説明

プラズマディスプレイパネルの駆動方法およびプラズマディスプレイ装置

【課題】強制初期化動作を使用しなくても、プラズマディスプレイパネルで安定した書込み動作を行い、コントラストを向上させる。
【解決手段】維持期間において走査電極に維持パルスの高圧側電圧を印加している期間を含む少なくとも1つの所定の期間にデータ電極に第4の電圧を印加し、所定の期間以外の維持期間においてデータ電極に第4の電圧よりも高い第5の電圧を印加し、かつ、維持期間において走査電極に印加する維持パルスの低圧側電圧からデータ電極に印加する第4の電圧を減じた電圧を第1の電圧とし、書込み期間において走査電極に印加する走査パルスの低圧側電圧からデータ電極に印加する書込みパルスの低圧側電圧を減じた電圧を第3の電圧とするとき、第1の電圧から第3の電圧を減じた電圧がデータ電極を陽極とし走査電極を陰極とする放電開始電圧以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流面放電型のプラズマディスプレイパネルの駆動方法およびプラズマディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(以下、「パネル」と略記する)は、走査電極および維持電極からなる表示電極対とデータ電極とを有する放電セルを複数備え、放電セル内でガス放電により発生させた紫外線で赤色、緑色および青色の各色の蛍光体を励起発光させてカラー表示を行っている。
【0003】
パネルを駆動する方法としてはサブフィールド法、すなわち初期化期間と書込み期間と維持期間とを有するサブフィールドを複数用いて1つのフィールドを構成し、発光させるサブフィールドの組み合わせによって階調表示を行う方法が一般的である。各サブフィールドの初期化期間には初期化動作、書込み期間には書込み動作、維持期間には維持動作を行う。初期化動作は初期化放電を発生し、続く書込み動作に必要な壁電荷を形成する動作である。初期化動作には、直前のサブフィールドの動作にかかわらず初期化放電を発生させる強制初期化動作と、直前のサブフィールドで書込み放電を行った放電セルで初期化放電を発生させる選択初期化動作とがある。書込み動作は表示する画像に応じて放電セルで選択的に書込み放電を発生し壁電荷を形成する動作であり、維持動作は表示電極対に交互に維持パルスを印加して維持放電を発生させ、対応する放電セルの蛍光体層を発光させる動作である。この維持放電による蛍光体層の発光は階調表示に関係する発光であり、強制初期化動作に伴う発光は階調表示に関係しない発光である。
【0004】
サブフィールド法の中でも、最も低い階調である黒を表示する際の輝度(黒の輝度)を下げ、階調表示に関係しない発光を極力減らしてコントラストを向上させる駆動方法が検討されている。例えば特許文献1には、強制初期化動作を行う回数を1フィールドに1回とし、緩やかに変化する傾斜波形電圧を用いて強制初期化動作を行う駆動方法が開示されている。
【0005】
また特許文献2には、表示電極対をn分割し、強制初期化動作を行う回数をnフィールドに1回とし、階調表示に関係しない発光をさらに減らして黒の輝度をさらに下げ、コントラストをさらに向上させた駆動方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−242224号公報
【特許文献2】特開2006−091295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載の駆動方法であっても強制初期化動作を行うため、階調表示に関係しない発光が発生する。これは黒を表示する放電セルであっても発光が発生することを意味しており、そのためコントラストの向上には限界があった。また、強制初期化動作には、続く書込み期間において書込み放電を発生させるために必要な壁電荷を蓄積する働きがあり、加えて放電遅れ時間を短くして書込み放電を確実に発生させるためのプライミングを発生するという働きも持っている。そのため単純に強制初期化動作を省略すると、書込み放電が発生しない、あるいは書込み放電の放電遅れ時間が長くなりすぎて書込み動作が不安定となり、正常な画像表示ができなくなるという課題があった。
【0008】
本発明は、強制初期化動作を使用しなくても、安定した書込み動作を行い、コントラストを向上させたパネルの駆動方法およびプラズマディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、書込み期間と維持期間と消去期間とを有するサブフィールドを複数用いて1つのフィールドを構成し、走査電極と維持電極とデータ電極とを有する放電セルを複数備えたパネルを駆動するパネルの駆動方法であって、維持期間において走査電極に維持パルスの高圧側電圧を印加している期間を含む少なくとも1つの所定の期間にデータ電極に第4の電圧を印加し、所定の期間以外の維持期間においてデータ電極に第4の電圧よりも高い第5の電圧を印加し、かつ、維持期間において走査電極に印加する維持パルスの低圧側電圧からデータ電極に印加する第4の電圧を減じた電圧を第1の電圧とし、維持期間において走査電極に印加する維持パルスの高圧側電圧からデータ電極に印加する第5の電圧を減じた電圧を第2の電圧とし、書込み期間において走査電極に印加する走査パルスの低圧側電圧からデータ電極に印加する書込みパルスの低圧側電圧を減じた電圧を第3の電圧とするとき、第1の電圧から第3の電圧を減じた電圧がデータ電極を陽極とし走査電極を陰極とする放電開始電圧以上であり、第2の電圧から第3の電圧を減じた電圧がデータ電極を陽極とし走査電極を陰極とする放電開始電圧とデータ電極を陰極とし走査電極を陽極とする放電開始電圧との和未満であることを特徴とする。この方法により、強制初期化動作を使用しなくても、安定した書込み動作を行い、コントラストを向上させたパネルの駆動方法を提供することができる。
【0010】
また本発明は、走査電極と維持電極とデータ電極とを有する放電セルを複数備えたパネルと、書込み期間と維持期間と消去期間とを有するサブフィールドを複数用いて1つのフィールドを構成するとともに駆動電圧波形を発生してパネルの各電極に印加する駆動回路とを備えたプラズマディスプレイ装置であって、駆動回路は、維持期間において走査電極に維持パルスの高圧側電圧を印加している期間を含む少なくとも1つの所定の期間にデータ電極に第4の電圧を印加し、所定の期間以外の維持期間においてデータ電極に第4の電圧よりも高い第5の電圧を印加し、かつ、維持期間において走査電極に印加する維持パルスの低圧側電圧からデータ電極に印加する第4の電圧を減じた電圧を第1の電圧とし、維持期間において走査電極に印加する維持パルスの高圧側電圧からデータ電極に印加する第5の電圧を減じた電圧を第2の電圧とし、書込み期間において走査電極に印加する走査パルスの低圧側電圧からデータ電極に印加する書込みパルスの低圧側電圧を減じた電圧を第3の電圧とするとき、第1の電圧から第3の電圧を減じた電圧がデータ電極を陽極とし走査電極を陰極とする放電開始電圧以上であり、第2の電圧から第3の電圧を減じた電圧がデータ電極を陽極とし走査電極を陰極とする放電開始電圧とデータ電極を陰極とし走査電極を陽極とする放電開始電圧との和未満の電圧に設定したことを特徴とする。この構成により、強制初期化動作を使用しなくても、安定した書込み動作を行い、コントラストを向上させたプラズマディスプレイ装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、強制初期化動作を使用しなくても、安定した書込み動作を行い、コントラストを向上させたパネルの駆動方法およびプラズマディスプレイ装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置に用いるパネルの分解斜視図である。
【図2】同プラズマディスプレイ装置に用いるパネルの電極配列図である。
【図3】同プラズマディスプレイ装置の各電極に印加する駆動電圧波形図である。
【図4】第1の電圧、第2の電圧、第3の電圧の定義を説明するための図である。
【図5】放電開始電圧を簡易的に測定する方法の一例を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置の回路ブロック図である。
【図7】同プラズマディスプレイ装置の走査電極駆動回路の回路図である。
【図8】同プラズマディスプレイ装置の維持電極駆動回路の回路図である。
【図9】同プラズマディスプレイ装置のデータ電極駆動回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置について、図面を用いて説明する。
【0014】
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置に用いるパネル10の分解斜視図である。ガラス製の前面基板21上には、走査電極22と維持電極23とからなる表示電極対24が複数形成されている。そして表示電極対24を覆うように誘電体層25が形成され、その誘電体層25上に保護層26が形成されている。保護層26は、放電を発生しやすくするために、電子放出性能の高い材料である酸化マグネシウムを用いて形成されている。背面基板31上にはデータ電極32が複数形成され、データ電極32を覆うように誘電体層33が形成され、さらにその上に井桁状の隔壁34が形成されている。そして、隔壁34の側面および誘電体層33上には赤色、緑色および青色の各色に発光する蛍光体層35が設けられている。赤の蛍光体としては、例えば(Y,Gd)BO3:Euを、緑の蛍光体としては、例えばZn2SiO4:Mnを、青の蛍光体としては、例えばBaMgAl1017:Euをそれぞれ主成分とする蛍光体を用いている。
【0015】
これら前面基板21と背面基板31とは、微小な放電空間を挟んで表示電極対24とデータ電極32とが交差するように対向配置され、その外周部をガラスフリット等の封着材によって封着されている。そして放電空間には、放電ガスとして、例えばネオンとキセノンとの混合ガスが封入されている。放電空間は隔壁34によって複数の区画に仕切られており、表示電極対24とデータ電極32とが交差する部分に放電セルが形成されている。そしてこれらの放電セルが放電、発光することにより画像が表示される。
【0016】
なお、パネル10の構造は上述したものに限られるわけではなく、例えばストライプ状の隔壁を備えたものであってもよい。
【0017】
図2は、本発明の実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置に用いるパネル10の電極配列図である。パネル10には、行方向に長いn本の走査電極SC1〜走査電極SCn(図1の走査電極22)およびn本の維持電極SU1〜維持電極SUn(図1の維持電極23)が配列され、列方向に長いm本のデータ電極D1〜データ電極Dm(図1のデータ電極32)が配列されている。そして、1対の走査電極SCi(i=1〜n)および維持電極SUiと1つのデータ電極Dj(j=1〜m)とが交差した部分に放電セルが形成され、放電セルは放電空間内にm×n個形成されている。
【0018】
次に、パネル10を駆動するための駆動電圧波形とその動作について説明する。プラズマディスプレイ装置は、サブフィールド法、すなわち1フィールドを複数のサブフィールドに分割し、サブフィールド毎に各放電セルの発光・非発光を制御することによって画像を表示する。
【0019】
本実施の形態においては、書込み期間と維持期間と消去期間とを有するサブフィールドを複数用いて1つのフィールドを構成している。また本実施の形態においてはそれまでの放電の有無にかかわらず強制的に初期化放電を発生させる強制初期化動作を行わない。
【0020】
書込み期間では、発光させるべき放電セルで選択的に書込み放電を発生し壁電荷を形成する書込み動作を行う。維持期間では、サブフィールド毎にあらかじめ決められた輝度重みに応じた数の維持パルスを表示電極対に交互に印加して、書込み放電を発生した放電セルで維持放電を発生させて発光させる維持動作を行う。なお、発光輝度を低く抑えるために維持期間を省略してもよい。消去期間では、直前の書込み期間において書込み放電を発生した放電セルのみで選択的に消去放電を発生し、書込み放電またはそれに続く維持放電で形成された壁電荷の履歴を消去し、続く書込み放電に必要な壁電荷を各電極上に形成する消去動作を行う。
【0021】
サブフィールド構成としては、例えば、1フィールドを10のサブフィールド(SF1、SF2、・・・、SF10)に分割し、各サブフィールドはそれぞれ、(1、2、3、6、11、18、30、44、60、80)の輝度重みを持つものとする。しかし、本発明は上記のサブフィールド数、輝度重み等のサブフィールド構成に限定されるものではない。
【0022】
図3は、本発明の実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置の各電極に印加する駆動電圧波形図である。
【0023】
サブフィールドSF1の書込み期間では、データ電極D1〜データ電極Dmに電圧0(V)を、維持電極SU1〜維持電極SUnには電圧Veを印加し、走査電極SC1〜走査電極SCnに電圧Vcを印加する。次に、1行目の走査電極SC1に電圧Vaの走査パルスを印加するとともに発光すべき放電セルに対応するデータ電極Dkに電圧Vdの書込みパルスを印加する。
【0024】
するとデータ電極Dk上と走査電極SC1上との交差部の電圧差は、外部印加電圧の差(Vd−Va)にデータ電極Dk上の正の壁電圧が加算され、放電開始電圧VFdsを超えるためデータ電極Dkと走査電極SC1との間で放電が発生する。そしてデータ電極Dkと走査電極SC1との間で発生した放電が走査電極SC1と維持電極SU1との間に伸展して書込み放電が起こる。そして走査電極SC1上に正の壁電圧が蓄積され、維持電極SU1上に負の壁電圧が蓄積され、データ電極Dk上にも負の壁電圧が蓄積される。ここで電極上の壁電圧とは、電極を覆う誘電体層上、保護層上、蛍光体層上等に蓄積された壁電荷により生じる電圧を表す。
【0025】
このようにして、1行目に発光させるべき放電セルで書込み放電を起こして各電極上に壁電圧を蓄積する書込み動作が行われる。一方、書込みパルスを印加しなかったデータ電極Dhと走査電極SC1との交差部の電圧は放電開始電圧VFdsを超えないので、書込み放電は発生しない。
【0026】
次に、2行目の走査電極SC2に走査パルスを印加するとともに、発光すべき放電セルに対応するデータ電極Dkに書込みパルスを印加する。するとデータ電極Dkと走査電極SC2との間および維持電極SU2と走査電極SC2との間で書込み放電が起こり、走査電極SC2上に正の壁電圧が蓄積され、維持電極SU2上に負の壁電圧が蓄積され、データ電極Dk上にも負の壁電圧が蓄積される。このようにして、2行目に発光させるべき放電セルで書込み放電を起こして各電極上に壁電圧を蓄積する書込み動作が行われる。一方、書込みパルスを印加しなかったデータ電極Dhと走査電極SC2との交差部の電圧は放電開始電圧VFdsを超えないので、書込み放電は発生しない。
【0027】
以下、n行目の走査電極SCnに至るまで同様の書込み動作を行い、続く維持放電に必要な壁電荷を形成する。
【0028】
ここで、以下の説明のために、第1の電圧V1、第2の電圧V2、第3の電圧V3を、図4に示すように定義する。後述する維持期間において走査電極SCiに印加する維持パルスの低圧側電圧からデータ電極Djに印加する第4の電圧を減じた電圧を第1の電圧V1とし、維持期間において走査電極SCiに印加する維持パルスの高圧側電圧からデータ電極Djに印加する第5の電圧を減じた電圧を第2の電圧V2とし、書込み期間において走査電極SCiに印加する走査パルスの低圧側電圧からデータ電極Djに印加する書込みパルスの低圧側電圧を減じた電圧を第3の電圧V3とする。なお本実施の形態においては、第4の電圧は電圧0(V)であり、第5の電圧は電圧Vdである。ただし第5の電圧を第4の電圧よりも高く設定すれば、第4の電圧および第5の電圧は上記値に限定されるものではない。
【0029】
また、データ電極Djを陽極とし走査電極SCiを陰極とする放電開始電圧を放電開始電圧VFdsとし、データ電極Djを陰極とし走査電極SCiを陽極とする放電開始電圧を放電開始電圧VFsdとする。なお、データ電極Djを陽極とし走査電極SCiを陰極とする放電とは、放電が発生するときの放電セル内の電界が、データ電極Dj側が高電位側、走査電極SCi側が低電位側となる放電である。またデータ電極Djを陰極とし走査電極SCiを陽極とする放電とは、放電が発生するときの放電セル内の電界が、データ電極Dj側が低電位側、走査電極SCi側が高電位側となる放電である。そして走査電極SCi側には電子放出性能の高い酸化マグネシウムの保護層26が形成されているため、放電開始電圧VFdsは放電開始電圧VFsdよりも低くなる。
【0030】
このとき走査電極SCiに印加する走査パルスの電圧Vaは、次の2つの条件(条件1)、(条件2)を満たすように設定されている。
【0031】
(条件1)全ての放電セルに対して、第1の電圧V1から第3の電圧V3を減じた電圧が、データ電極Djを陽極とし走査電極SCiを陰極とする放電開始電圧VFds以上、すなわち、
(V1−V3)≧VFdsを満たす。
【0032】
(条件2)全ての放電セルに対して、第2の電圧V2から第3の電圧V3を減じた電圧が、データ電極Djを陽極とし走査電極SCiを陰極とする放電開始電圧VFdsとデータ電極Djを陰極とし走査電極SCiを陽極とする放電開始電圧VFsdとの和未満、すなわち、
(V2−V3)<(VFds+VFsd)を満たす。
【0033】
続くサブフィールドSF1の維持期間では、データ電極D1〜データ電極Dmに第5の電圧として電圧Vdを印加し、維持電極SU1〜維持電極SUnに電圧0(V)を印加し、走査電極SC1〜走査電極SCnに電圧Vsの維持パルスを印加する。すると書込み放電を起こした放電セルでは、走査電極SCi上と維持電極SUi上との電圧差が電圧Vsに走査電極SCi上の壁電圧と維持電極SUi上の壁電圧との差を加算したものとなり走査電極SCiと維持電極SUiとの間の放電開始電圧VFssを超える。そして、走査電極SCiと維持電極SUiとの間に維持放電が起こり、このとき発生した紫外線により蛍光体層35が発光する。そして本実施の形態においては、走査電極SC1〜走査電極SCnに電圧Vsの維持パルスを印加している間にデータ電極D1〜データ電極Dmに第4の電圧として電圧0(V)を印加する。そしてさらにその後にデータ電極D1〜データ電極Dmに再び第5の電圧として電圧Vdを印加する。すると走査電極SCi上に負の壁電圧が蓄積され、維持電極SUi上に正の壁電圧が蓄積され、データ電極Dk上にも正の壁電圧が蓄積される。一方、書込み放電が起きなかった放電セルでは維持放電は発生せず、直前のフィールドの終了時における壁電圧が保たれる。
【0034】
続いて、データ電極D1〜データ電極Dmに第5の電圧として電圧Vdを印加したまま、走査電極SC1〜走査電極SCnに電圧0(V)を印加するとともに維持電極SU1〜維持電極SUnに電圧Vsの維持パルスを印加する。すると、維持放電を起こした放電セルでは再び維持放電が起こり、蛍光体層35が発光する。そして維持電極SUi上に負の壁電圧が蓄積され走査電極SCi上に正の壁電圧が蓄積される。以降はデータ電極D1〜データ電極Dmに第5の電圧として電圧Vdを印加したまま、走査電極SC1〜走査電極SCnと維持電極SU1〜維持電極SUnとに交互に輝度重みに応じた数の維持パルスを印加し、書込み放電を起こした放電セルで維持放電を継続して発生させる。
【0035】
このように本実施の形態においては、走査電極SC1〜走査電極SCnに維持パルスの高電圧側の電圧Vsを印加している間の所定の期間に、データ電極D1〜データ電極Dmに第4の電圧0(V)を印加し、所定の期間以外の期間にデータ電極D1〜データ電極Dmに第4の電圧よりも高い第5の電圧Vdを印加する。これにより、詳細は後述するが、書込み期間において走査電極SCiに印加する走査パルスの電圧Vaの設定範囲が広がり、パネルを安定して駆動することができる。
【0036】
なお本実施の形態においては、最初に走査電極SC1〜走査電極SCnに電圧Vsの維持パルスを印加する際に、データ電極D1〜データ電極Dmに第5の電圧Vdを印加し、その後に第4の電圧0(V)を印加し、さらにその後に第5の電圧Vdを印加した。またそれ以降に走査電極SC1〜走査電極SCnに電圧Vsの維持パルスを印加する際には、データ電極D1〜データ電極Dmに第5の電圧Vdを印加し、第4の電圧0(V)は印加しなかった。しかしデータ電極D1〜データ電極Dmに、複数回に分けて第4の電圧0(V)を印加してもよい。この場合、維持期間において、走査電極SC1〜走査電極SCnに維持パルスの高圧側電圧Vsを印加している期間を含む少なくとも1つの所定の期間にデータ電極D1〜データ電極Dmに第4の電圧0(V)を印加し、所定の期間以外の維持期間においてデータ電極D1〜データ電極Dmに第4の電圧0(V)よりも高い第5の電圧Vdを印加すればよい。
【0037】
続くサブフィールドSF1の消去期間では、データ電極D1〜データ電極Dmに第5の電圧Vdを印加したまま、維持電極SU1〜維持電極SUnに電圧0(V)を印加するとともに走査電極SC1〜走査電極SCnには電圧Vrまで緩やかに上昇する上り傾斜波形電圧を印加する。なお本実施の形態においては電圧Vrは電圧Vsと同じ電圧に設定されている。すると維持放電を行った放電セルでは走査電極SCiと維持電極SUiとの間で微弱な消去放電が発生する。そして走査電極SCi上および維持電極SUi上の壁電圧が弱められる。
【0038】
その後、データ電極D1〜データ電極Dmに第5の電圧Vdを印加したまま、維持電極SU1〜維持電極SUnに電圧Veを印加し、走査電極SC1〜走査電極SCnには電圧0(V)から電圧Viに向かって緩やかに下降する下り傾斜波形電圧を印加する。本実施の形態においては、電圧Viは、走査パルスの電圧Vaと第5の電圧Vdとの和である電圧(Va+Vd)に等しいか、電圧(Va+Vd)よりわずかに高い電圧に設定されている。
【0039】
すると、微弱な消去放電を発生した放電セルで再び微弱な放電が発生し、走査電極SCi上、維持電極SUi上の壁電圧、およびデータ電極Dk上の壁電圧の過剰な部分が放電され、書込み動作に適した壁電圧に調整される。このようにして本実施の形態においては、消去期間においてもデータ電極D1〜データ電極Dmに第5の電圧を印加して、消去動作が完了する。
【0040】
続くサブフィールドSF2〜サブフィールドSF10における動作は、維持パルス数を除きSF1の動作と同様である。特に、サブフィールドSF2〜サブフィールドSF10における維持期間についてもサブフィールドSF1の維持期間と同様に、走査電極SC1〜走査電極SCnに維持パルスの高圧側電圧Vsを印加している期間を含む少なくとも1つの所定の期間にデータ電極D1〜データ電極Dmに第4の電圧0(V)を印加し、所定の期間以外の維持期間においてデータ電極D1〜データ電極Dmに第4の電圧0(V)よりも高い第5の電圧Vdを印加する。
【0041】
ここで、走査電極SC1〜走査電極SCnに維持パルスの高圧側電圧Vsを印加した後にデータ電極D1〜データ電極Dmに第4の電圧0(V)を印加するまでの時間T1は本実施の形態においては400(ns)である。またデータ電極D1〜データ電極Dmに第4の電圧0(V)を印加する所定の期間の時間T2は、本実施の形態においては走査パルスのパルス幅と同程度の1000(ns)である。
【0042】
さらに本実施の形態においては、電圧Viは−220(V)、電圧Vcは−145(V)、電圧Vaは−300(V)、電圧Vsは200(V)、電圧Vrは200(V)、電圧Veは20(V)、電圧Vdは60(V)である。また維持期間において走査電極SC1〜走査電極SCnに印加する最初の維持パルスのパルス幅は10(μs)、それ以降に維持電極SU1〜維持電極SUnおよび走査電極SC1〜走査電極SCnに印加する維持パルスのパルス幅は2.5(μs)である。しかしこれらの数値は上述した値に限定されるものではなく、パネルの放電特性やプラズマディスプレイ装置の仕様にもとづき最適に設定することが望ましい。
【0043】
なお、本実施の形態において用いたパネル10の放電開始電圧VFdsや放電開始電圧VFsdは、後述する方法により測定されており、それらの値は以下のとおりである。放電開始電圧は蛍光体によって異なり、赤の蛍光体を塗布した放電セルに対する「データ電極−走査電極」間の放電開始電圧VFdsは200±10(V)、同放電開始電圧VFsdは320±10(V)、緑の蛍光体を塗布した放電セルに対する「データ電極−走査電極」間の放電開始電圧VFdsは220±10(V)、同放電開始電圧VFsdは350±10(V)、青の蛍光体を塗布した放電セルに対する「データ電極−走査電極」間の放電開始電圧VFdsは200±10(V)、同放電開始電圧VFsdは330±10(V)であった。また、「走査電極−維持電極」間の放電開始電圧VFssは、赤および青の蛍光体を塗布した放電セルに対しては250±10(V)、緑の蛍光体を塗布した放電セルでは、280±10(V)であった。
【0044】
本実施の形態においては、維持パルスの低圧側の電圧は電圧0(V)、維持期間においてデータ電極に印加する第4の電圧は電圧0(V)であるため、第1の電圧V1は電圧0(V)である。また、走査パルスの低圧側は電圧Va、書込みパルスの低圧側電圧は電圧0(V)であるため、第3の電圧V3は電圧Vaである。また、放電開始電圧VFdsの最大値は、ばらつきを考慮すると電圧230(V)である。従って、(第1の電圧V1−第3の電圧V3)=−Va>(VFdsの最大値)、すなわち300(V)>230(V)となり、全ての放電セルで(条件1)を満足していることがわかる。
【0045】
また維持パルスの高圧側は電圧Vsであり、維持期間においてデータ電極に印加する第5の電圧は電圧Vdであるため、第2の電圧V2は電圧(Vs−Vd)である。また、放電開始電圧VFsdと放電開始電圧VFdsとの和の最小値は電圧500(V)である。従って、(第2の電圧V2−第3の電圧V3)=Vs−Vd−Va<(VFds+VFsd)の最小値、すなわち200(V)−60(V)+300(V)=440(V)<500(V)となり、(条件2)についても全ての放電セルで満足していることがわかる。
【0046】
また、上記の電圧から明らかなように、走査電極には、走査パルスの低圧側電圧Va以上、維持パルスの高圧側電圧Vs以下の電圧を印加し、走査パルスの低圧側電圧Vaより低い電圧または維持パルスの高圧側電圧Vsを超える電圧を印加することはない。また、上記の電圧から明らかなように、(条件1)を満たすように電圧Vaを低く設定すると、走査パルスの低圧側電圧Vaの絶対値|Va|は、維持パルスの高圧側電圧Vsの絶対値|Vs|よりも大きくなる。
【0047】
このように本実施の形態においては、各電極に印加する駆動電圧波形、特に走査パルスの電圧Vaを、(条件1)および(条件2)を満たすように設定することにより、強制初期化動作を使用しなくても、書込み動作を安定に発生させることができる。その理由は以下のように考えられる。
【0048】
まず、(条件1)について説明する。書込み放電を発生させるためには、データ電極Djと走査電極SCiとの間で放電を開始する必要がある。データ電極Djに比較的低い電圧Vdを印加して放電を開始するためには、走査電極SCiに走査パルスを印加したときに放電開始電圧VFdsにほぼ等しい電圧がデータ電極Djと走査電極SCiとの間に印加されるように、データ電極Dj上に十分な壁電圧を蓄積しておかなければならない。上述したように本実施の形態においては強制初期化動作を行わず、黒を表示する放電セルでは放電を発生させない。そのため壁電圧を能動的に制御することができず、黒を表示する放電セルの壁電圧は不定となる。しかしながらこのような放電セルであっても放電空間内にわずかな荷電粒子が存在すれば、それらが放電空間内部の電界を緩和するように各々の電極に移動して放電セルの壁に付着して壁電圧を蓄積する。
【0049】
まず、このようにして蓄積される壁電圧について説明する。維持期間では維持放電を発生する放電セルで多量の荷電粒子が発生するので、これらが拡散することにより、維持放電を起こさずに黒を表示する放電セル内部の空間にもわずかながら荷電粒子が供給されていると考えられる。そして黒を表示する放電セルでは、走査電極SCi、維持電極SUiおよびデータ電極Djのそれぞれに印加される電圧により、電極間の電位差を緩和するようにゆっくりと壁電圧が蓄積されていく。このとき壁電圧が漸近する(最終的に落ち着く)電圧を放置壁電圧と定義すると、仮に走査電極SCiおよび維持電極SUiに交互に維持パルスを印加し続けた場合の放置壁電圧は維持パルスの高圧側電圧と低圧側電圧との間の電圧となる。実際には維持パルス以外の駆動電圧波形も印加されるので、各放電セルの放置壁電圧は概ね維持パルスの低圧側電圧に近いと考えてよい。
【0050】
また放置壁電圧は、放電セル内部に塗布されている蛍光体の帯電特性の影響を大きく受ける。本実施の形態においては、蛍光体の帯電特性はそれぞれ赤の蛍光体が+20(μC/g)、緑の蛍光体が−30(μC/g)、青の蛍光体が+10(μC/g)であり、緑の蛍光体のみ負電位に帯電する特性を持つため、赤および青の蛍光体に比べて放置壁電圧は低くなる。
【0051】
次に、書込み期間における放電セル内部の電圧について説明する。黒を表示する放電セルのデータ電極Dj上には概ね維持パルスの低圧側電圧またはそれに近い放置壁電圧に向かって徐々に壁電圧が蓄積される。一方、本実施の形態における走査パルスの電圧Vaは、(条件1)を満たす電圧である。そのため、データ電極Dj上には書込み放電を発生させるに十分な壁電圧が蓄積され、強制初期化動作を全く行わなくても書込み放電を発生させることができる。
【0052】
また黒を表示する放電セルの壁電圧はゆっくりと放置壁電圧に漸近し、消去期間において「データ電極−走査電極」間の電圧に壁電圧を加算した電圧が放電開始電圧に近づくと暗電流が流れ、データ電極Dj上の壁電圧を低下させる。そしてこのとき流れる暗電流が書込み放電を助けるプライミングの役割を果たすため、黒を表示していた放電セルであっても、大きな放電遅れを生じることなく安定した書込み放電を発生させることができると考えることができる。
【0053】
このように、(条件1)を満たすように各電極に印加する駆動電圧、特に(条件1)を満たすように走査パルスの電圧Vaを低く設定することにより、強制初期化動作を行うことなく、書込みに必要な壁電圧を蓄積することができ、かつ書込み放電を安定させるプライミングも発生させることができる。
【0054】
なお、本実施の形態においては、維持期間のほとんどの期間でデータ電極D1〜データ電極Dmに印加する電圧は第5の電圧Vdである。そのため、維持期間において走査電極SCiに印加する維持パルスの低圧側電圧からデータ電極Djに印加する第5の電圧を減じた電圧を第1の電圧V1と定義するのが自然であると思われる。しかし本実施の形態においてはそうせずに、維持期間において走査電極SCiに印加する維持パルスの低圧側電圧からデータ電極Djに印加する第4の電圧を減じた電圧を第1の電圧V1と定義した。この理由については後述する。
【0055】
次に、(条件2)について説明する。走査パルスの電圧Vaを低くしすぎると、維持期間において走査電極SCiに維持パルスの電圧Vsを印加した時点で書込み動作の有無に関係なく放電が発生して画像を表示できなくなる。この誤放電を抑制するためには、維持パルスの電圧Vsを印加した時点で「データ電極−走査電極」間の電圧が放電開始電圧VFsd以下となるように設定しなければならない。この条件が(条件2)である。
【0056】
このように本実施の形態においては、全ての放電セルで(条件1)および(条件2)を満たすように駆動電圧波形が設定されている。そのため書込み動作を安定に発生させつつ強制初期化動作を省略して、階調表示に関係しない発光をなくした画像表示が可能となる。
【0057】
次に、各サブフィールドの維持期間において、走査電極SC1〜走査電極SCnに維持パルスの高圧側電圧Vsを印加している期間を含む少なくとも1つの所定の期間にデータ電極D1〜データ電極Dmに第4の電圧0(V)を印加し、所定の期間以外の維持期間においてデータ電極D1〜データ電極Dmに第4の電圧0(V)よりも高い第5の電圧Vdを印加する理由について説明する。
【0058】
仮に、各サブフィールドの維持期間において、データ電極に第4の電圧0(V)を印加することなく、第5の電圧Vdのみを印加したと仮定すると、第1の電圧V1は電圧(0−Vd)である。上述したように、(条件1)は安定して書込み動作を行うための条件である。そしてこの場合には、(第1の電圧V1−第3の電圧V3)=−Vd−Va>(VFdsの最大値)、すなわち240(V)>230(V)であり、(条件1)を満たしているものの、そのマージンはわずか10(V)である。(条件1)に対するマージンを大きくするためには、例えば維持期間においてデータ電極に印加する電圧を下げればよい。仮に、維持期間においてデータ電極に第4の電圧0(V)のみを印加したと仮定すると、(第1の電圧V1−第3の電圧V3)=−Va=300(V)となり、(条件1)に対するマージンを大きくすることができる。しかしながら、この場合の(条件2)のマージンを見積もると、(第2の電圧V2−第3の電圧V3)=Vs−Va=500(V)となり、(条件2)のマージンがなくなる。(条件2)は誤放電を防ぐための条件であるから、十分なマージンを確保した上で駆動電圧波形を設定する必要がある。
【0059】
発明者らは、パネルの各電極に印加する駆動電圧波形、特に維持期間においてデータ電極D1〜データ電極Dmに印加する駆動電圧波形について詳細に検討した結果、以下の事実を見出した。
【0060】
維持期間の大部分の期間においてデータ電極D1〜データ電極Dmに第5の電圧Vdを印加する。これにより、維持期間の全期間においてデータ電極D1〜データ電極Dmに第5の電圧Vdを印加した場合に(条件2)により算出されるマージンとほぼ等しいマージンを確保することができる。
【0061】
加えて、走査電極SC1〜走査電極SCnに維持パルスの高圧側電圧Vsを印加している期間を含む少なくとも1つの所定の期間にデータ電極D1〜データ電極Dmに第4の電圧0(V)を印加する。これにより、(条件2)に対するマージンを大きく損なうことなく、(条件1)に対するマージンを大きく改善することができる。そしてこのとき得られるマージンは、維持期間において走査電極SCiに印加する維持パルスの低圧側電圧からデータ電極Djに印加する第4の電圧を減じた電圧を第1の電圧V1と定義した場合に(条件1)から得られるマージンに匹敵する。
【0062】
維持期間においてデータ電極D1〜データ電極Dmにこのような駆動電圧波形を印加することにより、(条件2)に対するマージンを大きく損なうことなく(条件1)に対するマージンを改善ができる理由について完全に解明されたわけではない。しかし、発生した維持放電が収束する前にデータ電極D1〜データ電極Dmに印加する電圧を一旦下げることにより、データ電極D1〜データ電極Dmの壁電圧が増加し、これが(条件1)に対するマージンを改善すると考えることができる。ただし、データ電極Djに第4の電圧を印加するとともに走査電極に維持パルスの高圧側電圧を印加する時間が長すぎると誤放電が発生するおそれがある。そのため、データ電極Djに第4の電圧を印加する所定の期間の時間は、500(ns)〜5000(ns)程度に設定するのが現実的である。
【0063】
本実施の形態においては、維持期間の最初に走査電極SC1〜走査電極SCnに電圧Vsの維持パルスを印加する際に、データ電極D1〜データ電極Dmに上記の駆動電圧波形を印加している。これにより、安定して書込み動作を行うためのマージンを30(V)、誤放電を防ぐためのマージンを30(V)確保している。ただしこれらの値は、パネルの製造ばらつき、プラズマディスプレイ装置の使用温度、長時間使用による放電特性変化等をも考慮したものである。
【0064】
次に、放電開始電圧VFsdと放電開始電圧VFds、および壁電圧は、例えばIEEE TRANSACTIONS ON ELECTRON DEVICES,VOL.ED−24,NO.7,JULY,1977“Measurement of a Plasma in the AC Plasma Display panel Using RF Capacitance and Microwave Techniques”に記載されている方法により測定できる。あるいは、以下のようにして簡易的に測定してもよい。放電開始電圧を簡易的に測定する方法の一例を図5を用いて説明する。
【0065】
まず壁電荷を消去する動作を行う。具体的には図5の壁電荷消去期間に示したように、予想される放電開始電圧よりも十分高いパルス状の電圧Versを、測定したい電極間、例えばデータ電極と走査電極とに交互に印加する。次に、放電開始を観測する。具体的には図5の測定期間に示したように、予想される放電開始電圧よりも低いパルス状の電圧Vmsrを一方の電極、例えばデータ電極に印加し、そのときの放電にともなう発光をフォトマル等の光検出センサを用いて検出する。放電が観測されない場合には、壁電荷消去期間で壁電荷を消去する動作を行った後、測定期間で電圧の絶対値を少しあげたパルス状の電圧Vmsrを印加して発光を観測する。
【0066】
この動作を繰り返し、測定期間において発光の観測された最小の電圧Vmsrの絶対値が放電開始電圧である。このとき測定期間で印加する電圧Vmsrを正の電圧とすると、データ電極を陽極とし走査電極を陰極とする放電開始電圧VFdsを測定することができる。また、測定期間で印加する電圧Vmsrを負の電圧とすると、データ電極を陰極とし走査電極を陽極とする放電開始電圧VFsdを測定することができる。
【0067】
放電開始電圧がわかれば、壁電圧が蓄積している放電セルに対して、放電が開始する電圧を測定し、その電圧値とあらかじめ測定した放電開始電圧との差として壁電圧を知ることができる。
【0068】
次に、パネル10を駆動するための駆動回路について説明する。図6は、本発明の実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置40の回路ブロック図である。プラズマディスプレイ装置40は、走査電極と維持電極とデータ電極とを有する放電セルを複数備えたパネル10と、書込み期間と維持期間と消去期間とを有するサブフィールドを複数用いて1つのフィールドを構成するとともに駆動電圧波形を発生してパネル10の各電極に印加する駆動回路とを備えている。駆動回路は、画像信号処理回路41、データ電極駆動回路42、走査電極駆動回路43、維持電極駆動回路44、タイミング発生回路45および各回路ブロックに必要な電源を供給する電源回路(図示せず)を備えている。
【0069】
画像信号処理回路41は、入力された画像信号をサブフィールド毎の発光・非発光を示す画像データに変換する。データ電極駆動回路42はサブフィールド毎の画像データを各データ電極D1〜データ電極Dmに対応する書込みパルスに変換し各データ電極D1〜データ電極Dmに印加する。タイミング発生回路45は垂直および水平同期信号をもとにして各回路ブロックの動作を制御する各種のタイミング信号を発生し、それぞれの回路ブロックへ供給する。走査電極駆動回路43は、タイミング信号にもとづいて上述した駆動電圧波形を発生し各走査電極SC1〜走査電極SCnのそれぞれに印加する。維持電極駆動回路44は、タイミング信号にもとづいて上述した駆動電圧波形を発生し維持電極SU1〜維持電極SUnに印加する。
【0070】
図7は、本発明の実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置40の走査電極駆動回路43の回路図である。走査電極駆動回路43は、維持パルス発生回路50と、傾斜波形電圧発生回路60と、走査パルス発生回路70とを備えている。
【0071】
維持パルス発生回路50は、電力回収回路51と、スイッチング素子Q55と、スイッチング素子Q56と、スイッチング素子Q59とを有し、走査電極SC1〜走査電極SCnに印加する維持パルスを発生する。電力回収回路51は走査電極SC1〜走査電極SCnを駆動するときの電力を回収して再利用する。スイッチング素子Q55は走査電極SC1〜走査電極SCnを電圧Vsにクランプし、スイッチング素子Q56は走査電極SC1〜走査電極SCnを電圧0(V)にクランプする。スイッチング素子Q59は分離スイッチであり、走査電極駆動回路43を構成するスイッチング素子の寄生ダイオード等を介して電流が逆流するのを防止するために設けられている。
【0072】
走査パルス発生回路70は、スイッチング素子Q71H1〜スイッチング素子Q71Hn、スイッチング素子Q71L1〜スイッチング素子Q71Ln、スイッチング素子Q72を有する。そして電圧Vaの電源、および走査パルス発生回路70の基準電位(図7に示した節点Aの電位)に重畳された電圧(Vc−Va)の電源E71をもとにして走査パルスを発生し、走査電極SC1〜走査電極SCnのそれぞれに、図3に示したタイミングで走査パルスを順次印加する。なお、走査パルス発生回路70は、維持動作時には維持パルス発生回路50の出力電圧をそのまま出力する。すなわち、節点Aの電圧を走査電極SC1〜走査電極SCnへ出力する。
【0073】
傾斜波形電圧発生回路60は、ミラー積分回路61、ミラー積分回路63を備え、図3に示した傾斜波形電圧を発生させる。ミラー積分回路61は、トランジスタQ61とコンデンサC61と抵抗R61とを有し、入力端子IN61に一定の電圧を印加することにより、電圧Vrに向かって緩やかに上昇する上り傾斜波形電圧を発生する。ミラー積分回路63は、トランジスタQ63とコンデンサC63と抵抗R63とを有し、入力端子IN63に一定の電圧を印加することにより、電圧Viに向かって緩やかに低下する下り傾斜波形電圧を発生する。なおスイッチング素子Q69も分離スイッチであり、走査電極駆動回路43を構成するスイッチング素子の寄生ダイオード等を介して電流が逆流するのを防止するために設けられている。
【0074】
なお、これらのスイッチング素子およびトランジスタは、MOSFETやIGBT等の一般に知られた素子を用いて構成することができる。またこれらのスイッチング素子およびトランジスタは、タイミング発生回路45で発生したそれぞれのスイッチング素子およびトランジスタに対応するタイミング信号により制御される。
【0075】
図8は、本発明の実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置40の維持電極駆動回路44の回路図である。維持電極駆動回路44は、維持パルス発生回路80と、一定電圧発生回路85とを備えている。
【0076】
維持パルス発生回路80は、電力回収回路81と、スイッチング素子Q83と、スイッチング素子Q84とを有し、維持電極SU1〜維持電極SUnに印加する維持パルスを発生する。電力回収回路81は維持電極SU1〜維持電極SUnを駆動するときの電力を回収して再利用する。スイッチング素子Q83は維持電極SU1〜維持電極SUnを電圧Vsにクランプし、スイッチング素子Q84は維持電極SU1〜維持電極SUnを電圧0(V)にクランプする。
【0077】
一定電圧発生回路85は、スイッチング素子Q86、スイッチング素子Q87を有し、維持電極SU1〜維持電極SUnに電圧Veを印加する。
【0078】
なお、これらのスイッチング素子も、MOSFETやIGBT等の一般に知られた素子を用いて構成することができる。またこれらのスイッチング素子も、タイミング発生回路45で発生したそれぞれのスイッチング素子に対応するタイミング信号により制御される。
【0079】
図9は、本発明の実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置40のデータ電極駆動回路42の回路図である。データ電極駆動回路42は、スイッチング素子Q91H1〜スイッチング素子Q91Hm、スイッチング素子Q91L1〜スイッチング素子Q91Lmを有する。そしてスイッチング素子Q91Ljをオンにすることでデータ電極Djに電圧0(V)を印加し、スイッチング素子Q91Hjをオンにすることでデータ電極Djに電圧Vdを印加する。
【0080】
このような駆動回路を用いて、図3に示したパネルの駆動電圧波形を発生させることができる。しかし図6〜図9に示した駆動回路は一例であって、本発明がこれらの駆動回路の回路構成に限定されるものではない。
【0081】
以上のように本実施の形態のパネルの駆動方法では、上述の条件を満たす走査パルスを走査電極に印加することで、強制初期化動作を使用しなくても、安定した書込み動作を行うことができるとともに、コントラストを向上させたパネルの駆動方法およびプラズマディスプレイ装置を提供することできる。
【0082】
なお、本実施の形態においては、赤色に発光する蛍光体層を有する放電セル、緑色に発光する蛍光体層を有する放電セル、青色に発光する蛍光体層を有する放電セルを区別することなく、時間T1および時間T2を設定した。しかし赤色に発光する蛍光体層を有する放電セル、緑色に発光する蛍光体層を有する放電セル、青色に発光する蛍光体層を有する放電セルのそれぞれに対して独立に時間T1および時間T2を設定してもよい。このように、放電セル毎に時間T1、時間T2を設定することで、各放電セルに対するマージンを揃えることができる。
【0083】
なお、本実施の形態において示した具体的な数値等は単に一例を示したに過ぎず、パネルの特性やプラズマディスプレイ装置の仕様等にあわせて最適に設定することが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、書込み動作を安定に発生させつつ強制初期化動作を省略して、階調表示に関係しない発光をなくし、コントラストを大幅に向上することができるので、パネルの駆動方法およびプラズマディスプレイ装置として有用である。
【符号の説明】
【0085】
10 パネル
22 走査電極
23 維持電極
24 表示電極対
32 データ電極
35 蛍光体層
40 プラズマディスプレイ装置
41 画像信号処理回路
42 データ電極駆動回路
43 走査電極駆動回路
44 維持電極駆動回路
45 タイミング発生回路
50,80 維持パルス発生回路
51,81 電力回収回路
60 傾斜波形電圧発生回路
61,63 ミラー積分回路
70 走査パルス発生回路
85 一定電圧発生回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
書込み期間と維持期間と消去期間とを有するサブフィールドを複数用いて1つのフィールドを構成し、走査電極と維持電極とデータ電極とを有する放電セルを複数備えたプラズマディスプレイパネルを駆動するプラズマディスプレイパネルの駆動方法であって、
前記維持期間において前記走査電極に維持パルスの高圧側電圧を印加している期間を含む少なくとも1つの所定の期間に前記データ電極に第4の電圧を印加し、前記所定の期間以外の維持期間において前記データ電極に前記第4の電圧よりも高い第5の電圧を印加し、
かつ、前記維持期間において前記走査電極に印加する維持パルスの低圧側電圧から前記データ電極に印加する前記第4の電圧を減じた電圧を第1の電圧とし、前記維持期間において前記走査電極に印加する前記維持パルスの高圧側電圧から前記データ電極に印加する前記第5の電圧を減じた電圧を第2の電圧とし、前記書込み期間において前記走査電極に印加する走査パルスの低圧側電圧から前記データ電極に印加する書込みパルスの低圧側電圧を減じた電圧を第3の電圧とするとき、
前記第1の電圧から前記第3の電圧を減じた電圧が、前記データ電極を陽極とし前記走査電極を陰極とする放電開始電圧以上であり、
前記第2の電圧から前記第3の電圧を減じた電圧が、前記データ電極を陽極とし前記走査電極を陰極とする放電開始電圧と前記データ電極を陰極とし前記走査電極を陽極とする放電開始電圧との和未満である、
ことを特徴とするプラズマディスプレイパネルの駆動方法。
【請求項2】
走査電極と維持電極とデータ電極とを有する放電セルを複数備えたプラズマディスプレイパネルと、書込み期間と維持期間と消去期間とを有するサブフィールドを複数用いて1つのフィールドを構成するとともに駆動電圧波形を発生して前記プラズマディスプレイパネルの各電極に印加する駆動回路とを備えたプラズマディスプレイ装置であって、
前記駆動回路は、
前記維持期間において前記走査電極に維持パルスの高圧側電圧を印加している期間を含む所定の期間に前記データ電極に第4の電圧を印加し、前記所定の期間以外の維持期間において前記データ電極に前記第4の電圧よりも高い第5の電圧を印加し、
かつ、前記維持期間において前記走査電極に印加する維持パルスの低圧側電圧から前記データ電極に印加する前記第4の電圧を減じた電圧を第1の電圧とし、前記維持期間において前記走査電極に印加する前記維持パルスの高圧側電圧から前記データ電極に印加する前記第5の電圧を減じた電圧を第2の電圧とし、前記書込み期間において前記走査電極に印加する走査パルスの低圧側電圧から前記データ電極に印加する書込みパルスの低圧側電圧を減じた電圧を第3の電圧とするとき、
前記第1の電圧から前記第3の電圧を減じた電圧が、前記データ電極を陽極とし前記走査電極を陰極とする放電開始電圧以上であり、
前記第2の電圧から前記第3の電圧を減じた電圧が、前記データ電極を陽極とし前記走査電極を陰極とする放電開始電圧と前記データ電極を陰極とし前記走査電極を陽極とする放電開始電圧との和未満の電圧に設定したことを特徴とするプラズマディスプレイ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−58654(P2012−58654A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204159(P2010−204159)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】