説明

プラズマ殺虫灯

【課題】プラズマを用いて、従来よりも効果的に殺虫することが出来るプラズマ殺虫灯を提供する。
【解決手段】プラズマ殺虫灯A2が大気圧マイクロ波プラズマ発生源によってプラズマを発生するプラズマ発生部3と、プラズマをプラズマ発生部に出力させるプラズマ制御手段4とを具備する。更に、虫が接近したことを検出し検出信号を出力する虫接近検出センサ7を備え、プラズマ制御手段が、虫接近検出センサから入力される検出信号に基づいて、虫が接近している場合、プラズマ発生部に出力させるプラズマを大きくするという手段を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ殺虫灯に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、あらゆる場所で簡単に使用することが可能な超小形殺菌/殺虫/脱臭装置が開示されている。
この超小形殺菌/殺虫/脱臭装置では、プラズマ放電によってイオン及びオゾンを発生するイオン/オゾン発生器において、一方の耐酸性の有孔ケースと他方の金属または合成樹脂製の小形ケースとが構成されるケースを有し、有孔ケース内に略円筒形電極体を固定し、その内部の局面に多数の尖頭形突出電極を設けた略楕円形の通電体を外側の円筒形電極体とに適度の空間を設けて両端を取り付け支持し、小形ケース内に高圧発生トランスを収納し、該トランスの高圧部を円筒形電極体と尖頭形突出電極を有する通電体とを接続し、高圧発生トランスの印加により両電極間のコロナ放電を発生せしめてエアーをイオン又はオゾン化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−54556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術では、プラズマ放電に発生したイオン及びオゾンを発生するイオン/オゾン発生器を超小形化することによって、冷蔵庫、食料保存庫、流し台、浴室、病室、押入れ、便所及び車内等のあらゆる場所に設置可能になる為、当該設置場所における殺菌、殺虫及び脱臭が可能になる。しかしながら、上記従来技術では、殺虫/殺菌効果を発揮するのはイオン及びオゾンであり、当該イオン及びオゾンの空間における濃度は高くない。その為、上記従来技術では、殺虫/殺菌に時間を要し、時間辺りの移動距離の短い菌類を効果的に殺菌することは可能であるが、短時間で長距離移動してしまう虫類を殺虫することは大変困難である。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、プラズマを用いて、従来よりも効果的に殺虫することが出来るプラズマ殺虫灯を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、プラズマ殺虫灯に係る第1の解決手段として、大気圧マイクロ波プラズマ発生源によってプラズマを発生するプラズマ発生部と、プラズマを前記プラズマ発生部に出力させるプラズマ制御手段とを、具備するという手段を採用する。
【0007】
本発明では、プラズマ殺虫灯に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、虫が接近したことを検出し、検出信号を出力する虫接近検出センサを備え、前記プラズマ制御手段は、前記虫接近検出センサから入力される検出信号に基づいて、虫が接近している場合に、前記プラズマ発生部に出力させるプラズマを大きくするという手段を採用する。
【0008】
本発明では、プラズマ殺虫灯に係る第3の解決手段として、上記第2の解決手段において、前記プラズマ制御手段は、虫接近検出センサから入力される検出信号に基づき、接近した虫の数に応じて前記プラズマ発生部に出力させるプラズマの大きさを段階的に変化させるという手段を採用する。
【0009】
本発明では、プラズマ殺虫灯に係る第4の解決手段として、上記第1〜第3いずれかの解決手段において、前記プラズマ制御手段は、水電解セルを備え、当該水電解セルによって前記プラズマ発生部がプラズマを発生する際に用いる酸素を水から生成するという手段を採用する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、プラズマ殺虫灯が、大気圧マイクロ波プラズマ発生源によってプラズマを発生するプラズマ発生部と、プラズマをプラズマ発生部に出力させるプラズマ制御手段とを、具備する。
このように、プラズマ殺虫灯では、大気圧マイクロ波プラズマ発生源から構成されるプラズマ発生部が出力する高密度であるプラズマの紫外線よって虫を集めると共に強力な酸化力によって虫を殺虫する為、従来よりも効果的に殺虫することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態に係るプラズマ殺虫灯A1の概略構成を示す透視斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るプラズマ殺虫灯A1の機能ブロック図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係るプラズマ殺虫灯A2の概略構成を示す透視斜視図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係るプラズマ殺虫灯A2の機能ブロック図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係るプラズマ殺虫灯A2の動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第2実施形態に係るプラズマ殺虫灯A2の構成の変形例を示す透視斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
〔第1実施形態〕
まず、第1実施形態に係るプラズマ殺虫灯A1の機能構成について、図1及び図2を参照して、説明する。図1は、第1実施形態に係るプラズマ殺虫灯A1の概略構成を示す透視斜視図であり、図2は、第1実施形態に係るプラズマ殺虫灯A1の機能ブロック図である。
【0013】
プラズマ殺虫灯A1は、例えば、家の軒下、庭先及び室内等に設置され、紫外線を発生し、当該紫外線に集まった蛾や蚊等の虫を殺虫するものであり、図1及び図2に示すように透明ケース1、第2ケース2、プラズマ発生部3、電源/制御部4、電力供給ライン5及びガス供給ライン6から構成されている。なお、電源/制御部4は、第1実施形態におけるプラズマ制御手段である。
【0014】
透明ケース1は、図1に示すように、紫外線が透過する透明の部材から構成された略円筒形状のケースであり、その周方向に沿って複数の楕円形の開口部が設けられている。そして、この透明ケース1は、第2ケース2から先端部が突出しているプラズマ発生部3の周囲を覆うように第2ケース2に取り付けられている。
【0015】
第2ケースは、図1に示すように、プラズマ発生部3、電源/制御部4、電力供給ライン5及びガス供給ライン6を包容し、その上面の中央に略円形の開口部が設けられている。そして、第2ケースの上記開口部からプラズマ発生部3の先端部が突出している。
【0016】
プラズマ発生部3は、大気圧下でマイクロ波よってプラズマを発生する大気圧マイクロ波プラズマ発生源によって構成され、電源/制御部4の制御の下、電力供給ライン5を介して供給される電力から発生させたマイクロ波を放電することによって、ガス供給ライン6を介して供給される酸素から高密度のプラズマを発生させる。そして、このプラズマ発生部3は、第2ケースの開口部からその先端部が突出するように取り付けられており、上方向へ向けてプラズマフレームpfを出力する。プラズマ発生部3が出力するプラズマフレームpfは、紫外線を放射する。
【0017】
電源/制御部4は、外部から供給された電力を制御すると共に当該電力を各部へ供給すし、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を備える電源/制御回路4aから構成され、プラズマ殺虫灯A1の全体動作を制御する。
さらに、電源/制御部4は、内部に水電解セル4b及び貯水槽4cを備えており、貯水槽4cの水から水電解セル4bの電気分解によって酸素を生成し、当該酸素をガス供給ライン6を介してプラズマ発生部3へ供給すると共に、電力供給ライン5を介して電力をプラズマ発生部3へ供給する。なお、電力供給ライン5は、同軸ケーブルから構成されている。
【0018】
次に、このように構成されたプラズマ殺虫灯A1の動作について、詳しく説明する。
プラズマ殺虫灯A1では、殺虫指示を受け付けると、電源/制御部4は、電力供給ライン5を介して電力をプラズマ発生部3へ供給すると共にガス供給ライン6を介して酸素をプラズマ発生部3へ供給し、プラズマフレームpfをプラズマ発生部3に出力させる。
【0019】
以上のように、第1実施形態に係るプラズマ殺虫灯A1では、大気圧マイクロ波プラズマ発生源から構成されるプラズマ発生部3を搭載し、当該プラズマ発生部3が発生するプラズマフレームpfから放射する紫外線によって蛾や蚊等の虫を集め、この集まった虫をプラズマフレームpfの酸化力によって殺虫する。このように、プラズマ殺虫灯A1では、大気圧マイクロ波プラズマ発生源から構成されるプラズマ発生部3が出力する高密度であるプラズマフレームpfの紫外線によって虫を集めると共に強力な酸化力によって虫を殺虫する為、従来よりも効果的に殺虫することが出来る。
【0020】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記第1実施形態に限定されることなく、例えば以下のような変形が考えられる。
(1)上記第1実施形態では、電源/制御部4が、貯水槽4cの水を水電解セル4bによって電気分解することによって酸素を生成し、当該酸素をプラズマ発生部3へ供給したが、本発明はこれに限定されない。
例えば、電源/制御部4が、吸気ファンを備え、当該吸気ファンによって外部から取り込んだ空気をプラズマ発生部3へ供給し、プラズマ発生部3が、当該空気からプラズマフレームpfを発生するようにしてもよい。
【0021】
〔第2実施形態〕
次に、第2実施形態に係るプラズマ殺虫灯A2の機能構成について、図3及び図4を参照して、説明する。図3は、第2実施形態に係るプラズマ殺虫灯A2の概略構成を示す透視斜視図であり、図4は、第2実施形態に係るプラズマ殺虫灯A2の機能ブロック図である。
第2実施形態に係るプラズマ殺虫灯A2は、虫接近検出センサ7を備えた点において上記第1実施形態に係るプラズマ殺虫灯A1と相違する。したがって、本プラズマ殺虫灯A2において第1実施形態に係るプラズマ殺虫灯A1と同一の機能構成要素には同一符号を付し、説明を省略する。
【0022】
プラズマ殺虫灯A2は、図3及び図4に示すように透明ケース1、第2ケース2、プラズマ発生部3、電源/制御部4、電力供給ライン5、ガス供給ライン6及び虫接近検出センサ7から構成されている。
虫接近検出センサ7は、透明ケース1の外周面の下部に設けられ、蛾や蚊等の虫がプラズマ殺虫灯A2に接近したことを検出し、検出信号を電源/制御部4へ出力する。この虫接近検出センサ7は、例えば赤外線センサである。
【0023】
次に、このように構成されたプラズマ殺虫灯A2の動作について、図5を参照して詳しく説明する。図5は、第2実施形態に係るプラズマ殺虫灯A2の動作を示すフローチャートである。
プラズマ殺虫灯A2では、殺虫指示を受け付けると、電源/制御部4は、電力供給ライン5を介して電力をプラズマ発生部3へ供給すると共にガス供給ライン6を介して酸素をプラズマ発生部3へ供給し、プラズマフレームpfをプラズマ発生部3に出力させる(ステップS1)。
【0024】
そして、電源/制御部4は、ステップS1の後に、虫接近検出センサ7から入力される検出信号に基づいて、蛾や蚊等の虫がプラズマ殺虫灯A2に接近しているか否か判定し(ステップS2)、ステップS2において『YES』と判定した場合には、すなわち虫がプラズマ殺虫灯A2に接近している場合には、プラズマ発生部3への電力及び酸素の供給量を増大することによって、プラズマ発生部3に出力させるプラズマフレームpfを大きくする(ステップS3)。
また、電源/制御部4は、ステップS2において『NO』と判定した場合には、すなわち虫がプラズマ殺虫灯A2に接近していない場合には、そのまま通常の大きさのプラズマフレームpfをプラズマ発生部3に出力させる(ステップS4)。
【0025】
以上のように、第2実施形態に係るプラズマ殺虫灯A2では、大気圧マイクロ波プラズマ発生源から構成されるプラズマ発生部3を搭載し、当該プラズマ発生部3が発生するプラズマフレームpfが放射する紫外線によって蛾や蚊等の虫を集め、この集まった虫をプラズマフレームpfの酸化力によって殺虫する。このように、プラズマ殺虫灯A2では、大気圧マイクロ波プラズマ発生源から構成されるプラズマ発生部3が出力する高密度であるプラズマフレームpfの紫外線によって虫を集めると共に強力な酸化力によって虫を殺虫する為、従来よりも効果的に殺虫することが出来る。
【0026】
さらに、プラズマ殺虫灯A2では、電源/制御部4が、虫接近検出センサ7から入力される検出信号に基づいて、虫がプラズマ殺虫灯A2へ接近したことを検出すると、プラズマ発生部3に出力させるプラズマフレームpfを大きくする為、プラズマ殺虫灯A2の近辺の虫を効果的に殺虫することが出来る。プラズマ殺虫灯A2では、虫が近辺にいない場合に、無駄なプラズマフレームpfの出力を抑制することが出来る為、電力の無駄な消費を抑えることが出来る。
【0027】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記第2実施形態に限定されることなく、例えば以下のような変形が考えられる。
(1)上記第2実施形態では、電源/制御部4が、貯水槽4cの水を水電解セル4bによって電気分解することによって酸素を生成し、当該酸素をプラズマ発生部3へ供給したが、本発明はこれに限定されない。
例えば、電源/制御部4が、吸気ファンを備え、当該吸気ファンによって外部から取り込んだ空気をプラズマ発生部3へ供給し、プラズマ発生部3が、当該空気からプラズマフレームpfを発生するようにしてもよい。
【0028】
(2)上記第2実施形態では、透明ケース1の周方向に楕円形の開口部を設け、当該開口部から虫をプラズマフレームpfへ呼び込んだが、本発明はこれに限定されない。
上記第2実施形態の構成の変形例について、図6を参照して説明する。図6は、第2実施形態に係るプラズマ殺虫灯A2の構成の変形例を示す透視斜視図である。
例えば、プラズマ殺虫灯A2の透明ケースを、図4の(a)に示すように、中心軸を中心に拡径した形状に成形し、当該透明ケースの上部に開口部を設け、当該開口部から虫をプラズマフレームpfに呼び込むようにしてもよい。
また、家庭内に設置するものして、図4の(b)に示すように、紫外線が透過する装飾を施した半透明の部材から透明ケース1を構成するようにしてもよい。
【0029】
(3)上記第2実施形態では、電源/制御部4は、虫接近検出センサ7から入力される検出信号に基づいて、プラズマ殺虫灯A2に接近している場合には、プラズマ発生部3に出力させるプラズマフレームpfを大きくし、虫がプラズマ殺虫灯A2に接近していない場合には、そのまま通常の大きさのプラズマフレームpfをプラズマ発生部3に出力させたが、本発明はこれに限定されない。
電源/制御部4は、虫接近検出センサ7から入力される検出信号に基づき、プラズマ殺虫灯A2に接近している虫の数に応じてプラズマ発生部3に出力させるプラズマフレームpfの大きさを段階的に変化させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0030】
A1,A2…プラズマ殺虫灯、1…透明ケース、2…第2ケース、3…プラズマ発生部、4…電源/制御部、5…電力供給ライン、6…ガス供給ライン、7…虫接近検出センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気圧マイクロ波プラズマ発生源によってプラズマを発生するプラズマ発生部と、
プラズマを前記プラズマ発生部に出力させるプラズマ制御手段とを、
具備することを特徴とするプラズマ殺虫灯。
【請求項2】
虫が接近したことを検出し、検出信号を出力する虫接近検出センサを備え、
前記プラズマ制御手段は、前記虫接近検出センサから入力される検出信号に基づいて、虫が接近している場合に、前記プラズマ発生部に出力させるプラズマを大きくすることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ殺虫灯。
【請求項3】
前記プラズマ制御手段は、虫接近検出センサから入力される検出信号に基づき、接近した虫の数に応じて前記プラズマ発生部に出力させるプラズマの大きさを段階的に変化させることを特徴とする請求項2に記載のプラズマ殺虫灯。
【請求項4】
前記プラズマ制御手段は、水電解セルを備え、当該水電解セルによって前記プラズマ発生部がプラズマを発生する際に用いる酸素を水から生成することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のプラズマ殺虫灯。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−220513(P2010−220513A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−69884(P2009−69884)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】