説明

プラセンタエキスの抽出方法および栄養補給サプリメント

【課題】プラセンタエキスの抽出処理過程において生ずるメイラード反応を抑制し、呈味・色調・臭いなどの各性状を改善したプラセンタエキスの抽出方法並びに当該抽出方法によって得られたプラセンタエキスを含有してなる栄養補給サプリメントを提供する。
【解決手段】哺乳動物由来のプラセンタからその有効成分を分離抽出する処理工程において、プラセンタを含む処理液中に有機ゲルマニウム微粉末を溶解させ、当該有機ゲルマニウムの存在下で抽出処理を行いメイラード反応を抑制するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は哺乳動物由来のプラセンタからその有効成分を分離抽出するプラセンタエキスの抽出方法および当該抽出方法によって得られたプラセンタエキスを含有してなる栄養補給サプリメントに関する。
【背景技術】
【0002】
哺乳動物の中でも有胎盤類に属する豚、馬、羊などに由来するプラセンタには、種の維持・存続に不可欠な生理活性物質が凝縮されており、医療用注射薬、一般用医薬品、薬用化粧品、一般化粧品、栄養補給のためのサプリメントなどとして広く活用されている。
【0003】
上記した各分野への利用はプラセンタをそのまま用いるのではなく、プラセンタに含まれる有用成分、すなわち、蛋白質、ペプタイド、糖、microRNAなどを抽出したプラセンタエキスを用いることが多い。
【0004】
プラセンタ有用成分の抽出方法としては、酵素分解法、塩酸分解法、アルカリ抽出法、凍結融解法、精製水抽出法、熱水抽出法などこれまでにさまざまな手法が考えられている。下記特許文献1には、プロテアーゼS、パパインW−40、プロテアーゼNまたはプロテアーゼPより選ばれる耐熱性中性蛋白質分解酵素を使用し、温度25〜65℃で酵素消化を促進させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−97033公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されたプラセンタエキスの製造方法においては、通常処方、すなわち、プラセンタを2〜4℃で約4日間冷蔵し、洗浄、細挫しアセトンを加えてホモゲナイズし、脱脂・乾燥させ、当該乾燥物を塩酸を加えることによって酸性(pH2.0)にし、ペプシンで一昼夜消化し、遠心分離して消化液を採取し、沈殿物は塩酸(5N)を加えて加熱し、加水分解する。加水分解液は活性炭で脱色し、濾過後、ペプシン消化液と混ぜ、陰イオン交換樹脂で塩酸を除去し、苛性ソーダを用いてpH6.1〜6.4に補正し、プラセンタエキスを得るという通常の方法によった場合は、pH調整、消化完了後の塩酸の除去など処理が煩雑になるので、当該煩雑さを解消するため、前記した特殊な耐熱性中性蛋白質分解酵素を使用するようにしたものである。
【0007】
前記したように、プラセンタエキスの一般的な抽出は、プラセンタを、精製水を主体とした抽出溶媒中に入れ、酵素・酸などを用いて加熱して行うことが多い。抽出される有用成分は、蛋白質、ペプチド、アミノ酸、核酸、糖などの生体成分である。
【0008】
ところで、これらの生体成分のうち、還元糖とアミノ化合物(蛋白質、ペプチド、アミノ酸)が加温によって熱せられると、メイラード反応が生ずることが知られている。このメイラード反応が起きると、アマドリ化合物が生成される。
【0009】
アマドリ化合物は、呈味・色調・臭いなどの各性状が好ましいものではなく、食品あるいはサプリメントなどとしての経済的価値を低減させる。なお、前記特許文献1に係るプラセンタエキスの製造方法によった場合においても、メイラード反応が起きて褐色物質(メラノイジン)が生成されるのは云うまでもない。
【0010】
プラセンタエキスの抽出過程におけるメイラード反応に関しては、これまでのところ的確な抑制方法が提案されておらず、そのため好ましからざる性状のプラセンタエキスを已む無く用いているのが現状である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、プラセンタエキスの抽出処理過程において生ずるメイラード反応を抑制し、呈味・色調・臭いなどの各性状を改善したプラセンタエキスの抽出方法並びに当該抽出方法によって得られたプラセンタエキスを含有してなる栄養補給サプリメントを提供することにある。
【0012】
上記課題を解決するための本発明の構成を詳述すれば、請求項1に係る発明は、哺乳動物由来のプラセンタからその有効成分を分離抽出する処理工程において、プラセンタを含む処理液中に有機ゲルマニウム微粉末を溶解させ、当該有機ゲルマニウムの存在下で抽出処理を行いメイラード反応を抑制するようにしたことを特徴とするプラセンタエキスの抽出方法である。
【0013】
請求項2に係る発明は、前記有機ゲルマニウムが、カルボキシゲルマニウムセスオキシド(Ge−132)である請求項1に記載のプラセンタエキスの抽出方法である。
【0014】
請求項3に係る発明は、前記プラセンタを含む処理液中における前記有機ゲルマニウムの溶解濃度が0.01ppm〜100ppmの範囲内、好ましくは0.1ppm〜10ppmの範囲内である請求項1または請求項2のいずれかに記載のプラセンタエキスの抽出方法である。
【0015】
また、請求項4に係る発明は、前記処理工程が、酵素分解、塩酸分解、アルカリ抽出、凍結融解、精製水抽出、熱水抽出から選ばれた1または2以上の抽出処理法を含む請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のプラセンタエキスの抽出方法である。
【0016】
さらに、請求項5に係る発明は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のプラセンタエキスの抽出方法によって得られたプラセンタエキスを含有してなる栄養補給サプリメントである。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るプラセンタエキスの抽出方法によれば、プラセンタを含む処理液中に一定濃度で溶存させた有機ゲルマニウムがメイラード反応の抑制因子として作用し、従来製法によるプラセンタエキスと較べて呈味・色調・臭いなどの各性状が改善されたプラセンタエキスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る抽出方法によって得られたプラセンタエキス(検体)を分光光度計を用いて可視光線の吸光度を測定した結果を示すグラフである。
【図2】従来の抽出方法によって得られたプラセンタエキス(対照)を分光光度計を用いて可視光線の吸光度を測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るプラセンタエキスの抽出方法および当該抽出方法によって得られたプラセンタエキスを含有してなる栄養補給サプリメントの具体的構成を詳細に説明する。
【0020】
前記したように、哺乳動物由来のプラセンタ中の有用成分の抽出には複数の方法が存在する。しかしながら、いずれの抽出方法によった場合でも、その処理過程においてpHの変動や、加熱などが生じ、還元糖とアミノ化合物(蛋白質、ペプチド、アミノ酸)が反応を起こし褐色物質が生じる。このメイラード反応は、糖とアミノ基との結合に始まり、シッフ塩基を経てアマドリ生成物に至る反応である。アマドリ生成物はプラセンタエキスの性状にとって好ましいものではない。
【0021】
本発明はプラセンタエキスの抽出過程において生じるメイラード反応を抑制して良好な性状のプラセンタエキスを提供するものであり、哺乳動物由来のプラセンタからその有効成分を分離抽出する処理工程において、プラセンタを含む処理液中に有機ゲルマニウム微粉末を溶解させ、当該有機ゲルマニウムの存在下で抽出処理を行うことを内容とするものである。
【0022】
有機ゲルマニウムには、トリアルキルゲルミルアセテート、カルボキシゲルマニウムセスオキシド、ジメチル(ポルフィリネイト)ゲルマニウムなど複数が知られているが、その中でも安全性に優れるカルボキシゲルマニウムセスオキシド(Ge−132)が本発明の実施にとって最も好ましい。メイラード反応は、アミノ基と糖が存在すれば自然に起きる反応であり、有機ゲルマニウムの添加は抽出の初期段階が好ましい。
【0023】
プラセンタを含む処理液中における前記有機ゲルマニウムの溶解濃度は0.01ppm〜100ppmの範囲内であれば、メイラード反応の抑制効果を得ることができるが、より好ましくは0.1ppm〜10ppmの範囲内である。
【0024】
処理液中の下限濃度を0.01ppmとしたのは、これ以下の濃度ではメイラード反応を抑制する効果がほとんど得られないことが判明したからであり、上限濃度を100ppmとしたのは、これ以上の高濃度とした場合はプラセンタを含む処理液の酵素分解が阻害され抽出効率が低下することが判明したからである。なお、最も好ましい濃度範囲は0.1ppm〜10ppmであり、メイラード反応を良好に抑制できることが各種実験の結果確認された。
【実施例】
【0025】
豚の冷凍プラセンタを自然解凍し、黒子などの不要部分を切除してから脱血・水洗い後、細刻機を用いてプラセンタをミンチ状にした。
一方、精製水を用いてカルボキシゲルマニウムセスオキシド(Ge−132)の0.1%水溶液を作製した。当該0.1%水溶液を、さらに精製水を用いて5000倍に希釈し、カルボキシゲルマニウムセスオキシド(Ge−132)の0.2ppm水溶液を作製した。
【0026】
次いで、前記ミンチ状プラセンタと同量となるように前記0.2ppm水溶液を計量して、両者を等量均一に混ぜ合わせた(Ge−132として0.1ppmに相当)。
【0027】
その後、緩衝バッファーを用いてpH7.0に調整し、中性プロテアーゼを用い攪拌しながら最適温度(48℃)付近で10時間酵素分解を行った。
【0028】
前記酵素分解後、遠心分離機にて沈殿成分を除去し、0.2μのメンブレンフィルタにて無菌濾過を行い本発明に係るプラセンタエキス(検体)を得た。
なお、対照としては、有機ゲルマニウム微粉末を溶解させない通常の精製水を用いて、前記と同一条件にて酵素分解を行って得たプラセンタエキスを用いた。
【0029】
本発明方法によって得たプラセンタエキス(検体)と、常法によって得たプラセンタエキス(対照)とを、分光光度計を用いて、可視光線(380nm〜750nm)の吸光度を測定した。その結果、図1および図2に示すように本発明方法によって得たプラセンタエキス(検体)の場合は、常法によって得たプラセンタエキス(対照)と較べて黄色(580nm)で10%、青色(470nm)で20%の吸光度の低下が確認された。
【0030】
分光光度計を用いた色の評価により、有機ゲルマニウム水の存在下で抽出を行ったプラセンタエキスは有意に色調が薄く、メイラード反応が抑えられていることが明らかとなった。
【0031】
次に、本発明方法によって得たプラセンタエキス(検体)と常法によって得たプラセンタエキス(対照)の臭いの官能検査を実施した。その方法は12名のパネルによる二重盲検法によった。
【0032】
その結果、12名中11名が本発明方法によって得たプラセンタエキス(検体)の方が、常法によって得たプラセンタエキス(対照)より好ましい臭いであるとの回答であった。なお、残りの1名については識別不明であった。
当該臭いの官能検査によって、本発明方法によって得たプラセンタエキスは有意に臭いが少なく、メイラード反応が抑えられていることが判った。
【0033】
さらに、本発明方法によって得たプラセンタエキス(検体)と常法によって得たプラセンタエキス(対照)の呈味についての官能検査を実施した。その方法は12名のパネルによる二重盲検法によった。
【0034】
当該12名のパネルに対し、検体および対照のどちらの方が好ましい呈味であるか質問したところ、12名全員が本発明方法によって得たプラセンタエキスを選択した。
この呈味についての官能検査により、有機ゲルマニウム水を添加して抽出を行ったプラセンタエキスは有意に呈味が良好であり、メイラード反応が抑えられていることが判明した。
【0035】
本発明方法によって得たプラセンタエキスは、たとえばスプレードライ法などによって噴霧し、急速乾燥させて粉末状となし、これをソフトカプセル内に充填するなどして栄養補給あるいは美容用のサプリメントとして提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物由来のプラセンタからその有効成分を分離抽出する処理工程において、プラセンタを含む処理液中に有機ゲルマニウム微粉末を溶解させ、当該有機ゲルマニウムの存在下で抽出処理を行いメイラード反応を抑制するようにしたことを特徴とするプラセンタエキスの抽出方法。
【請求項2】
前記有機ゲルマニウムが、カルボキシゲルマニウムセスオキシド(Ge−132)である請求項1に記載のプラセンタエキスの抽出方法。
【請求項3】
前記プラセンタを含む処理液中における前記有機ゲルマニウムの溶解濃度が0.01ppm〜100ppmの範囲内、好ましくは0.1ppm〜10ppmの範囲内である請求項1または請求項2のいずれかに記載のプラセンタエキスの抽出方法。
【請求項4】
前記処理工程が、酵素分解、塩酸分解、アルカリ抽出、凍結融解、精製水抽出、熱水抽出から選ばれた1または2以上の抽出処理法を含む請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のプラセンタエキスの抽出方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のプラセンタエキスの抽出方法によって得られたプラセンタエキスを含有してなる栄養補給サプリメント。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−48564(P2013−48564A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186805(P2011−186805)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(501036432)株式会社レダ (5)
【Fターム(参考)】