説明

プラズマディスプレイ装置およびその製造方法

【課題】高画質化が進むPDP装置において、放電を効率化する。
【解決手段】対向配置される前面板および背面板の間に形成され、内部に放電ガスが充填された放電空間を有し、背面板は、放電空間に接して配置された蛍光膜を有するプラズマディスプレイ装置の蛍光膜を以下の構成とする。蛍光膜8は、紫外線に励起されることにより可視光を発光する蛍光体粒子22aからなる蛍光体層22、および非駆動時の電子放出量が蛍光体粒子22aよりも多い電子放出材粒子21aからなる電子放出材層21を有し、電子放出材層21は、蛍光体層22に被覆されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置およびその製造技術に関し、特に、真空紫外領域の紫外線により励起され発光する蛍光体を用いて画像を表示するプラズマディスプレイ装置に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、テレビ受像機やパーソナルコンピュータのモニタに代表される表示装置として、設置スペースを大きく取る必要がない薄型ディスプレイが様々な用途で利用されている。そして、薄型化対応の可能な表示装置としてプラズマディスプレイ装置(以下、PDP(Plasma Display Panel)装置と記す)や電界放射型ディスプレイ(FED;Field Emission Display)装置、バックライトと薄い液晶パネルとを組み合わせて表示装置を構成した液晶表示(LCD;Liquid Crystal Display)装置などの開発が盛んに行われている。現在、更なる表示特性の向上を目指し、その高性能化、特に、高輝度化、高コントラスト化が進んでいる。
【0003】
その中でPDP装置は、発光装置としてプラズマディスプレイパネル(以下、PDPと記す)を備えた表示装置である。PDPは、希ガスを含む微小放電空間での負グロー領域で発生する紫外線(希ガスとしてキセノンを使用した場合は、146nmおよび172nmの波長域にある)を励起源としてその微小放電空間内に配設した蛍光体層中の蛍光体を励起し、その蛍光体の発光を促すことにより可視領域での発光を得る。PDP装置では、この発光の量と色とを制御して表示に使用する。
【0004】
PDP装置では、個別の微小放電空間を有するセル(以下、放電セルと記す)の画像表示における発光と非発光を、放電セルの壁電荷の蓄積により調節している。この壁電荷は、アドレス放電と呼ばれる放電を、発光前に生じさせることで壁電荷を形成するセルを選択する。従って、アドレス放電を正確に生じさせることは、画像表示において非常に重要となる。
【0005】
また、PDP装置の消費電力は、発光を行う際の放電電圧により増減する。また、放電電圧は、駆動回路のコストにも関わる。このため、放電電圧は、PDP装置の性能において非常に重要な要素である。
【0006】
PDP装置において、放電空間内に特定の材料を設置することにより、上記のような放電特性や光学特性に影響を与えることができる。この種の材料および技術に関する文献としては、特開2002−110046号公報(特許文献1)、特開2002−110051号公報(特許文献2)、特開2005−294255号公報(特許文献3)、特開2008−066176号公報(特許文献4)、特開2008−071515号公報(特許文献5)が挙げられる。
【0007】
また、発光の前面への反射率を向上させることにより、効率および輝度を向上させる手段が検討されている。この種の技術に関する文献としては、特開平11−204044号公報(特許文献6)、特開2002−352728号公報(特許文献7)、特開2000−11885号公報(特許文献8)が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−110046号公報
【特許文献2】特開2002−110051号公報
【特許文献3】特開2005−294255号公報
【特許文献4】特開2008−066176号公報
【特許文献5】特開2008−071515号公報
【特許文献6】特開平11−204044号公報
【特許文献7】特開2002−352728号公報
【特許文献8】特開2000−11885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年、PDP装置はその高い性能が認められ、ブラウン管を使用するタイプのモニタやテレビ受像機(TV)を代替し、大型のフラットパネルディスプレイおよび薄型TVとしての用途が急速に拡大している。その結果、その結果、画質に対する要求がますます高レベルになっており、画面のちらつき低減などの高画質化や、輝度に対する要求に対応すると共に、低消費電力化、低コスト化も図らなければならない。更なる性能の向上が求められるようになっている。
【0010】
具体的には、デジタル放送等によるハイビジョンを表示するために、高解像度化が必要となる。ハイビジョンへの対応のために要求される表示画素ラインは、700本以上であり、従来放送対応の500本程度に対し、大幅な高解像度化が必要である。しかしながら、表示画素ラインが、700本程度以上に増えると、放電するセル数も増え、駆動する回路への負担および消費電力が増加してしまう。
【0011】
また、高解像度化のためには、各表示画素が小さくなるため、高輝度化も必要であり、そして高輝度化を達成するための高発光効率も求められている。その一つの方法として、Ne(ネオン)を主成分とする放電ガス中のXe(キセノン)ガスの組成比を増加させ、発生するXe分子線を積極的に利用する検討が盛んになされている。いわゆるPDPにおける「高キセノン濃度化」の技術トレンドであるが、通常、放電ガス中のキセノンガス組成比(5%程度)より多い組成比領域で、こうしたPDPの発光の高効率化を達成する検討がなされている。特に、近年は、キセノンガス組成比を少なくとも8%以上とし、発光に関して高効率化させ、輝度を維持、向上させる方向である。
【0012】
しかしながら、高キセノン濃度化は、放電電圧の増加をもたらす。これは、駆動回路などへの負担が大きくなり、装置として高コスト化となる。また、駆動電圧のマージン低下ももたらし、駆動が困難となる。低消費電力化、低コスト化のためには、上記放電電圧の低減が重要な課題となる。
【0013】
また、高画質化の観点からは、これら高輝度PDP装置における高コントラスト化も重要な課題となる。コントラスト低下の主な要因として、リセット放電時の発光が挙げられる。PDP装置では、電荷調整のため、全表示セルにおいて、少なくとも何画面かに一回はリセット放電が必要である。このリセット放電時の発光により、黒表示をした場合の輝度が高くなり、コントラスト低減をもたらす。リセット放電時の発光を低減することにより、コントラストを向上させることができる。
【0014】
これらの電圧低減、及びリセット放電時の発光低減のための手段として、MgO単結晶などの電子放出材料を蛍光体に混合する方法がある。しかし、蛍光体に他の物質を混合することで、発光輝度が低下し高効率化できないという課題がある。
【0015】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、高画質化が進むPDP装置において、放電を効率化することができる技術を提供することにある。
【0016】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0018】
すなわち、本発明の一つの実施の形態におけるプラズマディスプレイパネルは、対向配置される前面板および背面板の間に形成され、内部に放電ガスが充填された放電空間を有している。また、前記背面板は、前記放電空間に接して配置された蛍光膜を有している。前記蛍光膜は、紫外線に励起されることにより可視光を発光する蛍光体粒子からなる蛍光体層、および非駆動時の電子放出量が前記蛍光体粒子よりも多い電子放出材粒子からなる電子放出材層を有し、前記電子放出材層は、前記蛍光体層に被覆されているものである。
【発明の効果】
【0019】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0020】
すなわち、PDP装置の放電を効率化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施の形態であるPDPの要部を拡大して示す要部拡大分解斜視図である。
【図2】図1に示すx−z平面に沿った拡大断面図である。
【図3】図1に示す表示電極対の中間位置におけるy−z平面に沿った拡大断面図である。
【図4】図1に示す走査電極と重なる位置におけるy−z平面に沿った拡大断面図である。
【図5】図1に示すPDPを組み込んだPDPモジュールの一例の全体構成を概略的に示すブロック図である。
【図6】図5に示すPDPモジュールにおける階調駆動シークエンスの一例を示す説明図である。
【図7】図5に示すPDPモジュールの駆動波形の一例を示す説明図である。
【図8】図1〜図4に示す蛍光膜の詳細構造を模式的に示す要部拡大断面図である。
【図9】真空紫外線照射輝度と蛍光体層の層数の関係を示す説明図である。
【図10】電子線の透過率と蛍光体層の層数の関係を示す説明図である。
【図11】CaAlで表される電子放出材粒子の粉体を粉体用X線回折装置で測定した結果を示す説明図である。
【図12】図8に示す放出材粒子として2a族金属または2b族金属のアルミン酸塩を用いた場合の放電電圧低減効果を調査した結果を示す説明図である。
【図13】図8に示す放出材粒子としてMgOを用いた場合の放電電圧低減効果を調査した結果を示す説明図である。
【図14】本発明の他の実施形態である蛍光膜の詳細構造を模式的に示す要部拡大断面図である。
【図15】図14に示す蛍光膜を構成する電子放出材層および蛍光体層の膜厚を変化させたときの輝度の変化を示す説明図である。
【図16】本発明の他の実施形態である蛍光膜の詳細構造を模式的に示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本願発明を詳細に説明する前に、本願における用語の意味を説明すると次の通りである。
【0023】
PDPとは、対向配置される一対の基板の間に形成された放電セル内で気体放電を発生させ、この際に発生する励起光で蛍光体を励起させて、所望の画像を形成する略平面板状の表示パネルである。PDPの内部構造や構成材料は、要求性能あるいは駆動方式に応じて種々の構成例があるが、原理的に明らかに適用できない構成を除き、これら全ての構成例を含む。
【0024】
プラズマディスプレイモジュール(PDPモジュール)は、PDPと、PDPの表示面の反対側に配置されてPDPを支持するシャーシと、シャーシの背面(PDPとの対向面の反対側に位置する面)側に配置され、PDPを駆動、制御する、あるいはPDPに電源を供給するための各種電気回路が形成された回路基板とを備えたモジュールであって、各種電気回路とPDPとが電気的に接続されたものである。なお、PDPモジュールの実施態様としては、上記した各種電気回路が形成された回路基板の一部または全部が取り付けられず、該回路基板の取り付け予定位置に取り付け用治具が形成された構造もある。本願では、このような実施態様もPDPモジュールに含まれる。
【0025】
プラズマディスプレイセット(PDPセット)は、PDPモジュールを外部筐体でカバーした表示装置である。また、PDPモジュールを例えばスタンドなどの支持構造物に固定した表示装置もこれに含まれる。また、PDPセットをテレビ受像機として用いる場合には、PDPモジュールとチューナとが電気的に接続されるが、このチューナを含むものもPDPセットに含まれる。
【0026】
プラズマディスプレイ装置(PDP装置)には、上記したPDP、PDPモジュールおよびPDPセットが含まれる。
【0027】
本願において、実施の態様の記載は、必要に応じて、便宜上複数のセクション等に分けて記載するが、特にそうでない旨明示した場合を除き、これらは相互に独立別個のものではなく、記載の前後を問わず、単一の例の各部分、一方が他方の一部詳細または一部または全部の変形例等である。また、原則として、同様の部分は繰り返しの説明を省略する。また、実施の態様における各構成要素は、特にそうでない旨明示した場合、理論的にその数に限定される場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、必須のものではない。
【0028】
同様に実施の態様等の記載において、材料、組成等について、「AからなるX」等といっても、特にそうでない旨明示した場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、A以外の要素を構成要素のひとつとするものを排除するものではない。例えば、成分についていえば、「Aを主要な成分として含むX」等の意味である。
【0029】
以下の実施の形態では、本実施の形態を説明するための全図において同一機能を有するものは同一の符号を付すようにし、その繰り返しの説明は原則として省略する。また、本実施の形態1を説明するための全図においては、各部材の構成をわかりやすくするために、平面図あるいは斜視図であってもハッチングや模様を付す場合がある。以下、本発明の実施の形態1を図面に基づいて詳細に説明する。
【0030】
(実施の形態1)
<PDPの基本構造および製造方法>
まず、本発明者らが検討したPDPの一例としてAC面放電型PDPの基本構造などについて説明する。なお、本実施の形態1においてPDPを構成する一対の基板である「前面板」および「背面板」は、両者を組み立ててパネル化した際に、蛍光体による発光が通過して表示面となる側を前面板、表示面の反対側に位置する側を背面板として説明する。また、「前面板」および「背面板」は、それぞれガラス基板からなる前面基板および背面基板を基材とし、基材に後述する各部材を形成した基板構造体として説明する。
【0031】
図1は本発明者らが検討したいわゆるボックス型のAC面放電型のPDPの要部を模式的に示す要部拡大分解斜視図、図2は図1に示すx−z平面に沿った拡大断面図である。また、図3および図4は、図1に示すy−z平面に沿った拡大断面図であって、それぞれ、表示電極対の中間位置の断面、および走査電極と重なる位置の断面を示している。
【0032】
まず、前面板12およびその形成方法について説明する。PDP15における表示面側の基板構造体である前面板12は、基材となる前面基板1を有している。前面基板1は、PDP15の内部で発光した光を外部に取り出すため、蛍光膜8からの可視光を透過する材料、例えば高歪点ガラスから構成されている。前面板12の基材となる前面基板1の内面側には、例えば行方向に沿って延在する透明電極4a、5aと、透明電極4a、5a上に接合されるバス電極4b、5bとで構成される複数の表示電極対6が配設される。表示電極対6は維持電極(X電極)4と走査電極(Y電極)5の対からなり、維持電極4−走査電極5間で、維持放電(表示放電)を行う。表示電極対6はPDP15における行方向(図1に示すy方向)の表示ラインを構成する。したがって、図1では、2対の表示電極対6を示しているが、表示ライン数に応じた本数の表示電極対6が形成されている。
【0033】
透明電極4a、5aは可視光に対して透過性を有する透明導電体であり、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)からなる膜で形成され、その上に、例えば、銀の単層膜からなるバス電極4b、5bが付設されている。このバス電極4b、5bは、PDP15を駆動する際の電気抵抗を低減する観点から、銀など、透明電極4a、5aよりも電気伝導率の高い金属材料で構成される。
【0034】
一方、透明電極4a、5aは、表示電極対6の電極間距離を近づけて維持放電を形成し易くする観点から、バス電極4b、5bよりも広い幅で形成されている。このため、透明電極4a、5aを可視光に対して透明な材料で構成することにより、放電セルCL内で発生した光を効率的に前面基板1側に取り出す構造となっている。なお、表示電極対6の形状や材質には種々の変形例を適用することができる。例えば、透明電極4a、5aとして酸化スズや酸化亜鉛等、バス電極4b、5bとして黒色銀と銀の積層膜、アルミニウムの単層膜、またはクロム/銅/クロムの積層膜で形成することができる。
【0035】
前面基板1上に表示電極対6を形成する工程は例えば以下のように行う。すなわち、スクリーン印刷のような厚膜形成技術、あるいは、蒸着法やスパッタ法などの薄膜形成技術とエッチング技術とを用いることにより、所定の本数、厚さ、幅および間隔で形成することができる。
【0036】
また、複数の表示電極対6(維持電極4、走査電極5)は、主にSiOなどの誘電体ガラス材料で構成される誘電体層2で被覆されている。誘電体層2は、後述するアドレス過程において発生した壁電荷を、その表面で蓄積する機能を有している。表示電極対6を被覆するように誘電体層2を形成する工程は例えば以下のように行う。すなわち、誘電体層2は、例えば低融点ガラス粉末を主成分とするフリットペーストを、前面基板1上にスクリーン印刷法で塗布し、焼成することにより形成している。他に、いわゆるグリーンシートと呼ばれるシート状の誘電体シートを貼り付けて焼成する方法で形成することもできる。あるいは、プラズマCVD法でSiO膜を成膜することにより形成してもよい。
【0037】
誘電体層2の内面側には、表示の際の放電(主に維持放電)により生じるイオンの衝突による衝撃から誘電体層2を保護する、保護膜3が形成されている。このため保護膜3は誘電体層2の表面を被覆するように形成されている。また、保護膜3にはスパッタ耐性の他、2次電子放出係数が高い材料で構成することが好ましく、例えば、MgOなどのアルカリ土類金属酸化物からなる。また、2次電子放出係数や、放電のトリガとなる荷電粒子(プライミング電子)を供給する機能を向上させるため、保護膜3の表面に、例えばMgOの単結晶粒子を付着させる技術を用いることもできる。保護膜3は、例えば、電子ビーム蒸着法などの成膜法により、成膜することができる。なお、保護膜3を構成するMgOなどのアルカリ土類金属酸化物は、雰囲気中の水分や炭酸ガスなどの不純物を吸着し易い特性を有しているので、保護膜3を形成する工程は、減圧雰囲気中で行うことが好ましい。
【0038】
次に、背面板13およびその形成方法について説明する。背面板13は、背面基板11を有している。背面板13は、表示面と反対側に位置する基板構造体であるため、可視光を透過する材料には限定されないが、本実施の形態1では、例えば、前面基板1と同様に高歪点ガラスからなるガラス基板を用いている。
【0039】
背面基板11の内面(前面板12と対向する面)側には、表示電極対6と交差(本実施の形態1では直交)する方向(列方向)に沿って延在する複数のアドレス電極(A電極)10が配設される。このアドレス電極10と、前面板12に形成された走査電極5は、放電セルCLの点灯/非点灯を選択するための放電であるアドレス放電を行うための電極対を構成する。つまり、走査電極5は維持放電用の電極としての機能とアドレス放電用の電極(走査電極)としての機能とを併せ持っている。このようにアドレス電極10と、表示電極対6を交差させることにより、放電セルCL毎に点灯/非点灯を選択することができる。つまり、PDP15は、表示電極対6とアドレス電極10の交差毎に放電セルCLを有している。
【0040】
アドレス電極10は、例えば銀、アルミニウムの単層膜、あるいは、クロム/銅/クロムの積層膜で形成される。背面基板11上にアドレス電極10を形成する工程は、前記したバス電極4b、5bを形成する方法と同様であるため、説明は省略する。
【0041】
アドレス電極10は、誘電体層9で被覆されている。誘電体層9は前面基板1上の誘電体層2と同じ材料、同じ方法を用いて形成することができる。誘電体層9上には背面板13の内面側を複数の放電セルCLに区画する複数の隔壁7が形成されている。この複数の隔壁7は、前面基板1と背面基板11の間に配置され、各放電セルCLにおける放電距離を維持する機能を有している。また、隣り合って配置される放電セルCL間におけるクロストークを防止ないしは抑制する機能を有している。本実施の形態1では、隔壁7は、図1に示すX方向(アドレス電極10の延在方向)に沿って延在する隔壁7aと、Y方向(表示電極対6の延在方向)に沿って延在する隔壁7bとを有している。複数の隔壁7a、7bはそれぞれ交差し、背面板13の内面側に形成される放電空間14をマトリクス状(格子状)に区画している。このように各放電セルCLをマトリクス状に区画するように複数の隔壁7を形成した構造は、ボックスリブ構造と呼ばれ、X方向に沿って隣り合う放電セルCLの間に隔壁7bが形成することにより、当該放電セルCL間でのクロストークを効果的に防止ないしは抑制することができるので、PDPの高精細化に好適な構造である。
【0042】
なお、隔壁7の形成方法は、図1に示す構造に限定されず、例えば、図1に示すX方向(アドレス電極10の延在方向)に沿って延在する複数の隔壁7aをストライプ状に形成し、隔壁7bは形成しない構造(ストライプリブ構造と呼ばれる)とすることもできる。このストライプリブ構造の場合、背面板13に形成される隔壁7の数が少ないので、放電空間14内のガスを給排気する際の抵抗を低減することができる。
【0043】
隔壁7を形成する工程は、サンドブラスト法、フォトエッチング法などにより形成することができる。例えば、サンドブラスト法では、低融点ガラスフリット、バインダ樹脂、溶媒などからなるフリットペーストを誘電体層9上に塗布して乾燥させた後、そのフリットペースト層上に隔壁パターンの開口を有するブラストマスクを設けた状態で切削粒子を吹き付けて、マスクの開口部に露出したフリットペースト層を切削し、さらに焼成することにより形成する。また、フォトエッチング法では、切削粒子で切削することに代えて、バインダ樹脂に感光性の樹脂を使用し、マスクを用いた露光および現像の後、焼成することにより形成する。
【0044】
アドレス電極10上の誘電体層9の上面、および隔壁7の側面には、真空紫外線により励起されて可視光を発光する蛍光膜8が形成されている。本実施の形態1のPDP10は、カラー表示を行うPDPなので、蛍光膜8は、真空紫外線により励起されて赤(R)、緑(G)、青(B)の各色の可視光を発生する蛍光膜8r、8g、8bがそれぞれ所定の放電セルCLに形成されている。カラー表示PDPにおいては、蛍光膜8r、8g、8bが形成された放電セルCLのセットにより画素(ピクセル)が構成される。蛍光膜8の詳細な構造および形成方法は、後述する。
【0045】
PDP15は、上記した前面板12の表示電極対6を形成した面と、背面板13の隔壁7を形成した面を、放電空間14を介して対向配置して組み立てることにより得られる。つまり、PDP15は、放電ガスを封入して形成された放電空間14を介して対向する一対の基板構造体である前面板12と背面板13とを有している。放電空間14は、一対の基板構造体(前面板12と背面板13)が重ね合わされた後の誘電体層9と保護膜3で囲まれた空間であり、その空間が隔壁7によって複数に区画されている。この組み立て工程には、前面板12と背面板13の位置合わせ工程、各板(前面板12および背面板13)の外周に配置される非表示領域を例えばシールフリットと呼ばれる低融点ガラス材料からなる封着剤を用いて封着する封着工程、PDP15の内部空間(放電空間14など)に残るガスを排気して、放電ガスを導入する工程が含まれる。
【0046】
放電空間14に導入する放電ガスとしては、希ガスを含む混合ガス、例えばHe−Xe、Ne−Xe、He−Ne−Xe等の混合ガスで構成することができる。本実施の形態1では、放電ガスとしてネオン(Ne)−キセノン(Xe)をガス基体とした混合ガスを例えばXeの分圧比が数%〜数十%に調整して封入している。
【0047】
PDP15では、蛍光膜8を発光させるための励起源として、主に147nmおよび172nmの波長を有する真空紫外線を用いている。147nmおよび172nmの真空紫外線は、放電によりイオン化されたXeイオンが基底状態に遷移する際に発生する。したがって、放電ガス中のXeの分圧を高くすることにより、蛍光膜8を発生する励起源を多く発生させることができるので、PDP15の発光効率を向上させることができる。
【0048】
<PDPモジュールの構成例>
次に、本実施の形態1のPDP15を組み込んだプラズマディスプレイモジュール(以下PDPモジュールと記載する)の全体構成と階調駆動方法の一例として、ADS(Address Display-Period Separation)方式を適用した場合について説明する。
【0049】
図5は図1に示すPDPを組み込んだPDPモジュールの一例の全体構成を概略的に示すブロック図である。また、図6は、図5に示すPDPモジュールにおける階調駆動シークエンスの一例を示す説明図である。また、図7は図5に示すPDPモジュールの駆動波形の一例を示す説明図である。
【0050】
図5に示すPDPモジュール20は、PDP15が有する電極(図1に示す維持電極4、走査電極5、アドレス電極10)間に電圧を印加する、アドレス駆動回路ADRV、YスキャンドライバYSCDRV、Y駆動回路YSUSDRV、X駆動回路XSUSDRVを有している。各電極はこれらの回路と電気的に接続されている。また、PDPモジュール20は、各駆動回路(ドライバ)を制御するための制御回路CNT、および各回路およびPDP15に電源を供給する電源回路(図示は省略)等を有している。
【0051】
PDP15は、サステイン放電(維持放電、表示放電)を行う維持電極(X1,X2,X3,・・・Xn)4と走査電極(Y1,Y2,Y3,・・・Yn)5とが交互に配置されて表示ラインを構成し、維持電極4および走査電極5の対で構成される表示電極対と該表示電極対(表示ライン)と略直交するアドレス電極(A1,A2,A3,・・・An)10との交差毎に、マトリクス状にセルが配置されている。
【0052】
YスキャンドライバYSCDRVおよびアドレス駆動回路ADRVは、アドレス過程TA(図7参照)において、走査電極5を制御して、順次、走査電極(表示ライン)5を選択し、アドレス駆動回路ADRVに電気的に接続されたアドレス電極10と各走査電極5との間で、各サブフィールドSF1〜SFn(図6参照)に対するセルの点灯/非点灯を選択するアドレス放電を生じさせる。また、初期化過程TR(図7参照)において、アドレス電極10と走査電極5の間でリセット放電を発生させて、全てのセルに蓄積された壁電荷の量を略一様にする。
【0053】
また、Y駆動回路YSUSDRVおよびX駆動回路XSUSDRVは、表示過程TS(図7参照)において、アドレス放電により選択されたセルに対して各サブフィールドの重みに応じた数の維持放電(サステイン放電)を生じさせる。
【0054】
また、制御回路CNTは、例えば、TVチューナやコンピュータ等の外部装置から入力される画像データなどの映像源となる信号からそれぞれの駆動回路(ドライバ)に適した制御信号を出力して所定の画像表示を行う役割を果たしている。
【0055】
また、図6に示されるように、PDP装置における階調駆動シークエンスは、1フィールドF1(例えば、16.67ms)をそれぞれ所定の輝度比を有する複数のサブフィールドSF1〜SFnで構成し、各サブフィールドSF1〜SFnの組み合わせにより所望の階調表示を行うようになっている。
【0056】
また、各サブフィールドSF1〜SFnは、それぞれ表示領域における全てのセルの壁電荷を均一にする初期化過程(リセット期間)TR、点灯セルを選択するアドレス過程(アドレス期間)TA、および、選択されたセルを輝度(各サブフィールドの重み)に応じた回数だけ放電(点灯)させる表示過程(維持放電期間)TSで構成され、各サブフィールドの表示毎に輝度に応じてセルを点灯させ、複数のサブフィールドを表示することで1フィールドの表示を行うようになっている。例えば、10個のサブフィールドを設ければ、赤(R)、緑(G)、青(B)の放電セルはそれぞれ210(=1024)階調の輝度表示が得られ、約10億7374万色の色表示が可能となる。
【0057】
次に、図7に駆動波形の一例を示す。図7では図6に示す各サブフィールドSF1〜SFnにおける図1に示す各電極(維持電極4、走査電極5、アドレス電極10)に印加する駆動波形例(PX,PY,PA)を示している。
【0058】
まず、第1のステップとして、初期化過程TRでは、走査電極5(図4参照)とアドレス電極10(図4参照)との間でリセット放電を発生させることにより、全てのセルに蓄積される電荷(壁電荷)を略一様に揃えて全セルの初期化(次のアドレス過程に備える状態にすること)を行う。
【0059】
この初期化過程TRでは、例えば、それぞれPDP15の表示電極対6(図1参照)を構成する走査電極5に正の電位PY1を、アドレス電極10に負の電位PA1を印加する。これにより、アドレス電極10が負極、走査電極5が正極となって両電極間でリセット放電が発生し、全てのセルに壁電荷が形成される。続いてセル内に形成された壁電荷を必要量残して消去する補償電位PY2、PA2を印加する。これにより、全セルに形成された壁電荷の量が略一様になる。なお、この初期化過程TRでは、維持電極PYには、誤放電を防止するためのX電圧PX1が印加される。
【0060】
次に、第2のステップとして、アドレス過程TAでは、点灯させることを選択するセルに対し、アドレス電極10(図1参照)と走査電極5との間でアドレス放電を発生させることにより、セルの点灯/非点灯を選択する。
【0061】
このアドレス過程TAでは、例えば、行方向の表示するセルを決めるため、走査電極5に走査パルスPY3が印加される。この走査パルスPY3は行毎にタイミングをずらして印加される。一方、アドレス電極10には、列方向の表示するセルを決める放電を行うため、アドレスパルスPA3、PA4が印加される。このアドレスパルスPA3、PA4は、行毎に印加される走査パルスPY3にタイミングを合わせて印加され、走査電極5とアドレス電極10との交点に形成されるセルに放電を発生させるタイミングで印加される。これにより、走査パルスPY3と、アドレスパルスPA3、PA4が同じタイミングで印加されたセルでは、次の表示過程TSで維持放電を発生させるために必要な量の壁電荷が選択的に形成される。なお、アドレス過程TRでは、維持電極PYには、誤放電を防止するためのX電圧PX1が、例えば初期化過程TRから引き続いて印加される。
【0062】
次に、第3のステップとして、表示過程TSでは、点灯させることを選択したセルの維持電極4、走査電極5の間で維持放電(表示放電)をさせ、当該セルを所定期間の間発光させる。
【0063】
この表示過程TSでは、例えば、異なる電気的極性を有する第1の維持パルスPX2、PY4をそれぞれ維持電極4と走査電極5に印加する。これにより、表示電極対6間の放電状態が維持される。続いて、維持電極4および走査電極5に、互いに電気的極性の異なる繰り返し維持パルスPX3、PX4、PX5、PY5、PY6、PY7が繰り返し印加されることにより、表示電極対間の放電状態がさらに維持される。
【0064】
図6に示すように、維持パルスPX2、PX3、PX4、PX5および維持パルスPY4、PY5、PY6、PY7はその電気的極性が交互に入れ替わる。つまり、維持電極4と走査電極5とは、維持放電の際に、交互に負極あるいは正極となって繰り返し放電がなされる。なお、表示過程TSで印加される維持パルスは、各維持パルス間の電位差だけでは放電が開始されない電位差に設定される。維持放電は、表示電極対6に印加される電位と、前記アドレス過程で蓄積された壁電荷による電位で構成される電位差により形成される。それゆえに、前記アドレス過程TAにおいて、壁電荷が形成されたセルのみで、維持放電が形成され、この維持放電による発光が生じ、画像を形成することができる。
【0065】
また、この表示過程TSにおいて、十分な壁電荷が形成されたセルでは、次のサブフィールドにおける表示過程TSよりも前に、壁電荷を消去する必要がある。セル内に壁電荷が残留している場合、次のサブフィールドでも維持放電が形成されてしまうからである。そこで、次のサブフィールドでは、再び初期化過程TRを設け、全てのセルに蓄積された壁電荷の量を初期化する。
【0066】
以上本実施の形態1のPDPモジュール20の全体構成と、階調駆動方法の例について説明したが、種々の変形例が存在することは言うまでもない。
【0067】
<蛍光膜の詳細構造、機能および形成方法>
次に、図1〜図4に示す蛍光膜8の詳細構造、機能および形成方法について説明する。図5に示したPDPモジュール20では、前記の通り、リセット放電、アドレス放電、維持放電などの放電を行うが、これらの放電は、以下の原理により形成される。すなわち、図1に示す放電空間14内に存在する荷電粒子(プライミング電子)が各電極間に印加される電位の差により加速され移動する。この際、放電空間14内に封入された放電ガスと荷電粒子が衝突し、放電ガスが電離する。この過程が次々と繰り返されて、所謂、電子なだれと呼ばれる状態となって放電が形成される。したがって、放電空間14内に存在するプライミング電子の数が多い程、低い電位差で放電を形成し易くなる。すなわち、放電電圧を低減することができる。
【0068】
また、放電を行う電極間に電位差が生じると、プライミング電子は、相対的に電位が低い負極側から正極の方向に加速される。したがって、放電を形成するための電極のうち、負極となる(負の電位が印加される)電極の付近にプライミング電子が多く存在すれば、放電電圧を低減する効果が大きくなる。例えば、図7では、初期化過程TRにおいて、アドレス電極10に負の電位、走査電極5に正の電位を供給する例について説明したが、この場合、アドレス電極10の付近にプライミング電子をより多く供給することにより、特に、リセット放電の放電電圧を低減することができる。
【0069】
このプライミング電子は、例えば、図1に示すPDP15を構成する保護膜3や蛍光膜8などが保持していた電子が、例えば、自然放射線や熱などの励起源により励起されることにより放電空間14に供給される。このため、アドレス電極10の付近のプライミング電子の供給量を増加させる手段としては、アドレス電極10側の放電空間14に面して配置される蛍光膜8の電子放出特性を向上させる方法が好ましい。
【0070】
図1に示す各蛍光膜8は、赤色、緑色、青色の三色の可視光をそれぞれ発光する蛍光体を別々に含んでいる。各発光色の蛍光体の例としては、赤色蛍光体は(Y、Gd)BO:Eu蛍光体、緑色蛍光体はZnSiO:Mn2+蛍光体、および青色蛍光体はBAM(BaMgAl1017:Eu2+)蛍光体が挙げられる。したがって、蛍光膜8を構成する蛍光体に、蛍光体よりも電子放出特性の高い電子放出材を加えることで、蛍光膜8の電子放出特性を向上させることができる。
【0071】
ここで、プライミング電子とは、放電のトリガとなる電子であって、放電に必要な電圧を印加する際に放電空間14内に存在している電子である。また、電子放出特性(プライミング電子放出特性)とは、放電空間14へのプライミング電子の放出特性を意味し、自然放射線や常温の熱エネルギーなど比較的低いエネルギーの励起源によって、より多くのプライミング電子が放出されるほど好ましい。また、電子放出材(プライミング電子放出材)は、蛍光体よりも電子放出特性が高い材料を意味する。したがって、電子放出材は、非駆動時(PDPを駆動するための電圧等を印加しない状態)であっても、例えば、自然放射線や雰囲気の熱などのエネルギーにより励起されて結晶中の電子を放出する材料であって、電子放出量が蛍光体より多い材料である。また、蛍光膜8が電子放出材を含む場合、蛍光膜8側のアドレス電極10に負電圧を印加し、放電空間14を介してアドレス電極10の反対側に対向配置される走査電極5に正電荷を印加すると、ガス放電を開始させる電圧が、蛍光膜8に電子放出材が存在しない場合よりも低くなる。すなわち、蛍光膜8に電子放出材を含めることにより、放電電圧を低減することができる。この電子放出材の具体例は、後で詳細に説明するが、例えば、MgOの結晶粒子を例示することができる。
【0072】
本発明者らは、蛍光膜8の電子放出特性の向上について検討した結果、蛍光膜8に電子放出材を混合した構成では、以下に示す新たな課題が生じることを見出した。すなわち、蛍光膜8に含まれる蛍光体は、放電空間14から照射される真空紫外線(放電ガスに含まれル希ガスとしてキセノンを使用した場合は、146nmおよび172nmの波長域にある)に励起されて赤、緑、青の各色の可視光を発光するところ、蛍光体と放電空間の間に電子放出材が存在すると、真空紫外線の一部が電子放出材に吸収されてしまう。この結果、蛍光体に到達し、これを励起する真空紫外線の量が低下し、輝度の低下の原因となる。つまり、発光効率が低下してしまう。
【0073】
そこで、本発明者らは、発光効率の低下を抑制しつつ、放電電圧を低減する技術について検討を行い、以下の構成を見出した。図8は図1〜図4に示す蛍光膜の詳細構造を模式的に示す要部拡大断面図である。
【0074】
図8において、蛍光膜8は、電子放出材粒子21aからなる電子放出材層21、および蛍光体粒子22aからなる蛍光体層22を有し、電子放出材層21よりも放電空間14側に蛍光体層22が積層されている。換言すれば、電子放出材層21は蛍光体層22に被覆されている。
【0075】
蛍光膜8は蛍光膜8を構成する粒子が図8に示すように複数の層状(図8では6層)に堆積されてなる。したがって、放電空間14で発生した真空紫外線の多くは、最表面に積層された蛍光体層22の蛍光体粒子22aを励起する励起源として用いることができる。一方、電子放出材粒子21aは自然放射線や常温程度の熱により電子を放出するので、真空紫外線の照射の有無に係わらず電子が放出される。放出された電子のエネルギーは、真空紫外線のエネルギーと比較すると十分に小さいので、蛍光体層22によっては吸収され難く、電子は蛍光体層22を通過して放電空間14に取り出される。この結果、発光効率の低下を抑制しつつ、かつ、プライミング電子の供給量を増大させることができるので、放電電圧を低減することができる。
【0076】
上記構成は、本発明者らが実験により得た以下の知見により見出した。図9は、真空紫外線照射輝度と蛍光体層の層数の関係を示す説明図、図10は電子線の透過率と蛍光体層の層数の関係を示す説明図である。図9および図10に示す実験では、蛍光体層の層数(積層する蛍光体層の数)を変化させて、それぞれ真空紫外線(142nmおよび176nmの波長の真空紫外線を用いた)あるいは電子線を透過させて、蛍光体層の層数に対する各線の透過率の依存性について調査した。なお、図9においては、真空紫外線を照射した際の輝度が飽和して最大値となる程度の十分な厚さを有する粉末蛍光体における輝度(粉末輝度)に対する相対的な割合を示している。また、図10においては、蛍光体層を形成しない場合に対する電子線(30keVのものを用いた)の透過率の割合を示している。
【0077】
図9において、蛍光体層の層数が少なくとも1層あれば、粉末輝度の8割以上の輝度が得られる。また、2層の状態では最大値に到達し、以降層数を増加させても輝度はほとんど変化しない。これは、真空紫外線の多くは2層目までの蛍光体層に吸収されてしまい、それ以上蛍光体層があっても、ほとんど紫外線は達していていないため、輝度が変化しないことを示している。真空紫外線はエネルギーが非常に高い光であり、蛍光体粒子に照射されるとすぐに吸収され、ほとんど反射がなく、少ない層数で吸収されるためである。
【0078】
一方、図10においては、電子線の透過率は、蛍光体層の層数の増加に伴って減少はするが、3層未満の範囲においては、電子線が蛍光体層を透過していることが判る。これは、電子線が蛍光体に吸収されるためには、ある程度エネルギーが必要であり、エネルギーの低い電子線の場合、吸収されずに反射を繰り返し、何層も透過する電子が多くなるためである。この結果を図8に示す蛍光膜8に当てはめて考えると、電子放出材層21から放出される電子のエネルギーは、電子線よりもさらにエネルギーが低い(例えば、1eV以下程度)ため、蛍光体層22では吸収され難く、反射を繰り返すので、蛍光体層22が3層より多い場合であっても透過すると考えられる。
【0079】
以上の結果より、蛍光体を励起する真空紫外線は、蛍光体層22が1〜2層あれば殆どが吸収され十分な輝度が得られるのに対し、電子放出材層21から放出される電子は、3層程度の蛍光体層22であれば透過するため、電子線放出材層21を1〜3層程度の蛍光体層22で覆っていても、電子は蛍光膜8外の放電空間14に放出されることが判った。つまり、本実施の形態1では、電子放出材層21を蛍光体層22で被覆することにより輝度低下を抑制しつつ、かつ、プライミング電子の供給量を増加させることができるので、放電電圧を低減することができる。
【0080】
ところで、蛍光膜8からのプライミング電子の供給量を増加させることにより、図1に示すアドレス電極10を負極としてリセット放電を行う構成においては以下の効果も得られる。すなわち、リセット放電に伴う発光(リセット発光と呼ばれる)を抑制し、PDP15のコントラストを向上させることができる。リセット放電は、前記の通り、各セルに蓄積された壁電荷の量を初期化するための放電であるため、全てのセルで放電が形成される。ところが、蛍光体の励起源である真空紫外線は、主に放電ガス中のキセノンイオンが基底状態に遷移する際に発生するため、このリセット放電の際にも発生する。この真空紫外線の発生量は、放電のモードに依存して変化する。つまり、リセット放電が所謂、微弱放電と呼ばれるモードで行われる場合、放電が形成される範囲は限定的であり、真空紫外線の発生量を抑制することができる。一方、所謂、強放電と呼ばれるモードでは、放電が形成される範囲は、広範囲に及ぶため、真空紫外線の発生量が増大する。ここで、放電を形成する際に、負極となる電極側に存在するプライミング電子の量を多くすることにより、放電のモードを微弱放電の状態で形成することができる。したがって、本実施の形態1では、蛍光膜8からのプライミング電子の供給量を増加させることにより、リセット放電における放電のモードを微弱放電とすることができるので、リセット放電の際に発生する真空紫外線の量を抑制することができる。この結果、リセット放電に伴うリセット発光、すなわち、全てのセルでの同タイミング発光の輝度を低減し、コントラストを低減することができる。
【0081】
次に、蛍光膜8の形成方法について説明する。図8に示す蛍光膜8は例えば、以下の方法により形成することができる。まず、図1に示す隔壁7で区画された空間に塗布するための電子放出材ペースト、および蛍光体ペーストを準備する。これらのペースト材は例えば以下のように得られる。
【0082】
電子放出材ペーストは、粉末状の電子放出材粒子21aを準備して、これを有機溶剤および有機バインダ樹脂が混合されたビヒクル中に投入し、混合すると、有機化合物中に電子放出材粒子21aが分散した電子放出材ペーストが得られる。また、蛍光体ペーストについても同様に、粉末状の蛍光体粒子22aを準備して、これを有機溶剤および有機バインダ樹脂が混合されたビヒクル中に投入し、混合すると、有機化合物中に蛍光体粒子22aが分散した蛍光体ペーストが得られる。カラー表示を行うためには、蛍光体ペーストは、赤、緑、青の色毎に3種類準備する必要があるが、電子放出材ペーストは、少なくとも1種類準備すれば良い。電子放出材ペーストを塗布するセルの発光色毎に異なる電子放出材粒子を堆積させる場合には、3種類の電子放出材ペーストを準備しても良い。このように、セルの発光色毎に異なる電子放出材粒子を堆積させる方法は、各色の蛍光体粒子22a毎に電子放出特性が大きく異なっている場合に有効である。
【0083】
次に、電子放出材ペースト、蛍光体ペーストの順で、図1に示す隔壁7で区画された空間内に順次塗布する。蛍光体ペーストを塗布する際には、電子放出材粒子が塗布された領域を被覆するように塗布する。塗布方法は、スクリーン印刷法、あるいはディスペンス法などを用いることができる。次に、蛍光体ペーストが塗布された背面板13(図1参照)を焼成し、電子放出材ペーストおよび蛍光体ペースト中に含まれる有機成分を取り除いて、蛍光膜8が形成される。
【0084】
ここで、電子放出材ペースト、蛍光体ペーストの順で順次塗布する方法は、電子放出材層21の表面(放電空間側の表面)を蛍光体層22で確実に被覆することができる点で、特に好ましい。ただし、結果的に、得られる蛍光膜8の電子放出材層21が蛍光体層22で被覆されていれば、特にこの方法には限定されない。
【0085】
また、電子放出材層21を蛍光体層22で確実に被覆する観点からは、電子放出材ペーストを塗布した後、前記した背面板13(図1参照)を焼成し、電子放出材ペースト中に含まれる有機成分を取り除いた後、蛍光体ペーストを塗布する方が好ましい。蛍光体ペーストを塗布する前に電子放出材層の位置を固定することにより、図8に示す電子放出材層21と蛍光体層22の積層界面において、電子放出材粒子21aが蛍光体粒子22aよりも放電空間14側に配置されることを防止ないしは抑制することができるからである。一方、電子放出材ペーストおよび蛍光体ペーストを塗布した後、両ペーストを一括して焼成する方法を用いる場合には、焼成工程を1回とすることができるので、製造効率を向上させることができる。
【0086】
また、電子放出材粒子21aに、MgOなど、アルカリ土類金属酸化物の結晶粒子を用いると、雰囲気中の不純物を吸着して、電子放出特性が低下してしまう場合がある。このため、例えば、電子放出材層21が放電空間14に露出している場合には、製造工程中に不純物の吸着に対応する必要がある。例えば、蛍光膜8を形成する工程以降の製造工程を全て減圧雰囲気中で行う、あるいは、低下した電子放出特性を回復させるため、再活性化を目的とした加熱工程を別途追加する必要がある。しかし、本実施の形態1によれば、電子放出材層21は、蛍光体層22に被覆されているので、電子放出特性の低下を抑制することができる。また、前記した電子放出材ペースト、蛍光体ペーストの順で順次塗布する方法の場合、還元雰囲気中で有機成分を取り除くこととなるため、焼成後の電子放出材層21は既に活性化された状態となっている点で好ましい。
【0087】
次に、図8に示す蛍光膜8の特に好ましい構成について説明する。まず、図8に示す蛍光体層22それぞれの層数は、図9および図10で説明した実験結果から3層以下であれば、電子を放電空間14に供給することができる。また、最大限の発光輝度を確保しつつ、プライミング電子の供給量を増加させる観点からは、蛍光体層22の層数は1層または2層とすることが特に好ましい。一方、電子放出材層21から放出される電子の量は、配置される電子放出材粒子21aの量に応じて増大するので多いほど良い。この観点からは、電子放出材層21の膜厚が蛍光体層22の膜厚よりも厚くなるように形成することが好ましい。なお、膜厚とは、層状に堆積した粒子群で構成される膜、における裏面から表面までの距離を意味する。
【0088】
また、電子放出材層21および蛍光体層22は、粒子が層状に堆積した膜として構成され、必ずしも各粒子が整列しているわけではない。したがって、蛍光膜8の形成方法によっては、電子放出材層21と蛍光体層22の境界面においては、蛍光体粒子22a上に一部の電子放出材粒子21aが配置される場合もある。しかし、蛍光膜8の電子放出特性は、多数の電子放出材粒子21aからの電子放出により規定される。また、蛍光膜8の輝度は多数の蛍光体粒子22aからの発光により規定される。したがって、一部の電子放出材粒子21aが蛍光体粒子22aの上に配置された場合であっても、実効上、輝度や放電電圧に与える影響が顕在化しない範囲においては許容される。
【0089】
また、電子放出材粒子21aからの電子放出量は、その粒径に依存し、粒径が大きくなるほど、電子放出量が増大する。一方、蛍光体粒子22aは、電子放出材層21を被覆する観点から、電子放出材粒子21aよりも小さい方が効率的に被覆することができる。したがって、電子放出材粒子21aの粒径(平均粒径)を蛍光体粒子22aの粒径よりも大きくすることが特に好ましい。
【0090】
また、本実施の形態1では、電子放出材粒子21aによる真空紫外線の吸収を考慮しなくとも良いので、放電電圧低減の観点からは、電子放出特性が高い程好ましい。このような材料としてMgO、CaO、SrO、SrCaOなどのアルカリ土類金属酸化物(2族複合酸化物も含む)を例示することができる。これら、アルカリ土類金属酸化物の結晶粒子は、前記した蛍光体の各材料と比較して非駆動時の電子放出量が多い。特に、MgOの単結晶粒子は、電子放出特性が非常に高く、MgO単結晶粒子を電子放出材粒子21aとして用いることにより、放電電圧を大幅に減少させることができる。
【0091】
また、電子放出材粒子21aをMgOからなる母材、および母材に添加されるマグネシウムと異なる添加元素により構成することで、添加元素を添加しない場合よりもさらに電子放出特性を向上させることができる。電子放出特性は、電子放出材粒子21aの結晶中における電子をトラップする準位の濃度(トラップ準位濃度)と相関がある。つまり、トラップ準位濃度が高い電子放出材粒子21aは、より多くの電子を結晶中に保持することができる。また、結晶中に形成されるトラップ準位は、母材のバンドギャップにおいて、浅い準位(伝導体側に近い準位)である程、保持した電子を低いエネルギーで容易に結晶外に放出することができる。したがって、MgOからなる母材にMgと異なる添加元素を添加することにより、不純物準位を形成することができるので、この不純物準位をトラップ準位として機能させることができる。また、本発明者らが実験的に確認した結果によれば、添加元素は、シリコン(Si)、カルシウム(Ca)、セリウム(Ce)、ランタン(La)、サマリウム(Sm)、イットリウム(Y)、アルミニウム(Al)あるいはスカンジウム(Sc)の群より選ばれる1種あるいは複数種の元素を用いることが好ましい。これらの添加元素を添加することにより、母材中に形成される浅い準位のトラップ準位濃度が増加するので、電子放出特性を向上させることができる。特に、添加元素として、ScあるいはAlを添加した場合には、これらの添加元素を添加しない場合と比較して大幅に電子放出特性を向上させることができる。したがって、1種の添加元素を添加する場合には、ScあるいはAlを添加し、複数種の添加元素を添加する場合には、ScあるいはAlを含めることが特に好ましい。
【0092】
また、非駆動時の電子放出量が蛍光体よりも高い他の材料としては、2a族金属および/または2b族金属のアルミン酸塩、例えば、CaAl、MgAl、ZnAl、SrAl、SrAl1425等の組成で表わされる材料を挙げることができる。また、これらの混晶を用いることもできる。前記したアルカリ土類金属酸化物の結晶粒子、特に、MgOの単結晶粒子は、原料粒子を形成する際のプロセスが煩雑であるため、原料入手コストが大幅に上昇する。本実施の形態1では、電子放出材層21上に蛍光体層22を積層するため、電子放出材層21を蛍光膜8の最表面に配置する場合と比較すれば、図10に示すように一部の電子が吸収される。したがって、この吸収された電子を補うには、蛍光膜8の最表面に電子放出材層21を配置する場合よりは、電子放出材層21の含有量を増加させる必要がある。このため、電子放出材粒子21aとして、高価なMgO単結晶粒子を用いると、原料コストの増加により、PDP15(図1参照)、あるいはPDPモジュール20(図5参照)を安価に提供することができなくなってしまう。この観点から前記した2a族金属および/または2b族金属のアルミン酸塩は、MgO結晶粒子よりも極めて安価に入手することができる点で好ましい。また、前記アルミン酸塩は、アルカリ土類金属酸化物と比較すると水分などの不純物を吸着し難い特性を有している。したがって、蛍光膜8を形成する工程における原料のハンドリングが容易になるため、PDP15の製造工程を効率化することができる。
【0093】
また、前記アルミン酸塩のうち、組成がMAl(但しMはMg、Ca、Zn、Srのうち、少なくとも一つの元素)で表される材料を用いれば、放電電圧を顕著に低減することができることを実験的に確認した。特に、組成がCaAlで表される材料を用いた場合には、MgAl、ZnAl、SrAlを用いた場合よりもさらに高い放電電圧低減効果を得ることができる。なお、本実施の形態で説明する各材料は、電子放出材層21、あるいは電子放出材粒子21aを構成する主たる組成についての説明であり、例えば、原料由来、あるいは製造工程由来で、若干の不純物元素を含んでいるものを排除するものではない。
【0094】
また、CaAlで表される材料のうち、主たる結晶相の結晶系がmonoclinicで空間群P21である場合に、特に、高い放電電圧低減効果を示す。この場合、電子放出材粒子21aの粉体についてX線回折装置を用いて、CuKα線によるθ−2θスキャンでのX線回折測定を行うと、最も強度が高い回折線(主ピーク)が2θ=30°付近に現れる。図11にCaAlで表される電子放出材粒子の粉体を粉体用X線回折装置で測定した結果について示す。図11に示すように、CuKα線によるθ−2θスキャンでのX線回折測定を行うと、主ピークが2θ=30°付近に現れていることがわかる。ず11に示す測定結果は、供試試料が、主たる結晶相の結晶系がmonoclinicで空間群P21である場合には、汎用的な粉体用X線回折装置を用いて測定することができる。したがって、X線回折測定による評価は、電子放出材粒子の特性を評価するための管理指標として好適である。例えば、CaAlで表される電子放出材粒子の製造条件を確立するための指標として、X線回折測定による評価を用いることができる。
【0095】
次に、図8に示す電子放出材層21の材料、および蛍光膜8中に占める電子放出材層21の割合が実際にPDP15の放電電圧低減に与える影響について説明する。図12および図13は、本実施の形態1による放電電圧低減効果を調査した結果を示す説明図である。図12には、電子放出材粒子として2a族金属または2b族金属のアルミン酸塩を用いた場合の放電電圧低減効果、図13には、電子放出材粒子としてMgOを用いた場合の放電電圧低減効果を示している。
【0096】
図12および図13に示す評価は、以下のように行った。まず、比較例として、図1に示す蛍光膜8を蛍光体層のみで形成したPDPを準備した。また、実施例として、図8に示すように、電子放出材層21を被覆する蛍光体層22を有する蛍光膜8を形成したPDPを準備した。図12では、電子放出材粒子21aとして、MgAl、ZnAl、SrAl、CaAlを用いた場合の放電電圧低減の結果をそれぞれ実施例1、2、3、4として示す。なお、実施例1〜3は、放電電圧低減効果を示す特性線が略同一の挙動を示したので、図12では、見易さのため、実施例1〜3を共通の線で示している。また、図13では、電子放出材粒子21aとして、MgOを用いた場合の放電電圧低減の結果を実施例5として示す。
【0097】
放電電圧の測定方法は、図1に示すPDP装置15(図5に示すPDPモジュール20)における、蛍光膜8側のアドレス電極10に負電圧を印加し、ガス放電を行う放電空間14を隔てた位置にある走査電極5に正電荷を印加して、ガス放電を開始させる放電電圧を評価した。また、図12および図13では、実施例1〜5のそれぞれについて蛍光膜8における電子放出材層の占める重量比率を変化させて、比較例の放電電圧(約280V)に対する放電電圧低減の程度を示している。また、比較例および実施例1〜5では、蛍光体粒子は、赤色蛍光体として(Y、Gd)BO:Eu蛍光体、緑色蛍光体としてZnSiO:Mn2+蛍光体、青色蛍光体としてBAM(BaMgAl1017:Eu2+)蛍光体を用いた。各蛍光体粒子の中央粒径は約3μmであり、前記したスクリーン印刷法を用いて、放電空間14の底面および側面を埋めるように蛍光膜8を形成した。また、放電空間14内には、放電ガスとしてキセノン濃度が8%の混合ガスを封入した。
【0098】
図12および図13に示すように、実施例1〜5は全て、比較例に対して放電電圧が低下していることがわかる。実施例1〜5では、いずれも蛍光膜中における電子放出材層の重量割合を1重量%以上とすれば、少なくとも1V程度以上放電電圧低減の効果が認められる。
【0099】
図12に示す実施例1〜3では、電子放出材層の重量割合が90重量%となるまで、比率の増加とともに放電電圧が低減し、90重量%とした時には、比較例に対して約18Vの低減効果が得られた。
【0100】
図12に示す実施例4、すなわち、電子放出材粒子21aがCaAlからなる場合、放電電圧低減効果が実施例1〜3と比較して特に顕著であり、5重量%以上含むと20〜30V程度以上の放電電圧の低減が可能になることが判った。また、実施例4においても、電子放出材層の重量割合が90重量%となるまで、比率の増加とともに放電電圧が低減し、90重量%とした時には、比較例に対して約55Vの低減効果が得られた。実施例4で用いたCaAlは図13に示す実施例5で用いたMgOと比較して、極めて安価に入手することができるので、例えば、図1に示す蛍光膜8の全てに、90重量%の電子放出材層を形成した場合であってもPDP15の製造コスト上昇を抑制することができる。したがって、消費電力の低いPDP15を安価に提供することができるという観点から、CaAlは特に好ましい材料であると言える。なお、実施例4で用いたCaAlは、主たる結晶相の結晶系がmonoclinicで空間群P21のもの、すなわち、図11に示すように、CuKα線によるθ−2θスキャンでのX線回折測定を行うと、主ピークが2θ=30°付近に現れる特性を有するものを用いた。
【0101】
また、図13に示す実施例5、すなわち、電子放出材粒子21aがMgOからなる場合、実施例4と比較して、放電電圧低減効果がさらに高い。蛍光膜8が、20重量%以上の電子放出材層を含むと100V程度以上の放電電圧の低減が可能になる。また、実施例5についても、電子放出材層21の重量割合が90重量%となるまで、比率の増加とともに放電電圧が低減し、90重量%とした時には、比較例に対して約180Vの低減効果が得られた。ただし、実施例5に用いたMgOは、実施例4で用いたCaAlと比較して単位重量当たりの入手コストが数倍〜数十倍程度となるため、PDP15の製造コスト上昇を抑制する観点からは、放電電圧低減効果が特に高い20重量%以下の範囲で用いることが好ましい。また、図示は省略したが、電子放出物材粒子として、MgOを母材として、母材中にSc、Al、Si、Ca、Ce、La、Sm、Yのいずれか1種以上の添加元素を添加した場合、実施例5よりもさらに放電電圧を低減できることが判った。特に、添加元素にAlまたはScが含まれている場合には、放電電圧低減効果を大きくすることができる。
【0102】
また、実施例1〜5で用いた各電子放出材は、母材中に母材と異なる添加元素を加える、結晶の欠陥、あるいは組成ずれなどによって、紫外線などの励起で発光する場合がある。検討した結果、図12および図13に示す電圧低減効果は、発光、非発光にかかわらず有効であることが判った。
【0103】
以上説明したように、本実施の形態1によれば、図8に示す蛍光膜8を電子放出材粒子21aからなる電子放出材層21、およびこれを被覆する蛍光体粒子22aからなる蛍光体層22とで構成することにより、発光効率の低下を抑制しつつ、かつ、放電電圧を低減することができる。
【0104】
(実施の形態2)
前記実施の形態1では、蛍光膜を電子放出材粒子からなる電子放出材層、およびこれを被覆する蛍光体粒子からなる蛍光体層とで構成する構造について説明した。本実施の形態2では、蛍光体層の下層に電子放出材粒子および可視光反射材粒子を配置する実施形態について説明する。
【0105】
図14は、本実施の形態2の蛍光膜の詳細構造を模式的に示す要部拡大断面図である。なお、本実施の形態2のPDP装置は、蛍光膜に可視光反射材粒子が含まれている点を除き、前記実施の形態1で説明した図1に示すPDP15、あるいは図5に示すPDPモジュール20と同様である。したがって、本実施の形態2では、重複する説明および図示は省略し、必要に応じて前記実施の形態1で説明した図1〜図13を用いて説明する。
【0106】
図14において、本実施の形態2の蛍光膜8は、蛍光体層22の下層に、電子放出材粒子21aおよび可視光反射材粒子23aが配置されている。詳しくは、電子放出材粒子21aからなる電子放出材層21に蛍光体粒子22aよりも可視光に対する反射率が高い可視光反射材粒子23aが混合されている。
【0107】
図1に示すPDP15では、前記の通り、真空紫外線が蛍光体粒子22aに照射されることにより、蛍光体粒子22aが励起されて、可視光を発光する。蛍光体粒子22aからの可視光は、全てが図1に示す前面板12の方向に向かう訳ではなく、一部の可視光は、背面基板11の方向に向かう。したがって、PDP15の発光輝度を向上させる観点からは、背面基板11の方向に向かった可視光を反射して、前面板12側から効率的に取り出すことが好ましい。
【0108】
ここで、本発明者らの検討によれば、真空紫外線に励起されて可視光を発光する蛍光体粒子22aは、最表面層から1層ないし3層程度である。したがってこれよりも下層に蛍光体粒子22aが配置されている場合であってもこれら下層の蛍光体粒子22aは可視光の発光には寄与しない。一方、蛍光体粒子22aは、数μm程度の粒径であれば、白色を呈し、照射された可視光を反射する特性を有している。例えば、蛍光体粒子22aを25μm程度の膜厚で、層状に配置した場合の可視光反射率は、68〜70%程度である。
【0109】
つまり、蛍光膜8を蛍光体粒子22aのみで形成する場合、蛍光体粒子22aは、真空紫外線に励起されて可視光を発光する蛍光機能、および照射された可視光を反射する反射機能、という2つの機能を有している。蛍光体粒子22aの有する反射機能は、可視光を反射する特性を有していれば、蛍光体粒子22aと置き換えて別の材料とすることができる。例えば、図14に示す可視光反射材粒子23aとして酸化チタン(TiO)を用いれば、可視光反射材粒子23aの可視光反射率は蛍光体粒子の可視光反射率よりも高いので、可視光反射率をさらに向上させて、70%以上の反射率とすることもできる。
【0110】
また、本実施の形態2によれば、蛍光体層22は蛍光膜8の最表面に配置されるので、蛍光膜8に照射される真空紫外線の殆どは、蛍光体層22の励起源として吸収し、輝度低下を抑制することができる。また、蛍光体層22の下層には、電子放出材粒子21aが配置されるので、放電電圧を低減することができる。蛍光体層22から発生する可視光の一部は、蛍光体層22からそのまま、あるいは蛍光体層22内で反射して、前面板12(図1参照)の方向に向かう。しかし、別の一部は、蛍光体層22で散乱し、電子放出材層21の方向に向かう。電子放出材粒子21aも可視光を反射する特性を有しているので、電子放出材層21に到達した可視光は、一部が電子放出材粒子21aにより反射して、前面板12(図1参照)の方向に向かう。しかし、本実施の形態2のように、電子放出材層21に、可視光反射材粒子23aを混合し、かつ、可視光反射材粒子23aとして電子放出材粒子21aよりも可視光反射特性が高い材料を用いれば、さらに可視光反射特性を向上させることができる。つまり、電子放出材層21に向かった可視光も反射して前面板12(図1参照)から取り出すことができるので、PDP15の輝度を向上し、発光効率をさらに向上させることができる。
【0111】
図14に示す蛍光膜8において、蛍光体層22(蛍光体粒子22a)および電子放出材層21(電子放出材粒子21a)に用いる材料、粒径、層数、あるいは蛍光膜8中における電子放出材粒子21aの重量割合などの詳細構造については、前記実施の形態1で説明した通りであるので、説明を省略する。
【0112】
次に、図14に示す蛍光膜8のうち、可視光反射材粒子23aの特に好ましい態様について説明する。可視光反射材粒子23aには、前記した反射機能が要求される。つまり、より多くの可視光を前面板12(図1参照)方向に反射する特性を有していることが好ましい。この観点から、可視光反射材粒子23aを混合した電子放出材層21の隙間、すなわち、隣り合う可視光反射材粒子23a、あるいは電子放出材粒子21aの隙間を小さくするため、可視光反射材粒子23aの粒径は、電子放出材粒子21aの粒径よりも小さくすることが好ましい。また、可視光反射材粒子23aの粒径を、蛍光体粒子22aの粒径よりも小さくすれば、隣り合う可視光反射材粒子23a、あるいは電子放出材粒子21aの隙間をさらに小さくすることができるので、特に好ましい。このように、可視光反射材粒子23aの粒径を小さくすることにより、電子放出材層21の膜厚を過剰に厚くすることなく、十分な可視光反射効果を得ることができる。つまり、電子放出材層21に可視光反射材粒子23aを混合し、かつ、放電空間14(図1参照)の必要な高さ(PDP15の厚さ方向の距離)を確保した場合であっても、PDP15の厚さが増大することを抑制することができる。
【0113】
次に、PDP15(図1参照)の発光効率を向上させる観点から、可視光反射材粒子23aを混合した電子放出材層21および、蛍光体層22の好ましい膜厚について、図15を用いて説明する。図15は、図14に示す蛍光膜を構成する電子放出材層および蛍光体層の膜厚を変化させたときの輝度の変化を示す説明図である。
【0114】
電子放出材層21に含まれる電子放出材粒子21aとしては、MgOを用い、蛍光膜8における電子放出材粒子21aの重量割合が約10重量%程度となるように調製し、これを前記したスクリーン印刷法により所定の膜厚で形成した。ただし、図15に示す実験結果は一例であり、電子放出材層21における可視光反射材粒子23aと電子放出材粒子21aの割合は、PDPに要求される仕様に応じて変化させることができる。つまり、電子放出材粒子21aの割合を増やせば放電電圧をより低減させることが可能であり、可視光反射材粒子23aの割合を増やせば、反射率の上昇により輝度を向上させることができる。図15において、輝度の評価方法は、比較例として、蛍光体粒子22a(図14参照)を約25μm程度の膜厚で積層したPDPを準備して、この比較例に対する相対輝度の値として評価を行った。
【0115】
図15に示す実験結果において、発光効率を向上させる観点からは、可視光反射材粒子23aが混合された電子放出材層21は7μm以上の膜厚とすることが好ましい。電子放出材層21の膜厚が7μm以上の範囲では、蛍光体層22の膜厚が、例えば、6μm程度(2〜3層分に相当する)であっても相対輝度は比較例に対して1以上となる。つまり、蛍光体層22の膜厚を過剰に厚くすることなく、輝度を向上させることができるからである。
【0116】
また、蛍光膜8全体の膜厚が過剰に厚くなると、放電空間14(図1参照)の厚さ方向のスペースが圧迫されるので、これを防止ないしは抑制する観点からは、電子放出材層21の膜厚は、20μm以下、特に15μm以下とすることが好ましい。電子放出材層21の膜厚を20μmよりも厚くしても、相対輝度は向上しない。また、15μm〜20μmの範囲では、輝度向上の効果が小さいからである。
【0117】
図14では、蛍光体層22の下層に、電子放出材粒子21aおよび可視光反射材粒子23aを配置する1例として、電子放出材粒子21aからなる電子放出材層21に蛍光体粒子22aと可視光反射材粒子23aを混合して配置する態様を示している。このように、蛍光体粒子22aと可視光反射材粒子23aを混合して配置する場合には、前記実施の形態1で説明した蛍光膜8を形成する工程において、電子放出材ペースト中に、可視光反射材粒子23aを混合しておけば、塗布工程を増加させることなく、可視光反射材粒子23aを含む蛍光膜8を形成することができる。したがって、製造効率の観点から有利である。ただし、可視光反射材粒子23aは、蛍光体層22よりも下層に配置されていれば、反射率を向上させることができる。したがって、図示は省略するが、例えば、前記実施の形態1で説明した図8に示す電子放出材粒子21aからなる電子放出材層21の下層に、可視光反射材粒子23a(図14参照)からなる可視光反射材層を配置する構成とすることができる。
【0118】
(実施の形態3)
前記実施の形態2では、蛍光体層よりも下層に、電子放出材粒子と、可視光反射材粒子を配置することにより、輝度を向上させ構造について説明した。本実施の形態3では、蛍光体層の下層に電子放出材粒子に加え、蛍光体の発光色と同系の色調を有する顔料粒子を混合し、コントラスト(明室コントラスト)を向上させる構造について説明する。
【0119】
図16は、本実施の形態3の蛍光膜の詳細構造を模式的に示す要部拡大断面図である。なお、本実施の形態3のPDP装置は、蛍光膜に顔料粒子(および可視光反射材粒子)が含まれている点を除き、前記実施の形態1で説明した図1に示すPDP15、あるいは図5に示すPDPモジュール20と同様である。したがって、本実施の形態3では、重複する説明および図示は省略し、必要に応じて前記実施の形態1、2で説明した図1〜図15を用いて説明する。
【0120】
図16において、本実施の形態3の蛍光膜8は、蛍光体層22の下層に、電子放出材粒子21aおよび無機顔料粒子24aが配置されている。詳しくは、電子放出材粒子21aからなる電子放出材層21に蛍光体粒子22aの発光色と同系の色調を有する無機顔料粒子24aが混合されている。
【0121】
このように、無機顔料粒子24aを混合することにより、PDP15(図1参照)、あるいはPDPモジュール20(図5参照)のコントラスト(特に、明室コントラスト)を向上させることができる。これは、以下の理由による。
【0122】
PDP装置を明室環境下で使用する場合、PDPの表示面側から、照明光などの外光が照射される。蛍光膜8は、前記したように可視光をある程度反射する特性を有しているため、照射された外光の一部は蛍光膜8により反射して、表示面側から反射光が取り出される。すると、蛍光体粒子22aが発光した可視光に、この反射光が混入するので、結果としてPDP装置のコントラストが低下することとなる。特に、図16に示すように、蛍光膜8に可視光反射材粒子23aが含まれる場合には、外光の反射率も上昇するため、コントラストが低下し易くなる。
【0123】
本実施の形態3では、蛍光体粒子22aの発光色と同系の色調を有する無機顔料粒子24aを混合することにより、蛍光体粒子22aの発光色と異なる波長域の外光を選択的に吸収することができる。この結果、PDP15あるいはPDPモジュール20のコントラストを向上させることができる。
【0124】
しかし、無機顔料粒子24aを蛍光体層22に混合した場合、無機顔料粒子24aにより真空紫外線が吸収されてしまうため、輝度が低下してしまう。そこで、本実施の形態3では、無機顔料粒子24aを蛍光体層22よりも下層に配置する。この結果、蛍光体粒子22aの励起源である真空紫外線の吸収を抑制し、かつ、蛍光体層22よりも下層に到達した外光については、発光色と異なる波長域の外光を選択的に吸収する。したがって、輝度の低下を抑制しつつ、かつ、コントラストを向上させることができる。
【0125】
また、照射された外光の一部は、蛍光体層22によっても反射するが、本実施の形態3では、図16に示すように蛍光体層22の膜厚は、電子放出材層21の膜厚よりも薄く形成している。したがって、蛍光膜8を蛍光体粒子22aのみで形成した場合と比較すると、外光が蛍光体層22を透過し易くなっている。したがって、蛍光体層22の下層に無機顔料粒子24aを配置した場合であっても、十分に外光を吸収することができる。
【0126】
無機顔料粒子24aの構成材料としては、R、G、Bの三原色を構成する赤(R)は酸化鉄、硫セレン化カドミウムなど、緑(G)はTiO2−CoO−Al2O3−Li2O系の緑色顔料やフタロシアニングリーン系の顔料など、青(B)はコバルトブルー系やフタロシアニン系の顔料などを例示することができる。
【0127】
なお、無機顔料粒子24aを混合する構成は、反射率が高い蛍光膜8に適用して、特に有効であることから、図16では、一例として電子放出材層21に、電子放出材粒子21a、可視光反射材粒子23a、および無機顔料粒子24aが混合されている蛍光膜8を示している。しかし、前記実施の形態1で説明した図8に示す蛍光膜8において、電子放出材層21を、電子放出材粒子21aおよび無機顔料粒子24aで構成しても良いことは言うまでもない。
【0128】
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態1〜3に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0129】
例えば、前記実施の形態1では蛍光体粒子の例として、(Y、Gd)BO:Eu蛍光体、ZnSiO:Mn2+蛍光体、BAM(BaMgAl1017:Eu2+)蛍光体を例示した。しかし、蛍光体に用いる材料はこれに限定されない。例えば、赤色蛍光体として、(Y、Gd)BO:Eu、(Y、Gd):Eu、および(Y、Gd)(P、V)O:Euからなる群から選ばれたいずれか一種以上の蛍光体を含めることができる。また、緑色蛍光体としては、YBO:Tb、(Y、Gd)BO:Tb、BaMgAl1423:Mn、およびBaAl1219:Mnからなる群から選ばれたいずれか一種以上の蛍光体を含めることができる。また、青色蛍光体としては、CaMgSi:Eu、CaMgSi:Eu、BaMgSi:Eu、およびSrMgSi:Euからなる群から選ばれた一種以上の青蛍光体を含めることができる。
【0130】
また、電子放出材粒子を構成する材料として、前記実施の形態1では、本発明者らが、放電電圧低減効果の程度、あるいは製造工程中のハンドリングなどの観点から特に好ましいと考える材料について説明した。しかし、非駆動時の電子放出量が蛍光体よりも高い材料用いれば、放電電圧を低減することはできる。このような材料として、例えば、主な組成がLa、La、あるいは12CaO・7Alで表される材料を挙げることもできる。
【0131】
また、前記実施の形態1では、PDP装置の例として、PDPおよびPDPモジュールを例示して説明したが、例えば図5に示すPDPモジュール20を外部筐体でカバーしてPDPセットとしても良い。PDPモジュール20あるいは、PDPセットにおいて、放電電圧を低減すれば、回路部品や放熱部品の性能、あるいは部品点数を低減することができるので、製造コストを低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明は、PDP、PDPモジュール、あるいはPDPセットなどのプラズマディスプレイ装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0133】
1 前面基板
2 誘電体層
3 保護膜
4 維持電極(X電極)
4a、5a 透明電極
4b、5b バス電極
5 走査電極(Y電極)
6 表示電極対
7、7a、7b 隔壁
8、8b、8g、8r 蛍光膜
9 誘電体層
10 アドレス電極
11 背面基板
12 前面板
13 背面板
14 放電空間
15 PDP(プラズマディスプレイ装置)
20 PDPモジュール(プラズマディスプレイ装置)
21 電子放出材層
21a 電子放出材粒子
22 蛍光体層
22a 蛍光体粒子
23a 可視光反射材粒子
24a 無機顔料粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置される前面板および背面板の間に形成され、内部に放電ガスが充填された放電空間を有し、
前記背面板は、前記放電空間に接して配置された蛍光膜を有し、
前記蛍光膜は、紫外線に励起されることにより可視光を発光する蛍光体粒子からなる蛍光体層、および非駆動時の電子放出量が前記蛍光体粒子よりも多い電子放出材粒子からなる電子放出材層を有し、
前記電子放出材層は、前記蛍光体層に被覆されていることを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプラズマディスプレイ装置において、
前記前面板には、複数の表示電極対が形成され、
前記背面板には、前記複数の表示電極対と交差して配置される複数のアドレス電極が形成され、前記蛍光膜は、前記複数のアドレス電極よりも前記放電空間側に配置されることを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のプラズマディスプレイ装置において、
前記電子放出材層の膜厚は、前記蛍光体層の膜厚よりも厚いことを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【請求項4】
請求項3に記載のプラズマディスプレイ装置において、前記電子放出材粒子の粒径は、前記蛍光体粒子の粒径よりも大きいことを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【請求項5】
請求項4に記載のプラズマディスプレイ装置において、
前記電子放出材粒子を構成する材料には、2a族金属あるいは2b族金属のアルミン酸塩が含まれることを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【請求項6】
請求項5に記載のプラズマディスプレイ装置において、
前記電子放出材粒子は、組成がCaAlで表される材料からなることを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【請求項7】
請求項6に記載のプラズマディスプレイ装置において、
主たる結晶相の結晶系がmonoclinicで空間群P21であることを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【請求項8】
請求項1に記載のプラズマディスプレイ装置において、
前記電子放出材粒子を構成する材料には、アルカリ土類金属酸化物が含まれることを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【請求項9】
請求項8に記載のプラズマディスプレイ装置において、
前記電子放出材粒子は、組成がMgOで表される材料からなることを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【請求項10】
請求項9に記載のプラズマディスプレイ装置において、
前記電子放出材層は、前記蛍光膜の全重量に対し、20重量%以下の割合で含まれていることを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【請求項11】
請求項9に記載のプラズマディスプレイ装置において、
前記電子放出材粒子は、MgOからなる母材、および母材に添加されるマグネシウムと異なる添加元素により構成され、
前記添加元素は、シリコン(Si)、カルシウム(Ca)、セリウム(Ce)、ランタン(La)、サマリウム(Sm)、イットリウム(Y)、アルミニウム(Al)あるいはスカンジウム(Sc)の群より選ばれる1種あるいは複数種の元素であることを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【請求項12】
請求項1に記載のプラズマディスプレイ装置において、
前記蛍光体層の下層には、前記電子放出材粒子、および前記蛍光体粒子よりも可視光に対する反射率が高い可視光反射材粒子が配置されていることを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【請求項13】
請求項12に記載のプラズマディスプレイ装置において、
前記可視光反射材粒子は、前記電子放出材層において、前記電子放出材粒子と混合されていることを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【請求項14】
請求項13に記載のプラズマディスプレイ装置において、
前記電子放出材層の膜厚は、7μm以上であることを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【請求項15】
請求項14に記載のプラズマディスプレイ装置において、
前記電子放出材層の膜厚は、20μm以下であることを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【請求項16】
請求項1に記載のプラズマディスプレイ装置において、
前記蛍光体層の下層には、前記電子放出材粒子、および前記蛍光体粒子の発光色と同系の色調を有する顔料粒子が配置されていることを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【請求項17】
対向配置される前面板および背面板の間に形成され、内部に放電ガスが充填された放電空間を有し、
前記背面板は、前記放電空間に接して配置された蛍光膜を有し、
前記蛍光膜は、紫外線に励起されることにより可視光を発光する蛍光体粒子からなる蛍光体層、および非駆動時の電子放出量が前記蛍光体粒子よりも多い電子放出材粒子からなる電子放出材層を有し、
前記電子放出材層と前記放電空間の間には、1層以上の前記蛍光体層が配置されていることを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【請求項18】
複数の電極が形成された背面板の内面側に隔壁を形成し、前記背面板の内面側を複数の放電空間に区画する工程と、
前記隔壁で区画された前記放電空間内に、紫外線に励起されることにより可視光を発光する蛍光体粒子を含む蛍光膜を形成する工程と、
前面板と、前記背面板を対向配置した状態で、対向領域の周縁部を封着した後、前記放電空間内に放電ガスを封入する工程と、を有し、
前記蛍光膜を形成する工程には、
(a)非駆動時の電子放出量が前記蛍光体粒子よりも多い電子放出材粒子が第1有機化合物中に含まれる電子放出材ペーストを前記放電空間内に塗布する工程と、
(b)前記(a)工程の後、前記蛍光体粒子が第2有機化合物中に含まれる蛍光体ペーストを、前記電子放出材粒子が塗布された領域を被覆するように塗布する工程と、が含まれていることを特徴とするプラズマディスプレイ装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−251054(P2010−251054A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−98064(P2009−98064)
【出願日】平成21年4月14日(2009.4.14)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】