説明

プラズマディスプレイ装置及びその制御方法

【課題】 従来のプラズマディスプレイ装置は、矩形波によりリセットを行うと放電強度が強くなって背景発光が明るくなるため、鈍波によりリセットを行うようになって来ているが、より一層コントラストを向上させて画質の向上を図ることが必要とされている。
【解決手段】 鈍波リセットを用いたプラズマディスプレイ装置の駆動方法であって、映像信号の表示率に応じて前記鈍波リセットの到達電位の維持時間t1を制御するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイ装置およびその駆動方法に関し、特に、鈍波リセット(鈍波リセットパルス)を用いてプラズマディスプレイパネル(PDP:Plasma Display Panel)を駆動するプラズマディスプレイ装置およびその駆動方法に関する。
【0002】
近年、平面型の画像表示装置として面放電を行う交流型プラズマディスプレイ装置が実用化され、パーソナルコンピュータやワークステーション等の画像表示装置、平面型の壁掛けテレビジョン、或いは、広告や情報等を表示するための装置として広く使用されて来ている。そして、例えば、近年の三電極面放電型のプラズマディスプレイ装置においては、矩形波によりリセットを行うと放電強度が強くなって背景発光が明るくなるため、鈍波によりリセットを行って背景発光を小さくしてコントラストを改善するようになっている。
【0003】
しかしながら、このような鈍波リセットを用いたプラズマディスプレイ装置であっても充分とはいえず、より高画質の映像を提供するためには、さらに背景発光を低減してより一層のコントラストの改善が要望されている。
【背景技術】
【0004】
従来、平面型の画像表示装置として面放電を行うプラズマディスプレイ装置が実用化され、画面上の全画素を表示データに応じて同時に発光させるようになっている。面放電を行うプラズマディスプレイ装置は、前面ガラス基板の内面に1対の電極が形成され、内部に希ガスが封入された構造となっている。電極間に電圧を印加すると、電極面上に形成された誘電体層および保護層の表面で面放電が起こり、紫外線が発生する。背面ガラス基板の内面には、3原色である赤色(R)、緑色(G)および青色(B)の蛍光体が塗布されており、紫外線によりこれらの蛍光体を励起発光させることによってカラー表示を行うようになっている。
【0005】
図1は従来のプラズマディスプレイパネルの一例を模式的に示す図であり、三電極面放電AC型プラズマディスプレイパネルを示すものである。
【0006】
図1において、参照符号10はプラズマディスプレイパネル(PDP)、11は前面側の基板(前面基板)、12はX電極用の透明電極、13はX電極用のバス電極、14はY電極用の透明電極、15はY電極用のバス電極、16は背面側の基板(背面基板)、17はアドレス電極、18は隔壁(リブ)、そして、19R,19G,19Bは蛍光体層を示している。なお、実際のPDP10は、X電極およびY電極上に誘電体層並びに保護膜が設けられ、また、アドレス電極上に誘電体層が設けられている。さらに、X電極(12,13)およびY電極(14,15)が設けられた前面側の基板11とアドレス電極17が設けられた背面側の基板16との間には、ネオンとキセノンの混合ガスなどの放電ガスが充填され、X電極およびY電極とアドレス電極との交差部の放電空間が1つの放電セルを構成することになる。
【0007】
図2は従来のプラズマディスプレイ装置における階調駆動シーケンスの一例を示す図である。
【0008】
図2に示されるように、プラズマディスプレイ装置における階調駆動シーケンスは、1フィールド(フレーム)をそれぞれ所定の輝度の重みを有する複数のサブフィールド(サブフレーム)SF1〜SFnで構成し、各サブフィールドの組み合わせにより所望の階調表示を行うようになっている。具体的に、複数のサブフィールドとしては、例えば、2の巾乗の輝度重みを有する8つのサブフィールドSF1〜SF8(維持放電の回数の比が1:2:4:8:16:32:64:128)により256階調の表示を行うようになっている。
【0009】
http://www6.ipdl.inpit.go.jp/Tokujitu/tjitemdrw.ipdl?N0000=234&N0500=4E_N/;%3e7=;%3c??=///&N0001=26&N0552=9&N0553=000005図3は従来のプラズマディスプレイ装置の駆動方法を説明するための図である。
図2および図3に示されるように、各サブフィールド(例えば、SF1〜SF8)は、それぞれ表示領域における全てのセルの壁電荷(帯電状態)を均一にするリセット期間(初期化過程)TR、点灯すべきセルに壁電荷を形成して点灯セルを選択するアドレス期間(アドレス過程)TA、および、壁電荷が形成された点灯セルを輝度に応じた回数だけ放電(点灯)させるサステイン期間(表示過程)TSで構成され、各サブフィールドの表示ごとに輝度に応じてセルを点灯させ、例えば、8つのサブフィールド(SF1〜SF8)を表示することで1フィールドの表示を行うようになっている。
【0010】
すなわち、リセット期間TRにおいて、先ずパルスP1により全セルに放電を発生させて壁電荷を書き込み、次のパルスP2により全セルの壁電荷を消去する放電を発生させて帯電状態を零に調整する。ここで、リセット期間TRにおいて、全セルに放電を発生させるためのY電極に与えるパルスP1は、時間と共に緩やかに電圧が変化する鈍波(鈍波リセット)を使用して、背景発光を小さくしてコントラストを改善するようになっている。
【0011】
さらに、アドレス期間TAにおいて、Y電極(14,15)に対して順次スキャンパルスSCPを印加し、同時に、表示データに基づいて点灯させるべきセルに対してアドレスパルスADPを印加してアドレス放電を起こし、壁電荷を形成する。
【0012】
そして、サステイン期間TSにおいて、X電極およびY電極(表示電極)に維持放電パルス(表示放電パルス)STPを印加して、アドレス放電により壁電荷が形成されていたセルのみ点灯する。この維持放電パルスの回数により、セルの輝度が制御される。
【0013】
図4は従来のプラズマディスプレイ装置の一例の全体構成を概略的に示すブロック図であり、例えば、前述した図1に示すようなPDP10を使用したプラズマディスプレイ装置100の一例を概略的に示すものである。
【0014】
プラズマディスプレイ装置100は、PDP10と、該PDP10の各セルを駆動するためのX側ドライバ32,Y側ドライバ33およびアドレス側ドライバ34と、これら各ドライバを制御する制御回路31とを備えている。制御回路31には、TVチューナやコンピュータ等の外部装置からR,G,Bの3色の輝度レベルを示す多値画像データであるフィールドデータDf、および、各種の同期信号(クロック信号CLK,水平同期信号Hsync,垂直同期信号Vsync)が入力される。そして、制御回路31は、上記フィールドデータDfおよび各種の同期信号からそれぞれのドライバ32〜34に適した制御信号を出力して所定の画像表示を行うようになっている。
【0015】
Y側ドライバ33はY電極を制御するもので、スキャンドライバ(スキャンドライバLSI)331および共通ドライバ332を備え、また、X側ドライバ32はX電極を制御するもので、共通ドライバ320を備えている。
【0016】
ところで、従来、放電セルの間隔が狭い場合でも暗い画面での輝点等の発生を防止し、明るい画面でのリセット放電を確実に実行するために、一画面の発光画素比率を検出して制御パルス電源に入力し、発光画素比率に従って比率の低い画像ではサブフィールドリセット電圧を低く、また、比率の高い画像ではサブフィールドリセット電圧を高くするようにしたプラズマディスプレイ装置の駆動方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0017】
また、従来、ALIS方式のパネルの背景発光を低減し、暗室コントラストを向上するために、リセット期間に少なくとも書き込み放電工程および消去放電工程を設け、書き込み放電工程の電圧を少なくとも一部のサブフィールドで異ならせるようにしたプラズマディスプレイ装置の駆動方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2000−029431号公報
【特許文献2】特開2003−050562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
従来、プラズマディスプレイ装置のリセット波形としては、例えば、矩形波リセットを用いており、例えば、上述した特許文献1のように、表示画像によってリセット用電源電圧を変化させるものも提案されているが、リセット波形として時間に対して緩やかに電圧が変化する鈍波リセットを使用する場合、或いは、鈍波リセットの到達電位の維持時間についての考慮はなされていなかった。
【0020】
また、プラズマディスプレイ装置は、矩形波によりリセットを行うと放電強度が強くなって背景発光が明るくなるため、従来、例えば、鈍波によりリセットを行って背景発光を小さくしてコントラストを改善することも行われているが、より一層コントラストを向上させて画質の向上を図ることが必要とされている。
【0021】
本発明は、より一層コントラストを向上させて高画質の映像を提供することのできるプラズマディスプレイ装置およびその駆動方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の第1の形態によれば、鈍波リセットを用いたプラズマディスプレイ装置の駆動方法であって、映像信号の表示率に応じて前記鈍波リセットの到達電位の維持時間を制御することを特徴とするプラズマディスプレイ装置の駆動方法が提供される。
【0023】
本発明の第2の形態によれば、プラズマディスプレイパネルと、該プラズマディスプレイパネルに与えられる映像信号の表示率を検出する表示率検出回路と、前記プラズマディスプレイパネルを鈍波リセットによりリセットするリセット回路と、前記映像信号の表示率に応じて前記鈍波リセットの到達電位の維持時間を制御する到達維持時間設定回路と、を備えることを特徴とするプラズマディスプレイ装置が提供される。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、表示画像に応じたリセット到達電位の維持時間を制御することにより、コントラストが必要となる画面において、背景発光を低減できコントラストの改善を図ることが可能なプラズマディスプレイ装置およびその駆動方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】従来のプラズマディスプレイパネルの一例を模式的に示す図である。
【図2】従来のプラズマディスプレイ装置における階調駆動シーケンスの一例を示す図である。
【図3】従来のプラズマディスプレイ装置の一例における駆動波形を示す図である。
【図4】従来のプラズマディスプレイ装置の一例の全体構成を概略的に示すブロック図である。
【図5】本発明に係るプラズマディスプレイ装置の一実施例を概略的に示すブロック図である。
【図6】本発明に係るプラズマディスプレイ装置の一実施例における駆動波形を示す図である。
【図7】鈍波リセットの波形を概略的に示す図である。
【図8】本発明に係るプラズマディスプレイ装置における鈍波リセットの波形の例を概略的に示す図(その1)である。
【図9】本発明に係るプラズマディスプレイ装置における鈍波リセットの波形の例を概略的に示す図(その2)である。
【図10】本発明に係るプラズマディスプレイ装置におけるリセット回路の一例を概略的に示す図である。
【図11】本発明に係るプラズマディスプレイ装置におけるリセット回路の他の例を概略的に示す図である。
【図12】本発明に係るプラズマディスプレイ装置におけるリセット回路のさらに他の例を概略的に示す図である。
【図13】本発明に係るプラズマディスプレイ装置におけるリセット回路のまたさらに他の例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明に係るプラズマディスプレイ装置およびその駆動方法は、鈍波リセットにおける到達電位の維持時間を制御することにより、リセット時に電圧ドロップの生じる白表示画面などの高負荷時は維持時間を長くし、また、リセット時に電圧ドロップが生じない小負荷時は維持時間を短くすることで、コントラストが必要となる小負荷時において背景発光を抑えて画質を向上させるものである。
【実施例】
【0027】
以下、本発明に係るプラズマディスプレイ装置およびその駆動方法の実施例を、添付図面を参照して詳述する。
http://www6.ipdl.inpit.go.jp/Tokujitu/tjitemdrw.ipdl?N0000=234&N0500=4E_N/;%3e7=;%3c??=///&N0001=26&N0552=9&N0553=000007図5は本発明に係るプラズマディスプレイ装置の一実施例を概略的に示すブロック図である。
【0028】
図5において、参照符号1はプラズマディスプレイパネル(PDP)、2はX電極用のサステイン回路、3はY電極用のサステイン回路、4はA/D変換回路、5は表示率検出回路、6は到達維持時間設定回路、そして、7はリセット回路を示している。なお、X電極用のサステイン回路2およびY電極用のサステイン回路3は、図4における共通ドライバ332および320にそれぞれ対応し、また、A/D変換回路4および表示率検出回路5は、図4における制御回路31に設けられている。
【0029】
すなわち、本実施例のプラズマディスプレイ装置は、図4に示す従来のプラズマディスプレイ装置に対して、到達維持時間設定回路6を新たに設けたものに相当する。
【0030】
A/D変換回路4は、外部から供給される入力信号(フィールドデータDf)をアナログ/デジタル変換して映像信号を表示率検出回路5へ出力し、表示率検出回路5は、PDP1に与えられる映像信号の表示率を検出する。
【0031】
到達維持時間設定回路6は、表示率検出回路5で検出された映像信号の表示率に応じて鈍波リセットの到達電位の維持時間を設定し、リセット回路7を介して鈍波リセットの到達電位の維持時間の制御を行う。
【0032】
すなわち、到達維持時間設定回路6は、表示率が高く高負荷率の場合、リセット到達電位の維持時間を長くするような制御信号をサステイン回路3内のリセット回路7に入力し、また、表示率が低く低付加率の場合、リセット到達電位の維持時間を短くするような制御信号をサステイン回路3内のリセット回路7に入力する。
【0033】
リセット回路7は、到達維持時間設定回路6からの制御信号を受け取って、例えば、スイッチのオン時間を制御することにより映像信号の表示率に応じた鈍波リセットの到達電位の維持時間に制御する。
【0034】
図6は本発明に係るプラズマディスプレイ装置の一実施例における駆動波形を示す図であり、図7は鈍波リセットの波形を概略的に示す図である。本実施例のプラズマディスプレイ装置は、図3を参照して説明した従来のプラズマディスプレイ装置と同様に、鈍波リセットを用いて駆動するようになっている。
【0035】
すなわち、図6に示されるように、本実施例のプラズマディスプレイ装置の駆動波形は、リセット期間TR、アドレス期間TAおよびサステイン期間TSで構成されている。リセット期間TRは、それまでの壁電荷の状態を全てのセルで同じに状態にするための期間であり、放電を行っていたセルが多いほど(表示率が高いほど)、リセットの電位が下がる可能性がある。そのため、図7に示されるように、鈍波リセット(リセットパルスP1)の波形は、リセット電位に到達した後にある一定の維持時間t1が必要になる。
【0036】
本発明に係るプラズマディスプレイ装置の駆動方法は、図7に示すリセットパルスP1における維持時間(鈍波リセットの到達電位の維持時間)t1を映像信号の表示率に応じて変化させるものである。
【0037】
すなわち、リセット放電を多くしなければならない高表示率の場合は維持時間t1を長くして、電圧ドロップによるリセット不足が起こらないようにし、また、リセット放電が少ない低い表示率の場合は、維持時間を短くすることで、リセット放電による背景発光を低減させて高コントラストを実現するようになっている。なお、上記鈍波リセットの到達電位の維持時間の制御、すなわち、鈍波リセットの到達電位または傾きを変化させて該鈍波リセットの到達電位の維持時間を制御するのは、例えば、サブフィールド(SF)ごとに行うのが好ましい。
【0038】
図8は本発明に係るプラズマディスプレイ装置における鈍波リセットの波形の例を概略的に示す図(その1)であり、図8(a)は低表示率の場合の波形を示し、また、図8(b)は高表示率の場合の波形を示す。
【0039】
まず、図8(a)に示されるように、映像信号の表示率が低いときは、鈍波リセットの到達電位をV1からV2へ下げるようにして該鈍波リセットの到達電位の維持時間をt1からt2へと短くする。これにより、映像信号の表示率が低いときには、背景発光を抑えて高いコントラストの画像が得られることになる。
【0040】
また、図8(b)に示されるように、映像信号の表示率が高いときは、鈍波リセットの到達電位をV1からV3へ上げるようにして該鈍波リセットの到達電位の維持時間をt1からt3へと長くする。これにより、映像信号の表示率が高いときでも、安定的なリセット動作を行うことができる。
【0041】
ただし、鈍波リセットの到達電位を下げたことで電圧ドロップによるリセット不足が起こらないようにするために、維持時間を長くする場合もある。また、映像信号の表示率が高いときは、鈍波リセットの到達電位を上げ、リセットが安定しているならば、その分維持時間を短くする場合もある。
【0042】
図9は本発明に係るプラズマディスプレイ装置における鈍波リセットの波形の例を概略的に示す図(その2)であり、図9(a)は低表示率の場合の波形を示し、また、図9(b)は高表示率の場合の波形を示す。
【0043】
まず、図9(a)に示されるように、映像信号の表示率が低いときは、鈍波リセットの傾きをSL1からSL2へ緩やかにして該鈍波リセットの到達電位の維持時間をt1からt2へと短くする。これにより、映像信号の表示率が低いときには、背景発光を抑えて高いコントラストの画像が得られることになる。
【0044】
また、図9(b)に示されるように、映像信号の表示率が高いときは、鈍波リセットの傾きをSL1からSL3へ急峻にして該鈍波リセットの到達電位の維持時間をt1からt3へと長くする。これにより、映像信号の表示率が高いときでも、安定的なリセット動作を行うことができる。
【0045】
図10は本発明に係るプラズマディスプレイ装置におけるリセット回路の一例を概略的に示す図である。図7において、参照符号71は定電流源、72はスイッチ素子、そして、Vrはリセット電圧を示している。
【0046】
図10に示されるように、本例のリセット回路7は、定電流源71およびスイッチ素子72を備え、定電流源71の一定の電流で容量(C)であるパネル1を充電することで、一定の傾きで電圧を上昇させるようになっている。そして、到達維持時間設定回路6からの制御信号CSにより定電流源71の電流値を変えることで鈍波リセットの傾きを変えることができ、また、スイッチ素子72のオン時間を変えることで鈍波リセットの到達電位の維持時間を制御することができるようになっている。
【0047】
図11は本発明に係るプラズマディスプレイ装置におけるリセット回路の他の例を概略的に示す図である。
【0048】
図11に示されるように、本例のリセット回路7は、トランジスタ711、ベース電流制御回路712およびスイッチ素子72を備え、到達維持時間設定回路6からの制御信号CSはベース電流制御回路712に入力されている。そして、このベース電流制御回路712によりトランジスタ711のベース電流を制御することで鈍波リセットの傾きを制御するようになっている。
【0049】
すなわち、ベース電流制御回路712は、トランジスタ711のコレクタ電流を検出して制御することにより鈍波リセットの傾きを2段階または3段階の異なる傾きにする。そして、トランジスタ711のベース電流の制御は、例えば、トランジスタ711の制御パルスのオン・オフ期間(デューティ)を変えることで制御可能である。また、上述したように、スイッチ素子72のオン時間を変えることで鈍波リセットの到達電位の維持時間を制御することができる。
【0050】
図12は本発明に係るプラズマディスプレイ装置におけるリセット回路のさらに他の例を概略的に示す図である。
【0051】
図12に示されるように、本例のリセット回路7は、図10に示すリセット回路における定電流源71の代わりに可変抵抗素子73を設け、この可変抵抗素子73の抵抗値を到達維持時間設定回路6からの制御信号CSによって制御し、すなわち、映像信号の表示率によって制御することで鈍波リセットの波形形状を変えるようになっている。ここで、鈍波リセットの波形形状を変えるCRのR(抵抗)はもちろん可変抵抗素子73であるが、C(容量)はPDP1の放電セルである。そして、到達維持時間設定回路6からの制御信号CSによって可変抵抗素子73の抵抗値を制御することで鈍波リセットの波形形状を2つ以上持たせることができる。
【0052】
図13は本発明に係るプラズマディスプレイ装置におけるリセット回路のまたさらに他の例を概略的に示す図である。
【0053】
図13に示されるように、本例のリセット回路7は、図12に示すリセット回路における可変抵抗素子73の変わりに3つの抵抗素子およびスイッチ素子の組731,741;732,742;733,743を設けるようになっている。ここで、抵抗素子731,732,733の抵抗値R731,R732,R733は全て同一の値(R731:R732:R733=1:1:1)としてもよいが、例えば、2のべき乗の比率となるような値(R731:R732:R733=1:2:4)としてもよい。
【0054】
そして、スイッチ素子741,742,743を到達維持時間設定回路6からの制御信号CSによって制御することで鈍波リセットの傾きを変化させることができる。具体的に、例えば、抵抗素子731〜733の抵抗値R731:R732:R733=1:1:1の場合、2つのスイッチ素子741および742を同時にオンすることで3つのスイッチ素子741〜743を同時にオンしたときよりも緩やかな鈍波リセットの傾きを生成することがで、また、1つのスイッチ素子741だけをオンすればより一層緩やかな鈍波リセットの傾きを生成することができる。
【0055】
さらに、例えば、スイッチ素子741〜743のオフタイミングをずらすことで傾きが2段階または3段階となる鈍波リセットの波形を得ることも可能である。なお、鈍波リセットの到達電位の維持時間は、スイッチ素子72のオン時間を変えることで制御することができる。
【0056】
以上の説明では、本発明に係るプラズマディスプレイ装置として三電極面放電型のプラズマディスプレイ装置を説明したが、本発明の適用は鈍波リセットを用いた他の様々なプラズマディスプレイ装置に対して適用することができる。
【0057】
(付記1) 鈍波リセットを用いたプラズマディスプレイ装置の駆動方法であって、映像信号の表示率に応じて前記鈍波リセットの到達電位の維持時間を制御することを特徴とするプラズマディスプレイ装置の駆動方法。
【0058】
(付記2) 付記1に記載のプラズマディスプレイ装置の駆動方法において、前記映像信号の表示率が低いときは前記鈍波リセットの到達電位を下げるようにして該鈍波リセットの到達電位の維持時間を短くすることを特徴とするプラズマディスプレイ装置の駆動方法。
【0059】
(付記3) 付記1に記載のプラズマディスプレイ装置の駆動方法において、前記映像信号の表示率が高いときは前記鈍波リセットの到達電位を上げるようにして該鈍波リセットの到達電位の維持時間を長くすることを特徴とするプラズマディスプレイ装置の駆動方法。
【0060】
(付記4) 付記1に記載のプラズマディスプレイ装置の駆動方法において、前記映像信号の表示率が低いときは前記鈍波リセットの傾きを緩やかにして該鈍波リセットの到達電位の維持時間を短くすることを特徴とするプラズマディスプレイ装置の駆動方法。
【0061】
(付記5) 付記1に記載のプラズマディスプレイ装置の駆動方法において、前記映像信号の表示率が高いときは前記鈍波リセットの傾きを急峻にして該鈍波リセットの到達電位の維持時間を長くすることを特徴とするプラズマディスプレイ装置の駆動方法。
【0062】
(付記6) 付記1に記載のプラズマディスプレイ装置の駆動方法において、サブフィールドごとに前記鈍波リセットの到達電位の維持時間を制御することを特徴とするプラズマディスプレイ装置の駆動方法。
【0063】
(付記7) 付記6に記載のプラズマディスプレイ装置の駆動方法において、前記サブフィールドごとに前記鈍波リセットの到達電位または傾きを変化させて該鈍波リセットの到達電位の維持時間を制御することを特徴とするプラズマディスプレイ装置の駆動方法。
【0064】
(付記8) 付記1に記載のプラズマディスプレイ装置の駆動方法において、前記鈍波リセットの波形形状をCRの時定数によって変化させて該鈍波リセットの到達電位の維持時間を制御することを特徴とするプラズマディスプレイ装置の駆動方法。
【0065】
(付記9) 付記8に記載のプラズマディスプレイ装置の駆動方法において、前記CRによる鈍波リセットの波形形状を少なくとも2つ備えたことを特徴とするプラズマディスプレイ装置の駆動方法。
【0066】
(付記10) 付記9に記載のプラズマディスプレイ装置の駆動方法において、前記CRによる鈍波リセットの波形形状は2つであることを特徴とするプラズマディスプレイ装置の駆動方法。
【0067】
(付記11) プラズマディスプレイパネルと、
該プラズマディスプレイパネルに与えられる映像信号の表示率を検出する表示率検出回路と、
前記プラズマディスプレイパネルを鈍波リセットによりリセットするリセット回路と、
前記映像信号の表示率に応じて前記鈍波リセットの到達電位の維持時間を制御する到達維持時間設定回路と、を備え、前記鈍波リセットの到達電位の維持時間を制御することを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【0068】
(付記12) 付記11に記載のプラズマディスプレイ装置において、前記到達維持時間設定回路は、制御信号を前記リセット回路に供給して、前記映像信号の表示率が低いときは前記鈍波リセットの到達電位を下げるようにして該鈍波リセットの到達電位の維持時間を短くすることを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【0069】
(付記13) 付記11に記載のプラズマディスプレイ装置において、前記到達維持時間設定回路は、制御信号を前記リセット回路に供給して、前記映像信号の表示率が高いときは前記鈍波リセットの到達電位を上げるようにして該鈍波リセットの到達電位の維持時間を長くすることを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【0070】
(付記14) 付記11に記載のプラズマディスプレイ装置において、前記到達維持時間設定回路は、制御信号を前記リセット回路に供給して、前記映像信号の表示率が低いときは前記鈍波リセットの傾きを緩やかにして該鈍波リセットの到達電位の維持時間を短くすることを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【0071】
(付記15) 付記11に記載のプラズマディスプレイ装置において、前記到達維持時間設定回路は、制御信号を前記リセット回路に供給して、前記映像信号の表示率が高いときは前記鈍波リセットの傾きを急峻にして該鈍波リセットの到達電位の維持時間を長くすることを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【0072】
(付記16) 付記1に記載のプラズマディスプレイ装置において、前記到達維持時間設定回路は、サブフィールドごとに前記鈍波リセットの到達電位の維持時間を制御することを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【0073】
(付記17) 付記16に記載のプラズマディスプレイ装置において、前記到達維持時間設定回路は、前記サブフィールドごとに前記鈍波リセットの到達電位または傾きを変化させて該鈍波リセットの到達電位の維持時間を制御することを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【0074】
(付記18) 付記11に記載のプラズマディスプレイ装置において、前記到達維持時間設定回路は、前記鈍波リセットの波形形状をCRの時定数によって変化させて該鈍波リセットの到達電位の維持時間を制御することを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【0075】
(付記19) 付記18に記載のプラズマディスプレイ装置において、前記到達維持時間設定回路は、前記CRによる鈍波リセットの波形形状を少なくとも2つ備えたことを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【0076】
(付記20) 付記19に記載のプラズマディスプレイ装置において、前記CRによる鈍波リセットの波形形状は2つであることを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【0077】
(付記21) 付記11に記載のプラズマディスプレイ装置において、前記リセット回路は、前記制御信号により制御される電流源およびスイッチ素子を備えることを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【0078】
(付記22) 付記11に記載のプラズマディスプレイ装置において、前記リセット回路は、前記制御信号により制御される可変抵抗素子およびスイッチ素子を備えることを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【0079】
(付記23) 付記11に記載のプラズマディスプレイ装置において、前記リセット回路は、前記制御信号により制御される複数の抵抗素子およびスイッチ素子の組、並びに、スイッチ素子を備えることを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、鈍波リセットを用いた三電極面放電型のプラズマディスプレイ装置を初めとする様々なプラズマディスプレイ装置に適用することができ、プラズマディスプレイ装置は、例えば、パーソナルコンピュータやワークステーション等のディスプレイ装置、平面型の壁掛けテレビジョン、或いは、広告や情報等を表示するための画像表示装置として利用される。
【符号の説明】
【0081】
1,10 プラズマディスプレイパネル(PDP)
2 X電極用のサステイン回路
3 Y電極用のサステイン回路
4 A/D変換回路
5 表示率検出回路
6 到達維持時間設定回路
7 リセット回路
11 前面側の基板(前面基板)
12 X電極用の透明電極
13 X電極用のバス電極
14 Y電極用の透明電極
15 Y電極用のバス電極
16 背面側の基板(背面基板)
17 アドレス電極
18 隔壁(リブ)
19R,19G,19B 蛍光体層
31 制御回路
32 X側ドライバ
33 Y側ドライバ
34 アドレス側ドライバ
100 プラズマディスプレイ装置
320 X側ドライバの共通ドライバ
331 Y側ドライバのスキャンドライバ
332 Y側ドライバの共通ドライバ
TA アドレス期間
TR リセット期間
TS サステイン期間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鈍波リセットを用いたプラズマディスプレイ装置の駆動方法であって、映像信号の表示率に応じて前記鈍波リセットの到達電位の維持時間を制御することを特徴とするプラズマディスプレイ装置の駆動方法。
【請求項2】
請求項1に記載のプラズマディスプレイ装置の駆動方法において、前記映像信号の表示率が低いときは前記鈍波リセットの到達電位を下げるようにして該鈍波リセットの到達電位の維持時間を短くすることを特徴とするプラズマディスプレイ装置の駆動方法。
【請求項3】
請求項1に記載のプラズマディスプレイ装置の駆動方法において、前記映像信号の表示率が高いときは前記鈍波リセットの到達電位を上げるようにして該鈍波リセットの到達電位の維持時間を長くすることを特徴とするプラズマディスプレイ装置の駆動方法。
【請求項4】
請求項1に記載のプラズマディスプレイ装置の駆動方法において、前記映像信号の表示率が低いときは前記鈍波リセットの傾きを緩やかにして該鈍波リセットの到達電位の維持時間を短くすることを特徴とするプラズマディスプレイ装置の駆動方法。
【請求項5】
請求項1に記載のプラズマディスプレイ装置の駆動方法において、前記映像信号の表示率が高いときは前記鈍波リセットの傾きを急峻にして該鈍波リセットの到達電位の維持時間を長くすることを特徴とするプラズマディスプレイ装置の駆動方法。
【請求項6】
請求項1に記載のプラズマディスプレイ装置の駆動方法において、サブフィールドごとに前記鈍波リセットの到達電位の維持時間を制御することを特徴とするプラズマディスプレイ装置の駆動方法。
【請求項7】
請求項1に記載のプラズマディスプレイ装置の駆動方法において、前記鈍波リセットの波形形状をCRの時定数によって変化させて該鈍波リセットの到達電位の維持時間を制御することを特徴とするプラズマディスプレイ装置の駆動方法。
【請求項8】
プラズマディスプレイパネルと、
該プラズマディスプレイパネルに与えられる映像信号の表示率を検出する表示率検出回路と、
前記プラズマディスプレイパネルを鈍波リセットによりリセットするリセット回路と、
前記映像信号の表示率に応じて前記鈍波リセットの到達電位の維持時間を制御する到達維持時間設定回路と、を備え、前記鈍波リセットの到達電位の維持時間を制御することを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【請求項9】
請求項8に記載のプラズマディスプレイ装置において、前記リセット回路は、前記制御信号により制御される電流源およびスイッチ素子を備えることを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【請求項10】
請求項8に記載のプラズマディスプレイ装置において、前記リセット回路は、前記制御信号により制御される可変抵抗素子およびスイッチ素子を備えることを特徴とするプラズマディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−152400(P2010−152400A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74077(P2010−74077)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【分割の表示】特願2005−54459(P2005−54459)の分割
【原出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(599132708)日立プラズマディスプレイ株式会社 (328)
【Fターム(参考)】