’端の消去剤色素から分離するTaq DNAポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ活性によって発生する。PCR処理の進行中にリポーター色素からの蛍光は指数関数的に累積され、リアルタイムでモニターされる。蛍光振幅をサイクル数に関してグラフ化し、振幅が閾値サイクル(CT)と呼ぶユーザー規定の整定値に到達した点によって定量が確定される。次に、サンプルプレート中の鋳型の一連の既知量から作成した外部標準曲線から鋳型DNAコピー数を外挿する、または、多重モードで処理し反応ウェルに基準鋳型の定量を組込むことによって相対的コピー数を決定する。プラスミド調製物中の残留ゲノムDNAに起因するIS1の予測量を計算するために第二の多重Q−PCRアッセイを同様にして開発した。このアッセイは、プラスミドDNAコピー数に標準化した大腸菌宿主細胞23s rDNAを定量し、23s rDNA/プラスミドコピー比を生成する。この23s rDNA/プラスミドコピー比をIS1/プラスミドコピー比から減算して、単離プラスミドDNAサンプル中の残留ゲノムDNAに起因すると予想されたIS1の増幅を算入した“補正”IS1/プラスミドコピー比を生成し、プラスミドIS1含量のより正確な読みを与える。これらのアッセイを使用すると、103−108コピー/μLの範囲のプラスミドDNAコピー数であるときにすべての標的の定量が直線状であり、100%(1:1)から0.001%(1:105)までの範囲のIS1/プラスミドコピー比を検出できることが知見された。このアッセイは高感度であるが、結果はアガロースゲルで視認可能にするためには5−10%のオーダのIS1画分が必要であることを示唆する。
【0040】
特定の理論に制約されないが、プラスミドDNAへのIS1挿入、特に、V1Jnsプラスミドで観察された(実施例3参照)ように、抗生物質耐性遺伝子内部で主として生じるこのような挿入がプラスミドコピー数に強い影響を与えたりまたはクローンの増幅特性に影響を与えたりすることは考えられない。しかしながら、プラスミドDNAに挿入配列が転位するとその結果として、IS1コピー数が増加し、転位がゲノムに逆戻りする能力が増加することは考えられる。この挙動は、1つの大腸菌株のカドミウム耐性の獲得で観察された(Itohら,1994;前出)。シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)のカドミウム耐性の原因となる遺伝子をクローニングする目的で、0.8Kbの挿入をもつpBR322を内包する耐性大腸菌形質転換体を作製した。宿主からプラスミドを除去してもカドミウム耐性は維持されていた。しかしながら、挿入はシュードモナス・プチダ由来のDNAでなく大腸菌のIS1であることが後になって同定された。染色体再編成も同定され、これは、プラスミドからゲノムに逆戻りしたIS1の転位が表現型を変化させたという結論に導く。従って、本文中に記載するように、いかなる特定の理論にも制約されないが、ゲノムからプラスミドDNAへのIS1の転位およびその逆戻りがプラスミド低生産性大腸菌クローナルサブタイプ形成の一因であり得る。
【0041】
上述のQ−PCRは、クローンに内包されているプラスミドDNA内部のIS1トランスポゾンコピー数を定量することによって細菌クローナルサブタイプ中のIS1挿入性突然変異原性の増加を間接に測定するために使用される。有意な転位活性をもつプラスミドDNAサンプルはすべてプラスミド低生産性クローンから単離されたものでありプラスミド高生産性クローンは低レベルのプラスミド由来IS1を含有していたという観察は、低生産性クローンがIS1挿入性突然変異と相関関係を有しているという提唱理論を裏付ける。以前から記載されていた高生産体スクリーンの第一選択基準は形態学的表現型の分析を含んでいたが、これはプラスミド増幅挙動の代用品でしかない。従って、本文中に記載したように、大腸菌クローナルサブタイプはさらに、IS1転位に関する安定性に従っておよびそれらの高いプラスミド力価の保存に従って特性決定できる。プラスミドDNAサンプル中のIS1を測定する記載のQ−PCRアッセイは、アガロースゲル電気泳動およびエンドポイントPCR分析の双方を凌駕するいくつかの重要な利点を提供する。第一に、アッセイが高度に特異的である。該アッセイは、IS1トランスポゾン含有サンプル、他のトランスポゾン(例えばIS5)含有サンプルおよびトランスポゾン陰性サンプルを、特別設計のオリゴヌクレオチドプライマーと蛍光プローブとに依存して容易に識別できる。第二に、Q−PCRテクノロジイによって提供される高レベル感度は、少なくとも100コピー/μL(例えばV1Jns−nefの場合0.6pg/ml)という低い濃度の標的を検出しながら鋳型DNA濃度の6対数以上までIS1転位を定量することが可能である。
【0042】
従って本発明は、プラスミドDNAを内包している大腸菌(大腸菌K−12株を非限定的に含む。)の菌株例えばDH5株の高生産性クローナルサブタイプを同定するための選択プロトコルに関する。このプロトコルは、同じプラスミドDNAを内包している同じ菌株の少なくとも2つのクローナルサブタイプから単離したプラスミドDNAサンプル中のIS1トランスポゾンコピーの相対量(すなわち、IS1トランスポゾンコピー数)を測定する段階とおよび相対的に低いIS1トランスポゾンコピー数を示すクローナルサブタイプを選択する段階とを含む。ここにおいて、相対的に低いIS1トランスポゾンコピー数を示すクローンが有力な高生産性クローナルサブタイプとして同定される。次に、有力な高生産性クローナルサブタイプの比産生率(すなわち、プラスミドコピー数/細胞)を評価して、それが実際に高生産性クローナルサブタイプであるか否かを判定する。このQ−PCRに基づく遺伝子選択方法は、同じプラスミドDNAを内包している同じ大腸菌の菌株の3つ以上のクローナルサブタイプの分析に使用できると考えられ、IS1トランスポゾンコピー数の数量範囲を生成する。このような場合、最も低いIS1トランスポゾンコピー数を示すクローナルサブタイプの比産生率だけでなく、アッセイにかけたクローンの平均IS1トランスポゾンコピー数よりも低いクローナルサブタイプの比産生率を処理可能な数のクローナルサブタイプについて評価するという選択もある。
【0043】
有力な高生産性クローナル単離物は発酵系、好ましくは小規模発酵系を使用して評価される。発酵系のサイズは使用すべき最終発酵プロセスのサイズにゆるやかに従属するであろう。例えば、“大規模”プラスミドDNA産生プロセス(すなわち、約1000Lよりも多い発酵量を収容でき、10,000から100,000Lの大きさの発酵容器を含み得る標準実験用バイオリアクターよりも多い全発酵量)に使用されるクローンの同定を支援するために、一般にはこの小規模評価段階で約250mLから約1Lの範囲のフラスコが使用される。小規模発酵系はまた、最終的商業用大規模発酵プロセスをシミュレートしなければならない。高生産体スクリーンを開示する同時係属出願(PCT/US2005/002911;前出)に詳細に記載されているように、有力な高生産性クローナル単離物は、発酵中の各フラスコに連続栄養補給が付随する栄養補給型振盪フラスコ(“SFF”)を使用する発酵系で評価できる。振盪フラスコ系は、クローナル単離物が約1000mL以下のバフル付き振盪フラスコ、好ましくは250mLのバフル付き振盪フラスコで培養される小規模発酵系を表す。1つの実施態様において、高プラスミドコピー数/細胞を示す高生産性クローナルサブタイプは約20μg DNA/μg DCW以上の比産生率を有すると判定される。比産生率を評価するために小規模発酵で典型的に使用される代替的測定方法は、1mLの溶液に再懸濁したときの600nmにOD=2を与える細胞集落を表すOD2ペレットに基づく。従って別の実施態様において、高プラスミドコピー数/細胞を示す高生産性クローナルサブタイプは約15μg DNA/μg OD2ペレット以上の比産生率を有すると判定する。
【0044】
上述したように、本発明はTaqMan PCRアッセイのような定量的PCR(“Q−PCR”)アッセイに関するものであり、DNAワクチン候補のプラスミドDNAサンプル内部のIS1トランスポゾンコピー数を測定するために該アッセイを使用する。該Q−PCRアッセイは、IS1ヌクレオチド配列内部に局在するプラスミドDNAの第一ヌクレオチド配列と、IS1挿入が存在しないと予め決定されたプラスミドDNAの第二ヌクレオチド配列とを増幅することによってプラスミドコピー数に基づくIS1トランスポゾンの相対量を測定し、大腸菌クローナルサブタイプから単離したプラスミドDNAサンプル中のIS1トランスポゾンコピーの数(すなわち、IS1トランスポゾンコピー数)を表すIS1/プラスミドコピー比を生成する。当業者は、IS1挿入を受容する確率の低いプラスミドDNA内部の場所を容易に同定できる(例えば、実施例3参照)。1つの実施態様においてアッセイを多重モードで行う。その結果として、第一(すなわち、IS1配列)および第二(すなわち、IS1非含有配列)のヌクレオチド配列を同一反応管で増幅することができ、変動性が小さい。PCR産物をリアルタイムで検出でき放射能の必要性を排除する5’エキソヌクレアーゼ蛍光発生PCRに基づくアッセイ(TaqMan PCR)は当業界で記載されている。参照文献は例えば、U.S.特許5,538,848;およびHollandら,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:7276−7280である。この方法は、蛍光リポーター(フルオロホア)と消去剤とを含みPCRプライマー間で標的DNAにハイブリド形成する標識プローブを利用する。フルオロホアが励起されると、フルオロホアによって蛍光シグナルが放出され、消去剤によって消去される。アンプリコンは、Taq DNAポリメラーゼの5’から3’への方向のエキソヌクレアーゼ活性によって検出できる。該ポリメラーゼは、PCRプライマーの伸長中に出会った二重鎖DNAを分解し、従ってプローブからフルオロホアを遊離する。その後、蛍光シグナルはもはや消去されないので、標的DNAの量に直接的に相関する蛍光シグナルが累積され、これは全自動蛍光計によってリアルタイムで検出できる。
【0045】
TaqMan PCR反応を実行する全自動蛍光計は当業界で公知であり、この特異的アッセイに適用できる。例えば、Bio−Rad Laboratories(Hercules,CA)製のiCyclerおよびStratagene(La Jolla,CA)製のMx4000がある。本発明の1つの実施態様において、本発明の一部として記載したQ−PCRアッセイをABI Prism(登録商標) 7900HT配列検出器(Applied Biosystems,Foster City,CA)で実行できる。この計器は、蛍光発光(波長に基づく)を電荷結合デバイス(CCD)カメラで予測空間パターンに分離するスペクトログラフを使用する。ABI Prism(登録商標) 7900HTの配列検出システムアプリケーションはCCDカメラから蛍光シグナルを収集し、データ解析アルゴリズムを適用する。
【0046】
本発明の一部として記載したQ−PCRアッセイに使用する核酸ポリメラーゼは、5’から3’への方向のエキソヌクレアーゼ活性を有していなければならない。いくつかの適切なポリメラーゼが当業界で公知であり、例えば、Taq(Thermus aquaticus)、Tbr(Thermus brockianus)およびTth(Thermits thermophilics)ポリメラーゼがある。Taq DNAポリメラーゼは本発明に使用するための好ましいポリメラーゼである。5’から3’への方向のエキソヌクレアーゼ活性は、PCRプライマーの伸長中に出会った二重鎖DNAの分解によって特性決定される。アンプリコンにアニーリングされた蛍光プローブは同様にして分解され、従ってオリゴヌクレオチドからフルオロホアを遊離する。フルオロホアと消去剤とが解離すると、フルオロホアによって放出された蛍光がもはや消去されないので、その結果として検出可能な蛍光変化が生じる。PCR産物の指数関数的増殖中にアンプリコン特異的蛍光がある点まで増加したとき、配列検出アプリケーションが、複合スペクトルに多成分化アルゴリズムを適用し、その後、該蛍光は非増幅サンプルのバックグラウンド蛍光から識別できる。ABI Prism(登録商標) 7900HT配列検出器はまた、サンプル用の閾値サイクル(CT)(蛍光が予め決定された閾値以上に増加するサイクル)を決定するソフトウェアアプリケーションを含む。PCR陰性サンプルは、実行された全サイクル数に等しいCTを有しており、PCR陽性サンプルは実行された全サイクル数よりも少ないCTを有している。
【0047】
本発明のオリゴヌクレオチドプローブおよびプライマーは、多くの方法によって合成できる。例えば、Ozakiら,1992,Nucleic Acids Research 20:5205−5214;Agrawalら,1990,Nucleic Acids Research 18:5419−5423である。例えば、オリゴヌクレオチドプローブは、ABI 3900 DNAシンセサイザー(Applied Biosystems,Foster City,CA)のような全自動DNAシンセサイザーで合成できる。得られるオリゴヌクレオチドのハイブリド形成効率に不利な影響を与えることがなければ、ホスホロチオエート、ホスホラミデートなどのような非天然主鎖基を生じる代替化学薬品も使用できる。
【0048】
本発明のPCR増幅段階は当業界で公知の標準技術によって実行できる(参照:例えばSambrook,E.F.ら,Molecular Cloning:A Laboratory−Manual,2nd edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989);U.S.特許4,683,202;およびPCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,Eds.Innisら,San Diego:Academic Press,Inc.(1990);これらの文献はいずれも参照によって本発明に組込まれるものとする)。PCRサイクル反復条件は典型的には、PCR反応混合物を約80℃から約105℃までの範囲の温度で約1から約10分間加熱することによって行う初期変性段階を含む。熱変性後に典型的には約20から約50サイクルの範囲の複数サイクルを行う。各サイクルは通常は、初期変性段階、プライマーアニーリング段階を順次に含み、プライマー伸長段階で終了する。あるいは、各サイクルが、約80℃から約105℃までの範囲の1つの温度での変性段階、次いで、約60℃から約75℃までの範囲のより低い温度でのプライマーアニーリング/伸長段階を含んでもよい。核酸ポリメラーゼ例えばTaqポリメラーゼによるプライマーの酵素伸長はその後のサイクルで鋳型として使用できる鋳型のコピーを産生する。誤ったプライミングおよび非特異的アンプリコンの生成を排除するために本発明の方法に組合せて“ホットスタート”PCR反応を使用するとよい。このために、本発明の好ましい実施態様において、核酸ポリメラーゼがAmpliTaq Gold DNAポリメラーゼであり、PCRサイクル反復条件が“ホットスタート”PCR反応を含む。該ポリメラーゼは、活性化までは不活性であり、PCRサイクル反復に先立ってPCR反応成分を95℃で約10分間温置することによって活性化できる。同様の初期温置段階を含むPCR方法は当業界で“ホットスタート”PCRアッセイとして知られている。
【0049】
本発明の1つの実施態様において、ここに記載したTaqMan Q−PCRアッセイ用のオリゴヌクレオチドプローブは長さ約15から40ヌクレオチドの範囲である。別の実施態様において、オリゴヌクレオチドプローブは長さ約15から30ヌクレオチドの範囲である。本発明の第三の実施態様において、オリゴヌクレオチドプローブは長さ約18から28ヌクレオチドの範囲である。本発明のオリゴヌクレオチドプローブの正確な配列および長さは、それが結合する標的ポリヌクレオチドの種類に部分的に左右される。結合場所および長さは特定の実施態様に適したアニーリングおよびメルティング特性が得られるように変更し得る。オリゴヌクレオチドプローブの3’末端は好ましくは阻止するようにまたは核酸ポリメラーゼによる伸長ができないようにする。DNAポリメラーゼはヌクレオチドを3’ヒドロキシルだけに付加できるが3’ホスフェートには付加できないので、このようなブ阻止は3’末端ヌクレオチドのリン酸化によって行うのが好都合である。
【0050】
本発明のフルオロホアは5’端、3’端またはどちらかの末端の内側を含むプローブのいずれかの場所でプローブに付着できる。すなわち、該フルオロホアはプローブがその検出を目的として設計された標的DNAにハイブリド形成できる特異的ヌクレオチド配列を含むヌクレオチドのいずれかに付着できる。本発明の1つの実施態様において、フルオロホアは特異的ヌクレオチド配列の5’末端ヌクレオチドに付着され、消去剤は、特異的ヌクレオチド配列の3’末端ヌクレオチドに付着される。本発明に使用されるフルオロホアは好ましくは、連結部分を介してプローブの3’炭素または末端5’炭素に付着するように誘導体化された有機蛍光色素である。消去剤分子もまた好ましくは有機色素であり、これは蛍光性でも非蛍光性でもよい。一般に、消去剤が蛍光性であるかまたはリポーターから移動してきたエネルギーを非放射状減衰によって放出するだけであるかにかかわりなく、消去剤の吸光バンドはリポーター分子の蛍光発生バンドと実質的に重なり合っていなければならない。励起リポーター分子からエネルギーを吸収するが放射状にエネルギーを放出しない非蛍光消去剤分子を“暗消去剤”または“非蛍光消去剤”と呼ぶ。
【0051】
いくつかのフルオロホア−消去剤の組合せが当業界で記載されている。参考文献は例えば、Pesceら,editors,Fluorescence Spectroscopy,Marcel Dekker,New York(1971);Whiteら,Fluorescence Analysis:A Practical Approach,Marcel Dekker,New 20 York(1970);などである。文献はまた、蛍光および非蛍光分子とそれらの対応光学特性を網羅したリストを与える参考書、例えばBerlman,Handbook of Fluorescence Sprectra of Aromatic Molecules,2nd edition,New York:Academic Press(1971)を含む。さらに文献のうちには、オリゴヌクレオチドに付加できる共通反応性基を介して共有結合するようにリポーター分子および消去剤分子を誘導体化するための広汎な指導書が存在する。参照:例えばU.S.特許3,996,345および4,351,760。代表的なフルオロホア−消去剤の組合せは、フルオレセインを含むキサンテン色素およびローダミン色素から選択し得る。オリゴヌクレオチドに付着する結合部位または結合性官能基として使用できるフェニル部分に置換基をもつこれらの化合物の多くの適当な形態が広く入手可能である。別のグループの蛍光化合物はアルファまたはベータ位にアミノ基を有しているナフチルアミンである。このようなナフチルアミノ化合物は、1−ジメチルアミノナフチル−5−スルホネート、1−アニリノ8−ナフタレンスルホネートおよび2−p−トルイジニル−6−ナフタレンスルホネートを含む。他の色素としては、3−フェニル−7−イソシアナトクマリン、アクリジン類例えば9−イソチオシアナトアクリジンおよびアクリジンオレンジ;N−(p−(2−ベンズオキサゾリル)フェニル)マレイミド;ベンズオキサジアゾール、Dスチルベン、ピレンなどがある。
【0052】
本発明の1つの実施態様において、フルオロホアおよび消去剤分子はフルオレセインおよびローダミン色素から選択される。これらの色素およびオリゴヌクレオチドに付着させる適当な連結方法は当業界で公知である。参照:例えばMarshall,1975,Histochemical J.7:299−303;およびU.S特許5,188,934。本発明の好ましい1つの実施態様において、フルオロホアは、6−カルボキシ−フルオレセイン(FAM);Applied Biosystems社が専有権をもつフルオロホアVIC;6−カルボキシ−4’, 5’−ジクロロ−2’,7’ジメトキシフルオレセイン(JOE);および、5−テトラクロロ−フルオレセイン(TET)から成るグループから選択される。本発明の別の実施態様において、消去剤分子は6−カルボキシ−テトラメチル−ローダミン(TAMRA)のような蛍光性である。好ましくは、例えばClontech Laboratories(Palo Alto,Calif.)から入手可能な、合成中にオリゴヌクレオチドに付着できる市販の連結性部分を使用する。
【0053】
本発明の1つの実施態様において、IS1/プラスミドコピー比は、IS1ヌクレオチド配列内部に局在するプラスミドDNAの第一ヌクレオチド配列とIS1挿入非含有と判定されたプラスミドDNAの第二ヌクレオチド配列とを増幅することによって決定される。この場合、プラスミドDNAの第一および第二のヌクレオチド配列が核酸ポリメラーゼとオリゴヌクレオチドセットとの存在下で個別に増幅される。第一ヌクレオチド配列の増幅に使用されるオリゴヌクレオチドセットは、(i)IS1ヌクレオチド配列の第一場所にハイブリド形成する順方向PCRプライマーと、(ii)第一場所の下流のIS1ヌクレオチド配列の第二場所にハイブリド形成する逆方向PCRプライマーとおよび(iii)消去剤分子と固有発光極大にエネルギーを放出するフルオロホアとによって標識された蛍光プローブとから構成され、該プローブは第一場所と第二場所との間のIS1ヌクレオチド配列内部の1つの場所にハイブリド形成する。第二ヌクレオチド配列の増幅に使用されるオリゴヌクレオチドセットは、(i)第二ヌクレオチド配列の第一場所にハイブリド形成する順方向PCRプライマーと、(ii)第一場所の下流の第二ヌクレオチド配列の第二場所にハイブリド形成する逆方向PCRプライマーとおよび(iii)消去剤分子と固有発光極大にエネルギーを放出するフルオロホアとによって標識された蛍光プローブとから構成され、該プローブは第一場所と第二場所との間の第二ヌクレオチド配列内部の1つの場所にハイブリド形成する。核酸ポリメラーゼは、増幅中に蛍光プローブを消化して該フルオロホアを該消去剤分子から解離させ、フルオロホアと消去剤分子とが解離したときの蛍光変化が検出され、該蛍光変化が第一および/または第二のヌクレオチド配列の増幅の発生に対応する。別の実施態様において、第一および第二のヌクレオチド配列が多重モードで同時に増幅される。
【0054】
本発明の別の実施態様において、IS1のヌクレオチド配列を増幅できる順方向および逆方向のPCRプライマーは、それぞれIS1−Q−F(5’−AGGCTCATAAGACGCCCCA−3’;配列6)およびIS1−Q−R(5’−ACGGTTGTTGCGCACGTAT−3’;配列7)から構成され、蛍光プローブはIS1−Q−P2(5’−CGTCGCCATAGTGCGTTCACCG−3’;配列8)から構成されており、該プローブは上述のようにフルオロホアと消去剤分子とによって標識されている。1つの実施態様において、IS1−Q−Fプローブの3’末端が消去剤分子TAMRAで標識され5’末端がフルオロホアFAMで標識されている。本発明のこの部分の別の実施態様において、IS1ヌクレオチド配列と共に増幅されるIS1挿入非含有と判定されたプラスミドDNAのヌクレオチド配列が、CMVプロモーター配列(例えばヒトCMVプロモーター)を非限定的に含むプラスミドDNAのプロモーター配列である。1つの実施態様において、CMVプロモーターのヌクレオチド配列を増幅できる順方向および逆方向のPCRプライマーは、それぞれCMV−Q−F(5’−GTACGGTGGGAGGTCTATATAAGCA−3’;配列3)およびCMV−Q−R(5’−GGAGGTCAAAACAGCGTGGAT−3’;配列4)から構成され、蛍光プローブはCMV−Q−P2(5’−TCGTTTAGTGAACCGTCAGATCGCCTG−3’;配列5)から構成され、該プローブは、上述のようにフルオロホアと消去剤分子とによって標識されている。1つの実施態様において、IS1−Q−Fプローブの3’末端が消去剤分子TAMRAで標識され5’末端がフルオロホアVICで標識されている。
【0055】
従って本発明はさらに、プラスミドDNAを内包する大腸菌の1つの菌株の高生産性クローナルサブタイプの選択方法に関し、この方法は、(a)同じプラスミドDNAを内包する同じ菌株の少なくとも2つのクローナルサブタイプからプラスミドDNAを単離する段階と、(b)第一クローナルサブタイプから単離したプラスミドDNAサンプル中のプラスミドコピー数に基づくIS1トランスポゾンコピーの相対量を定量的PCRアッセイによって測定し、該アッセイでIS1ヌクレオチド内部に局在するプラスミドDNAの第一ヌクレオチド配列とIS1挿入非含有と判定されたプラスミドDNAの第二ヌクレオチド配列とを増幅してIS1/プラスミドコピー比を生成する段階と、(c)第一クローナルサブタイプのIS1/プラスミドコピー比を同じプラスミドDNAを内包する同じ菌株の少なくとも1つの第二クローナルサブタイプのIS1/プラスミドコピー比に比較する段階と、(d)相対的に低いIS1/プラスミドコピー比を示すクローンを選択し、この相対的に低いIS1/プラスミドコピー比を示すクローンを有力な高生産性クローナルサブタイプとして同定する段階とおよび(e)該有力な高生産性クローナルサブタイプの産生率を試験する段階とを含む。ここにおいて、高生産性クローナルサブタイプは高プラスミドコピー数/細胞を示す。
【0056】
先に記載したように、第二の多重Q−PCRアッセイは、試験した大腸菌クローナルサブタイプのプラスミドDNAサンプル中の残留ゲノムDNAに起因するIS1の予測量を計算するために開発され、IS1転位活性の増加をより正確に定量することによって開示した遺伝子選択プロセスの特異性を増強できる。標準のプラスミドDNAの調製において、ゲノムDNAは変性タンパク質と共沈され、プラスミドDNAから分離され、廃棄される。従って、細菌細胞発酵物から単離されたプラスミドDNAサンプルは主としてプラスミドDNAを含み、少量のゲノムDNAが混入し得る。例えばQIAGENカラムで精製したプラスミドDNAは3.3重量%までのゲノムDNAを含有するであろう(Vilaltaら,2002,Analytical Biochem.301:151−153)。ゲノムDNAの混入は少量であろうが、本発明のQ−PCRアッセイは高感度なのでこの残留ゲノムDNA内部に局在するIS1トランスポゾンを検出できるであろう。本文中に記載のIS1/プラスミドコピー比アッセイは、プラスミドDNA内部に局在するIS1とゲノム/染色体DNA内部に局在するIS1とを識別できないので、ベースライン残留ゲノムDNAに起因するIS1の量を知るためにこの第二の多重Q−PCRを開発した。従って、本発明の1つの実施態様において、プラスミドDNAサンプル中に存在する残留ゲノムDNAに起因するIS1コピーの予測量が定量的PCRアッセイを使用して測定され、プラスミドコピー数に基づくIS1コピーの相対量(すなわちIS1トランスポゾンコピー数)を表す上述のIS1/プラスミドコピー比が、プラスミドDNAサンプル中に存在する残留ゲノムDNAに起因するIS1コピーの予測量を減算することによって補正される。上述のように、IS1/プラスミドコピー比アッセイはプラスミドに基づくIS1と染色体に基づくIS1とを識別できないので、Q−PCRアッセイは、残留ゲノムDNAに起因すると思われるIS1の量を補正するために、染色体DNA中のベースラインIS1と同様の量で存在すると考えられる染色体DNAの成分を測定する。例えば、大腸菌K−12ゲノム中には6から8コピーのIS1が存在し(Ohtsubo and Sekine,1996;前出)、発明者/出願人によるサザンブロット実験はDH5細胞中のIS1コピー数が6または7であることを示した(実施例2参照)。同様に、23s rDNA遺伝子が大腸菌ゲノム中に7コピー/細胞で存在する(Jinks−Robertson and Nomura,Escherichia coli and Salmonella typhimurium:Cellular and Molecular Biology,Ed.F.Neidhardt,Washington D.C.:American Society for Microbiology,1987,2:1358−1385)。従って、単離プラスミドDNAサンプル中の23s rDNAコピーの定量は、開示したQ−PCRアッセイで測定される残留ゲノムDNAに起因するIS1コピー数の適正な概数を与える。
【0057】
従って、本発明の1つの実施態様において、上述のように、IS1/プラスミドコピー比が、プラスミドDNAサンプル中に存在する残留ゲノムDNAに起因するIS1コピーの予測量を減算することによって補正され、この場合、プラスミドDNAサンプル中に存在する残留ゲノムDNAに起因するIS1コピーの予測量がQ−PCRアッセイで測定される。別の実施態様において、該Q−PCRアッセイは、23s rDNA配列内部のゲノムDNAのヌクレオチド配列とIS1/プラスミドコピー比を生成するために使用したIS1挿入非含有と判定されたプラスミドDNAの同じヌクレオチド配列とを増幅することによってプラスミドコピー数に基づく23s rDNAの相対量を測定して23s rDNA/プラスミドコピー比を生成し、これをIS1/プラスミドコピー比から減算して“補正”IS1/プラスミドコピー比を与える。
【0058】
本発明の別の実施態様において、23s rDNA/プラスミドコピー比は、23s rDNA配列内部のゲノムDNAのヌクレオチド配列とIS1挿入非含有と判定されたプラスミドDNAの同じヌクレオチド配列(すなわち、IS1/プラスミドコピー比を生成するときに増幅された第二ヌクレオチド配列)とを増幅することによって決定され、この場合、23s rDNA配列内部に局在するヌクレオチド配列および第二ヌクレオチド配列が、核酸ポリメラーゼとオリゴヌクレオチドセットとの存在下で個別に増幅される。23s rDNAヌクレオチド配列の増幅に使用されるオリゴヌクレオチドセットは、(i)23s rDNA配列の第一場所にハイブリド形成する順方向PCRプライマーと、(ii)第一場所の下流の23s rDNA配列の第二場所にハイブリド形成する逆方向PCRプライマーとおよび(iii)消去剤分子と固有発光極大にエネルギーを放出するフルオロホアとによって標識された蛍光プローブとから構成され、該プローブは第一場所と第二場所との間の23s rDNA配列内部の1つの場所にハイブリド形成する。第二ヌクレオチド配列の増幅に使用されるオリゴヌクレオチドセットは、(i)第二ヌクレオチド配列の第一場所にハイブリド形成する順方向PCRプライマーと、(ii)第一場所の下流の第二ヌクレオチド配列の第二場所にハイブリド形成する逆方向PCRプライマーと、(iii)消去剤分子と固有発光極大にエネルギーを放出するフルオロホアとによって標識された蛍光プローブとから構成され、該プローブは第一場所と第二場所との間の第二ヌクレオチド配列内部の1つの場所にハイブリド形成する。核酸ポリメラーゼは、増幅中の蛍光プローブを消化して該フルオロホアを該消去剤分子から解離させ、フルオロホアと消去剤分子とが解離したときの蛍光変化が検出される。ここにおいて該蛍光変化は、23s rDNA配列および/または第二ヌクレオチド配列の増幅に対応する。別の実施態様において、該23s rDNA配列および第二ヌクレオチド配列が多重モードで同時に増幅される。
【0059】
別の実施態様において、大腸菌ゲノムDNA内部の23s rDNAのヌクレオチド配列を増幅できる順方向および逆方向のPCRプライマーは、それぞれ23s−F1D(5’−GAAAGGCGCGCGATACAG−3’;配列11)および23s−R1D(5’−GTCCCGCCCTACTCATCGA−3’;配列12)から構成され、蛍光プローブは、23s−Pfam(5’−CCCCGTACACAAAAATGCACATGCTG−3’;配列13)から構成され、該プローブは上述のようにフルオロホアおよび消去剤分子の双方によって標識されている。1つの実施態様において、23s−Pfamプローブの3’末端が消去剤分子TAMRAで、5’末端がフルオロホアFAMで標識されている。本発明のこの部分の別の実施態様において、23s rDNAヌクレオチド配列と共に増幅されるIS1挿入非含有と判定されたプラスミドDNAのヌクレオチド配列が、CMVプロモーター配列(例えばヒトCMVプロモーター)を非限定的に含むプラスミドDNAのプロモーター配列であり、23s rDNA/CMVコピー比が生成される。
【0060】
本発明はさらに、プラスミドDNAを内包する大腸菌の菌株の高生産性クローナルサブタイプの選択方法に関し、この方法は、(a)同じプラスミドDNAを内包する同じ菌株の少なくとも2つのクローナルサブタイプからプラスミドDNAを単離する段階と、(b)第一プラスミドDNAサンプル中のプラスミドコピー数に基づくIS1トランスポゾンコピーの相対量を定量的PCRアッセイによって測定し、該アッセイがIS1ヌクレオチド配列内部に局在するプラスミドDNAの第一ヌクレオチド配列とIS1挿入非含有と判定されたプラスミドDNAの第二ヌクレオチド配列とを増幅してIS1/プラスミドコピー比を生成する段階と、(c)該第一プラスミドDNAサンプル中に存在する残留ゲノムDNAに起因するIS1トランスポゾンコピーの予測量を、プラスミドコピー数に基づく23s rDNAの相対量を測定する定量的PCRアッセイで計算し、該アッセイが23s rDNA配列内部に局在するゲノムDNAのヌクレオチド配列と段階(b)の第二ヌクレオチド配列との双方を増幅して23s rDNA/プラスミドコピー比を生成する段階と、(d)23s rDNA/プラスミドコピー比をIS1/プラスミドコピー比から減算して補正IS1/プラスミドコピー比を生成する段階と、(e)第一プラスミドDNAサンプルから得られた補正IS1/プラスミドコピー比を第二プラスミドDNAサンプルから得られた補正IS1/プラスミドコピー比に比較する段階と、(f)相対的に低い補正IS1/プラスミドコピー比を示すクローンを選択し、相対的に低い補正IS1/プラスミドコピー比を示すクローンを有力な高生産性クローナルサブタイプとして同定する段階とおよび(g)該有力な高生産性クローナルサブタイプの産生率を試験する段階とを含む。ここにおいて、高生産性クローナルサブタイプは高プラスミドコピー数/細胞を示す。本発明のこの部分の1つの実施態様において、IS1トランスポゾン挿入非含有と判定されたプラスミドDNAのヌクレオチド配列は、プラスミドDNAのプロモーター領域(CMVプロモーター領域を含むが、これに限定されない。)であり、従って例えばIS1/CMVおよび/または補正IS1/CMVコピー比が生成される。
【0061】
詳細に上述した遺伝子選択方法は、一方で、プラスミドDNAを内包する大腸菌サブタイプ中のIS1挿入性突然変異原性の程度がプラスミドDNA自体のIS1トランスポゾンコピー数を測定することによって評価される段階を含み、本発明はさらに、クローナルサブタイプのゲノムDNA中のIS1挿入性突然変異原性の増加を検出する段階を含む、プラスミドDNAを内包する大腸菌の菌株の高生産性クローナルサブタイプを選択するためのより進歩した方法に関する。高スループット分析が可能なPCRに基づくアッセイは、IS1挿入を受容すると予め決定されたゲノムDNAの領域(すなわち、“予め決定されたIS1挿入領域”)内部のIS1トランスポゾン配列の有無を検出すると期待される。この予め決定された領域内部のIS1トランスポゾン挿入の有無を非形質転換細菌株のゲノムDNAに存在するベースラインIS1トランスポゾンと混同してはならない。どちらかと言えばこの予め決定されたIS1挿入領域へのIS1挿入はプラスミドDNAによる細菌細胞の形質転換後に生じる。後出の実施例2で参照できるように、RFLPプロファイルは、低生産性DNAワクチンクローンと細菌ゲノムDNA内部のIS1コピー数の増加との間に相関関係があることを示す。従って本発明はさらに、クローナルサブタイプのゲノムDNAのIS1挿入領域として予め決定された領域(すなわち、“予め決定されたIS1挿入領域”)内部の1つ以上のIS1トランスポゾン挿入配列の有無を検出する段階を含む、プラスミドDNAを内包する大腸菌の菌株の高生産性クローナルサブタイプの選択方法に関する。この方法において、IS1挿入領域内部にIS1トランスポゾン配列が存在しないクローナルサブタイプは高生産性クローナルサブタイプを表す。
【0062】
この目的の本発明は、プラスミドDNAを内包する大腸菌の1つの菌株の高生産性クローナルサブタイプの選択方法に関し、この方法は、(a)該クローナルサブタイプのゲノムDNAの予め決定されたIS1挿入領域内部のIS1トランスポゾン配列の有無を検出し、該IS1挿入領域内部にIS1トランスポゾン配列が存在しないクローナルサブタイプが有力な高生産性クローナルサブタイプを表す段階と、(b)該有力な高生産性クローナルサブタイプの産生率を試験する段階とを含む。ここにおいて高生産性クローナルサブタイプは高プラスミドコピー数/細胞を示す。PCR(定量的PCRアッセイ(“Q−PCR”)を含むが、これに限定されない。)に基づくアッセイは、ゲノムDNAの該所定IS1挿入領域の内部のIS1トランスポゾン配列の有無を検出するために使用できる。細菌クローナルサブタイプのゲノムDNA内部のIS1挿入領域の場所を決定するプロセスは後出の実施例5に詳細に記載する。
【0063】
本発明の1つの実施態様において、大腸菌の形質転換後のIS1挿入を受容すると予め決定された大腸菌クローナルサブタイプのゲノムDNAの部分の内部のIS1挿入性突然変異原性を検出するためにQ−PCRアッセイを使用する。この予め決定されたIS1挿入領域は該ゲノムDNAの約20未満の連続ヌクレオチドの範囲である。該IS1挿入領域が該ゲノムDNAの約20未満の連続ヌクレオチドの範囲であるとき、ここで該領域を特異的“IS1挿入部位”と呼ぶ。TaqMan Q−PCRアッセイは、この予め決定されたIS1挿入領域(すなわち、IS1挿入部位)を含有するゲノムDNAの部分の増幅を試みることによってこのIS1挿入部位内部のIS1挿入配列の有無を検出するように意図されている。考察アッセイの概略図を図7Aに示す。IS1挿入部位にまたがるように設計された蛍光プローブを使用するならば予め決定されたIS1挿入部位にIS1挿入配列が全く挿入されていないときだけ正常な増幅およびシグナル発生が存在する。
【0064】
従って本発明の1つの実施態様において、核酸ポリメラーゼとならびに(i)消去剤分子と固有発光極大にエネルギーを放出するフルオロホアとによって標識されておりゲノムDNAのIS1挿入領域内部にIS1トランスポゾン配列が存在しないときにだけIS1挿入領域にまたがるゲノムDNA内部の1つの場所にハイブリド形成する蛍光プローブ、(ii)蛍光プローブの上流のゲノムDNAの1つの場所にハイブリド形成する順方向PCRプライマーおよび(iii)蛍光プローブの下流のゲノムDNAの1つの場所にハイブリド形成する逆方向PCRプライマーから構成されたオリゴヌクレオチドセットとの存在下で、IS1トランスポゾン領域を受容することが予め決定されたゲノムDNAの領域を増幅する段階を含む定量的PCRアッセイを意図する。蛍光プローブがゲノムDNAにハイブリド形成したときに、核酸ポリメラーゼは、増幅中の蛍光プローブを消化して該フルオロホアを該消去剤分子から解離させ、フルオロホアと消去剤分子とが解離したときの蛍光変化が検出される。この蛍光変化は、ゲノムDNAの増幅に対応し、したがって、IS1挿入部位がIS1トランスポゾン配列を含有しないことを確証する。このように、蛍光の変化は、有力な高生産性クローナルサブタイプの同定を表し、したがって、それが実際に高生産性クローンであるか否かを確認するためにその比産生率を小規模発酵系で評価できる。あるいは、推定低生産性クローン(すなわち、予め決定されたIS1挿入部位内部にIS1トランスポゾンを含有するクローン)のゲノムDNAに順方向および逆方向PCRプライマーだけのハイブリド形成が生じるとき、ゲノム鋳型は容易に増幅されるが、蛍光プローブはIS1挿入部位にハイブリド形成できないので、蛍光シグナルは検出されない(図7A)。重要なことは、このアッセイが多重化を必要としないこと、および、全細胞溶解液で行うことができるのでゲノムDNA単離の必要性が削除されることである。このアッセイに使用するTaqManプローブは典型的には約15から約40ヌクレオチドの範囲の長さなので、ゲノム特異的プローブの適正な結合を確保するためには、同定されたIS1挿入部位がゲノムDNA配列の比較的狭い領域、好ましくは約20未満のヌクレオチド内部に局在しなければならない。
【0065】
本発明の別の実施態様において、形質転換後にIS1挿入を受容することが予め決定された大腸菌クローナルサブタイプのゲノムDNAの部分内部のIS1挿入性突然変異原性の増加を検出するためPCRに基づくアッセイを使用する。この予め決定されたIS1挿入領域は該ゲノムDNAの約20以上の連続ヌクレオチドの範囲である。意図されたアッセイの概略図を図7Bに示す。該IS1挿入領域が該ゲノムDNAの約20ヌクレオチド以上の範囲であるならば、ここではこの領域を“IS1挿入ホットスポット”と呼ぶ。意図されたPCRアッセイは、IS1挿入領域の外部(すなわち、IS1挿入ホットスポットの外部)のゲノムDNAの1つの場所にハイブリド形成する1つのPCRプライマーと、IS1挿入ホットスポットの内部に局在するゲノムDNAのIS1トランスポゾン配列にハイブリド形成する第二のPCRプライマーとを使用する。双方のプライマーのハイブリド形成は、ほぼ既知の目標鎖長のプライマー鋳型のフラグメントの指数関数的増幅を生じ、したがって、推定低生産性クローンの同定という結果を与える。あるいは、IS1挿入ホットスポット内部のIS1トランスポゾン配列が存在しないと、1つのプライマーだけがゲノムDNAにハイブリド形成し、鋳型DNAの1つの鎖の一次関数的増幅を生じ、したがって、有力な高生産性クローナルサブタイプの同定という結果を与える。理論的にはIS1挿入ホットスポット内部のIS1トランスポゾン配列にハイブリド形成すると意図された第二PCRプライマーが、該挿入ホットスポット外部のIS1トランスポゾン配列(すなわち、非形質転換細胞のゲノム内部に存在するベースラインIS1トランスポゾン)にハイブリド形成することもあり得るが、2つのPCRプライマーがハイブリド形成するゲノムDNA内部の特異的場所およびIS1ホットスポットの場所を知ることによって、推定低生産性クローンから増幅されたDNAの目標鎖長は、該アッセイを全細胞溶解液または精製ゲノムDNAを使用して行うときに容易に概算できる。
【0066】
従って、本発明の1つの実施態様において、(i)IS1挿入領域外部(すなわち、IS1挿入ホットスポットの外部)のゲノムDNAの場所にハイブリド形成する第一PCRプライマーと、(ii)所定IS1挿入領域のIS1トランスポゾン配列内部の場所にハイブリド形成する第二PCRプライマーとから構成されるオリゴヌクレオチドセットを使用し、予め決定されたIS1挿入領域内部のIS1トランスポゾン配列の有無を検出するPCRアッセイが意図されている。このアッセイでは、IS1挿入領域内部のIS1トランスポゾン配列の存在は双方のPCRプライマーのハイブリド形成および増幅による該ゲノムDNAの指数関数的増幅という結果を与え、IS1挿入領域内部のIS1トランスポゾン配列の不在は第一のPCRプライマーだけのハイブリド形成および増幅によるゲノムDNAの一本鎖だけの一次関数的増幅という結果を与える。ゲノムDNAの指数関数的増幅は、ほぼ目標サイズの増幅核酸フラグメントの同定によって目視検出される、または、二重鎖増幅DNAに結合する核酸染料(例えばSYBR(登録商標) Green)を添加することによってリアルタイムで蛍光的に検出できる。あるいは、蛍光発生プライマー(例えばLUXTMプライマー(Invitrogen))を使用して蛍光の指数関数的増加を測定できる。IS1挿入ホットスポット内部にIS1トランスポゾン配列が存在しないクローンにおいても蛍光シグナルが予想されることに留意しなければならない。しかしながら、このような情況のシグナル増加は、双方のPCRプライマーのハイブリド形成から生じる指数関数的増加でなく一次関数的増加であろう。アッセイはまた、IS1挿入ホットスポット内部でIS1トランスポゾン配列がどちらの配向でも挿入できることを考慮しなければならない。この可能性を考慮して内部IS1プライマーを両方向で使用し、個々のプライマーでサンプル毎に個別の2つのアッセイを行うかまたは両方のプライマーを使用してクローン集団をスクリーニングすることもできる。
【0067】
低産生現象はIS1挿入性突然変異に相関関係を有するので、IS1コピーが完全に除去された大腸菌宿主株は高生産性クローンのより均一な集団を生じると見込まれる。このため、本発明はさらに、該プラスミドDNAによる細菌株の形質転換に先立って細菌ゲノムIS1のコピーを完全除去するために大腸菌宿主菌株を変異させる段階を含む、プラスミドDNAを内包する大腸菌の菌株の高生産性クローナルサブタイプの生成方法に関する。本発明はさらに、IS1コピーが完全除去された突然変異大腸菌宿主菌株(変異DH5株を含むが、これに限定されない。)および、プラスミドDNAを繁殖させるための該菌株の使用に関する。
【0068】
大腸菌の欠失的または破壊的変異を構築するためにはP1ファージ形質導入、トランスポゾン媒介ランダム変異原性および普遍(RecA介在)相同的組換えを含むいくつかの方法が存在する。通常各変異に選択可能マーカー例えば抗生物質耐性が必要なので、これらの方法は単一変異だけに適している。代替方法は、所望破壊部位の周囲のフランキング配列に相同なプライマーに36−から50−ntの伸長をもつPCR産物と、ラムダ−Redリコンビナーゼとの使用を含む(Datsenko and Wanner,2000,PNAS 97:6640−6645)。この場合にも選択可能マーカーをやはり使用する。しかしながら、マーカーは後で除去することができ、以後の変異サイクルにはその使用が免除される。残留“瘢痕”を除去する修正方法は、選択可能マーカーを除去するために内因性二重鎖の破壊修復プロセスを利用する(Kolisnychenkoら,2002,Genome Res.12:640−647)。この方法は、44のうちの24の転位可能要素の除去を含む8.1%のゲノムサイズ短縮を伴う大腸菌のK−12株を産生するために使用された。この菌株では7つのIS1コピーのうちの3つが除去された。残りの4コピーの除去が菌株の生存適性またはフェッドバッチ発酵プロセスでの使用適性に有害な効果を与えない可能性は極めて高い。しかしながら、Kolisnychenkoらの修正方法は、二重鎖の破壊修復プロセスにRecAを必要とするので大腸菌DH5株には適していないことに注目されたい。別の方法は、グループIIイントロン、いわゆる“ターゲトロン”を使用して相補的配列の14−から16−nt領域に基づく変異を生じさせる(Zhongら,2003,Nucleic Acids Res.31:1656−1664)。この方法も選択可能マーカーを使用するが多重挿入ができるように後で除去できる。しかしながら、この方法は、上記の2つの方法のように標的部位の欠失を生じるのでなく破壊を生じるものである。この方法の使用では、トランスポゾンによってコードされている主要トランスポザーゼ遺伝子(insAB)中に破壊されている7つの非機能IS1コピーを内包する菌株が与得られるであろう。
【0069】
ここに記載の形質転換大腸菌クローンに内包されたプラスミドDNAベクターは、有益なバイオ化合物をコードする(1つ以上の)遺伝子、すなわちトランスジーンを含有するいかなる染色体外DNA分子でもよい。プラスミドは、微生物細胞(例えば大腸菌)中のその維持および繁殖と以後の動物宿主体内でのトランスジーンの発現との双方に必要な要素を含有する。細菌繁殖のためには、適格な形質転換体選択用の選択可能マーカーのようなプラスミドにコードされた複製に必要な機能に加えて複製起点が必要である。遺伝子発現のためには、プラスミドが動物体内に導入されたときにトランスジーンの一過性産生が最大になるようにプラスミドを設計しなければならない。遺伝子発現に役立つプラスミドの成分は非限定的に、真核性プロモーター、転写終結およびポリアデニル化シグナル、(1つ以上の)エンハンサー要素を含む。動物細胞での組換遺伝子発現のために選択されたプロモーターは同種でも異種でもよく、構成性でも誘導性でもよく、非限定的に、ヒトサイトメガロウイルス/前初期(CMVlE)、サルウイルス/初期(SV40)、ヒト伸長因子−1α(EF−1α)およびヒトユビキチンC(UbC)由来のプロモーターを含む。プラスミドDNAは平均的な技量の当業者に公知の技術を使用して組換え操作できる。参照:例えば、Sambrookら,前出;Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Assoc.& Wiley(1987)。双方の文献は参照によって本発明に組込まれるものとする。
【0070】
本発明に関係して使用し得る方法および材料を記載および開示する目的でここに引用したすべての刊行物は参照によって組込まれる。しかしながら、本発明が、従来発明によるこのような開示のために、先行していないと認めたと解釈してはならない。
【0071】
本発明の好ましい実施態様を添付図面に基づいて記載したが、本発明がこれらの具体的な実施態様に限定されないこと、特許請求の範囲に記載の本発明の範囲または要旨を逸脱することなく当業者による本発明の様々な変更および修正が可能であることを理解されたい。
【0072】
本発明の代表として以下の実施例を与えたが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【実施例1】
【0073】
DNAワクチンプラスミド中のIS1トランスポゾンの同定
菌株、DNAワクチンプラスミドおよび増殖培地−すべてのDNAワクチン構築物の宿主菌株は大腸菌DH5[F’deoR reckA1 endA1 hsdR17(rk−,mk+)supE44λ−thi−1 gyrA96 relA1]である。この菌株は先ずInvitrogen(Carlsbad,CA;以前のGibco BRL)から購入し、限定培地DME−P5に適応させ、後で形質転換させるために電気受容性にした。大腸菌DH5α[F−φ80lacZΔM15Δ(lacZYA−argF)U169 deoR recA1 endA1 hsdR17(rk−,mk+)gal− phoA supE44 λ− thi−1 gyrA96 relA1]はInvitrogen(Carlsbad,CA)から購入した電気受容性細胞であった。HTV DNAワクチンプラスミドV1Jns−nefの構築は国際特許出願PCT/US00/34162、2000年12月15日出願(国際公開WO 01/43693、2001年6月21日公開)に詳細に記載されている。簡単に説明すると、DNAワクチンプラスミドは、pUC−19由来の細菌性複製起点と、大腸菌中の維持および選択用のネオマイシン/カナマイシン耐性遺伝子(nptII)と、CMV−IEプロモーターと、イントロンAと、HIV由来トランスジーンの真核性発現用のウシ成長ホルモンターミネーター/ポリアデニル化シグナルとから構成されている。形質転換は、標準プラクティスに従って電気穿孔で行った。脱水LBブロスおよびLB寒天はBecton−Dickinson(Franklin Lakes,NJ)から購入し、製造業者の指示通りに調製した。滅菌SOC培地(形質転換後の回収用)はInvitrogenから購入した。限定培地DME−P5は、7g/lのKH2PO4、7g/lのK2HPO4、6g/lの(NH4)2SO4、5g/lのL−グルタミン酸、10g/lのグリセロールおよび0.5g/lのNaClを含有し、NaOHでpH7.2に調整する。滅菌後1リットルあたり8.3mlのネオマイシン/サイアミン/MgSO4溶液および1mlの微量元素溶液を添加した。120×のネオマイシン/サイアミン/MgSO4溶液は24g/lのサイアミン−HCl、240g/lのMgSO4・7H2Oおよび9.6g/lの硫酸ネオマイシンを含有している。1000×の微量元素溶液を1.2NのHClに溶解した。これは、27g/lのFeCl3・6H2O、2g/lのZnCl2、2g/lのCoCl2・6H2O、2g/lのNa2MoO4−2H2O、1g/lのCaCl2・2H2O、1.3g/lのCuCl2・2H2Oおよび0.5g/lのH3BO3を含有する。
【0074】
結果
LB培地で調製した大腸菌DH5を1μlのV1Jns−nefで形質転換し、SOC培地に回収した。形質転換体をLB/ネオマイシン寒天で平板培養した。ランダムに選択したコロニー(NLB−1からNLB−10)を使用して10mlのLB/neo液体培地に接種し、一夜増殖させた。プラスミドDNAの単離用に1ミリリットルのアリコートを採取し、凍結グリセロール予製液も調製した。グリセロール予製液を接種物として使用して新しいLB培養物を調製し、増殖するLB培養物を使用して振盪フラスコ中の25mlのDME−P5培地に接種した。培地シフトに適応するように培養物をDME−P5中で3回継代させた。三回目の継代後に、1mlのアリコートを採取し、QIAGENプラスミドミニプレップキットでプラスミドDNAを単離した。LB増殖培養物およびDME−P5増殖培養物に由来のDNAサンプルを0.7%アガロースゲルに流し、プラスミド含量を確認した(それぞれ図1Aおよび1B)。2つのゲルの比較から、DME−P5サンプルのいくつかは優位種に比べて高い分子量をもつ少数種を含有することが判明したが、LBサンプルでは明らかでなかった(参照:NLB−1、−3、−5、−7および−8;図1Bの星印の付いたレーン)。1つのサンプルNLB−8はまた、出発分子のDNAの再編成および排除から形成されたと思われる低分子量の多数種を含有している。サンプルNLB−10は主に二量体化分子として存在すると考えられる点で独特であり、これは共有結合または単なる強い物理的会合を表す。
【0075】
異なる分子量をもつ2つの種の存在はHTV gagを含むDNAワクチンプラスミドの同様の培養物中で以前から観察されていた。該培養物は長い緩徐な増殖期を伴うフェッドバッチ培養後にプラスミドDNAの増殖に成功しなかった(“低生産体”または“LP”と表す)(データ示さず)。この観察後に同様のDNAワクチンプラスミドのサンプル中で転位可能要素IS1が発見された。V1Jns−nefのDME−P5増殖培養プレップ中のIS1挿入の可能性を検討するために、高分子量の少数種を含有する5つのNLB DNAサンプルをMluIで制限酵素消化した。制限消化物は、1μlのプラスミドDNA、7μlのH2O、1μlの10×反応バッファ、1μlの酵素から構成した。消化物を37℃で〜1時間温置し、次いでゲルに充填するためにおのおのに2μlの充填用バッファを添加した。ヌクレオチド配列の比較に基づいて、この酵素はIS1フラグメントの内部を切断するが、V1Jns−nef配列の内部を切断しないようである。従って、高分子量バンドがIS1を含有するならば、MluI制限酵素消化は、アガロースゲル上のこれらのバンドが直鎖化し移動するという結果を与える筈である。IS1非含有種は非消化サンプルに対して移動しない筈である。実際、MluI消化後、試験した5サンプル全部が直鎖化に符合する高分子量バンドの特徴的移動を示したが、低いバンドはシフトしなかった(図1C)。
【0076】
オリゴヌクレオチドプライマーが、IS1含有フラグメントを増幅し、その存在を追認できる証拠を提供するように設計された。設計されたプライマーは、9bpの非相補的ヌクレオチドとIS1配列の末端に相補的な7または9bpのヌクレオチドとの連鎖から構成されたいわゆる“不完全一致”プライマーであった。このように設計したプライマーは鋳型濃度に感受性であるという明白な効果を有していた。従って、不特定な1つの量よりも多いIS1含量のサンプルだけが増幅されるであろう。LB増殖細胞およびDME−P5増殖細胞に由来のNLB−1およびNLB−2サンプルをPCR反応の鋳型として選択した。LB増殖細胞から単離したNLB−1またはNLB−2中ではアガロースゲル上の高分子量バンドが明白でなかった。しかしながら、DME−P5増殖細胞から単離したNLB−1中では該バンドが明白であったがNLB−2中ではそうでなかった。pUC19サンプル中に高分子バンドの証拠は存在しなかった(データ示さず)。従って、これを陰性対照として加えた。おそらくIS1はゲノムからプラスミドに転位すると推定できる。従って、ゲノムDNAプレップが大腸菌DH5およびDH5αに導入された。ゲノムDNAの単離に先立って双方の菌株をLB中で増殖させた。QIAGEN製のHotStarTaqTM Master Mix試薬を製造業者の指示通りに使用して全量50μlのPCR反応を設定した。5μlの各反応液を0.7%アガロースゲルに充填した(図2A)。アガロースゲル分析に符合して、どのNLBサンプルのLB増殖プレップからもIS1の長さに対応するフラグメントの有意な増殖はなかった(レーン2および4)。しかしながら、DME−P5増殖培養物のNLB−1およびNLB−2のプレップの双方から650と850bpとの間の移動フラグメントが増幅された(レーン3および5)。pUC19からもどちらのゲノムDNAプレップからも増幅はなく、試験したプラスミドDNAのこれらの調製物中の混入残留ゲノムDNAに見出されたIS1をプライマーが増幅できないことが確認された。増幅フラグメントの同一性を確認するために、2つの陽性サンプルをMluI制限酵素で消化した(3μlのPCR反応、5μlのH2O、1μlの10×反応バッファ、1μlの酵素、37℃で2時間温置)。この酵素はIS1を1回切断して〜0.44および〜0.34Kbのバンドを産生するはずであるが、増幅サンプルではこれらが実際に観察された(図2B)。
【0077】
NLB−2サンプルのDME−P5増殖プレップ中のIS1の存在は、すべてのDME−P5増殖細胞中に挿入配列が極めて少数ではあるが有意なパーセンテージの集団でまだ存在するという可能性を高めた。この可能性を試験するために、LB−およびDME−P5増殖細胞の双方からのNLB−3からNLB−10サンプルを鋳型としてPCR反応を行った。結果は、NLBプレップの10個のDME−P5増殖サンプル全部にIS1フラグメントが実際に存在することを示す(図C)。LB増殖プレップからの結果はそれほど明白でない(図2D)。これらのサンプルの全部で650と850bpとの間に不鮮明なバンドが存在する。しかしながら、増幅の程度は、IS1が極めて少量で存在し、プラスミドプレップの染色体混入の結果かもしれないことを示唆する。これらの不鮮明なバンドはまた、プライマーの非特異的結合から生じた伸長を表すものかもしれない。しかしながら、DME−P5調製物中にIS1配列が存在することは明らかである。また、LBからDME−P5培地へのシフトがプラスミド集団中のIS1の増加を誘導する可能性も極めて高い。
【0078】
DME−P5培地で継代させたNLBサンプルを次にSFF(参照:国際出願PCT/US2005/002911;前出)アセンブリで培養してプラスミドDNA含量を検査した。10個のサンプル全部が“低生産性”であると特性決定され、プラスミドDNA含量は0.8から2.4μg DNA/OD2ペレットであった。これらの各サンプル中のIS1転位可能要素の同定は、IS1の存在が低産生現象の原因ではないかという疑問を浮上させる。
【実施例2】
【0079】
制限断片長多型(RFLP)分析を使用する高生産性および低生産性のゲノム中のIS1含量の比較
菌株、DNAワクチンプラスミドおよび増殖培地については前出の実施例1参照。さらに、不適応の非形質転換細胞はInvitrogenから購入しLB培地に維持した。HTV DNAワクチンプラスミドV1Jns−tpa−nef(5540bp)の構築は国際PCT出願PCT/US00/34162(前出)に詳細に記載されている。HTV DNAワクチンプラスミドV1Jns−tpa−pol(7516bp)の構築は国際PCT出願PCT/US00/34724、出願日2000年12月21日(国際公開WO 01/45748として2001年6月28日に公開)に詳細に記載されている。HTV DNAワクチンプラスミドV1Jns−tpa−gag(6375bp)の構築は国際PCT出願PCT/US98/02293、出願日1998年2月3日(国際公開WO 98/34640として1998年8月13日に公開)に詳細に記載されている。
【0080】
HIV DNAワクチン培養物の振盪フラスコ培養およびそのDNA単離
V1Jns−tpa−gagのHlV DNAワクチン高生産体(−HP)および低生産体(−LP)のクローンを、国際出願PCT/US2005/002911(前出)に記載された標準高生産体スクリーンを使用して従来同様に単離した。凍結グリセロール予製液の25μlのアリコートを使用して250ml振盪フラスコ中の25mlのDME−P5に接種した。Kuehnerキャビネット振盪機で37℃、220RPMで細胞を一夜増殖させ、中期から後期の対数増殖期に採集し、DNA単離に使用した。V1Jns−tpa−polおよびV1Jns−tpa−nefの低生産体(−LP)クローンは、適応大腸菌DH5細胞を精製プラスミドDNAで最初に形質転換することによって調製した。形質転換体を回収してDME−P5に平板培養し、振盪フラスコ増殖用の5から10個の単個コロニーを選択した。対数増殖期の中期から後期に細胞を採取し次サイクルの接種に使用した。このようにして培養物を合計3回継代した。低生産体候補中でプラスミドDNAが増幅できないことは、国際出願PCT/US2005/002911(前出)に記載されているように振盪フラスコ中のフェッドバッチ培養によって確認されており、各構築物あたり1つのクローンを代表的低生産体として保存した。上述したように、これらの凍結グリセロール予製液の25μlのアリコートをフラスコ接種に使用し、DNA単離用培養物を採取した。Promega Wizard(登録商標)ゲノムDNA精製キット(Madison,WI)を使用して全DNAを単離した。DNAペレットを10mMのTris−HCl,pH8.5に再水和した。Qiagen Miniprep Spin Kit(Valencia,CA)を使用して高生産性および低生産性サンプルのおのおのからプラスミドDNAを単離した。
【0081】
制限断片長多型(RFLP)分析
非放射性修飾DIG−11−dUTPをPCRによってDNAに組込むために、PCR DIGプローブ合成キット(Roche Molecular Biosystems,Mannheim,Germany)を使用してIS1特異的プローブ(0.7Kb)を作製した。プライマーはSigma Genosys(The Woodlands,TX)から入手し、プラスミドpIS1を鋳型DNAとして使用した。プライマー配列は以下の通りであった:IS1−F2,5’−GGTAATGACTCCAACTTATTG−3’(配列1);IS1−R2,5’−GGTGATGCTGCCAACTTA−3’(配列2)。使用したPCR条件は製造業者の指示通りにした。DNA消化用制限酵素はNew England Biolabs(Beverly,MA)から購入した。各サンプルから消化した全DNAおよびプラスミド単独DNAを0.7%アガロースゲルで34V、4℃で一夜(〜16時間)処理した。Schleicher and Schull Turboblotter(登録商標) Rapid Downward Transfer System(Keene,NH)を製造業者のプロトコル通りに使用してDNAをNytran SuPerChargeナイロン膜に1時間転移させた。BioRad GS Gene Linker(登録商標)(Hercules,CA)を使用し150mJouleでUV照射することによってDNAが膜に架橋した。一夜温置を伴うフィルターハイブリド形成プロトコルに従ってDIG標識IS1プローブをサザンブロット上の標的DNAにハイブリド形成させた(Roche Molecular Biosystems,Mannheim,Germany)。プローブ−標的ハイブリッドを、抗DIGアルカリホスファターゼ抗体およびアルカリホスファターゼ基質CSPDを使用するエンザイムリンクト化学発光アッセイによって可視化した(フィルターハイブリド形成プロトコル、Roche Molecular Biosystems,Mannheim,Germany)。
【0082】
結果
V1Jns−tpa−polクローンのIS1 RFLPプロファイル
酵素AflIIおよびAgeIの組合せを使用してDNAワクチン構築物V1Jns−tpa−polの高生産体および低生産体クローンのIS1特異的RFLP分析用フラグメントを作製した。高生産体クローン(tpa−pol−HP)は国際出願PCT/US2005/002911(前出)に詳述された標準スクリーニング方法によって従来同様に単離され、凍結実用シードバイアルとして得られた。DME−P5中で増殖させた高生産体(tpa−pol−HP)および低生産体(tpa−pol−LP)培養物に由来の全DNAプレップを制限酵素AflIIおよびAgeIで消化し、各培養物から単離されたプラスミドDNAはAflIIで消化した。また対照として、予めDME−P5に適応させないLB培地中で増殖させたDH5細胞からゲノムDNAを単離した。サザンブロットを調製し、DIG標識IS1プローブとハイブリド形成させた(図3A)。DH5(レーン2)およびtpa−pol−HP(レーン4)のサンプルに6つのIS1含有フラグメントが出現する。最も低い分子量のバンドは他のバンドのほぼ2倍の強度を有しており、このバンドが2つ以上のIS1挿入配列を含有することを示唆する。しかしながらこのフラグメントは2Kb未満であり、2つの768bpのIS1挿入を収容できる十分な大きさではない。最も低い分子量バンドのほうが高い濃度であることは、オーバーラップするIS1含有バンドを示している、または、高分子量バンドに比べて小さいフラグメントのほうがNytran膜への転移効率が高いことを表す。従って、非形質転換DH5のIS1コピー数は6から7という小さい値であろう。tpa−pol−LPのIS1プロファイル(レーン6)は、DH5対照にもtpa−pol−HPサンプルにも見出されなかった2つの追加IS1陽性バンドを含有している。tpa−pol−LPプラスミド単独対照(レーン5)との比較に基づくと、これらの2つのうちの高いほうの分子量のバンド(7−8kb)がプラスミドDNAに符合する。しかしながら低いほうの3−4kbのバンドは他のサンプルでは全く観察されないので、tpa−pol−LPゲノム中に追加のIS1挿入部位が存在することを強く示唆する。
【0083】
V1Jns−tpa−nefクローンのIS1 RFLPプロファイル
酵素AflIIおよびAgeIを使用してV1Jns−tpa−nefクローンのIS1挿入をプロファイリングすると(図3B)、V1Jns−tpa−polクローン4で得られた結果と同様の結果が得られた。DH5対照(レーン2)およびtpa−nef−HP(レーン4)の双方で6つのIS1含有バンドが明白であり、最も小さいバンドが他のバンドよりも高い強度で存在する。tpa−nef−LPサンプル中では7つのバンドが可視化され、3番目に大きいバンドは他のバンドよりも明らかに高い強度を有している(レーン6)。このクローンをプラスミド単独サンプル(レーン5)に比較すると、IS1含有プラスミドはIS1を内包するゲノムDNAフラグメントに極めて近接していることが示される。従って、最も高い強度のバンドは実際には、プラスミドおよびゲノムのDNAフラグメントのバンドの重なり合いの結果である。しかしながら、DH5対照にもtpa−nef−HPサンプルにも見出されない3−4kbのバンドが残っており、これは上記のtpa−pol−LPサンプルで観察された未同定バンドとほぼ同じ大きさである。これは、低生産性ゲノム中のIS1挿入性突然変異の別の指標である。
【0084】
V1Jns−tpa−gagクローンのIS1 RFLPプロファイル
V1Jns−tpa−polおよびV1Jns−tpa−nefの双方の低生産体クローンのAflII−AgeI IS1プロファイルが低生産体のゲノム内部の追加IS1挿入部位を示したので、V1Jns−tpa−gagクローンについても試験し、突然変異が3つのV1Jns−tpa構築物全部に存在するか否かを判定した。しかしながらこの場合の高生産体および低生産体クローンのソースはV1Jns−tpa−polおよびV1Jns−tpa−nefとは違っていた。双方のクローンは何年も前に単離され、それ以来、実験用シード(ラボシードサンプル)として繁殖され、補給を伴う振盪フラスコ(SFF)発酵ステージで高生産体スクリーンの対照として役立てられてきた(参照:国際出願PCT/US2005/002911;前出)。従って、これらのクローンのDME−P5接触時間はtpa−polおよびtpa−nefクローンよりもはるかに長い。以前に評価された高生産体と同等の継代時間の凍結実用シードバイアル(実用シードサンプル)も分析のために取得した。RFLP結果は、双方の高生産体クローン由来の全DNAのIS1プロファイルが同様であることを示すが(図3C)、ラボシードサンプルには、実用シードサンプル中の3番目に大きいフラグメント(レーン4および5)よりもやや高い位置に不鮮明バンド(レーン7および8)が存在する。このバンドは高生産体ラボシードのプラスミド単独サンプル中にも存在し(レーン6)、従ってプラスミドDNAに起因すると考えられる。実用シードのプラスミド単独サンプル中では、もっと明るいバンドがかろうじて視認できる(レーン3)。このRFLP分析はQ−PCR結果に符合し(参照、後出、実施例4)、限定培地中の高生産体の培養時間の延長に伴ってIS1含有プラスミドの画分が増加することを示す。双方の高生産体サンプルのゲノムプロファイルは不適応DH5対照(レーン1)にも類似している。
【0085】
上述のtpa−polおよびtpa−nefサンプルに等価のtpa−gag低生産体は入手できなかったので、この場合にはラボシードだけを評価した(図3C)。RFLP結果は、tpa−pol−LPおよびtpa−nef−LPと同様に、tpa−gag−LP IS1プロファイル中にプラスミドDNAに対応しない追加バンドが存在することを示す(レーン10および11)。しかしながらこのバンドは2−3kbであり、他のクローンで観察されるものよりも小さい。tpa−polおよびtpa−nefと違って、IS1プローブはtpa−gag−LPサンプルから単離されたプラスミドDNAに結合しなかった(レーン9)。高生産体スクリーンのSFFステージ用低生産体対照という役割のtpa−gag−LPラボシードは、1mgの乾燥細胞重量(DCW)あたり<<1mcgのプラスミドDNAを終始産生するが、tpa−polおよびtpa−nefの低生産体は〜2mcgプラスミドDNA/mg DCWを含有していた。後者の値はランダムに選択した低生産体でより典型的である。従って、tpa−gag−LPに見出された挿入性突然変異はtpa−pol−LPおよびtpa−nef−LPに見出されたものとは違っている可能性があり、その結果として、クローンのプラスミドDNA増幅能力にいっそう大きい影響力を有しているコピー数抑制表現型が生じる。
【0086】
DME−P5に適応した大腸菌DH5のIS1 RFLPプロファイル
3つの異なるDNAワクチン構築物の高生産体および低生産体のIS1プロファイルは、全部の低生産体クローンがIS1挿入性突然変異を含有するが、高生産体は不適応DH5と同様であることを示す。適応の結果としてゲノムのIS1のコピー数が増加する可能性がある。これを試験するために、AflIIおよびAgeIによるゲノムDNAの消化後に不適応DH5およびDME−P5適応DH5の双方のIS1プロファイルを分析した(図3C)。RFLP結果は、2つの大腸菌ゲノムのIS1の場所に違いがないことを示す(レーン1および2)。従って、低生産体はゲノムのIS1挿入性突然変異に相関関係を有しており、この挿入は形質転換段階後に生じると考えられる。
【実施例3】
【0087】
V1Jnsプラスミド中のIS1トランスポゾン組込み部位
材料および方法
DME−P5中で繁殖したV1Jns−nefクローンNLB−5に由来のプラスミドDNAは実施例1に記載の手順で得られた。挿入非含有の完全プラスミドに相補的な合計16のオリゴヌクレオチドプライマーを順方向(8)および逆方向(8)の双方で〜700bp増加としてアニーリングするように設計した。第二セットのプライマーはIS1挿入配列の順方向端および逆方向端に特異的であった。一連のPCR反応を以下の構成に設定した:(i)16のV1Jns−nef特異的プライマーの1つと2つのIS1特異的プライマーの1つ、(ii)鋳型としてクローンNLB−5プラスミドDNA、(iii)HotStar Taq PCR Master Mix試薬(Qiagen)。PCR反応は標準プロトコルで行った。各サンプルを0.7%アガロースゲルで分析して増幅フラグメントを同定した。増幅フラグメントの存在はベクター−IS1接合を表す予備指標であるが、ミスプライミングイベント(擬陽性)の可能性は排除できない。使用したプライマーはプラスミドDNAの双方のストランドおよびトランスポゾンの可能な双方の挿入方向をカバーしたので、相補的ストランド上の同じ挿入の増幅に符合する第二増幅フラグメントの存在を使用して擬陽性の可能性を削減した。確認された増幅フラグメントのサイズが予備挿入マップを与えた。次に、pCR(登録商標)2.1−TOPO(登録商標)ベクター(Invitrogen)にクローニングするいくつかの増幅フラグメントを選択し、その後Applied Biosystems 310 Genetic Analyzerを使用して配列決定し、IS1挿入の正確な場所および配向を同定した。
【0088】
結果
1つのIS1特異的プライマーと1つのV1Jns特異的プライマーとによる一連のPCR反応を使用し、引き続いて増幅産物を配列決定し、NLB−5クローンを使用してIS1挿入場所を同定した(実施例1参照)。部分接合および完全接合の双方が分解され、配列決定によって、トランスポゾンが9bpの標的複製を挿入部位に産生することが確認された。11の非反復組込み部位が双方の配向のトランスポゾンの挿入と共に同定された。1つの挿入部位が双方の配向で観察された、全部の部位がネオマイシン耐性遺伝子nptIIのコーディング領域の85塩基対中またはその内部に存在していた。IS1挿入は、pUC19のampR遺伝子(bla)(New England Biolabs)をpUC4KのneoR遺伝子(nptII)(Amersham Pharmacia;Piscataway,NJ)で置換することによって構築されたpUC−neoクローンには見出されなかったので、ネオマイシン耐性遺伝子の存在だけではプラスミド分子に転位を誘発するために十分でない。
【実施例4】
【0089】
リアルタイムQ−PCRを使用するプラスミドコピー数に基づくIS1の相対的定量
菌株、DNAワクチンプラスミドおよび増殖培地−前出の実施例1および2参照。
プラスミド標準の構築
すべての分子生物学操作は標準プロトコル(Sambrookら,1989,前出)に従って行った。酵素はNew England Biolabs(Beverly,MA)から購入した。pUC−neoはpUC19のampR遺伝子(bla)(New England Biolabs)をpUC4KのneoR遺伝子(nptII)(Amersham Pharmacia;Piscataway,NJ)で置換することによって構築した。トランスポゾンを含有するプラスミドV1Jns−nefのサンプルからIS1の768−bp配列をPCR−増幅した。該フラグメントをpCR(登録商標)2.1−TOPO(登録商標)ベクター(Invitrogen)にクローニングしたIS1プラスミド標準pIS1を作製し、次いで制限酵素EcoRIを使用して切り出し、T4 DNAリガーゼを使用してpUC−neoのEcoRI制限部位に結合してプラスミド標準pnIQ1を作製した。部分的CMVプロモーターはV1Jns−nefから0.7KbのSpeI−SphIフラグメントとして抽出し、XbaIおよびSphIで二重消化したpnIQ1に結合させてプラスミド標準pnIQ2を作製した。23s rDNAのフラグメントは、GenBank(登録番号M25458)の大腸菌K−12配列用に設計された以下のプライマーを使用してDH5ゲノムDNAからPCR増幅した:23s−F1(5’−GGATCCAACCCAGTGTGTTTCGACAC−3’:配列9)および23s−R1(5’−GGATCCAGACAGGATACCACGTGTCC−3’:配列10)。結合を促進するために23s rDNAフラグメントの両端にBamHI制限部位(下線)を含ませた。0.3KbのPCRフラグメントをpCR(登録商標)2.1−TOPO(登録商標)ベクター(プラスミドp23sTA)にクローニングし、次いでBamHIで切り出し、pnIQ2のBamI部位に結合して最終プラスミド標準pnIQ3v2を作製した(図4)。このプラスミドは、完全IS1配列とCMVプロモーターおよび23s rDNA配列の部分とを含有しており、これらのすべてがQ−PCRアッセイの標的である。プラスミド標準のDNA濃度を、260nmのUV吸光度(A260=1〜50μg/mL)によって測定し、標準溶液を得るために103−108コピー/μLの希釈液を調製した。
【0090】
DH5(V1Jns−nef)の振盪フラスコ培養−前出の実施例2参照。
リアルタイム定量的PCR−配列検出プライマーおよびプローブは、Applied Biosystems(Foster City,CA)のPrimer Expressソフトウェアv.2.0を使用して設計された。非標識プライマーはSigma−Genosys(The Woodlands,TX)から購入し、蛍光標識プローブはApplied Biosystemsから購入した。TaqManプローブは、鋳型DNAのプライマー間にアニーリングするように設計し、リポーター色素6−カルボキシフルオレセイン(FAM)またはApplied Biosystemsが専有権をもつ色素“VIC”を5’端、6−カルボキシテトラメチルローダミン(TAMRA)を3’に含ませた。プライマーCMV−Q−F(5’−GTACGGTGGGAGGTCTATATAAGCA−3’;配列3)およびCMV−Q−R(5’−GGAGGTCAAAACAGCGTGGAT−3’;配列4)とVIC−標識TaqManプローブCMV−Q−P2(5’−VIC−TCGTTTAGTGAACCGTCAGATCGCCTG−3’−TAMRA;配列5)とはCMVプロモーターをマーカーとして用いてプラスミドDNAを定量するように設計した。プライマーIS1−Q−F(5’−AGGCTCATAAGACGCCCCA−3’;配列6)およびIS1−Q−R(5’−ACGGTTGTTGCGCACGTAT−3’;配列7)とFAM−標識TaqManプローブIS1−Q−P2(5’−FAM−CGTCGCCATAGTGCGTTCACCG−3’−TAMRA;配列8)とはIS1を定量するように設計した。CMVおよびIS1プライマー−プローブセットは、全プラスミドおよびトランスポゾンコピーを定量するために多重モードで使用した。
【0091】
残留ゲノムIS1の判定に使用する第二アッセイを進めるために、23s rDNAを定量するプライマーおよびプローブを以下のように設計した:23s−F1D(5’−GAAAGGCGCGCGATACAG;配列11)、23s−R1D(5’−GTCCCGCCCTACTCATCGA;配列12)およびFAM−標識TaqManプローブ23s−Pfam(5’−FAM−CCCCGTACACAAAAATGCACATGCTG−TAMRA;配列13)。残留ゲノムDNAアッセイでは23s rDNAおよびCMVプライマー−プローブセット(上記参照)を多重モードで使用した。
【0092】
PCRは20μL反応容量中に一定容量の10μLの2×Universal PCR Master Mix(Applied Biosystems)および2μLのサンプルDNA、および、種々の量のプライマーおよびプローブを使用して行った。384−ウェルプレートフォーマットを6つのpnIQ3v2標準の10倍希釈液と共に使用し、サンプルあたり4から6の重複を行った。サンプルの増幅および蛍光検出はABI 7900HT配列検出システム(Applied Biosystems)で以下の熱サイクル条件で行った:50℃で2分、95℃で10分、次いで、95℃で15秒、60℃で1分を40サイクル。
【0093】
リアルタイム定量的PCRの分析
ABI Prism 7900HT配列検出システム(SDS)v.2.0ソフトウェアを使用してデータ解析を完了した。PCR閾値サイクル数(CT)は、サンプルの蛍光がユーザー限定閾値限界に交差した増幅プロット上の点から計算した。絶対的定量実験では、コピー数対CTの標準曲線プロットを使用して鋳型コピー数を計算した。サンプルの相対的定量は、2−ΔΔCT法(Livak and Schmittgen,2001,Methods 25:402−408)を使用して行った。簡単に説明すると、内在基準に正規化され校正サンプルcbに相対的なサンプルqについて、
【0094】
【数1】
式中、
ΔCT=CT,X−CT,R、標的分子と基準分子との閾値サイクルの差、
ΔΔCT=ΔCT,q−ΔCT,cb、
XN=内在基準(R0)に相対的な標的の正規化量(X0/R0)、
E=反応の増幅効率。
【0095】
これらのコピー比アッセイで、IS1(または23s rDNA)は標的配列であった。CMVプロモーターは内在基準であった。全部の未知サンプルは標準物質であるプラスミド標準pnIQ2またpnIQ3v2に比較した(全標的のコピー比1:1)。この方法が正確であるためには、2つの仮定が妥当でなければならない。第一に、すべての反応の増幅効率がほぼ100%でなければならない。Primer Expressソフトウェアを使用するプライマーおよびプローブの設計はこの要件を満たす高効率試薬を産生した。第二に、標的および内在基準の双方の効率がほぼ同等でその差が0.1以下でなければならない。
【0096】
プラスミド定量の標的となるCMVプロモーターの配列妥当性検査
完全V1Jns−nefプラスミドのこれまでのスキャンでは11の非反復IS1挿入部位が同定され、これらはいずれもネオマイシン耐性遺伝子の翻訳領域の100塩基対中または内部に存在しCMVプロモーターから>550塩基対が除去されていた(実施例3)。このプロモーターがQ−PCR標的として(すなわち、IS1挿入非含有鋳型として)適性を有することを確認するためにV1Jns−nefのこの領域のIS1挿入を再度試験した。所期の増幅配列内部で挿入が生じるならば、CMVプライマーおよびプローブは結合せず、コピー数比の計算に有意な誤差が生じるであろう。トランスポゾンを含有することがわかっているV1Jns−nefのサンプルを鋳型DNAとして使用し、CMVプロモーターに相補的な3つのプライマーの1つとIS1の末端に特異的な2つのプライマーの1つとを用いてPCR反応を行った。挿入配列(768bp)よりも大きいアンプリコンはIS1−プラスミド連結を含有するであろう。しかしながら、プライマーの非特異的結合が擬陽性を生じるであろう。CMVプロモーター配列に沿った多数の点でプライマーを使用することによって、相補的プライマー対が類似結果を生じないならば非特異的結合に由来の増幅フラグメントは除去できる。0.7Kbよりも大きい5つのアンプリコンが得られたが、2つ以外は上記の判断基準によって非特異的結合の結果として除去された。最後の2つを配列決定し、IS1挿入がCMVプロモーターの上流のネオマイシン耐性遺伝子の翻訳領域またはその近傍の部位に存在することが知見された。2つの部位の1つは過去の記録がある。従って、CMVプロモーター領域は、トランスポゾンからの妨害を懸念することなくQ−PCRアッセイ中に蛍光プローブの標的として使用できる。
【0097】
単一反応および多重反応用プライマー−プローブ濃度の最適化
最小量の試薬で最低閾値サイクル(CT)が得られるように双方の標的配列セット用のプライマーおよびプローブの濃度を最適化した。双方のアッセイの単一反応および多重反応用のIS1、23s rDNAおよびCMVプロモーターなどのプローブ濃度は200nMに最適化された。CMV−Qプライマーは100nMという最適濃度でIS1/CMVおよび23s rDNA/CMVの双方のアッセイで多重化中のスペクトル干渉を減少させることが知見された。次に、pIS1またはp23sTAとV1Jns−tpa−gag(CMVプロモーター標的)との調節比混合物に対してCMVプライマー−プローブセットを用い、双方のアッセイのIS1および23s rDNA用の目標プライマー濃度を多重反応中の100から700nMまでの範囲で試験した。500nMのIS1−Qは、IS1−およびCMV−単独反応から決定したコピー比に比較したときにCMV−Qプライマーとの多重反応中に最も正確な結果を与え、200nMの23s rDNAプライマーは、23s rDNA/CMV多重反応中に同等の正確度を与えた(データ示さず)。
【0098】
Q−PCRアッセイ感度
IS1/CMVおよび23s rDNA/CMVの双方の多重Q−PCRアッセイの感度試験を行った。プラスミドDNAに相対的な23s rDNAの定量をスペクトル干渉が有意に阻害する点を決定するためには、23s rDNA/CMV Q−PCRコピー比アッセイで広い分析範囲にわたる23s rDNA対CMVフラグメント比を使用する必要がある。プラスミドがCMVプロモーター鋳型のソースであるならば、プラスミド調製物中の残留ゲノムDNAが試験できる比の範囲を限定する。従って、プラスミドV1Jns−tpa−gagのCMVプロモーター領域をPCR増幅し(プライマー5’−CACTGTTAGGAGCAAGGAGC−3’(配列14)および5’−TGACGACTGAATCCGGTGAG3’(配列15))、23s rDNA/CMV比を<1.7×10−5に減少させた。次に、増幅CMVプロモーターフラグメントをCMV鋳型として使用し1:1から1:105の23s rDNA/CMV比のサンプルを調製した。試験した全部のサンプルの単一および多重(CMVプライマー−限定)反応結果は同等であり、応答は5桁まで直線状であった(図5)。IS1/CMVの感度も同様にして、108コピーのCMVプロモーターフラグメント/μLに組合せた103−108コピーのpIS1/μLの混合物を使用して試験し、すべての比のサンプルについて単一反応および多重反応の双方で同等の結果を得た。従ってアッセイは、1コピーのCMVあたり1:105(0.001%)コピーのIS1または23s rDNAという定量限度が適正であった。
【0099】
Q−PCRアッセイ感度対アガロースゲル電気泳動−IS1トランスポゾンは、複合培地から限定培地にシフトされ〜30継代培養された培養物から単離したプラスミドV1Jns−nefの実験サンプル中で最初に観察された(実施例1参照)。これらの10個のクローン(サンプルNLB−1からNLB−10)に由来のプラスミドDNAのアガロースゲル電気泳動分析は、高分子量バンドの出現に基づいて少なくとも5つのクローンにトランスポゾンの存在を示した(図1Bの星印の付いたレーン;実施例1も参照)。10個のNLBサンプル全部をIS1/CMVコピー比アッセイで分析した(表1参照)。7つのサンプルが>1%のIS1−陽性プラスミドDNAを含有していた。視認できるトランスポゾンを含む5つのサンプルは>5%のIS1−陽性分子を含有していた。これらの結果は、アガロースゲルの臭化エチジウム染色で異常を可視化するためには5から10%のオーダのプラスミドDNAが変質しなければならないことを示す。
【0100】
【表1】
【0101】
要約
IS1/CMV Q−PCRコピー比アッセイは、DNAワクチンクローンの特性を解明するための有効なツールである。該アッセイは高度に特異的である。該アッセイは、特別設計のオリゴヌクレオチドプライマーおよび蛍光プローブを頼りにしてIS1トランスポゾン含有サンプル、IS5のような他のトランスポゾン含有サンプルおよびトランスポゾン陰性サンプルを容易に識別できる。23s rDNA/CMVコピー比アッセイの採用は特異性をいっそう強化し、IS1トランスポゾン活性の増加を正確に定量できる。Q−PCRテクノロジイによって与えられる高レベル感度は、少なくとも100コピー/μL(V1Jns−nefの場合0.6pg/ml)という低濃度の標的を検出すると共に。鋳型DNA濃度の6対数にわたるIS1転位の定量を可能にする。
【実施例5】
【0102】
ゲノムDNA中のIS1挿入性突然変異の同定
有力な高生産性クローンを単離する従来のスクリーニング方法は、28から30℃で約48時間温置後にコロンビア血液寒天プレートに出現する“グレー”クローンと“ホワイト”クローンとの形態学的差異を基盤とする(同時係属国際出願PCT/US2005/002911,前出参照)。線毛形成に関する遺伝子の挿入配列突然変異はコロニー形態学に影響を与えることが知られている(La Ragioneら,1999,FEMS Microbiol.Lett.175:247−253;Stentebjerg−Olsonら,2000,FEMS Microbiol.Lett.182:319−325)。さらに、fimA遺伝子の調節配列の1つの領域の逆位によって生じる位相転換も線毛の発現の違いに導く(Stentebjerg−Olesenら,2000,前出)。PCRを使用し、fimBEAオペロンおよびcsgB遺伝子中の挿入要素の存在をナイーブDH5細胞およびDME−P5適応DH5細胞中で28から30℃および37℃で試験した。適応細胞は血液寒天プレート上で28から30℃と37℃との間に形態学的転換を示す。従って、線毛遺伝子の違いはこの転換に相関関係を有するものであろう。双方の細胞の37℃の振盪フラスコ培養物と双方の温度の静止(血液寒天で増殖)培養物とから単離したゲノムDNAを使用すると、fimA位相転換についても挿入要素についてもサンプル間の違いは観察されなかった。それぞれ代表的な高生産体および低生産体であるtpa−gag−grayおよびtpa−gag−whiteのプロファイリングでも違いは観察されなかった。注目すべきは、IS1挿入が大部分のfimE遺伝子と上流配列とを含む増幅領域の制限消化物に基づいて同定されたことである(図6、領域P1’−P3’間)。この部位は、GenBankで入手可能な非病原性K−12株MG1655またはW3110の公表された大腸菌配列に報告されていない。周囲のAflIIおよびAgeI制限部位に基づくとこのIS1挿入を含有するフラグメントは〜2.3Kbまたは〜1.7Kbの長さであろう。後者のフラグメント長は形質転換菌株およびプラスミド非含有菌株の双方のRFLPプロファイルの最小バンドに符合する(実施例2参照)。挿入が全部のサンプルに見出され、関連フラグメントが以後のIS1特異的酵素による消化で同等のバンドを生成したので、観察されたコロニー形態学的差異の原因が挿入配列にあるとは考え難い。
【0103】
pMCS2クローニングベクターの構築
ネオマイシン耐性を与えるpUC19−に基づくベクターを構築した(pUC−neo)。pUC19(New England Biolabs)のampR遺伝子(bla)をpUC−4Kプラスミド(Amersham Pharmacia Biotech)から採取したkanR/neoR遺伝子(nptII)によって置換した。pUC19中のampR遺伝子は、制限酵素AhdI(Eam11051)およびSspIで消化することによって除去し、neoR遺伝子は制限酵素PstIで消化することによってpUC−4Kプラスミドから除去した。大腸菌DNAポリメラーゼのクレノウフラグメントを使用して双方のフラグメントに平滑末端を設けた。複製機構を含有する1.8kbのpUC19フラグメントとpUC−4Kに由来のnptII遺伝子を含有している1.2kbフラグメントをアガロースゲル電気泳動によって精製し、次いでT4 DNAリガーゼで結合した。得られたプラスミドをスクリーニングして出発bla遺伝子と同じ配向でnptII挿入を含むプラスミドを同定し、pUC−neoの構築を完成した。
【0104】
pMCS2を構築するために、EcoRI、AflIIおよびBamHI(5’から3’への方向)の制限部位を大腸菌のhisC遺伝子を増幅する順方向プライマーの5’端に組込んだ(MCS2−hisC−For:5’−GAATTCTTAAGATAGGATCCAAGGAGCAAGCATGAGCACC−3’;配列16)。hisC遺伝子はこのために任意に選択した。XbaI、AgeIおよびBamHI(5’から3’への方向)部位は同様にして逆方向プライマーに組込んだ(MCS2−hisC−Rev:5’−TCTAGACCGGTATGGATCCCGCGATCGATAAAAAGATAC−3’;配列17)。PCR増幅を使用し、AflIIとAgeIとを含有しBamHI部位間にhisC遺伝子が介在している新しいマルチクローニング部位から成る1.1Kbフラグメントを作製した。hisC遺伝子は長い結合性フラグメントを与えるために含有させたものであり、BamHI部位はこの遺伝子を除去してブルー/ホワイト選択用のlacZα ORFを回復するために使用した。得られたフラグメントをpCR2.1−TOPOベクター(Invitrogen,Carlsbad,CA)に結合させた。1.1KbのEcoRI−XbaIフラグメントを切り出し、pUC−neoに首尾よく結合させた。得られたプラスミドpMCS2−hisCをBamHIで消化してhisC遺伝子を除去し、最大(3.1Kb)のフラグメントをゲル抽出し再結合させてプラスミドpMCS2を形成した。上述のように、pMCS2マルチクローニング部位は、lacZα遺伝子の読み取り枠(ORF)を保存するように設計しブルー−ホワイト選択を維持した。pMCS2結合の形質転換体を、IPTGおよびX−galを補充したLB/neo寒天に回収すると、得られたコロニーはブルーであり、lacZ ORFが保存されていることを示した。次にベクターpMCS2を部分的配列決定して多重クローニング部位の構造を確認した。
【0105】
IS1挿入部位のスクリーニング
RFLP分析は、問題の挿入性突然変異がゲノムDNAを制限酵素AglIIおよびAgeIで消化したときの〜3および4Kbの制限フラグメントに存在することを示した(実施例2参照)。ゲノムDNAの挿入性突然変異の(1つ以上の)部位を同定する戦略は、以下の段階に従って関連クローンからゲノムDNAのライブラリーを収集しスクリーニングする操作から構成される。
1.IS1挿入性突然変異を示すと同定された低生産性クローンからゲノムDNAを抽出する。選択した方法次第では、ゲノムDNAの抽出によってプラスミドDNAを含む混合物が得られるであろう。
2.DNAをAflIIおよびAgeIで消化して先に同定した3から4KbのサイズのIS1含有制限フラグメントを作製する。
3.制限フラグメントのプールから所望サイズのフラグメントを抽出する。これは例えばフラグメントをサイズに基づいて分離するゲル電気泳動、次いで所望範囲のフラグメントを含有するゲル部分の切り出し、および切り出したゲルからのフラグメントの単離という順序で行うとよい。プラスミドDNAが出発ゲノムDNA調製物中に維持されているならば、所望のゲノムDNAフラグメントを混合物から単離して、直鎖化プラスミドDNAの再結合および形質転換に付随する高いバックグラウンドを除去しなければならない。
4.所望のフラグメントのプールを、制限酵素AglIIおよびAgeIで直鎖化したベクターの多重クローニング部位に結合させる。ベクターpMCS2はこの目的で作製した(上記参照)。結合させたプールを使用してコンピテント大腸菌細胞を形質転換させる。形質転換体は高速増殖および維持に好適な固体LBまたは他の複合培地で繁殖させることができる。
5.得られたライブラリーのスクリーニングはいくつかの方法で行うことができる。非限定例は、(a)IS1特異的Q−PCRアッセイの使用、および、(b)IS1プラスミド接合特異的コロニーまたはプラスミドPCRを含む。これらの有力なスクリーニング方法をより詳細に以下に記載する。
【0106】
ゲノムDNAライブラリーのIS1特異的QPCRアッセイ
上述のようにゲノムDNAライブラリーを構築するために作製されたベクターpMC32は、ネオマイシン耐性遺伝子(neoR)を含有している。pMC32ベクターに結合したIS1陽性ゲノムDNAフラグメントから構成されるライブラリーのプラスミドはIS1とneoRとを1:1比で含有するであろう。IS1陰性プラスミドは残留ゲノムDNAに由来のバックグラウンド量のIS1だけを含有するであろう。pMC32は高コピー数プラスミドなのでゲノムDNAに起因するIS1の画分はプラスミドDNAに起因する量に比べて少ないはずである。従って、実施例4に記載したものと同様のQ−PCRアッセイは精製プラスミドDNAまたは全細胞に対して実行できる。Q−PCRアッセイは以下のプライマー/プローブ配列を使用して多重モードでIS1:neoRコピー比を判定できると考えられる。
IS1プライマー/プローブセット:
IS1−Q−For:5’−AGGCTCATAAGACGCCCCA−3’(配列18);
IS1−Q−Rev:5’−ACGGTTGTTGCGCACGTAT−3’(配列19);および
IS1−Q−Probe:5’−VIC−CGTCGCCATAGTGCGTTCACCG−TAMRA−3’(配列20)
neoRプライマー/プローブセット:
neo−Q−For:5’−CAACCTATTAATTTCCCCTCGTCA−3’(配列21);
neo−Q−Rev:5’−CTGGCCTGTTGAACAAGTCTG−3’(配列22);および
neo−Q−Probe:5’−FAM−CCATGAGTGACGACTGAATCCGGTG−TAMRA−3’(配列23)。
【0107】
最初に多重最適化実験を行って、IS1およびneoの双方のプローブを200nMにしてIS1−Qプライマーは100nMおよびneo−Qプライマーは300nMという最適プライマー濃度を同定した。これらの条件は、100nMから400nMの範囲のneo−Qプライマー濃度を試験しながらIS1−Qプライマー濃度を100nMに限定することによって決定した。IS1−Qは多重プライマー最適化実験を通じて、特にneo−Qプライマー濃度を限定したとき、neo−Qにマイナスに影響することを示した。新しく最適化した値でもIS1−Qスペクトル干渉はまだneo−Q閾値サイクル(CT)値を0.1%IS1/neoコピー比で70%まで変化させるが、結果は十分にスクリーンに必要な許容差の範囲内である。
【0108】
IS1:プラスミド連結に特異的なコロニーおよびプラスミドPCR−全細胞および精製プラスミドDNAの双方がゲノムDNAを含有すると予想されるので、IS1陽性ゲノムDNAフラグメントがプラスミドライブラリーに存在するか否かにかかわりなく、IS1特異的PCRは全サンプルから増幅するという結果を与えると予想される。しかしながら、1つのプラスミド特異的プライマーと1つのIS1特異的プライマーとを使用するPCRは、組換プラスミドがIS1フラグメントを含有するときにのみシグナルを生じる。プラスミド特異的プライマーはいくつかの方法で設計できる。該プライマーは、トランスポゾンがフラグメントの対向末端の近くに存在するときに〜4Kbまでの不都合に大きいアンプリコンサイズを回避するために挿入部位(すなわち、AflII−AgeI認識部位)の近傍のプラスミドの領域にアニーリングできる。この場合、充分な増幅を確保するために、長い標的の増幅に有利な傾向のポリメラーゼを使用する。あるいは、異常に小さいフラグメントの増幅を避けるために、プライマーは挿入部位から除去された領域のどちらの側にもアニーリングできる。いずれの場合にも、IS1:プラスミド接合の同定にPCRを使用するアッセイでは、プライマー設計の際にIS1の異なる配向の可能性を考慮することが重要である。この問題の解決としては、双方の配向のトランスポゾン挿入の検出を確保するために、トランスポゾンの中央領域に相補的であるがどちらかの方向に伸長する2つのIS1特異的プライマーを使用する。内部プライマーの使用も少なくとも〜380bpの標的の増幅を確保する。このスクリーニングアッセイはIS1:プラスミド連結に特異的なので、全細胞(“コロニーPCR”)または精製プラスミドDNAで行うことができる。ゲノムDNAに存在するIS1がシグナルを返すとは考えられない。
【実施例6】
【0109】
高生産性クローン用のゲノムに基づく高スループットスクリーン
実施例2に開示したRFLPプロファイルは、低生産性DNAワクチンクローンとゲノムDNAのIS1挿入性突然変異との間の相関関係を示した。従って、高生産性クローンの高スループットスクリーンは、挿入性突然変異を内包しないクローンの選択および同定から構成されるであろう。このようなスクリーンには、例えば実施例5に記載のような突然変異/挿入部位の同定が必要であろう。その後、このスクリーニングプロセスのためにいくつかのアッセイを開発できた。
【0110】
TaqManのQ−PCRに基づく高スループットスクリーン
IS1突然変異を内包しない細菌クローンを同定するTaqMan Q−PCR高スループットアッセイの一例は、2つのプライマーと蛍光シグナル増幅用の1つの内部プローブとを必要とする(図7Aに概略図として示す)。IS1挿入突然変異がゲノムDNA内部に同定された単一の部位に局在するならば、TaqManプローブはゲノムのこの部分を認識するように設計できる。相補的プライマーを使用する増幅は、その結果として前述のようにプローブの分解に因る蛍光シグナルを蓄積するであろう(実施例4参照)。問題の部位のIS1挿入の存在は結合部位を破壊し、蛍光の蓄積を阻止するであろう。従って、有力な高生産性クローンは増幅シグナルを与えるが、低生産体は系の固有ノイズに起因するバックグラウンド蛍光だけを示すであろう。アッセイは多重化を必要とせず、全細胞溶解液を使用して行うことができるので、ゲノムDNA単離の必要性が削除される。TagManプローブは典型的には約15から約40ヌクレオチドの範囲の様々な長さを有し得る。従って、ゲノムDNA特異的プローブの適正結合を確保するためにIS1突然変異の同定ホットスポットは配列の狭い範囲、好ましくは10ヌクレオチド以内に局在しなければならない。
【0111】
IS1:ゲノム連結のPCRアッセイ
挿入部位がゲノムDNAの極めて狭い領域に局在していないならば、IS1:ゲノムDNA連結を同定するために内部プローブを使用しないPCRアッセイを使用できる。1つのプライマーはIS1挿入ホットスポットから除去された短いゲノムDNAにアニーリングするように設計できる。第二のプライマーはトランスポゾンにアニーリングしなければならない。挿入が存在するならば(すなわち、推定“低生産体”)、IS1:ゲノムDNA連結に対応する増幅フラグメントが産生されるであろう。目標サイズのフラグメントを同定するために得られた増幅産物を目視分析できる。あるいは、SYBR(登録商標) Greenのような色素をアッセイに加えてリアルタイムPCR計器を使用し、対応する蛍光増加に基づいて有力な高生産性クローンを同定できる(例えば、蛍光の欠如はIS1挿入の欠如−推定“高生産体”を表す指標である)。同様に、蛍光の指数関数的増加を測定するために蛍光発生LUXTMプライマー(Invitrogen)を使用できる。この場合、LUXTMプライマーに由来のシグナルは単一プライマーの伸長から発生するのでゲノム:IS1連結のないクローン中でも蛍光シグナルが予想されることに留意されたい。しかしながら、シグナル増幅フラグメントを産生する相補的プライマーが存在しないのでシグナルは指数関数的でなく一次関数的に増加する。
【0112】
増幅フラグメントを目視分析する必要性を回避するために、同定された挿入突然変異をゲノム中の7つの静止IS1コピーから十分に除去して擬陽性を防止しなければならない。実施例2に開示したRFLPプロファイルに基づくと、干渉を生じる突然変異に静止コピーが十分に近接していれば擬陽性は出現しない。このアッセイはまた、突然変異がどちらの配向でも挿入され得る可能性があることを考慮しなければならない。この分析は、内部IS1プライマーを双方の配向で使用することによって行うことができる。この場合、サンプル毎に2つの個別アッセイを行ってもよく、または、クローン集団を完全にスクリーニングするために2つのプライマーを同時に使用してもよい。
【実施例7】
【0113】
DNAワクチン産生用最適化菌株の構築
低生産性集団はIS1挿入性突然変異に相関関係を有しているので、IS1コピーのない大腸菌宿主菌株が高生産性クローンのより均一な集団を生じると考えられる。従って、高生産性クローンの収率を向上させる1つの戦略は、IS1コピー全部が除去された大腸菌の1つの菌株を構築し、この菌株をDNAワクチンベクターの繁殖に使用することである。P1ファージ形質導入、トランスポゾン媒介ランダム突然変異原性および普遍(RecA介在)相同的組換えを含む大腸菌の欠失的または破壊的突然変異を構築するためのいくつかの方法が存在する。これらの方法は典型的には、単一突然変異には適当であるが、多重突然変異では各突然変異に各1つの選択可能マーカー例えば抗生物質耐性が必要なので適当でない。代替方法は、所望破壊部位の周囲のフランキング配列に相同なプライマーに36−から50−ntの伸長をもつPCR産物と、ラムダ−Redリコンビナーゼとの使用を含む(Datsenko and Wanner,2000,PNAS 97:6640−6645)。この場合にもやはり選択可能マーカーを使用する。しかしながら、マーカーは後で除去することができ、追加の突然変異サイクルではその使用が免除される。残留“瘢痕”を除去する修正方法は、選択可能マーカーを除去するために内在二重鎖の破壊修復プロセスを利用する(Kolisnychenkoら,2002,Genome Res.12:640−647)。この方法は、44のうちの24の転位可能要素の除去を含みゲノムサイズが8.1%短縮した大腸菌のK−12株を産生するために使用された。この菌株では7つのIS1コピーのうちの3つが除去された。残りの4コピーの除去が菌株の生存適性またはフェッドバッチ発酵プロセスでの使用適性に有害な効果を与えない可能性は極めて高い。しかしながら、Kolisnychenkoらの修正方法は二重鎖の破壊修復プロセスにRecAを必要とするので大腸菌DH5株には適していないことに注目されたい。別の方法はグループIIイントロン、いわゆる“ターゲトロン”を使用して相補的配列の14−から16−nt領域に基づく突然変異を生じさせる(Zhongら,2003,Nucleic Acids Res.31:1656−1664)。この方法も選択可能マーカーを使用するが多重挿入ができるように後で除去できる。しかしながら、この方法は、上記の2つの方法のように標的部位の欠失を生じるのでなく破壊を生じるものである。この方法の使用は結果として、トランスポゾンによってコードされている主要トランスポザーゼ遺伝子(insAB)中に破壊された7つの非機能IS1コピーを内包する菌株を与えるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1A】図1Aは、LB増殖培養物(A)またはDME−P5増殖培養物(B)から単離したV1Jns−nefプラスミドDNA、NLB−1からNLB−10(左から右に)を示す。ゲル(A)中の各サンプルレーンは、10培養物の平均OD600が3.7に等しい1mlのQIAGEN培養プレップから採取した1μlのプラスミドを含む。サンプルNLB−10はレーン13の分子量マーカーに添加された。ゲル(B)中の各サンプルレーンは、10培養物の平均OD600が12.5に等しい1mlのQIAGEN培養プレップから採取した2μlのプラスミドを含む。(A)レーン1、5、9、13および(B)レーン1、7、13−New England Biolabs 1 Kb DNAラダー(0.5μl).scDNA−スーパーコイルドDNA。星印の付いたレーンは、視認できるISl陽性バンドを含む。
【図1B】図1Bは、LB増殖培養物(A)またはDME−P5増殖培養物(B)から単離したV1Jns−nefプラスミドDNA、NLB−1からNLB−10(左から右に)を示す。ゲル(A)中の各サンプルレーンは、10培養物の平均OD600が3.7に等しい1mlのQIAGEN培養プレップから採取した1μlのプラスミドを含む。サンプルNLB−10はレーン13の分子量マーカーに添加された。ゲル(B)中の各サンプルレーンは、10培養物の平均OD600が12.5に等しい1mlのQIAGEN培養プレップから採取した2μlのプラスミドを含む。(A)レーン1、5、9、13および(B)レーン1、7、13−New England Biolabs 1 Kb DNAラダー(0.5μl).scDNA−スーパーコイルドDNA。星印の付いたレーンは、視認できるISl陽性バンドを含む。
【図1C】図1Cは、選択したNLBサンプルのMluI消化を示す。レーン2、4、7、9、12−NLB−1、NLB−3、NLB−5、NLB−7、NLB−8;非消化。レーン3、5、8、10、13−NLB−1,NLB−3、NLB−5、NLB−7、NLB−8;消化。レーン1、6、11、14−New England Biolabs 1Kb DNAラダー(0.5μl)。
【図2A】図2Aは、選択されたサンプル由来のIS1のPCR増幅を示す。レーン2−LB増殖NLB−1。レーン3−DME−P5増殖NLB−1。レーン4−LB増殖NLB−2。レーン5−DME−P5増殖NLB−2。レーン6−LB増殖pUC19。レーン7−DH5ゲノムDNA。レーン8−DH5αゲノムDNA。レーン1、9−GibcoBRL 1Kb Plus DNAラダー(0.5μl)。
【図2B】図2Bは、NLB−1およびNLB−2のDME−P5増殖培養物から採取したプラスミドプレップを使用したPCR反応のMluI消化を示す。レーン2、3−NLB−1非消化、消化。レーン4、5−NLB−2非消化、消化。レーン1、6−GibcoBRL 1Kb Plus DNAラダー(0.5μl)。
【図2C】図2Cは、(C)DME−P5増殖または(D)LB増殖した細胞プレップを使用したNLB−3からNLB−10まで(左から右)のIS1のPCR増幅を示す。レーン1、6、11−GibcoBRL 1Kb Plus DNAラダー(0.5μl)。
【図2D】図2Dは、(C)DME−P5増殖または(D)LB増殖した細胞プレップを使用したNLB−3からNLB−10まで(左から右)のIS1のPCR増幅を示す。レーン1、6、11−GibcoBRL 1Kb Plus DNAラダー(0.5μl)。
【図3A】図3Aは、制限酵素AflIIおよびAgeIによるVlJns−tpa−polクローンのIS1 RFLPプロファイルを示す。レーン1−pIS1陽性対照。レーン2−非形質転換DH5対照。レーン3−tpa−pol−HPプラスミドDNA。レーン4−tpa−pol−HP全DNA。レーン5−tpa−pol−LPプラスミドDNA。レーン6−tpa−pol−LP全DNA。DIG標識分子量マーカーは図示されていないが露光時間の延長に伴って視認可能になる。
【図3B】図3Bは、制限酵素AflIIおよびAgeIによるVlJns−tpa−nefクローンのIS1 RFLPプロファイルを示す。レーン1−pIS1陽性対照。レーン2−非形質転換DH5対照。レーン3−tpa−nef−HPプラスミドDNA。レーン4−tpa−nef−HP全DNA。レーン5−tpa−nef−LPプラスミドDNA。レーン6−tpa−nef−LP全DNA。DIG標識分子量マーカーは図示されていないが露光時間の延長に伴って視認可能になる。
【図3C】図3Cは、制限酵素AflIIおよびAgeIによる非形質転換DH5およびVlJns−tpa−gagクローンのIS1 RFLPプロファイルを示す。レーン1−不適応の非形質転換DH5対照。レーン2−限定培地DME−P5に適応した非形質転換DH5。レーン3−tpa−gag−HP実用シードプラスミドDNA。レーン4、5−tpa−gag−HP実用シード全DNA。レーン6−tpa−gag−HP実験用シードプラスミドDNA。レーン7、8−tpa−gag−HP実験用シード全DNA。レーン9−tpa−gag−LPプラスミドDNA。レーン10、11−tpa−gag−LP全DNA。DIG標識分子量マーカーは図示されていないが露光時間の延長に伴って視認可能になる。
【図4】図4は、標準pnlQ3v2のプラスミドマップを示す。プライマーおよびプローブの結合部位が示されている。
【図5】図5は、23s rDNA/CMVコピー比アッセイの定量限度の決定を示す。(白丸)1つのプライマー−プローブセットとの反応から決定した比。(黒丸)2つのプライマー−プローブセットとの反応(多重)から決定した比。表示のコピー比を準備するためにプラスミドp23sTAおよびPCR−増幅CMVプロモーターフラグメントを鋳型として使用した。1:105コピー比までの直線性が定量限度を確立する。
【図6】図6は、fimBEAオペロンの概略図を示す(配列詳細に関してはGenBank Nucleotide Database Accession Number Y 10902参照)。オペロンの様々な領域をPCR増幅するために使用したプライマーの場所は、公表された報告書に基づいて選択されたプライマー場所P1’、P1’−Rev、P3’、P3’−Rev、P4’およびP5として示す(Stentebjerg−Olesenら,2000,FEMS Microbiol.Lett.182:319−325)。IS1挿入はプライマーP1’とP3’との間の領域で観察された。
【図7A】図7Aは、TaqManに基づく有力な高生産性細菌クローンの高スループットスクリーニングアッセイの概略図である。IS1挿入領域はゲノムDNAの少数のヌクレオチドの範囲である(“IS1挿入部位”)。
【図7B】図7Bは、PCRに基づく有力な高生産性細菌クローンのスクリーニングアッセイの概略図である。IS1挿入領域はゲノムDNAの多数の連続ヌクレオチドの範囲である(“IS1ホットスポット”)。7Bに示すアッセイでは、挿入の配向が双方向で可能であることを考慮して逆方向のIS1−特異的プライマーを使用する第二アッセイも行わなければならない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)同じプラスミドDNAを内包する同じ菌株の少なくとも2つのクローナルサブタイプのIS1転位活性を比較し、相対的に低い転位活性を示すクローナルサブタイプが有力な高生産性クローナルサブタイプを表す段階と、および
(b)前記有力な高生産性クローナルサブタイプの産生率を試験する段階と
を含んでおり、高生産性クローナルサブタイプが高プラスミドコピー数/細胞を示す
プラスミドDNAを内包する大腸菌の菌株の高生産性クローナルサブタイプの選択方法。
【請求項2】
IS1転位活性が、前記クローナルサブタイプから単離したプラスミドDNAサンプル中のIS1トランスポゾンコピー数を測定することによって判定され、相対的に低いIS1トランスポゾンコピー数は相対的に低いIS1転位活性の指標である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
IS1転位活性が、前記クローナルサブタイプのゲノムDNA内部の予め決定されたIS1挿入領域中のIS1トランスポゾン配列の有無を測定することによって判定され、IS1挿入配列の不在は相対的に低いIS1転位活性の指標である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
(a)同じプラスミドDNAを内包する同じ菌株の少なくとも2つのクローナルサブタイプからプラスミドDNAを単離する段階と、
(b)前記単離プラスミドDNAサンプル中のIS1トランスポゾンコピー数を測定し、相対的に低いIS1トランスポゾンコピー数を示すクローナルサブタイプが有力な高生産性クローナルサブタイプを表す段階と、および
(c)前記有力な高生産性クローナルサブタイプの産生率を試験する段階と
を含み、高生産性クローナルサブタイプが高プラスミドコピー数/細胞を示す
プラスミドDNAを内包する大腸菌の1つの菌株の高生産性クローナルサブタイプの選択方法。
【請求項5】
IS1トランスポゾンコピー数が定量的PCRアッセイを使用して測定される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
定量的PCRアッセイが、IS1ヌクレオチド配列内部に局在するプラスミドDNAの第一ヌクレオチド配列とIS1挿入は存在しないと判定されたプラスミドDNAの第二ヌクレオチド配列との双方を増幅することによってプラスミドコピー数に基づくIS1の相対量を測定し、IS1トランスポゾンコピー数を表すIS1/プラスミドコピー比を生成する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
IS1/プラスミドコピー比が、プラスミドDNAサンプル中に存在する残留ゲノムDNAに起因するIS1トランスポゾンコピーの予測量を減算することによって補正される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
プラスミドDNAサンプル中に存在する残留ゲノムDNAに起因するIS1トランスポゾンコピーの予測量が、第二の定量的PCRアッセイを使用して測定される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
第二の定量的PCRアッセイが、23s rDNAヌクレオチド配列内部に局在する残留ゲノムDNAのヌクレオチド配列とIS1/プラスミドコピー比を生成するために使用したIS1挿入は存在しないと判定されたプラスミドDNAの第二ヌクレオチド配列との双方を増幅することによってプラスミドコピー数に基づく23s rDNAの相対量を測定して、23s rDNA/プラスミドコピー比を生成し、これをIS1プラスミドコピー比から減算して補正IS1/プラスミドコピー比が算出される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
プラスミドDNAの第一および第二のヌクレオチド配列が核酸ポリメラーゼとオリゴヌクレオチドセットとの存在下で個別に増幅され、
第一ヌクレオチド配列の増幅に使用されるオリゴヌクレオチドセットは、
(i)IS1ヌクレオチド配列の第一場所にハイブリド形成する順方向PCRプライマーと、
(ii)第一場所の下流のIS1ヌクレオチド配列の第二場所にハイブリド形成する逆方向PCRプライマーと、および
(iii)消去剤分子と固有の発光極大にエネルギーを放出するフルオロホアとによって標識された蛍光プローブと
から構成され、前記プローブは第一場所と第二場所との間のIS1ヌクレオチド配列内部の1つの場所にハイブリド形成し、
第二ヌクレオチド配列の増幅に使用されるオリゴヌクレオチドセットは、
(i)第二ヌクレオチド配列の第一場所にハイブリド形成する順方向PCRプライマー、
(ii)第一場所の下流の第二ヌクレオチド配列の第二場所にハイブリド形成する逆方向PCRプライマーと、および
(iii)消去剤分子と固有の発光極大にエネルギーを放出するフルオロホアとによって標識された蛍光プローブと
から構成され、前記プローブは第一場所と第二場所との間の第二ヌクレオチド配列内部の1つの場所にハイブリド形成し、
前記核酸ポリメラーゼは増幅中に蛍光プローブを消化して前記フルオロホアを前記消去剤分子から解離させ、フルオロホアと消去剤分子とが解離したときの蛍光変化が検出され、該蛍光変化が第一および/または第二のヌクレオチド配列の増幅の発生に対応する、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
第一および第二のヌクレオチド配列が多重モードで増幅される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
第一ヌクレオチド配列の増幅に使用されるオリゴヌクレオチドセットが、それぞれ順方向および逆方向のPCRプライマーIS1−QF(配列6)およびIS1−Q−R(配列7)と蛍光プローブIS1−Q−P2(配列8)とから構成されている、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
第二ヌクレオチド配列の増幅に使用されるオリゴヌクレオチドセットが、それぞれ順方向および逆方向のPCRプライマーCMV−Q−F(配列3)およびCMV−Q−R(配列4)と蛍光プローブCMV−Q−P2(配列5)とから構成されている、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
23s rDNA配列内部に局在するヌクレオチド配列および第二ヌクレオチド配列が核酸ポリメラーゼとオリゴヌクレオチドセットとの存在下で個別に増幅され、
第一ヌクレオチド配列の増幅に使用されるオリゴヌクレオチドセットは、
(i)23s rDNA配列の第一場所にハイブリド形成する順方向PCRプライマーと、
(ii)第一場所の下流の23s rDNA配列の第二場所にハイブリド形成する逆方向PCRプライマーと、および
(iii)消去剤分子と固有の発光極大にエネルギーを放出するフルオロホアとによって標識された蛍光プローブと
から構成され、前記プローブは第一場所と第二場所との間の23s rDNA配列内部の1つの場所にハイブリド形成し、
第二ヌクレオチド配列の増幅に使用されるオリゴヌクレオチドセットは、
(iv)第二ヌクレオチド配列の第一場所にハイブリド形成する順方向PCRプライマーと、
(v)第一場所の下流の第二ヌクレオチド配列の第二場所にハイブリド形成する逆方向PCRプライマーと、および
(vi)消去剤分子と固有の発光極大にエネルギーを放出するフルオロホアとによって標識された蛍光プローブと
から構成され、前記プローブは第一場所と第二場所との間の第二ヌクレオチド配列内部の1つの場所にハイブリド形成し、
前記核酸ポリメラーゼは増幅中の蛍光プローブを消化して前記フルオロホアを前記消去剤分子から解離させ、フルオロホアと消去剤分子とが解離したときの蛍光変化が検出され、該蛍光変化が23s rDNA配列および/または第二ヌクレオチド配列の増幅の発生に対応する、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
23s rDNA配列および第二ヌクレオチド配列が多重モードで増幅される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
23s rDNAヌクレオチド配列の増幅に使用されるオリゴヌクレオチドセットが、それぞれ順方向および逆方向のPCRプライマー23s−F1D(配列11)および23s−R1D(配列12)と蛍光プローブ23s−Pfam(配列13)とから構成されている、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
第二ヌクレオチド配列の増幅に使用されるオリゴヌクレオチドセットが、それぞれ順方向および逆方向のPCRプライマーCMV−Q−F(配列3)およびCMV−Q−R(配列4)と蛍光プローブCMV−Q−P2(配列5)とから構成されている、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
(a)前記クローナルサブタイプのゲノムDNAの予め決定されたIS1挿入領域内部のIS1トランスポゾン配列の有無を検出し、前記IS1挿入領域内部のIS1トランスポゾン配列の欠如したクローナルサブタイプが有力な高生産性クローナルサブタイプを表す段階と、および
(b)前記有力な高生産性クローナルサブタイプの産生率を試験する段階と
を含み、高生産性クローナルサブタイプが高プラスミドコピー数/細胞を示す
プラスミドDNAを内包する大腸菌の1つの菌株の高生産性クローナルサブタイプの選択方法。
【請求項19】
前記IS1挿入領域がゲノムDNAの約20未満の連続ヌクレオチドの範囲である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
PCRアッセイがゲノムDNAの前記IS1挿入領域内部のIS1トランスポゾン配列を検出するために使用される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
定量的PCRアッセイが、核酸ポリメラーゼと、ならびに
(i)消去剤分子と固有の発光極大にエネルギーを放出するフルオロホアとによって標識された蛍光プローブ、
(ii)蛍光プローブの上流のゲノムDNAの1つの場所にハイブリド形成する順方向PCRプライマー、および
(iii)蛍光プローブの下流のゲノムDNAの1つの場所にハイブリド形成する逆方向PCRプライマー
から構成されたオリゴヌクレオチドセットと
の存在下で、IS1挿入領域を含有するゲノムDNAの一部分を増幅する段階を含み、
前記核酸ポリメラーゼは増幅中に蛍光プローブを消化して前記フルオロホアを前記消去剤分子から解離させ、フルオロホアと消去剤分子とが解離したときの蛍光変化が検出され、該蛍光変化がゲノムDNAの増幅およびIS1挿入領域内部のIS1トランスポゾン配列の不在に対応する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記定量的PCRアッセイが全細胞溶解液に行われる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記IS1挿入領域がゲノムDNAの約20以上の連続ヌクレオチドの範囲である、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
PCRアッセイが、ゲノムDNAの前記IS1挿入領域内部のIS1トランスポゾン配列の有無を検出するために使用される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
PCRアッセイが、核酸ポリメラーゼと、ならびに
(i)IS1挿入領域外部のゲノムDNAの1つの場所にハイブリド形成する第一のPCRプライマー、および
(ii)IS1挿入領域内部に挿入されたIS1トランスポゾン配列内部の1つの場所にハイブリド形成する第二のPCRプライマー
から構成されているオリゴヌクレオチドセットと
の存在下で、ゲノムDNAの一部分を増幅する段階を含み、
IS1挿入領域内部のIS1トランスポゾン配列の存在は双方のPCRプライマーのハイブリド形成によるゲノムDNAの前記部分の指数関数的増幅という結果を与え、IS1挿入領域内部のIS1トランスポゾン配列の不在は第一のPCRプライマーだけのハイブリド形成によるゲノムDNAの前記部分の一本鎖だけの一次関数的増幅という結果を与える、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
ゲノムDNAの前記部分の増幅が、ほぼ目標サイズの増幅核酸フラグメントを同定することによって目視検出される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
ゲノムDNAの前記部分の増幅が、二重鎖DNAに結合する核酸染料を添加することによってリアルタイムで蛍光的に検出される、請求項25に記載の方法。
【請求項1】
(a)同じプラスミドDNAを内包する同じ菌株の少なくとも2つのクローナルサブタイプのIS1転位活性を比較し、相対的に低い転位活性を示すクローナルサブタイプが有力な高生産性クローナルサブタイプを表す段階と、および
(b)前記有力な高生産性クローナルサブタイプの産生率を試験する段階と
を含んでおり、高生産性クローナルサブタイプが高プラスミドコピー数/細胞を示す
プラスミドDNAを内包する大腸菌の菌株の高生産性クローナルサブタイプの選択方法。
【請求項2】
IS1転位活性が、前記クローナルサブタイプから単離したプラスミドDNAサンプル中のIS1トランスポゾンコピー数を測定することによって判定され、相対的に低いIS1トランスポゾンコピー数は相対的に低いIS1転位活性の指標である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
IS1転位活性が、前記クローナルサブタイプのゲノムDNA内部の予め決定されたIS1挿入領域中のIS1トランスポゾン配列の有無を測定することによって判定され、IS1挿入配列の不在は相対的に低いIS1転位活性の指標である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
(a)同じプラスミドDNAを内包する同じ菌株の少なくとも2つのクローナルサブタイプからプラスミドDNAを単離する段階と、
(b)前記単離プラスミドDNAサンプル中のIS1トランスポゾンコピー数を測定し、相対的に低いIS1トランスポゾンコピー数を示すクローナルサブタイプが有力な高生産性クローナルサブタイプを表す段階と、および
(c)前記有力な高生産性クローナルサブタイプの産生率を試験する段階と
を含み、高生産性クローナルサブタイプが高プラスミドコピー数/細胞を示す
プラスミドDNAを内包する大腸菌の1つの菌株の高生産性クローナルサブタイプの選択方法。
【請求項5】
IS1トランスポゾンコピー数が定量的PCRアッセイを使用して測定される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
定量的PCRアッセイが、IS1ヌクレオチド配列内部に局在するプラスミドDNAの第一ヌクレオチド配列とIS1挿入は存在しないと判定されたプラスミドDNAの第二ヌクレオチド配列との双方を増幅することによってプラスミドコピー数に基づくIS1の相対量を測定し、IS1トランスポゾンコピー数を表すIS1/プラスミドコピー比を生成する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
IS1/プラスミドコピー比が、プラスミドDNAサンプル中に存在する残留ゲノムDNAに起因するIS1トランスポゾンコピーの予測量を減算することによって補正される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
プラスミドDNAサンプル中に存在する残留ゲノムDNAに起因するIS1トランスポゾンコピーの予測量が、第二の定量的PCRアッセイを使用して測定される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
第二の定量的PCRアッセイが、23s rDNAヌクレオチド配列内部に局在する残留ゲノムDNAのヌクレオチド配列とIS1/プラスミドコピー比を生成するために使用したIS1挿入は存在しないと判定されたプラスミドDNAの第二ヌクレオチド配列との双方を増幅することによってプラスミドコピー数に基づく23s rDNAの相対量を測定して、23s rDNA/プラスミドコピー比を生成し、これをIS1プラスミドコピー比から減算して補正IS1/プラスミドコピー比が算出される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
プラスミドDNAの第一および第二のヌクレオチド配列が核酸ポリメラーゼとオリゴヌクレオチドセットとの存在下で個別に増幅され、
第一ヌクレオチド配列の増幅に使用されるオリゴヌクレオチドセットは、
(i)IS1ヌクレオチド配列の第一場所にハイブリド形成する順方向PCRプライマーと、
(ii)第一場所の下流のIS1ヌクレオチド配列の第二場所にハイブリド形成する逆方向PCRプライマーと、および
(iii)消去剤分子と固有の発光極大にエネルギーを放出するフルオロホアとによって標識された蛍光プローブと
から構成され、前記プローブは第一場所と第二場所との間のIS1ヌクレオチド配列内部の1つの場所にハイブリド形成し、
第二ヌクレオチド配列の増幅に使用されるオリゴヌクレオチドセットは、
(i)第二ヌクレオチド配列の第一場所にハイブリド形成する順方向PCRプライマー、
(ii)第一場所の下流の第二ヌクレオチド配列の第二場所にハイブリド形成する逆方向PCRプライマーと、および
(iii)消去剤分子と固有の発光極大にエネルギーを放出するフルオロホアとによって標識された蛍光プローブと
から構成され、前記プローブは第一場所と第二場所との間の第二ヌクレオチド配列内部の1つの場所にハイブリド形成し、
前記核酸ポリメラーゼは増幅中に蛍光プローブを消化して前記フルオロホアを前記消去剤分子から解離させ、フルオロホアと消去剤分子とが解離したときの蛍光変化が検出され、該蛍光変化が第一および/または第二のヌクレオチド配列の増幅の発生に対応する、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
第一および第二のヌクレオチド配列が多重モードで増幅される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
第一ヌクレオチド配列の増幅に使用されるオリゴヌクレオチドセットが、それぞれ順方向および逆方向のPCRプライマーIS1−QF(配列6)およびIS1−Q−R(配列7)と蛍光プローブIS1−Q−P2(配列8)とから構成されている、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
第二ヌクレオチド配列の増幅に使用されるオリゴヌクレオチドセットが、それぞれ順方向および逆方向のPCRプライマーCMV−Q−F(配列3)およびCMV−Q−R(配列4)と蛍光プローブCMV−Q−P2(配列5)とから構成されている、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
23s rDNA配列内部に局在するヌクレオチド配列および第二ヌクレオチド配列が核酸ポリメラーゼとオリゴヌクレオチドセットとの存在下で個別に増幅され、
第一ヌクレオチド配列の増幅に使用されるオリゴヌクレオチドセットは、
(i)23s rDNA配列の第一場所にハイブリド形成する順方向PCRプライマーと、
(ii)第一場所の下流の23s rDNA配列の第二場所にハイブリド形成する逆方向PCRプライマーと、および
(iii)消去剤分子と固有の発光極大にエネルギーを放出するフルオロホアとによって標識された蛍光プローブと
から構成され、前記プローブは第一場所と第二場所との間の23s rDNA配列内部の1つの場所にハイブリド形成し、
第二ヌクレオチド配列の増幅に使用されるオリゴヌクレオチドセットは、
(iv)第二ヌクレオチド配列の第一場所にハイブリド形成する順方向PCRプライマーと、
(v)第一場所の下流の第二ヌクレオチド配列の第二場所にハイブリド形成する逆方向PCRプライマーと、および
(vi)消去剤分子と固有の発光極大にエネルギーを放出するフルオロホアとによって標識された蛍光プローブと
から構成され、前記プローブは第一場所と第二場所との間の第二ヌクレオチド配列内部の1つの場所にハイブリド形成し、
前記核酸ポリメラーゼは増幅中の蛍光プローブを消化して前記フルオロホアを前記消去剤分子から解離させ、フルオロホアと消去剤分子とが解離したときの蛍光変化が検出され、該蛍光変化が23s rDNA配列および/または第二ヌクレオチド配列の増幅の発生に対応する、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
23s rDNA配列および第二ヌクレオチド配列が多重モードで増幅される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
23s rDNAヌクレオチド配列の増幅に使用されるオリゴヌクレオチドセットが、それぞれ順方向および逆方向のPCRプライマー23s−F1D(配列11)および23s−R1D(配列12)と蛍光プローブ23s−Pfam(配列13)とから構成されている、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
第二ヌクレオチド配列の増幅に使用されるオリゴヌクレオチドセットが、それぞれ順方向および逆方向のPCRプライマーCMV−Q−F(配列3)およびCMV−Q−R(配列4)と蛍光プローブCMV−Q−P2(配列5)とから構成されている、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
(a)前記クローナルサブタイプのゲノムDNAの予め決定されたIS1挿入領域内部のIS1トランスポゾン配列の有無を検出し、前記IS1挿入領域内部のIS1トランスポゾン配列の欠如したクローナルサブタイプが有力な高生産性クローナルサブタイプを表す段階と、および
(b)前記有力な高生産性クローナルサブタイプの産生率を試験する段階と
を含み、高生産性クローナルサブタイプが高プラスミドコピー数/細胞を示す
プラスミドDNAを内包する大腸菌の1つの菌株の高生産性クローナルサブタイプの選択方法。
【請求項19】
前記IS1挿入領域がゲノムDNAの約20未満の連続ヌクレオチドの範囲である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
PCRアッセイがゲノムDNAの前記IS1挿入領域内部のIS1トランスポゾン配列を検出するために使用される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
定量的PCRアッセイが、核酸ポリメラーゼと、ならびに
(i)消去剤分子と固有の発光極大にエネルギーを放出するフルオロホアとによって標識された蛍光プローブ、
(ii)蛍光プローブの上流のゲノムDNAの1つの場所にハイブリド形成する順方向PCRプライマー、および
(iii)蛍光プローブの下流のゲノムDNAの1つの場所にハイブリド形成する逆方向PCRプライマー
から構成されたオリゴヌクレオチドセットと
の存在下で、IS1挿入領域を含有するゲノムDNAの一部分を増幅する段階を含み、
前記核酸ポリメラーゼは増幅中に蛍光プローブを消化して前記フルオロホアを前記消去剤分子から解離させ、フルオロホアと消去剤分子とが解離したときの蛍光変化が検出され、該蛍光変化がゲノムDNAの増幅およびIS1挿入領域内部のIS1トランスポゾン配列の不在に対応する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記定量的PCRアッセイが全細胞溶解液に行われる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記IS1挿入領域がゲノムDNAの約20以上の連続ヌクレオチドの範囲である、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
PCRアッセイが、ゲノムDNAの前記IS1挿入領域内部のIS1トランスポゾン配列の有無を検出するために使用される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
PCRアッセイが、核酸ポリメラーゼと、ならびに
(i)IS1挿入領域外部のゲノムDNAの1つの場所にハイブリド形成する第一のPCRプライマー、および
(ii)IS1挿入領域内部に挿入されたIS1トランスポゾン配列内部の1つの場所にハイブリド形成する第二のPCRプライマー
から構成されているオリゴヌクレオチドセットと
の存在下で、ゲノムDNAの一部分を増幅する段階を含み、
IS1挿入領域内部のIS1トランスポゾン配列の存在は双方のPCRプライマーのハイブリド形成によるゲノムDNAの前記部分の指数関数的増幅という結果を与え、IS1挿入領域内部のIS1トランスポゾン配列の不在は第一のPCRプライマーだけのハイブリド形成によるゲノムDNAの前記部分の一本鎖だけの一次関数的増幅という結果を与える、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
ゲノムDNAの前記部分の増幅が、ほぼ目標サイズの増幅核酸フラグメントを同定することによって目視検出される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
ゲノムDNAの前記部分の増幅が、二重鎖DNAに結合する核酸染料を添加することによってリアルタイムで蛍光的に検出される、請求項25に記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【公表番号】特表2009−529875(P2009−529875A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−500428(P2009−500428)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【国際出願番号】PCT/US2007/006287
【国際公開番号】WO2007/109013
【国際公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【国際出願番号】PCT/US2007/006287
【国際公開番号】WO2007/109013
【国際公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【Fターム(参考)】
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