説明

プラネタリウム装置

【課題】光学式投影機で、多数の輝星投影機を設置した場合でも、部品点数を増やすことなく、簡易な構成でそれぞれの明るさを自在に制御することが可能になるプラネタリウム装置を提供する。
【解決手段】光源ランプ1の光は偏光板2によって直線偏波に変換され、透過型液晶パネル3に入射する。透過型液晶パネル3は対象となる輝星の投影高度のデータによって対象となる輝星の投影高度対応に透過度が制御される。透過型液晶パネル3で形成された像は結合レンズ4によって光ファイバ束6の入力端に結像される。光ファイバ束6の反対側からはそれぞれの光ファイバ7が各輝星投影手段に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドーム状スクリーンに星空を投影するプラネタリウム装置、さらに詳しく言えば、プラネタリウム装置の光源ブロックに関する。
【背景技術】
【0002】
ドーム状スクリーンに星空を投影するプラネタリウムとして、従来は複数の恒星原板と投影レンズを有し、全天を分割して投影する光学式プラネタリウムが知られている。恒星原板と投影レンズ、光源を有する恒星球を、日周軸、緯度軸を中心に回転させることにより任意の緯度と経度および日時の星空を投影することができる。
これら光学式恒星投影機では、恒星原板の孔の直径を等級に応じた値に設定することにより恒星の固有の明るさを再現する。すなわち、恒星の光度の平方根に比例した直径に設定して、星の明るさを投影される面積に置き換え、擬似的に明るさを再現する。
【0003】
しかし、この方式では一等星などの輝星の像の直径が大きくなりすぎ、本来は鋭い点像として見えなければならないところが、面積体として見えてしまい不自然である。そこでしばしば、輝星投影機と呼ばれる、一等星のそれぞれに専用に割り当てた投影機を用いて、輝度を高めて投影することが行われていた。輝星投影機では、専用の光学系で光を絞り込むために小さく鋭いリアルな輝星像を投影することができる。また、輝星投影機に個別に設けられた光源の明るさを制御するか、または輝星投影機に導く光学系にシャッターを設け輝星の明るさを個別に制御して瞬き現象などを再現できるものも存在する。
また、ドーム状の遮蔽物のパターンに応じてそれぞれの輝星の投影光をオンオフするものも存在する(特許文献1)。
【0004】
また、恒星像の明るさを保ちながら星像を小さくしてリアルにするために、恒星原板に相当する部分に、光ファイバを用いて個別の恒星にそれぞれファイバで光を導くファイバ光学投影方式が知られている。
一方、近年はこうした恒星原板によらず、コンピュータで生成した映像を液晶やDLP(テキサス・インスツルメントの登録商標)方式などのプロジェクタによって投影するディジタルプラネタリウムが登場している。ディジタルプラネタリウムは、ドーム中心に魚眼レンズを装着したプロジェクタにより、1台で全天を覆うものや、ドーム周辺部に複数のプロジェクタを配置して全天を覆うものなどがある。いずれも、映像信号により星の動きを再現できるため、可動部が必要なく、しかも光学式プラネタリウムでは困難な星の固有運動や低空での減光、複雑なまたたき現象、前景に障害物が存在するシーンで、障害物に重なる恒星を消して不自然さを解消するなどの演出が可能である。
【0005】
しかし従来のプラネタリウム装置には以下のような問題点があった。すなわち、従来の光学式プラネタリウム装置では、投影される星空の日時や緯度,経度を変えることができても、それぞれの恒星の明るさを、遮蔽物が投影されたときに消すなどの演出ができなかった。輝星投影光を任意に遮蔽する装置であっても、それぞれの輝星の投影機にシャッターを設ける方式であり、輝星の数が少なければまだしも、輝星の数が増えた場合には投影機や制御回路が煩雑になりサイズとコストアップになる問題点があった。
【0006】
また、ファイバ光学投影方式では、それぞれ微妙に異なる恒星の固有の明るさの差を再現するために、ファイバの太さを等級ごとに変えたり、ファイバの出射端にそれぞれ減光させるフィルタや絞りを設けるなどが必要であり、少なくとも数千個以上という膨大な恒星を再現するには、それぞれの恒星の明るさに応じたこれらの装着は非常な手間を伴い、コストアップの原因になるばかりでなく、変光星などの再現は難しいという欠点があった。また、ディジタルプラネタリウムでは、一様に照明された投影面を液晶やDLPなどの素子で遮光することにより映像を生成する方式であるため、元々の投影面(ホワイト面)以上の輝度を出すことができず、輝星投影機を用いた光学式プラネタリウムのように輝星をリアルに再現することができない問題点があった。
【0007】
さらには、光ファイバや光ファイバ束を用いて複数の恒星投影筒を照明して恒星を投影しつつ高輝星投影筒に光ファイバを用いて高輝度の恒星像を投影し、高輝星投影筒には遮光子によって高輝星を独立に遮光でき、恒星投影筒の照明用光ファイバの光路中には、光ファイバ収束部端面の一部を遮光しながら移動する遮光子を備えた発明が存在する(特許文献3,4)。
しかしいずれも、高輝星は個別に設けたシャッターにより遮光する方式であるので高輝星の数だけシャッターとその制御回路を必要として煩雑である。また他の恒星をランダムに瞬かせることができるが、こちらは瞬かせるだけの機能しかなく、個別の星のオンオフを独立して制御する機能は一切記載されていない。また、恒星原板に液晶パネルを使用する記載があるものの、液晶パネルは解像度に制約があり、微光星といえども、十分シャープな恒星を投影できる方法を示していない。
【特許文献1】特開2006−145614号公報
【特許文献2】特開平10−123939号公報
【特許文献3】特開2001−109063号公報
【特許文献4】特許第3787249号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
なお、電気光学効果により任意の透過パターンを生成する恒星投映原板を配置したものが開示されている(特許文献2)。これは例えば、他の投影装置と重なる部分がある場合、恒星の透過パターンを遮蔽するもので、光ファイバで恒星投映原板の透過パターンを投影レンズに導きドームスクリーンに投影するものではない。
本発明の目的は上記状況に鑑み、光学式投影機で、多数の輝星投影機を設置した場合でも、部品点数を増やすことなく、簡易な構成でそれぞれの明るさを自在に制御することが可能になるプラネタリウム装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために本発明の請求項1は恒星を投影するため、光ファイバを設けたプラネタリウム装置であって、一恒星の照明用に、入射端は複数の光ファイバが束ねられ、出力端は光ファイバ単位にそれぞれ恒星投影手段に接続される光ファイバ束を設け、前記入射端に光源からの光を入射することによりそれぞれの恒星投影手段に光を導く構成となっており、前記入射端の光路中に、それぞれの光ファイバを通る光量を制御する画像生成素子を配置することにより各恒星の光量を個別、かつ任意の光量に制御するか、または各恒星の光量をオンオフすることを特徴とする。
本発明の請求項2は請求項1記載の発明において前記画像生成素子は、各光ファイバを通る光の透過率を制御する透過型素子であることを特徴とする。
本発明の請求項3は請求項1記載の発明において前記画像生成素子は、各光ファイバを通る光の反射率または反射角を制御する反射型素子であることを特徴とする。
本発明の請求項4は請求項1,2または3記載の発明において前記画像生成素子と、光ファイバの入射端の間に結像レンズが配置され、前記結像レンズにより、前記画像生成素子による像が光ファイバ入射端に結像することを特徴とする。
本発明の請求項5は請求項1,2,または3記載の発明において前記画像生成素子と、光ファイバの入射端が近接して配置されることにより、前記画像生成素子の像を光ファイバの入射端に落射させることを特徴とする。
本発明の請求項6は請求項1,2,3,4または5記載の発明において前記恒星投影手段は、光ファイバ出射端から出射した光を個別のレンズによってドームスクリーンに結像させる輝星投影機であることを特徴とする。
本発明の請求項7は請求項1,2,3,4,5または6記載の発明において前記恒星投影手段は、所定の等級より明るい輝星のみを投影し、別途投影される微光星投影手段と併用して星空を完成させることを特徴とする。
本発明の請求項8は請求項1,2,3,4,5,6または7記載の発明において恒星の輝度は、大気のシンチレーションを模した不規則状に変動する信号により増減制御し、輝星が瞬いて見えるようにすることを特徴とする。
本発明の請求項9は請求項1,2,3,4,5,6,7または8記載の発明において恒星の輝度制御は、変光星の光度制御に用いることを特徴とする。
本発明の請求項10は請求項1,2,3,4,5,6,7,8または9記載の発明において恒星の輝度は、ドームスクリーンに別途投影される遮蔽物と重なった場合に減光または遮光制御し、不自然さを解消することを特徴とする。
本発明の請求項11は請求項1,2,3,4,5,6,7,8,9または10記載の発明において恒星の輝度制御は、あらかじめ算出される輝星の地平高度に基づいて行い、低空での減光を再現することを特徴とする。
本発明の請求項12は請求項1,2,3,4,5,6,7,8,9,10または11記載の発明において恒星の輝度制御は、各輝星の等級に応じて行い、輝星それぞれ固有の明るさを忠実に再現することを特徴とする。
すなわち、本発明では多数の輝星を輝星投影機または恒星原板の輝星像の孔に、個別の光ファイバにより光を導く投影方式において、ファイバの入射端を束ねた上、束ねられた入射端に光源からの光を入射させる際、途中光路に透過型液晶パネルやDMD素子などのような、複数の画素の透過率を制御できる透過素子または反射率もしくは反射角を制御できる反射素子を挿入し、この透過素子または反射素子を制御することにより、輝星投影機に個別のシャッタや配線を設けることなく、それぞれの輝星の輝度を自在に制御可能にしたものである。また、恒星原板の輝星孔にファイバを導く方式では、在来は個別に明るさを制御することは困難であったが、これにより輝星の数が増えた場合でも、単純な構成で機能を実現するものである。
本発明に必要な透過型素子である透過型液晶パネルないし反射型素子であるDMDパネルはいずれも、プロジェクター用として大量に生産と市販がされているものでよく、低価格で入手できるので、実施が容易である。
それぞれの輝星の輝度を自在に制御することにより、例えば変光星の光度変化を再現したり、別途設けられたディジタル投影装置などにより、惑星や風景などの遮蔽物が投影されている際に重なる天体を消して投影するなどの演出を可能にするものである。
また、輝星投影の際に固有のファイバにより導く光量は必ずしもそれぞれの恒星の光度に相当した値に調整されている必要はなく、たとえば多くの輝星の投影光量は共通とした上で、それぞれの明るさを個別かつ任意に設定し、光ファイバの太さを等級ごとに細かく分類したり、減光部材による調整などが必要でなく、制作コストが削減されるものである。
さらに、輝星以外の微光星をディジタル投影装置で投影し、星空を完成させるプラネタリウム装置においては、微光星はおのずからディジタル投影により任意に明るさの制御が可能であるので、結果的にすべての恒星の明るさを任意に制御可能にし演出性に優れたプラネタリウム装置を実現するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、光学式投影機で、多数の輝星投影機を設置した場合でも、部品点数を増やすことなく、簡易な構成でそれぞれの明るさを自在に制御することが可能になる。これにより、たとえば瞬き制御や、地平高度に応じた減光、また別途投影される遮蔽物と重なるときに消すなどの演出機能を高めることができる。また、光学系の精密調整によらなくても、電気的に個別の星の明るさを制御できるので、光学的な誤差を補正して恒星の明るさを高精度に設定でき、よりリアルな星空を再現することができる。また、輝星を光学式投影機で、微光星をディジタル投影して星空を完成させる複合型プラネタリウムにおいては、輝星の数を容易に増やせることで、ディジタル映像で再現する最輝星の光度を下げることができ、ディジタル映像装置へのコントラストや輝度の要求仕様を下げることができ、コストダウンを図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明によるプラネタリウム装置の光学式恒星投影機に搭載する、光源からの光を、透過型液晶パネルを通して光ファイバ束の入射端に導く光源ブロックの実施の形態を示す図である。
光源ランプ1はメタルハライドランプ等の放電灯や、高輝度発光ダイオード, 白色レーザなどが用いられる。光源ランプ1の光が無偏光の場合は、偏光板2(または偏光コンバータ(偏光方向を一方向にそろえる板))を通して直線偏光に変換する。この光を、有効画面中の任意の画素の透過率を任意に制御できる透過型液晶パネル(主に高温ポリシリコンTFT素子等)3を通過させた後、結像レンズ4を介して光ファイバ束6の入射端面(結像面5)に導く。この際、透過型液晶パネル3面と光ファイバ束6の入射面は結像レンズ4を介して共役関係となっており、透過型液晶パネル3の縮小像が、光ファイバ束6に結ぶ構成となっている。光ファイバ束6の反対側は、1本ずつ分岐され、それぞれあらかじめ割り当てられた恒星の像を、後述の方法で照明する。
【0012】
図2は、ファイバ入射端面を光源方向から見た図であり、透過型液晶パネル3の像が入射端面に結像した状態を示している。光ファイバ束6は、複数の光ファイバ13で構成されており、それぞれが光を導くコア12と、その外層を包むクラッド11で構成されている。この光ファイバ束6の入射端面に結ぶ液晶画面像10は、幅W画素、高さH画素で構成されている。
液晶画面像10の画素ピッチが、光ファイバの径に対してある程度小さく、クラッド11の肉厚がある程度あるか、または光ファイバ同士の空隙が透過型液晶パネル3の画素ピッチより大きければ、透過型液晶パネル3の一画素を通る光は一つの光ファイバにしか入射しないような構成にできる。
透過型液晶パネル3と光ファイバ束6の位置関係は固定されているから、例えば図3に示すように対象となるある光ファイバ15を通る光量を制御するには、斜線で示された領域14の画素の透過率を制御すればよいことになる。
【0013】
図4は本発明における透過型液晶パネルを制御する制御回路の実施の形態を示すブロック図である。
液晶制御コンピュータ20の中には、それぞれの恒星に該当する液晶の画素座標をインデックスメモリ部21に保持している。通常、ある恒星に相当する画素は複数あり、その個数もすべて同一とは限らない。たとえば、本図ではシリウスに相当する画素は、(24,51),(25,51),(24,52),(52,52) の4画素である。ほかの恒星についても同様のデータが保持されている。またインデックスメモリ部21には、それぞれの恒星の固有の情報、つまり赤経,赤緯および光度も保持されている。
【0014】
システム制御装置24は、プラネタリウム全体の制御を行う装置であり、その中には再現している日時や経度,緯度などの情報のほか、大気のシンチレーションの状態(またたきが強いか,弱いか)を表すシンチレーション指数と名付けた数値や、同時に投影されている前景物、例えば月や雲,建物や山などの形状データなどが保持されている。
これらの情報をもとに、演算装置22が、それぞれの恒星が再現されるべき明度を算出し、インデックスメモリ部21を参照して、相当する画素の明度を設定する。この設定をもとに、描画装置23が液晶パネル26(=透過型液晶パネル3)に相当するグラフィック画面を描画する。描画された映像信号は、液晶コントローラ25を通じて液晶パネル26を駆動する。
【0015】
図5は液晶制御コンピュータ内部の演算装置の演算フローを説明するための図である。
ある恒星を再現するときに、恒星の位置、すなわち赤経,赤緯30はあらかじめ既知としてデータが用意されている。また光度33は、一定の値か、変光星の場合は日時を引数とした関数で与えられる(恒星の光度関数34)。まず恒星の赤経,赤緯30を、設定された緯度,経度31,日時32をもとに座標変換し、地平座標に変換する(座標変換A)。この具体的な方法は天文学の計算として公知であるので省略する。
つぎに遮蔽物形状データ36について説明する。これは全天に亘り必要であるので、この実施の形態ではドームマスターと呼ばれる形態の画像形式を使った例を示す。ドームマスターは正方形の画像で、内接する円が地平線であり中心が天頂となる画像であり、天頂に向けて魚眼レンズで撮影した写野に相当する。
【0016】
図6にドームマスターの上に地平座標を図示したものを示す。南方の方位角が0、西方周りに正方向に角度を設定し、一周が360度である。高度は内接円つまり最外周が0であり中心が90度である。ドームマスターの画像幅がWDピクセルとするとき、ある方位角azm , 高度alt 35のドームマスター画面上での座標は、左下を原点としたとき、以下のように表せる。
X = sin(azm) * 0.5WD * (90 - alt) + 0.5WD ・・・(1)
Y = cos(azm) * 0.5WD * (90 - alt) + 0.5WD ・・・(2)
【0017】
図7Aにドームマスター形式の画像の一例を示す。図7Bは、図7Aを透過率を表す明暗パターンに置き換えたものであり、遮蔽物形状データと呼ぶ。完全遮光が黒で、透明が白である。ビルなどの遮蔽物は真っ黒であり、空は透明であるが、大気による減光があるため、透明度は空の全面で一様ではない。天頂付近は透明度が高く、地平線付近は大気減光があるため透明度が低い。従って空の部分は中心が最も明るく周囲に行くと暗くなるグラデーション状になる。
【0018】
恒星の地平座標が与えられれば、(1)(2)式によりドームマスター画面上のX,Y座標を算出し、この座標に相当するピクセルの輝度を遮蔽物形状データ36から読み出して、その星が本来の明るさに対してどのくらい減光されて投影されるべき値、つまり減光率がわかる。このように図5で遮蔽物形状データ36と、方位, 高度35から恒星の減光率を算出し、恒星の光度33と乗算して、実際に投影される恒星の光度を算出する(演算B)。
また、瞬きを再現するときには、シンチレーション指数37に基づいてランダムに発生させ(乱数パターン発生D)、その数値と、演算Bによる光度を乗算して、恒星の投影光度39を算出する(演算C)。これに、必要に応じて液晶パネル26の出力ガンマカーブ補正Eを行い、液晶パネル26上で表示させるピクセルの明度値(出力輝度値40)を算出する。これは通常、0〜255の値である。
このような演算を、輝星投影手段で投影させるすべての輝星に関して行えば良い。
【0019】
この出力輝度値40を、例えばシリウスの場合は、描画装置の画素(24,51),(25,51),(24,52),(52,52) に描画する。すべての恒星について描画を行い、この結果出力される映像信号を液晶コントローラ25に出力し、液晶パネル26を駆動すれば、それぞれの恒星に相当する光ファイバには所望の光量の光が送り出されることになる。
例えば、図示していないが、全恒星の光度にある値を乗算して上記の処理を行えば、全体の光度を変える、つまり調光も可能になる。また、光学系のバラツキや組み付け誤差などにより、ある恒星の実際に投影される光度に誤差が出たときは、個別の恒星の光度値に補正値をかけることにより、光学系に一切修正を加えることなく、データの修正だけで光度を補正することができ、高精度の光度で投影することが可能となる。
【0020】
図8は、本発明によるプラネタリウム装置で実際に輝星を投影する方式の一つである輝星投影機の実施の形態を示す図である。
光ファイバ41の出射端42に、投影レンズ43を装着した簡便な構造であり、これを恒星投影機に載せ、公知の輝星投影機同様に、所定の方向に向けて据え付けると、所望の位置に輝星像を投影する。
【0021】
図9は複数の輝星投影機45と光源ブロック44をファイバで結合している状態を図示したものである。図10は、天球上のある範囲に含まれる複数の恒星をまとめて投影する機能性投影ユニットの実施の形態を示すものである。
図10において入射照明ファイバ46は、全体を照明する光を導くものであり、例えばメタルハライドランプなどの光が公知の光ファイバ照明装置などと同様の構成で導かれ、液晶パネル47を照明する。液晶パネル47を通った光が、結像レンズ49によって光ファイバ入射端50に液晶パネル47の像を結び、これが光ファイバ51によって恒星原板上の所定の位置に割り当てられた恒星ファイバ出射端52に導かれる。この光が投影レンズ54によってドーム状スクリーンに投影される。
【0022】
図11は、この機能性投影ユニット59を複数配置した恒星球60の実施の形態を示す一部破断断面図である。光源装置56の内部にあるメタルハライドランプの光をライトガイド57で、各機能性投影ユニット59に導くものである。液晶コントローラ58により液晶パネル61を駆動する。本図は北天ないし南天の恒星球を示したものであるが、これを南北両方使うことにより、全天空の輝星を投影することができる。
【0023】
図12は、公知の恒星投影機に輝星投影機を装着した実施の形態を示す一部破断断面図である。ある一定光度より暗い星は微光星投影ユニット63で投影される。輝星は、それぞれの恒星に対して割り当てられた輝星投影機65から投影される。輝星投影機65へは、光源ランプ,結像レンズ,液晶パネルを備えた光源ブロック64から光ファイバを通じて光が供給される。
図13は、ディジタル投影装置と光学式恒星投影機を併用した実施の形態を示す一部破断断面図である。光学式恒星投影機66は、本発明により一定以上の光度の恒星を投影する。一方ディジタル投影機67はそれより暗い星を投影する。
【0024】
図14はディジタル投影装置で投影される星空の一例であり、微光星のみが含まれている。一方、図15は、同じエリアで光学式投影機で投影される星空であり、輝星のみが含まれている。図16はこの両者がドームスクリーン上で重なって、輝星と微光星が共存して完成された星空となる。この場合、微光星はディジタル映像であり個別の明るさはソフトウエアにより自在に再現可能であるから、結果的にすべての恒星の明るさの制御を個別に可能なプラネタリウムシステムが実現される。ディジタルで投影できる星像の明るさには制限があるため、光学式投影機で再現できる星の数が多い方がより忠実な星空を再現できる。そのため、本発明の特長がより重要となる。
【0025】
光学式投影機で投影される星空と、ディジタル投影装置で投影される星空は相互の位置関係が正確に調整されている必要があるが、例えば恒星投影機に高度と方位角が既知となる基準マーク手段とカメラを搭載し、恒星投影機から投射される基準マークとディジタル映像装置から投射されるカーソルをドームスクリーン上で位置合わせする手法により校正を行うことにより、高精度に両者の位置関係を保つことができる。
【0026】
なお、本発明の実施の形態では、いずれも束ねられた複数の光ファイバのそれぞれの光量を制御するため、光ファイバ束の入射端に、透過型液晶パネルの像を結像レンズで結ぶ実施の形態を示したが、図17に示すように、透過型液晶パネル73に直接光ファイバ束70を近接させて配置しても良い。また、透過型液晶パネル73などの透過型素子に限らず、たとえばDMD素子やLCOS素子などのような反射型素子においても実施可能である。図18は、DMD素子75を利用した実施の形態であり、光源ランプ76からの光が集光レンズ77でDMD素子75面に集光され、DMD素子75で反射した光が結像レンズ78を通じて光ファイバ入射端端79にDMD素子75の像を結ぶ構成となっている。光ファイバ入射端端79に結像した光はそれぞれ光ファイバ80に導かれる。
また、液晶パネルなどでは、コントラストの制限があり、遮光状態に設定しても完全に遮光することができない。そこで遮光時の明度をより下げ、コントラストを上げるため、液晶パネルを複数カスケードに並べることで、コントラストを向上させることができる。この際には、第一の液晶パネルの像をリレーレンズを用いて第二液晶パネル面に結像させ、第二液晶パネルの像をファイバ入射端に結像させればよい。
【産業上の利用可能性】
【0027】
ドーム状スクリーンに星空を投影するプラネタリウム装置である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明によるプラネタリウム装置の光源ブロックの外観を説明するための図である。
【図2】光源方向から見たファイバ入射端面を示す図である。
【図3】光源方向から見たファイバ入射端面における制御の対象を説明するための図である。
【図4】本発明における透過液晶パネルを制御する制御回路の実施の形態を示すブロック図である。
【図5】液晶制御コンピュータ内部の演算装置の演算フローを説明するための図である。
【図6】ドームマスター上の地平座標を示す図である。
【図7A】ドームマスター形式の画像の一例を示す図である。
【図7B】図7Aのドームマスター形式の画像を、透過率を表す明暗パタンに置き換えた図である。
【図8】本発明における輝星投影機の実施の形態を示す図である。
【図9】複数の輝星投影機と光源ブロックをファイバで結合している状態示す図である。
【図10】天球上のある範囲に含まれる複数の恒星をまとめて投影する機能性投影ユニットの実施の形態を示す斜視図である。
【図11】図10の機能性投影ユニットを複数配置した恒星球の実施の形態を示す一部破断斜視図である。
【図12】恒星投影機に本発明における輝星投影機を装着した実施の形態を示す一部破断斜視図である。
【図13】ディジタル投影装置と光学式恒星投影機を併用した実施の形態を示す斜視図である。
【図14】ディジタル投影装置で投影される星空の一例を示す図で、微光星のみが含まれている。
【図15】同じエリアで光学式投影機で投影される星空の一例を示す図で、輝星のみが含まれている。
【図16】図14の光学式投影機と図15のディジタル投影装置を併用して投影される星空の一例を示す図である。
【図17】透過液晶パネルに直接光ファイバ束を近接させて配置した例を示す図である。
【図18】図18は、DMD素子を利用した例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0029】
1 光源ランプ
2 偏光板(偏光コンバータ)
3 透過液晶パネル
4 結像レンズ
5 結像面
6 光ファイバ束
7,13,15 光ファイバ
10 液晶画面像
11 クラッド
12 コア
14 相当画素
20 液晶制御コンピュータ
21 インデックスメモリ部
22 演算装置
23 描画装置
24 システム制御装置
25 液晶コントローラ
26 液晶パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
恒星を投影するため、光ファイバを設けたプラネタリウム装置であって、
一恒星の照明用に、入射端は複数の光ファイバが束ねられ、出力端は光ファイバ単位にそれぞれ恒星投影手段に接続される光ファイバ束を設け、前記入射端に光源からの光を入射することによりそれぞれの恒星投影手段に光を導く構成となっており、
前記入射端の光路中に、それぞれの光ファイバを通る光量を制御する画像生成素子を配置することにより各恒星の光量を個別、かつ任意の光量に制御するか、または各恒星の光量をオンオフすることを特徴とするプラネタリウム装置。
【請求項2】
前記画像生成素子は、各光ファイバを通る光の透過率を制御する透過型素子であることを特徴とする請求項1記載のプラネタリウム装置。
【請求項3】
前記画像生成素子は、各光ファイバを通る光の反射率または反射角を制御する反射型素子であることを特徴とする請求項1記載のプラネタリウム装置。
【請求項4】
前記画像生成素子と、光ファイバの入射端の間に結像レンズが配置され、前記結像レンズにより、前記画像生成素子による像が光ファイバ入射端に結像することを特徴とする請求項1,2または3記載のプラネタリウム装置。
【請求項5】
前記画像生成素子と、光ファイバの入射端が近接して配置されることにより、前記画像生成素子の像を光ファイバの入射端に落射させることを特徴とする請求項1,2または3記載のプラネタリウム装置。
【請求項6】
前記恒星投影手段は、光ファイバ出射端から出射した光を個別のレンズによってドームスクリーンに結像させる輝星投影機であることを特徴とする請求項1,2,3,4または5記載のプラネタリウム装置。
【請求項7】
前記恒星投影手段は、所定の等級より明るい輝星のみを投影し、別途投影される微光星投影手段と併用して星空を完成させることを特徴とする請求項1,2,3,4,5または6記載のプラネタリウム装置。
【請求項8】
恒星の輝度は、大気のシンチレーションを模した不規則状に変動する信号により増減制御し、輝星が瞬いて見えるようにすることを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6または7記載のプラネタリウム装置。
【請求項9】
恒星の輝度制御は、変光星の光度制御に用いることを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6,7または8記載のプラネタリウム装置。
【請求項10】
恒星の輝度は、ドームスクリーンに別途投影される遮蔽物と重なった場合に減光または遮光制御し、不自然さを解消することを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6,7,8または9記載のプラネタリウム装置。
【請求項11】
恒星の輝度制御は、あらかじめ算出される輝星の地平高度に基づいて行い、低空での減光を再現することを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6,7,8,9または10記載のプラネタリウム装置。
【請求項12】
恒星の輝度制御は、各輝星の等級に応じて行い、輝星それぞれ固有の明るさを忠実に再現することを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6,7,8,9,10または11記載のプラネタリウム装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図7A】
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【図7B】
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【公開番号】特開2009−210912(P2009−210912A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−55210(P2008−55210)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【出願人】(508067839)有限会社大平技研 (6)
【Fターム(参考)】