説明

プラネタリーミキサー

【課題】タンクをフードで覆ってその内部を加熱、加圧、真空減圧等して処理した後、タンク内を大気圧に開放したときに、ローター内に封入された潤滑油が漏れるおそれがないようにしたプラネタリーミキサーを提供する。
【解決手段】攪拌ヘッド3に固定された支持筒13の下部には、ローター9が回転可能に取り付けられている。上記支持筒13には、上記ローター9の内部と外部を連通する通気路21が形成されている。この通気路21の外方開口端23には、大気に連通する圧力抜バルブ28が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンク内でブレードを遊星運動させて処理材料を混練等するようにしたプラネタリーミキサーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、低粘度から高粘度(〜3000Pa・s)又は半固体状の処理材料を分散、攪拌、混練等するための捏和型分散機として、複数本のブレードをタンク内で遊星運動させるプラネタリーミキサーが知られている(例えば、特許文献1参照)。一般的に、このプラネタリーミキサーは、昇降可能な攪拌ヘッドに駆動軸を設け、その下方にブレード軸を遊星運動させる歯車等の駆動部材を収納したローターを取り付け、上記攪拌ヘッドを降下させ、上記ブレード軸の下端に取り付けたブレードをタンク内に挿入し、上記駆動軸によりローターを回転させてブレードを遊星運動させている。この際、タンク上面を覆ってタンク内を密閉できるよう上記ローターの周囲にフードを設けたプラネタリーミキサーも広く用いられており、このフードを使用すれば、タンク内を加熱、加圧等したり、真空減圧等の状態にして混練等の処理を行うことができる。また、上記ローター内には駆動部材の潤滑油が封入され、上記駆動軸に装着される上記ローターの軸貫通部には、上記潤滑油が漏れないようオイルシール等の軸シール部材が設けられている。この軸シール部材により、例えばフードを使用せずに大気圧下で運転する場合等には、潤滑油が漏れるのを防止することができる。
【0003】
しかし、上記のように、フードでタンクを覆い密閉状態で加熱、加圧、真空減圧等して処理を行うと、潤滑油漏れが生じてしまう場合があった。詳述すると、上記軸シール部材に摺動する軸(又はスリーブ)部分は、その表面粗さを厳密に規定、管理することにより、凹凸を可能な限り小さくして潤滑油が漏れるのを防止するよう形成されているが、密閉状態で運転すると、処理材料の温度上昇や窒素ガス等で加圧することにより、タンク及びフード内の圧力が高くなり、上記軸シール部材の軸摺動部に生じるわずかな摩耗部分を介して上記ローターの内部に徐々に圧力が加わる。このようにして、運転時に上記ローター内の圧力はタンク内とほぼ同圧になっているので、潤滑油漏れは生じない。しかし、運転終了後にフードを外すとタンク内は大気圧に開放されるが、タンク内が大気圧になったとしても、上記ローターの内部はすぐに大気圧にならない。すなわち、上記軸シール部材により軸貫通部がシールされているため、上記ローターの内部は依然として圧力を保っている。そして、上記ローターの内部と外部に急激な圧力差が発生すると、上記ローターの内部の残圧が徐々に抜けるとき、それに伴って潤滑油が漏れる現象が見られた。さらに、タンク内を加圧する場合と真空減圧等する場合では、上記ローターの軸シール部材の取付方向が全く逆になるから、例えばタンク内を加圧することを想定して軸シール部材を設けた場合には、タンク内を真空減圧等して処理すると、潤滑油漏れが生じてしまうこともあった。このように、潤滑油漏れが発生すると、製品内に潤滑油が混入してしまうため、運転操作する上で細心の注意が必要となり、万が一潤滑油漏れが生じた場合、高価な製品の処理時には、経済的な損失が問題となる。
【特許文献1】実公平5−9066号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、タンクをフードで覆ってその内部を加熱、加圧、真空減圧等して処理するようにしたプラネタリーミキサーにおいて、処理した後にタンク及びフード内を大気圧に開放したときに、タンク・フードの内部(ローターの外部)とローターの内部の圧力差をなくし、ローター内に封入された潤滑油が漏れるおそれがないようにしたプラネタリーミキサーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、攪拌ヘッドの下方にブレード軸を遊星運動させる駆動部材を収納したローターを有し、該ローターの周囲にタンクを覆うようフードを設けたプラネタリーミキサーにおいて、上記駆動部材を設けたローターの内部と外部を連通する通気路を形成し、該通気路の開口端を大気に通じる開閉可能な圧力抜バルブに連通させたことを特徴とするプラネタリーミキサーが提供され、上記課題が解決される。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、上記のように構成され、上記駆動部材を設けたローターの内部と外部を連通する通気路を形成し、該通気路の開口端を大気に通じる開閉可能な圧力抜バルブに連通させたので、タンク内を加熱、加圧、真空減圧等して処理した後、大気圧に開放したとき、同時に上記圧力抜バルブを開放すれば、上記ローターの内部圧を大気圧と同圧にすることができる。したがって、上記ローターの内部と外部間に圧力差が生じず、圧力差のない圧力バランスになるから、該ローターから潤滑油が漏れるのを効果的に防止することができ、潤滑油が製品内に混入するおそれがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、各種プラネタリーミキサーに適用することができ、図1に示すように、プラネタリーミキサー本体1は、昇降シリンダー2により昇降する攪拌ヘッド3を有し、該攪拌ヘッド3が降下した際、タンク4内に挿入されるようブレード5が設けられている。該攪拌ヘッド3には、モーター6、減速機7等により回転される駆動軸8(図2)が設けられ、該駆動軸8の下端にはローター9が連結され、該ローター9には上記ブレード5が取り付けられている。上記攪拌ヘッド3の下面には、上記ローター9を囲んでフード10が形成されており、該フード10は、公知のように、上記タンク4の上面を覆うことができる。
【0008】
上記ローター9は、上記ブレード5を遊星運動させるための駆動部材を収納したギアボックス11とその下方に気密的に連結されるブレード軸用のベアリングボックス12を有している。該ギアボックス11は、図2に示すように、上記攪拌ヘッド3に固定された支持筒(ベアリングケース)13の下部に回転可能に連結されており、該支持筒13内には上記駆動軸8が挿通され、該駆動軸8の下端は上記ブレード軸用のベアリングボックス12に固定されている。該駆動軸8の外周面と上記支持筒13の内周面の間及び該支持筒13の外周面と上記ギアボックス11の内周面の間には、それぞれ軸受及びオイルシール等の軸シール部材14が設けられ、上記ギアボックス11内に封入された潤滑油(図示略)が漏れないようにしている。
【0009】
上記ブレード軸用のベアリングボックス12には、ブレード軸15がベアリング16により軸支されている。該ブレード軸15を駆動するための駆動部材として、該ブレード軸15の上端には遊星歯車17が固定され、該遊星歯車17は上記支持筒13の下端部に設けられた太陽歯車18に噛合されている。図示するものでは、太陽歯車は遊星歯車の内側に位置しているが、遊星歯車の外側に位置するように内歯太陽歯車を用いてもよい。
【0010】
上記支持筒13はその中間部にフランジ19を有し、該フランジ19は上記攪拌ヘッド3の下部に設けた取付筒20に当接した状態で固定され、その上端は該取付筒20よりも上方に突出している。上記支持筒13の胴部には図において縦方向に延びる通気路21が形成され、該通気路21は上記ギアボックス11の内部で開口する内方開口端22と上記取付筒20の上方に開口する外方開口端23を有している。この構成により、上記ギアボックス11の内部は、上記フード10の外部に連通されている。そして、上記通気路21の外方開口端23にはエア配管24が接続され、該エア配管24にはニードル弁等の流量制御弁25を介して大気に連通する大気連通管26と圧縮空気源(図示略)に連絡する圧縮空気管27に選択的に連通可能な圧力抜バルブ28が設けられている。なお、上記エア配管を設けずに、上記外方開口端に圧力抜バルブを直接取り付けてもよい。
この圧力抜バルブ28を閉鎖すると、上記通気路21は密閉され、開放すると、該通気路21は大気に連通する。また、上記通気路21内に潤滑油等が詰まった場合には、上記大気連通管26を閉鎖して上記エア配管24を圧縮空気に連通すれば、上記通気路21内に圧縮空気を導入してエアブローや洗浄等を容易に行うことができる。さらに、上記流量制御弁25を操作してエア配管24内を流れる空気量を調節することにより、上記ギアボックス11内を大気圧に戻す時間を調整したり、エアブローや洗浄等の強さを加減することができる。
【0011】
上記通気路は、好ましくは複数設けるとよく、例えば図3に示すように、4本の通気路を形成することもできるが、上記支持筒の強度を考慮すれば、2本〜4本程度の適宜数とすることができる。上記圧力抜バルブは各通気路ごとに取り付けてもよいが、通気路を複数設けた場合には、例えば図4に示すように、複数のチューブ29を継手部材30で連結したエア配管24を形成し、該エア配管24に流量調整弁25や圧力抜バルブ28を設けると共に上記チューブ29の先端に各通気路21の外方開口端23に接続可能な接続部31を設ければよい。なお、上記実施例において、上記通気路21の外方開口端23は、上記取付筒20の上方で開口しているが、上記ローター9の外部に連通する構成であれば、フード10内で開口していてもよく、その他適宜の位置に設けることができる。
【0012】
上記の如き構成により、タンク4をフード10で覆ってその内部を加熱、加圧、真空減圧等した状態で運転した後、攪拌ヘッド3を上昇させてタンク4内を大気圧に開放する際、同時に圧力抜バルブ28を操作して上記通気路21を大気に連通すれば、該通気路21を介してローター9の内部も大気圧と同じになる。したがって、ローター9の内部と外部に圧力差が生じないので、潤滑油漏れが効果的に防止される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施例を示す概略図である。
【図2】図1に示す実施例のローター部分の一部を拡大した説明図である。
【図3】本発明の他の実施例を示し、(A)は支持筒の半断面図、(B)は外方開口端部分の断面図である。
【図4】エア配管の一実施例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0014】
1 本体
3 攪拌ヘッド
4 タンク
5 ブレード
8 駆動軸
9 ローター
10 フード
11 ギアボックス
12 ベアリングボックス
13 支持筒
14 軸シール部材
20 取付筒
21 通気路
22 内方開口端
23 外方開口端
24 エア配管
25 流量制御弁
26 大気連通管
27 圧縮空気管
28 圧力抜バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
攪拌ヘッドの下方にブレード軸を遊星運動させる駆動部材を収納したローターを有し、該ローターの周囲にタンクを覆うようフードを設けたプラネタリーミキサーにおいて、上記駆動部材を設けたローターの内部と外部を連通する通気路を形成し、該通気路の開口端を大気に通じる開閉可能な圧力抜バルブに連通させたことを特徴とするプラネタリーミキサー。
【請求項2】
上記ローターは上記攪拌ヘッドに取り付けられた支持筒の下部に回転可能に支持され、該支持筒内には上記駆動部材を駆動する駆動軸が挿通され、該駆動軸及び上記ローターの間には軸シール部材が設けられ、上記通気路は上記支持筒に形成され、該通気路の一端は上記ローター内に開口し、他端は上記フードの外部に開口している請求項1に記載のプラネタリーミキサー。
【請求項3】
上記通気路は、複数設けられている請求項1又は請求項2に記載のプラネタリーミキサー。
【請求項4】
上記複数の通気路の開口端は上記圧力抜バルブを有するエア配管に連結され、該エア配管は圧縮空気源と大気に選択的に連通している請求項3に記載のプラネタリーミキサー。
【請求項5】
上記エア配管には、流量制御弁が設けられている請求項4に記載のプラネタリーミキサー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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