説明

プラスミノーゲン活性化因子阻害物質1由来のペプチドおよびその使用

本発明は、ヒト プラスミノーゲン活性化因子阻害物質1(PAI−1)のアミノ酸残基 369−386に対応する単離された18量体ペプチドおよびその断片、これらを含む組成物、ならびに血栓塞栓症および神経障害に関連する病理学的症状の治療のためのその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト プラスミノーゲン活性化因子阻害物質1(PAI−1)由来のペプチド、これらを含む組成物、ならびに血栓塞栓症および神経障害に関連する病理学的症状を治療するためのこれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
米国において、1年に約750,000人の患者が虚血性脳卒中を発症しており、そのうち約150,000の症例は致死的である。50年超の努力にも関わらず(非特許文献1)、血栓溶解薬である、組織型プラスミノーゲン活性化因子(tPA)は、依然として、唯一の急性脳卒中についてFDAに承認された治療である。しかし、その短い治療可能時間域および治療後の合併症(頭蓋内出血(ICH)を含む)の高い発生率は、脳卒中の症状を呈している全ての患者のうちの約3%にtPAの臨床用途を制限している(非特許文献2;非特許文献3)。中枢神経系(CNS)へのtPAの副作用の予防は、治療の利点を増強し、脳卒中の影響を寛解させるための新しいアプローチを与える可能性がある。
【0003】
tPAの有害な効果は、そのタンパク質分解性活性のみに関連するわけではない可能性がある。本発明の発明者らおよび共同研究者は、外因性のtPAは、ラット(非特許文献4)および子ブタ(非特許文献5)の脳血管抵抗を減少させ、CNSにおけるtPAレベルは、実験的頭部外傷(fluid percussion brain injury)(FPI)後に上昇し、このことは振盪性外傷性脳障害に似ていると考えられ(非特許文献6)、検討された濃度におけるtPAの投与は、未処置の動物において脳血管拡張を引き起こす(非特許文献4;非特許文献5;非特許文献7)ということを以前に報告した。
【0004】
特許文献1(本発明の発明者らによる)は、望ましくない副作用(線維素溶解薬(例えば、tPA、uPA、tcuPA、ストレプトキナーゼ、rt−PAまたはアルテプラーゼ、rt−PA誘導体またはアニソイル化ストレプトキナーゼ(anisoylated streptokinase)複合体)によって引き起こされた脳内出血など)を低下させることができるアミノ酸配列 EEIIMDを有する、プラスミノーゲン活性化因子1(PAI−1)由来の6つのアミノ酸ペプチドを開示している。開示された手順では、当該ペプチドは、主要な線維素溶解薬の血管作動性効果または副作用を防ぐために、後期の血栓溶解療法に導入された。PAI−1およびPAI−1由来のペプチド EEIIMDは、その触媒活性を損なうことなく、tPAに媒介されたシグナル伝達を阻害することがさらに報告された(非特許文献8)。
【0005】
特許文献2(本発明の発明者らによる)は、線維素溶解活性を増強し、線維素溶解薬に引き起こされる血管作動性による副作用を低下させ、かつ/または線維素溶解薬の半減期を延ばすための、ペプチド EEIIMDまたはペプチド アセチル−RMAPEEIIMDRPFLYVVR−アミド、抗LRP抗体またはLRP拮抗薬と、1つ以上の線維素溶解薬とを組み合わせた投与について教示する。当該発明は、さらに、ポリペプチド EEIIMDおよび/またはAc−RMAPEEIIMDRPFLYVVR−アミド ペプチドならびに1つ以上の現在使用されるプラスミノーゲン活性化因子を含む、組成物および/または治療レジメンの併用に関する。
【0006】
特許文献3(本発明の発明者らによる)は、EEIIMD ペプチドは、血栓塞栓性障害の予防または治療に要求される血栓溶解薬の有効な投与量を減少させることを開示する。次に、これは、血栓溶解薬の副作用(当該副作用は治療の後期において顕在化する)のリスクを減少させる。
【0007】
特許文献4(HigaziおよびCinesによる)は、神経損傷の予防および脳障害の治療におけるペプチド EEIIMDおよびその6量体ペプチド類似体の使用を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第03/006042号パンフレット
【特許文献2】国際公開第03/095476号パンフレット
【特許文献3】米国特許出願公開第2006/0069035号明細書
【特許文献4】国際公開第2008/018084号パンフレット
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Zivin、J.A.1999.Neurology 53、14−19
【非特許文献2】Lapchak、P.A.2002.Curr Neurol Neurosci Rep.2、1−6
【非特許文献3】Nagai、N.ら 2001.Blood 97、3086−3092
【非特許文献4】Nassar、T.ら 2004.Blood 103、897−902
【非特許文献5】Armstead、W.M.ら 2004.J Neurotrauma 21、1204−1211
【非特許文献6】Gennarrelli、T.A.1994.J Neurotrauma 11、357−368
【非特許文献7】Armstead、W.ら 2005.Develop Brain Res、156、139−146
【非特許文献8】Akkawi、S.ら 2006.Am J Physiol Heart Circ Physiol.291、H1351−1359
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
血栓塞栓性障害(特に、虚血性脳卒中に関連するもの)、および神経障害の治療のための改善された、非常に有効な手段について未だ対処されていないニーズが依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ヒト PAI−1のアミノ酸分節 369−386に対応する18のアミノ酸残基からなる単離されたペプチドおよび、配列 EEIIMDを含む7〜17のアミノ酸残基からなるその断片を与える。当該ペプチドは、外因性および/または内因性の組織型プラスミノーゲン活性化因子(tPA)に関連する神経損傷の治療に対して特に有用である。
【0012】
アミノ酸配列 アセチル−RMAPEEIIMDRPFLYVVR−アミド(配列番号2)を有する公知の18量体ペプチド類似体を含む、ヒト PAI−1の分節369−386に対応するアミノ酸配列 R−Arg−Met−Ala−Pro−Glu−Glu−Ile−Ile−Met−Asp−Arg−Pro−Phe−Leu−Phe−Val−Val−Arg−R(配列番号1)を有する18量体ペプチドおよび特定の類似体ならびにこれらの断片が、神経保護活性を有することが初めてこれから開示される。
【0013】
本発明は、当該18量体ペプチドは、脳障害が引き起こされた動物モデルにおけるtPAに誘導された脳浮腫およびtPAに誘導された頭蓋内出血の低下に非常に有効であることを開示する。18量体ペプチドはまた、動物モデルにおける機械的脳卒中後のtPAに誘導された死亡率の低下に非常に有効である。本発明の18量体ペプチドは、アミノ酸配列 Glu−Glu−Ile−Ile−Met−Asp(配列番号11)の6−mer ペプチドよりも高い神経保護活性を発揮することが見出された。
【0014】
予想外なことに、本発明のペプチドは、体外から投与されたtPAおよび内在性のtPAの両方に関連する有害な効果を遮断する。さらに、内在性のtPAに関連する有害な効果を遮断する本発明の18量体ペプチドの有効性は、公知の6−mer ペプチドによって発揮されるものより高いことが見出された。従って、外因性と内因性の両方のtPAによっても、外因性または内因性のtPAによっても、引き起こされた脳梗塞、脳内出血、浮腫、および死亡率の程度は、tPAの線維素溶解活性を損なうことなく、本発明のペプチドによって減少でき、消滅さえもすることができる。従って、本発明のペプチドは、線溶療法のためにtPAが日常的に投与される場面、およびtPAが内因的に分泌される場面において、中枢神経系への損傷と関連する病理学的障害を治療するのに非常に有用である。
【0015】
1つの態様によれば、本発明は、配列番号3に記載されるアミノ酸配列(R−Arg−Met−Ala−Pro−Glu−Glu−Ile−Ile−Met−Asp−Arg−Pro−Phe−Leu−Phe−Val−Val−Arg−R)の単離されたペプチドまたはこれらの断片を与え、Rは、水素、アセチル、アルキル、およびアミノ保護基からなる群から選択され、Rは、カルボキシル、アミド、アルコール、エステル、およびカルボキシル保護基からなる群から選択され、その断片は、アミノ酸配列 Glu−Glu−Ile−Ile−Met−Aspを含む7〜17のアミノ酸残基からなる。
【0016】
いくつかの実施態様によれば、当該ペプチドは、
配列番号1に記載される、アセチル−Arg−Met−Ala−Pro−Glu−Glu−Ile−Ile−Met−Asp−Arg−Pro−Phe−Leu−Phe−Val−Val−Arg−アミド、
配列番号4に記載される、Arg−Met−Ala−Pro−Glu−Glu−Ile−Ile−Met−Asp−Arg−Pro−Phe−Leu−Phe−Val−Val−Arg、
配列番号5に記載される、アセチル−Arg−Met−Ala−Pro−Glu−Glu−Ile−Ile−Met−Asp−Arg−Pro−Phe−Leu−Phe−Val−Val−Arg、および
配列番号6に記載される、Arg−Met−Ala−Pro−Glu−Glu−Ile−Ile−Met−Asp−Arg−Pro−Phe−Leu−Phe−Val−Val−Arg−アミド、
からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。
【0017】
特定の実施態様によれば、当該ペプチドは、配列番号1に記載されるアミノ酸配列の18量体ペプチドである。
【0018】
別の態様によれば、本発明は、配列番号3に記載されるアミノ酸配列(R−Arg−Met−Ala−Pro−Glu−Glu−Ile−Ile−Met−Asp−Arg−Pro−Phe−Leu−Phe−Val−Val−Arg−R)の単離されたペプチドまたはこれらの断片を含む医薬組成物を与え、Rは、水素、アセチル、アルキル、およびアミノ保護基からなる群から選択され、Rは、カルボキシル、アミド、アルコール、エステル、およびカルボキシル保護基からなる群から選択され、その断片は、アミノ酸配列 Glu−Glu−Ile−Ile−Met−Aspを含む7〜17のアミノ酸残基からなり、当該医薬組成物は、薬剤的に許容できる担体をさらに含む。
【0019】
いくつかの実施態様によれば、当該医薬組成物内のペプチドは、
配列番号1に記載される、アセチル−Arg−Met−Ala−Pro−Glu−Glu−Ile−Ile−Met−Asp−Arg−Pro−Phe−Leu−Phe−Val−Val−Arg−アミド、
配列番号4に記載される、Arg−Met−Ala−Pro−Glu−Glu−Ile−Ile−Met−Asp−Arg−Pro−Phe−Leu−Phe−Val−Val−Arg、
配列番号5に記載される、アセチル−Arg−Met−Ala−Pro−Glu−Glu−Ile−Ile−Met−Asp−Arg−Pro−Phe−Leu−Phe−Val−Val−Arg、および
配列番号6に記載される、Arg−Met−Ala−Pro−Glu−Glu−Ile−Ile−Met−Asp−Arg−Pro−Phe−Leu−Phe−Val−Val−Arg−アミド、
からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。
【0020】
特定の実施態様によれば、当該医薬組成物内のペプチドは、配列番号1に記載されるアミノ酸配列の18量体ペプチドである。
【0021】
さらなる態様によれば、本発明は、神経損傷を有する、またはこれを有するリスクを有している被験者において神経損傷を減少させるための方法を与え、当該方法は、当該被験者に、配列番号7に記載されるアミノ酸配列(R−Arg−Met−Ala−Pro−Glu−Glu−Ile−Ile−Met−Asp−Arg−Pro−Phe−Leu−X−Val−Val−Arg−R)の単離されたペプチドまたはその断片の治療的有効量を含む医薬組成物を投与する工程を含み、Rは、水素、アセチル、アルキル、およびアミノ保護基からなる群から選択され、Xは、TyrおよびPheからなる群から選択され、Rは、カルボキシル、アミド、アルコール、エステル、およびカルボキシル保護基からなる群から選択され、その断片は、アミノ酸配列 Glu−Glu−Ile−Ile−Met−Aspを含む7〜17のアミノ酸残基からなり、当該医薬組成物は、薬剤的に許容できる担体をさらに含む。
【0022】
さらなる態様によれば、本発明は、神経損傷を有する、またはこれを有するリスクを有している被験者において神経損傷を減少させるための方法を与え、当該方法は、それを必要とする被験者に、治療的有効量の線維素溶解薬および配列番号7記載のアミノ酸配列(R−Arg−Met−Ala−Pro−Glu−Glu−Ile−Ile−Met−Asp−Arg−Pro−Phe−Leu−X−Val−Val−Arg−R)の単離されたペプチドまたはその断片を含む医薬組成物を投与する工程を含み、Rは、水素、アセチル、アルキル、およびアミノ保護基からなる群から選択され、Xは、TyrおよびPheからなる群から選択され、Rは、カルボキシル、アミド、アルコール、エステル、およびカルボキシル保護基からなる群から選択され、その断片は、アミノ酸配列 Glu−Glu−Ile−Ile−Met−Aspを含む7〜17のアミノ酸残基からなり、当該医薬組成物は、薬剤的に許容できる担体をさらに含む。
【0023】
いくつかの実施態様によれば、神経損傷を減少させるために使用されるペプチドは、配列番号1、2、4〜6、8〜10からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。特定の実施態様によれば、使用されるペプチドは、配列番号1に記載されるアミノ酸配列を有する。別の実施態様によれば、使用されるペプチドは、配列番号2に記載されるアミノ酸配列を有する。
【0024】
さらなる実施態様によれば、神経損傷は、脳卒中、脳障害(外傷性脳障害(TBI)および虚血性脳障害を含むが、これらに限定されない)、脊髄障害、脳手術、心臓手術、および神経障害に起因する。
【0025】
さらなる実施態様によれば、当該神経障害は、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、および筋萎縮性側索硬化症からなる群から選択される。
【0026】
さらなる実施態様によれば、医薬組成物は、静脈内、皮下、筋肉内、腹腔内、経口、局所、皮内、経皮、鼻腔内、硬膜外、点眼、膣内または直腸の投与経路によって投与される。特定の実施態様によれば、当該医薬組成物は、静脈内注射および/または注入によって投与される。
【0027】
いくつかの実施態様によれば、線維素溶解薬は、tPA、uPA、scuPA、tcuPA、ストレプトキナーゼ、rt−PA、アルテプラーゼ、レテプラーゼ、ラノテプラーゼ、TNK−rt−PA、アニソイル化プラスミノーゲンストレプトキナーゼ複合体、アニストレプラーゼ、およびこれらの誘導体からなる群から選択される。
【0028】
さらなる実施態様によれば、18量体ペプチドまたはその断片は、線維素溶解薬の投与後に投与される。
【0029】
さらなる態様によれば、本発明は、必要とする被験者に、治療的有効量の線維素溶解薬および配列番号7に記載されるアミノ酸配列(R−Arg−Met−Ala−Pro−Glu−Glu−Ile−Ile−Met−Asp−Arg−Pro−Phe−Leu−X−Val−Val−Arg−R)の単離されたペプチドまたはこれらの断片を含む医薬組成物を投与する工程を含む線溶療法の方法を与え、Rは、水素、アセチル、アルキル、およびアミノ保護基からなる群から選択され、Xは、TyrおよびPheからなる群から選択され、Rは、カルボキシル、アミド、アルコール、エステル、およびカルボキシル保護基からなる群から選択されるが、ただし、配列番号2に記載されるペプチドは除かれ、当該断片は、アミノ酸配列 Glu−Glu−Ile−Ile−Met−Aspを含む7〜17のアミノ酸残基からなり、当該医薬組成物は、薬剤的に許容できる担体をさらに含む。
【0030】
いくつかの実施態様によれば、線溶療法のために使用されるペプチドは、配列番号1、4〜6、8〜10からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。特定の実施態様によれば、使用されるペプチドは、配列番号1に記載されるアミノ酸配列を有する。
【0031】
さらなる実施態様によれば、線維素溶解薬は、tPA、uPA、scuPA、tcuPA、ストレプトキナーゼ、rt−PA、アルテプラーゼ、レテプラーゼ、ラノテプラーゼ、TNK−rt−PA、アニソイル化プラスミノーゲンストレプトキナーゼ複合体、アニストレプラーゼ、およびこれらの誘導体からなる群から選択される。
【0032】
さらなる実施態様によれば、当該医薬組成物は、静脈内、皮下、筋肉内、腹腔内、経口、局所、皮内、経皮、鼻腔内、硬膜外、点眼、膣内または直腸の投与経路によって投与される。特定の実施態様によれば、当該医薬組成物は、静脈内注射および/または注入によって投与される。
【0033】
さらなる実施態様によれば、ペプチドまたはその断片は、線維素溶解薬の投与後に投与される。
【0034】
さらなる態様によれば、本発明は、本発明の原理に従って神経損傷を減少させるための、配列番号7に記載されるアミノ酸配列(R−Arg−Met−Ala−Pro−Glu−Glu−Ile−Ile−Met−Asp−Arg−Pro−Phe−Leu−X−Val−Val−Arg−R)の単離されたペプチドまたはその断片の使用を与え、Rは、水素、アセチル、アルキル、およびアミノ保護基からなる群から選択され、Xは、TyrおよびPheからなる群から選択され、Rは、カルボキシル、アミド、アルコール、エステル、およびカルボキシル保護基からなる群から選択され、その断片は、アミノ酸配列 Glu−Glu−Ile−Ile−Met−Aspを含む7〜17のアミノ酸残基からなる。
【0035】
別の態様によれば、本発明は、本発明の原理に従って神経損傷を減少させるための、線維素溶解薬および配列番号7に記載されるアミノ酸配列(R−Arg−Met−Ala−Pro−Glu−Glu−Ile−Ile−Met−Asp−Arg−Pro−Phe−Leu−X−Val−Val−Arg−R)の単離されたペプチドまたはその断片の使用を与え、Rは、水素、アセチル、アルキル、およびアミノ保護基からなる群から選択され、Xは、TyrおよびPheからなる群から選択され、Rは、カルボキシル、アミド、アルコール、エステル、およびカルボキシル保護基からなる群から選択され、その断片は、アミノ酸配列 Glu−Glu−Ile−Ile−Met−Aspを含む7〜17のアミノ酸残基からなる。
【0036】
さらなる態様によれば、本発明は、線溶療法のための、線維素溶解薬および配列番号7に記載されるアミノ酸配列(R−Arg−Met−Ala−Pro−Glu−Glu−Ile−Ile−Met−Asp−Arg−Pro−Phe−Leu−X−Val−Val−Arg−R)の単離されたペプチドまたはその断片の使用を与え、Rは、水素、アセチル、アルキル、およびアミノ保護基からなる群から選択され、Xは、TyrおよびPheからなる群から選択され、Rは、カルボキシル、アミド、アルコール、エステル、およびカルボキシル保護基からなる群から選択されるが、ただし、配列番号2に記載されるペプチドは除かれ、当該断片はアミノ酸配列 Glu−Glu−Ile−Ile−Met−Aspを含む7〜17のアミノ酸残基からなる。
【0037】
これらの実施態様、およびさらなる実施態様は、下記の図面、詳細な説明および実施例から明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】ブタの外傷性脳障害(TBI)後の脳水量への、ペプチド 218 O(配列 Ac−RMAPEEIIMDRPFLYVVR−アミドの18量体ペプチド類似体)、ペプチド 218 N(配列 Ac−RMAPEEIIMDRPFLFVVR−アミドを有する、ヒト PAI−1のアミノ酸残基 369−386に対応する18量体ペプチド)、およびペプチド 206(ヒト PAI−1のアミノ酸残基 373−378に対応する配列 EEIIMDの6−mer ペプチド)の効果を示す。動物を、実験的頭部外傷(FPI)、FPI+ペプチド 206、ペプチド 218 O、またはペプチド 218 N(1mg/kg 静脈内投与(i.v.))、FPI+tPA(2mg/kg 静脈内投与)、FPI+tPA+ペプチド 206、FPI+tPA+ペプチド 218 O、またはFPI+tPA+ペプチド 218 Nと接触させた。各群の7匹の動物からの結果(平均値±標準誤差)を示した。
【図2】MCAの機械的閉塞後にtPAで処置されたラットにおける、PAI−1由来のペプチド:206、218 O、および218 Nの神経保護効果の比較を示す。対照ラットには生理食塩水を与えた。示した結果は、各群の10匹のラットにおける梗塞サイズの平均値±標準誤差である。
【図3】MCAの機械的閉塞後にtPAで処置したラットにおける、PAI−1由来のペプチド:218 Oおよび218 Nの神経保護効果の比較を示す。対照ラットには生理食塩水を与えた。
【図4】塞栓性脳卒中後にtPAで処置したラットにおける、PAI−1由来のペプチド:206、218 O、および218 Nの神経保護効果の比較を示す。対照ラットには生理食塩水を与えた。示した結果は、群あたり10匹のラットにおける、梗塞サイズの平均値±SDである。
【図5】マウスにおける、tPAに誘導された、脳血液関門(BBB)の開口へのペプチド 206、ペプチド 218 O、およびペプチド 218 Nの効果を示す。
【図6A】tPAに関連する機械的脳卒中後の死亡率へのペプチド 218 Nの効果を示す。
【図6B】tPAに関連する機械的脳卒中後の死亡率へのペプチド 218 Nの効果を示す。
【図7】機械的脳卒中の確立から4時間後に、ペプチドと共にtPAで処置したラットにおける、脳梗塞へのペプチド 206、218 O、および218 Nの効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明は、ヒト PAI−1のアミノ酸 369−386に対応する18量体ペプチドは、ラットおよびブタにおける脳卒中の機械的モデルでの、脳梗塞の量または含水量のtPAに誘導された増加を減少させることができたという発見に部分的に基づく。本発明の発見はまた、当該ペプチドは、外因性のtPAによるいずれの治療も受けていないブタにおける、外傷性脳傷害後の脳浮腫を減少させることができたことも示している。従って、本発明のペプチドは、その有益な線維素溶解性活性を無効にすることなく、内因性および/または外因性のtPAによって引き起こされた有害な副作用の解消において有効である。
【0040】
本発明のペプチドによって発揮される神経保護活性は、アミノ酸配列 EEIIMDを有する6−mer ペプチドによって得られるものよりも高い。作用のいずれかの機構によって縛られることを望むことなく、分節 EEIIMDは、いくらかの神経保護活性に関与するが、しかし、ペプチドの安定性および/またはペプチドの構造への隣接するアミノ酸残基の寄与は、これが6−mer ペプチドによって発揮される神経保護活性を顕著に改善するため、非常に重要であることが示唆された。
【0041】
本発明は、配列番号3に記載されるアミノ酸配列 R−RMAPEEIIMDRPFLFVVR−Rを有する単離された18量体ペプチド、またはその断片を与え、当該断片は、配列 EEIIMDを含む7〜17のアミノ酸残基からなる。
【0042】
特に、本発明は下記のペプチドに関連する。
1)Ac−RMAPEEIIMDRPFLFVVR−アミド(配列番号1)(本願明細書で以下218 Nと命名)
2)Ac−RMAPEEIIMDRPFLYVVR−アミド(配列番号2)(本願明細書で以下218 O**と命名)
3)RMAPEEIIMDRPFLFVVR(配列番号4)
4)Ac−RMAPEEIIMDRPFLFVVR(配列番号5)
5)RMAPEEIIMDRPFLFVVR−アミド(配列番号6)
6)RMAPEEIIMDRPFLYVVR(配列番号8)
7)Ac−RMAPEEIIMDRPFLYVVR(配列番号9)
8)RMAPEEIIMDRPFLYVVR−アミド(配列番号10)
9)EEIIMD(配列番号11)(本願明細書で以下206と命名)
10)ヒト PAI−1の全長のアミノ酸配列(配列番号12)
*Nは、新規なものを意味する。**Oは、古いものを意味する。
【0043】
本発明は、アミノ酸配列 EEIIMDを含む7〜18量体ペプチドを与える。しかし、一般式Iのアミノ酸配列(R1−Arg−Met−Ala−Pro−X−X−Ile−Ile−Met−X−Arg−Pro−Phe−Leu−X−Val−Val−Arg−R)を有するペプチドまたはその断片が本発明の範囲内に含まれることが理解されるはずであり、Rは、水素、アセチル、アルキル、およびアミノ保護基からなる群から選択され、Xは、Asp、Glu、およびArgからなる群から選択され、Xは、AspおよびGluからなる群から選択され、Xは、AspおよびGluからなる群から選択され、X4は、PheおよびTyrからなる群から選択され、Rは、カルボキシル、アミド、アルコール、エステル、およびカルボキシル保護基からなる群から選択され、当該断片は、アミノ酸配列 X−X−Ile−Ile−Met−Xを含む7〜17のアミノ酸残基からなるが、ただし、配列番号2に記載されるアミノ酸配列 アセチル−RMAPEEIIMDRPFLYVVR−アミドを有するペプチドは除かれる。
【0044】
従って、本発明は、配列 EEIIMDを含む7〜18量体ペプチドおよびこれらの類似体を与える。神経損傷を減少させるための配列番号2のペプチドを含む当該ペプチドの使用は、本発明に含まれる。これらのペプチド(配列番号2のペプチドを除く)の、線溶療法における使用もまた含まれる。
【0045】
明細書および請求項全体で使用される用語「ペプチド」は、ペプチド結合によって互いに結合したアミノ酸残基の線系列を指す。当該アミノ酸残基は、明細書および請求項全体で、IUPAC協定に従った1文字または3文字のコードによって示される。
【0046】
用語「アミノ酸」または「アミノ酸残基」は、20の自然に存在するアミノ酸を含むことが理解される。
【0047】
本発明のペプチドは、7〜18のアミノ酸残基からなる。
【0048】
本発明のペプチドは、当該技術分野で公知のいずれのタンパク質精製方法によっても単離できる。例えば、PAI−1は、1つ以上のタンパク質分解酵素に接触させることができ、ペプチドの混合物をもたらし、これは、当該技術分野で公知のいずれのタンパク質精製方法によってもさらに精製でき、単離されたペプチドが得られる。あるいは、または、さらに、PAI−1は、化学薬品(例えば、CNBrなど)によって切断でき、ペプチドの混合物をもたらし、これはさらに精製でき、単離されたペプチドが得られる。
【0049】
本発明のペプチドはまた、当該技術分野で周知の方法(化学合成または組み換えDNA技術を含む)によって調製できる。
【0050】
本発明のペプチドを合成する好ましい方法は、Merrifield(J.Am.Chem.Soc.、85:2149、1964参照)によって記載されたように、固形担体を使用した固相ペプチド合成に関連する。大規模なペプチド合成は、例えば、Anderssonら(Biopolymers 55(3):227−50、2000)によって記載されている。固相ペプチド合成法の例としては、BOC法(tert−ブチルオキシカルボニルをα−アミノ保護基として使用する)、FMOC法(9−フルオレニルメチルオキシカルボニルを、アミノ酸残基のα−アミノを保護するために使用する)が挙げられ、両方法とも、当業者に周知である。あるいは、本発明のペプチドは、標準的な溶液合成法(例えば、Bodanszky、M.、Principles of Peptide Synthesis、Springer−Verlag、1984参照)によって合成できる。
【0051】
本発明の原理によるペプチドは、各ペプチド類似体が、神経損傷を低下、予防および/または阻害できる限り、配列番号4に記載されるRMAPEEIIMDRPFLFVVR、または配列番号8に記載されるRMAPEEIIMDRPFLYVVRと同一のアミノ酸配列からなるものである必要はない。
【0052】
用語「類似体」は、上記のペプチドのアミノ酸置換、欠損、または化学修飾によって変化した配列を含むいずれかのペプチドを含み、これらは神経保護活性を示す。「アミノ酸置換」の使用により、機能的に等しいアミノ酸残基がサイレントな変化をもたらす配列内の残基に置き換わることが意味される。例えば、配列内の1つ以上のアミノ酸残基は、機能的等価物として作用する類似する極性の別のアミノ酸によって置き換えることができ、サイレントな変化をもたらす。配列内のアミノ酸の代替物は、当該アミノ酸が属するクラスの他のメンバーから選択されてもよい。例えば、非極性(疎水性)アミノ酸としては、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファンおよびメチオニンが挙げられる。中立極性のアミノ酸としては、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、およびグルタミンが挙げられる。正の電荷を帯びた(塩基性の)アミノ酸としては、アルギニン、リジンおよびヒスチジンが挙げられる。負の電荷を帯びた(酸性の)アミノ酸としては、アスパラギン酸およびグルタミン酸が挙げられる。このような置換は、保存的な置換として知られる。さらに、ペプチドの神経保護活性が維持される限り、非保存的な置換がなされてもよい。本発明は、少なくとも1つのアミノ酸が、別のアミノ酸によって置換され、上記のペプチドと比較して増加した安定性または長い半減期を有するペプチド類似体を生じるペプチド類似体を含むことが認識されるだろう。
【0053】
上記のペプチド配列のアミノ酸残基が全て「L」異性体である一方で、「D」異性体の残基は、ペプチド類似体が神経保護活性を維持する限り、いずれのL−アミノ酸残基も置き換えることができる。ペプチドが開示されたものと同一のアミノ酸で作られるが、少なくとも1つのアミノ酸(おそらく全てのアミノ酸)がD−アミノ酸であるレトロ−インベルソ D−アミノ酸ペプチド類似体の生成は、当該技術分野で周知である。ペプチド類似体中のアミノ酸の全てがD−アミノ酸であり、かつ、ペプチド類似体のN末端およびC末端が逆である場合、ペプチドのL−アミノ酸形態と同一の位置にある同一の構造基を有する類似体が得られる。しかし、当該ペプチド類似体は、タンパク質分解に対してより安定であり、従って、本願明細書で言及された応用例の多くにおいて有用である。
【0054】
本発明は、上記のペプチドのペプチド誘導体をさらに含む。用語「誘導体」は、1つ以上のアミノ酸残基が側鎖または官能基の反応による化学誘導体化を受ける本発明のペプチドのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列を有するペプチドを指し、このような誘導体化はペプチド誘導体の神経保護活性を破壊しない。アミノ酸残基の化学誘導体化としては、アセチル化、アミド化、グリコシル化、酸化、還元、ミリスチル化、硫酸化、アシル化、ADP−リボシル化、環化、ジスルフィド結合の形成、ヒドロキシ化、ヨウ素化、およびメチル化が挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
本発明の原理によるペプチド誘導体はまた、結合修飾を含み、CH−NH、CH−S、CH−S=O、O=C−NH、CH−O、CH−CH、S=C−NH、CH=CH、およびCF=CHならびに骨格修飾が挙げられるが、これらに限定されない。ペプチド内のペプチド結合(−CO−NH−)は置換されてもよく、例えば、N−メチル化された結合(−N(CH3)−CO−);エステル結合(−C(R)H−C−O−O−C(R)−N);ケトメチレン結合(−CO−CH2−);α−アザ結合(−NH−N(R)−CO−)(Rは全てのアルキル基(例えば、メチル));カルバ結合(−CH2−NH−);ヒドロキシエチレン結合(−CH(OH)−CH2−);チオアミド結合(−CS−NH−);オレフィン性二重結合(−CH=CH−);およびペプチド誘導体(−N(R)−CH2−CO−)(Rは、炭素原子上に自然に存在する「通常の」側鎖)による。これらの修飾は、ペプチド鎖に沿ったいずれの結合においても、同時にいくつか(2−3)の地点においてさえも生じる可能性がある。
【0056】
保護基は、このような基を本発明のペプチドを含む適切な残基(単数または複数)に結合する方法同様に当業者に周知である(例えば、Greeneら、(1991)Protective Groups in Organic Synthesis、第2版、John Wiley & Sons社(ニュージャージー州、サマセット)を参照)。
【0057】
特定の実施態様では、本発明のペプチドの末端アミノ酸は、保護基(protecting group)または保護基(blocking group)で遮断される。多くの保護基はこの目的に適している。このような基としては、アセチル、アミド、およびアルキル基が挙げられるがこれらに限定されず、アセチル基およびアルキル基はN末端の保護について特に好ましく、アミド基がカルボキシル末端の保護に好ましい。特定の実施態様では、アセチル基がアミノ末端を保護するために使用され、アミド基がカルボキシル末端を保護するために使用される。特定の実施態様では、保護基は、脂肪酸中のアルキル鎖、プロピオニル(propeonyl)、ホルミルなどを含むことができる。特に好ましいカルボキシル保護基としては、アミド、エステル、およびエーテル形成保護基が挙げられる。他の保護基としては、Fmoc、t−ブトキシカルボニル(t−BOC)、9−フルオレンアセチル基、1−フルオレンカルボキシ基、9−フルオレンカルボキシ(florenecarboxylic)基、9−フルオレノン−1−カルボキシ基、ベンジルオキシカルボニル、キサンチル(Xan)、トリチル(Trt)、4−メチルトリチル(Mtt)、4−メトキシトリチル(Mmt)、4−メトキシ−2,3,6−トリメチルベンゼンスルホニル(Mtr)、メシチレン−2−スルホニル(Mts)、4,4−ジメトキシベンズヒドリル(Mbh)、トシル(Tos)、2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−6−スルホニル(Pmc)、4−メチルベンジル(MeBzl)、4−メトキシベンジル(MeOBzl)、ベンジルオキシ(BzlO)、ベンジル(Bzl)、ベンゾイル(Bz)、3−ニトロ−2−ピリジンスルフェニル(Npys)、1−(4,4−ジメチル−2,6−ジアキソシクロヘキシリデン(diaxocyclohexylidene))エチル(Dde)、2,6−ジクロロベンジル(2,6−DiCl−Bzl)、2−クロロベンジルオキシカルボニル(2−Cl−Z)、2−ブロモベンジルオキシカルボニル(2−Br−Z)、ベンジルオキシメチル(Bom)、シクロヘキシルオキシ(cHxO)、t−ブトキシメチル(Bum)、t−ブトキシ(tBuO)、t−ブチル(tBu)、アセチル(Ac)、およびトリフルオロアセチル(TFA)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
20の標準的なアミノ酸残基の1つ以上の自然に存在するアミノ酸誘導体を含むペプチドも化学誘導体として含まれる。例えば、4−ヒドロキシプロリンはプロリンに置き換えてもよく、5−ヒドロキシリジンはリジンに置き換えてもよく、3−メチルヒスチジンはヒスチジンに置き換えてもよく、ホモセリンはセリンに置き換えてもよく、オルニチンはリジンに置き換えてもよい。ペプチドはまた、非天然アミノ酸を含んでいてもよい。非天然アミノ酸の例としては、ノルロイシン、オルニチン、シトルリン、ジアミノ酪酸、ホモセリン、イソプロピル Lys、3−(2’−ナフチル)−Ala、ニコチニル Lys、アミノイソ酪酸、および3−(3’−ピリジル−Ala)が挙げられる。ペプチドはまた、非タンパク質側鎖を含んでいてもよい。上記に加えて、本発明のペプチドはまた、1つ以上の非アミノ酸モノマー(例えば、脂肪酸、複合糖質など)を含んでいてもよい。
【0059】
本発明は、本発明のペプチドの結合体を含む。用語「結合体」は、別のタンパク質もしくはポリペプチドと連結または結合した本発明のペプチドを定義することが意図される。このような結合体は、ペプチド自身よりも利点を有していてもよい。このような結合体は、タンパク質合成(例えば、ペプチド合成機の使用による)、または、適切なコードフレームで当該技術分野で公知の方法によって互いに所望のアミノ酸配列をコードしている適切な核酸配列を結合することにより、一般的に当該技術分野で公知の方法によってキメラタンパク質を発現することによって作製することができる。
【0060】
本発明のペプチドはまた、自身に結合し、または当該ペプチドを含む大きな複合体を生じるように凝集していてもよい。このような大きな複合体は、新規な生物学的特性(より長い循環半減期またはより大きい活性など)を有する可能性があるため、これらは有利である可能性がある。
【0061】
(医薬組成物および投与経路)
本発明は、神経損傷を被っている、またはこれに対して感受性がある被験者の神経損傷または神経損傷の進行の予防のための方法であって、当該被験者に、治療的有効量の本発明のペプチドおよび薬剤的に許容できる担体を含む医薬組成物を投与する工程を含む方法を与える。
【0062】
本願明細書で使用される用語「医薬組成物」は、本願明細書に記載される1つ以上のペプチドと他の化学成分(薬剤的に許容できる担体および賦形剤など)との調製物を指す。医薬組成物の目的は、生物への有効成分の投与を容易にすることである。
【0063】
用語「薬剤的に許容できる」とは、連邦もしくは州政府の規制当局によって承認され、または米国薬局方もしくは動物(特に、ヒト)における使用のための他の一般的に認識される薬局方に記載されていることを意味する。
【0064】
本発明の医薬組成物は、本発明のペプチドの薬剤的に許容できる塩として処方できる。用語「薬剤的に許容できる塩」は、薬剤的に許容できる無毒性塩基または酸(無機塩基または有機塩基、および無機酸または有機酸を含む)から調製される塩を指す。無機塩基由来の塩としては、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、鉄(III)、鉄(II)、リチウム、マグネシウム、マンガン(III)塩、マンガン(II)、カリウム、ナトリウム、亜鉛などが挙げられる。特に好ましいものは、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム、およびナトリウム塩である。薬剤的に許容できる有機の無毒性塩基由来の塩としては、第一級、第二級および第三級アミン、置換アミン(自然に存在する置換アミン、環状アミンを含む)、および塩基性イオン交換樹脂(例えば、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチル−モルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン(hydrabamine)、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなど)の塩が挙げられる。
【0065】
本発明のペプチドが塩基性である場合、塩は、薬剤的に許容できる無毒性の酸(無機酸および有機酸を含む)から調製してもよい。このような酸としては、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩化水素、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸などが挙げられる。特に好ましいものはクエン酸、臭化水素酸、塩化水素、マレイン酸、リン酸、硫酸、および酒石酸である。
【0066】
用語「担体」は、生物に対して顕著な刺激を引き起こさず、投与された化合物の生物学的活性および特性を抑止しない希釈剤または媒体を指す。アジュバントは、これらの語に含まれる。このような医薬担体は、水および油(石油、動物、植物または合成由来の油(ピーナッツ油、大豆油、ミネラルオイル、ゴマ油などを含む)、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒などの滅菌液であってもよい。水は、医薬組成物が静脈内投与される場合は好ましい担体である。生理食塩水溶液およびブドウ糖およびグリセロール水溶液もまた、液体担体として(特に注射可能な溶液のために)使用できる。
【0067】
本発明の医薬組成物は、賦形剤をさらに含むことができる。本願明細書における用語「賦形剤」は、有効成分の投与をさらに容易にするために、医薬組成物に添加される不活性物質を指す。適した医薬賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、ショ糖、トレハロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、粉乳、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂乳、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールなどが挙げられる。当該組成物は、所望であれば、少量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤(酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩など)も含むことができる。抗菌剤(ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなど);抗酸化剤(アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなど);キレート剤(エチレンジアミン四酢酸など);および浸透圧の調整剤(塩化ナトリウムまたはブドウ糖など)もまた想定される。
【0068】
本発明の医薬組成物は、当該技術分野で周知の工程によって(例えば、従来の混合、溶解、整粒、糖衣錠の製造、粉末化(levigating)、乳化、被包、封入、または凍結乾燥の工程によって)製造することができる。
【0069】
典型的に、有効成分としてペプチドを含む医薬組成物は、注射可能な、液剤または懸濁剤のいずれかとして調製されるが、しかし、注射の前に懸濁または可溶化できる固形形態もまた調製できる。当該組成物はまた、乳剤、錠剤、カプセル剤、ゲル、シロップ、スラリー、粉末、クリーム、デポー、徐放剤などの形態も採ることができる。
【0070】
本発明のペプチドを含む医薬組成物の導入方法としては、静脈内、皮下、筋肉内、腹腔内、経口、局所、皮内、経皮、鼻腔内、硬膜外、点眼、膣内および直腸の経路が挙げられるが、これらに限定されない。当該医薬組成物は、いずれかの簡便な経路によって(例えば、注入または大量瞬時投与、上皮層(例えば、口腔粘膜、直腸および腸管粘膜など)を通じた吸収によって)によって投与することができ、他の治療的に活性な薬剤と共に投与してもよい。この投与は、局在性であってもよく、または全身性であってもよい。さらに、いずれかの適した経路(心室内注射および髄腔内注射を含む)によって、本発明の医薬組成物を中枢神経系に導入することが望ましい可能性がある。心室内注射は、心室内カテーテル(例えば、リザーバーに付属したもの)によって容易になるかも知れない。経肺投与は、例えば、吸入器または噴霧器の使用によっても利用できる。
【0071】
本発明に従った使用のための医薬組成物は、有効成分を薬剤的に使用できる調製物に加工するのを促進する賦形剤および助剤を含む1つ以上の生理学的に許容できる担体を使用して、従来の様式で処方してもよい。適切な製剤は、選択された投与経路による。
【0072】
注射のため、医薬組成物の有効成分は、水溶液(好ましくは、生理学的に適合するバッファー(ハンクス液、リンゲル液、または生理的塩緩衝液など))中で処方してもよい。経粘膜投与または経皮投与のため、浸透されるバリアに適切な浸透剤が製剤において使用される。このような浸透剤は、一般的に当該技術分野で公知である。
【0073】
経口投与のため、医薬組成物は、有効成分と、当該技術分野で周知の薬剤的に許容できる担体とを合わせることによって容易に処方できる。このような担体によって、当該医薬組成物は、患者による経口摂取のため、錠剤、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁剤などとして処方できる。経口使用のための薬理学的調製物は、固形の賦形剤を使用して作製でき、任意に、得られた混合物を粉砕し、顆粒の混合物を加工して、所望の適した助剤を添加した後に、錠剤または糖衣錠コアが得られる。適した賦形剤は、特に、糖(ラクトース、ショ糖、マンニトール、またはソルビトールを含む)などのフィラー;例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース、およびカルボメチルセルロースナトリウム(sodium carbomethylcellulose)などのセルロース調製物;ならびに/または、ポリビニルピロリドン(PVP)などの生理学的に許容できるポリマーである。所望であれば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩(アルギン酸ナトリウムなど)などの崩壊剤を添加してもよい。
【0074】
糖衣錠コアは、適したコーティングを備える。この目的のため、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル(carbopol gel)、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、ラッカー溶液、および適した有機溶媒または溶媒混合物を任意に含んでいてもよい濃縮糖溶液を使用してもよい。染料または色素は、識別のため、または活性な化合物の用量の異なる組み合わせを特徴付けるため、錠剤または糖衣錠のコーティングに加えてもよい。
【0075】
経口的に使用できる医薬組成物としては、ゼラチンから作られた押し込み型のカプセル剤、ならびに、ゼラチンおよび可塑剤(グリセロールまたはソルビトールなど)から作られた、柔らかく、封入されたカプセル剤が挙げられる。当該押し込み型のカプセル剤は、フィラー(ラクトースなど)、結合剤(デンプンなど)、潤滑剤(タルクまたはステアリン酸マグネシウムなど)、および、任意に安定剤と共に、混合物中に有効成分を含んでいてもよい。柔らかいカプセル剤では、当該有効成分は、適した液体(脂肪油、液体パラフィン、または液体ポリエチレングリコール))中に溶解または分散させてもよい。さらに、安定剤を添加してもよい。経口投与のための全ての製剤は、選択された投与経路に適した投与量であるべきである。
【0076】
頬側投与のため、当該組成物は、従来の様式で処方された錠剤またはトローチ剤の形態を採っていてもよい。
【0077】
経鼻吸入による投与のため、本発明の使用のための有効成分は、適した噴霧剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロ−テトラフルオロエタン、または二酸化炭素)の使用と共に加圧されたパックまたは噴霧器から出るエアロゾルスプレーの形態で簡便に送達される。加圧されたエアロゾルの場合、投与量は、計量された量を与えるようにバルブを準備することによって決定されてもよい。例えば、ディスペンサーにおける使用のためのゼラチンのカプセル剤およびカートリッジは、化合物および適した粉末ベース(ラクトースまたはデンプンなど)の粉末混合物を含んで処方されてもよい。
【0078】
本願明細書に記載される医薬組成物は、例えば、大量瞬時投与または連続的な注入による、非経口投与のために処方されてもよい。注射のための製剤は、例えば、アンプルまたは多数回使用(multidose)の容器中で、任意に添加された保存剤と共に単位投与形態で与えてもよい。当該組成物は、油性媒体または水性媒体中の懸濁剤、液剤、または乳剤であってもよく、製剤化剤(formulatory agent)(懸濁剤、安定化剤、および/または分散剤など)を含んでいてもよい。
【0079】
非経口投与のための医薬組成物は、水溶性の形態の活性な調製物の水溶液を含む。さらに、有効成分の懸濁剤は、適切な油状または水ベースの注射懸濁剤として調製されてもよい。適した親油性溶媒または媒体としては、脂肪油(ゴマ油など)、または合成脂肪酸エステル(オレイン酸エチル、トリグリセリド、またはリポソームなど)が挙げられる。水性の注射懸濁剤は、懸濁剤の粘度を増加させる物質(カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランなど)を含んでいてもよい。任意に、当該懸濁剤は、有効成分の溶解度を増加させ、非常に濃厚な溶液を調製できるようにする適した安定剤または薬剤も含んでいてもよい。
【0080】
あるいは、当該有効成分は、使用の前に、適した媒体(例えば、無菌の、パイロジェンが含まれていない水ベースの溶液)との構成のために、粉末形態であってもよい。
【0081】
本発明の医薬組成物はまた、例えば、従来の結合剤および担体(トリグリセリド、微結晶セルロース、トラガントゴムまたはゼラチンなど)を使用して、直腸の組成物(座剤または停留浣腸など)に処方されてもよい。
【0082】
本発明の医薬組成物を、治療を必要とする領域に局所的に投与することが望ましい。これは、例えば(しかし、限定を意図していない)、注射によって、カテーテルによって、座剤によって、またはインプラントによって(当該インプラントは、多孔性、非多孔性、またはゼラチン状物質である)、手術の間の局所注入、(例えば、手術後に創傷被覆と併せた)局所投与によって達成してもよい。投与はまた、損傷部位での(例えば、シリンジを介した)直接的な注射によるものであってもよい。
【0083】
直接的な内部局所投与のため、医薬組成物は、錠剤またはカプセル剤の形態であってもよく、これは、下記の成分、または同様の性質を有する化合物のいずれかを含んでいてもよい:結合剤(微結晶セルロース、トラガントゴムまたはゼラチンなど);賦形剤(デンプンまたはラクトースなど);崩壊剤(アルギン酸、プリモゲル(Primogel)、またはコーンスターチなど);潤滑剤(ステアリン酸マグネシウムまたはステロテス(Sterotes)など);または流動促進剤(コロイド性二酸化ケイ素など)。投与単位形態がカプセル剤である場合、これは、上記タイプの物質に加えて、液体担体(脂肪油など)を含むことができる。さらに、投与単位形態は、投与単位の物理的形態を改変する他の物質(例えば、糖、セラック、または他の腸溶性薬剤のコーティング)を含んでいてもよい。
【0084】
本発明のペプチドは、放出制御製剤で送達することができる。例えば、当該ペプチドは、制御された期間にわたって、選択された部位で当該ペプチドを放出する、生分解性、生体適合性の重合体のインプラントと組み合わせて投与できる。好ましい重合体物質の例としては、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリエチレンビニルアセテート、これらのコポリマーおよび混合物が挙げられる(Medical applications of controlled release、LangerおよびWise(編集)、1974、CRC Pres.、フロリダ州、ボーカラトーン参照)。放出制御製剤は、治療上の標的の近くに位置することができ、従って、全身性の用量の一部分のみしか必要としない。
【0085】
本発明に関連した使用に適した医薬組成物は、ペプチドが意図された目的を達成するのに有効な量で含まれている組成物を含む。特に、「治療的有効量」は、治療される被験者における神経損傷に関連する状態または疾病の症状を予防、軽減、または寛解するのに有効なペプチドの量を意味する。
【0086】
(ペプチドの使用)
本発明は、低酸素性または虚血性の脳卒中の治療、脳障害の治療および/または神経障害の治療のために、必要とする被験者における神経損傷を治療、予防および/または阻害するための本発明のペプチドの使用を与える。
【0087】
本願明細書で使用される用語「治療」は、本発明のペプチドを含む医薬組成物の、治療および/または予防的使用の両方を含むことが認識されるだろう。本発明では、医薬組成物の予防的使用は、それを必要とする被験者に、医薬組成物を、神経損傷の発生を予防し、神経損傷の進行を予防するために投与する工程を含む。
【0088】
本発明のペプチドは神経保護活性を有する。用語「神経保護活性」は、被験者における神経損傷の発生の予防、または神経損傷の進行の抑止もしくは阻害を指す。
【0089】
明細書および請求項全体で使用される用語「神経損傷」としては、脳梗塞、脳浮腫、出血、および神経変性が挙げられるが、これらに限定されない。
【0090】
本発明の治療は、神経損傷をもたらす様々な急性および慢性の症状に施用できる。
【0091】
従って、本発明は、様々な形態の脳傷害に関与し、脳ニューロンへの急性または遅延性損傷、および(例えば頭部外傷後の)神経変性をもたらす可能性がある、虚血性の症状(例えば大脳虚血(血栓塞栓性または低酸素性または虚血性脳卒中、外傷の結果としての出血または脳障害))の治療のために使用できる。
【0092】
本発明は、非虚血性由来の相対的に長期間の神経変性(例えば、癲癇、アルツハイマー病、ハンチントン病、ダウン症、多発性硬化症およびパーキンソン病)、および慢性感染(例えば、AIDS症候群を生じるHIV)によってもたらされた神経損傷の治療に応用可能である。
【0093】
神経損傷を引き起こす可能性がある他の症状は、当業者または同様の医師に周知であり、下記が挙げられる:原発性神経変性疾患;脊髄損傷;低酸素性過程(周産期低酸素症など)または虚血性過程(心停止後のものなど);神経外傷(心臓のバイパス手術または移植後のものなど);代謝的に誘導された神経損傷;脳卒中;(代謝性または中毒性の)続発性神経変性疾患;記憶障害;血管性認知症、多発梗塞性認知症、レビー小体認知症、または神経生成(neurogenerative)認知症。
【0094】
治療時期もまた意味があり、重要である可能性がある。投与は、神経損傷が生じた、もしくはこれが疑われる前または後であってもよい。神経損傷が発症する前の投与は、例えば、被験者が、虚血性の症状のリスクを有すると考えられる場合、予防的治療のために価値がある可能性がある。このような症状は、例えば、かなりの割合の患者が軽度の脳損傷を被る可能性がある心臓のバイパス手術において、または、胎児が、無酸素症および脳性麻痺などを潜在的にもたらす胎児循環における問題を生じやすいかも知れない出生において可能性がある。より一般的な投与時期は、神経損傷を生じた後またはこれが疑われた後(例えば、脳卒中または頭部傷害の治療状態)であり、このような場合では、最良の結果を得るために、可能な限りその事象の後で(好ましくは、1時間以内またはそれよりも少ない時間内で(この時間よりも後の投与も依然として有益である可能性があるが))投与することが望ましい。
【0095】
いくつかの実施態様によれば、当該被験対象は哺乳類である。特定の実施態様によれば、当該哺乳類はヒトである。
【0096】
治療的有効量の決定は、特に、本願明細書で与えられる詳細な開示を考慮し、当業者の能力の範囲内にある。
【0097】
本発明の治療方法における特定の被験者(好ましくは哺乳類、より好ましくはヒト)に投与されるペプチドの正確な量は、いくつかの要因(例えば、投与される特定のペプチド;その投与方法および/もしくは意図された使用;治療される特定の臨床症状および/もしくはその重症度;ならびに/または治療される患者の年齢、体重および/もしくは過去の臨床歴に依存し、常に、治療を施し、かつ/または監督する者(例えば、医療関係者(看護師および/または医師など))の適切な裁量の範囲内である。それでも、哺乳類への投与のためのペプチドの適した1日の用量は、一般的に、約0.01mg/日/kg(哺乳類の体重)〜約80mg/kg/日、通常は0.2〜40mg/kg/日で、単回用量および/または、1日の間に1回以上分けた用量で与えられる。医薬組成物は、約0.1重量%〜約99重量%のペプチドを含んでいてもよく、一般的に、単位投与形態で、単位用量のペプチド(一般的に、約0.1mg〜約500mgである)で調製される。
【0098】
投与量および投与間隔は、ペプチドの十分な血漿レベルまたは局所レベルを与え、神経保護効果を引き起こすために、個々に調整してもよい。
【0099】
治療される症状の重症度および反応性に依存して、投薬は、単回または、治療の経過が数日から数週間もしくは治療が達成されるまで、もしくは病態の減少が達成されるまで続く複数回の投与であってもよい。
【0100】
下記の実施例は、性質上、説明のみであって、非制限的な様式で解釈されることを意図する。
【実施例】
【0101】
本願明細書下記の実施例は、脳卒中の治療中の外因性のtPAによって引き起こされる神経毒性、および脳外傷後に放出される内在性のtPAへのPAI−1由来の18量体ペプチド アセチル−RMAPEEIIMDRPFLFVVR−アミドの効果について記載する。
【0102】
(物質)
組み換えtPAは、ジェネンテック社(カリフォルニア州、サウスサンフランシスコ)から購入した。ペプチド 206、218 O、および218 Nは、Peptisyntha SA(ベルギー、ブリュッセル)によって合成された。
【0103】
(方法)
(実験的頭部外傷(FPI)法)
当該方法は、Armsteadら(Nat.Neurosci.9:1150−1155(2006))によって記載されたように行った。
【0104】
(MCA閉塞)
全ての研究は、実験動物のケアおよび使用についてのNIHの指針に従って行った。スプラーグドーリーラット(平均体重 250g)を通常の固形飼料で飼育し、自由に飲水させた。ラットをケタミン(75mg/ml、Apharmo)およびキシラジン(5mg/ml、バイエル)の腹腔内注射で麻酔した。体温を、加熱灯によって37±0.5℃に維持した。局所脳虚血を、左側のMCAを塞栓糸(intraluminal filament)で閉塞させることによって引き起こした(Ding−Zhou、L.ら 2002 Eur J Pharmacol.457、137−146)。手短に言うと、左総頸動脈および外頸動脈を頚部正中切開して単離し、4−0 シルク縫合糸(エチコン)で結紮した。動脈切開術は、頸動脈分岐部のすぐ近位の総頸動脈で行った。4−0 ナイロンモノフィラメント(エチコン)を、この切開口を通じて内頸動脈に導入し、頸動脈分岐部の遠位に進めてMCAの起点を閉塞した。この糸を2時間後に慎重に回収した。示された濃度でtPAのみ、tPAと、PAI−1由来のペプチド 206(EEIIMD)またはペプチド 218 N(Ac−RMAPEEIIMDRPFLFVVR−アミド)またはペプチド 218 O(Ac−RMAPEEIIMDRPFLYVVR−アミド)を、静脈内注入し、2時間後、この糸を回収した。麻酔から回復した後、ラットをケージに戻した。24時間後、ラットを過量のネンブタールで安楽死させ、梗塞サイズを測定した。
【0105】
(塞栓性脳卒中)
塞栓性脳卒中を、以前に報告された微小塞栓症モデル(Bdeir、K.ら 2000 Blood 96、1820−1826)に従い、脳卒中に適合するように(Atochin、D.N.ら 2004.Stroke 35、2177−2182)引き起こした。記載されたように(Bdeir Kら 2000、上記)、微小塞栓を準備し、解剖し、均質化した。脳卒中を引き起こすために使用された微小塞栓の懸濁液は、1.4×10の微粒子(平均直径3μmを有する)を含んでいた。
【0106】
実験は、ラットにおいて、以前に記載されたように(Ding−Zhou、L.ら2002、上記)いくつか改変して行った。手短に言うと、スプラーグドーリーラット(平均体重 250g)を、ケタミン(75mg/mL)およびキシラジン(5mg/mL)の腹腔内注射によって麻酔した。頸動脈を露出させ、動脈切開術を行った。内径0.02mmのポリエチレンカテーテルを、微小塞栓溶液(1.4×10粒子)を、露出した内頸動脈に直接的に注入するために使用した。当該カテーテルを0.25mlの通常の生理食塩水で流し、慎重に回収した。手術部位を、1mM ヘキサカプロン(hexacapron)を含む生理食塩水で洗浄した後、切開口を閉じた。
【0107】
塞栓性脳卒中の誘発の後、ラットを4の治療群(各n=7)に分けた:tPA(6mg/kg)または、tPA(6mg/kg)とペプチド 206、ペプチド 218 O、もしくはペプチド 218 N(1mg/kg)のいずれか(通常の生理食塩水中)を静脈内注入し、2時間後、カテーテルを回収した。対照群に通常の生理食塩水のみ、またはペプチド 206もしくは218(1mg/kg)(生理食塩水中)からなる媒体を与えた。用量の50%は大量瞬時投与で与え、その残りは60分間かけて注入した。麻酔から回復した後、ラットをケージに戻した。手術の24時間後、当該ラットを過量のネンブタールで安楽死させ、梗塞サイズを測定した。
【0108】
(梗塞量の測定)
脳を取り出し、冠状に、2mm分節に切開した。脳切片を2% 2,3,5−トリフェニルテトラゾリウムクロライド(TTC)(生理食塩水中)に浸し、インキュベーションし(30分間、37℃)、4% ホルマリン/PBS中に一晩置いた。梗塞の領域は未染色のままであり、白色に見え、染色された生存組織と明確に区別できた。切片を撮影し、梗塞領域をNIH コンピューター画像解析プログラムを使用して測定した。梗塞量を、全ての切片の未染色面積の和に、切片の厚さを乗じたものとして定義し、立方ミリメートルで表わした。データを平均値±SEとして表わした。差はANOVA、次いでt検定によって分析し、有意レベルをボンフェローニ検定による多重(post−hoc)解析を使用して補正した。統計的有意性は、P<0.05で設定した。
【0109】
(脳水量)
脳水量(BWC)を、脳組織の湿重量および乾燥重量を測定することにより、式 BWC=湿重量−乾燥重量/湿重量×100を使用することによって定量した。データを、スチューデント−ニューマン−クールズ多重検定の改良型の解析によって分析した。P<0.05を、有意であるとみなした。
【0110】
(統計解析)
示されている場合、差はANOVA、次いでt検定によって分析した。分散分析は、子ブタ FPI研究において、スチューデント−ニューマン−クールズ検定によって判定した。有意レベルは、ボンフェローニ検定による多重解析を使用して補正した。統計的有意性は、P<0.05に設定し、値は平均値±SEMとして示した。
【0111】
(実施例1)
(実験的頭部外傷(FPI)後の脳水量へのtPAおよびPAI−1由来のペプチドの効果)
内在性のtPAは、脳外傷のモデルにおいて有害であり、外傷性脳浮腫後に増加することが示された。脳水量における内在性のtPAに誘導された増加へのPAI−1由来のペプチドの効果を検討するため、子ブタにペプチド 206、ペプチド 218 O、ペプチド 218 N(1mg/kg、静脈内投与)、または対照として媒体(0.9% 生理食塩水)を、FPI(損傷レベル 1.9±0.1 atm)の30分間前に与えた。他の実験セットでは、図1に示したように、子ブタにtPAのみ(2mg/kg、静脈内投与)、tPAとペプチド 206、tPAとペプチド 218 O、またはtPAとペプチド 218 N(1mg/kg、静脈内投与)を与えた。
【0112】
脳水量(BWC)を脳組織の湿重量および乾燥重量を測定することにより、式 BWC=湿重量−乾燥重量/湿重量×100を使用することによって定量した。データは、フィッシャーの多重検定の改良型の解析によって分析した。P<0.05を、有意であるとみなした。
【0113】
外傷後の脳浮腫を脳水量の測定によって評価した。通常の含水量(78.87±0.75%)は、媒体処理した動物の損傷後に増加した(84.1±0.45%まで)(P<0.05)。脳水量の、この外傷後の増加は、ペプチド 206によってほとんどが阻害された(81.379±0.3%;P<0.05;図1)。図1はまた、18量体ペプチド類似体(218 Oと命名した)がペプチド 206と同程度に有効であり、一方、18量体天然ペプチド(218 N’と命名した)は、外傷後の脳浮腫の阻害において、TBI後にBWCを79.343±0.25まで減少させることによって、ペプチド 206またはペプチド 218 Oよりも有意に効果があったことを示す(P<0.05)。
【0114】
さらに、ペプチド 218 Nは、ペプチド 206またはペプチド 218 Oよりも、tPAの存在下でFPIによって引き起こされた脳水量の増悪した阻害について有意に効果があった。ペプチド 218 Nは、脳水量を87.12±0.6から79.643±0.51に減少させ、一方、ペプチド 206による減少は、82.351±0.55までの減少に過ぎなかった(P<0.05;図1)。
【0115】
(実施例2)
(機械的閉塞および塞栓性脳卒中後のラットにおけるtPAおよびPAI−1由来のペプチドの効果)
tPAで処置したラットにおけるMCAの一過性の機械的閉塞後の梗塞サイズへのPAI−1由来のペプチドの効果を検討した。再灌流の確立の2時間後に静脈内注入したtPAは、梗塞サイズを16±4.6から48.333±8.7mm3に増加させた(図2)。ペプチド 206、ペプチド 218 O、またはペプチド 218 Nの同時注入は、tPA治療に関連する梗塞サイズを有意に減少させた(図2)(P<0.01)。さらに、図2は、ペプチド 218 Nは、ペプチド 206またはペプチド 218 Oよりも、tPAによって引き起こされた梗塞サイズの拡大の予防において効果があることを示す。ペプチド 206の存在下で測定された梗塞サイズは、20.333±4.8であり、一方、ペプチド 218 Nの存在下では、そのサイズは13.3±3.6mm3に過ぎなかった(P<0.05;図2)。
【0116】
50%のtPA用量を大量瞬時投与によって与え、その残りを60分の間に注入した同様の実験は、ペプチド 218 Oは、ペプチド 218 Nよりも、梗塞量の低下において効果があることを示した(図3)。
【0117】
MCAへの直接的な微小血栓(microthrombi)の注射によって引き起こされた塞栓性脳卒中後にtPA処理したラットへのPAI−1由来のペプチドの効果も検討した。塞栓形成の2時間後、ラットをtPAのみ、tPAとペプチド 206、tPAとペプチド 218 O、tPAとペプチド 218 N、通常の生理食塩水またはペプチド 206、218 O、218 Nのみのいずれかで静脈内投与処理した。tPAの注射は、梗塞量を約48%減少させ(図4)、これは機械的脳卒中後のその有害な効果と対照をなす(図2および3)。しかし、tPAおよびPAI−1由来のペプチドで処理した動物は、tPAのみで処理されたものより、有意に(P<0.01)小さな梗塞量を有していた(図4)。さらに、tPAおよびペプチド 218 Nで処理した動物は、tPAおよびペプチド 206、またはtPAおよびペプチド 218 Oで処理したものより、少ない梗塞量を有していた(P<0.05)(図4)。
【0118】
図4でも示されるように、単独で投与されたペプチド 218 Nは、脳卒中後の梗塞サイズを有意に減少させた(P<0.05)。これは、それ自体ではtPAの不存在下では梗塞サイズへの効果がほとんどないペプチド 206または218 Oと対照をなす。
【0119】
(実施例3)
(tPAによるBBBの開口へのPAI−1由来のペプチドの効果)
C57/B16 マウスに、エバンスブルー評価の前に、10μM ペプチド 206、ペプチド 218 O、またはペプチド 218 Nと共に(または、これらなしに)生理食塩水、10mg/kg tPAを含む生理食塩水を静脈内に与えた。エバンスブルーの脳内含量を吸光度(620nm)によって定量化した。
【0120】
図5は、tPAがBBB透過性を劇的に増加させたことを示す。tPAへのペプチド 218 Nの添加は、BBBの完全性のこの損失のうち約90%を防ぎ、一方、ペプチド 206または218 Oには効果がなかった。特定の機構または理論に縛られることを望むことなく、ペプチド 218 NがBBBへのtPAの有害な効果を防ぐ能力は、当該ペプチドによってtPAに強いられる構造変化に起因している可能性がある。
【0121】
(実施例4)
(tPAが関与する死亡率へのPAI−1由来のペプチドの効果)
tPAで処置したラットにおけるMCAの一過性の機械的閉塞後の死亡率へのPAI−1由来のペプチドの効果を検討した。再灌流の確立の2時間後に静脈内注入したtPAは、生理食塩水のみで処理した対照群における7.7%から、28.6%に死亡率を増加させた(p=0.029)(図6)。
【0122】
tPAとペプチド 218 Nの同時注入は、絶対的な死亡率を有意に減少させ、28.6%から15.4%に低下させた(図6A)。
【0123】
さらに、発明者らのデータは、ペプチド 218 Nが、tPAに関連する死亡率の増加を63%減少させたことを示した(図6B)。
【0124】
表1は、ペプチド 218 Oと比較した場合の死亡率および頭蓋内出血へのペプチド 218 Nの効果を示す。
【0125】
【表1】

【0126】
表1に示されるように、tPAにより、21匹のラットのうち6匹が死亡した(約29%の死亡率)。ペプチド 218 Oが、tPAに誘導された死亡率を39%まで増加させた一方、ペプチド 218 Nは、死亡率を有意に減少させた(9%の死亡率)。さらに、数匹のtPAで処置したラットは、頭蓋内出血を呈した。しかし、tPAおよびペプチドで処理したラットにこのような出血はなかった。
【0127】
(実施例5)
(脳梗塞へのPAI−1由来のペプチドの効果)
梗塞サイズへのPAI−1由来のペプチドの効果は、MCAおよび再灌流を受け、かつ、4時間後にtPAのみ、またはPAI−1由来のペプチドと共にtPAで処置されたラットにおいて判定した。再灌流の確立の4時間後に静脈内注入されたtPAは、梗塞サイズを68±7から77±9mm3に増加させた(図7)。ペプチド 218 Oの同時注入は、tPA治療に関連する梗塞サイズを有意に減少させた(図7)(P<0.01)。ペプチド 218 Nの効果は、218 Oおよび206のものよりも有意に強力だった(P<0.05;図7)。これらの結果は、両方のペプチド(特に218 N)が、tPAの治療域を改善することを示す。
【0128】
(実施例6)
(tPAに誘導された血管作動性へのPAI−1由来のペプチドの効果)
in vitroにおけるラットの大動脈輪におけるフェニレフリン誘導性収縮へのtPAのみ、またはtPAとペプチド 218Oもしくは218Nの効果は、Haj−Yehiaら(FASEB J.14:1411−1422(2000))によって記載された手順によって判定した。
【0129】
手短に言うと、オスのスプラーグドーリーラット(250−275g)を失血によって屠殺した。内皮を傷つけないように慎重に胸部大動脈を取り出し、脂肪および結合組織を除いて離し、横方向の輪(長さ5mm)に切った。組織を、酸素を含ませた(95% O、5% CO)クレブス−ヘンゼライト(Krebs−Henseliet)(KH)バッファー溶液中で維持した。当該輪を、連続的な通気の下で、KH溶液を含む10mlの槽中の等尺性張力を記録するために置いた。当該輪を1.5時間、37℃で平衡化し、実験の間中、2gの静止張力下に維持した。次いで、各大動脈輪を、フェニレフリン(phenylepherine、PE)を段階的増量(0.1nM〜10μM)で添加することによって収縮させた。他の実験では、tPAのみ、またはtPAと218Oもしくは218Nを、様々な濃度で、PEを添加する15分前に添加した。等尺性張力は、力置換トランスデューサ(force displacement transducer)で測定し、コンピューター化されたシステムを使用してオンラインで記録した。
【0130】
前述の特定の実施態様は、本発明の一般的な特性を十分に明らかにしているため、第三者は、現在の知識を適用することによって、過度の実験をすることなく、かつ、本発明の一般的な概念から逸脱することなく、このような特定の実施態様を様々な応用のために、容易に改変および/または応用でき、従って、このような応用および改変は、開示された実施態様の均等物の意味および範囲内で理解されるはずであり、かつ、それを意図している。本願明細書で使用された用語または用語法は、記述目的のためのものであり、限定目的ではないことが理解されるだろう。様々な開示された化学構造および機能を実行するための手段、物質、および工程は、本発明から逸脱することなく、様々な代わりの形態を採ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号3に記載されるアミノ酸配列(R−Arg−Met−Ala−Pro−Glu−Glu−Ile−Ile−Met−Asp−Arg−Pro−Phe−Leu−Phe−Val−Val−Arg−R)を有する単離されたペプチドまたはその断片であって、Rは、水素、アセチル、アルキル、およびアミノ保護基からなる群から選択され、Rはカルボキシル、アミド、アルコール、エステル、およびカルボキシル保護基からなる群から選択され、前記断片は、アミノ酸配列 Glu−Glu−Ile−Ile−Met−Aspを含む7〜17のアミノ酸残基からなる単離されたペプチドまたはその断片。
【請求項2】
配列番号1および4〜6からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する請求項1記載のペプチド。
【請求項3】
配列番号1に記載されるアミノ酸配列を有する請求項1記載のペプチド。
【請求項4】
配列番号3に記載されるアミノ酸配列(R−Arg−Met−Ala−Pro−Glu−Glu−Ile−Ile−Met−Asp−Arg−Pro−Phe−Leu−Phe−Val−Val−Arg−R)を有する単離されたペプチドまたはその断片を含む医薬組成物であって、Rは、水素、アセチル、アルキル、およびアミノ保護基からなる群から選択され、Rは、カルボキシル、アミド、アルコール、エステル、およびカルボキシル保護基からなる群から選択され、前記断片は、アミノ酸配列 Glu−Glu−Ile−Ile−Met−Aspを含む7〜17のアミノ酸残基からなり、前記医薬組成物は、薬剤的に許容できる担体をさらに含む医薬組成物。
【請求項5】
前記ペプチドは、配列番号1および4〜6からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する請求項4記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記ペプチドは、配列番号1に記載されるアミノ酸配列を有する請求項5記載の医薬組成物。
【請求項7】
神経損傷を有する、またはこれを有するリスクを有している被験者において神経障害を減少させるための方法であって、前記被験者に、配列番号7記載のアミノ酸配列(R−Arg−Met−Ala−Pro−Glu−Glu−Ile−Ile−Met−Asp−Arg−Pro−Phe−Leu−X−Val−Val−Arg−R)を有する単離されたペプチドまたはその断片の治療的有効量を含む医薬組成物を投与する工程を含み、
は、水素、アセチル、アルキル、およびアミノ保護基からなる群から選択され、Xは、TyrおよびPheからなる群から選択され、Rは、カルボキシル、アミド、アルコール、エステル、およびカルボキシル保護基からなる群から選択され、前記断片は、配列 Glu−Glu−Ile−Ile−Met−Aspを含む7〜17のアミノ酸残基からなり、前記医薬組成物は、薬剤的に許容できる担体をさらに含む方法。
【請求項8】
前記ペプチドは、配列番号1、2、4〜6、8〜10からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記ペプチドは、配列番号1に記載されるアミノ酸配列を有する請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記ペプチドは、配列番号2記載のアミノ酸配列を有する請求項8記載の方法。
【請求項11】
前記神経損傷は、脳卒中、脳障害、脊髄障害、脳手術、心臓手術、および神経障害に起因する請求項7記載の方法。
【請求項12】
前記神経損傷は、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、および筋萎縮性側索硬化症からなる群から選択される請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記医薬組成物は、静脈内、皮下、筋肉内、腹腔内、経口、局所、皮内、経皮、鼻腔内、硬膜外、点眼、膣内または直腸の投与経路によって投与される請求項7記載の方法。
【請求項14】
神経損傷を有する、またはこれを有するリスクを有している被験者において神経障害を減少させるための方法であって、前記被験者に、治療的有効量の線維素溶解薬および配列番号7に記載されるアミノ酸配列(R−Arg−Met−Ala−Pro−Glu−Glu−Ile−Ile−Met−Asp−Arg−Pro−Phe−Leu−X−Val−Val−Arg−R)を有する単離されたペプチドまたはその断片を含む医薬組成物を投与する工程を含み、Rは、水素、アセチル、アルキル、およびアミノ保護基からなる群から選択され、Xは、TyrおよびPheからなる群から選択され、Rは、カルボキシル、アミド、アルコール、エステル、およびカルボキシル保護基からなる群から選択され、前記断片は、配列 Glu−Glu−Ile−Ile−Met−Aspを含む7〜17のアミノ酸残基からなり、前記医薬組成物は、薬剤的に許容できる担体をさらに含む方法。
【請求項15】
前記ペプチドは、配列番号1、2、4〜6、8〜10からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記ペプチドは、配列番号1に記載されるアミノ酸配列を有する請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記ペプチドは、配列番号2記載のアミノ酸配列を有する請求項15記載の方法。
【請求項18】
前記線維素溶解薬は、tPA、uPA、scuPA、tcuPA、ストレプトキナーゼ、rt−PA、アルテプラーゼ、レテプラーゼ、ラノテプラーゼ、TNK−rt−PA、アニソイル化プラスミノーゲンストレプトキナーゼ複合体、アニストレプラーゼ、およびこれらの誘導体からなる群から選択される請求項14記載の方法。
【請求項19】
前記神経損傷は、脳卒中、脳障害、脊髄障害、脳手術、心臓手術、および神経障害に起因する請求項14記載の方法。
【請求項20】
前記神経障害は、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、および筋萎縮性側索硬化症からなる群から選択される請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記医薬組成物は、静脈内、皮下、筋肉内、腹腔内、経口、局所、皮内、経皮、鼻腔内、硬膜外、点眼、膣内または直腸の投与経路によって投与される請求項14記載の方法。
【請求項22】
前記ペプチドまたはその断片は、前記線維素溶解薬の投与後に投与される請求項14記載の方法。
【請求項23】
線溶療法の方法であって、それを必要とする被験者に、治療的有効量の線維素溶解薬および配列番号7に記載されるアミノ酸配列(R−Arg−Met−Ala−Pro−Glu−Glu−Ile−Ile−Met−Asp−Arg−Pro−Phe−Leu−X−Val−Val−Arg−R)を有する単離されたペプチドまたはその断片を含む医薬組成物を投与する工程を含み、Rは、水素、アセチル、アルキル、およびアミノ保護基からなる群から選択され、Xは、TyrおよびPheからなる群から選択され、Rは、カルボキシル、アミド、アルコール、エステル、およびカルボキシル保護基からなる群から選択されるが、ただし、配列番号2に記載されるペプチドは除かれ、前記断片は、配列 Glu−Glu−Ile−Ile−Met−Aspを含む7〜17のアミノ酸残基からなり、前記医薬組成物は、薬剤的に許容できる担体をさらに含む方法。
【請求項24】
前記ペプチドは、配列番号1、4〜6、8〜10からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記ペプチドは、配列番号1に記載されるアミノ酸配列を有する請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記線維素溶解薬は、tPA、uPA、scuPA、tcuPA、ストレプトキナーゼ、rt−PA、アルテプラーゼ、レテプラーゼ、ラノテプラーゼ、TNK−rt−PA、アニソイル化プラスミノーゲンストレプトキナーゼ複合体、アニストレプラーゼ、およびこれらの誘導体からなる群から選択される請求項23記載の方法。
【請求項27】
前記医薬組成物は、静脈内、皮下、筋肉内、腹腔内、経口、局所、皮内、経皮、鼻腔内、硬膜外、点眼、膣内または直腸の投与経路によって投与される請求項23記載の方法。
【請求項28】
前記ペプチドまたはその断片は、前記線維素溶解薬の投与後に投与される請求項23記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−534238(P2010−534238A)
【公表日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−517541(P2010−517541)
【出願日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際出願番号】PCT/IL2008/001027
【国際公開番号】WO2009/013753
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(510022912)スロムボーテック リミテッド (1)
【Fターム(参考)】