説明

プラズマディスプレイパネルおよびその製造方法

【課題】歩留まりを低下させることなく金属の微粒子または金属酸化物の微粒子を含む分散液を焼成して形成した透明電極を有し、かつ放電セル毎の放電特性のばらつきが小さく品質の高い画像を表示するプラズマディスプレイパネルおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】走査バス電極221a、222aは走査電極22の長手方向の外縁を構成し内側に間隙を構成するように形成され、維持バス電極231a、232aは維持電極23の長手方向の外縁を構成し内側に間隙を構成するように形成され、走査透明電極22bは走査バス電極221a、222aの間隙に、維持透明電極23bは維持バス電極231a、232aの間隙に、それぞれ金属の微粒子または金属酸化物の微粒子を含む分散液を用いて形成された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示デバイス等に用いる交流面放電型プラズマディスプレイパネルおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(以下、単に「パネル」と略記する)として代表的な交流面放電型パネルは、対向配置された前面板と背面板との間に多数の放電セルが形成されている。前面板は、ガラス製の前面基板と、1対の走査電極と維持電極とからなる表示電極対と、それらを覆う誘電体層および保護層を有する。背面板は、ガラス製の背面基板と、データ電極と、それを覆う誘電体層と、隔壁と、蛍光体層とを有する。そして、表示電極対とデータ電極とが立体交差するように前面板と背面板とが対向配置されて密封され、内部の放電空間には放電ガスが封入されている。ここで表示電極対とデータ電極とが対向する部分に放電セルが形成される。このように構成されたパネルの各放電セル内でガス放電を発生させ、赤、緑、青各色の蛍光体を励起発光させてカラー表示を行っている。
【0003】
走査電極および維持電極のそれぞれは、例えば幅の広いストライプ状の透明電極の上に幅の狭いストライプ状のバス電極を積層して形成されている。透明電極は、例えばスパッタ法等を用いて前面基板上に形成されたITO薄膜を、フォトリソグラフィー法等によりストライプ状にパターニングして形成する。またバス電極は、透明電極上に銀ペーストをストライプ状に印刷し焼成して形成する(例えば、特許文献1参照)。しかしながらスパッタ法等でITO薄膜を形成するためには真空装置や露光機等の設備が必要となり、生産設備が大型になるだけでなく、生産性が低いという問題点があった。
【0004】
これらの課題を解決するために、インジウム、錫、アンチモン、アルミニウムおよび亜鉛から選ばれた金属の微粒子を含む分散液を塗布、焼成して、透明電極を形成する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、インジウムと錫とを必須成分とするITO複合酸化物を350℃〜800℃で焼成して結晶粒界を成長させたITO超微粒子粉末を有機溶媒に溶解してなる塗布液を塗布、焼成して透明電極を形成する方法も開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2000−156168号公報
【特許文献2】特開2005−183054号公報
【特許文献3】特開2005−166350号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した微粒子を含む分散液を焼成して形成した透明電極は、スパッタ法等で形成したITO薄膜に比較して機械的強度が弱く、剥れやすい、傷がつきやすい等の欠点があり、従来のITO薄膜と単純に置き換えると歩留まりが大幅に低下するという課題があった。
【0007】
また、分散液を塗布するには、スクリーン印刷法、インクジェット塗布法等を用いることができる。しかしながらこのような厚膜印刷法は印刷精度に限界があり、精度のよい透明電極を形成することが困難であった。特に放電セル内部の走査電極と維持電極との距離、すなわち放電ギャップの距離は、その放電セルの放電特性を大きく左右する。そのため透明電極の印刷精度が悪く放電ギャップの距離のばらつきが大きいと、放電セル毎の放電特性のばらつきも大きくなり表示画面にむらが発生して画像表示品質が低下するという課題があった。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、歩留まりを低下させることなく金属の微粒子または金属酸化物の微粒子を含む分散液を焼成して形成した透明電極を有し、かつ放電セル毎の放電特性のばらつきが小さく品質の高い画像を表示するパネルおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、走査バス電極と走査透明電極とを有する走査電極と、維持バス電極と維持透明電極とを有する維持電極とを、前面基板上に形成したパネルであって、走査バス電極は走査電極の長手方向の外縁を構成し内側に間隙を構成するように形成され、維持バス電極は維持電極の長手方向の外縁を構成し内側に間隙を構成するように形成され、走査透明電極は走査バス電極の間隙に、維持透明電極は維持バス電極の間隙に、それぞれ金属の微粒子または金属酸化物の微粒子を含む分散液を用いて形成されたことを特徴とする。この構成により、歩留まりを低下させることなく金属の微粒子または金属酸化物の微粒子を含む分散液を焼成して形成した透明電極を有し、かつ放電セル毎の放電特性のばらつきが小さく品質の高い画像を表示するパネルを提供することができる。
【0010】
また本発明のパネルの前記微粒子は、インジウムおよび錫を含んでもよい。
【0011】
また本発明のパネルは、前記分散液をディスペンサ塗布法で塗布することが望ましい。
【0012】
また本発明は、走査バス電極と走査透明電極とを有する走査電極と、維持バス電極と維持透明電極とを有する維持電極とを、前面基板上に形成したパネルの製造方法であって、走査電極の長手方向の外縁を構成し内側に間隙を構成するように走査バス電極を形成し、維持電極の長手方向の外縁を構成し内側に間隙を構成するように維持バス電極を形成し、走査バス電極の前記間隙に走査透明電極を、維持バス電極の前記間隙に維持透明電極を、それぞれ金属の微粒子または金属酸化物の微粒子を含む分散液を用いて形成したことを特徴とする。この方法により、歩留まりを低下させることなく金属の微粒子または金属酸化物の微粒子を含む分散液を焼成して形成した透明電極を有し、かつ放電セル毎の放電特性のばらつきが小さく品質の高い画像を表示するパネルの製造方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、歩留まりを低下させることなく金属の微粒子または金属酸化物の微粒子を含む分散液を焼成して形成した透明電極を有し、かつ放電セル毎の放電特性のばらつきが小さく品質の高い画像を表示するパネルおよびその製造方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態におけるパネルについて、図面を用いて説明する。
【0015】
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態におけるパネル10の構造を示す分解斜視図である。パネル10は、前面板20と背面板30とを対向配置し、周辺部を封着部材(図示せず)を用いて封着することにより構成されており、内部に多数の放電セルが形成されている。
【0016】
前面板20は、ガラス製の前面基板21と、走査電極22と維持電極23とからなる表示電極対24と、ブラックストライプ25と、誘電体層26と、保護層27とを有する。前面基板21上には1対の走査電極22と維持電極23との間に放電ギャップを形成した表示電極対24が互いに平行に複数形成されている。そして隣り合う表示電極対24の間にはブラックストライプ25が形成されている。図1には表示電極対24とブラックストライプ25とが、走査電極22、維持電極23、ブラックストライプ25、走査電極22、維持電極23、ブラックストライプ25、・・・となるように形成されている図面を示した。しかし表示電極対24とブラックストライプ25とが、走査電極22、維持電極23、ブラックストライプ25、維持電極23、走査電極22、ブラックストライプ25、走査電極22、維持電極23、ブラックストライプ25、維持電極23、走査電極22、ブラックストライプ25、・・・となるように形成されていてもよい。
【0017】
そしてそれら表示電極対24およびブラックストライプ25を覆うように誘電体層26が形成され、誘電体層26上に保護層27が形成されている。
【0018】
背面板30は、ガラス製の背面基板31と、データ電極32と、誘電体層33と、隔壁34と、蛍光体層35とを有する。背面基板31上には、複数のデータ電極32が互いに平行に形成されている。そしてデータ電極32を覆うように誘電体層33が形成され、さらにその上に井桁状の隔壁34が形成され、誘電体層33の表面と隔壁34の側面とに赤、緑、青各色の蛍光体層35が形成されている。
【0019】
そして、表示電極対24とデータ電極32とが立体交差するように前面板20と背面板30とが対向配置され、表示電極対24とデータ電極32とが対向する部分に放電セルが形成される。放電セルが形成された画像表示領域の外側の位置で、低融点ガラスを用いて前面板20と背面板30とが封着され、内部の放電空間には放電ガスが封入されている。
【0020】
図2は、本発明の実施の形態におけるパネル10の表示電極対24の詳細を示す図であり、図2(a)はパネル10を前面板20側から見た正面図、図2(b)は前面板20の断面図である。
【0021】
走査電極22は、不透明な2本の走査バス電極221a、222aと、透明な走査透明電極22bとを有する。維持電極23も2本の維持バス電極231a、232aと維持透明電極23bとを有する。走査バス電極221a、222aは走査電極22の長手方向の外縁を構成し内側に間隙を構成するように形成され、維持バス電極231a、232aは維持電極23の長手方向の外縁を構成し内側に間隙を構成するように形成される。従って、走査バス電極221aと維持バス電極231aとの間に放電ギャップが形成される。また、走査透明電極22bは走査バス電極221a、222aの間隙に形成され、維持透明電極23bは維持バス電極231a、232aの間隙に形成される。
【0022】
走査バス電極221aは黒色層221cと導電層221dとからなり、走査バス電極222aは黒色層222cと導電層222dとからなる。同様に、維持バス電極231aは黒色層231cと導電層231dとからなり、維持バス電極232aは黒色層232cと導電層232dとからなる。以下、走査バス電極221a、222aをそれぞれ単に「バス電極221a、222a」と称し、維持バス電極231a、232aをそれぞれ単に「バス電極231a、232a」と称する。また走査透明電極22bを単に「透明電極22b」と称し、維持透明電極23bを単に「透明電極23b」と称する。
【0023】
黒色層221c、222c、231c、232cは、パネル10を表示面側から見たときにバス電極221a、222a、231a、232aを黒く見せるために設けられており、例えば酸化ルテニウムを主成分とする黒色の材料を前面基板21の上に幅の狭いストライプ状に形成したものである。そして導電層221d、222d、231d、232dは、バス電極221a、222a、231a、232aの導電性を高めるために設けられており、黒色層221c、222c、231c、232cの上に銀を含む導電性の材料を積層して形成したものである。
【0024】
ブラックストライプ25は、パネル10を表示面側から見たときに表示面を黒く見せるために設けられている。本実施の形態では、酸化ルテニウムを主成分とする黒色の材料を用いて形成したが、黒色に見える他の材料、例えば黒色顔料を主成分とした材料を用いてもよい。なお、ブラックストライプ25は必ずしも設ける必要はないが、表示面を黒くしてコントラストの高い画像を表示する上で有効である。
【0025】
透明電極22b、23bは、放電空間に強い電界を発生して放電を発生させるとともに、蛍光体層35で発生した光をパネル10外部へ取り出すために設けられている。そして透明電極22b、23bはそれぞれ、インジウム、錫、アンチモン、アルミニウムおよび亜鉛から選ばれた金属の微粒子または金属酸化物の微粒子を含む分散液を幅の広いストライプ状に塗布し、非酸化性雰囲気中で乾燥した後酸化性雰囲気中で焼成して形成したものである。
【0026】
次にパネル10の製造方法について説明する。図3は、本発明の実施の形態におけるパネル10の前面板20の製造方法を説明するための図である。
【0027】
前面板20を製造するには、まずガラス製の前面基板21をアルカリ洗浄する。
【0028】
その後、酸化ルテニウムや黒色顔料を主成分とする黒色層用ペーストを用いて、黒色層221c、222c、231c、232cの前駆体221cx、222cx、231cx、232cx、およびブラックストライプ25の前駆体25xを前面基板21上に形成する。そして、銀を含む導電層用ペーストを用いて前駆体221cx、222cx、231cx、232cxの上に導電層221d、222d、231d、232dの前駆体221dx、222dx、231dx、232dxを形成する。
【0029】
バス電極221a、231aは放電ギャップを形成するので、それらの前駆体である前駆体221cx、231cx、221dx、231dxも精度よく形成する必要がある。本実施の形態においては、クリーン印刷法を用いて感光性の黒色層用ペーストを前面基板21の全面に塗布し露光マスクを用いて露光する。その後、感光性の導電層用ペーストを前面基板21の全面に塗布し露光マスクを用いて露光する。そしてその後、現像を行って前駆体221cx、222cx、231cx、232cx、25x、221dx、222dx、231dx、232dxを形成した(図3(a))。
【0030】
次に、前駆体221cx、222cx、231cx、232cx、25x、221dx、222dx、231dx、232dxが形成された前面基板21を焼成して、バス電極221a、222a、231a、232a、ブラックストライプ25を形成する。このときの焼成のピーク温度は550℃〜600℃が望ましく、本実施の形態においては580℃である。またバス電極221a、222a、231a、232aの厚みは、1μm〜6μmが望ましく、本実施の形態においては4μmである(図3(b))。
【0031】
次に、透明電極22b、23bを形成する。透明電極22b、23bを形成するには、まず、平均粒径が5nm〜100nmであって、インジウム、錫、アンチモン、アルミニウムおよび亜鉛の中の少なくとも1つの金属の微粒子、またはこれら金属の中の少なくとも1つの金属の酸化物の微粒子(これら金属の中の2つ以上の元素を含む、いわゆる複合酸化物の微粒子を含む)、またはこれら金属の中の2つ以上の合金の微粒子、またはこれらの微粒子の混合物を含む分散液を作成する。本実施の形態においては、平均粒径が10nmのインジウム−錫の合金微粒子を12wt%の濃度で分散剤とともに有機溶媒中に分散させ、分散液を作成した。なお、有機溶媒としては、デカヒドロナフタレンを用いたが、これ以外にも、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、テトラデカンのような無極性溶媒、芳香族炭化水素類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、オクタデカン、ノナデカン、エイコサン、トリメチルペンタン等の長鎖アルカン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等の環状アルカン等を用いることができる。
【0032】
次に、ディスペンサ塗布法を用いて、バス電極221aとバス電極222aとの間に分散液を塗布して透明電極22bの前駆体22bxを形成し、バス電極231aとバス電極232aとの間に分散液を塗布して透明電極23bの前駆体23bxを形成する。ディスペンサ塗布装置としては、例えば表示電極対24の繰り返しピッチの整数倍のピッチで複数の塗布ノズルを有するヘッドを備えた構成が望ましい。
【0033】
図4は、本発明の実施の形態におけるパネル10の前面基板21上に分散液を塗布する様子を示す図であり、バス電極221a、222a、231a、232aが形成された前面基板21とディスペンサ塗布装置のヘッド90とを示している。ただし、図4(a)は前面基板21の断面方向から見た模式図であり、図4(b)は前面基板21の正面方向から見た模式図である。本実施の形態においては、表示電極対24の繰り返しピッチの2倍のピッチで384個の塗布ノズル91を有するヘッド90を備えたディスペンサ塗布装置を用いた。そしてまずそれぞれの塗布ノズル91をバス電極221aとバス電極222aとの間隙に位置合わせして384本の隙間に分散液92を塗布する。次にヘッド90を表示電極対24の繰り返しピッチだけ移動し、最初に塗布されなかったバス電極221aとバス電極222aとの間隙384本に分散液92を塗布する。次にそれぞれの塗布ノズル91をバス電極231aとバス電極232aとの間隙に位置合わせして384本の隙間に分散液92を塗布する。次にヘッド90を表示電極対24の繰り返しピッチだけ移動し、塗布されなかったバス電極231aとバス電極232aとの間隙384本に分散液92を塗布する。以上のように、1回に384本づつ塗布し、2往復4回の塗布で1536本のバス電極の隙間に分散液92を塗布して768対の透明電極22b、23bの前駆体22bx、23bxを形成した。このとき、透明電極22bの前駆体22bxは、2本のバス電極221a、222aの間からあふれることなくかつ一様な厚さとなるように塗布し、透明電極23bの前駆体23bxは2本のバス電極231a、232aの間からあふれることなくかつ一様な厚さとなるように塗布した(図3(c))。
【0034】
その後、前駆体22bx、23bxが形成された前面基板21を乾燥し、酸化性雰囲気中で400℃〜600℃で焼成して、80nm〜1000nmの透明導電膜からなる透明電極22b、23bを形成する。本実施の形態においては、まず前駆体22bx、23bxが形成された前面基板21を1×10−3Paの減圧下において230℃で10min保持して乾燥した。そしてその後、大気中で500℃で60min保持して焼成し、厚さ約300nmのITO膜からなる透明電極22b、23bを形成した(図3(d))。
【0035】
次に、走査電極22、維持電極23およびブラックストライプ25が形成された前面基板21上に、スクリーン印刷法等の公知技術により、誘電体層26の前駆体を形成する。そして誘電体層26の前駆体を焼成して、厚み20μm〜50μmの誘電体層26を形成する。
【0036】
本実施の形態においては、酸化硼素35wt%、酸化硅素1.4wt%、酸化亜鉛27.6wt%、酸化物バリウム3.3wt%、酸化ビスマス25wt%、酸化アルミニウム1.1wt%、酸化モリブデン4.0wt%、酸化タングステン3.0wt%を含んだ誘電体ガラスを含む誘電体ペーストを作成した。このようにして作成された誘電体ガラスの軟化点は約570℃である。次に走査電極22、維持電極23およびブラックストライプ25が生成された前面基板21上にダイコート法により誘電体ペーストを塗布して誘電体層26の前駆体を形成した。そして誘電体層26の前駆体を約590℃で焼成して誘電体層26を形成した。このときの誘電体層26の厚みは約40μmである。
【0037】
なお、誘電体ペーストとしては、上記以外にも、例えば、酸化硼素、酸化硅素、酸化亜鉛、アルカリ土類酸化物、アルカリ金属酸化物、酸化ビスマス、酸化アルミニウム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化セリウム等の中からいくつかを含んだ軟化点520℃〜590℃の誘電体ガラスを含む誘電体ペーストを用いることができる。
【0038】
そして誘電体層26の上に、酸化マグネシウムを主成分とする保護層27を、真空蒸着法等の公知技術により形成する(図3(e))。
【0039】
なお本実施の形態においては、インジウム−錫の合金微粒子を用いてITO膜からなる透明電極22b、23bを形成したが、上記以外にも、例えばインジウムおよび錫を含む金属の微粒子または金属酸化物の微粒子を用いて透明電極を形成してもよく、また錫の微粒子を用いて酸化錫膜からなる透明電極を形成してもよく、また亜鉛の微粒子を用いて酸化亜鉛膜からなる透明電極を形成してもよい。また、ITO微粒子を用いてITO膜からなる透明電極を形成してもよく、酸化錫の微粒子を用いて酸化錫膜からなる透明電極を形成してもよく、また酸化亜鉛の微粒子を用いて酸化亜鉛膜からなる透明電極を形成してもよい。
【0040】
また本実施の形態では、黒色層221c、222c、231c、232cおよび導電層221d、222d、231d、232dの前駆体221cx、222cx、231cx、232cx、221dx、222dx、231dx、232dxを焼成後、透明電極22b、23bの前駆体22bx、23bxを形成し焼成した。しかし、例えば前駆体221cx、222cx、231cx、232cx、221dx、222dx、231dx、232dxの形成後さらに透明電極22b、23bの前駆体22bx、23bxを形成し、その後これらの前駆体221cx、222cx、231cx、232cx、221dx、222dx、231dx、232dx、22bx、23bxを同時に焼成して走査電極22、維持電極23を形成してもよい。
【0041】
本実施の形態では、表示電極対24の繰り返しピッチの2倍のピッチで384個の塗布ノズル91を配置したヘッド90を用いて、ヘッド90を2往復させて1536本の透明電極の前駆体を形成した。しかし塗布ノズルのピッチ、塗布ノズルの数等、ディスペンサ塗布装置の仕様はディスペンサ塗布装置の位置決め精度、ヘッドの加工精度等の条件、パネルの仕様等に合わせて最適に設定することが望ましい。
【0042】
次に背面板30の製造方法について説明する。図5は、本実施の形態におけるパネル10の背面板30の製造方法を説明するための図である。
【0043】
まず、スクリーン印刷法、フォトリソグラフィー法等の公知技術を用いて、背面基板31上に、銀を主成分とする導電層用ペーストを一定間隔でストライプ状に塗布し、データ電極32の前駆体32xを形成する(図5(a))。
【0044】
次に、前駆体32xが形成された背面基板31を焼成して、データ電極32を形成する。データ電極32の厚みは、例えば2μm〜10μmであり、本実施の形態では3μmである(図5(b))。
【0045】
続いて、データ電極32を形成した背面基板31上に誘電体ペーストを塗布し、この後焼成して誘電体層33を形成する。誘電体層33の厚みは、例えば約5μm〜15μmであり、本実施の形態では10μmである(図5(c))。
【0046】
続いて、誘電体層33を形成した背面基板31上に感光性の誘電体ペーストを塗布した後、焼成して隔壁34の前駆体を形成する。その後、露光マスクを用いて感光し、エッチングして隔壁34を形成する。隔壁34の高さは、例えば100μm〜150μmであり、本実施の形態では120μmである(図5(d))。
【0047】
そして、隔壁34の壁面および誘電体層33の表面に、赤色蛍光体、緑色蛍光体、青色蛍光体のいずれかを含む蛍光体インクを塗布する。その後乾燥、焼成して蛍光体層35を形成する。
【0048】
赤色蛍光体としては、例えば(Y,Gd)BO:Eu、(Y,V)PO:Eu等を、緑色蛍光体としては、例えばZnSiO:Mn、(Y,Gd)BO:Tb、(Y,Gd)Al(BO:Tb等を、青色蛍光体としては、例えばBaMgAl1017:Eu、SrMgSi:Eu等をそれぞれ用いることができる(図5(e))。
【0049】
そして上述した前面板20と背面板30とを、表示電極対24とデータ電極32とが立体交差するように対向配置し、放電セルが形成された画像表示領域の外側の位置で低融点ガラスを用いて封着する。その後、内部の放電空間にキセノンを含む放電ガスを封入して、パネル10が完成する。
【0050】
ところで透明電極形成の従来技術では、ディスペンサ塗布法においても次のような課題を有している。ディスペンサ塗布法によって透明電極を形成した場合、先述した分散液は比較的粘性が低いため、塗布ノズルの目詰まりといった不具合は生じにくく、透明電極分散液の塗布特性は良好であるが、一般的なガラス基板に対しては、分散液の塗れ性が高くなり、塗布後の透明電極端部の形状が安定しない状態が生じる。
【0051】
これに対して、本実施の形態においては、透明電極22bは2本のバス電極221a、222aの間、透明電極23bは2本のバス電極231a、232aの間に、それぞれディスペンサ塗布法を用いてあふれることなくかつ一様な厚さとなるようにインジウム、錫等の金属微粒子を含む分散液を塗布し、酸化性雰囲気中で焼成して形成される。そしてその次の工程において透明電極22b、23bを覆うように誘電体層26を形成する。そのため、たとえ透明電極22b、23bの機械的強度が低くても、傷がついたり剥れたりする可能性が非常に小さくなる。また、放電ギャップの距離は透明電極22b、23bの距離で決まるのではなく、精度よく形成されたバス電極221aとバス電極231aとの距離で決定する。従って、放電セル毎の放電特性のばらつきを小さく抑えることができる。
【0052】
また本実施の形態において、平均粒径が10nmのインジウム−錫の合金微粒子を高濃度で分散させた分散液を塗布、乾燥後、500℃の高温で焼成して形成した透明電極22b、23bは、抵抗が低く、透過率が高く、かつ前面基板21やバス電極221a、222a、231a、232aとの密着性も良好であった。これは高温焼成することによりインジウムが透明な酸化インジウムに変化するとともに、微粒子間の密着性や基板との密着性がより向上したためと考えられる。
【0053】
また本実施の形態において、平均粒径が5nm〜100nmの金属の微粒子を用いて透明電極22b、23bを形成するものとした。これは、平均粒径が5nm以下では、微粒子と誘電体ガラスとの反応が生じやすく、また、銀を含むバス電極221a、222a、231a、232aとの段差部に亀裂が生じやすくなるためである。また、平均粒径が100nm以上になると、焼結後の粒子間の接触面積が減少しシート抵抗が大きくなるためである。
【0054】
また本実施の形態においては、金属の微粒子を含む分散液をディスペンサ塗布装置を用いて2本のバス電極221a、222aの間および2本のバス電極231a、232aの間に塗布した。これにより、分散液を無駄なく塗布することができる。
【0055】
なお、本実施の形態において用いた具体的な各数値は、単に一例を挙げたに過ぎず、パネルの仕様等に合わせて、適宜最適な値に設定することが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、歩留まりを低下させることなく金属の微粒子または金属酸化物の微粒子を含む分散液を焼成して形成した透明電極を有し、かつ放電セル毎の放電特性のばらつきが小さく品質の高い画像を表示することができ、パネルおよびその製造方法として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施の形態におけるパネルの構造を示す分解斜視図
【図2】同パネルの表示電極対の詳細を示す図
【図3】同パネルの前面板の製造方法を説明するための図
【図4】同パネルの前面基板上に分散液を塗布する様子を示す図
【図5】同パネルの背面板の製造方法を説明するための図
【符号の説明】
【0058】
10 パネル
20 前面板
21 前面基板
22 走査電極
22b,23b 透明電極
22bx,23bx (透明電極の)前駆体
23 維持電極
24 表示電極対
25 ブラックストライプ
25x (ブラックストライプの)前駆体
26 誘電体層
27 保護層
30 背面板
31 背面基板
32 データ電極
32x (データ電極の)前駆体
33 誘電体層
34 隔壁
35 蛍光体層
221a,222a,231a,232a バス電極
221c,222c,231c,232c 黒色層
221cx,222cx,231cx,232cx (黒色層の)前駆体
221d,222d,231d,232d 導電層
221dx,222dx,231dx,232dx (導電層の)前駆体
90 ヘッド
91 塗布ノズル
92 分散液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査バス電極と走査透明電極とを有する走査電極と、維持バス電極と維持透明電極とを有する維持電極とを、前面基板上に形成したプラズマディスプレイパネルであって、
前記走査バス電極は前記走査電極の長手方向の外縁を構成し内側に間隙を構成するように形成され、前記維持バス電極は前記維持電極の長手方向の外縁を構成し内側に間隙を構成するように形成され、
前記走査透明電極は前記走査バス電極の前記間隙に、前記維持透明電極は前記維持バス電極の前記間隙に、それぞれ金属の微粒子または金属酸化物の微粒子を含む分散液を用いて形成されたことを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項2】
前記微粒子は、インジウムおよび錫を含むことを特徴とする請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項3】
前記分散液をディスペンサ塗布法で塗布したことを特徴とする請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項4】
走査バス電極と走査透明電極とを有する走査電極と、維持バス電極と維持透明電極とを有する維持電極とを、前面基板上に形成したプラズマディスプレイパネルの製造方法であって、
前記走査電極の長手方向の外縁を構成し内側に間隙を構成するように前記走査バス電極を形成し、前記維持電極の長手方向の外縁を構成し内側に間隙を構成するように前記維持バス電極を形成し、
前記走査バス電極の前記間隙に前記走査透明電極を、前記維持バス電極の前記間隙に前記維持透明電極を、それぞれ金属の微粒子または金属酸化物の微粒子を含む分散液を用いて形成したことを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−15858(P2010−15858A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−175413(P2008−175413)
【出願日】平成20年7月4日(2008.7.4)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】