説明

プラズマディスプレイパネル及びその製造方法

【課題】耐熱性の問題を回避可能なように有機カラーフィルター(CF)層を配置し、薄さに起因する脆弱性の惧れを回避しつつ、前面側基板の厚みを視野角依存性の問題が解消される程度まで薄くすることを可能とする。
【解決手段】前面側基板23に表示電極対5が設けられた前面板22と、背面側基板9にアドレス電極10が設けられ、アドレス電極と表示電極対の交差部に各々放電セルを区画するリブ12が設けられ、リブ間に蛍光体層13が設けられた背面板8と、各放電セルの蛍光体層に対応させて前面板に配置された有機CF層19と、前面板と背面板の間を封着している枠状のシール層18とを備える。前面側基板の放電空間側には、背面板のリブ間に対応させたCF溝が設けられ、透明な誘電体からなる蓋層によりCF溝の開口面が封鎖されており、CF溝中に有機カラーフィルター層が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、AC駆動型のプラズマディスプレイパネル(以下、PDPと略記する場合もある。)に関し、特に、有機カラーフィルター層の配置に好適なように改良された前面板構造を有するPDPに関する。
【背景技術】
【0002】
代表的なAC駆動型PDPである交流面放電型PDPの構成の一例を、図5及び図6に示す。図5は、前面板1と背面板8を分離した状態でPDPの一部を示した斜視図である。図6は、図5の前面板1と背面板8が合体された状態を示し、図5における表示電極対5を横切る方向に沿った断面図である。
【0003】
前面板1は、透明で絶縁性を有するガラス等からなる前面側基板2の表面上に、面放電を行う走査電極3および維持電極4からなる表示電極対5が平行に配列された構成を有する。走査電極3および維持電極4はそれぞれ、前面側基板2の表面上に形成された透明電極3a、4aと、その上に形成されたバス電極3b、4bとにより構成される。バス電極3b、4bは、例えば、銀(Ag)とその結着材であるガラスフリット材料からなる。そして表示電極対5を覆うように前面側誘電体層6が形成され、その上に保護膜7が形成されている。
【0004】
一方、背面板8は、透明で絶縁性を有するガラス等からなる背面側基板9の表面上に、画像データを書き込むためのデータ電極10が、前面側基板2の表示電極対5に対して直交する方向に配列され、その上が背面側誘電体層11で覆われた構成を有する。背面側誘電体層11上には、リブを構成するリブ12が形成されている。リブ12は、データ電極10に平行な方向に伸びて形成された縦リブ12aと、それと直交する方向に形成された横リブ12bとで形成された井桁形状をしている。縦リブ12aと横リブ12bとで囲まれた領域により、各画素が規定される。各画素の領域における、リブ12の側面と背面側誘電体層11の表面とには、データ電極10に対応してそれぞれ赤色、緑色、青色の蛍光体層13r、13g、13bが塗布形成されている。
【0005】
前面板1と背面板8とは、表示電極対5とデータ電極10とがマトリックスを形成するように対向している。前面板1と背面板8の間で縦リブ12aと横リブ12bとで囲まれた空間が、各画素の放電空間14となる。各放電空間14に対応して、表示電極対5とデータ電極10とが立体交差することにより、放電セル15が形成される。前面板1の表示電極対5の間には、横リブ12bの頂部に対向するようにブラックストライプ16が形成されている。
【0006】
前面板1と背面板8との外周部はガラスフリットなどのシール材によって封着され(図示せず)、放電空間14に、ネオン(Ne)とキセノン(Xe)の混合ガスからなる放電ガスが封入されている。放電ガスは、例えば、Xeの割合が10%のものが用いられ、約450Torr(約60kPa)の圧力で封入される。
【0007】
このような構成のAC駆動型のPDPでは、表示電極対5上に形成された前面側誘電体層6が特有の電流制限機能を発揮するので長寿命である。保護膜7は、プラズマ放電により前面側誘電体層6がスパッタリングされないようにするために設けるもので、耐スパッタリング性に優れた材料、例えば酸化マグネシウム(MgO)が多く用いられている。
【0008】
一方、PDPでは明所コントラストを向上させるため、パネルにNDフィルター(減光フィルター)が貼付されている。このNDフィルターにより外光の反射が抑えられることにより、PDPは明るい環境でも良好な黒表示が得られる。一方、NDフィルターはパネル内部からの発光もカットするため、PDPのセット効率を低下させる原因ともなっている。
【0009】
この問題を改善するために、パネルのRGBの蛍光体各色に対応するカラーフィルター(以下、CFと略記する場合もある)を用いることが知られている。CF層を設けた場合、色純度を向上させる効果とともに、外光の反射をNDフィルター並みに抑える効果も得られる。さらに、パネル内部からの発光については、NDフィルターの場合30%〜40%程度しか透過しないのに対して、CF層の場合は70〜80%を透過するため、光利用効率について2倍に近い大幅なセット効率の上昇が期待できる。ただし、液晶などで使われる光学特性の良い有機顔料を用いた有機CF層を使用した場合である。
【0010】
一方、CF層を設ける場合、CF層を光源になるべく近い位置に配置することが必要である。PDPでの光源は前面板1の保護膜7表面であり、42FHD相当のセルサイズの場合だと、リブ幅にもよるが、保護膜7表面から約50μm以下の距離内にCF層を配置することが望ましい。これ以上に離れると、正面から見た場合は問題ないが、斜めから見た場合には、視野角に応じて輝度の減少や色ずれが発生する問題が発生する。
【0011】
すなわち、光源から出射した光は等方的に広がるが、正面から見た場合、発光した場所とCF層の位置は同じなので、色光は同一色のCF層を透過して外部に放射される。一方、視点が斜めになった場合、他の色のCF層を通して光をみる状態が発生し得る。この場合、CF層により異なる色光がカットされ、発光していないように見える。発光箇所とCF層の距離が近い場合には、発光した光が対応する色のCF層のみを通るので、視野角依存性は発生しない。
【0012】
CF層を用いたPDPの第1従来例として、無機顔料を用いた無機CF層を、PDPの基板表面や電極上などのパネル内部に配置した製品例の断面構造を、図7に示す。図7の構成では、背面板8は上記従来例と同様の構造である。前面板1は、前面側誘電体層6に無機CF層17が埋め込まれた構造を有する。無機CF層17に含まれる各色のCF層セル17r、17g、17bは、各放電空間の蛍光体層13r、13g、13bに対応させて配置されている。前面板1と背面板8の間は、シール層18により封着されている。
【0013】
無機CF層17は500℃以上の高い耐熱性を有するので、このような配置が可能であり、PDPの製造上も対応が容易である。この場合、光源との距離は遠い場合でも前面側誘電体層6の分の20〜40μm程度であるため、視野角依存性は問題にならない。視野角依存性は、光源とCF層の距離が長い場合に発生する。すなわち、光源から出射した光は等方的に広がるが、正面から見た場合、発光した場所とCF層の位置は同じなので、色光は同一色のCF層を透過して外部に放射される。一方、視点が斜めになった場合、他の色のCF層を通して光をみる状態が発生し得る。この場合、CF層により異なる色光がカットされ、発光していないように見える。発光箇所とCF層の距離が近い場合には、発光した光が対応する色のCF層のみを通るので、視野角依存性は発生しない。
【0014】
しかし、無機CF層17は、有機顔料を用いた有機CF層に比べると光学特性が良好ではなく、大幅に光利用効率を向上させることは難しい。
【0015】
一方、液晶ディスプレイ等で用いられている有機CF層は、光学特性が非常に良好であるため、PDP用として好適である。有機CF層を用いた第2従来例のPDPを図8に示す。この場合も、上記の無機CF層17の場合と同様、パネル内部に有機CF層を配置することが考えられる。図8の構成は、図7における無機CF層17を有機CF層19に置き換えたものである。従って、光源と有機CF層19との距離は問題にならない。しかし、有機CF層19の耐熱温度は250℃程度であるため、PDPで通常使われる低融点ガラス材料を用いた製造プロセスには適用できない(低融点ガラスを用いるプロセスは500〜600℃程度の耐熱性が必要)。そのため、誘電体材料や封着材料、またそれらの製造プロセスを大幅に変更する必要があり、現状では、図8の構成によりPDPの内部に有機CF層を配置することは困難である。
【0016】
そこで、第3従来例のPDPとして、非常に薄いガラス基板(誘電体用薄板、マイクロシート)を前面板に用いてパネルを作製し、パネル化後に有機CF層を形成した構成が、例えば特許文献1〜3に開示されている。パネル化後には高温プロセスを不要とすることができるので、この構成であれば耐熱性の低い有機CF層を使用できる。
【0017】
図9に示すように、第3従来例のPDPでは、上記従来例の前面側誘電体層6に代えてマイクロシート20が用いられる。マイクロシート20の放電空間側に保護膜7が形成され、非放電空間側(前面側)に表示電極対5が設けられる。そして、マイクロシート20の放電空間側において、背面側基板9との間が、低融点ガラス等のシール材18により封着される。このように、マイクロシート20を背面側基板9に封着することにより、マイクロシート20の前面側(非放電空間側)は、封着後には、製造工程中の高温に曝されることがなくなる。従って、封着後、表示電極対5上に有機CF層19を備えた有機CFフィルム21を接合することにより、有機CF層19の低耐熱性の問題を解決することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開平9−259769号公報
【特許文献2】特許3849735号明細書
【特許文献3】特開平11−339666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
上記従来例のように、マイクロシートとともに有機CF層を用いた構造の場合には、次のような問題を解決する必要がある。すなわち、視野角依存性の問題を回避するため、上述のように、保護膜表面から約50μm以下の距離内にCF層を配置することが望ましい。光源との距離を50μm以下にするには、少なくともマイクロシートを50μm以下にする必要がある。さらにこの場合、マイクロシートを誘電体層として使うことになるが、誘電体層の厚みは30μm以下が望ましい。
【0020】
しかし、30μm以下の均一で大きなマイクロシートの作成は非常に難しく、また搬送工程や封着工程などで破損するリスクが非常に大きくなるため、そのようなマイクロシートを単純に用いた構成を採用することは困難である。
【0021】
以上のことを考慮して、本発明は、耐熱性の問題を回避可能なように有機カラーフィルター(CF)層を配置し、薄さに起因する脆弱性の惧れを回避しつつ、前面側基板の厚みを視野角依存性の問題が解消される程度まで薄くすることを可能としたプラズマディスプレイパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記課題を解決するために、本発明のプラズマディスプレイパネルは、前面側基板に走査電極および維持電極からなる複数の表示電極対が設けられた前面板と、背面側基板に前記表示電極対と立体交差する複数のデータ電極が設けられ、前記データ電極と前記表示電極対の交差部に各々放電セルを区画するリブが設けられ、前記リブ間に蛍光体層が設けられ、放電空間を形成して前記前面板と接合された背面板と、前記各放電セルの前記蛍光体層に対応させて前記前面板に配置され有機顔料を用いて形成された有機カラーフィルター層と、前記前面板と前記背面板の間の外周縁領域に枠状に設けられ、前記前面板と前記背面板の間を封着しているシール層とを備え、前記前面側基板の前記放電空間側には、前記背面板のリブ間に対応させたCF溝が設けられ、透明な誘電体からなる蓋層により前記CF溝の開口面が封鎖されており、前記CF溝中に前記有機カラーフィルター層が設けられていることを特徴とする。
【0023】
本発明の第1の製造方法は、上記構成のプラズマディスプレイパネルを製造する方法であって、前記背面板を作製し、前記前面側基板の前記放電空間側の面または前記蓋層の前記前面側基板に対向する面に、前記CF溝を形成する凹部を設け、前記蓋層と前記前面側基板とを接合することにより前記CF溝の開口面を封鎖し、その後、前記蓋層の前記放電空間側の面に、前記表示電極対、前記表示電極対を覆う誘電体層、及び前記誘電体層を覆う保護層を設けて前記前面板を作製し、前記前面板と前記背面板とを、前記シール層により前記放電空間を形成して封着し、その後、前記CF溝の端部から有機カラーフィルター顔料を前記CF溝内に注入して前記有機カラーフィルター層を形成することを特徴とする。
【0024】
本発明の第2の製造方法は、上記構成のプラズマディスプレイパネルを製造する方法であって、前記背面板を作製し、前記前面側基板の前記放電空間側の面または前記蓋層の前記前面側基板に対向する面に、前記CF溝を形成する凹部を設け、前記蓋層の前記前面側基板に対向する面に前記表示電極対を設け、前記蓋層と前記前面側基板とを接合することにより前記CF溝の開口面を封鎖した後、前記蓋層の前記放電空間側の面に保護層を設けて前記前面板を作製し、前記前面板と前記背面板とを、前記シール層により前記放電空間を形成して封着し、その後、前記CF溝の端部から有機カラーフィルター顔料を前記CF溝内に注入して前記有機カラーフィルター層を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
上記構成によれば、有機CF層は、CF溝の端部から有機CF顔料を注入することにより形成することができる。従って、前面側基板にCF溝及び蓋層を設け、通常の工程によりパネルとして完成後に、有機CF層を形成することが可能である。これにより、有機CF層が設けられた後の工程では高温の処理を不要とし、有機CF層の耐熱性の低さの問題を解消することが容易である。
【0026】
また、蓋層の厚さを、視野角依存性が問題にならない程度に十分に薄くしても、製造工程では前面側基板に保持された状態で扱われる割合が多いので、外力に対して十分な強度を有し、蓋層が破損される恐れは十分に低減される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施の形態1におけるPDPの断面図
【図2】同PDPの平面図
【図3】実施の形態2におけるPDPの断面図
【図4】実施の形態3におけるPDPの第1構成例の断面図
【図5】従来例のPDPの一部を前面板1と背面板8を分離した状態で示した斜視図
【図6】図5の前面板1と背面板8が合体された状態を示す断面図
【図7】CF層を設けたPDPの第1従来例を示す断面図
【図8】CF層を設けたPDPの第2従来例を示す断面図
【図9】CF層を設けたPDPの第3従来例を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明のプラズマディスプレイパネルは、上記構成を基本として、以下のような態様をとることができる。
【0029】
すなわち、前記CF溝は、前記前面側基板の面に凹部として形成された構成とすることができる。
【0030】
また、前記蓋層は、前記前面側基板の前記CF溝が形成された面にシート誘電体を積層し焼成して形成された構成とすることができる。
【0031】
あるいは、前記蓋層は、薄板ガラスを前記前面側基板に接合して形成された構成とすることができる。
【0032】
また、前記蓋層は薄板ガラスを前記前面側基板に接合して形成され、前記CF溝は、前記薄板ガラスの前記前面側基板に対向する面に凹部として形成された構成とすることができる。
【0033】
また、前記蓋層の前記放電空間側の面に、前記表示電極対、前記表示電極対を覆う誘電体層、及び前記誘電体層を覆う保護層が設けられた構成とすることができる。
【0034】
また、前記薄板ガラスの前記放電空間とは反対側に前記表示電極対が設けられ、前記薄板ガラスの前記放電空間側に保護層が設けられているた構成とすることができる。
【0035】
本発明のプラズマディスプレイパネルの製造方法は、上記構成を基本として、以下のような態様をとることができる。
【0036】
すなわち、前記CF溝の端部を、前記シール層が形成される領域よりも外側に位置させることが好ましい。
【0037】
また、前記蓋層は薄板ガラスを前記前面側基板に接合して形成し、前記接合の後、前記薄板ガラスを薄くする加工を施すことが好ましい。
【0038】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0039】
<実施の形態1>
実施の形態1におけるPDPの構造について、図1〜図2を参照して説明する。図1及び図2はそれぞれ、実施の形態1におけるPDPの構造の概要を示す断面図、及び平面図である。
【0040】
本実施の形態のPDPにおける背面板8の構造は、図5〜図6に示した従来例と同様である。背面板8は、背面側基板9上に複数のデータ電極を設けて構成されているが、図1〜図2では、データ電極は図示が省略されている。データ電極の上には図1に示すように、背面側誘電体層11、及び各々放電セルを区画するリブ12が設けられ、リブ12間に各色の蛍光体層13r、13g、13bが設けられている。但し、図2におけるリブ12は、簡略的にその形成された範囲のみが示され、具体的な図示は省略されている。
【0041】
本実施の形態のPDPは、前面板22の構成に特徴を有する。前面板22に用いられる前面側基板23の放電空間側(下面)には、背面板8の各リブ12間に対応させてCF溝23aが形成されている。但し、CF溝23aが配置されるのは、実際に表示が行われる表示領域24(図2)に対応する範囲内のみである。CF溝23aの放電空間側には透明な誘電体からなる蓋層25が配置されて、CF溝23aの放電空間側の開口面は蓋層25により封鎖され、端部のみが外部に開放された状態になっている。CF溝23a中には、有機CF層19が形成されている。CF層セル19r、19g、19bの各々の色は、リブ12により区画された各放電セルの蛍光体層13r、13g、13bの発光色に対応している。
【0042】
蓋層25の放電空間側には、図5〜図6に示した従来例と同様の、表示電極対5、前面側誘電体層6、及び保護膜7が配置されている。なお、表示電極対5は、図5、図6に示した透明電極及びバス電極を含むが、図1及び以下に説明する図面では、図示が簡略化されている。前面板22と背面板8は、前面板22の外周領域に枠状に設けられたシール層18により封着されている。CF溝23aの端部は、前面板22と背面板8の封着時にシール層18が形成される領域よりも外側に延在するように配置されている(図2参照)。
【0043】
上記構成によれば、有機CF層19は、CF溝23aの端部から有機CF顔料を注入することにより形成することができる。従って、前面側基板23にCF溝23aを形成し、蓋層25を設けた後、通常の前面板製造プロセス、背面板8との組立、封着・排気プロセスを行い、パネルとして完成した後に有機CF層19を形成することが可能である。これにより、有機CF層19が設けられた後の製造工程においては、低融点ガラスシール材を用いてシール層18を形成するときのような高温の処理を回避することが可能である。その結果、有機CF層19の耐熱性の低さは問題にならず、有機CF層19の採用が容易になる。
【0044】
また、表示領域24における蓋層25の厚さ、前面側誘電体層6の厚さ、及び保護膜7の厚さとを合計した厚さt(図1)が、例えば50μm以下となるように十分に薄く調整されれば、有機CF層19と光源との距離を、視野角依存性が問題にならない程度に短くすることができる。
【0045】
蓋層25は極めて薄いために単体では破損しやすいが、本実施の形態では前面側基板23に接合されて保持された状態になるので、外力に対して十分な強度を有し取扱いは容易である。蓋層25は、前面側基板23のCF溝23aが形成された面に、シート誘電体を積層し焼成して形成することができる。あるいは、蓋層25は、前面側基板23のCF溝23aが形成された面に薄板ガラスを接合して形成してもよい。
【0046】
上記構成のPDPを作製するために、前面側基板23にCF溝23aを形成する工程としては、サンドブラスト、化学エッチング、型押しなどを用いることができる。その工程において、CF溝23aの端部を、図1に示したように、シール層18よりも外側に位置させる。CF溝23aを形成した後に、前面側基板23全体にシート誘電体(グリーンシート)をラミネートし、焼成する。この誘電体シートが蓋層25となり、有機CF層19を形成するための有機CF顔料を注入するための注入孔を有する前面側基板23が作製される。
【0047】
シート誘電体の代わりに、薄板ガラスを貼り付けて蓋層25を形成する場合、蓋層25の形成後(接合後)に、薄板ガラスに対して、エッチング等(化学、CMP、サンブラなどなど)により厚さを減じる工程を施すことができる。それにより、接合前には十分な厚み有する薄板ガラスを用いて、取扱いを容易にすることができる。
【0048】
<実施の形態2>
実施の形態2におけるPDPの構造について、図3を参照して説明する。図3は本実施の形態におけるPDPの構造の概要を示す断面図である。実施の形態1の構成では、前面側基板23の表面に凹加工を施すことによりCF溝23aが設けられているが、本実施の形態は、それとは異なる構成によりCF溝を設けたものである。
【0049】
すなわち、図3に示すように、本実施の形態の前面板26では、通常の前面側基板2を用い、蓋層27として薄板ガラスを用いる。蓋層27の薄板ガラスにおける前面側基板2と対向する面には、凹加工を施してCF溝27aが形成されている。CF溝27aが形成された薄板ガラスを、前面側基板2に接合して蓋層27とすることにより、CF溝27aの開口面(非放電空間側)が封鎖され、端部のみが外部に開放された状態が得られる。
【0050】
蓋層27の薄板ガラスに対しては、実施の形態1の場合と同様、前面側基板2との接合後に、エッチング等(化学、CMP、サンブラなどなど)により厚さを減じる工程を施すことができる。それにより、接合前には十分な厚み有する薄板ガラスを用いて、取扱いを容易にすることができる。
【0051】
蓋層27の接合後、蓋層27の放電空間側の面に、表示電極対5、前面側誘電体層6、及び保護層7を設けて前面板26とし、背面板8との間を封着する。その後、CF溝27aに有機CF顔料を注入して有機CF層19を形成する。
【0052】
<実施の形態3>
実施の形態3におけるPDPの構造について、図4を参照して説明する。図4は本実施の形態におけるPDPの構造の概要を示す断面図である。本実施の形態の前面板28では、実施の形態1の蓋層25、あるいは実施の形態2の蓋層27のように薄板ガラスを用いた構成が用いられる。そして、図4に示すように、薄板ガラスを用いた蓋層29の非放電空間側、すなわち前面側基板23に対向する側に表示電極対5が設けられている。
【0053】
図4の構成では、前面側基板23の放電空間側の表面に凹加工を施してCF溝23aが設けられている。前面側基板23の放電空間側の端部には、引出し電極層5aが形成されている。表示電極対5が形成された蓋層29が、CF溝23aを覆って前面側基板23に接合され、表示電極対5の端部は引出し電極層5aと接続されている。
【0054】
蓋層29の放電空間側には保護層7が設けられている。このように、実施の形態1、2における前面側誘電体層6は形成されず、蓋層29を誘電体層として機能させる。これにより、誘電体層を形成する工程を省略でき、薄板ガラスを誘電体層として用いるため、ピンホールなどの問題がなく誘電体層としての信頼性は向上する。
【0055】
蓋層29の薄板ガラスに対しては、実施の形態1の場合と同様、前面側基板23と接合後に、エッチング等(化学、CMP、サンブラなどなど)により厚さを減じる工程を施すことができる。前面板28と背面板8との間を封着した後、CF溝23aに有機CF顔料を注入して有機CF層19を形成する。
【0056】
また、図3に示したように、蓋層27にCF溝27aを形成する構成を採用することもできる。その場合は、CF溝27aが形成された上に表示電極対5を設ける。図4の構成と同様、蓋層27の放電空間側には、前面側誘電体層6を設けることなく保護層7が設けられる。
【0057】
<各実施の形態に共通する事項>
CF溝23a、27aの深さは、光学特性と有機CF顔料を注入するプロセスとを勘案して決定される。深すぎると視野角の問題が生じる。浅すぎると有機CF顔料の注入が困難になる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明のPDPによれば、有機CF層を設けることが容易となり、しかも、脆弱性の惧れを招くことなく前面側基板の厚みを視野角依存性の問題が解消される程度まで薄くすることができるので、壁掛けテレビや大型モニターとして有用である。
【符号の説明】
【0059】
1、22、26、28 前面板
2、23 前面側基板
3 走査電極
3a、4a 透明電極
3b、4b バス電極
4 維持電極
5 表示電極対
6 前面側誘電体層
7 保護膜
8 背面板
9 背面側基板
10 データ電極
11 背面側誘電体層
12 隔壁
12a 縦隔壁
12b 横隔壁
13r、13g、13b 蛍光体層
14 放電空間
15 放電セル
16 ブラックストライプ
17 無機CF層
17r、17g、17b、19r、19g、19b CF層セル
18 シール層
19 有機CF層
20 マイクロシート
21 有機CFフィルム
23a、27a CF溝
24 表示領域
25、27、29 蓋層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面側基板に走査電極および維持電極からなる複数の表示電極対が設けられた前面板と、
背面側基板に前記表示電極対と立体交差する複数のデータ電極が設けられ、前記データ電極と前記表示電極対の交差部に各々放電セルを区画するリブが設けられ、前記リブ間に蛍光体層が設けられ、放電空間を形成して前記前面板と接合された背面板と、
前記各放電セルの前記蛍光体層に対応させて前記前面板に配置され有機顔料を用いて形成された有機カラーフィルター層と、
前記前面板と前記背面板の間の外周縁領域に枠状に設けられ、前記前面板と前記背面板の間を封着しているシール層とを備え、
前記前面側基板の前記放電空間側には、前記背面板のリブ間に対応させたCF溝が設けられ、透明な誘電体からなる蓋層により前記CF溝の開口面が封鎖されており、
前記CF溝中に前記有機カラーフィルター層が設けられていることを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項2】
前記CF溝は、前記前面側基板の面に凹部として形成されている請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項3】
前記蓋層は、前記前面側基板の前記CF溝が形成された面にシート誘電体を積層し焼成して形成されている請求項2に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項4】
前記蓋層は、薄板ガラスを前記前面側基板に接合して形成されている請求項2に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項5】
前記蓋層は薄板ガラスを前記前面側基板に接合して形成され、
前記CF溝は、前記薄板ガラスの前記前面側基板に対向する面に凹部として形成されている請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項6】
前記蓋層の前記放電空間側の面に、前記表示電極対、前記表示電極対を覆う誘電体層、及び前記誘電体層を覆う保護層が設けられている請求項1〜5のいずれか1項に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項7】
前記薄板ガラスの前記放電空間とは反対側に前記表示電極対が設けられ、前記薄板ガラスの前記放電空間側に保護層が設けられている請求項4または5に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項8】
請求項1に記載のプラズマディスプレイパネルを製造する方法であって、
前記背面板を作製し、
前記前面側基板の前記放電空間側の面または前記蓋層の前記前面側基板に対向する面に、前記CF溝を形成する凹部を設け、前記蓋層と前記前面側基板とを接合することにより前記CF溝の開口面を封鎖し、
その後、前記蓋層の前記放電空間側の面に、前記表示電極対、前記表示電極対を覆う誘電体層、及び前記誘電体層を覆う保護層を設けて前記前面板を作製し、
前記前面板と前記背面板とを、前記シール層により前記放電空間を形成して封着し、
その後、前記CF溝の端部から有機カラーフィルター顔料を前記CF溝内に注入して前記有機カラーフィルター層を形成することを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法。
【請求項9】
請求項1に記載のプラズマディスプレイパネルを製造する方法であって、
前記背面板を作製し、
前記前面側基板の前記放電空間側の面または前記蓋層の前記前面側基板に対向する面に、前記CF溝を形成する凹部を設け、
前記蓋層の前記前面側基板に対向する面に前記表示電極対を設け、
前記蓋層と前記前面側基板とを接合することにより前記CF溝の開口面を封鎖した後、前記蓋層の前記放電空間側の面に保護層を設けて前記前面板を作製し、
前記前面板と前記背面板とを、前記シール層により前記放電空間を形成して封着し、
その後、前記CF溝の端部から有機カラーフィルター顔料を前記CF溝内に注入して前記有機カラーフィルター層を形成することを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法。
【請求項10】
前記CF溝の端部を、前記シール層が形成される領域よりも外側に位置させる請求項8または9に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法。
【請求項11】
前記蓋層は薄板ガラスを前記前面側基板に接合して形成し、
前記接合の後、前記薄板ガラスを薄くする加工を施す請求項8または9に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−209046(P2012−209046A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72264(P2011−72264)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】