説明

プラットホームドア装置

【課題】腰高式のホームドア装置におけるドア筐体部での旅客の寄り掛かり行為、あるいは線路側覗き込み行為を確実に禁止することができ、安全性を高めることができるプラットホームドア装置を提供する。
【解決手段】このプラットホームドア装置20,60は、プラットホーム11の線路側縁部11Aに沿って安全柵として配置される腰高式のプラットホームドア装置であり、ドア筐体部21の頂部21Aに、旅客の寄り掛かり行為または線路側覗き込み行為を規制する仕切り壁部31あるいは突起群部61を不適行為規制部として設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラットホームドア装置に関し、特に、駅ホームの線路側縁部に沿って配置される開閉自在な自動ドア装置であり、安全柵として機能する腰高式のプラットホームドア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電車や列車が入線する駅のプラットホーム(駅ホーム)の線路側の縁部には、事故防止のための安全柵が設けられている。当該安全柵は、駅ホームに入線して停車した電車等の複数の車両ドアの各々の位置に対応して設置されたプラットホームドア装置を備えている。以下、簡略して「ホームドア装置」と記す。ホームドア装置は、旅客が乗降するときに、電車等の乗降ドアの開閉動作に同期して開閉するドアを有している。ホームドア装置は、駅ホームの線路側縁部に沿って複数設置されている。ホームドア装置は、駅ホームに固定されたドア筐体部と、ドア筐体部内の戸袋構造によって出し入れ自在に設けられたドアとから構成される。ドアは、電車等が入線していないときには、ホームドア装置のドア筐体の内部から出てドアを閉じた状態にある。
【0003】
従来から知られるホームドア装置としては例えば特許文献1に開示される装置がある。特許文献1によるホームドア装置は、当該装置を低コストで実現するための構成を有し、ホームドア装置のドアの開閉動作を入線する列車と連動させるためのホームドア制御装置において、列車検知信号に代えてホームドア開信号を出力するように構成し、ホームドア開信号の受信でホームドアの開閉動作を制御するようにしている。また特許文献2に記載された装置もホームドア装置のドアの開閉動作の制御システムに関するものである。
【0004】
なおホームドア装置では、腰高式の構造と、仕切り壁式の構造とが存在する。腰高式構造のホームドア装置は、旅客の腰の高さ程度までの高さを有する安全柵であり、上方半分の空間が開放されている。仕切り壁式構造のホームドア装置は、安全柵が壁のように全面的に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−071975号公報
【特許文献2】特開2003−327123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
腰高式のホームドア装置のドア筐体部の頂部では、当該頂部に物が置かれないように、また仮に物が置かれても線路側に落下しないように、ホーム側に傾斜する傾斜形状が形成されているのが一般的であった。
他方、かかる従来の腰高式のホームドア装置では、上方の領域が開放されているため、電車等の入線時に、旅客がドア筐体部に寄り掛かっていたり、あるいは、ドア筐体部の頂部から入線してくる電車等を見ようとして線路側を覗き込んだりするがしばしばあった。特に後者の場合には、電車等の運転士は危険を感じて緊急停止を行うこともあり、電車等の運行上も問題になっていた。
従って、従来のホームドア装置のドア筐体部の上記の頂部形状では、旅客の上記の行為を防止することができないという問題が提起されていた。
【0007】
本発明の目的は、上記の課題に鑑み、腰高式のホームドア装置におけるドア筐体部での旅客の寄り掛かり行為、あるいは線路側覗き込み行為を確実に禁止することができ、安全性を高めることができるプラットホームドア装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るプラットホームドア装置は、上記の目的を達成するため、次のように構成される。
【0009】
第1のプラットホームドア装置(請求項1に対応)は、プラットホームの線路側縁部に沿って安全柵として配置される腰高式のプラットホームドア装置であり、ドア筐体部の頂部に、旅客の寄り掛かり行為または線路側覗き込み行為を規制する不適行為規制部を設けるように構成される。
【0010】
上記のプラットホームドア装置では、従来ではドア筐体部の頂部が旅客の腰または胸辺りの高さを有し、その上側が開放されていたので、当該ドア筐体部に対してホーム側に居る旅客が寄り掛かったり、あるいは上側の開放部から乗り出して線路側を覗き込むという行為を行えたが、これらの不適切な行為を規制する不適行為規制部を設けることにより、当該不適切な行為を確実に行えないようし、旅客の安全性を高めるようにした。
【0011】
第2のプラットホームドア装置(請求項2に対応)は、上記の構成において、好ましくは、不適行為規制部は、透明仕切り板を有する仕切り壁部であることを特徴とする。
【0012】
第3のプラットホームドア装置(請求項3に対応)は、上記の構成において、好ましくは、仕切り壁部は、ドア筐体部の上部に固定されるケース部と、当該ケース部の上に設けられるアーチ部とからなり、このアーチ部に透明仕切り板を設けることを特徴とする。
【0013】
第4のプラットホームドア装置(請求項4に対応)は、上記の構成において、好ましくは、不適行為規制部は、ドア筐体部の上部に設けられた傾斜部の傾斜面に形成された複数の突起からなる突起群部であることを特徴とする。
【0014】
第5のプラットホームドア装置(請求項5に対応)は、上記の構成において、好ましくは、上記の突起群部は頂部カバー部材として形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、腰高式のプラットホームドア装置においてそのドア筐体部の頂部に不適行為規制部を設けたため、当該ドア筐体部に対してホーム側に居る旅客が寄り掛かったり、上側の開放空間の領域から旅客が乗り出して線路側を覗き込むという行為を確実に防止し、旅客の安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態に係るプラットホームドア装置の要部を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態に係るプラットホームドア装置の正面図である。
【図3】図2におけるA−A’線断面図である。
【図4】第1実施形態に係るプラットホームドア装置の側面図である。
【図5】第1実施形態に係るプラットホームドア装置の平面図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係るプラットホームドア装置の要部を示す斜視図である。
【図7】第2実施形態に係るプラットホームドア装置の正面図である。
【図8】第2実施形態に係るプラットホームドア装置の側面図である。
【図9】第2実施形態に係るプラットホームドア装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の好適な実施形態(実施例)を添付図面に基づいて説明する。
【0018】
図1〜図5を参照して本発明のプラットホームドア装置の第1の実施形態を説明する。
【0019】
図1等において、11は駅のプラットホームを示している。通常、プラットホーム11の長手方向に沿った少なくとも一方の縁部分(線路側縁部)11Aの外側に線路12(図4に示す)が敷設されている。当該線路12には電車または列車13(以下「電車等13」と記す)が入線する。プラットホーム11に入線し停車した電車等13では、車両ドア14を開いて、プラットホーム11に旅客15を降ろし、プラットホーム11で待っていた旅客15を乗せる。その後、電車等13はその車両ドア14を閉じて発車する。
【0020】
プラットホーム11における線路側縁部11Aには、当該線路側縁部11Aの全部に沿って必要な複数台のプラットホームドア装置20が設置されている。当該プラットホームドア装置20は、プラットホーム11上に居る旅客15を、入線してくる電車等13から保護するための安全柵として機能するものである。図1では、図示および説明の便宜上、隣り合う2台のプラットホームドア装置20のみが示され、その他の装置の図示は省略されている。プラットホームドア装置20は、プラットホーム11の線路側縁部11Aの全部に沿って複数台の当該装置が所定の間隔で設置されている。この所定間隔は、旅客15が電車等13に対して乗降するときに乗降通路となる開口部である。電車等13が入線していない場合には、隣り合う両側の2台のプラットホームドア装置20の各々のドア筐体部21の対向面(側面部)21aのスリット状開口部から移動して出たドア22が安全柵として配置されることになる。ドア22は透明部22aを備えている。電車等13が入線した場合には、旅客15の乗降のために、隣り合う2つのドア22は、電車等13の車両ドア14の開閉動作に連動して開閉する。停車した電車等13の車両ドア14の開閉動作と、2台のプラットホームドア装置20の各々のドア22の開閉動作は、別の場所に配備された管理コンピュータ30の制御に基づいて同期するように行われる。2台のプラットホームドア装置20の各々のドア筐体部21の内部には、ドア22の出し入れを行う機構部(フレーム枠体とレール等)と電動駆動部(電気モータとベルト等)と制御部(下位コンピュータ等)31を備えた戸袋構造部が設けられている。制御部31は、プラットホームドア装置20に付設された各種のセンサ部の信号を入力する。また制御部31は、管理コンピュータ30からの指令を受けて上記電動駆動部を動作させ、ドア筐体部21へのドア22の収納動作、ドア筐体部21からドア22を突出させる動作を制御する。
【0021】
図2は、1台のプラットホームドア装置20のプラットホーム側から見た正面図を示す。このプラットホームドア装置20では、ドア22はドア筐体部21の中に収容されている。23は、ドア筐体部21の頂部に設けられた仕切り壁部である。仕切り壁部23は、図3に示すごとく、それ自体一体化されて形成された構造部材であり、ドア筐体部21の上部に連結して固定されている。
【0022】
上述したプラットホームドア装置20は、ほぼ大人の旅客15の腰のあたりから胸の程度の高さを有しており、その上側は線路側に対して開放された空間になっている。当該プラットホームドア装置20は、いわゆる腰高式のプラットホームドア装置である。このような腰高式のプラットホームドア装置20では、従来の構造では、旅客15が、ドア筐体部21の頂部21bに対して寄り掛かったり、または体を乗り出して線路側を覗き込んだりする行為を行う傾向があった。本実施形態のプラットホームドア装置20によれば、ドア筐体部21の頂部21bに上記の仕切り壁部23を設けるようにしたため、かかる旅客15の寄り掛かり行為や、線路側覗き込み行為を規制する不適行為規制部としての機能を有している。
【0023】
図1〜図3等を参照して上記の仕切り壁部23の構造を詳述する。
仕切り壁部23は、ドア筐体部21のフレーム部分の上側端縁部21−1に固定されるケース部41と、当該ケース部41の上面に固定して設けられたアーチ部42とから構成されている。最初にケース部41とアーチ部42とは一体的に組み付けられて作られ、その後にドア筐体部21の上側端縁部21−1に固定される。仕切り壁部23は、1つのユニットとして、ドア筐体部21において新たな頂部を形作る。
【0024】
ケース部41は、例えば金属性板材を折り曲げまたは複数の所定形状の金属製板材を組合せて接合することにより図示された形状に作られている。ケース部42のドア筐体部21の上側端縁部21−1への固定は、ケース部41とドア筐体部21の各々の係合部を係合させ、かつネジ等の締結具を用いることにより行われる。アーチ部42は、外側周囲の円弧形状のフレームを形成する金属製の上縁枠部43を備える。当該円弧状上縁枠部43の両端部は、ケース部41の上面に溶接等により結合されている。さらに円弧状上縁枠部43には、円弧状上縁枠部43とケース部41の間であってホーム側と線路側の各箇所に透明な仕切り板44が設けられている。2枚の透明な仕切り板44の間には空間45が形成される。透明仕切り板44は、例えば厚みを増して1枚とすることもできる。透明な仕切り板44の材質には、強化ガラスあるいは所要の強度を有する樹脂板が用いられる。仕切り壁部23では、透明仕切り板44を設けることにより、ホーム側に居る旅客15が線路側を見通せることができ、かつ旅客15が線路側にその体を乗り出すことを防止することができる。
【0025】
またアーチ部42の外面全体には、斜線部に示されるように、警告灯としてのシート状の発光体46が付設されている。発光体46にはLED等が利用される。シート状発光体46は、プラットホームドア装置20のドア22の開閉動作において電車等13に乗降する旅客15との関係で異常状態が生じたとき、これを検知するセンサ等からの情報を受けて、管理コンピュータ30および制御部31に基づいて、発光動作を制御するようになっている。シート状の発光体46は、アーチ部42の外面に一定の幅を有して帯状に設けられるので、旅客に視認しやすく、安全性を向上させることができる。
【0026】
図6〜図9を参照して本発明のプラットホームドア装置の第2の実施形態を説明する。
第2実施形態のプラットホームドア装置60では、前述した不適行為規制部として、突起群部61を用いる。突起群部61は、ドア筐体部21の上部に設けられた傾斜部21−2の傾斜面において、当該傾斜面に形成された複数の突起61aから構成される。ドア筐体部21の頂部の端部には異常警報灯62が設けられている。突起群部61以外のプラットホームドア装置60の構成は、従来の腰高式のプラットホームドア装置と同じである。従って、従来の腰高式のプラットホームドア装置において、ドア筐体部21の頂部に関して、突起群部61を頂部カバー部材として設ければ、本実施形態に係るプラットホームドア装置に変更することができる。プラットホームドア装置60においてドア筐体部21の頂部に上記突起群部61を設ければ、旅客の寄り掛かり、線路側への覗き込み、あるい荷物乗せを防止することができる。
【0027】
なお第2実施形態に係るプラットホームドア装置20において、突起群部61に形成される複数の突起の数、配列、あるいは突起の高さは任意に設定することができる。
【0028】
以上の実施形態で説明された構成、形状、大きさおよび配置関係については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎず、また数値および各構成の組成(材質)等については例示にすぎない。従って本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明に係るプラットホームドア装置は、開閉ドアを収納するドア筐体部の頂部に旅客の不適行為を規制するための構造あるいは形状を設けたため、旅客の安全性確保に利用することができる。
【符号の説明】
【0030】
11 プラットホーム
13 電車または列車
14 車両ドア
15 旅客
20 プラットホームドア装置
21 ドア筐体部
21a 側面部
21b 頂部
22 ドア
23 仕切り壁部
30 管理コンピュータ
31 制御部
41 ケース部
42 アーチ部
43 円弧状上縁枠部
44 仕切り板
45 発光体
60 プラットホームドア装置
61 突起群部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラットホームの線路側縁部に沿って安全柵として配置される腰高式のプラットホームドア装置において、
ドア筐体部の頂部に、旅客の寄り掛かり行為または線路側覗き込み行為を規制する不適行為規制部を設けたことを特徴とするプラットホームドア装置。
【請求項2】
前記不適行為規制部は、透明仕切り板を有する仕切り壁部であることを特徴とする請求項1に記載のプラットホームドア装置。
【請求項3】
前記仕切り壁部は、前記ドア筐体部の上部に固定されるケース部と、当該ケース部の上に設けられるアーチ部とからなり、このアーチ部に前記透明仕切り板を設けることを特徴とする請求項2に記載のプラットホームドア装置。
【請求項4】
前記不適行為規制部は、前記ドア筐体部の上部に設けられた傾斜部の傾斜面に形成された複数の突起からなる突起群部であることを特徴とする請求項1に記載のプラットホームドア装置。
【請求項5】
前記突起群部は頂部カバー部材として形成されることを特徴とする請求項4に記載の
プラットホームドア装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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