説明

プラズマディスプレイパネルの製造方法

【課題】色ムラや輝度ムラの少ないプラズマディスプレイパネルを提供する。
【解決手段】隔壁間に蛍光体インクを塗布して蛍光体層を形成する製造方法において、蛍光体インク250が貯留されたインク供給タンク210aからインク供給用送液チューブ270を介して蛍光体インク250をインクジェットヘッド230に供給し、インクジェットヘッド230により隔壁間に蛍光体インク250を吐出することにより蛍光体インクを塗布し、かつ前記インク供給用送液チューブ270は、インク供給タンク210aの側壁近傍において、インク供給用送液チューブ270の先端部がインク供給タンク210aに貯留された蛍光体インク250液面とインク供給タンク210a底面の中間位置よりも前記インク供給タンク210aの底面側にくるように配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、表示デバイスなどに用いられるプラズマディスプレイパネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと称する)は、放電セルを区画する複数の隔壁を有する。隔壁間には、紫外線により励起されて発光する蛍光体層が形成されている。蛍光体層の形成方法として、蛍光体ペーストをストライプ状の隔壁間に塗布した後に、隔壁間の中心部に空気を吹き付けて隔壁の側壁に蛍光体ペーストを盛り上げさせて充分な膜厚を形成する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、蛍光体ペーストを塗布後に、基板の上下面を逆転させて乾燥し、隔壁の側壁に充分な膜厚を形成する方法が開示されている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−96911号公報
【特許文献2】特開2000−260330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年PDPは、さらなる高精細化が求められている。高精細化されたPDPでは、同じ画面サイズでも隔壁間の距離が短くなるため、隔壁間に蛍光体層を均一に形成することが困難となり、色ムラや輝度ムラが発生しやすくなるという課題があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、色ムラや輝度ムラの少ないPDPを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のPDPの製造方法は、基板上に形成した隔壁間に蛍光体粒子を含む蛍光体インクを塗布して蛍光体層を形成するプラズマディスプレイパネルの製造方法において、
蛍光体インクが貯留された供給容器から送液手段を介して蛍光体インクを吐出手段に供給し、前記吐出手段により前記隔壁間に蛍光体インクを吐出することにより蛍光体インクを塗布し、かつ前記送液手段は、前記供給容器の側壁近傍において、前記送液手段の先端部が前記供給容器に貯留された蛍光体インク液面と前記供給容器底面との間の中間位置よりも前記供給容器の底面側にくるように配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上記の方法によれば、色ムラや輝度ムラの少ないPDPを実現可能なPDPの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施の形態に係る製造方法を用いるPDPの構造を示す斜視図である。
【図2】同PDPの製造フローの一例を示す図である。
【図3】同PDPの製造方法に用いる製造装置の一例を示す概略断面図である。
【図4】同蛍光体塗布フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施の形態によるPDPの製造方法について、図1〜図4を用いて説明する。図1は本発明の実施の形態による交流面放電型PDPの構造を示す図である。図1に示すように、PDP10は、前面基板11と背面基板17とから構成されている。
【0010】
ガラス基板からなる前面基板11上には、走査電極12と維持電極13とで対をなす表示電極対14が互いに平行に複数対形成されている。走査電極12および維持電極13は、走査電極12−維持電極13−維持電極13−走査電極12の配列を繰り返すパターンで形成されている。走査電極12は、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)などの導電性金属酸化物からなる幅の広い透明電極12aの上に、導電性を高めるために銀(Ag)などの金属を含む幅の狭いバス電極12bを積層して形成されている。維持電極13も同様に、幅の広い透明電極13aの上に幅の狭いバス電極13bを積層して形成されている。
【0011】
さらに、表示電極対14を覆うように誘電体層15および酸化マグネシウム(MgO)からなる保護層16が形成されている。誘電体層15は、膜厚が約40μmの酸化ビスマス(Bi23)系低融点ガラスまたは酸化亜鉛(ZnO)系低融点ガラスで形成されている。保護層16は、膜厚が約0.8μmの酸化マグネシウム(MgO)を主体とするアルカリ土類金属酸化物からなる薄膜層である。保護層16は、少なくとも二つの機能を有する。一つ目は、誘電体層15をイオンスパッタから保護する機能である。二つ目は、放電開始電圧などの放電特性を安定させる機能である。
【0012】
ガラス基板からなる背面基板17上には、銀(Ag)などを主成分とする導電性の高い材料からなる互いに平行な複数のデータ電極18が形成されている。さらに、データ電極18を覆うように下地誘電体層19が形成されている。下地誘電体層19は、誘電体層15と同様の酸化ビスマス(Bi23)系低融点ガラスなどであってもよい。または、下地誘電体層19は、可視光反射層としての働きも兼ねるように酸化チタン(TiO2)粒子などを混合した材料であってもよい。
【0013】
下地誘電体層19上には縦隔壁22aと横隔壁22bとにより井桁状に構成された隔壁22が形成されている。下地誘電体層19の表面と隔壁22の側面とには、赤色、緑色、青色に発光する蛍光体層23が形成されている。隔壁22は、例えば低融点ガラス材料を用いて約0.12mmの高さに形成されている。蛍光体層23は、約15μmの膜厚を有する。蛍光体層23は、青色に発光する蛍光体粒子と、緑色に発光する蛍光体粒子および赤色に発光する蛍光体粒子から構成されている。具体的には、青色に発光する蛍光体粒子としては、BaMgAl1017:Euなどが用いられる。緑色に発光する蛍光体としてZn2SiO4:Mnなどが用いられる。赤色に発光する蛍光体としては(Y、Gd)BO3:Euなどが用いられる。
【0014】
前面基板11と背面基板17は、表示電極対14とデータ電極18とが交差するように、対向配置される。そして、表示電極対14とデータ電極18とが交差する部分に放電セル24が形成されている。前面基板11と背面基板17は、それらの外周部がフリットなどの封着材(図示せず)によって封着され、内部に放電空間が形成されている。放電空間は隔壁22によって複数の区画に仕切られ、放電空間にはキセノン(Xe)などを含む放電ガスが55kPa〜80kPaの圧力で封入されている。
【0015】
PDP10は、放電セル24内で放電が発生し、放電に伴って発生した紫外線が蛍光体層23を励起発光させることにより画像が表示される。なお、PDP10の構造は上述したものに限られない。例えば、隔壁22は、ストライプ状であってもよい。
【0016】
図2は、背面基板の製造プロセスフローを示す図である。図2に示すように、まず、ステップ1で、背面基板17上にデータ電極18が形成される。具体的には、背面基板17上に、銀(Ag)材料を含む電極ペーストにより所定のパターンの材料層を形成し、その材料層を所定の温度で焼成することにより、データ電極18が形成される。
【0017】
次に、ステップ2で、下地誘電体層19が形成される。具体的には、まず下地誘電体ペーストが、ダイコート法などによりデータ電極18を覆うように背面基板17上に塗布され、その後、下地誘電体ペースト層が焼成されることにより、下地誘電体層19が形成される。なお、下地誘電体ペーストはガラス粉末などの誘電体材料とバインダおよび溶剤を含んだペーストである。
【0018】
次に、ステップ3で、複数の隔壁22が形成される。具体的には、下地誘電体層19上に隔壁材料としてのガラス粉末や骨材を含む隔壁ペーストが塗布され、隔壁ペースト層が形成される。次に隔壁ペースト層が、所定の形状にパターニングされ、その後、パターニングされた隔壁ペースト層が焼成されることにより、隔壁22が形成される。
【0019】
次に、ステップ4で、蛍光体層23が形成される。具体的には、隣接する隔壁22間の下地誘電体層19上および隔壁22の側面に蛍光体材料を含む蛍光体インクが塗布され、その後、蛍光体インクが焼成されることにより蛍光体層23が形成される。蛍光体層23を構成する蛍光体材料としては、赤色蛍光体層としてY2X3:Euxまたは(Y,Gd)1-xBO3:Euxが用いられ、緑色蛍光体層として〔(Zn1-xMnx2SiO4〕が用いられ、青色蛍光体層としてBa1-xMgAl1017:EuxまたはBa1-x-ySryMgAl1017:Euが用いられる。
【0020】
次に、前面基板11と背面基板17とを対向配置し、前面基板11と背面基板17の周囲をガラスフリットで封着し、次に、放電空間にNe、Xeなどを含む放電ガスを封入する組立工程を実施することによりPDP10が完成する。
【0021】
本発明においては、蛍光体インクの塗布には、インクジェット法が用いられる。蛍光体インク塗布装置200は、図3に示す構成である。
【0022】
図3に示すように、蛍光体インク塗布装置200は、蛍光体インク250を貯留する供給容器としてのインク供給タンク210a、蛍光体インク250を吐出する吐出手段としてのインクジェットヘッド230、蛍光体インク250をインク供給タンク210aからインクジェットヘッド230に送液する送液手段としてのインク供給用送液チューブ270、吐出されなかった蛍光体インク250を回収する回収側の送液手段としてのインク回収用送液チューブ280、回収された蛍光体インク250を貯留する回収容器としてのインク回収タンク210b、インク回収タンク210bとインク供給タンク210aとを連結し、回収した蛍光体インク250をインク供給タンク210aに補充する送液手段としてのインク補充用送液チューブ290、インク回収タンク210bとインク供給タンク210aとの間に配置された送液ポンプ220を備える。
【0023】
蛍光体インク250の塗布は、図4に示すように、実施される。
【0024】
まず、ステップ21では、蛍光体インク250が、インク供給タンク210aからインクジェットヘッド230に供給される。インクジェットヘッド230には、ノズル孔260が設けられている。また、インクジェットヘッド230に供給された蛍光体インク250は、制御機構(図示せず)により、ノズル孔260から連続的に吐出される。ノズル孔260の口径は、ノズル孔260の目詰まり防止のため、20μm以上で、塗布の際の隔壁22からのはみ出し防止のため隔壁22間の距離以下にすることが望ましい。例えば、隔壁間の距離が65μm〜120μmの場合には、ノズル孔260の口径は、通常20μm〜50μmに設定される。また、使用される蛍光体インク250の粘度は25°Cにおいて、5mPa・s〜100mPa・sの範囲である。
【0025】
次に、ステップ22では、インクジェットヘッド230が、走査機構(図示せず)によって直線的に走査される。背面基板17上でインクジェットヘッド230を走査させ、ノズル孔260から蛍光体インク250を連続的に吐出することにより、隔壁22間に蛍光体インクが均一に塗布される。ここでインクジェットヘッド230を走査させずに、背面基板17を走査させてもよい。またインクジェットヘッド230と背面基板17の両方を走査させてもよい。
【0026】
また、インクジェットヘッド230には、回収側の流路も設けられており、吐出されなかった余剰の蛍光体インク250が、インクジェットヘッド230からインク回収用送液チューブ280を通ってインク回収タンク210bに送液される。これをステップ23として示している。
【0027】
また、インク回収タンク210bに送液された蛍光体インク250は、インク回収タンク210bから、送液ポンプ220、インク補充用送液チューブ290を介して、インク供給タンク210aに補充される。これをステップ24として示している。
【0028】
また、インク供給用送液チューブ270は、インク供給タンク210aの側壁近傍において、インク供給用送液チューブ270の先端部が、インク供給タンク210aに貯蔵された蛍光体インク250の液面とインク供給タンク210aの底面との間の中間位置よりもインク供給タンク210aの底面側にくるように配置されている。さらに、インク回収用送液チューブ280は、インク回収タンク210bの側壁近傍において、インク回収用送液チューブ280の先端部が、インク回収タンク210bに貯蔵された蛍光体インク250の液面とインク回収タンク210bの底面との間の中間位置よりもインク回収タンク210bの底面側にくるように配置されている。また、インク供給用送液チューブ270の先端部およびインク回収用送液チューブ280の先端部は、蛍光体インクに接する範囲において、位置を変化できるように可動自在な構成としている。
【0029】
ここで、蛍光体インク250は、各色蛍光体粒子、有機バインダ、溶媒が混合され、5mPa・s〜100mPa・sとなるように調合されたものである。蛍光体インク250には、必要に応じて、可塑剤、分散剤(0.1〜5wt%)等が添加されてもよい。
【0030】
蛍光体インク250に調合される有機バインダとしては、平均分子量3万から20万の、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、エチルセルロース、アクリル樹脂等を用い(蛍光体重量の0.1〜10wt%を混合)、溶媒としては、α−ターピネオール、ブチルカービトール等の水に対して難溶性の溶剤や、多価アルコール誘導体としては、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセタート、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタート、3−メトキシ−3−メチルブタノール、アリルアルコール、イソプロピルアルコール、エタノール、グリシドール、テトラヒドロフルフィリルアルコール、t−ブタノール、フリフリルアルコール、プロパルギルアルコール、1−プロパノール、メタノール、3−メチル−1−ブチン−3−オール、15−クラウン−5、18−クラウン−6、酸化プロピレン、1,4−ジオキサン、ジプロピルエーテル、ジメチルエーテル、テトラヒドラフラン、アセトアルデヒド、ジアセトンアルコール、乳酸メチル、γ−ブチロラクトン、グリセリン、グリセリン1,2−ジメチルエーテル、グリセリン1,3−ジメチルエーテル、グリセリン1−アセタート、2−クロロ−1,3−プロパンジオール、3−クロロ−1,2−プロパンジオール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールクロロヒドリン、ジエチレングリコールジアセタート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコール等のような水に対して自由混合できる溶剤を用いることができる。
【0031】
なお、有機バインダとして、PMA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)やPVA(ポリビニルアルコール)などの高分子を用いることもできる。また、溶媒として、ジエチレングリコール、メチルエーテルなどの有機溶媒の水を用いることもできる。また、必要に応じて、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸オクチルデシル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ブチルベンジル、オレイン酸ブチル、ジエチレングリコールジベンゾエート、ブチルフタリルブチルグリコレート、アセチルクエン酸トリブチル、アビエチン酸メチル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸−2−エチルヘキシン、2−ニトロビフェニル、ジノニルナフタリン、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシルのいずれか1つ以上の可塑剤が添加されてもよい。
【0032】
(実験例)
蛍光体層23の出来栄え評価を行うために、蛍光体インクを作製し、図3に示す装置を用いて塗布した。蛍光体インク250の粘度は、各色蛍光体粒子、有機バインダ、溶剤などにより、ノズル孔260からの吐出と乾燥後の蛍光体層23の形状とが最適となるように調整した。また、蛍光体粒子としては、青色蛍光体としてBaMgAl1017:Euを用い、緑色蛍光体としてZn2SiO4:Mnを用い、赤色蛍光体として(Y、Gd)BO3:Euを用いた。有機バインダ樹脂として、エチルセルロースを用いた。溶剤として、ブチルカルビトールアセテート、テルピネオール、ベンジルアルコールなどの有機溶媒混合物を用いた。蛍光体インク250の粘度は、25°Cで50mPa・sとなるように調整した。
【0033】
この蛍光体インク250を図3に示す蛍光体インク塗布装置200によって、画面サイズが対角42インチクラスのフルハイビジョンテレビ用の背面基板17に塗布した。
【0034】
全ての実験例において、蛍光体インク250、乾燥条件、焼成条件は一定である。インク供給タンク210a、およびインク回収タンク210bの内部を、攪拌子を用いて、両タンク底面の中心部にて500〜800rpmの速度で常時回転させ、両タンク内を常時攪拌された状態として、評価を実施した。蛍光体インク250の調合条件とインクジェットヘッド230からの吐出条件を一定とし、水平方向については、インク供給タンク210aから送液するインク供給用送液チューブ270の先端のインク供給タンク210a内での配置位置を変化させた。具体的には、インク供給タンク210a内中央部、およびインク供給タンク210a側壁部近傍の2つの条件である。また、高さ方向については、インク液面近傍、およびインク供給タンク210a底面近傍の条件にて評価を実施した。評価内容は、インクジェットヘッド230から吐出された蛍光体インク250の吐出開始時の初期吐出濃度、および一時間以上吐出を連続して実施した後の連続吐出濃度である。表1に結果を示す。
【0035】
【表1】

【0036】
比較例1−3および本発明による実施例では、インク供給タンク210aから送液するインク供給用送液チューブ270の先端のインク供給タンク210a内での配置位置を変化させた場合の結果について示している。
【0037】
表1の結果より、インク供給タンク210aから送液するインク供給用送液チューブ270の先端部のインク供給タンク210a内での配置位置について、インク供給タンク210aの側壁部近傍で、かつ蛍光体インク250液面と前記インク供給タンク210a底面との間の中間位置よりも前記供給容器の底面側にくるように配置することで、初期吐出濃度および連続吐出濃度ともに良好な結果が得られた。
【0038】
その他の条件においては、インクジェットヘッド230から吐出された蛍光体インク250の吐出開始時の初期吐出濃度には問題が無かったが、一時間以上吐出を連続して実施した後の連続吐出濃度においては、吐出された蛍光体インク250の濃度低下が確認された。
【0039】
また、結果は図示しないが、インク回収タンク210bにおいても、同様の結果が確認された。すなわち、インク回収タンク210bから送液ポンプ220へ送液するインク回収タンク210bに配置されたインク補充用送液チューブ290の先端の配置位置としては、インク回収タンク210bの側壁部かつインク供給タンク210aの底面近傍に配置することで、良好な結果が得られた。
【0040】
なお、上記実験例では、塗布部における蛍光体インク250の条件と塗布条件を一定とした。また、インク供給用送液チューブ270の先端を固定して実験を実施したが、回転、揺動させるなど、動いていても良い。
【0041】
また、塗布時の蛍光体インク250の温度は、25°Cである必要は無い。インク供給タンク210a、インク回収タンク210b、およびインクジェットヘッド230は、加熱される構成としても良い。
【0042】
以上のように本発明の製造方法によれば、蛍光体インク250が貯留されたインク供給タンク210aからインク供給用送液チューブ270を介して蛍光体インク250をインクジェットヘッド230に供給し、インクジェットヘッド230により隔壁間に蛍光体インク250を吐出することにより蛍光体インクを塗布し、かつ前記インク供給用送液チューブ270は、インク供給タンク210aの側壁近傍において、インク供給用送液チューブ270の先端部がインク供給タンク210aに貯留された蛍光体インク250液面とインク供給タンク210a底面の中間位置よりも前記インク供給タンク210aの底面側にくるように配置されており、蛍光体インク250を塗布して蛍光体層を形成する際に、蛍光体インク250の濃度を安定した状態に維持して塗布することができ、これにより高精細のPDPにおいても、色ムラや輝度ムラの少ないPDPを実現することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、高精細のPDPを得る上で有用な発明である。
【符号の説明】
【0044】
10 PDP
11 前面基板
12 走査電極
12a,13a 透明電極
12b,13b バス電極
13 維持電極
14 表示電極対
15 誘電体層
16 保護層
17 背面基板
18 データ電極
19 下地誘電体層
22 隔壁
22a 縦隔壁
22b 横隔壁
23 蛍光体層
24 放電セル
200 蛍光体インク塗布装置
210a インク供給タンク
210b インク回収タンク
220 送液ポンプ
230 インクジェットヘッド
250 蛍光体インク
260 ノズル孔
270 インク供給用送液チューブ
280 インク回収用送液チューブ
290 インク補充用送液チューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成した隔壁間に蛍光体粒子を含む蛍光体インクを塗布して蛍光体層を形成するプラズマディスプレイパネルの製造方法において、
蛍光体インクが貯留された供給容器から送液手段を介して蛍光体インクを吐出手段に供給し、前記吐出手段により前記隔壁間に蛍光体インクを吐出することにより蛍光体インクを塗布し、かつ前記送液手段は、前記供給容器の側壁近傍において、前記送液手段の先端部が前記供給容器に貯留された蛍光体インク液面と前記供給容器の底面との間の中間位置よりも前記供給容器の底面側にくるように配置されていることを特徴とする
プラズマディスプレイパネルの製造方法。
【請求項2】
前記吐出手段から吐出されなかった余剰の蛍光体インクを吐出手段から回収して貯留する回収容器を備え、前記回収容器は前記供給容器に送液手段を介して連結し、かつ前記送液手段は、前記回収容器の側壁近傍において、前記送液手段の先端部が前記回収容器に貯留された蛍光体インク液面と前記回収容器の底面との中間位置よりも前記回収容器の底面側にくるように配置されていることを特徴とする請求項1に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法。
【請求項3】
前記送液手段の供給容器側の先端部は、可動自在である請求項1に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法。
【請求項4】
前記送液手段の回収容器側の先端部は、可動自在である請求項2に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−109065(P2012−109065A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255496(P2010−255496)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】