説明

プラズマディスプレイパネル

【課題】放電特性を改善すると同時に緑色の色純度を向上させ、さらに発光効率の低下が極めて少ない緑色蛍光体を実現することで、フルスペックハイビジョンの画像表示においても高画質、高輝度、広い色再現範囲を実現することができるPDPを提供する。
【解決手段】少なくとも前面側が透明な一対の基板を基板間に放電空間が形成されるように対向配置するとともに放電空間を複数に仕切るための隔壁を少なくとも一方の基板に配置し、かつ隔壁により仕切られた放電空間で放電が発生するように基板に電極群を配置するとともに放電により発光する蛍光体層を設けたパネル本体を有するプラズマディスプレイ装置であり、蛍光体層は、Zn2SiO4:MnとBaMgAl1017:Mnとの混合物よりなる緑色蛍光体層を備え、Zn2SiO4:Mnの表面に酸化アルミニウムがコートされるとともに表面10nm以内においてSi元素に対するAl元素の比が0.1以上とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は例えば、テレビなどの画像表示に用いられるプラズマディスプレイパネルに関し、特に、紫外線により励起されて発光する蛍光体層を有するプラズマディスプレイパネルとその蛍光体層の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと呼ぶ)は、高精細化、大画面化の実現が可能であることから、50インチクラスから100インチを越えるクラスのフルスペックのハイビジョンテレビや大型公衆表示装置なども製品化が進んでいる。
【0003】
PDPは前面板と背面板とで構成されている。前面板は、フロート法による硼硅酸ナトリウム系ガラスのガラス基板と、その一方の主面上に形成されたストライプ状の透明電極と金属バス電極とで構成される表示電極と、この表示電極を覆ってコンデンサとしての働きをする誘電体層と、この誘電体層上に形成された酸化マグネシウム(MgO)からなる保護層とで構成されている。一方、背面板は、排気および放電ガス封入(導入ともいう)用の細孔を設けたガラス基板と、その一方の主面上に形成されたストライプ状のアドレス電極(データ電極ともいう)と、アドレス電極を覆う下地誘電体層と、下地誘電体層上に形成された隔壁と、各隔壁間に形成された赤色、緑色および青色それぞれに発光する蛍光体層とで構成されている。
【0004】
前面板と背面板とは、その電極形成面側を対向させてその周囲を封着材によって封着し、隔壁で仕切られた放電空間にNe−Xeの混合ガスが放電ガスとして400Torr〜600Torrの圧力で封入されている。そして、表示電極に映像信号電圧を選択的に印加することによって放電ガスを放電させ、その放電によって発生した紫外線が各色蛍光体層を励起して赤色、緑色、青色の発光をさせることでカラー画像表示を実現している。
【0005】
PDPは、いわゆる3原色(赤、緑、青)を加法混色することにより、フルカラー表示を行っている。このフルカラー表示を行うために、PDPには光の3原色である赤色、緑色、青色の各色を発光する蛍光体層を備えている。各色の蛍光体層は各色の蛍光体粒子が積層されて構成され、赤色蛍光体粒子としては(YGd)BO3:Eu3+やY23:Eu3+、緑色蛍光体粒子としてはZn2SiO4:Mn2+、青色蛍光体粒子としてはBaMgAl1017:Eu2+が知られている。これらの各蛍光体は、所定の原材料を混ぜ合わせた後、1000℃以上の高温で焼成する固相反応法などで作製される。
【0006】
また、Zn2SiO4:Mnからなる緑色蛍光体は、その表面が負極性に帯電し易いため、PDPに用いた場合に、放電特性を悪化させることが知られている。
【0007】
上記課題を解決するために、負帯電のZn2SiO4:Mnの表面に正帯電の酸化物を極性が正になるまで緻密に積層コーティングする方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、負帯電のZn2SiO4:Mnと正帯電の緑色蛍光体とを混合して使用する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平9−248859号公報
【特許文献2】特開2000−292069号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、近年の高精細フルスペックのハイビジョンテレビでは画素は1920(水平)×1080(垂直)であり、従来のNTSCの画素数である852(水平)×480(垂直)と比較して約6倍に増加する。したがって、1画素あたりのアドレス放電に有する時間が短くなるため、放電特性の許容範囲が狭くなり、プラズマディスプレイパネルの画質低下を招くという課題がある。
【0009】
ここで、前述の特許文献において開示されている方法でこのような課題を解決しようとする場合には、それぞれ次のような課題がある。
【0010】
すなわち、Zn2SiO4:Mn蛍光体表面に正帯電の酸化物をコーティングする方法では、放電によって生じた紫外線が蛍光体表面の非発光の酸化物によって吸収されるため、発光効率が低下するという課題がある。また、Zn2SiO4:Mn蛍光体と他の緑色蛍光体を混合する方法では、一般に用いられている正帯電を有する緑色蛍光体であるYBO3:Tb蛍光体は、Zn2SiO4:Mn蛍光体表面よりも緑色の色純度が低く、混合使用することで、色純度の低下を招く。
【0011】
本発明はこのような現状に鑑みなされたもので、放電特性を改善すると同時に緑色の色純度を向上させ、さらに発光効率の低下が極めて少ない緑色蛍光体を実現することで、フルスペックハイビジョンの画像表示においても高画質、高輝度、広い色再現範囲を実現することができるPDPを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を実現するために本発明のPDPは、上記課題を解決するため、本発明のプラズマディスプレイ装置は、少なくとも前面側が透明な一対の基板を基板間に放電空間が形成されるように対向配置するとともに前記放電空間を複数に仕切るための隔壁を少なくとも一方の基板に配置し、かつ前記隔壁により仕切られた放電空間で放電が発生するように基板に電極群を配置するとともに放電により発光する蛍光体層を設けたパネル本体を有するプラズマディスプレイ装置であって、前記蛍光体層は、Zn2SiO4:MnとBaMgAl1017:Mnとの混合物よりなる緑色蛍光体層を備え、前記Zn2SiO4:Mnの表面に酸化マグネシウムがコートされるとともに表面10nm以内においてSi元素に対するAl元素の比が0.1以上となる構成としたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、放電特性を改善すると同時に緑色の色純度を向上させ、さらに発光効率の低下が極めて少ない緑色蛍光体が実現でき、もってフルスペックハイビジョンの画像表示においても高画質、高輝度、広い色再現範囲を実現することができるPDPを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態によるPDPについて、図を用いて説明するが、本発明の実施の態様はこれに限定されるものではない。
【0015】
<1.構成>
図1は、本発明の一実施の形態によるPDPにおける電極の概略構成を示す平面図である。PDP100は、前面ガラス基板(図示せず)と、背面ガラス基板102と、維持電極103と、走査電極104と、アドレス電極107と、気密シール層121とを備える。維持電極103と走査電極104とはそれぞれN本が平行に配置されている。アドレス電極107はM本が平行に配置されている。維持電極103と走査電極104とアドレス電極107とは3電極構造の電極マトリックスを有しており、走査電極104とアドレス電極107との交点に放電セルが形成されている。
【0016】
図2は、本発明の一実施の形態によるPDPにおける画像表示領域の概略構成を示す部分断面斜視図である。PDP100は、前面パネル130と背面パネル140とで構成されている。前面パネル130の前面ガラス基板101上には維持電極103と走査電極104と誘電体ガラス層105とMgO保護層106とが形成されている。背面パネル140の背面ガラス基板102上にはアドレス電極107と下地誘電体ガラス層108と隔壁109と蛍光体層110R、110G、110Bとが形成されている。
【0017】
そして、前面パネル130と背面パネル140とを貼り合わせ、前面パネル130と背面パネル140との間に形成される放電空間122内に放電ガスを封入してPDP100が完成する。
【0018】
図3は、本発明の一実施の形態によるPDP100を用いたPDP装置の概略構成を模式的に示すブロック図である。
【0019】
PDP100は、駆動装置150と接続されることでPDP装置を構成している。PDP100には表示ドライバ回路153、表示スキャンドライバ回路154、アドレスドライバ回路155が接続されている。コントローラ152はこれらの電圧印加を制御する。点灯させる放電セルに対応する走査電極104とアドレス電極107へ所定電圧を印加することでアドレス放電を行う。コントローラ152はこの電圧印加を制御する。その後、維持電極103と走査電極104との間にパルス電圧を印加して維持放電を行う。この維持放電によって、アドレス放電が行われた放電セルにおいて紫外線が発生する。この紫外線で励起された蛍光体層が発光することで放電セルが点灯する。各色セルの点灯、非点灯の組み合わせによって画像が表示される。
【0020】
次に、PDP100の製造方法を図1と図2を参照しながら説明する。まず、前面パネル130の製造方法を説明する。前面ガラス基板101上に、各N本の維持電極103と走査電極104をストライプ状に形成する。その後維持電極103と走査電極104を誘電体ガラス層105でコートする。さらに誘電体ガラス層105の表面にMgO保護層106を形成する。
【0021】
維持電極103と走査電極104は、銀を主成分とする電極用の銀ペーストをスクリーン印刷により塗布した後、焼成することによって形成する。誘電体ガラス層105は、酸化ビスマス系のガラス材料を含むペーストをスクリーン印刷で塗布した後、焼成して形成する。上記ガラス材料を含むペーストは、例えば、30重量%の酸化ビスマス(Bi23)と28重量%の酸化亜鉛(ZnO)と23重量%の酸化硼素(B23)と2.4重量%の酸化硅素(SiO2)と2.6重量%の酸化アルミニウムを含む。さらに、10重量%の酸化カルシウム(CaO)と4重量%の酸化タングステン(WO3)と有機バインダ(α−ターピネオールに10%のエチルセルロースを溶解したもの)とを混合して形成する。ここで、有機バインダとは樹脂を有機溶媒に溶解したものであり、樹脂としてエチルセルロース以外にアクリル樹脂、有機溶媒としてブチルカービトールなども使用することができる。さらに、こうした有機バインダに分散剤(例えば、グリセルトリオレエート)を混入させてもよい。
【0022】
誘電体ガラス層105は所定の厚み(約40μm)となるように塗布厚みを調整する。MgO保護層106は酸化マグネシウム(MgO)から成るものであり、例えばスパッタリング法やイオンプレーティング法によって所定の厚み(約0.5μm)となるように形成する。
【0023】
次に、背面パネル140の製造方法を説明する。背面ガラス基板102上に、電極用の銀ペーストをスクリーン印刷し、焼成することによってM本のアドレス電極107をストライプ状に形成する。アドレス電極107の上に酸化ビスマス系のガラス材料を含むペーストをスクリーン印刷法で塗布した後、焼成して下地誘電体ガラス層108を形成する。同じく酸化ビスマス系のガラス材料を含むペーストをスクリーン印刷法により所定のピッチで繰り返し塗布した後に焼成して隔壁109を形成する。放電空間122はこの隔壁109によって区画され、放電セルが形成される。隔壁109の間隔寸法は42インチ〜50インチのフルHDテレビやHDテレビに合わせて130μm〜240μm程度に規定されている。
【0024】
隣接する2本の隔壁109の間の溝に、赤色蛍光体層110R、緑色蛍光体層110G、青色蛍光体層110Bを形成する。赤色蛍光体層110Rは、例えば(Y、Gd)BO3:Euの赤色蛍光体材料により構成される。青色蛍光体層110Bは、例えばBaMgAl1017:Euの青色蛍光体材料により構成される。緑色蛍光体層110Gは、Zn2SiO4:MnとBaMgAl1017:Mnとの緑色蛍光体材料により構成される。
【0025】
このようにして作製された前面パネル130と背面パネル140を、前面パネル130の走査電極104と背面パネル140のアドレス電極107とが交差するように対向して重ね合わせる。周辺部に封着用ガラスを塗布し、450℃程度で10分〜20分間焼成することで、図1に示すように、気密シール層121を形成し、前面パネル130と背面パネル140とを封着する。
【0026】
そして、一旦放電空間122内を高真空に排気したのち、放電ガス(例えば、ヘリウム−キセノン系、ネオン−キセノン系の不活性ガス)を所定の圧力で封入することによってPDP100が完成する。
【0027】
<2.本実施の形態の蛍光体の製造方法>
次に、各色の蛍光体材料の製造方法について説明する。なお、本実施の形態においては、蛍光体材料は、固相反応法により製造されたものを用いている。
【0028】
青色蛍光体材料であるBaMgAl1017:Euは以下の方法で作製する。炭酸バリウム(BaCO3)と炭酸マグネシウム(MgCO3)と酸化アルミニウムと酸化ユーロピウム(Eu23)とを蛍光体組成に合うように混合する。混合物を空気中において800℃〜1200℃で焼成し、さらに水素と窒素を含む混合ガス雰囲気において1200℃〜1400℃で焼成して作製する。
【0029】
赤色蛍光体材料(Y,Gd)BO3:Euは以下の方法で作製する。酸化イットリウム(Y23)と酸化ガドリミウム(Gd23)とホウ酸(H3BO3)と酸化ユーロピウム(EuO2)とを蛍光体組成に合うように混合する。混合物を空気中にて600℃〜800℃で焼成し、さらに酸素と窒素を含む混合ガス雰囲気において1100℃〜1300℃で焼成して作製する。
【0030】
次に緑色蛍光体材料について説明する。本発明の一実施の形態によるPDPにおいては、緑色蛍光体材料として、表面に物質がコートされていないZn2SiO4:Mn(以下、無コートZn2SiO4:Mnと記す)の表面に酸化マグネシウムをコートしたものを用いる。この酸化マグネシウムは、Zn2SiO4:Mnの表面近傍10nm以内において、Al元素とZn2SiO4:Mnの蛍光体材料を構成するSi元素との比(以降、Al/Si比と記す)が0.1以上になるように制御してコートする。
【0031】
ここでAl/Si比は、XPS装置で測定することができる。XPSとは、X−ray Photoelectron Spectroscopyの略で、X線光電子分光分析と呼ばれ、物質の表面近傍10nmまでの元素の様子を調べる方法である。Al/Si比はXPS装置によりAlとSiの分析を行い、それらの比をとった値である。
【0032】
以下、本発明の一実施の形態によるPDPにおける緑色蛍光体材料の製造方法について詳しく説明する。無コートZn2SiO4:Mnは、従来の固相反応法や液相法や液体噴霧法を用いて作製する。固相反応法は酸化物や炭酸化物原料とフラックスを焼成して作製する方法である。液相法は、有機金属塩や硝酸塩を水溶液中で加水分解し、必要に応じてアルカリなどを加えて沈殿させて生成した蛍光体材料の前駆体を熱処理して作製する方法である。また液体噴霧法は、蛍光体材料の原料が入った水溶液を加熱された炉中に噴霧して作製する方法である。
【0033】
本実施の形態で使用する無コートZn2SiO4:Mnは、特に作製方法に影響を受けるものではないが、ここでは一例として固相反応法による製法について述べる。原料としては酸化亜鉛、酸化珪素、二酸化マンガン(MnO2)を用いる。
【0034】
蛍光体材料の母材の組成Zn2SiO4を構成する原料である酸化亜鉛と酸化珪素とを混合する。混合は、化学量論比よりも酸化珪素が過剰となるようにして行い、過剰量は0.1モル%以上かつ5モル%以下となるようにする。次に発光中心となる二酸化マンガンをZn2SiO4:Mnに対して5モル%〜20モル%添加して混合する。なお、酸化亜鉛の混合量は、酸化亜鉛と二酸化マンガンの合計が、Zn2SiO4:Mnに対して200モル%となるように適宜調整する。
【0035】
次にこの混合物を600℃〜900℃で2時間焼成する。焼成した混合物を軽く粉砕、篩い分けを行い、窒素中、あるいは窒素と水素の混合雰囲気中で1000℃〜1350℃で焼成を行い、無コートZn2SiO4:Mnを作製する。
【0036】
なお、酸化珪素を化学量論比より過剰に配合する理由は、酸化珪素の比率を増やすことで表面の負帯電性がより大きくなり、以下に述べるアルミニウム陽イオンによる密着性が上がり、それに伴ってアルミニウムコートが強固になるためである。ただし、5モル%を超えると、Zn2SiO4:Mnの輝度が低くなり、0.1モル%未満では、効果を発揮しない。したがって酸化珪素の過剰混合量は0.1モル%以上かつ5モル%以下が好ましい。
【0037】
次に無コートZn2SiO4:Mnの表面上に酸化アルミニウムをコートする方法を説明する。
【0038】
硝酸アルミニウムを0.2重量%の濃度で水またはアルカリ水溶液中に溶解する。その溶解液中に無コートZn2SiO4:Mnを投入して混合液を作製し、加熱しながら攪拌する。加熱温度は、30℃未満では金属塩が溶液中に析出してしまう。また60℃を超える温度ではZn2SiO4:Mnが酸やアルカリによって溶解してしまう。このため、30℃以上かつ60℃以下の温度範囲で加熱を行う。この攪拌によって、溶解液中のアルミニウム陽イオンが負帯電性の無コートZn2SiO4:Mnに密着してコートが行われる。
【0039】
この混合液を濾過、乾燥する。その後、この乾燥物を空気中において400℃〜800℃で焼成することで酸化アルミニウムが表面にコートされたZn2SiO4:Mn(以降、AlコートZn2SiO4:Mnと記述する)を作製する。このAlコートZn2SiO4:MnのAl/Si比は0.5である。
【0040】
次にもう一方の緑色蛍光であるBaMgAl1017:Mnは以下の方法で作製する。炭酸バリウム(BaCO3)と炭酸マグネシウム(MgCO3)と酸化アルミニウムと二酸化マンガン(MnO2)とを蛍光体組成に合うように混合する。混合物を空気中において800℃〜1200℃で焼成し、さらに水素と窒素を含む混合ガス雰囲気において1200℃〜1400℃で焼成して作製する。
【0041】
このようにして作製した酸化アルミニウムコートZn2SiO4:Mnを重量比率80%とBaMgAl1017:Mnを重量比率20%で混合し、緑色蛍光体を作製する。
【0042】
<3.実機評価試験>
(輝度評価)
緑色蛍光体を積層して緑色蛍光体層110Gを形成し、PDP100を作製する。このPDP100に駆動装置150を接続し、PDP装置を作製する。このPDP装置において緑色の蛍光体層のみを発光させ、輝度を測定する。
【0043】
各輝度は、従来品である比較品1の輝度を100とした時の相対値で表し、この相対的な輝度が95以上であれば、実用上問題なく使用できるものと判定した。
【0044】
(色再現範囲評価)
色再現範囲は、上記、PDP装置において、赤色、緑色、青色それぞれを単色で発光させた際の色度をxy色度座標上に描画した際に形成される三角形の面積である。
【0045】
各色再現範囲は、従来品である比較品1の色再現範囲を100とした時の相対値で表し、この相対的な色再現範囲が101以上である場合に色再現範囲の拡大効果があるものと判定した。
【0046】
(アドレス放電評価)
上記、PDP装置において、500回のアドレス放電を試行した際に、アドレス放電の失敗が生じ、維持放電が生じない回数を測定する。
【0047】
このアドレス放電失敗回数が、5回以下の場合にPDPにおけるアドレス放電特性に改善効果があると判定した。
【0048】
(各試験対象品の仕様および性能評価結果)
表1に実施例品1〜8および比較品1〜3の蛍光体の組成および性能評価結果を示す。
【0049】
以下に示す各試験対象品、即ち、比較品および実施例品は、AlコートZn2SiO4:MnのAl/Si比とBaMgAl1017:Mnの混合比率を異ならせたものである。
【0050】
【表1】

【0051】
実施例品1は、本実施の形態で述べた緑色蛍光体と同様の構成であり、比較品1は、従来の蛍光体(従来品)と同様の構成である。
【0052】
表1に示すように、実施例品1〜8は、いずれもAlコートZn2SiO4:Mnの表面Al/Si比が0.1以上であり、かつ、BaMgAl1017:Mnが混合されている。これら実施例品1〜8は、アドレス放電失敗回数が5回以下であり、実用上、画質を損なうことがない。
【0053】
これに対して、比較品1では、Zn2SiO4:Mnに対してAlコートが施されておらず、かつ、BaMgAl1017:Mnも混合されていない。また、比較品2は、Zn2SiO4:Mnに対して、表面Al/Siが0.5となるAlコートが施されているが、BaMgAl1017:Mnも混合されていない。また、比較品3は、BaMgAl1017:Mnが50wt%混合されているが、Zn2SiO4:Mnに対してAlコートが施されていない。
【0054】
これら比較品1〜3は、アドレス放電失敗回数が5回より多く、実用上、画質を損なう問題がある。
【0055】
また、実施例品の中でもBaMgAl1017:Mnの混合比率が5〜50wt%であり、かつAlコートZn2SiO4:Mnの表面Al/Si比が0.1以上3.0以下である実施例品1〜5は、比較品1に対する相対輝度が95%以上であり、かつ、色再現範囲に関しても比較品1に比較し101%以上である。
【0056】
したがって、BaMgAl1017:Mnの混合比率が5〜50wt%であり、かつAlコートZn2SiO4:Mnの表面Al/Si比が0.1以上3.0以下とすることによって、アドレス放電特性を向上することができると同時に、輝度の低下を実用上問題ない程度に抑制しつつ、色再現範囲を拡大することが可能となる。
【0057】
上述のように本発明のPDPによれば、少なくとも前面側が透明な一対の基板を基板間に放電空間が形成されるように対向配置するとともに前記放電空間を複数に仕切るための隔壁を少なくとも一方の基板に配置し、かつ前記隔壁により仕切られた放電空間で放電が発生するように基板に電極群を配置するとともに放電により発光する蛍光体層を設けたパネル本体を有するプラズマディスプレイ装置であって、前記蛍光体層は、Zn2SiO4:MnとBaMgAl1017:Mnとの混合物よりなる緑色蛍光体層を備え、前記Zn2SiO4:Mnの表面に酸化マグネシウムがコートされるとともに表面10nm以内においてSi元素に対するAl元素の比が0.1以上となる構成であり、緑色蛍光体の発光効率の低下を伴わず、安定した放電特性と広い色再現範囲を有するPDPを実現することができる。
【0058】
さらに、前記BaMgAl1017:Mnの混合比率が、5〜50wt%であり、かつ前記Zn2SiO4:Mnの表面10nm以内においてSi元素に対するAl元素の比を0.1以上3.0以下にすることで、高い発光効率と安定した放電特性を有するPDPを実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
以上のように本発明は、大画面、高精細のプラズマディスプレイ装置を提供する上で有用な発明である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の一実施の形態によるPDPにおける電極の概略構成を示す平面図
【図2】本発明の一実施の形態によるPDPにおける画像表示領域の概略構成を示す部分断面斜視図
【図3】本発明の一実施の形態によるPDPを用いたPDP装置の概略構成を模式的に示すブロック図
【符号の説明】
【0061】
100 PDP
101 前面ガラス基板
102 背面ガラス基板
103 維持電極
104 走査電極
105 誘電体ガラス層
106 MgO保護層
107 アドレス電極
108 下地誘電体ガラス層
109 隔壁
110R 蛍光体層(赤色蛍光体層)
110G 蛍光体層(緑色蛍光体層)
110B 蛍光体層(青色蛍光体層)
121 気密シール層
122 放電空間
130 前面パネル
140 背面パネル
150 駆動装置
152 コントローラ
153 表示ドライバ回路
154 表示スキャンドライバ回路
155 アドレスドライバ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも前面側が透明な一対の基板を、基板間に放電空間が形成されるように対向配置するとともに、前記放電空間を複数に仕切るための隔壁を少なくとも一方の基板に配置し、かつ前記隔壁により仕切られた放電空間で放電が発生するように基板に電極群を配置するとともに、放電により発光する蛍光体層を設けたプラズマディスプレイパネルであって、前記蛍光体層は、Zn2SiO4:MnとBaMgAl1017:Mnとの混合物よりなる緑色蛍光体層を備え、前記Zn2SiO4:Mnの表面に酸化アルミニウムがコートされるとともに、表面10nm以内においてSi元素に対するAl元素の比が0.1以上であることを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項2】
前記混合物のBaMgAl1017:Mnの混合比率が、5〜50wt%であり、かつ前記Zn2SiO4:Mnの表面10nm以内においてSi元素に対するAl元素の比が3.0以下であることを特徴とする請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−80283(P2010−80283A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−247834(P2008−247834)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】