説明

プラテン平行度調整装置

【課題】製造コストの低減、平行度調整の容易化及び正確化、印字処理時の負荷増大の防止を図ったプラテン平行度調整装置を提供する。
【解決手段】カムシャフト12の一端支持高さを調整ねじ27により調整する手段Dと、プラテン10のホームポジションセンサCと、プラテンを印字ヘッド当接位置からホームポジション(HP)まで移動させるためにモータ11に与えられたステップ数を計数する手段33と、印字ヘッド5の左側測定位置存在時にプラテンを印字ヘッド当接位置からHPまで移動させるためにモータに与えられたステップ数と印字ヘッドの右側測定位置存在時にプラテンを印字ヘッド当接位置からHP位置まで移動させるためにモータに与えられたステップ数の差を求め、又はその差のステップ数をさらに調整ねじの回転角度に換算する演算手段34と、その演算結果を表示する表示手段Eとから構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラテン平行度調整装置、さらに詳しくは、プリンタの印字ヘッドに対するプラテンの平行度を調整するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタにおいて、印字方向に移動される印字ヘッドによる印字媒体(記録紙)に対する印字品質を印字ヘッドの移動方向の全体に渡って均一にするためには、プラテンがその全長に渡って印字ヘッドに対して平行であることが必要である。しかし、印字ヘッドのキャリッジを支持するガイドロッドの取付状態やプラテンの支持状態が完全に水平とは限らないので、プラテンの傾きを測定し、その測定した傾きに応じてプラテンの平行度を調整する必要がある。従来、プラテンの傾きを測定し、その測定した傾きに応じてプラテンの平行度を調整する装置には、種々のものが開示されている(例えば、特許文献1〜8を参照)。
【特許文献1】特開平03−027960号公報
【特許文献2】特開平07−178979号公報
【特許文献3】特開平08−058165号公報
【特許文献4】特開平09−220840号公報
【特許文献5】特開平10−100488号公報
【特許文献6】特開平10−264457号公報
【特許文献7】特開2001−030554号公報
【特許文献8】特開2001−113765号公報
【0003】
これらを大別すると、印字前に傾きを測定し、平行度を調整するもの(事前調整型)と、印字前に傾きを測定してその測定値を記憶しておき、印字時に印字ヘッドの移動位置に合わせて平行度を調整するもの(印字中調整型)とがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術のうち、特許文献1,5,7は、プラテンの傾きを測定するために、プラテンの両端部に対応する二つのプラテン昇降手段と、プラテンの印字ヘッドに当接する位置(以下、印字ヘッド当接位置という。)から基準位置までの移動距離を検出する二つの検出手段とを用いるものである。これらは、プラテン昇降手段とプラテン位置検出手段とを2個ずつ備えるので、製造コストの上昇と設置空間確保の困難性の問題がある。
【0005】
また、上記従来技術のうち、特許文献2,3,5は、印字前に傾きを測定してその測定値を記憶しておき、印字時に測定値に基づいてプラテン移動手段によりプラテンを上げ下げして平行度調整を行う。これらは、印字処理と平行してプラテン移動制御処理をしなければならないので、印字時のソフトウエア処理負荷が大きくなるので、高速印字の抑制要因となるという問題がある。
【0006】
また、特許文献4には、プラテンの左右両側の測定位置におけるギャップ測定値を記憶し、その二つの測定値と、両測定位置間の距離とに基づいて平行度を算出し、その算出値を基準値と比較して、平行度が適正か否かを判定し、ギャップ測定値又は平行度を表示するものが開示されている。しかし、表示されたギャップ測定値又は平行度からは平行度が適正か否かの判定は容易にできるが、その判定後、実際どのように平行度を調整するかについて何ら具体的方法を開示していない。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、解決しようとする課題は、製造コストの低減、平行度調整の容易化及び正確化、印字処理時の負荷増大の防止を図った平行度調整装置を提供することにある。すなわち、さらに詳述すると、傾き測定のためには最小数のプラテン昇降手段及びプラテン位置検知手段を用い、かつ、簡単な調整手段を用いて製造コストの低減を図り、測定値に基づく平行度調整を容易かつ正確に行うことができ、さらに、事前調整により印字時のソフトウエア処理負荷の増大を招かないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、印字ヘッドを印字方向に移動する印字ヘッド移動手段と、その印字ヘッドの移動方向と平行に延びるプラテンを前記印字ヘッドに対して昇降させるプラテン昇降手段とを有し、前記プラテン昇降手段は、ステッピングモータ(以下、Sモータという。)の回転力を摩擦クラッチを介してカムシャフトに伝え、そのカムシャフトに固着されたカム及び前記プラテンに設けられたカムフォロワを介して前記プラテンを印字ヘッドに対して昇降させるものであるプリンタにおいて、プラテン平行度調整装置を、前記カムシャフトの一端を昇降自在に支持し、調整ねじの回転によりその支持高さを調整する高さ調整手段と、プラテンがホームポジション(以下、HPという。)に移動されたことを検知する検知手段(以下、HPセンサという。)と、プラテンを印字ヘッド当接位置からHPまで移動させるために前記Sモータに与えられたステップ数を計数する手段と、印字ヘッドが左側測定位置に存在するときのプラテンを印字ヘッド当接位置からHPまで移動させるために前記Sモータに与えられたステップ数と印字ヘッドが移動範囲の右測定位置に存在するときのプラテンを印字ヘッド当接位置からHPまで移動させるために前記Sモータに与えられたステップ数の差を求める演算手段、又はその差のステップ数をさらに前記調整ねじの回転角度に換算する演算手段と、その演算結果を表示する表示手段とを備えて構成したことを特徴としている(請求項1)。
【0009】
上記構成により、プラテン昇降手段がプラテンを上昇させると、プラテンが印字ヘッドに当接した時、摩擦クラッチが働いてプラテンの上昇は停止される。プラテン昇降手段はそのプラテンを印字ヘッド当接位置からHP、すなわち、HPセンサにより検知される位置まで移動する。ステップ数計数手段は、プラテンを印字ヘッド当接位置からHPまで移動するためにSモータに与えたステップ数を計数する。傾きを測定するときは、印字ヘッド移動手段により印字ヘッドを左側測定位置に移動した後、プラテンを印字ヘッド当接位置からHPセンサ検知位置まで移動するためにSモータに与えたステップ数Saを計数し、続いて、印字ヘッド移動手段により印字ヘッドを右側測定位置に移動した後、プラテンを印字ヘッド当接位置からHPまで移動するためにSモータに与えたステップ数Sbを計数する。演算手段は、左側測定位置におけるステップ数(Sa)を基準として、これと右側測定位置におけるステップ数(Sb)との差(Sa−Sb)を求める。すなわち、プラテンの傾きを測定する。演算手段はその差をさらに調整ねじの所要回転角度に換算するようにしても良い。換算率は調整ねじのピッチに依存するが、例えば、1ステップが12.6度(プラテンの昇降距離は0.0175mm)である。表示手段は、演算結果であるステップ数又はステップ数から換算された調整ねじの回転角度を数値で表示する。従って、保守係は、その表示内容に基づいて、調整ねじを正方向又は負方向に回して、正確に平行度の調整作業を行うことができる。この平行度調整は、印字前、すなわち、印字処理をしていないときに行われる。
【0010】
本発明においては、表示手段は、演算手段の結果を正又は負の符号と調整量であるステップ数又は調整ねじの回転角度の数値とを表示するものであることが望ましい(請求項2)。
表示手段は、演算結果に応じて「正」又は「負」の符号と、その差の値を近接して表示する。従って、保守係は、その表示内容に基づいて調整ねじを正確に正方向又は負方向に回して、調整作業を精密に行うことができる。
【0011】
表示手段は、調整ねじの付近に設けられることが望ましい(請求項3)。このようにした場合は、保守係は、表示内容を近くに見ながら、平行度調整作業を行うことができる。
【0012】
さらに、本発明においては、頭にマイナスの係合溝を有する調整ねじを用い、その調整ねじの頭を支持する面の調整ねじの頭の周囲にステップ数又は回転角度の目盛りを備えることが望ましい(請求項4)。
これにより、保守係は、表示手段の表示内容を見ながら調整ねじを回し、その係合溝を表示内容に対応する目盛りに合致させることにより、一層高精度に平行度調整を行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、プラテン平行度調整装置は、プラテン昇降手段を構成するカムシャフトの一端を昇降自在に支持し、調整ねじの回転によりその支持高さを調整する高さ調整手段と、プラテンがHPに移動されたことを検知するHPセンサと、プラテンを印字ヘッド当接位置からHPまで移動させるために前記Sモータに与えられたステップ数を計数する手段と、印字ヘッドが左側測定位置に存在するときのプラテンを印字ヘッド当接位置からHPまで移動させるために前記Sモータに与えられたステップ数と印字ヘッドが右側測定位置に存在するときのプラテンを印字ヘッド当接位置からHPまで移動させるために前記Sモータに与えられたステップ数の差を求める演算手段、又はその差のステップ数をさらに前記調整ねじの回転角度に換算する演算手段と、その演算結果を表示する表示手段とを備えて構成されるから、プラテン昇降手段、プラテン位置検知手段(HPセンサ)はそれぞれ1個だけ用いて、構成要素の数を少なくすることができるので、製造コストの低減を図ることができる。また、平行度調整は、印字前に行われるので、平行度調整がCPUの印字処理の負担を増加させないから、高速印字に支障を与えることがない。
【0014】
請求項2の発明によれば、表示手段は、演算手段の結果を正又は負の符号と調整量であるステップ数又は調整ねじの回転角度の値とを表示するから、保守係は、表示手段の表示内容に基づいて、調整ねじを正確に正方向又は負方向に回して、調整作業を精密に行うことができる。
【0015】
請求項3の発明によれば、表示手段は調整ねじの付近に設けられるので、表示内容を見ながら正確・迅速にプラテン平行度の調整を行うことができる。
【0016】
請求項4の発明によれば、マイナスの係合溝を有する調整ねじを用い、その調整ねじの頭を支持する面の調整ねじの頭の周囲にステップ数又は回転角度の目盛りを備えているので、保守係は、表示手段の表示内容を見ながら、調整ねじを回し、係合溝を表示内容に対応する目盛りに合致させることにより、一層高精度に平行度調整を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1は本発明のプラテン平行度調整装置の概略的な構成を示すブロック図、図2はプリンタの要部の正面図で、印字ヘッドが左側測定位置に存在する状態を示す。図3は同じく正面図で、印字ヘッドが右側測定位置に存在する状態を示す。図4はプラテン支持高さ調整手段の斜視図、図5はプラテンがHPに到達したことを検出するHPセンサの一例を示す斜視図、図6は調整ねじ装着位置と表示部の一例を示す平面図、図7は表示部の詳細図、第8は図7の円X部分の拡大図、図9はプラテン平行度調整モード時の動作を示すフローチャート、図10はプラテン平行度測定動作の詳細を示すフローチャートである。
【0018】
本発明は、プラテンの平行度調整を実現するために、図1に示すように、概略的には、印字ヘッド移動手段A、プラテン昇降手段B、プラテン位置検知手段としてのHPセンサC、プラテン支持高さ調整手段D及び表示手段E、制御手段32、計数手段33及び演算手段34を含むCPU(F)、並びに記憶手段Gを有している。記憶手段Gはプログラムメモリ35とデータメモリ36とを含む。
【0019】
図1及び図2において、1a,1bはプリンタの上部フレーム、2a,2bは同じく下部フレームである。上部フレーム1a,1bには印字ヘッド移動手段Aが設けられている。この印字ヘッド移動手段Aは、一例として、上部フレーム1a,1bの間に設けられた上下のガイドロッド3a,3bにキャリッジ4をガイドロッド3a,3bの軸線方向に摺動自在に支持し、そのキャリッジに印字ヘッド5を取り付け、上部フレーム1aに取り付けたプーリ6aと、上部フレーム1bに取り付けられたSモータ7に設けてあるプーリ6bとの間に掛け回されたタイミングベルト8の一部をキャリッジ4に結合して構成され、Sモータ7の一方向回転及び逆方向回転により、印字ヘッド5がガイドロッド3a,3bの軸線に沿ってプーリ6a,6b間を移動されるようになっている。9は印字ヘッド5の下端部に設けてあるリボンマスクである。
【0020】
下部フレーム2a,2bの間には、プラテン10がリボンマスク9の移動領域の下側でかつ左右方向の一定の位置において摺動案内機構(図示せず)により昇降自在に支持されている。そして、そのプラテン10の下側に、プラテンをその上面が印字ヘッドのリボンマスクに当接する位置(印字ヘッド当接位置に相当)から下方のHPまでの間を昇降させる1個のプラテン昇降手段Bが設けられている。
【0021】
プラテン昇降手段Bは、次のように構成されている。すなわち、下部フレーム2aにはSモータ11が取り付けられ、下部フレーム2aをその外側から貫通し、下部フレーム2bの近傍まで連続するカムシャフト12が、左右両側において下部フレーム2cに固着されたブラケット13a,13bに保持されたボールベアリングなどの軸受14a,14bにより回転自在に支持され、そのカムシャフト12の両端部から中央方向に一定距離隔てた2箇所にカム15が固着されている。そして、カムシャフト12の下部フレーム2a側の端部にトルクリミッタ(登録商標)等の摩擦クラッチ16が介在され、そのカムシャフト12の駆動側部分の端部は下部フレーム2aの外側に突出され、その端部に固着されたプーリ17aと、Sモータ11の下部フレーム2aの外側に突出された駆動軸の先端に固着されているプーリ17bとの間にベルト18を掛け回してある。
【0022】
プラテン10の両端部から中央方向に等距離隔てた2箇所の下部であって、カムシャフト12の各カム15に対応する位置には、カムフォロア19が取り付けられて、常時カム15に載置されている。
【0023】
上記の構成より、Sモータ11が所定方向に回転されると、カム15の所定方向の所定量の回転によってカムフォロア19を介してプラテン10が上昇し、そのプラテンの上面が印字ヘッドのリボンマスク9に当接すると、トルクリミッタ16が作用して、Sモータ11の回転力が遮断されてカムシャフト12の従動側部分に伝達されないため、プラテン10は印字ヘッド当接位置に停止される。また、上記プラテン昇降手段BのSモータ11が逆方向に回転されると、逆転されるカム15を介してプラテン10は下降されるようになっている。
【0024】
プラテン10に対しては、プラテン10がHPに到達したこと又は存在することを検知するための検知手段として1個のHPセンサCが設けられている。図示の例では、このHPセンサCは、プラテンの長手方向中央位置に被検知部材としての遮光板20が設けられ、下部フレーム2cには下降されるプラテン10がHPに到達したときに、遮光板20により光が遮断されて検知信号を出力する光電スイッチ21が設けられて、構成されている。遮光板20及び光電スイッチ21は、構成の一例に過ぎず、HPセンサには、他の既知の構成のものを用いることができる。
【0025】
本発明においては、プラテンの平行度調整のために、カムシャフト12のトルクリミッタ16と反対側の端部(図1,2においては右端部)に、プラテン支持高さを調整するための調整手段Dが設けられている。この調整手段Dは、次のように構成されている。すなわち、下部フレーム2cに設けた孔22に挿通した倒立L字形の支持板23をその上部水平部分で溶接などにより接合し、その支持板23の垂直部分に設けてある縦長孔(図示せず)にカムシャフト12の一端部が昇降自在に挿通され、そのカムシャフト12に軸受14bを介して取り付けてあるL字形のブラケット13bを調整板として、これに設けてある垂直な延長部24を孔22に昇降自在に通して上方に延ばし、その延長部24の上端部に形成してある縦長孔(図示せず)に止めねじ25を貫通し、かつ、支持板23の上方突起23aに形成されているねじ孔(図示せず)に締付けて、ブラケット13bの昇降を固定してある。26は、ブラケット13bの支持板23に対する案内性を高める抱持部である。
【0026】
そして、フレーム2cの孔22の近傍位置において、調整ねじ27が下方に貫通され、フレーム2cの直下においてその調整ねじにEリングなどを装着して一定の位置で回転自在に保持されている。そして、調整ねじの下端部はブラケット13bの水平部分28にねじ込まれている。調整ねじ27の頭29にはマイナス(−)の係合溝が設けてあり、その係合溝に簡易な工具、例えばマイナスドライバの先端を嵌合して、右又は左方向に回すことにより、カムシャフト12の一端部の支持高さを調整することができる。
軸受14aのブラケット13aに対する取付けに遊びを持たせてあることにより、調整ねじ27の回転に伴ってカムシャフト12の一端部の支持高さの調整が可能である。
【0027】
調整ねじ27の支持面には、図8に示すように、調整ねじの軸芯を中心とする円周に沿って目盛り30が設けられている。従って、調整ねじ27の頭29の係合溝がマイナスである場合は、マイナスドライバで調整ねじを回し、その係合溝の一端を所定の目盛りに合わせることにより、調整ねじ27を所定回転角度まで正確に回すことができる利点がある。
【0028】
図6に示すように、調整ねじ27の付近には、表示部Eが設けられている。この表示部Eは、一例として、図7に示すように、3桁のセブンセグメントで構成された表示素子31a,31b,31cを有し、百位の表示素子31aは後述される演算手段による演算結果の正又は負の符号として「+」又は「−」もしくは「1」又は「0」を表示し、十位及び一位の表示素子31b,31cは、演算結果の数値を表示するものである。
【0029】
このプリンタの処理モードを、例えばプリンタ納品時又は使用前に、プラテン平行度調整モードに選択すると、CPUは、プラテン平行度調整モードを処理するためのプログラムの実行を開始する。図9に示すように、まず、イニシャル動作(ステップ1。以下、ステップをSで表す。)を行う。すなわち、制御手段32がプラテン昇降手段Bを制御して、プラテン10を、HPセンサCを動作させる位置、すなわち、遮光板20が光電スイッチ21を動作させる位置まで下降させ、続いて、制御手段31は印字ヘッド移動手段Aを制御して、印字ヘッド5を印字領域の外側の待避位置に移動させる。
【0030】
次に、CPUは、プラテン平行度測定動作を行う(S2)。S2の詳細は図10に示すとおりである。すなわち、制御手段32は印字ヘッド移動手段Aを制御し、キャリッジ4を左側測定位置まで移動させる(S21)。続いて、プラテンの傾き測定動作(S22)を行う。すなわち、プラテン昇降手段Bを制御してSモータ11を所定方向に前もって設定されている所定時間回転させて、プラテン10を上昇させる。プラテンの上面がリボンマスク9に当接すると、トルクリミッタ16が作用し、プラテンはその位置に停止される。次に、Sモータ11を逆転させ、プラテンを下降させると同時に、プラテンを下降させるためにSモータ11に与えたステップ数を計数手段33により計数し始める。プラテンがHPまで下降すると、遮光板20により光電スイッチ21が動作され、検知信号がCPUに入力される。これによりプラテンのHP到達が検知され、プラテンの印字ヘッド当接位置(正確にはリボンマスク当接位置)からHPに到達するまでにSモータ11に与えられたステップ数が計数手段33により計数される。こうして、プラテンの印字ヘッド当接位置からHPまでの距離が測定される。プラテンのHP到達が検知されると、制御手段32は再びプラテン昇降手段Bを制御してホーミング動作をさせる。S22における計数値Saは左側測定位置における測定結果としてデータメモリ36に記憶される(S23)。
【0031】
次に、制御手段32は印字ヘッド移動手段Aを制御し、キャリッジ4を右側測定位置まで移動させる(S24)。続いて、その右側測定位置において、ステップS22と同様に、プラテンの傾き測定動作(S25)が行われる。そして、S25における計数手段33による計数値Sbは右側測定位置における測定結果としてデータメモリ36に記憶される(S26)。
【0032】
右側測定位置におけるプラテンの傾き測定動作による測定結果が格納されると、CPUの演算手段34により、左側測定位置における測定結果(Sa)と右側測定位置における測定結果(Sb)との差(Sa−Sb)、すなわち、プラテンの長手方向に離間された2箇所のうち1箇所、例えば左側測定位置におけるプラテンの印字ヘッド当接位置からHPまでの距離を基準値として、もう1箇所におけるプラテンの印字ヘッド当接位置からHPまでの距離との差、すなわち傾きを求める(S27)。この差の値はSモータ11のステップ数であり、データメモリ36に記憶される。
【0033】
傾きの測定値が記憶された後は、CPUは再び印字ヘッド移動手段Aを制御して印字ヘッド5を待避位置まで移動させ(S29)、その後、図9のメインフローに戻り、制御手段32はデータメモリ36から平行度測定結果であるステップ数を読み出して表示部Eに表示させる。この場合、差(Sa−Sb)の値が正の数であるとき、すなわち、プラテンの右側が左側よりも高いときは、表示部Eの左端の表示素子31aには「+」又は「1」の符号が表示され、差(Sa−Sb)の値が負の数であるとき、すなわち、プラテンの右側が左側よりも低いときは、表示部Eの左端の表示素子31aには「−」又は「0」の符号が表示される。そして、表示手段の右端の二つの表示素子31b、31cには、傾き測定値であるステップ数が表示される。
【0034】
保守係は、その表示内容に基づいて、調整ねじ27の頭29の係合溝に任意の工具、例えば、マイナスドライバーの先端を係合して、符号が「+」又は「1」であれば、調整ねじ27を反時計方向に回転し、符号が「−」又は「0」であれば、調整ねじ27を時計方向に回転する。その場合、回転角度は、ステップ数を回転角度に換算した既成のプラテン平行度調整換算表などを見ながら決定される。一例を説明すると、ステップ数1に対する調整ねじの回転角度は12.6度であり、その角度を回転した場合のプラテンの昇降距離は0.0175mmである。従って、表示部Eに表示されているステップ数に12.6を乗じると、所要の回転角度が得られる。
【0035】
表示されているステップ数に対応する回転角度をプラテン平行度調整換算表から読み取ることができても、現在位置の調整ねじ27をその読み取った回転角度まで正確に回すことは容易ではない。しかし、図8に示すように、調整ねじの周囲にピッチが例えば1度又は2度程度の細かい等間隔の放射線及び度数を有する目盛り30が表記されている場合は、比較的容易に正確な調整ねじの回転が可能である。その場合は、目盛りの各放射線はステップ数を表すようにすると、表示されたステップ数と合致する目盛りの数だけ調整ねじを回せばよいので、調整作業が容易にできる。
【0036】
プラテンの傾き測定値であるプラテン昇降手段BのSモータ11のステップ数と調整ねじの回転角度は、上述の例のように、リニアな関係にあるので、CPUの演算手段34には、さらに、傾き測定値であるステップ数に一定の換算率(上の例では、12.6)を乗じて調整ねじの回転角度に換算する演算を行わせ、その演算結果である回転角度を表示部Eに表示させることもできる。
【0037】
この場合は、表示された数値に対応する目盛り分だけ調整ねじ27を回転すればよいので、より簡単にかつ正確に平行度調整を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明のプラテン平行度調整装置の概略的な構成を示すブロック図。
【図2】印字ヘッドが左側測定位置に存在する状態を示すプリンタの要部の正面図。
【図3】印字ヘッドが右側測定位置に存在する状態を示すプリンタの要部の正面図。
【図4】プラテン支持高さ調整手段の斜視図。
【図5】プラテンがHPに到達したことを検出する検知手段の一例を示す斜視図。
【図6】調整ねじ装着位置と表示手段の一例を示す平面図。
【図7】表示手段の詳細図。
【図8】図7の円X部分の拡大図。
【図9】プラテン平行度調整モード時の動作を示すフローチャート。
【図10】プラテン平行度測定動作の詳細を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0039】
A 印字ヘッド移動手段
5 印字ヘッド
7 モータ
8 ベルト
9 リボンマスク
B プラテン昇降手段
10 プラテン
11 Sモータ(ステッピングモータ)
12 カムシャフト
13a ブラケット
13b ブラケット
14a,14b 軸受
15 カム
16 摩擦クラッチ(トルクリミッタ)
19 カムフォロア
C プラテン位置検知手段(HPセンサ)
20 遮光板
21 光電スイッチ
D プラテン支持高さ調整手段
13b ブラケット(調整板)
24 支持板
27 調整ねじ
29 ねじの頭
30 目盛り
E 表示手段
31a,31b,31c 表示素子
F CPU
32 制御手段
33 計数手段
34 演算手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印字ヘッドを印字方向に移動する印字ヘッド移動手段と、その印字ヘッドの移動方向と平行に延びるプラテンを前記印字ヘッドに対して昇降させるプラテン昇降手段とを有し、前記プラテン昇降手段は、ステッピングモータの回転力を摩擦クラッチを介してカムシャフトに伝え、そのカムシャフトに固着されたカム及び前記プラテンに設けられたカムフォロワを介して前記プラテンを前記印字ヘッドに対して昇降させるものであるプリンタにおいて、
前記カムシャフトの一端を昇降自在に支持し、調整ねじの回転によりその支持高さを調整する高さ調整手段と、前記プラテンがホームポジションに移動されたことを検知する検知手段と、前記プラテンを前記印字ヘッドに当接する位置から前記ホームポジションまで移動させるために前記ステッピングモータに与えられたステップ数を計数する手段と、前記印字ヘッドが左側測定位置に存在するときの前記プラテンを前記印字ヘッドに当接する位置から前記ホームポジションまで移動させるために前記ステッピングモータに与えられた前記ステップ数と前記印字ヘッドが右側測定位置に存在するときのプラテンを前記印字ヘッドに当接する位置から前記ホームポジションまで移動させるために前記ステッピングモータに与えられたステップ数の差を求める演算手段、又はその差のステップ数をさらに前記調整ねじの回転角度に換算する演算手段と、その演算結果を表示する表示手段とを備えてなるプラテン平行度調整装置。
【請求項2】
表示手段は、演算手段の結果を正又は負の符号とステップ数又は調整ねじの回転角度の数値とを表示するものである請求項1に記載のプラテン平行度調整装置。
【請求項3】
表示手段は、調整ねじの付近に設けられている請求項2に記載のプラテン平行度調整装置。
【請求項4】
調整ねじは頭にマイナスの係合溝を有するものであり、その調整ねじの頭を支持する面に、その調整ねじの頭を中心とする周囲にステップ数又は回転角度の目盛りを備えた請求項1,2又は3に記載のプラテン平行度調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−297793(P2006−297793A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−123914(P2005−123914)
【出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(000146663)株式会社新興製作所 (60)
【Fターム(参考)】