説明

プラズマ切断監視装置

【課題】 本発明は、経時的に現在と最前とのプラズマアークの外径直径や切断溝幅を比較して切断状況を監視し得るプラズマ切断監視装置を提供することを可能にすることを目的としている。
【解決手段】 CMOSカメラ8により撮像された撮像画像情報からプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとを算出する画像解析部19と、画像解析部19により算出された現在と、記憶部22に記憶された最前とのそれぞれのプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとを比較する比較部20と、該比較部20により比較される、現在と、最前のとのそれぞれの実際の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとのそれぞれの差が、予め設定された許容範囲から何れかが外れた場合にプラズマ切断装置2の切断動作に異常が生じたと判断する切断状態判定部14とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ切断トーチを用いて被切断材の一部を溶融させると共に排除して切断するプラズマ切断装置の切断状態を監視するプラズマ切断監視装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から鋼板や鋼管或いはステンレス鋼板,非鉄金属板等を被切断材とし、これらの被切断材に対してプラズマ切断トーチを利用して切断することが行われている。
【0003】
プラズマ切断トーチを搭載する切断装置としては、数値制御(NC)装置によってプラズマ切断トーチの移動経路を制御するNC切断装置、図面に描かれた図形を光学的に倣ってプラズマ切断トーチの移動経路を制御する倣い切断装置、切断すべき線に沿って予め配置されたレール上を走行する半自動切断装置等が提供されており、夫々被切断材の形状や切断すべき製品の形状等の条件に応じて最適なものが選択される。
【0004】
上記切断装置とプラズマ切断トーチを用いて被切断材を切断する場合、電極の消耗等により切断の実行中にプラズマアークのエネルギー分布が不均一となり切断幅が変化したり、非切断状態になることがある。
【0005】
従来では、非切断状態になった時には、目視により切断装置を停止して復旧を行なっており、切断幅の変化が目視により判別出来るものは切断装置を停止して復旧を行なうが、通常、プラズマアークは直接、目視出来ないほどの閃光を放ち、プラズマ切断トーチの先端と被切断材との間の隙間も比較的小さいため、遠く目で確認できる環境にない。そのような環境では製品が出来上がってしまうまで判別出来ない場合が多かった。
【0006】
そこで、特許文献1ではCCD(Charge Coupled Device;電荷結合素子)カメラにより切断溝の切断幅を撮影して監視を行ったり、特許文献2ではCCDカメラによりプラズマトーチと被切断材との間のアークを観察してアーク長さやアークの曲がりや径寸法(幅寸法)等を監視したり、特許文献3では光学カメラで切断部位を撮影して監視し、切断状況を判断することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−331383号公報
【特許文献2】特開平11−156551号公報
【特許文献3】特開平11−129083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前述の特許文献1の技術では、切断トーチの進行方向の変化に追従してCCDカメラを旋回させる構成であるため、切断溝を切断トーチの真後側から撮影することが可能であるものの、複雑な機構を有する旋回装置が必要となるばかりか、切断トーチの進行方向に対応する所定の角度までCCDカメラを旋回するまでの時間は精確な切断溝幅が確認できず、切断トーチの進行方向の変化と、これに追従するCCDカメラの旋回角度の変化とを考慮して精確に切断溝幅を計算するためには煩雑な計算が必要になるといった問題があった。
【0009】
特許文献2の技術では、プラズマアークの変化は確認出来るが、切断溝幅を直接監視するものでもなかったため切断溝幅の変化が直接確認出来るものではなかった。また、プラズマトーチと被切断材との間のアークのみを観察する構成であるため、切断トーチの進行方向の変化に追従してCCDカメラの撮像方向を変化させる構成を有するものではなかった。
【0010】
特許文献3の技術では、マクロカメラ、ミクロカメラが切断トーチに固定されており、切断トーチの進行方向の変化に追従してカメラの撮像方向を変化させる構成を有するものではなかった。
【0011】
また、特許文献1〜3では、経時的に現在と最前とのプラズマアークの外径直径や切断溝幅を比較するものでもなく、プラズマアークの外径直径と切断溝幅との差やプラズマアークの軸芯と切断溝の中心との位置関係に基づいて切断状況を監視し得るものでもなかった。
【0012】
本発明は前記課題を解決するものであり、その目的とするところは、経時的に現在と最前とのプラズマアークの外径直径や切断溝幅を比較したり、プラズマアークの外径直径と切断溝幅との差やプラズマアークの軸芯と切断溝の中心との位置関係に基づいて切断状況を監視し得るプラズマ切断監視装置を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するための本発明に係るプラズマ切断監視装置の第1の構成は、プラズマ切断トーチを用いて被切断材の一部を溶融させると共に排除して切断するプラズマ切断装置の切断状態を監視するプラズマ切断監視装置であって、切断中の前記プラズマ切断トーチの先端から前記被切断材に向かって出射されるプラズマアークと、該プラズマアーク近傍の切断溝と、を撮像する撮像手段と、前記撮像手段により撮像された撮像画像情報から前記プラズマアークの外径直径と、前記切断溝の溝幅と、を算出する算出手段と、前記撮像手段により撮像された撮像画像情報から前記算出手段により算出された前記プラズマアークの外径直径情報と、前記切断溝の溝幅情報と、を時系列順に記憶する記憶手段と、前記算出手段により算出された現在の実際の切断時の前記プラズマアークの外径直径と、前記切断溝の溝幅と、前記記憶手段に記憶された最前の実際の切断時の前記プラズマアークの外径直径と、前記切断溝の溝幅とを比較する比較手段と、前記比較手段により比較される、現在の実際の切断時の前記プラズマアークの外径直径と、前記切断溝の溝幅と、最前の実際の切断時の前記プラズマアークの外径直径と、前記切断溝の溝幅とのそれぞれの差が、予め設定された許容範囲から何れかが外れた場合に前記プラズマ切断装置の切断動作に異常が生じたと判断する判断手段とを有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係るプラズマ切断監視装置の第2の構成は、前記第1の構成において、前記記憶手段には、前記被切断材の切断条件に対応して予め設定された前記プラズマアークの外径直径と、前記切断溝の溝幅とのそれぞれの許容値情報が記憶され、前記比較手段は、前記算出手段により算出された現在の実際の切断時の前記プラズマアークの外径直径と、前記切断溝の溝幅と、前記記憶手段に記憶された前記被切断材の切断条件に対応して予め設定された前記プラズマアークの外径直径と、前記切断溝の溝幅とのそれぞれの許容値とを比較し、前記比較手段により比較される、現在の実際の切断時の前記プラズマアークの外径直径と、前記切断溝の溝幅とが、前記被切断材の切断条件に対応して予め設定された前記プラズマアークの外径直径と、前記切断溝の溝幅とのそれぞれの許容範囲から何れかが外れた場合に、前記判断手段は、前記プラズマ切断装置の切断動作に異常が生じたと判断することを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係るプラズマ切断監視装置の第3の構成は、プラズマ切断トーチを用いて被切断材の一部を溶融させると共に排除して切断するプラズマ切断装置の切断状態を監視するプラズマ切断監視装置であって、切断中の前記プラズマ切断トーチの先端から前記被切断材に向かって出射されるプラズマアークと、該プラズマアーク近傍の切断溝と、を撮像する撮像手段と、前記撮像手段により撮像された撮像画像情報から前記プラズマアークの外径直径と、前記切断溝の溝幅と、を算出し、該プラズマアークの外径直径と、前記切断溝の溝幅との差の2分の1の値を算出し、前記プラズマアークの外周と、該外周に近接する側の前記切断溝の溝縁との離間間隔を算出し、前記プラズマアークの外径直径と、前記切断溝の溝幅との差の2分の1の値と、前記プラズマアークの外周と、該外周に近接する側の前記切断溝の溝縁との離間間隔との差を算出する算出手段と、前記撮像手段により撮像された撮像画像情報から前記算出手段により算出された前記プラズマアークの外径直径と、前記切断溝の溝幅との差の2分の1の値と、前記プラズマアークの外周と、該外周に近接する側の前記切断溝の溝縁との離間間隔との差情報を時系列順に記憶する記憶手段と、前記算出手段により算出された現在の実際の切断時の前記プラズマアークの外径直径と、前記切断溝の溝幅との差の2分の1の値と、前記プラズマアークの外周と、該外周に近接する側の前記切断溝の溝縁との離間間隔との差と、前記記憶手段に記憶された最前の実際の切断時の前記プラズマアークの外径直径と、前記切断溝の溝幅との差の2分の1の値と、前記プラズマアークの外周と、該外周に近接する側の前記切断溝の溝縁との離間間隔との差とを比較する比較手段と、前記比較手段により比較される、現在の実際の切断時の前記プラズマアークの外径直径と、前記切断溝の溝幅との差の2分の1の値と、前記プラズマアークの外周と、該外周に近接する側の前記切断溝の溝縁との離間間隔との差と、最前の実際の切断時の前記プラズマアークの外径直径と、前記切断溝の溝幅との差の2分の1の値と、前記プラズマアークの外周と、該外周に近接する側の前記切断溝の溝縁との離間間隔との差が予め設定された許容範囲から外れた場合に前記プラズマ切断装置の切断動作に異常が生じたと判断する判断手段とを有することを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係るプラズマ切断監視装置の第4の構成は、前記第3の構成において、前記記憶手段には、前記被切断材の切断条件に対応して予め設定された前記プラズマアークの外径直径と、前記切断溝の溝幅との差の2分の1の値と、前記プラズマアークの外周と、該外周に近接する側の前記切断溝の溝縁との離間間隔との差の許容値情報が記憶され、前記比較手段は、前記算出手段により算出された実際の切断時の前記プラズマアークの外径直径と、前記切断溝の溝幅との差の2分の1の値と、前記プラズマアークの外周と、該外周に近接する側の前記切断溝の溝縁との離間間隔との差と、前記記憶手段に記憶された前記被切断材の切断条件に対応して予め設定された前記プラズマアークの外径直径と、前記切断溝の溝幅との差の2分の1の値と、前記プラズマアークの外周と、該外周に近接する側の前記切断溝の溝縁との離間間隔との差の許容値とを比較し、前記比較手段により比較される、実際の切断時の前記プラズマアークの外径直径と、前記切断溝の溝幅との差の2分の1の値と、前記プラズマアークの外周と、該外周に近接する側の前記切断溝の溝縁との離間間隔との差が、前記被切断材の切断条件に対応して予め設定された前記プラズマアークの外径直径と、前記切断溝の溝幅との差の2分の1の値と、前記プラズマアークの外周と、該外周に近接する側の前記切断溝の溝縁との離間間隔との差の許容範囲から外れた場合に、前記判断手段は、前記プラズマ切断装置の切断動作に異常が生じたと判断することを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係るプラズマ切断監視装置の第5の構成は、前記第1〜第4の構成において、前記撮像手段は、前記プラズマ切断トーチの近傍で前記プラズマ切断装置に固定され、前記算出手段は、前記プラズマ切断トーチの切断進行方向と、前記プラズマアークと前記撮像手段とを結ぶ直線方向とのずれの角度をθ、前記撮像手段により撮像した切断溝の溝幅をWi、実際の切断溝の溝幅をWaとした場合に、Wa=Wi×|cosθ|の計算式により、前記撮像手段により撮像した切断溝の溝幅Wiを、実際の切断溝の溝幅Waに補正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るプラズマ切断監視装置の第1の構成によれば、撮像手段により撮像された撮像画像情報に基づいて、現在の実際の切断時のプラズマアークの外径直径と、切断溝の溝幅と、最前の実際の切断時のプラズマアークの外径直径と、切断溝の溝幅とのそれぞれの差が、予め設定された許容範囲から何れかが外れた場合にプラズマ切断装置の切断動作に異常が生じたと判断することが出来る。これにより、標準仕様外で使用する場合であっても正常に切断した最前の切断時のプラズマアークの外径直径と、切断溝の溝幅を基準として監視が出来る。
【0019】
また、プラズマ切断トーチの近傍でプラズマ切断装置に1台の撮像手段が固定された場合には、該プラズマ切断トーチの進行方向が、該プラズマ切断トーチと撮像手段とを結ぶ直線と直交する方向に変化した場合、切断溝の溝幅が撮像できなくなるが、その場合はプラズマアークの外径直径を監視することで、プラズマ切断トーチの進行方向に関わらず連続的に監視ができる。
【0020】
本発明に係るプラズマ切断監視装置の第2の構成によれば、撮像手段により撮像された撮像画像情報に基づいて、現在の実際の切断時のプラズマアークの外径直径と、切断溝の溝幅とが、被切断材の切断条件に対応して予め設定されたプラズマアークの外径直径と、切断溝の溝幅とのそれぞれの許容範囲から何れかが外れた場合にプラズマ切断装置の切断動作に異常が生じたと判断することが出来る。これにより、最前の切断時のプラズマアークの外径直径と、切断溝の溝幅を基準として現在の実際の切断時のプラズマアークの外径直径と、切断溝の溝幅とを監視するだけでは、徐々に基準がずれていく可能性があるが、被切断材の切断条件に対応して予め設定されたプラズマアークの外径直径と、切断溝の溝幅とを基準にして現在の実際の切断時のプラズマアークの外径直径と、切断溝の溝幅とを監視できる。
【0021】
本発明に係るプラズマ切断監視装置の第3の構成によれば、撮像手段により撮像された撮像画像情報に基づいて、現在の実際の切断時のプラズマアークの外径直径と、切断溝の溝幅との差の2分の1の値と、該プラズマアークの外周と、該外周に近接する側の切断溝の溝縁との離間間隔との差と、最前の実際の切断時のプラズマアークの外径直径と、切断溝の溝幅との差の2分の1の値と、該プラズマアークの外周と、該外周に近接する側の切断溝の溝縁との離間間隔との差が、予め設定された許容範囲から何れかが外れた場合にプラズマ切断装置の切断動作に異常が生じたと判断することが出来る。これにより、標準仕様外で使用する場合であっても正常に切断した最前の切断時のプラズマアークの外径直径と、切断溝の溝幅との差の2分の1の値と、該プラズマアークの外周と、該外周に近接する側の切断溝の溝縁との離間間隔との差を基準として監視が出来る。
【0022】
本発明に係るプラズマ切断監視装置の第4の構成によれば、撮像手段により撮像された撮像画像情報に基づいて、現在の実際の切断時のプラズマアークの外径直径と、切断溝の溝幅との差の2分の1の値と、該プラズマアークの外周と、該外周に近接する側の切断溝の溝縁との離間間隔との差が、被切断材の切断条件に対応して予め設定されたプラズマアークの外径直径と、切断溝の溝幅との差の2分の1の値と、該プラズマアークの外周と、該外周に近接する側の切断溝の溝縁との離間間隔との差の許容範囲から外れた場合にプラズマ切断装置の切断動作に異常が生じたと判断することが出来る。これにより、最前の切断時のプラズマアークの外径直径と、切断溝の溝幅との差の2分の1の値と、該プラズマアークの外周と、該外周に近接する側の切断溝の溝縁との離間間隔との差を基準として現在の実際の切断時のプラズマアークの外径直径と、切断溝の溝幅との差の2分の1の値と、該プラズマアークの外周と、該外周に近接する側の切断溝の溝縁との離間間隔との差を監視するだけでは、徐々に基準がずれていく可能性があるが、被切断材の切断条件に対応して予め設定されたプラズマアークの外径直径と、切断溝の溝幅との差の2分の1の値と、該プラズマアークの外周と、該外周に近接する側の切断溝の溝縁との離間間隔との差を基準にして現在の実際の切断時のプラズマアークの外径直径と、切断溝の溝幅との差の2分の1の値と、該プラズマアークの外周と、該外周に近接する側の切断溝の溝縁との離間間隔との差を監視できる。
【0023】
本発明に係るプラズマ切断監視装置の第5の構成によれば、プラズマ切断トーチの進行方向の変化や撮像手段の光軸角度に対応して撮像手段により撮像した切断溝の溝幅Wiを、実際の切断溝の溝幅Waに補正することが出来、プラズマ切断装置に1台の撮像手段が固定して設けられた場合であっても、該プラズマ切断トーチの進行方向が、該プラズマ切断トーチと撮像手段とを結ぶ直線と直交する方向に変化して切断溝の溝幅が撮像できなくなる場合を除けば、撮像手段により撮像した切断溝の溝幅Wiに基づいて簡単な計算により実際の切断溝の溝幅Waを正確に求めることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係るプラズマ切断監視装置の構成を示す斜視説明図である。
【図2】撮像手段によりプラズマアークと切断溝とを同時に撮像する様子を示す斜視説明図である。
【図3】本発明に係るプラズマ切断監視装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【図4】(a),(b)はプラズマ切断トーチの進行方向の変化に対応して撮像手段により撮像した切断溝の溝幅Wiを、水平方向における実際の切断溝の溝幅Waに補正する様子を説明する図である。
【図5】(a)は撮像手段により撮像したプラズマアークと切断溝との撮像画像の一例を示す図、(b)は(a)の撮像画像を説明する線画図である。
【図6】(a)〜(d)は撮像手段により撮像したプラズマアークの外周と切断溝の縁との間隔を計測し、該プラズマアークの偏りを測定する様子を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図により本発明に係るプラズマ切断監視装置の一実施形態を具体的に説明する。
【実施例1】
【0026】
先ず、図1〜図5を用いて本発明に係るプラズマ切断監視装置1の第1実施形態の構成について説明する。図1〜図5において、1はプラズマ切断トーチ5を用いて鋼板、ステンレス鋼板、非鉄金属板等の被切断材10の一部を溶融させると共に排除して切断するプラズマ切断装置2の切断動作状態を監視するプラズマ切断監視装置1である。
【0027】
プラズマ切断装置2は、プラズマ切断トーチ5の移動及び作動を数値制御(NC)装置によって制御するNC切断装置や、予め線描きされた図形を光学的に倣ってプラズマ切断トーチ5を移動させる倣い切断装置等に適用することが可能である。
【0028】
本実施形態では、NC切断装置を用いた場合について説明する。図1に示すプラズマ切断装置2は、平行に敷設された一対のレール11に走行台車12が載置されており、該走行台車12にレール11と直交する方向に横行台車3が搭載されている。
【0029】
また、横行台車3には昇降装置4を介して昇降するプラズマ切断トーチ5が取り付けられている。プラズマ切断トーチ5の近傍でプラズマ切断装置2には、切断中のプラズマ切断トーチ5の先端から被切断材10に向かって出射されるプラズマアーク18と、該プラズマアーク18近傍の切断溝6とを同時に撮像する撮像手段となる一台のCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor;相補性金属酸化膜半導体)イメージセンシングカメラ(以下、単に「CMOSカメラ」という)8が支持部材7を介して固定されている。
【0030】
CMOSカメラ8に搭載されたCMOSイメージセンサ(Complementary Metal Oxide Semiconductor Image Sensor)は、光を電気信号に変換するフォトダイオードと複数のCMOS型トランジスタを有して構成されるIC(Integrated Circuit;半導体集積回路)からなるCMOSを用いた固体撮像素子であり、例えば、Pixim社製のCMOSイメージセンサーと画像処理プロセッサからなるチップセットを搭載したOrca(登録商標)シリーズのCMOSカメラ8が適用出来る。
【0031】
このようなCMOSカメラ8では、各画素が被写体の明るさに合わせて最適な露光時間でサンプリングするマルチサンプリング方式を採用している。従来のCCDカメラでは1〜2回/画素(@1/30sec)のサンプリングを行っていたが、本実施形態のCMOSカメラ8では、例えば、1フレーム(@1/60sec)毎に144回/画素のサンプリングを行うことが出来る。また、露光は、明るい箇所で短い露光時間と、暗い箇所で長い露光時間との互いに異なる2点間の傾きから計算され、固定パターンノイズ(FPN)の削減を可能としている。このように、暗い部分と明るい部分との間の階調をつぶさに表現し得るワイドダイナミックレンジ(120dB)によりプラズマアーク18のような強烈なアークプラズマ光を低減し、図5(a)に示すように、切断中のプラズマ切断トーチ5の先端から被切断材10に向かって出射されるプラズマアーク18と、該プラズマアーク18近傍の切断溝6とを同時に明瞭に撮像することが出来る。
【0032】
そして、図2に示すように、CMOSカメラ8により切断中のプラズマ切断トーチ5の先端から被切断材10に向かって出射されるプラズマアーク18と、該プラズマアーク18近傍の切断溝6とを同時に撮像し、その撮像画像を処理して、CMOSカメラ8により撮像された撮像画像情報から実際のプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとを算出手段となる画像解析部19により算出する。
【0033】
尚、CMOSカメラ8には、被切断材10に光を照射して切断溝6の溝幅Waの撮影画像を鮮明にするための照明装置等が取り付けられている。図中、17はCMOSカメラ8による撮影エリアである。
【0034】
走行台車12は走行モータ12aによって駆動され、レール11に沿った走行方向eに走行し、横行台車3は横行モータ3aによって駆動されてレール11に対して直交する方向である横行方向fに横行する。また、プラズマ切断トーチ5は昇降モータ4aによって駆動されて上下方向に昇降する。
【0035】
前記各モータ3a,4a,12aは走行台車12に設けた制御盤9に組み込まれたNC(数値制御)装置によって制御される。また制御盤9には、図3に示すプラズマ切断監視装置1の制御部15が組み込まれている。
【0036】
上記の如く構成されたプラズマ切断装置2では、被切断材10から切断すべき形状の情報を制御盤9に組み込まれたNC装置の記憶部22に記憶させ、この形状情報に従って走行モータ12a及び横行モータ3aを駆動制御することで、プラズマ切断トーチ5を曲線を含む一筆書き状に移動させることが可能であり、且つ移動過程でプラズマ切断トーチ5を作動させることで、被切断材10から目的の図形を切断することが可能である。
【0037】
本実施形態では、一般に市販されているCMOSカメラ8を用いており、プラズマアーク18の外径直径Dp及び被切断材10の切断溝6の溝幅Waを計測するために、寸法解析能が0.1mmとなるように設定している。
【0038】
本実施形態において、CMOSカメラ8は横行台車3に設けた支持部材7に対して照明装置等と共に一体的に取り付けられている。即ち、CMOSカメラ8と照明装置等はプラズマ切断トーチ5により切断される被切断材10に対する高さ及びプラズマ切断トーチ5からの水平距離が予め設定された値を有しており、且つCMOSカメラ8の光軸8aの指向角度も、照明装置等及びCMOSカメラ8を予め設定された高さに設定したとき、該CMOSカメラ8の光軸8aがプラズマアーク18及び該プラズマアーク18近傍で被切断材10に形成された切断溝6のプラズマ切断トーチ5の後方近傍の像と交差し得る角度に設定されている。
【0039】
次に、図3を用いてプラズマ切断監視装置1の制御系の構成について説明する。図3において、CMOSカメラ8は、被切断材10を切断中のプラズマ切断トーチ5の先端から該被切断材10に向かって出射されるプラズマアーク18の外径直径Dpの像及び該プラズマアーク18の近傍に形成される切断溝6の溝幅Waの像を撮像する機能を有するものであり、撮像した撮像画像情報(画像信号)を算出手段となる画像解析部19に伝達する。
【0040】
画像解析部19は、伝達された画像信号に対し二値化処理或いは多数値化処理して、プラズマアーク18の外径直径Dpの像及び切断溝6の溝幅Waの像に対応する信号を抽出し、抽出した像の画像信号を比較手段となる比較部20及び表示手段となる画像表示部21に伝達する。
【0041】
13は入力手段となる入力部であり、被切断材10の種類や板厚、或いはプラズマ切断トーチ5の種類等の各種の被切断材10の切断条件に対応して予め設定されるプラズマアーク18の基準の外径直径Dpと、基準の切断溝6の溝幅Wa、それらの許容出来る許容範囲、或いは、その基準の外径直径Dpと、基準の切断溝6の溝幅Waとにそれぞれ所定の許容範囲を考慮した許容し得るプラズマアーク18の外径直径Dp及び切断溝6の溝幅Wa等をキーボードや他の種々の入力装置を用いて入力する。尚、基準の切断溝6の溝幅Waと、許容範囲とを入力した場合には許容出来るプラズマアーク18の外径直径Dp及び切断溝6の溝幅Waが自動計算されることでも良いし、許容し得るプラズマアーク18の外径直径Dp及び切断溝6の溝幅Waを直接入力することでも良い。
【0042】
ここで、プラズマアーク18の外径直径Dp及び切断溝6の溝幅Waの許容範囲の具体例としては、プラズマ切断トーチ5の切断品質の性能や切断用途に応じて所望の値に設定すれば良く、例えば、現在の実際の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dp及び切断溝6の溝幅Waの許容範囲は、現在から所定時間遡った最前の実際の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dp及び切断溝6の溝幅Waの±20%程度を見込んでおけば良い。
【0043】
例えば、プラズマ切断トーチ5のプラズマアーク電流が400Aの出力時に、プラズマアーク18の外径直径Dpが4mm、切断溝6の溝幅Waが5mmに設定される場合には、プラズマアーク18の外径直径Dpの許容範囲は、標準で±25%、精度重視時には±15%に設定される。また、切断溝6の溝幅Waの許容範囲は、標準で±20%、精度重視時には±10%に設定される。
【0044】
尚、切断開始時は最初の実際の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dp及び切断溝6の溝幅Waのデータを記憶部22に記憶して初期値とし、切断時に随時、データスキャンして実際の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dp及び切断溝6の溝幅Waのデータを随時更新し、記憶部22に記憶する。そして、現在から所定時間遡った最前のプラズマアーク18の外径直径Dp及び切断溝6の溝幅Waと、現在の最新のプラズマアーク18の外径直径Dp及び切断溝6の溝幅Waとのデータとを比較部20により比較判断し、予め設定された許容範囲を外れた場合には切断状態判定部14によりプラズマ切断装置2の切断動作に異常が生じたと判断する。プラズマ切断装置2の切断動作に異常が生じたと判断された後は、プラズマ切断トーチ5の先端に設けられる電極やノズルの交換後、新たに切断開始時に実際の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dp及び切断溝6の溝幅Waのデータを記憶部22に記憶して初期値とし、随時、更新することで、プラズマ切断装置2の切断動作を継続して監視できる。
【0045】
また、現在の実際の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dp及び切断溝6の溝幅Waの許容範囲は、被切断材10の切断条件に対応して予め設定されたプラズマアーク18の基準の外径直径Dpと、基準の切断溝6の溝幅Waの±20%程度を見込んでおけば良い。この場合、オペレータにより品質とコスト面を考慮して、その許容範囲を適宜変更できるように構成される。プラズマアーク18の外径直径Dpや切断溝6の溝幅Waは、プラズマ切断装置2の切断速度や、プラズマアーク18の外周にアシストガスや燃焼ガスとして噴射させる不活性ガスや酸素ガス等のガス流量により変化するため標準仕様以外の使用条件での許容範囲を設けることは困難である。これに対応できるように許容範囲の自動入力と強制入力とを適宜選択できるように構成される。
【0046】
CMOSカメラ8が切断溝6の真正面を撮影出来ずに斜めから撮影した場合の撮像画像上の誤差は次のようにして補正する。画像解析部19は、図4(a),(b)に示すように、プラズマ切断トーチ5の切断進行方向aと、プラズマアーク18とCMOSカメラ8とを結ぶ直線方向となる光軸8aとの水平方向におけるずれの角度をθ、該CMOSカメラ8により撮像した切断溝6の溝幅をWi、実際の切断溝の溝幅をWaとした場合に、Wa=Wi×|cosθ|の計算式により、CMOSカメラ8により撮像した切断溝6の溝幅Wiを、実際の切断溝6の溝幅Waに補正する。
【0047】
尚、画像解析部19は、図4(a),(b)に示すように、プラズマ切断トーチ5の切断進行方向aと、プラズマアーク18とCMOSカメラ8とを結ぶ直線方向となる光軸8aとの水平方向におけるずれの角度をθ、更に、図示しないが、被切断材10の上表面と、プラズマアーク18が該被切断材10の上表面と交差する点とCMOSカメラ8とを結ぶ直線となる光軸8aとが成す高さ方向の角度をθ1、該CMOSカメラ8により撮像した切断溝6の溝幅をWi、実際の切断溝の溝幅をWaとした場合に、Wa=Wi×|cosθ|/|sinθ1|の計算式により、CMOSカメラ8により撮像した切断溝6の溝幅Wiを、実際の切断溝6の溝幅Waに補正することも出来る。
【0048】
尚、制御部15は、予め設計されたNC(数値制御)データを記憶する記憶部22に記憶された特定の図形の切断方向情報から切断進行方向情報を取得し、その切断進行方向情報からプラズマ切断トーチ5の切断進行方向aを特定する。
【0049】
これにより、プラズマ切断トーチ5の切断進行方向aの変化やCMOSカメラ8の光軸8aの角度θに対応して該CMOSカメラ8により撮像した切断溝6の溝幅Wiを、実際の切断溝6の溝幅Waに補正することが出来、プラズマ切断装置2に1台のCMOSカメラ8が固定して設けられた場合であっても、該プラズマ切断トーチ5の切断進行方向aが、図4(a)の90°と270°で示す該プラズマ切断トーチ5とCMOSカメラ8とを結ぶ直線となる光軸8aと直交する方向に変化して切断溝6の溝幅Waが撮像できなくなる場合を除けば、CMOSカメラ8により撮像した切断溝6の溝幅Wiに基づいて簡単な計算により実際の切断溝6の溝幅Waを正確に求めることが出来る。
【0050】
尚、プラズマ切断トーチ5の切断進行方向aが、図4(a)の90°と270°で示す該プラズマ切断トーチ5とCMOSカメラ8とを結ぶ直線となる光軸8aと直交する方向に変化して切断溝6の溝幅Waが撮像できなくなった場合には、切断状態判定部14は、現在の実際の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dpのみに基づいてプラズマ切断装置2の切断動作に異常が生じたか否かを判断する。
【0051】
尚、正常なプラズマアーク18については、略円柱状態であるためCMOSカメラ8の光軸8aの角度θが変化しても該プラズマアーク18の外径直径Dpは該CMOSカメラ8により撮像した撮像画像データのままで補正することなく活用することが出来る。
【0052】
22は記憶手段となる記憶部22であり、CMOSカメラ8により撮像された撮像画像情報から画像解析部19により算出されたプラズマアーク18の外径直径Dp情報と、切断溝6の溝幅Wa情報とを時系列順に記憶する。制御部15には記憶部22に記憶する時系列を規定するタイマーが設けられている。
【0053】
比較部20は画像解析部19により算出された現在の実際の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waと、記憶部22に記憶された現在から所定時間遡った最前の実際の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとを比較する。ここで、現在と最前との時間差としては、プラズマ切断トーチ5により被切断材10を切断する切断距離に換算して10mm程度の時間差が好ましい。例えば、プラズマ切断トーチ5により被切断材10を切断する切断速度が3000mm/min(50mm/sec)の場合には切断距離が10mmとなる時間は200msecとなる。従って、現在と最前との時間差の範囲としては、100msec〜500msecが好ましい。
【0054】
14は判断手段となる切断状態判定部であり、比較部20により比較される、現在の実際の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waと、現在から所定時間遡った最前の実際の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとのそれぞれの差が、予め設定された許容範囲からプラズマアーク18の外径直径Dpか、切断溝6の溝幅Waかの少なくとも何れかが外れた場合にプラズマ切断装置2の切断動作に異常が生じたと判断する。
【0055】
また、記憶部22には、被切断材10の切断条件に対応して予め設定されたプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとのそれぞれの許容値情報が記憶されている。そして、比較部20は、画像解析部19により算出された現在の実際の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waと、記憶部22に記憶された被切断材10の切断条件に対応して予め設定されたプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとのそれぞれの許容値とを比較する。
【0056】
そして、比較部20により比較される、現在の実際の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとが、被切断材10の切断条件に対応して予め設定されたプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとのそれぞれの許容範囲からプラズマアーク18の外径直径Dpか、切断溝6の溝幅Waかの少なくとも何れかが外れた場合に切断状態判定部14はプラズマ切断装置2の切断動作に異常が生じたと判断する。
【0057】
入力部13により被切断材10の切断条件に対応して予め設定されたプラズマアーク18の基準の外径直径Dpと、切断溝6の基準の溝幅Waとを入力する。これに基づいて、プラズマアーク18の基準の外径直径Dpと、切断溝6の基準の溝幅Waの±20%の許容範囲は自動計算される。或いは、プラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waの許容範囲は被切断材10の切断条件プログラムに基づいて自動計算されることでも良い。或いは、入力部13により任意の許容範囲を入力し、その許容範囲からプラズマアーク18の許容外径直径Dpと、切断溝6の許容溝幅Waとが自動計算されても良い。
【0058】
そして、比較部20は、入力部13により入力されたプラズマアーク18の許容外径直径Dpと、切断溝6の許容溝幅Waと、画像解析部19により画像解析して検出された現在の実際の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとを比較する。
【0059】
また、比較部20は、現在の実際の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waと、現在から所定時間遡った最前の実際の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとのそれぞれの差と、予め設定されたその差の許容範囲とを比較する。このときの現在と最前とのプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとのそれぞれの差の許容範囲も±20%の許容範囲とすることが出来る。
【0060】
そして、その比較情報は、切断状態判定部14に送られ、比較された現在の実際の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの少なくとも何れかがプラズマアーク18の許容外径直径Dpと、切断溝6の許容溝幅Waとから外れた場合に、切断状態判定部14においてプラズマ切断装置2の切断動作に異常が生じたと判定する。
【0061】
画像表示部21はディスプレイやプリンター等からなり、ディスプレイではCMOSカメラ8から伝達された画像信号によるプラズマアーク18の外径直径Dpの像と、切断溝6の溝幅Waの像を表示する。
【0062】
切断状態判定部14でプラズマ切断装置2の切断動作に異常が生じたと判定された場合には、制御部15に切断異常情報が伝達され、不良切断回避手段として警報装置16によりブザー等の警報を鳴らしたり、パトライトを点灯してオペレータに警報を発し、或いは、プラズマ切断装置2の切断停止制御を行なって不良切断を早期に回避した後、復帰する。
【0063】
次に、上記の如く構成されたプラズマ切断監視装置1によって現在の実際の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとを監視する手順について説明する。先ず、プラズマ切断装置2の制御盤9に設けられた入力部13により被切断材10から切断すべき図形の情報を入力し、同時に被切断材10の材質や板厚等の情報、更には、予め被切断材10の切断条件に対応して設定されたプラズマアーク18の基準の外径直径Dpと、切断溝6の基準の溝幅Wa、現在の実際の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dpと基準の外径直径Dpとの差の許容範囲と、切断溝6の溝幅Waの基準の溝幅Waとの差の許容範囲と、現在の実際の切断時から所定時間さかのぼった最前の実際の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dpの差の許容範囲と、切断溝6の溝幅Waの差の許容範囲、或いはプラズマアーク18の許容外径直径Dpと、切断溝6の許容溝幅Wa等を入力する。
【0064】
次いで、照明装置等から光を照射すると共に、被切断材10の表面にプラズマ切断トーチ5の先端から被切断材10に向かって出射されるプラズマアーク18と、該プラズマアーク18近傍のプラズマ切断トーチ5による切断により切断溝6が形成される部位の像をCMOSカメラ8を作動させて撮像し、撮像画像を取り込むスタンバイを行なう。上記手順を経ることで切断を開始する準備が終了する。
【0065】
次に、プラズマ切断装置2を作動させ、制御盤9に設けられた制御部15からの駆動信号に応じて走行モータ12a,横行モータ3aを駆動してプラズマ切断トーチ5を切断すべき方向に移動させる。
【0066】
切断中のプラズマ切断トーチ5の先端から被切断材10に向かって出射されるプラズマアーク18の外径直径Dpの像と、切断溝6の溝幅Waの像とを撮像するタイミングは、プラズマ切断トーチ5による被切断材10の切断速度に対応させる。
【0067】
CMOSカメラ8によって撮像された画像は画像解析部19で二値化処理或いは多値化処理され、プラズマアーク18の外径直径Dpの像及び切断溝6の溝幅Waの像の画像信号が抽出されて比較部20及び画像表示部21に伝達される。
【0068】
切断の進行に伴って定時的にプラズマアーク18の外径直径Dpの像及び切断溝6の溝幅Waの像に対する撮影がなされる。切断が進行する過程で、何らかの原因でプラズマアーク18の外径直径Dpや切断溝6の溝幅Waが大きくなったり、逆に小さくなった場合、該プラズマアーク18の外径直径Dpの画像及び切断溝6の溝幅Waの画像から実際のプラズマアーク18の外径直径Dpの画像及び切断溝6の溝幅Waの値が伝達された比較部20では、所定時間前のプラズマアーク18の外径直径Dp及び切断溝6の溝幅Waとを比較し、切断状態判定部14は現在の実際の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dp及び切断溝6の溝幅Waと、現在から所定時間遡った最前の実際の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dp及び切断溝6の溝幅Waとの差が予め設定された許容範囲からプラズマアーク18の外径直径Dp、或いは切断溝6の溝幅Waの少なくとも何れかが外れた場合にプラズマ切断装置2の切断動作に異常が生じたと判断する。そして、この切断異常情報に基づいて制御部15により警報装置16が作動してオペレータに対する警報を発する。
【0069】
警報装置16が発する警報としては、ブザーの吹鳴或いはパトライトの点灯、及び画像表示部21のディスプレイに対する表示等があり、これらを選択して採用する。また、制御部15によりプラズマ切断装置2の停止制御等の必要な処置がなされ、復旧される。
【0070】
比較部20では、現在の実際の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dp及び切断溝6の溝幅Waと、予め被切断材10の切断条件に対応して設定されたプラズマアーク18の基準の外径直径Dpと、切断溝6の基準の溝幅Waとをも比較しており、両者の差が予め設定された許容範囲からプラズマアーク18の外径直径Dp、或いは切断溝6の溝幅Waの少なくとも何れかが外れた場合にプラズマ切断装置2の切断動作に異常が生じたと判断する。そして、この切断異常情報に基づいて制御部15により警報装置16が作動してオペレータに対する警報を発する。
【0071】
上記構成によれば、CMOSカメラ8により撮像された撮像画像情報に基づいて、現在の実際の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waと、現在から所定時間遡った最前の実際の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとのそれぞれの差が、予め設定された許容範囲から何れかが外れた場合にプラズマ切断装置2の切断動作に異常が生じたと判断することが出来る。これにより、標準仕様外で使用する場合であっても正常に切断した現在から所定時間遡った最前の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waを基準として監視が出来る。
【0072】
また、プラズマ切断トーチ5の近傍でプラズマ切断装置2に1台のCMOSカメラ8が固定された場合には、該プラズマ切断トーチ5の進行方向が、該プラズマ切断トーチ5とCMOSカメラ8とを結ぶ直線となる光軸8aと直交する方向に変化した場合、切断溝6の溝幅Waが撮像できなくなるが、その場合はプラズマアーク18の外径直径Dpを監視することで、プラズマ切断トーチ5の進行方向に関わらず連続的に監視ができる。
【0073】
また、CMOSカメラ8により撮像された撮像画像情報に基づいて、現在の実際の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとが、被切断材10の切断条件に対応して予め設定されたプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとのそれぞれの許容範囲から何れかが外れた場合にプラズマ切断装置2の切断動作に異常が生じたと判断することが出来る。これにより、現在から所定時間遡った最前の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waを基準として現在の実際の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとを監視するだけでは、徐々に基準がずれていく可能性があるが、被切断材10の切断条件に対応して予め設定されたプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとを基準にして現在の実際の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとを監視できる。
【実施例2】
【0074】
次に図6を用いて本発明に係るプラズマ切断監視装置1の第2実施形態について説明する。尚、前記第1実施形態と同様に構成したものは同一の符号を付して説明を省略する。
【0075】
本実施形態では、算出手段となる画像解析部19は、CMOSカメラ8により撮像された撮像画像情報から前記第1実施形態と同様にしてプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとを算出する。そして、該プラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差の2分の1の値を算出する。更に、図6(a)〜(d)に示すように、プラズマアーク18の外周と、該外周に近接する側の切断溝6の溝縁との左右それぞれの離間間隔L1,L2を算出する。更に、プラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差の2分の1の値と、該プラズマアーク18の外周と、該外周に近接する側の切断溝6の溝縁との離間間隔L1,L2とのそれぞれの差を算出する。
【0076】
記憶手段となる記憶部22は、CMOSカメラ8により撮像された撮像画像情報から画像解析部19により算出されたプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差の2分の1の値と、該プラズマアーク18の外周と、該外周に近接する側の切断溝6の溝縁との離間間隔L1,L2とのそれぞれの差情報を時系列順に記憶する。
【0077】
比較手段となる比較部20は、画像解析部19により算出された現在の実際の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差の2分の1の値と、該プラズマアーク18の外周と、該外周に近接する側の切断溝6の溝縁との左右それぞれの離間間隔L1,L2との差と、記憶部22に記憶された現在から所定時間遡った最前の実際の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差の2分の1の値と、該プラズマアーク18の外周と、該外周に近接する側の切断溝6の溝縁との左右それぞれの離間間隔L1,L2との差とを比較する。
【0078】
判断手段となる切断状態判定部14は、比較部20により比較される、現在の実際の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差の2分の1の値と、プラズマアーク18の外周と、該外周に近接する側の切断溝6の溝縁との左右それぞれの離間間隔L1,L2との差と、現在から所定時間遡った最前の実際の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差の2分の1の値と、該プラズマアーク18の外周と、該外周に近接する側の切断溝6の溝縁との左右それぞれの離間間隔L1,L2との差が予め設定された許容範囲から外れた場合に、何らかの原因でプラズマアーク18の外周形状が円形で無くなったり、プラズマアーク18内でのエネルギー分布が偏って該プラズマアーク18の軸心が切断溝6の中心からずれたと判断してプラズマ切断装置2の切断動作に異常が生じたと判断する。
【0079】
また、本実施形態では、記憶部22には、被切断材10の切断条件に対応して予め設定されたプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差の2分の1の値と、該プラズマアーク18の外周と、該外周に近接する側の切断溝6の溝縁との左右それぞれの離間間隔L1,L2との差の許容値情報が記憶されている。
【0080】
例えば、プラズマ切断トーチ5のプラズマアーク電流が400Aの出力時に、プラズマアーク18の外径直径Dpが4mm、切断溝6の溝幅Waが5mm、該プラズマアーク18の外周と、該外周に近接する側の切断溝6の溝縁との左右それぞれの離間間隔L1,L2がそれぞれ1mmに設定される場合には、該離間間隔L1,L2の許容範囲は、標準で±20%、精度重視時には±10%に設定される。
【0081】
そして、比較部20は、画像解析部19により算出された実際の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差の2分の1の値と、該プラズマアーク18の外周と、該外周に近接する側の切断溝6の溝縁との左右それぞれの離間間隔L1,L2との差と、記憶部22に記憶された被切断材10の切断条件に対応して予め設定されたプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差の2分の1の値と、プラズマアーク18の外周と、該外周に近接する側の切断溝6の溝縁との左右それぞれの離間間隔L1,L2との差の許容値とを比較する。
【0082】
切断状態判定部14は、比較部20により比較される、実際の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差の2分の1の値と、該プラズマアーク18の外周と、該外周に近接する側の切断溝6の溝縁との左右それぞれの離間間隔L1,L2との差が、被切断材10の切断条件に対応して予め設定されたプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差の2分の1の値と、プラズマアーク18の外周と、該外周に近接する側の切断溝6の溝縁との左右それぞれの離間間隔L1,L2との差の許容範囲から外れた場合に、磁気吹き(アークが電流の磁気作用によって偏向する現象)等によりプラズマアーク18に偏りが生じ、プラズマ切断装置2の切断動作に異常が生じたと判断する。
【0083】
図6(a)はプラズマ切断装置2の切断動作が正常な状態を示し、図6(b)は実際の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差が小さくなったときの状態を示し、図6(c)は実際の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差が大きくなったときの状態を示し、図6(d)はプラズマアーク18内でのエネルギー分布が偏って該プラズマアーク18の軸心が切断溝6の中心からずれたときの状態を示す。
【0084】
ここで、プラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差の2分の1の値と、該プラズマアーク18の外周と、該外周に近接する側の切断溝6の溝縁との左右それぞれの離間間隔L1,L2との差の許容範囲の具体例としては、プラズマ切断トーチ5の切断品質の性能や切断用途に応じて所望の値に設定すれば良く、例えば、現在の実際の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差の2分の1の値と、該プラズマアーク18の外周と、該外周に近接する側の切断溝6の溝縁との左右それぞれの離間間隔L1,L2との差の許容範囲は、現在から所定時間遡った最前の実際の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差の2分の1の値と、該プラズマアーク18の外周と、該外周に近接する側の切断溝6の溝縁との左右それぞれの離間間隔L1,L2との差の±20%程度を許容範囲として見込んでおけば良い。
【0085】
また、現在の実際の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差の2分の1の値と、該プラズマアーク18の外周と、該外周に近接する側の切断溝6の溝縁との左右それぞれの離間間隔L1,L2との差の許容範囲は、被切断材10の切断条件に対応して予め設定されたプラズマアーク18の基準の外径直径Dpと、基準の切断溝6の溝幅Waとの差の2分の1の値の±20%程度を見込んでおけば良い。
【0086】
本実施形態の構成によれば、CMOSカメラ8により撮像された撮像画像情報に基づいて、現在の実際の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差の2分の1の値と、該プラズマアーク18の外周と、該外周に近接する側の切断溝6の溝縁との左右それぞれの離間間隔L1,L2との差と、現在から所定時間遡った最前の実際の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差の2分の1の値と、該プラズマアーク18の外周と、該外周に近接する側の切断溝6の溝縁との左右それぞれの離間間隔L1,L2との差が、予め設定された許容範囲から何れかが外れた場合にプラズマ切断装置2の切断動作に異常が生じたと判断することが出来る。これにより、標準仕様外で使用する場合であっても正常に切断した現在から所定時間遡った最前の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差の2分の1の値と、該プラズマアーク18の外周と、該外周に近接する側の切断溝6の溝縁との左右それぞれの離間間隔L1,L2との差を基準として監視が出来る。
【0087】
また、CMOSカメラ8により撮像された撮像画像情報に基づいて、現在の実際の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差の2分の1の値と、該プラズマアーク18の外周と、該外周に近接する側の切断溝6の溝縁との左右それぞれの離間間隔L1,L2との差が、被切断材10の切断条件に対応して予め設定されたプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差の2分の1の値と、該プラズマアーク18の外周と、該外周に近接する側の切断溝6の溝縁との左右それぞれの離間間隔L1,L2との差の許容範囲から外れた場合にプラズマ切断装置2の切断動作に異常が生じたと判断することが出来る。
【0088】
これにより、現在から所定時間遡った最前の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差の2分の1の値と、該プラズマアーク18の外周と、該外周に近接する側の切断溝6の溝縁との左右それぞれの離間間隔L1,L2との差を基準として現在の実際の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差の2分の1の値と、該プラズマアーク18の外周と、該外周に近接する側の切断溝6の溝縁との左右それぞれの離間間隔L1,L2との差を監視するだけでは、徐々に基準がずれていく可能性があるが、被切断材10の切断条件に対応して予め設定されたプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差の2分の1の値と、該プラズマアーク18の外周と、該外周に近接する側の切断溝6の溝縁との左右それぞれの離間間隔L1,L2との差を基準にして現在の実際の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差の2分の1の値と、該プラズマアーク18の外周と、該外周に近接する側の切断溝6の溝縁との左右それぞれの離間間隔L1,L2との差を監視できる。
【0089】
<第1参考例>
また、第1参考例の構成として、算出手段となる画像解析部19は、CMOSカメラ8により撮像された撮像画像情報からプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとを算出し、該プラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差を算出する。即ち、図6に示す左右の離間間隔L1,L2の和に相当する。
【0090】
記憶手段となる記憶部22は、被切断材10の切断条件に対応して予め設定されたプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差の許容値情報を記憶する。比較手段となる比較部20は、画像解析部19により算出された実際の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差と、記憶部22に記憶されたプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差の許容値とを比較する。
【0091】
判断手段となる切断状態判定部14は、比較部20により比較される、実際の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差が、プラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差の許容範囲から外れた場合にプラズマ切断装置2の切断動作に異常が生じたと判断する。
【0092】
ここで、プラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差の許容範囲の具体例としては、プラズマ切断トーチ5の切断品質の性能や切断用途に応じて所望の値に設定すれば良く、例えば、被切断材10の切断条件に対応して予め設定されたプラズマアーク18の基準の外径直径Dpと、基準の切断溝6の溝幅Waとの差の±20%程度を見込んでおけば良い。
【0093】
上記構成によれば、CMOSカメラ8により撮像された撮像画像情報に基づいて、現在の実際の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差が、被切断材10の切断条件に対応して予め設定された許容範囲から外れた場合にプラズマ切断装置2の切断動作に異常が生じたと判断することが出来る。プラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差を監視することで、プラズマアーク18のエネルギー分布の変化を監視することが出来る。
【0094】
<第2参考例>
また、第2参考例の構成として、算出手段となる画像解析部19は、CMOSカメラ8により撮像された撮像画像情報からプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waと、を算出し、該プラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差を算出する。即ち、図6に示す左右の離間間隔L1,L2の和に相当する。
【0095】
記憶手段となる記憶部22は、CMOSカメラ8により撮像された撮像画像情報から画像解析部19により算出されたプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差情報を時系列順に記憶する。
【0096】
比較手段となる比較部20は、画像解析部19により算出された現在の実際の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差と、記憶部22に記憶された現在から所定時間遡った最前の実際の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差とを比較する。
【0097】
判断手段となる切断状態判定部14は、比較部20により比較される、現在の実際の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差と、現在から所定時間遡った最前の実際の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差との差が、予め設定された許容範囲から外れた場合にプラズマ切断装置2の切断動作に異常が生じたと判断する。
【0098】
また、記憶部22には、被切断材10の切断条件に対応して予め設定されたプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差の許容値情報が記憶され、比較部20は、画像解析部19により算出された実際の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差と、記憶部22に記憶された被切断材10の切断条件に対応して予め設定されたプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差の許容値とを比較する。
【0099】
そして、切断状態判定部14は、比較部20により比較される、実際の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差が、被切断材10の切断条件に対応して予め設定されたプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差の許容範囲から外れた場合に、プラズマ切断装置2の切断動作に異常が生じたと判断する。
【0100】
ここで、プラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差の許容範囲の具体例としては、プラズマ切断トーチ5の切断品質の性能や切断用途に応じて所望の値に設定すれば良く、例えば、現在の実際の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差の許容範囲は、現在から所定時間遡った最前の実際の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差の±20%程度を許容範囲として見込んでおけば良い。
【0101】
また、被切断材10の切断条件に対応して予め設定されたプラズマアーク18の基準の外径直径Dpと、基準の切断溝6の溝幅Waとの差の±20%程度を見込んでおけば良い。
【0102】
上記構成によれば、CMOSカメラ8により撮像された撮像画像情報に基づいて、現在の実際の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差と、現在から所定時間遡った最前の実際の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差との差が、予め設定された許容範囲から外れた場合にプラズマ切断装置2の切断動作に異常が生じたと判断することが出来る。これにより、標準仕様外で使用する場合であっても正常に切断した現在から所定時間遡った最前の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差を基準として監視が出来る。
【0103】
また、CMOSカメラ8により撮像された撮像画像情報に基づいて、現在の実際の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差が、被切断材10の切断条件に対応して予め設定されたプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差の許容範囲から外れた場合にプラズマ切断装置2の切断動作に異常が生じたと判断することが出来る。これにより、現在から所定時間遡った最前の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差を基準として現在の実際の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差を監視するだけでは、徐々に基準がずれていく可能性があるが、被切断材10の切断条件に対応して予め設定されたプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差を基準にして現在の実際の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差を監視できる。
【0104】
<第3参考例>
また、第3参考例の構成として、算出手段となる画像解析部19は、CMOSカメラ8により撮像された撮像画像情報からプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waと、を算出する。更に、プラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差の2分の1の値を算出する。更に、プラズマアーク18の外周と、該外周に近接する側の切断溝6の溝縁との左右それぞれの離間間隔L1,L2を算出する。そして、プラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差の2分の1の値と、該プラズマアーク18の外周と、該外周に近接する側の切断溝6の溝縁との左右それぞれの離間間隔L1,L2との差を算出する。
【0105】
記憶手段となる記憶部22は、被切断材10の切断条件に対応して予め設定されたプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差の2分の1の値と、該プラズマアーク18の外周と、該外周に近接する側の切断溝6の溝縁との左右それぞれの離間間隔L1,L2との差の許容値情報を記憶する。
【0106】
比較手段となる比較部20は、画像解析部19により算出された実際の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差の2分の1の値と、該プラズマアーク18の外周と、該外周に近接する側の切断溝6の溝縁との左右それぞれの離間間隔L1,L2との差と、記憶部22に記憶されたプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差の2分の1の値と、該プラズマアーク18の外周と、該外周に近接する側の切断溝6の溝縁との左右それぞれの離間間隔L1,L2との差の許容値とを比較する。
【0107】
判断手段となる切断状態判定部14は、比較部20により比較される、実際の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差の2分の1の値と、該プラズマアーク18の外周と、該外周に近接する側の切断溝6の溝縁との左右それぞれの離間間隔との差が、該プラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差の2分の1の値と、該プラズマアーク18の外周と、該外周に近接する側の切断溝6の溝縁との左右それぞれの離間間隔L1,L2との差の許容範囲から外れた場合にプラズマ切断装置2の切断動作に異常が生じたと判断する。
【0108】
また、現在の実際の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差の2分の1の値と、該プラズマアーク18の外周と、該外周に近接する側の切断溝6の溝縁との左右それぞれの離間間隔L1,L2との差の許容範囲は、被切断材10の切断条件に対応して予め設定されたプラズマアーク18の基準の外径直径Dpと、基準の切断溝6の溝幅Waとの差の2分の1の値の±20%程度を見込んでおけば良い。
【0109】
上記構成によれば、CMOSカメラ8により撮像された撮像画像情報に基づいて、現在の実際の切断時のプラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差の2分の1の値と、該プラズマアーク18の外周と、該外周に近接する側の切断溝6の溝縁との左右それぞれの離間間隔L1,L2との差が、被切断材10の切断条件に対応して予め設定された許容範囲から外れた場合にプラズマ切断装置2の切断動作に異常が生じたと判断することが出来る。プラズマアーク18の外径直径Dpと、切断溝6の溝幅Waとの差の2分の1の値と、該プラズマアーク18の外周と、該外周に近接する側の切断溝6の溝縁との左右それぞれの離間間隔L1,L2との差を監視することで、プラズマアーク18を中心とした切断溝6の左右での該プラズマアーク18の中心位置のずれや該プラズマアーク18のエネルギー分布の左右での偏りを監視することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明の活用例として、プラズマ切断トーチを用いて被切断材の一部を溶融させると共に排除して切断するプラズマ切断装置の切断状態を監視するプラズマ切断監視装置に適用出来る。
【符号の説明】
【0111】
Dp …プラズマアークの外径直径
L1,L2 …プラズマアークの外周と切断溝の溝縁との離間間隔
Wa …実際の切断溝の溝幅
Wi …撮像した切断溝の溝幅
1 …プラズマ切断監視装置
2 …プラズマ切断装置
3 …横行台車
3a …横行モータ
4 …昇降装置
4a …昇降モータ
5 …プラズマ切断トーチ
6 …切断溝
7 …支持部材
8 …CMOSカメラ(撮像手段)
8a …光軸
9 …制御盤
10 …被切断材
11 …レール
12 …走行台車
12a …走行モータ
13 …入力部
14 …切断状態判定部(判断手段)
15 …制御部
16 …警報装置
17 …撮影エリア
18 …プラズマアーク
19 …画像解析部(算出手段)
20 …比較部(比較手段)
21 …画像表示部
22 …記憶部(記憶手段)
a …切断進行方向
b …点
e …走行方向
f …横行方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ切断トーチを用いて被切断材の一部を溶融させると共に排除して切断するプラズマ切断装置の切断状態を監視するプラズマ切断監視装置であって、
切断中の前記プラズマ切断トーチの先端から前記被切断材に向かって出射されるプラズマアークと、該プラズマアーク近傍の切断溝と、を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により撮像された撮像画像情報から前記プラズマアークの外径直径と、前記切断溝の溝幅と、を算出する算出手段と、
前記撮像手段により撮像された撮像画像情報から前記算出手段により算出された前記プラズマアークの外径直径情報と、前記切断溝の溝幅情報と、を時系列順に記憶する記憶手段と、
前記算出手段により算出された現在の実際の切断時の前記プラズマアークの外径直径と、前記切断溝の溝幅と、前記記憶手段に記憶された最前の実際の切断時の前記プラズマアークの外径直径と、前記切断溝の溝幅とを比較する比較手段と、
前記比較手段により比較される、現在の実際の切断時の前記プラズマアークの外径直径と、前記切断溝の溝幅と、最前の実際の切断時の前記プラズマアークの外径直径と、前記切断溝の溝幅とのそれぞれの差が、予め設定された許容範囲から何れかが外れた場合に前記プラズマ切断装置の切断動作に異常が生じたと判断する判断手段と、
を有することを特徴とするプラズマ切断監視装置。
【請求項2】
前記記憶手段には、前記被切断材の切断条件に対応して予め設定された前記プラズマアークの外径直径と、前記切断溝の溝幅とのそれぞれの許容値情報が記憶され、
前記比較手段は、前記算出手段により算出された現在の実際の切断時の前記プラズマアークの外径直径と、前記切断溝の溝幅と、前記記憶手段に記憶された前記被切断材の切断条件に対応して予め設定された前記プラズマアークの外径直径と、前記切断溝の溝幅とのそれぞれの許容値とを比較し、
前記比較手段により比較される、現在の実際の切断時の前記プラズマアークの外径直径と、前記切断溝の溝幅とが、前記被切断材の切断条件に対応して予め設定された前記プラズマアークの外径直径と、前記切断溝の溝幅とのそれぞれの許容範囲から何れかが外れた場合に、前記判断手段は、前記プラズマ切断装置の切断動作に異常が生じたと判断することを特徴とする請求項1に記載のプラズマ切断監視装置。
【請求項3】
プラズマ切断トーチを用いて被切断材の一部を溶融させると共に排除して切断するプラズマ切断装置の切断状態を監視するプラズマ切断監視装置であって、
切断中の前記プラズマ切断トーチの先端から前記被切断材に向かって出射されるプラズマアークと、該プラズマアーク近傍の切断溝と、を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により撮像された撮像画像情報から前記プラズマアークの外径直径と、前記切断溝の溝幅と、を算出し、該プラズマアークの外径直径と、前記切断溝の溝幅との差の2分の1の値を算出し、前記プラズマアークの外周と、該外周に近接する側の前記切断溝の溝縁との離間間隔を算出し、前記プラズマアークの外径直径と、前記切断溝の溝幅との差の2分の1の値と、前記プラズマアークの外周と、該外周に近接する側の前記切断溝の溝縁との離間間隔との差を算出する算出手段と、
前記撮像手段により撮像された撮像画像情報から前記算出手段により算出された前記プラズマアークの外径直径と、前記切断溝の溝幅との差の2分の1の値と、前記プラズマアークの外周と、該外周に近接する側の前記切断溝の溝縁との離間間隔との差情報を時系列順に記憶する記憶手段と、
前記算出手段により算出された現在の実際の切断時の前記プラズマアークの外径直径と、前記切断溝の溝幅との差の2分の1の値と、前記プラズマアークの外周と、該外周に近接する側の前記切断溝の溝縁との離間間隔との差と、前記記憶手段に記憶された最前の実際の切断時の前記プラズマアークの外径直径と、前記切断溝の溝幅との差の2分の1の値と、前記プラズマアークの外周と、該外周に近接する側の前記切断溝の溝縁との離間間隔との差とを比較する比較手段と、
前記比較手段により比較される、現在の実際の切断時の前記プラズマアークの外径直径と、前記切断溝の溝幅との差の2分の1の値と、前記プラズマアークの外周と、該外周に近接する側の前記切断溝の溝縁との離間間隔との差と、最前の実際の切断時の前記プラズマアークの外径直径と、前記切断溝の溝幅との差の2分の1の値と、前記プラズマアークの外周と、該外周に近接する側の前記切断溝の溝縁との離間間隔との差が予め設定された許容範囲から外れた場合に前記プラズマ切断装置の切断動作に異常が生じたと判断する判断手段と、
を有することを特徴とするプラズマ切断監視装置。
【請求項4】
前記記憶手段には、前記被切断材の切断条件に対応して予め設定された前記プラズマアークの外径直径と、前記切断溝の溝幅との差の2分の1の値と、前記プラズマアークの外周と、該外周に近接する側の前記切断溝の溝縁との離間間隔との差の許容値情報が記憶され、
前記比較手段は、前記算出手段により算出された実際の切断時の前記プラズマアークの外径直径と、前記切断溝の溝幅との差の2分の1の値と、前記プラズマアークの外周と、該外周に近接する側の前記切断溝の溝縁との離間間隔との差と、前記記憶手段に記憶された前記被切断材の切断条件に対応して予め設定された前記プラズマアークの外径直径と、前記切断溝の溝幅との差の2分の1の値と、前記プラズマアークの外周と、該外周に近接する側の前記切断溝の溝縁との離間間隔との差の許容値とを比較し、
前記比較手段により比較される、実際の切断時の前記プラズマアークの外径直径と、前記切断溝の溝幅との差の2分の1の値と、前記プラズマアークの外周と、該外周に近接する側の前記切断溝の溝縁との離間間隔との差が、前記被切断材の切断条件に対応して予め設定された前記プラズマアークの外径直径と、前記切断溝の溝幅との差の2分の1の値と、前記プラズマアークの外周と、該外周に近接する側の前記切断溝の溝縁との離間間隔との差の許容範囲から外れた場合に、前記判断手段は、前記プラズマ切断装置の切断動作に異常が生じたと判断することを特徴とする請求項3に記載のプラズマ切断監視装置。
【請求項5】
前記撮像手段は、前記プラズマ切断トーチの近傍で前記プラズマ切断装置に固定され、
前記算出手段は、前記プラズマ切断トーチの切断進行方向と、前記プラズマアークと前記撮像手段とを結ぶ直線方向とのずれの角度をθ、前記撮像手段により撮像した切断溝の溝幅をWi、実際の切断溝の溝幅をWaとした場合に、
Wa=Wi×|cosθ|
の計算式により、前記撮像手段により撮像した切断溝の溝幅Wiを、実際の切断溝の溝幅Waに補正することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のプラズマ切断監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図5】
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