説明

プラズマ流源及びプラズマ流発生方法、並びに前記プラズマ流を用いた誘導フラーレン製造方法及び製造装置

【課題】気相中でのイオンエネルギーの制御が可能なプラズマ流源、プラズマ流発生方法、並びに前記プラズマ流に昇華したフラーレンを導入して誘導フラーレンを製造する方法及び装置を提供する。
【解決手段】マイクロ波発振器101でマイクロ波を発振すると共に、ガス導入口102からアルゴンガスArを導入して、アルゴンイオンAr+と電子eから成るプラズマを生成する。このプラズマは、石英管103で囲まれたイオン流形成路と、その外側のプラズマ通過路に別れて、下流側に流れる。イオン流形成路では、空間電位設定電極104に正の電圧を供給して、前記電極104近辺のプラズマの空間電位を上げる。イオン流引き出し電極105に負の電圧を供給することにより、電子を除去してイオン流を形成する。このイオン流とプラズマ流とを合流させたときに、所定のエネルギー有するアルゴンイオンAr+を含むプラズマ流が得られる。このプラズマ流中に昇華したフラーレンを導入することにより、アルゴン原子内包フラーレンを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオンエネルギーの制御が可能なプラズマ流源、プラズマ流発生方法、並びに前記プラズマ流を用いた誘導フラーレン製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特許第3076843号公報
【0003】
特許文献1には、100eV程度のイオンビームを生成する方法が記載されている。この技術では、まず引き出し電極、加速電極によって、空間電位を数kVに上げてイオンビームを引き出している。その後、減速電極によって減速することにより、100eV程度のイオンビームを得ている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
イオンビームを加速、減速する際に、イオン衝撃による熱負荷が発生する。そのために、各電極をタングステン、モリブデン等の高融点、高熱伝導度材料で構成しなければならず、装置として高温対策が必要である等の問題があった。また、長時間運転するのにも限界があった。
本発明は、高温対策しなくても100eV以下のイオンエネルギー制御、及び長時間運転が可能なプラズマ流源、プラズマ流発生方法を提供しようとするものである。更に前記プラズマ流に昇華したフラーレンを導入して誘導フラーレンを製造する装置及び方法も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明(1)は、プラズマ発生部と、前記プラズマ発生部で発生したプラズマを分岐すると共に、分岐した一方のプラズマからイオン流を形成する分岐部と、分岐した他方のプラズマと前記イオン流とを合流させてプラズマ流を形成する合流部とを有することを特徴とするプラズマ流源である。
【0006】
本発明(2)は、前記分岐部が、分岐した一方のプラズマにエネルギーを与えるエネルギー供給手段と、前記エネルギー供給手段の下流側に設けられて、エネルギーを与えられたプラズマから電子を除去してイオン流を形成するイオン流形成手段とを有し、分岐した他方のプラズマはそのまま合流部に供給することを特徴とする請求項1記載のプラズマ流源である。
【0007】
本発明(3)は、前記エネルギー供給手段が空間電位設定電極であり、前記空間電位設定電極に供給する電圧によってプラズマに与えるエネルギーを制御することを特徴とする請求項2記載のプラズマ流源である。
【0008】
本発明(4)は、前記イオン流形成手段がイオン流引き出し電極であり、前記イオン流引き出し電極に負の電圧を供給することを特徴とする請求項2又は3記載のプラズマ流源である。
【0009】
本発明(5)は、前記イオン流及びプラズマ流の流れる方向を制御するための磁界を発生する磁界発生手段を有することを特徴とする本発明(1)乃至(4)のいずれか1つのプラズマ流源である。
【0010】
本発明(6)は、誘導対象物のプラズマ流を生成する本発明(1)乃至(5)のいずれか1つのプラズマ流源と、前記プラズマ流源から発生したプラズマ流中に昇華したフラーレンを導入するフラーレン導入手段とを有することを特徴とする誘導フラーレン製造装置である。
【0011】
本発明(7)は、前記フラーレン導入手段から導入したフラーレン、及びプラズマ流と反応して生成された誘導フラーレンを堆積する堆積基板を有することを特徴とする本発明(6)の誘導フラーレン製造装置である。
【0012】
本発明(8)は、前記堆積基板に直流電圧又は交流電圧を供給することを特徴とする本発明(7)の誘導フラーレン製造装置である。
【0013】
本発明(9)は、前記誘導対象物がアルゴンガスであり、エネルギーが約60〜100eVのアルゴンイオンを含むプラズマ流を形成してアルゴン原子内包フラーレンを製造することを特徴とする本発明(6)乃至(8)のいずれか1つの誘導フラーレン製造装置である。
【0014】
本発明(10)は、前記誘導対象物は窒素ガスであり、窒素原子置換ヘテロフラーレン、窒素原子内包フラーレン、又は窒素分子内包フラーレンを製造することを特徴とする本発明(6)乃至(8)のいずれか1つの誘導フラーレン製造装置である。
【0015】
本発明(11)は、エネルギーが約10〜50eVの窒素原子イオンを含むプラズマ流を形成して、窒素原子置換ヘテロフラーレンを製造することを特徴とする本発明(10)の誘導フラーレン製造装置である。
【0016】
本発明(12)は、エネルギーが70〜500eVの窒素原子イオンを含むプラズマ流を形成して、窒素原子内包フラーレンを製造することを特徴とする本発明(10)の誘導フラーレン製造装置である。
【0017】
本発明(13)は、前記プラズマ発生部が電子サイクロトロン共鳴によりマイクロ波プラズマ発生源、RFによるプラズマ発生源、又はヘリコン波によるプラズマ発生源であることを特徴とする本発明(9)乃至(12)のいずれか1つの誘導フラーレン製造装置である。
【0018】
本発明(14)は、プラズマ発生工程と、プラズマ発生工程で発生したプラズマの一部を分岐して、エネルギー制御されたイオン流を形成するイオン流形成工程と、プラズマ発生工程で発生したプラズマに前記イオン流を合流させてプラズマ流を形成するプラズマ流形成工程とを有することを特徴とするプラズマ流発生方法である。
【0019】
本発明(15)は、前記イオン流及びプラズマ流の流れる方向を制御するための磁界が供給されていることを特徴とする本発明(14)のプラズマ流発生方法である。
【0020】
本発明(16)は、本発明(14)又は(15)のプラズマ流発生方法で発生した誘導対象物のプラズマ流に、フラーレンを導入する工程を有することを特徴とする誘導フラーレン製造方法である。
【0021】
本発明(17)は、前記誘導対象物がアルゴンガスであり、60〜100eVのエネルギーを有するイオン流から成るプラズマ流を形成してアルゴン原子内包フラーレンを製造することを特徴とする本発明(16)の誘導フラーレン製造方法である。
【0022】
本発明(18)は、前記誘導対象物が窒素ガスであり、窒素原子置換ヘテロフラーレン、窒素原子内包フラーレン、又は窒素分子内包フラーレンを製造することを特徴とする本発明(16)の誘導フラーレン製造方法である。
【0023】
本発明(19)は、10〜50eVのエネルギーを有するイオン流から成るプラズマ流を形成して窒素原子置換ヘテロフラーレンを製造することを特徴とする本発明(18)の誘導フラーレン製造方法である。
【0024】
本発明(20)は、70〜500eVのエネルギーを有するイオン流から成るプラズマ流を形成して窒素原子内包フラーレンを製造することを特徴とする本発明(18)の誘導フラーレン製造方法である。
【発明の効果】
【0025】
本発明(1)によれば、プラズマ発生部で発生したプラズマを分岐した後、一方のプラズマからイオン流を形成している。そのイオン流に他方のプラズマを合流させることにより、プラズマ流を生成している。従来、100eV以下のイオンエネルギーを得ることは困難であった。しかし本発明によれば、プラズマ流に合流するイオン流のエネルギーを制御することにより、正確に設定することができる。
【0026】
本発明(2)〜(4)によれば、簡単な構成でイオンのエネルギーを制御することができる。すなわち、エネルギー供給手段で、分岐された一方のプラズマの空間電位を設定する。更に下流側のイオン流形成手段で、エネルギーを与えられたプラズマから電子を除去して、イオン流を形成する。イオン流は、合流部で分岐された他方のプラズマ流と合流する。合流したイオン流は、プラズマ発生部の空間電位と、エネルギー供給手段で設定された空間電位との差に対応するエネルギーを有するようになり、簡単な構成でエネルギー制御されたイオンを有するプラズマ流を得ることができる。またイオン衝撃による熱負荷が発生することがないので、長時間運転が可能となる。
【0027】
本発明(5)によれば、イオン流、プラズマ流の拡散を抑えることができる。すなわち、拡散により損失するイオン流、プラズマ流を抑えて、効率的にプラズマ流を生成することができる。
【0028】
本発明(6)、(7)のように、プラズマ流中にフラーレンを導入することにより、ヘテロフラーレン、内包フラーレン等の誘導フラーレンを製造する装置に利用することができる。プラズマ流中のイオンのエネルギーは、前記プラズマ流源により制御できる。その中にフラーレンを導入して衝突させることにより、希望する誘導フラーレンを製造することができる。
【0029】
本発明(8)で、堆積基板に直流電圧を供給することにより、気相中で反応しないでそのまま堆積基板に堆積したフラーレンにも、イオン流を加速して衝突させることにより誘導フラーレンを生成することができる。また交流電圧を供給することにより、負イオンであるフラーレンCnを引き寄せて堆積させ、そこに正イオンである誘導対象物のイオンを引き寄せて衝突させて、誘導フラーレンを生成することができる。
【0030】
本発明(9)〜(13)のように、本発明による誘導フラーレン製造装置により、様々な誘導フラーレンを製造することができる。
【0031】
本発明(14)によれば、エネルギー制御されたイオン流を含むプラズマ流が得られる。
【0032】
本発明(15)によれば、イオン流、プラズマ流の拡散を抑えることができる。すなわち、拡散により損失するイオン流、プラズマ流を抑えて、効率的に利用することができる。
【0033】
本発明(16)のように、プラズマ流中にフラーレンを導入することによりヘテロフラーレン、内包フラーレン等の誘導フラーレンを製造することができる。プラズマ流中のイオンのエネルギーは、プラズマ流発生方法で制御できる。その中にフラーレンを導入して衝突させたり、或いは堆積基板上に堆積したフラーレンに衝突させたりすることにより、希望する誘導フラーレンを製造することができる。
【0034】
本発明(17)〜(20)のように、本発明による誘導フラーレン製造方法により、様々な誘導フラーレンを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明に依る各用語の意義について明らかにすると共に、本発明の最良形態について説明する。
「フラーレン」とは、Cn(nは整数)で示され、炭素原子が球状に配置している中空の炭素クラスター物質である。
「誘導フラーレン」とは、フラーレンと、原子又は分子とが結合してできた化合物の総称である。フラーレンを形成している炭素原子の一部に原子又は分子が付着した化学修飾フラーレン、フラーレンを形成している炭素原子の一部が炭素以外の原子又は分子に置換したヘテロフラーレン、内部に原子又は分子を有する内包フラーレン等がある。
「誘導対象物」とは、フラーレンと結合して誘導フラーレンを形成する原子又は分子の総称である。窒素N2、水素H2、アルゴンAr、リチウムLi、ナトリウムNa、カリウムK等がある。
【0036】
(プラズマ流源及びプラズマ流発生方法)
図1に本発明の一実施例であるプラズマ流源の説明図を示す。(a)は、前記プラズマ流源の概略図である。(b)は、中心の領域AからCにかけて、磁力線に沿って流れるプラズマ流(イオン流)の空間電位を示すグラフと、イオンと電子の各粒子の流れを説明する図である。
【0037】
(a)に示すように、プラズマ発生部で、例えばアルゴンイオンAr+と電子eから成るプラズマが発生する。このプラズマの空間電位は、プラズマが接触する電導体の電位によって決まる。プラズマは、分岐部で中心の領域Aと周辺の領域Bに分岐して流れ、下流の領域Cで合流する。
【0038】
領域Bはプラズマ通過路である。ここに分岐したプラズマは、上流側で形成されたプラズマの空間電位を保ったまま、領域Cに到達する。
領域Aはイオン流形成路であり、例えばエネルギー供給手段としての空間電位設定電極104と、イオン流形成手段としてのイオン流引き出し電極105が配置されている。空間電位設定電極104近傍の空間電位は、前記電極104に供給している電圧と略等しい値に保持される。イオン引き出し電極105には負の電圧が供給されて、空間電位設定電極104を通じて正イオンを引き出すと共に、電子を反射してプラズマから除去する。そして、アルゴンイオンAr+から成るイオン流を形成する。イオン流はイオン引き出し電極105を通過して領域Cに達し、領域Bに分岐して流れてきたプラズマと合流する。
【0039】
(b)に示したグラフの横軸zはプラズマ流源の長手方向の位置、縦軸φは領域Aから領域Cにかけての空間電位である。(a)と対応する位置に一線鎖線を引いておく。空間電位設定電極104より上流側の空間電位は、前記電極104に供給される電圧によって決まる電位、例えば85Vになっている。イオン引き出し電極105には負の電圧が供給されているので、前記電極105に近づくにつれて空間電位が低下する。また電子が前記電極105で反射して除去され、アルゴンイオンAr+から成るイオン流が形成される。このイオン流は領域Cに達し、領域Bに分岐して流れてきたプラズマと合流する。すなわち、領域Cの空間電位は、プラズマ流源の上流側で形成されたプラズマの空間電位や領域Bの空間電位に略等しく、例えば約5Vとなる。このとき、領域Aを通じて領域Cに流れ込んだアルゴンイオンAr+は、2つの空間電位の差85-5=80Vに略等しいエネルギーを有するようになる。
【0040】
以上のように構成することにより、例えば100eV以下にエネルギー制御されたイオンを有するプラズマ流を得ることができる。またイオン衝撃による熱負荷が発生することがないので、長時間運転が可能となる。
ここで、領域Aを石英管で囲む等して、領域Bと物理的に分離するようにしてもよい。
【0041】
(アルゴン原子内包フラーレン製造装置及び製造方法)
図2に、本発明の一実施例であるプラズマ流源を用いたアルゴン原子内包フラーレン製造装置の側面図を示す。図中、図1と同じものは同一符号で示す。
【0042】
マイクロ波発振器101でマイクロ波を発振すると共に、ガス導入口102から例えばアルゴンガスArを導入する。マイクロ波発振器101とガス導入口102でプラズマ発生部が構成され、アルゴンイオンAr+と電子eから成るプラズマを生成する。このプラズマは、石英管103で囲まれたイオン流形成路と、その外側のプラズマ通過路に分岐して、下流側に流れる。
【0043】
空間電位設定電極104には正の電圧を供給して、前記電極104近辺のプラズマの空間電位を、例えば85Vに設定する。またイオン流引き出し電極105には負の電圧を供給する。このとき、領域Aに流れてきたプラズマから、空間電位設定電極104を通じてアルゴンイオンAr+を引き出すと共に、電子eを反射する。そして、主にアルゴンイオンAr+から成るイオン流を形成する。
【0044】
イオン引き出し電極105の下流側では、イオン流は石英管103内を通り、石英管103の外側のプラズマ通過路(領域B)を流れてきたプラズマと、領域Cで合流する。領域Cの空間電位は、領域Bのプラズマの空間電位、例えば5Vに略等しくなる。このとき、石英管103の内側を通って領域Cに流れ込んだアルゴンイオンAr+のエネルギーは、85-5=80eVに略等しくなる。
【0045】
領域Cには、フラーレンオーブン106を設置している。領域Cに、フラーレンオーブン106で昇華したフラーレンCn(nは整数)を導入する。このとき、一部のフラーレンCnにアルゴンイオンAr+が衝突して入り込み、アルゴン原子内包フラーレンAr@Cnを生成して、堆積基板107や、その下流側に配置されている基板ホルダー108に堆積する。
【0046】
アルゴン原子内包フラーレンAr@Cnを生成する場合、領域CでのアルゴンイオンAr+のエネルギーを60〜100eVにすることが好ましい。すなわち、領域Aと領域Cの空間電位の差を、60〜100Vにすることが好ましい。
【0047】
またアルゴンイオンAr+と反応しなかったフラーレンCnも、堆積基板109に堆積している。アルゴン原子内包フラーレンAr@Cnの生成効率を向上させるために、堆積基板109に電圧を供給するようにしてもよい。例えば負の直流電圧を供給してアルゴンイオンAr+を加速し、未反応のまま堆積したフラーレンCnに衝突させることで内包フラーレンAr@Cnの生成効率を向上させることができる。或いは交流電圧を供給するようにしてもよい。すなわち、正の電圧のときに、負イオンであるフラーレンCnを引き寄せて堆積させる。そこに、負の電圧になったときに、正イオンであるAr+イオンを引き寄せて衝突させることにより、内包フラーレンAr@Cnを生成するようにしてもよい。
【0048】
イオン流、プラズマ流が拡散するのを抑えて、製造装置の長手方向に流れるようにするために、誘導フラーレン製造装置の外側に電磁石109又は永久磁石を配置し、長手方向を向いた磁界Bを発生させるようにしてもよい。
【0049】
(窒素原子誘導フラーレン製造装置及び製造方法)
プラズマ発生部は、図2に示したものに限定されない。例えば高密度プラズマを発生させるために、電子サイクロトロン共鳴によるマイクロ波プラズマ発生源、RF(高周波放電)によるプラズマ発生源、ヘリコン波によるプラズマ発生源等を用いてもよい。高密度プラズマ中に窒素ガスを導入することにより、窒素分子N2は解離してイオン化され、窒素原子イオンN+と窒素分子イオンN2+から成るプラズマが形成される。
【0050】
窒素原子置換ヘテロフラーレンを製造する場合は、電極104によって設定される領域Aの上流側の空間電位と、プラズマ発生部で発生するプラズマの空間電位との差を、10〜50Vに設定する。このとき領域Cでは、エネルギーが約10〜50eVの窒素原子イオンN+を含む、ビーム状のプラズマ流が得られる。その領域Cに、フラーレンオーブン106で昇華したフラーレンCnを導入する。このとき、炭素原子の一部が窒素原子に置換したヘテロフラーレンNxCn-xが生成される。
【0051】
窒素原子内包フラーレンを製造する場合は、電極104によって設定される領域Aの上流側の空間電位と、プラズマ発生部で発生するプラズマの空間電位との差を、70〜500Vに設定する。このとき領域Cでは、エネルギーが70〜500eVの窒素原子イオンN+を含む、ビーム状のプラズマ流が得られる。その領域Cに、フラーレンオーブン106で昇華したフラーレンCnを導入することにより、窒素原子、窒素分子を内包したフラーレンN@Cn、N2@Cnが生成される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施例であるプラズマ流源の説明図である。
【図2】本発明の一実施例であるプラズマ流源を用いたアルゴン原子内包フラーレン製造装置の側面図である。
【符号の説明】
【0053】
101:マイクロ波発振器
102:ガス導入口
103:石英管
104:空間電位設定電極
105:イオン流引き出し電極
106:フラーレンオーブン
107:堆積基板
108:基板ホルダー
109:電磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ発生部と、前記プラズマ発生部で発生したプラズマを分岐すると共に、分岐した一方のプラズマからイオン流を形成する分岐部と、分岐した他方のプラズマと前記イオン流とを合流させてプラズマ流を形成する合流部とを有することを特徴とするプラズマ流源。
【請求項2】
前記分岐部は、分岐した一方のプラズマにエネルギーを与えるエネルギー供給手段と、前記エネルギー供給手段の下流側に設けられて、エネルギーを与えられたプラズマから電子を除去してイオン流を形成するイオン流形成手段とを有し、分岐した他方のプラズマはそのまま合流部に供給することを特徴とする請求項1記載のプラズマ流源。
【請求項3】
前記エネルギー供給手段は空間電位設定電極であり、前記空間電位設定電極に供給する電圧によってプラズマに与えるエネルギーを制御することを特徴とする請求項2記載のプラズマ流源。
【請求項4】
前記イオン流形成手段はイオン流引き出し電極であり、前記イオン流引き出し電極に負の電圧を供給することを特徴とする請求項2又は3記載のプラズマ流源。
【請求項5】
前記イオン流及びプラズマ流の流れる方向を制御するための磁界を発生する磁界発生手段を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のプラズマ流源。
【請求項6】
誘導対象物のプラズマ流を生成する請求項1乃至5のいずれか1項記載のプラズマ流源と、前記プラズマ流源から発生したプラズマ流中に昇華したフラーレンを導入するフラーレン導入手段とを有することを特徴とする誘導フラーレン製造装置。
【請求項7】
前記フラーレン導入手段から導入したフラーレン、及びプラズマ流と反応して生成された誘導フラーレンを堆積する堆積基板を有することを特徴とする請求項6記載の誘導フラーレン製造装置。
【請求項8】
前記堆積基板に直流電圧又は交流電圧を供給することを特徴とする請求項7記載の誘導フラーレン製造装置。
【請求項9】
前記誘導対象物はアルゴンガスであり、エネルギーが約60〜100eVのアルゴンイオンを含むプラズマ流を形成してアルゴン原子内包フラーレンを製造することを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項記載の誘導フラーレン製造装置。
【請求項10】
前記誘導対象物は窒素ガスであり、窒素原子置換ヘテロフラーレン、窒素原子内包フラーレン、又は窒素分子内包フラーレンを製造することを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項記載の誘導フラーレン製造装置。
【請求項11】
エネルギーが約10〜50eVの窒素原子イオンを含むプラズマ流を形成して、窒素原子置換ヘテロフラーレンを製造することを特徴とする請求項10記載の誘導フラーレン製造装置。
【請求項12】
エネルギーが70〜500eVの窒素原子イオンを含むプラズマ流を形成して、窒素原子内包フラーレンを製造することを特徴とする請求項10記載の誘導フラーレン製造装置。
【請求項13】
前記プラズマ発生部は電子サイクロトロン共鳴によりマイクロ波プラズマ発生源、RFによるプラズマ発生源、又はヘリコン波によるプラズマ発生源であることを特徴とする請求項9乃至12のいずれか1項記載の誘導フラーレン製造装置。
【請求項14】
プラズマ発生工程と、プラズマ発生工程で発生したプラズマの一部を分岐して、エネルギー制御されたイオン流を形成するイオン流形成工程と、プラズマ発生工程で発生したプラズマに前記イオン流を合流させてプラズマ流を形成するプラズマ流形成工程とを有することを特徴とするプラズマ流発生方法。
【請求項15】
前記イオン流及びプラズマ流の流れる方向を制御するための磁界が供給されていることを特徴とする請求項14記載のプラズマ流発生方法。
【請求項16】
請求項14又は15記載のプラズマ流発生方法で発生した誘導対象物のプラズマ流に、フラーレンを導入する工程を有することを特徴とする誘導フラーレン製造方法。
【請求項17】
前記誘導対象物はアルゴンガスであり、60〜100eVのエネルギーを有するイオン流から成るプラズマ流を形成してアルゴン原子内包フラーレンを製造することを特徴とする請求項16記載の誘導フラーレン製造方法。
【請求項18】
前記誘導対象物は窒素ガスであり、窒素原子置換ヘテロフラーレン、窒素原子内包フラーレン、又は窒素分子内包フラーレンを製造することを特徴とする請求項16記載の誘導フラーレン製造方法。
【請求項19】
10〜50eVのエネルギーを有するイオン流から成るプラズマ流を形成して窒素原子置換ヘテロフラーレンを製造することを特徴とする請求項18記載の誘導フラーレン製造方法。
【請求項20】
70〜500eVのエネルギーを有するイオン流から成るプラズマ流を形成して窒素原子内包フラーレンを製造することを特徴とする請求項18記載の誘導フラーレン製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−207503(P2007−207503A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−23062(P2006−23062)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(502344178)株式会社イデアルスター (59)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】