説明

プラットホームドアの安全装置

【課題】 プラットホームドアと車両との間に取り残された乗降客や、車両内部から突出した物体を検知する。
【解決手段】 距離画像センサ14が、プラットホームドア1と車両8との間の撮像領域12内の物体までの距離画像データを検出する。演算部16が、距離画像データのうち、処理領域20内にあるデータを抽出し、抽出されたデータが所定値以上の大きさであるか否か判断し、前記所定値以上である場合、外部に検知信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラットホームに設置されるプラットホームドアに設けられる安全装置に関し、特に、三次元データを取得可能なセンサを使用したものに関する。
【背景技術】
【0002】
プラットホームドアの安全装置としては、例えば特許文献1、2に開示されているようなものがある。
【0003】
特許文献1の技術によれば、プラットホームドアのドアと車両との間の領域において、ドアの両側であって車両から所定の距離に2つのアームを配置し、これら2つのアーム間に光線を引き通すように、透過型光電センサの投光器が一方のアームのプラットホームから所定の高さ位置に設けられ、受光器が他方のアームのプラットホームから所定の高さ位置に設けられている。特許文献2の技術によれば、プラットホームドアのドアと車両との間の領域をカメラによって二次元で撮影し、この撮影画像と基準画像とを比較して、両者の相違部分を検出し、その相違部分の高さを算出し、その高さから車両の走行の障害となるものが存在しているか判断している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−224842号公報
【特許文献2】特開2003−146201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術によれば、車両から所定の距離の位置であってプラットホームから所定の高さの位置にある線分上に、人や物体が存在するか否かを判定することができる。しかし、車両から所定の距離の位置よりも車両側に寄った位置や、プラットホームから所定の高さ位置に存在しないもの、例えば車両のドアから突出している突出物、具体的には傘やバッグを検出することはできない。特許文献2の技術によれば、車両とプラットホームドアとの間を二次元で撮影している画像と基準画像とを比較しているので、車両のドアからの突出物の有無は検出できるが、突出物の大きさを三次元的に測定することができないので、突出物が車両の運行上、問題があるほどにプラットホーム側に突出しているか否かを判断することはできない。
【0006】
本発明は、プラットホームドアと車両との間に取り残された乗降客を検知可能であって、さらに車両内部から突出した物体があった場合、その物体が車両運行上、問題があるか否かを判断できるプラットホームドアの安全装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様のプラットホームドアの安全装置は、タイムオブフライト方式の三次元カメラを有している。三次元カメラは、プラットホームドアと車両との間に存在する人又は物体を含む三次元エリア内の三次元データを検知する。演算部が、前記三次元エリア内すべての三次元データのうち、所定の三次元エリア内にある前記三次元データを抽出し、前記抽出された三次元データが所定値以上の大きさであるか否か判断し、当該判断結果に基づいて、外部に検知信号を出力する。
【0008】
前記所定の三次元エリアは、前記車両のドアの戸先に対応する部分とそれ以外の部分とに区画することができる。この場合、前記戸先に対応する部分では、前記抽出された三次元データの中で隣接するデータの変化率が第1の所定値以上の大きさである複数の点で区画される部分の三次元データについて第2の所定値以上の大きさであるか前記演算部が判断する。第2の所定値以上の大きさである場合に外部に第1の検知信号が出力される。また、演算部は、前記戸先に対応する部分以外の部分にある三次元データを抽出し、抽出された三次元データが第3の所定値以上の大きさであるか否か前記演算部が判断し、前記第3の所定値以上である場合に、外部に第2の検知信号を出力する。
【0009】
このように構成されたプラットホームドアの安全装置では、三次元カメラからの三次元データを使用して人又は物体の大きさを決定することができる。そして、戸先の部分に対応する部分では、三次元データの隣接する部分の変化率が第1の所定値以上に変化している複数の点で区画された部分のデータを使用している。
【0010】
よって、プラットホームドアと車両との間に人や物が存在するか否かはもちろん、車両からの突出物がどの程度突出しているかも検知することができ、どちらの場合でも、車両の運行上問題があると検知信号を出力して、その旨を知らせることができる。更にノイズの影響を抑えつつ、細長いものや薄いものを検知することができる。更に、このデータのみで戸先の部分に突出物が存在するか否かを判断することができる。従って、二次元のカメラで撮影した場合には、差分をとるために必要な参照用のデータ、すなわち車両が停車した後で、かつ車両の扉が開く前のデータを予め用意しておく必要が無く、処理が確実かつ容易となる。なお、タイムオブフライト方式の三次元カメラを用いるため、三次元データを一瞬で得ることができ、短時間で処理が可能となるし、機械的な走査部分が無いので構成が簡単であり、耐久性も高い。
【0011】
更に、前記演算部は、第1及び第2の検知信号を異ならせることができる。このように構成することによって、プラットホーム上に乗降客が取り残されているのか、車両からの突出物が車両の運行の障害になるほど突出しているのか、識別することができる。
【0012】
前記所定の三次元エリアの前記車両側の側面を、前記車両が建築物に非干渉に定められた車両限界または建築物が車両に非干渉に定められた建築限界に沿って定めることができる。
【0013】
このように構成すると、車両限界に沿って所定の三次元エリアの車両側の側面を定めた場合には、乗降客が所持する物体やプラットホーム側から突き出された物が車両に当たる可能性があることを検知でき、建築限界に沿って所定の三次元エリアの車両側の側面を定めた場合には、このまま車両が発車すると、車両から突出した物体が乗降客または建築物に当たる可能性があることを検知することができる。
【0014】
また、前記所定の三次元エリアの前記車両側の側面を、前記三次元カメラから得られた三次元データのうち、前記車両の側壁に相当するデータから構成される面に基づいて設定することもできる。
【0015】
このように構成すると、プラットホームの一部が曲線となっているカーブ駅で、そのカーブしている部分にプラットホームドアが設置されていても、車両の停車位置に影響を受けることなく、正確に乗降客や突出物を検知することができる。
【0016】
また、前記三次元エリアは、プラットホームの床を含むものにできる。この場合、前記抽出された三次元データは前記床に相当する部分を含む。前記演算部において、前記抽出された三次元データまたは当該抽出された三次元データ中で隣接する三次元データの変化率が三次元カメラ取付状態確認用の所定値と比較される。
【0017】
三次元カメラは、車両に乗降する人が通過する可能性のある場所に取り付けられることがある。このような場合、人が三次元カメラに接触して、三次元カメラの取付状態が変更されることがある。この取付状態の変更にきづかずに上述したように抽出された三次元データと所定値との比較が行われると、誤検知を行う可能性がある。そこで、プラットホームの床を三次元エリアに含ませておくと、人が三次元カメラに接触した場合、床に対する三次元データが予め定めた三次元カメラ取付状態確認用の所定値と異なった値となったり、三次元データの隣接するものの変化率が予め定めた三次元カメラ取付状態確認用の所定値と異なったりする。これを検知することによって、三次元カメラの取付状態を確認することができる。
【0018】
前記演算部は、前記抽出された三次元データまたは当該抽出された三次元データ中で隣接する三次元データの変化率に代えて、前記抽出された三次元データに基づいて決定された前記三次元カメラから前記所定のエリアが前記床と交差する部分までの距離を算出し、この距離を前記三次元カメラ取付状態確認用の所定値と比較することもできる。距離は、例えば三次元データの変化率の大きい位置を交差部分と決定し、この位置と三次元カメラとの距離を求めることによって得られる。
【0019】
このように所定エリアの床との交差部分と、三次元カメラとの間の距離を求めて、この距離を所定値と比較するので、高精度に三次元カメラの取付状態が変化したか否を検知できる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明によれば、プラットホームドアと車両との間に取り残された乗降客を検知でき、さらに車両内部から突出した物体があった場合、その物体が車両運行上問題があるか否か判断できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施形態のプラットホームドアの安全装置を実施したプラットホームドアの平面図である。
【図2】図1の安全装置のブロック図である。
【図3】図1の安全装置における距離画像センサの処理領域を示す平面図である。
【図4】図1の安全装置における距離画像センサの処理領域を示す側面図である。
【図5】図1の安全装置における距離画像センサの処理領域を示す斜視図である。
【図6】図1の安全装置における演算部が行う処理の一部を示すフローチャートである。
【図7】図1の安全装置における演算部が行う処理の残りの部分を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第2の実施形態のプラットホームドアの安全装置の処理領域を示す平面図である。
【図9】本発明の第3の実施形態のプラットホームドアの安全装置の画像距離センサの取付状態の変化を示す側面図である。
【図10】本発明の第3の実施形態のプラットホームドアの安全装置の演算部が行う処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の第1の実施形態のプラットホームドアの安全装置は、図1に示すようなプラットホームドア1に取り付けられている。プラットホームドア1は、プラットホーム2の縁部から所定の距離の位置に設けられている。プラットホームドア1では、ドア開口となる間隔をあけてプラットホーム2に沿って1対の戸袋4が配置されている。これら戸袋4間のドア開口を開閉するように、戸袋4からプラットホーム2に沿って1対のスライドドア6が互いに反対方向に進退する。なお、スライドドア6、6がドア開口を閉じている状態において、スライドドア6、6の戸先に、プラットホーム2に停止した車両8の車両ドア10、10の戸先が位置するように、プラットホームドア1は設置されている。符号11で示すのは、車両8の側壁である。
【0023】
このプラットホームドア1と車両8との間の空間の鎖線で示す、三次元エリア、例えば撮像空間12を撮像するために、この実施形態では一方の戸袋4の高さ方向の中途に三次元カメラ、例えばTOF(Time-of-Flight)距離画像センサ14が取り付けられている。撮像空間12は、車両ドア10、10が含まれるように車両8に対して斜めになるように設定されている。距離画像センサ14は、投光器、例えばLEDと2次元に配列された複数の撮像素子とを有し、投光器から照射され反射して各撮像素子に帰ってくる光の到達時間を計測して、物体までの距離を求めるもので、撮像素子ごとに物体までの距離を計測可能である。即ち、二次元の距離データ、すなわち三次元データを計測可能である。なお、本実施例では、この二次元の距離データを距離画像とも表記する。
【0024】
この距離画像センサ14からの二次元の距離データは、図2に示すように、演算部16に伝送され、ここで処理が行われ、プラットホーム2に乗降客が取り残されているか、或いは車両8の車両ドア10の戸先間から所定の長さ以上に突出部、例えば車両8内の乗客の傘やバッグが突出しているか否かを検出し、上位システム18に通知する。
【0025】
演算部16では、図3乃至図5に示すように距離画像センサ14から得られる距離画像、即ち、二次元距離データの全てを使用するのではなく、所定の三次元エリア、例えば処理領域20内の二次元距離データのみを使用する。処理領域20の車両8側の側面20aは、車両8がプラットホーム2上の建築物に接触しないように予め定められた車両限界またはプラットホーム2上の建築物が車両8に接触しないように定められた建築限界に一致するように予め定められている。プラットホーム2に沿う方向の両側にある端面20b、20cは、車両8の側壁11のドア6側の端部よりも幾分外側(ドア6の開放方向側)の位置に定められている。また処理領域20のプラットホームドア側の側面20dは、プラットホームドアのごく近辺の位置に定められ、処理領域20の下面はプラットホーム2の床面に定められ、上面は車両ドア10の上面よりよりも幾分高い位置に定められている。
【0026】
このように二次元距離データの全てを使用せずに、処理領域20内のデータに限っているのは、次の理由による。撮像領域12の全てのデータを使用すると、例えば光や電波を用いた距離画像センサ14のデータでは、センサから放射された光や電波が車両8等に直接に入射する場合だけでなく、車両8の他の部分やプラットホームドア或いはプラットホーム2との間を何度も反射した光や電波が距離画像センサ14に入射することがある。その結果、光路長が長くなる結果、距離画像センサ14で検知される距離値があり得ない距離値、例えば車両8内部を示す距離値やプラットホーム2の床下を示すような距離値となることがあり、処理の効率や精度が悪くなるからである。
【0027】
この処理領域20は、更に第1及び第2の処理領域22、24に区画されている。第1の処理領域22は、車両8のドア10、10の戸先からプラットホーム2の長さ方向に沿って所定の長さの領域であり、第2の処理領域24は、第1の処理領域22の両側の残りの領域である。第1の処理領域22の長さは、第2の処理領域24の長さよりも短い。
【0028】
演算部16では、第1及び第2の処理領域22、24の2次元距離データと、第1及び第2の処理領域22、24用にそれぞれ個別に設定した第1及び第3の所定値、例えば検査用のしきい値とを比較し、処理領域22、24内に物体が存在するか否かを判断している。第1及び第2の処理領域22、24を合わせた処理領域20全体の距離データと、処理領域20の検査用の1つのしきい値とを比較することも考えられる。しかし、検査用のしきい値の値を大きくすると、例えば細長い突出物を検知することができなくなる。逆に小さくすると、例えばノイズの影響で、車両内部から突出する可能性がない処理領域24で細長い突出物があると誤検知をする可能性がある。そこで、第1及び第2の処理領域22、24に分けて、第1及び第2の処理領域22、24それぞれに適した検査用のしきい値を定めて、確実な検知を行いつつ、誤検知を最小限に抑えている。
【0029】
更に、第1の処理領域22では、図3に示すように第1の処理領域22に車両8のドア10の戸先から突出した突出部Aを検出することを主な目的としているので、第1の処理領域22の各処理データのうち隣接する画素の距離データの変化率、例えば隣接画像の距離データの差分値が、第2の所定値、例えば予め定めた突出物検出用しきい値以上の大きさである複数の点で区画される部分のデータについてのみ、第1の処理領域22用の検査用のしきい値と比較している。例えば二次元画像から突出部Aを検出しようとすると、車両8がプラットホーム2に入ってきて、停車した直後で、まだドア10が開いていない状態(即ち、突出部Aが存在していない状態)の画像を基準画像として記憶しておき、ドア10が開いて乗降客が乗り降りしてドア10が閉じられた状態の画像と上記の基準画像とを比較することによって、突出部Aが存在するか否か検出することになる。そのため、上記ドア10が開いていない状態の画像を記憶する手間が必要であるが、ドア10が開いていない状態であることは駅舎の上位システムからの信号に基づいて判断するため、仮に上位システムからの信号に不具合や遅延があった場合に、誤った基準画像が得られることになり、問題がある。一方、隣接画像の距離データの変化率を求める場合には、このような画像の記憶の手間が不要となり、処理が簡単になるうえ、上記のような問題も発生しない。
【0030】
演算部16が第2の処理領域24用に行う検知処理を図6に示す。まず、距離画像センサ14から得られた距離画像のうち、第2の処理領域24に相当する部分を抽出する(ステップS2)。次に、抽出された距離画像と第2の処理領域24の検査用のしきい値と比較し、例えば、このしきい値を超えた画素の数あるいは面積が所定以上あるか否かで、第2の処理領域24内に所定の大きさ以上の人又は物体が存在しているか判断する(ステップS4)。この判断の答えがノーの場合には、第2の処理領域24用の検知処理を終了する。ステップS4の判断の答えがイエスの場合には、上位システム18に対して、取り残された乗客が存在する旨を通知し(ステップS6)、第2の処理領域24用の検知処理を終了する。
【0031】
演算部16が、第1の処理領域22用に行う検知処理を図7に示す。まず、距離画像センサ14から得られた距離画像のうち、第1の処理領域22に相当する部分を抽出する(ステップS8)。抽出された第1の処理領域22の距離画像の隣接する画素の距離値の差分を取り、差分画像を生成する(ステップS10)。この差分画像において差分の全てが、突出部の縁が存在するか否かを決定するしきい値(このしきい値は、プラス側とマイナス側の2つある)よりも小さいか判断する(ステップS12)。この判断の答えがイエスの場合、第1の処理領域22内には車両8からの突出物や乗降客は存在しないので、この第1の処理領域22用の検知処理を終了する。
【0032】
ステップS12の判断の答えがノーの場合、第1の処理領域22内に車両8からの突出物があるかプラットホーム2上に乗降客が取り残されている可能性があるので、差分画像の隣接する画素の差分が所定値以上ある画素で区画された閉じた領域を抽出する(ステップS14)。この閉じた領域の距離値で構成される立体が、第1の処理領域の検査用しきい値(突出物が第1の処理領域22に実際に所定量以上突出しているか否かを決定するしきい値)以上の大きさであるか判断する(ステップS16)。なお、この検査用しきい値は、第2の処理領域22用の所定値と値が異なる。なお、車両8のドア10付近に乗降客が取り残されている場合にも、この検査用しきい値によって検知することができる。
【0033】
ステップS16の判断の答えがノーの場合、第1の処理領域22内には車両8からの突出物や乗降客は存在しないので、この第1の処理領域22用の検知処理を終了する。ステップS16の判断の答えがイエスの場合、第1の処理領域22内に車両8から突出物が突出しているかプラットホーム2上に乗降客が取り残されている旨を上位システム18に通知する(ステップS18)。この通知は、第2の処理領域24において乗降客が取り残されている旨の通知とは異なったものを使用し、両者を上位システム18において区別できるようにしてある。
【0034】
なお、距離画像センサ14のLEDの連続運転時間は、2.5万乃至3万時間程度であり、周囲温度の影響を受けて更に短くなる。製品としての寿命を延ばすために、LEDの発光時間を制限すればよいので、常時LEDを点灯するのではなく、距離画像センサ14を動作させる必要のあるときのみLEDを発光させるようにしている。例えば、車両がプラットホームに入っていて、車両のドアが閉じて発車しようとするときに、人や物体がプラットホームドアと車両との間に存在しないことや、車両のドアから突出物が突出しているか否を検知するような場合、車両がプラットホームに入っていることを表す在線検知信号が出力されているときであって、ドアコントローラが車両のドアを閉じ始めたときに同期してLEDを点灯させ、車両のドアが閉じ始めたときからドアが閉じて車両が発車するのに必要な時間よりも幾分長く設定した時間だけ、LED3の点灯を継続するように、LEDを点灯制御する。
【0035】
本発明の第2の実施形態のプラットホームドアの安全装置を図8に示す。第1の実施形態のプラットホームドアの安全装置では、処理領域20の車両8側の側面の位置は、車両限界または建築限界に沿って定められている。プラットホーム2の直線上の部分にプラットホームドアを設置する場合には、上記のように車両限界または建築限界に基づいて処理領域20の車両8側の側面20aの位置を定めている場合、車両8のプラットホーム2での停車位置が多少ずれても、距離画像センサ14から車両限界または建築限界までの距離はほぼ一定であり、問題は生じない。しかし、プラットホーム2のカーブしている部分に、プラット−ホームドアを設置する場合、車両8の停止位置が多少ずれると、距離画像センサ14に対する車両8の角度が図8に示すようにずれるので、車両限界または建築限界に基づいて処理領域20の車両8側の側面20aの位置を予め定めておくと、検知不能の領域が大きくなる。そこで、第2の実施形態のプラットホームドアの安全装置では、距離画像センサ14によって車両8の側壁11、11を検出し、その側壁11、11から法線方向に所定距離、例えば50mmだけプラットホーム2側の平面を、処理領域20の車両8側の面20aの位置としている。これによって、車両8の停車位置がずれても、検知不能の領域が大きくなることを防止できる。他の構成は、第1の実施形態のプラットホームドアの安全装置と同一であるので、同一部分には同一符号を付して、その説明を省略する。
【0036】
第3の実施形態のプラットホームのドア安全装置を図9乃至図10に示す。この実施形態のプラットホームドアの安全装置では、第1の実施形態と同じ手法によって車両8からの突出物の検知や、人や物体の検知を行っている。但し、図9(a)に示すように、距離画像センサ14が、戸袋4の下端に、車両に対して斜めになるように車両側を向きながら、幾分上方を向くようにも傾けて設置されている。戸袋4の下端に設けたため、乗降客が誤って距離画像センサ14に接触し、同図(b)に示すように距離画像センサ14の傾きが変化することがある。或いは、車両の通行による振動によって距離画像センサ14の傾きが変化することがある。即ち、距離画像センサ14の取付状態が変化することがある。距離画像センサ14の取付状態が変化すると、処理領域20の位置が変化し、車両からの突出物、人、物体を正確に検知できない。従って、距離画像センサ14の取付状態は、予め定められたものに維持されているか否かを検知する必要がある。
【0037】
また、この検知のために距離画像センサ14に傾き検知用センサを設けたのではコストアップとなる。そこで、距離画像センサ14から得られる距離画像を使用して、取付状態が変化しているか否かを演算部16において判定している。
【0038】
図9(a)に示すよう距離画像センサ14が取り付けられている状態において、処理領域20の下面がプラットホーム2の床面に交差する位置が矢印で示すようにある。同図(b)に示すように距離画像センサ14の傾斜が変化した場合、この交差する位置は、矢印で示すように変化する。従って、この交差位置の変化を見ることによって距離画像センサ14の傾きが変化しているか否かを判定することができる。交差位置を求めずに、正常に距離画像センサ14が取り付けられている状態において、距離画像センサ14の距離画像のうち床面に相当する部分を基準値として記憶し、取付状態を確認する必要のあるときの距離画像センサ14の距離画像のうち床面に相当する部分を上記基準値と比較することも考えられる。この場合、基準値に或る程度の許容範囲を持たせる必要があり、微妙な位置変化を検知することができない。
【0039】
そこで、例えば距離画像センサ14の距離画像のうち床面に相当する部分の各画素の隣接するものとの差分値を求め、これら差分値の変化率の大きい位置を交差位置と判定する。差分値を使用すると、微妙な位置変化が強調されるので、微妙な位置変化も検出することができる。この交差位置は、一点だけ求めてもよい。この場合、記憶量を減少させることができる。但し、距離画像センサ14の鉛直方向の回転を検知できない。図9の紙面の表裏方向の一ライン上の差分画像を使用すれば、鉛直方向の回転を検知できるが、記憶量が多くなる。一ライン上の全ての差分画像ではなく、所定複数個数の差分画像を基に交差位置を求め、その平均値を記憶としても構わない。
【0040】
この交差位置の変化を知るために、まず正常に取り付けられている状態での基準値を取得する。即ち、図10(a)に示すように、処理領域20の距離画像のうち床面に相当する部分を抽出する(ステップS20)。次に、距離画像の隣接する画素の距離値の差分を取り、差分画像を生成する(ステップS22)。この差分画像の変化率が変わる位置と距離画像センサ14との距離を床端面距離とし、この床端面距離を基準床端面距離として記憶する(ステップS24)。次に、差分画像も基準差分画像として記憶する(ステップS26)。
【0041】
そして、距離画像センサ14の取付確認をする必要があるとき、同図(b)に示すように処理領域20の距離画像のうち床面に相当する部分を抽出する(ステップS28)。次に、距離画像の隣接する画素の距離値の差分を取り、差分画像を生成し、この差分画像を基に床端面距離を床端面距離として記憶する(ステップS30)。そして、ステップS30で取得した床端面距離と基準床端面距離とがほぼ一致するか判断する(ステップS32)。この判断の答えがノーの場合、メンテナンスを要求する信号を外部に出力し(ステップS34)、この処理を終了する。ステップS32の判断の答えがイエスの場合、ステップS30で取得した差分画像と基準差分画像とが略一致するか判断する(ステップS36)。この判断の答えがノーの場合、ステップS34を実行して、この処理を終了する。ステップS36の判断の答えがイエスの場合、距離画像センサ14の取付状態に変化はないので、この処理を終了する。
【0042】
なお、この取付確認は、例えば物体検知を行う際に行うことができる。これによって、単に距離画像センサ14の位置が変化したことによる誤検知を防止することができる。或いは、プラットホームドアの開動作が行われる直前に行うこともできるし、車両がプラットホーム2に入ってきているが、まだドアが開いていないときに行うこともできる。或いは一定の期間の経過ごとに行うこともできる。
【0043】
床端面距離と差分画像の両方を用いて取付位置の確認を行ったが、いずれか一方のみを使用して取付位置の確認を行ってもよい。また、差分画像ではなく、床面に相当する距離画像そのものを使用して、取付位置の確認を行うこともできる。
【0044】
上記の各実施形態では、三次元カメラとしてTOF方式の距離画像センサを使用したが、これに限ったものではなく、例えばストライプ状の光を車両8側にスキャンしながら照射し、反射してくる形状をCCD等で読み取って三次元データを検知するスキャン方式や、2台のカメラを使用して三角測量の原理で距離を算出して三次元データを検知するステレオビジョン方式のものや、車両8側に投影した特定のパターンを1台のカメラで撮像し、投影したパターンの変形等から三次元データを検知する方式を使用することもできる。上記の各実施形態では、第1及び第2の処理領域22、24に処理領域20を分けて、乗降客や突出物が存在するか検知したが、幾分検知精度は低下するが、処理領域20全体で乗降客や突出物が存在するか検知することも可能である。上記の実施形態では、距離画像センサ14はプラットホームドア1側に設置したが、車両8側に設置することもできる。また第1及び第2の実施形態では、距離画像センサ14を戸袋4の高さ方向の中途に設けているが、これに限られず、第3の実施形態のように戸袋4の下端に設けられていてもよく、更に第3の実施形態では、距離画像センサ14を戸袋4の下端に設けていたが、これに限られず、第1及び第2の実施形態のように戸袋4の高さ方向の中途に設けてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 プラットホームドア
2 プラットホーム
8 車両
14 距離画像センサ(三次元カメラ)
16 演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラットホームドアと車両との間に存在する人又は物体を含む三次元エリア内の三次元データを検知するタイムオブフライト方式の三次元カメラと、
前記三次元エリア内すべての三次元データのうち、所定の三次元エリア内にある前記三次元データを抽出し、前記抽出された三次元データが所定値以上の大きさであるか否か判断し、当該判断結果に基づいて、外部に検知信号を出力する演算部とを、
具備するプラットホームドアの安全装置であって、
前記所定の三次元エリアは、前記車両のドアの戸先に対応する部分とそれ以外の部分とに区画され、前記戸先に対応する部分では、前記抽出された三次元データの中で隣接する三次元データの変化率が第1の所定値以上の大きさである複数の点で区画される部分の三次元データについて第2の所定値以上の大きさであるか前記演算部が判断し、第2の所定値以上の大きさである場合に外部に第1の検知信号を出力し、前記戸先に対応する部分以外の部分にある三次元データを抽出し、抽出された三次元データが第3の所定値以上の大きさであるか否か前記演算部が判断し、前記第3の所定値以上である場合に、外部に第2の検知信号を出力するプラットホームドアの安全装置。
【請求項2】
請求項1記載のプラットホームドアの安全装置において、前記演算部は、第1及び第2の検知信号を異ならせているプラットホームドアの安全装置。
【請求項3】
請求項1乃至2いずれか記載のプラットホームの安全装置において、前記所定の三次元エリアの前記車両側の側面は、前記車両が建築物に非干渉に定められた車両限界または建築物が車両に非干渉に定められた建築限界に沿って定められているプラットホームドアの安全装置。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれか記載のプラットホームドアの安全装置において、前記所定の三次元エリアの前記車両側の側面は、前記三次元カメラから得られた三次元データのうち、前記車両の側壁に相当するデータから構成される面に基づいて設定されるプラットホームドアの安全装置。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれか記載のプラットホームドアの安全装置において、前記三次元エリアは、プラットホームの床を含み、前記抽出された三次元データは前記床に相当する部分を含み、前記演算部において、前記抽出された三次元データまたは当該抽出された三次元データ中で隣接する三次元データの変化率が三次元カメラ取付状態確認用の所定値と比較されるプラットホームドアの安全装置。
【請求項6】
請求項5記載のプラットホームドアの安全装置において、前記演算部は、前記抽出された三次元データまたは当該抽出された三次元データ中で隣接する三次元データの変化率に代えて、前記抽出された三次元データに基づいて決定された前記三次元カメラから前記所定のエリアが前記床と交差する部分までの距離を算出し、この距離を前記三次元カメラ取付状態確認用の所定値と比較するプラットホームドアの安全装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−93514(P2011−93514A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88645(P2010−88645)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【出願人】(503405689)ナブテスコ株式会社 (737)
【Fターム(参考)】