プラントの制御装置及び火力発電プラントの制御装置
【課題】本発明の目的は、プラントの計測データを使用してRBFネットワークによる統計モデルをオンラインで調整する場合に、制御周期以内での最適化計算の終了を可能にして、統計モデルの推定精度を向上させたプラントの制御装置を提供することにある。
【解決手段】本発明のプラントの制御装置は、プラントに制御信号を与えた時に取得する計測信号の値を推定する統計モデルと、統計モデルの構築に用いるデータを保存するモデル構築データベースと、計測信号に対して統計的処理を施し、モデル構築データを生成するデータ前処理部と、モデル出力が目標値を達成するようにモデル入力の生成方法を学習する操作方法学習部と、モデル構築データベースに保存される情報に含まれる統計モデルの半径パラメータを調整するモデル調整部とを備え、統計モデルはモデル調整部による半径パラメータの調整結果を用いてモデル出力を生成するように構成する。
【解決手段】本発明のプラントの制御装置は、プラントに制御信号を与えた時に取得する計測信号の値を推定する統計モデルと、統計モデルの構築に用いるデータを保存するモデル構築データベースと、計測信号に対して統計的処理を施し、モデル構築データを生成するデータ前処理部と、モデル出力が目標値を達成するようにモデル入力の生成方法を学習する操作方法学習部と、モデル構築データベースに保存される情報に含まれる統計モデルの半径パラメータを調整するモデル調整部とを備え、統計モデルはモデル調整部による半径パラメータの調整結果を用いてモデル出力を生成するように構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラントの制御装置に関するものであり、特に石炭等の化石燃料を用いて発電する火力発電プラントの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラントの制御装置は、制御対象であるプラントから得られるプラントの状態量の計測信号を処理し、制御対象に与える制御信号(操作信号)を算出して制御対象の運転を制御する。
【0003】
プラントの前記制御装置には、プラントの状態量の計測信号がその目標値を満足するように、操作信号を計算するアルゴリズムが実装される。
【0004】
プラントの制御に用いられている制御アルゴリズムとして、PI(比例・積分)制御アルゴリズムがある。PI制御では、プラントの状態量の計測信号とその目標値との偏差に比例ゲインを乗じた値に、偏差を時間積分した値を加算して、制御対象に与える操作信号を導出する。
【0005】
PI制御を用いた制御アルゴリズムは、ブロック線図などで入出力関係を記述することができるため、入力と出力の因果関係が分かりやすく、多くの適用実績がある。しかし、プラントの運転状態の変更や環境の変化など、事前に想定していない条件でプラントを運転する場合には、制御ロジックを変更するなどの作業が必要になる場合がある。
【0006】
一方、プラントの運転状態や環境の変化に適応できる制御方式には、制御アルゴリズムやパラメータ値を自動的に修正する適応制御や学習アルゴリズムを用いた制御方式がある。
【0007】
学習アルゴリズムを用いてプラントの制御装置の操作信号を導出する方法としては、プラントの計測データや数値解析を基に構築したデータを用いて、それらを統計的に処理してプラントの特性を推定する統計モデルを構築し、この統計モデルに対して最適な制御ロジックを自律学習させる手法が一般的である。
【0008】
上記の手法を用いて得られた制御ロジックの性能は、統計モデルの推定精度に依存することが知られている。即ち、学習アルゴリズムは統計モデルに対して最大の制御効果が得られる制御ロジックを学習するため、統計モデルが学習したプラントの特性が実際のプラント特性に近づくほど、実際のプラントに対する制御効果も大きくなる。そのため、学習アルゴリズムを用いた適応制御技術では、より高精度な統計モデルの構築が課題となる。
【0009】
またこの統計モデルには、一般にニューラルネットワーク(NN)に代表される非線形近似手法が適用されることが多く、プラント計測データを用いてプラントの特性を表現する非線形曲面を学習する。また近年では、プラント適用時に統計モデル特性のオンライン調整が容易となる理由から、NNの1手法であるRBF(Radial Basis Function)ネットワークが注目され、適用が進められている。
【0010】
RBFネットワークによる統計モデルの推定精度を決定する因子の一つとして、RBFネットワークを構成するガウス基底関数の半径パラメータがある。RBFネットワークは後述する式(1)で与えられるガウス基底関数を、統計モデルの構築に使用するモデル構築データのプラント特性空間上の分布に応じて配置し、それらを重ね合わせることによってプラント特性を推定する。
【0011】
ここで、式(1)において、iはガウス基底関数の添字、biは基底関数値、xはモデル入力ベクトル、ciは基底関数の中心座標ベクトル、riは半径パラメータを夫々表す。
【0012】
高い推定精度の統計モデルを得るには、プラント特性空間をガウス基底関数で適切に被覆する必要があり、それにはガウス基底関数の広がりを決定する半径パラメータriを適切に調整する必要がある。
【0013】
【数1】
【0014】
上記に鑑み、RBFネットワークを用いた統計モデルの精度を向上させる技術として、特許文献1にはRBFネットワークのガウス基底関数の半径パラメータを、最適化アルゴリズムの1つであるトンネリングアルゴリズムを用いて調整する技術が記載されている。
【0015】
また、非特許文献1には、RBFネットワークの学習に使用するデータの、モデル特性空間上の疎密分布を考慮して、半径パラメータを最適に調整する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2005−115639公報
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】T. Eguchi, T. Sekiai, A. Yamada, S. Shimizu, M. Fukai: “An Adaptive Radius Adjusting Method for RBF Networks Considering Data Densities and Its Application to Plant Control Technology”, in Proc. of ICCAS-SICE2009, pp.4188-4194(2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
前記特許文献1及び/又は非特許文献1に開示された技術をプラントの制御装置へ適用した場合、ガウス基底関数がプラント特性空間を適切に被覆できるように半径パラメータを調整するため、統計モデルの推定精度を向上させることができる。
【0019】
一方、プラント制御においては、制御による操作条件の変更後、プラントの運転特性が安定するまでに数分から十数分の時間を要するため、この時間を制御周期とするのが一般的である。したがって、上記の統計モデルのオンライン調整(半径パラメータの調整及びプラント特性曲面の学習)は、この制御周期以内に終了することが望ましい。
【0020】
ところで、前記特許文献1の技術をプラントの制御装置に適用する場合、最適化アルゴリズムが探索する半径パラメータの解候補に対する評価値を、学習データであるモデル構築データと推定結果の誤差評価により計算する必要がある。
【0021】
この誤差評価に要する計算コストはモデル構築データの数に応じて増加するため、プラント制御に適用した場合に、計測データが蓄積されるにつれて計算時間が増加し、制御周期以内での最適化計算が終了しなくなる可能性がある。
【0022】
計算時間の増加によって制御周期以内での最適化計算が終了しない場合には、統計モデルの推定精度が低下するのでプラントを望ましい状態に運転することが困難となる。
【0023】
また、前記非特許文献1の技術をプラントの制御装置に適用する場合、上記のような誤差評価は不要であるが、計測データが蓄積される度に全てのガウス基底関数の半径パラメータをモデル構築データ間の疎密を考慮して調整することになる。そのため、前記技術による半径パラメータの調整でも、前記特許文献1の技術の場合と同様に、計測データの蓄積により計算コストが増加して制御周期以内での最適化計算が終了せず、統計モデルの推定精度の低下によってプラントを望ましい状態に運転することが困難となる可能性がある。
【0024】
本発明の目的は、プラントの計測データを使用してRBFネットワークによる統計モデルをオンラインで調整する場合に、制御周期以内での最適化計算の終了を可能にして、統計モデルの推定精度を向上させたプラントの制御装置及び火力発電プラントの制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明のプラントの制御装置は、プラントから該プラントの状態量である計測信号を取り込み、前記計測信号を用いて前記プラントを制御する操作信号を演算する制御装置を備えたプラントの制御装置において、前記制御装置は、プラントの状態量である計測信号を取り込んで保存する計測信号データベースと、前記計測信号データベースに保存されたプラントの計測データに対して信頼区間に基づく統計的処理を施すことでモデル構築データを生成するデータ前処理部と、前記データ前処理部で生成した前記モデル構築データを保存するモデル構築データベースと、前記モデル構築データベースに保存されたモデル構築データを用いて前記プラントに制御信号を与えた時に該プラントの状態量である計測信号の値を推定するプラントの制御特性を模擬する統計モデルと、前記統計モデルを用いて前記計測信号に相当するモデル出力が目標値を達成するようにプラントに与える前記制御信号に相当するモデル入力の生成方法を学習する操作方法学習部と、前記操作方法学習部における学習の制約条件及び学習結果に関する学習データを保存する学習情報データベースと、前記計測信号データベースの計測信号、及び前記学習情報データベースの学習データを用いてプラントに対して送信される制御信号を演算する制御信号生成部とをそれぞれ備えて構成し、更に前記モデル構築データベースに保存されるモデル構築データに含まれる統計モデルの基底半径パラメータを調整するモデル調整部を設けて、前記統計モデルが前記モデル調整部による基底半径パラメータの調整結果を用いて前記モデル出力を生成し、このモデル出力を前記操作方法学習部に出力するように構成したことを特徴とする。
【0026】
本発明の火力発電プラントの制御装置は、ボイラを備えた火力発電プラントから該プラントの状態量である計測信号を取り込み、前記計測信号を用いて前記プラントを制御する操作信号を演算する制御装置を備えた火力発電プラントの制御装置において、前記制御装置は、前記プラントの状態量である計測信号を取り込んで保存する計測信号データベースと、前記計測信号データベースに保存されたプラントの計測データに対して信頼区間に基づく統計的処理を施すことでモデル構築データを生成するデータ前処理部と、生成した前記モデル構築データを保存するモデル構築データベースと、前記モデル構築データベースに保存されたモデル構築データを用いて前記プラントに制御信号を与えた時に該プラントの状態量である計測信号の値を推定するプラントの制御特性を模擬する統計モデルと、前記統計モデルを用いて前記計測信号に相当するモデル出力が目標値を達成するようにプラントに与える前記制御信号に相当するモデル入力の生成方法を学習する操作方法学習部と、前記操作方法学習部における学習の制約条件及び学習結果に関する学習データを保存する学習情報データベースと、前記計測信号データベースの計測信号、及び前記学習情報データベースの学習データを用いてプラントに対して送信される制御信号を演算する制御信号生成部とをそれぞれ備えて構成し、更に前記モデル構築データベースに保存されるモデル構築データに含まれる統計モデルの基底半径パラメータを調整するモデル調整部を設けて、前記統計モデルが前記モデル調整部による基底半径パラメータの調整結果を用いてモデル出力を生成し、このモデル出力を前記操作方法学習部に出力するようにするように構成し、前記計測信号は、前記火力発電プラントのボイラから排出される排ガスに含まれる窒素酸化物、一酸化炭素、二酸化炭素、窒素、酸素、灰中未燃分及び硫化水素の濃度のうち少なくとも1つを表す状態量の信号を含むようにし、前記制御信号は、前記火力発電プラントのボイラに供給する空気流量、この空気流量を調節する空気ダンパの開度、ボイラに供給される燃料流量、ボイラから排出された排ガスを該ボイラに再循環させる排ガス再循環流量のうち少なくとも1つを表す信号を含むようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、プラントの計測データを使用してRBFネットワークによる統計モデルをオンラインで調整する場合に、制御周期以内での最適化計算の終了を可能にして、統計モデルの推定精度を向上させたプラントの制御装置及び火力発電プラントの制御装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施例であるプラントの制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】実施例1のプラントの制御装置における一連の制御動作フローを示すフローチャートである。
【図3】実施例1のプラントの制御装置における前処理部の動作手順を表すフローチャートである。
【図4】実施例1のプラントの制御装置における前処理部のモデル出力信頼区間計算の概念を示す概略図である。
【図5】実施例1のプラントの制御装置におけるモデル構築データベースに保存されるデータの態様を示す図である。
【図6】実施例1のプラントの制御装置における統計モデルを構成するRBFネットワーク概略図である。
【図7】実施例1のプラントの制御装置におけるモデル調整部の動作手順を表すフローチャートである。
【図8】実施例1のプラントの制御装置におけるモデル調整部の動作時における半径調整対象となるガウス基底関数を決定する方式の概念を示す概略図である。
【図9】実施例1のプラントの制御装置におけるモデル調整部の動作時における半径調整アルゴリズムの動作手順を表すフローチャートである。
【図10】実施例1のプラントの制御装置におけるモデル調整部の動作時における半径調整対象となるガウス基底関数の寄与度計算の概念を示す概略図である。
【図11】実施例1のプラントの制御装置における実行条件を設定する際に画像表示装置に表示される画面の一例である。
【図12】実施例1のプラントの制御装置における表示させたい学習結果一覧を選択する際に画像表示装置に表示される画面の一例である。
【図13】実施例1のプラントの制御装置における学習結果の統計モデル特性及びガイダンス条件を表示させる際に画像表示装置に表示される画面の一例である。
【図14】実施例2の制御装置が適用される火力発電プラントの構成を示す概略構成図である。
【図15】実施例2の制御装置が適用される火力発電プラントのエアーヒーターの構成を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明によるプラントの制御装置及び火力発電プラントの制御装置の実施例について図面を参照して以下に説明する。
【実施例1】
【0030】
本発明の第1実施例であるプラントの制御装置について図1乃至図13を参照して説明する。
【0031】
図1は、本発明の第1実施例であるプラントの制御装置のシステム構成図である。図1に示すように、本実施例であるプラントの制御装制において、御対象のプラント100は、制御装置200によって制御される。
【0032】
プラント100を制御する制御装置200は保守ツール910と接続されているので、プラント100の運転員は、保守ツール910に接続された外部入力装置900と画像表示装置(例えばCRTディスプレイ)920とを介して、制御装置200を制御することができる。
【0033】
制御装置200には、演算装置として、データ前処理部300、数値解析部400、統計モデル500、モデル調整部600、制御信号生成部700、及び操作方法学習部800がそれぞれ備えられた構成となっている。
【0034】
また制御装置200には、データベース(DB)として、計測信号データベース210、モデル構築データベース220、学習情報データベース230、制御ロジックデータベース240、及び制御信号データベース250が設けられている。
【0035】
また制御装置200には、外部とのインターフェイスとして、外部入力インターフェイス201、及び外部出力インターフェイス202が設けられている。
【0036】
この制御装置200では、前記プラント100から取り込んだプラント100の状態量を計測した計測信号1は外部入力インターフェイス201を介して計測信号データベース210に保存される。
【0037】
また、制御装置200に設けた制御信号生成部700にて生成される制御信号15は、制御装置200に設けた制御信号データベース250に保存されると共に、外部出力インターフェイス202から前記プラント100に対する操作信号16、例えば、プラント100に供給する空気流量等を制御する操作信号16として出力するように構成されている。
【0038】
制御装置200に設けたデータ前処理部300では、計測信号データ210に保存された計測データ3、ならびにプラント100の挙動を模擬する物理モデルを用いる数値解析部400を実行して得られた数値解析データ5を、統計的処理を用いてモデル構築データ4に変換する。
【0039】
数値解析部400とはプラント100の運転特性を数値解析によって演算する機能を有するものである。また、数値解析部400で得られた数値解析データ5とはプラント100の特性値である。
【0040】
このモデル構築データ4は、モデル構築データベース220に保存される。また、計測データ3の一部は、制御装置200に設けた制御信号生成部700に入力される。
【0041】
制御装置200に設けたモデル調整部600では、モデル構築データベース220から取り込んだモデル構築データ7に含まれるモデルパラメータ情報を更新(モデルを調整)し、更新後のモデル構築データ8をモデル構築データベース220に保存する。
【0042】
制御装置200に設けた操作方法学習部800では、学習データ12を生成し、学習情報データベース230に保存する。
【0043】
制御装置200に設けた統計モデル500は、制御対象となるプラント100の制御特性を模擬する機能を持つ。すなわち、前記統計モデル500は、操作信号16をプラント100に与え、その制御結果に対する計測信号1を得るのと同等の機能を模擬演算する。この模擬演算のために、統計モデル500は、操作方法学習部800より受けたモデル入力9と、モデル構築データベース220に保存されたモデル構築データ6とを使用する。
【0044】
このモデル入力9は、操作信号16に相当する。モデル入力9とモデル構築データ6とから、前記統計モデル500では、この統計モデル500を構成しているニューラルネットワークの1手法であるRBFネットワークによってプラント100の制御による特性変化を模擬演算して、モデル出力10を出力する。
【0045】
統計モデル500で得られたモデル出力10は、プラント100の計測信号1の予測値となる。尚、モデル入力9、モデル出力10は共に、その数は1種類に限定されず、夫々複数種類用意することができる。
ここで、前記統計モデル500としては、上述のようにRBFネットワークを使用することを前提とするが、その基底関数としてはガウス関数の他にも公知の関数群(thin-plate-spline, Inverse Multiquadrics等)を用いても良い。その場合も、基底関数の広がりを決定するパラメータが調整対象となる。
【0046】
制御装置200に設けた制御信号生成部700では、学習情報データベース230より出力された学習情報データ13、及び制御ロジックデータベース250に保存された制御ロジックデータ14を用いて、計測信号1が望ましい値となるように制御信号15を生成する。
【0047】
この制御ロジックデータベース250には、制御ロジックデータ14を算出する制御回路、及び制御パラメータが保存される。この制御ロジックデータ14を算出する制御回路には、従来技術として公知のPI(比例・積分)制御を用いることができる。
【0048】
操作方法学習部800は、学習情報データベース230に保存された学習の制約条件及び学習のパラメータ設定条件等を含む学習情報データ11を用いて、モデル入力9の操作方法を学習する。学習結果である学習データ12は、学習情報データベース230に保存される。
【0049】
このように、制御装置200の動作において、モデル構築データベース220に保存されるモデル構築データ7に含まれるモデルパラメータ情報をモデル調整部600において調整するメカニズムを具備することにより、モデル構築データ7の特性に応じた適切なモデルパラメータが提供されるため、統計モデル500におけるプラント特性の推定精度を向上できる。
【0050】
また、かかる半径パラメータ調整は本発明のプラント制御装置の適用時に追加される計測データに対して、その近傍に分布する必要最小限のガウス基底関数に対してのみ実施されるため、計測データの蓄積による計算コストの増加を回避し、制御周期以内に統計モデル調整を完了することが期待できる。
【0051】
尚、制御装置200に設置したデータ前処理部300、統計モデル500、モデル調整部600、及び操作方法学習部800の詳細な機能については、後述する。
【0052】
また、操作方法学習部800から学習情報データベース230に保存される学習データ12には、操作前後のモデル入力、及びその操作の結果得られるモデル出力に関する情報が含まれている。
【0053】
学習情報データベース230では、現在の運転条件に対応する学習データ12が選択され、学習情報データ13として制御信号生成部700に入力される。
【0054】
プラント100の運転員は、キーボード901とマウス902で構成される外部入力装置900、制御装置200とデータを送受信できる保守ツール910、及び画像表示装置920を用いることにより、制御装置200に備えられている種々のデータベースに保存された情報にアクセスすることができる。制御装置200は保守ツール910と入出力データ情報90をやり取りするための入力部又は出力部を有する。
【0055】
また、これらの装置を用いることにより、制御装置200の数値解析部400、統計モデル500、モデル調整部600、及び操作方法学習部800で用いるパラメータ設定値、学習の制約条件、及び得られた学習結果の確認に必要な設定情報を入力することができる。
【0056】
保守ツール910は、外部入力インターフェイス911、データ送受信処理部912、及び外部出力インターフェイス913で構成され、データ送受信処理部912を介して制御装置200とデータを送受信できる。
【0057】
外部入力装置900で生成した保守ツール入力信号91は、外部入力インターフェイス911を介して保守ツール910に取り込まれる。保守ツール910のデータ送受信処理部912では、保守ツール入力信号92の情報に従って、制御装置200から入出力データ情報90を取得する。
【0058】
また、データ送受信処理部912では、保守ツール入力信号92の情報に従って、制御装置200の数値解析部400、統計モデル500、モデル調整部600、及び操作方法学習部800で用いるパラメータ設定値、学習の制約条件、及び得られた学習結果の視認に必要な設定情報を含む入出力データ情報90を出力する。
【0059】
データ送受信処理部912では、入出力データ情報90を処理した結果得られる保守ツール出力信号93を、外部出力インターフェイス913に送信する。外部出力インターフェイス913から送信された保守ツール出力信号94は、画像表示装置920に表示される。
【0060】
尚、上記の制御装置200では、計測信号データベース210、モデル構築データベース220、学習情報データベース2300、制御ロジックデータベース240、及び制御信号データベース250が制御装置200の内部に配置されるが、これらの全て、あるいは一部を制御装置200の外部に配置することもできる。
【0061】
また、数値解析部400が制御装置200の内部に配置されるが、これを制御装置200の外部に配置することもできる。
【0062】
例えば、数値解析部400、及びモデル構築データベース220を制御装置200の外部に配置し、数値解析データ5をインターネット経由で制御装置200に送信するようにしてもよい。
【0063】
図2は、図1に示した本実施例であるプラントの制御装置における制御の手順を示すフローチャート図である。
【0064】
図2では、本実施例のプラントの制御装置200の動作を表すフローチャートであり、これらのフローチャートは、ステップ1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000及び2100の各ステップを組み合わせて実行される。以下では、夫々のステップについて説明する。
【0065】
制御装置200の動作開始後、制御装置200の実行条件を設定するステップ100では、データ前処理部300、統計モデル500、モデル調整部600及び操作方法学習部800の実行時に使用する種々のパラメータ条件を設定する。
【0066】
次に、プラントで計測された計測信号を取得するステップ1100では、制御装置200に設置された外部入力インターフェイス201を通じてプラント100の計測信号1を取得し、計測信号データベース210に計測データ3として保存する。
【0067】
次に、データ前処理を実行するステップ1200では、制御装置200のデータ前処理部300を動作させ、計測信号データベース210に保存された計測データ3及び数値解析部400を実行して得られた数値解析データ5に対して統計処理を施し、モデル構築データ4へ変換する。尚、データ前処理部300の詳細な機能及び動作については、後述する。
【0068】
次に、ステップ1300では、前処理により変換したモデル構築データ4をモデル構築データベース220へ保存する。
【0069】
次に、統計モデルを調整するステップ1400では、制御装置200のモデル調整部600を動作させ、モデル構築データ7に応じて配置されるガウス基底関数の半径パラメータを更新する。ここで、前記モデル構築データ7は、各データのモデル特性空間におけるモデル入力値、モデル出力値、データ上に配置されるガウス基底関数の半径パラメータ値、及び統計モデル500を構成するRBFネットワークの重みパラメータを含む。尚、モデル調整部600の詳細な機能及び動作については、後述する。
【0070】
次に、統計モデルを学習するステップ1500では、制御装置200の統計モデル500を動作させ、統計モデル500を構成するRBFネットワークの重みパラメータを学習する。学習手段については、公知の方式を用いることができる。
【0071】
次に、操作方法を学習するステップ1600では、制御装置200の操作方法学習部800を動作させ、統計モデル500が計算したモデル出力推定値10が、予め画像表示装置920を通じて設定した目標条件以下となるようなモデル入力9の操作方法を学習する。また、操作方法学習部800には、強化学習等の公知の方式を用いることができ、その実行条件を含む学習情報データ11は学習情報データベース230より入力する。
【0072】
次に、ステップ1700では、前記操作方法学習部800による学習結果データ12を学習情報データベース230に保存する。
【0073】
次に、制御信号を生成するステップ1800では、制御装置200の制御信号生成部700を動作させ、学習情報データベース230及び制御ロジックデータベース240に保存されている学習結果データ13及び制御ロジック14を用いて制御信号15を生成する。生成した制御信号15はプラント100の制御に使用される他、制御信号データベース250に保存される。
【0074】
次の、制御の実行を判定するステップ1900は分岐である。学習結果に基づくプラント操作のシミュレーション結果から、制御結果が所望の結果となる見通しが得られた場合はステップ2000へ進み、そうでない場合はステップ2100へ進む。
【0075】
次に、プラント100を制御するステップ2000では、生成した制御信号15を制御装置200に設置された外部出力インターフェイス202を通じて制御信号16として出力し、プラントを制御する。
【0076】
最後に、一連の処理動作の終了を判定するステップ2100は分岐である。外部入力装置900を通じて本発明の制御装置200の動作を終了させる信号が入力された場合は処理を終了させるステップに進み、そうでない場合はステップ1100に戻る。
【0077】
以上の動作によって、本実施例の制御装置200の動作では、プラント100の運転員が設定した実行条件に基づき、データ前処理、モデル調整・学習、操作方法学習、制御信号生成及び制御実施に至る一連の処理を自律的に獲得・実行できる。
【0078】
次に、前記制御装置200におけるデータ前処理部300の詳細な動作について、図3のフローチャート、及び図4、5、6の概念図を用いて説明する。
【0079】
本実施例の制御装置200では、制御周期の間に得られるプラントの計測データまたは数値解析データに対して、前処理を施すことによりモデル入力値及びモデル出力値へ変換し、モデル構築データを生成する。
【0080】
本実施例のデータ前処理部300では、時系列のプラント計測データが変動を持つ点を考慮し、制御周期間内に獲得する、変動を含む計測データに対して信頼区間に基づく統計的処理を施し、最大・平均・最小の3種類のモデル出力値を算出する。
【0081】
ここで、信頼区間とは、得られる計測データ分布の真の母数(平均、分散)の値が、ある区間(L,U)に入る確率を1−θ以上になるように保証する区間のことであり、Lを下側信頼限界、Uを上側信頼限界、1−θを信頼係数と呼ぶ。即ち、前記の最大・平均・最小の3種類のモデル出力値は、計測データ分布に対する信頼区間計算によると、それぞれ上側信頼限界、平均、下側信頼限界に該当する。
【0082】
図3は、データ前処理部300の動作を表すフローチャートであり、図2に示したフローチャートのステップ1200の動作を詳細に示したものである。図3に示したフローチャートは、ステップ1210、1220及び1230を組み合わせて実行する。以下では、夫々のステップについて説明する。
【0083】
データ前処理部300の動作開始後、初めにステップ1210では、モデル入力のバイアスを決定する。プラント100が整定状態の場合であっても、計測データは変動を持つため、その計測データを変換して得られるモデル入力条件も同様に変動する。そのため、得られるモデル入力の平均に対してバイアスを考慮し、その範囲内に収まるモデル出力値に対して分布を考慮した信頼区間を計算する。
【0084】
図4は、あるモデル出力に関する計測データの分布をモデル入力空間上にプロットした模式図(縦軸:モデル出力値、横軸:モデル入力値)である。
【0085】
図4において、xは計測データより得られるモデル入力値の平均であり、Δxがバイアスを示す。ここで、バイアスは任意の値に設定可能であるが、通常はデータのモデル入力値の標準偏差とすればよい。
【0086】
次に、モデル出力信頼区間を計算するステップ1220では、図4中にグレーで示したバイアスを考慮したモデル入力範囲内に存在する計測データに対して、予め設定した信頼係数(1−θ)に基づき、データの最大・平均・最小値の各統計量を計算する。
【0087】
次に、モデル構築データを作成するステップ1230では、ステップ1220で求めた、モデル入力条件に対する最大・平均・最小の3種類のモデル出力値を含むモデル構築データ4をモデル構築データベース220へ保存する。ここで、保存されるモデル構築データベース220の態様及び統計モデルの構成について、図5及び6を用いて説明する。
【0088】
図5において、モデル構築データは、夫々固有のデータID221を持つ。また、図5に示すように、1ケースのモデル入力222に対して、3(最大・平均・最小)×K(モデル出力数)種類のモデル出力223を持つ。
【0089】
図6は、本実施例の制御装置200に設置された統計モデル500を構成するRBFネットワークの構造を示した概略図であり、モデル構築データ1ケースに対して1個の中間層ノードが相当する。したがって1個の中間層ノードに対して3×K個のガウス基底関数が配置される。これは図5において、1つのデータ(モデル入力)が3×K個の半径パラメータ224、及びRBFネットワークの重みパラメータ225を持つことを示している。
【0090】
即ち、1つのネットワーク上で3種類のデータ特性(最大・平均・最小)及びモデル出力数Kに応じたプラント特性を表現することが可能となり、中間層ノードに単一のガウス基底関数を配置する場合に比べてより高精度な推定が可能となる。
【0091】
操作方法学習部600では、上記のように構成された統計モデル500を組み合わせて操作方法の学習を実行する(図2のステップ1600)。具体的には、各モデル出力に対して、3種類のデータ特性(最大・平均・最小)より選択された1種類のモデル構築データを用いて統計モデルを組み合わせる。
【0092】
したがって、最大3のK乗通りの組み合わせに対して操作方法を学習できる。本発明におけるモデル調整の計算コスト低減により、上記の多様な統計モデルの組み合わせによる学習が可能となる。
【0093】
プラントの運転員は、後述する画像表示装置及び保守ツールを用いて、多様な統計モデルの組み合わせにより得られた学習結果の中から、制御ニーズに適応したものを任意に選択し、プラントの制御を実行することができる。
【0094】
以上で、本発明の制御装置200におけるデータ前処理部300の動作に関する説明を終了する。
【0095】
次に、前記制御装置200におけるモデル調整部600の詳細な動作について、図7、9のフローチャート、及び図8、11、12の概念図を用いて説明する。
【0096】
図7は、前記モデル調整部600によるモデル調整のアルゴリズム動作を示すフローチャートであり、図2のフローチャートにおける統計モデルを調整するステップ1400に相当する。
【0097】
図7に示したフローチャートは、ステップ1410、1420、1430、1440及び1450を組み合わせて実行する。
【0098】
統計モデル調整のアルゴリズム開始後、各基底関数の追加データに対する距離近傍を計算するステップ1410では、図2のステップ1300で新たに追加されたモデル構築データに対して、既存のガウス基底関数との距離を基に、距離近傍なる指標を計算する。ここで、ガウス基底関数と追加データとの距離は、基底関数の中心座標と追加データ座標とのユークリッド距離とする。
【0099】
ここで、距離近傍の計算手段について、図8の概念図を用いて説明する。図8は、2次元モデル入力空間上のガウス基底関数の中心座標、ならびに追加データの分布を示している。距離近傍の計算では、まず追加データの座標を分点として、モデル入力空間を分割する。
【0100】
図8に示した概念図では2種類のモデル入力に対して追加データの座標上に描画した破線を分点として、領域を4分割する。即ち、モデル入力の次数をJとすると、モデル入力空間の分割数は2のJ乗となる。分割した各領域に含まれるガウス基底関数をグループとして、グループ毎に距離近傍を計算する。
【0101】
図8の概念図に示すように、グループ内で追加データとの距離が最小となる基底関数の距離近傍を1とし、距離が小さい順に距離近傍を1ずつ加算する(各基底関数の右肩の数字が距離近傍を示す)。距離近傍が小さいほど、データ追加による基底関数への影響が大きく、半径パラメータ調整の必要性も大きくなる。また、分割した領域毎に距離近傍を計算することで、半径調整対象となるガウス基底関数が追加データを囲むように均等に選択される。
【0102】
次に、距離近傍を基にガウス基底関数を選択するステップ1420では、ステップ1410求めた各ガウス基底関数の距離近傍と予め設定した基準値を比較し、基準値以下であれば半径調整対象とする。
【0103】
図8の概念図では基準値を3とした場合を示しており、距離近傍が3以下となるガウス基底関数が半径調整対象となっている(図中にグレーの点で表示)。
【0104】
該基準値を大きくとれば半径調整対象となる基底関数の数を多くし、よりきめ細かなモデル調整を実施できるが、計算コストは増加する。一方、該基準値を小さく取れば逆に計算コストを軽減できるが、修正後のモデル精度は比較的低くなる。プラントの運転員は、精度と時間に関するニーズに応じて任意に基準値を設定することができる。
【0105】
次に、ステップ1430では、ステップ1420で選択したガウス基底関数の半径パラメータを調整するが、詳細な調整アルゴリズムについては、後述する。
【0106】
次に、ステップ1440では、調整したガウス基底関数の半径パラメータを用いて、モデル構築データベース220に保存されている情報を更新して、統計モデル調整のアルゴリズムを終了するステップへ進む。
【0107】
図9は、前記モデル調整部600によるガウス基底関数の半径パラメータ調整の詳細なアルゴリズム動作を示すフローチャートであり、図7のフローチャートにおける、半径パラメータを調整するステップ1430に相当する。
【0108】
図9に示したフローチャートは、ステップ1431、1432、1433、1434、1435、及び1436を組み合わせて実行する。
【0109】
本発明における前記モデル調整部600では、まずモデル特性空間上にランダムに決定したモデル入力条件xt(t:ステップ1432〜1436の反復回数)に対して、選択したガウス基底関数との距離情報を基に、各ガウス基底関数のxtの被覆に対する寄与度を求める。そして、寄与度を基に算出した半径パラメータ目標値に近づくように半径パラメータを修正する。以上の一連の動作を定数回反復実行することで、半径パラメータの調整を実行する。
【0110】
半径パラメータ調整のアルゴリズム開始後、半径パラメータ調整の反復回数tを初期化(t=1)するステップ1431では、反復回数tを初期化(t=1に設定)する。
【0111】
次に、ランダムにモデル入力条件を決定するステップ1432では、モデル特性空間上でランダムに入力条件xtを生成する。
【0112】
次に、各基底関数の寄与度を計算するステップ1433では、モデル調整部600に備えた関数式である以下の式(2)を使用して各基底関数の寄与度ρiを計算する。
【0113】
【数2】
【0114】
式(2)において、dminは選択したガウス基底関数とxtとの距離の最小値、diは選択したガウス基底関数とxtとの距離を表す。式(2)によって、寄与度ρiはxtとの距離が小さい基底関数ほど大きくなり、距離が大きいほど指数的に減少する。即ち、xtを被覆する際に、xtに近い基底関数ほど被覆の寄与度が大きいことを意味する。
【0115】
図10は前記ステップ1432及び1433の、2次元モデル入力空間における処理の概念図であり、グレーの点が半径調整対象となるガウス基底関数の中心座標、白の点が半径調整対象とならないガウス基底関数の中心座標、×がxtを示す。選択したガウス基底関数の右肩の数値は寄与度であり、xtに近いほど大きい値を示していることがわかる。
【0116】
次に、各基底関数の被覆度目標値を計算するステップ1434では、計算した寄与度を基に、xtにおける各基底関数の被覆度目標値φikを、モデル調整部600に備えた関数式である以下の式(3)を用いて計算する。ここで、被覆度とは、あるモデル入力条件を式(1)に代入して得られるガウス基底関数値の合計により定義される。
【0117】
【数3】
【0118】
ここで被覆度目標値φikは、ガウス基底関数iのモデル出力のk成分に関する被覆度目標値を意味する。Ckはモデル出力成分に応じて固有に設定される定数値であり、φikはCkを寄与度に応じて比例配分した値となる。Ckを適切に設定することにより、任意のモデル入力条件における被覆度が所望の値となるように各基底関数の半径パラメータを調整することが可能となり、統計モデルの推定精度を向上させることができる。
【0119】
次に、各基底関数の半径パラメータを更新するステップ1435では、計算した被覆度目標値に対して、モデル調整部600に備えた関数式である以下の式(4)、及び式(5)に従い半径パラメータrikを更新する。
【0120】
【数4】
【0121】
【数5】
【0122】
式(4)において、r*ikは、半径パラメータrikの更新目標値であり、これはガウス関数基底iのxtにおける基底関数値がφikに一致するように決定される。また、式(5)において、αは半径調整のステップサイズパラメータ(≦1)であり、rikは半径更新目標値r*ikに近づくように更新される。
【0123】
次の、tが最大反復回数に達したかを判定するステップ1438は分岐である。反復回数tが予め設定した最大反復回数以上となれば、半径パラメータ調整アルゴリズムを終了するステップに進み、そうでなければt=t+1としてステップ1432に戻る。
【0124】
以上の一連の説明から明らかなように、前記制御装置200のモデル調整部600では、プラント計測データを前処理して追加されるモデル構築データに対して、追加データ近傍のガウス基底関数の半径パラメータのみを調整することで、計算コストを低減できる。
【0125】
さらに、データ信頼区間に基づく3種類のモデル構築データを組み合わせて学習を実行することにより、プラントの制御ニーズに応じた多様な制御が可能となる。以上で、モデル調整機能600の詳細な動作の説明を終了する。
【0126】
次に、本実施例であるプラントの制御装置において、制御装置200とデータを送受信できる保守ツール910の外部出力インターフェイス913から送信された保守ツール出力信号94を表示する画像表示装置920にて表示される画面について、図11、12及び13を用いて説明する。図11〜図13は、画像表示装置920に表示される画面の一具体例である。
【0127】
図11は本実施例であるプラントの制御装置において、制御装置200に備えられたデータ前処理部300、モデル調整部600及び操作方法学習部800の実行条件を設定する際に画像表示装置920に表示される画面例であり、本実施例のプラントの制御装置の動作手順を示す図2のフローチャートにおける、実行条件を設定するステップ1000の画面仕様の一例である。
【0128】
この図11に示した実行条件の設定画面では、モデル調整部600において使用する統計モデルの半径調整アルゴリズムのパラメータ、データ前処理部300にて使用するモデル入力のバイアスや信頼区間設定、操作方法学習部800で使用する学習時のモデル出力の目標条件、学習対象とする統計モデルの選択について、夫々設定することができる。
【0129】
図11に示す画面が前記画像表示装置920に表示された状態で、外部入力装置900のマウス902を操作して画面上の数値ボックスにフォーカスを移し、キーボード901を用いることで数値を入力できる。また、マウス902を操作して画面上のボタンをクリックすることで、ボタンを選択する(押す)ことができる。同様に、マウス902を操作して画面上のチェックボックスをクリックすることで、チェックを入れることができる。
【0130】
図11に示した画面では、まず、モデル調整部600における統計モデルの半径調整アルゴリズムに使用するパラメータ(Ck、α)を設定する。具体的には、パラメータ項目リスト3000に表示されたパラメータに対する数値ボックス3001に設定値を入力する。
【0131】
次に、データ前処理部300における統計処理で使用する、モデル入力のバイアス(Δx)及び、モデル出力信頼区間設定値(θ)を図11に示された数値ボックス3002、3003から夫々設定する。
【0132】
更に、図11に示した目標条件の設定リストにおいては、操作方法学習部800による、操作方法の学習時に考慮するモデル出力値の目標条件を設定する。具体的には、モデル出力リスト3004に表示された各モデル出力に対する数値ボックス3005に、目標条件の設定値を入力する。
【0133】
最後に、図11に示した学習対象モデルの設定リストにおいては、データ前処理部300で作成したモデル構築データを用いて構築した統計モデルについて、操作方法の学習対象とする統計モデルを選択する。具体的には、モデル出力リスト3006に表示された各モデル出力に対して、“最大”、“平均”、“最小”、及び“全て”の各項目のチェックボックス3007、3008、3009、3010を夫々選択することで、操作方法学習部800の学習対象となる統計モデルを選択することができる。操作方法学習部800は、選択された統計モデルに対して、操作方法を夫々学習する。
【0134】
以上の実行条件選定の修了後、ボタン3011を選択すると、実行条件設定画面を終了し、図2におけるステップ1100の実行へ進む。
【0135】
図12は本実施例であるプラントの制御装置において、図11に示した実行条件の設定画面で設定した、学習対象となる統計モデル500に対する学習結果を表示する際に、画像表示装置920に表示される画面例である。
【0136】
図12に示す画面が前記画像表示装置920に表示された状態で、外部入力装置900のマウス902を操作して画面上のボタンをクリックすることで、ボタンを選択する(押す)ことができる。
【0137】
図12に示された画面では、操作前及び、学習した各統計モデル500に対する学習結果が学習結果一覧のリスト上に表示される。具体的には、項目ID欄3100に対して、操作前及び各学習結果を用いた操作後のモデル入力値3101、モデル出力値3102の予測値、ならびに学習時に選択した統計モデル設定3103が表示される。
【0138】
該リストには、図11の画面表示において設定した全ての統計モデルの組み合わせに対する学習結果が表示され、それは統計モデル設定3103より識別することができる。プラントの運転員は、リストに表示された学習結果の中から、制御ニーズを考慮して任意の学習結果を選択できる。選択した結果は、オフセット3104によって強調表示される。その後、ボタン3105を選択すると、図13に示した画面が起動する。
【0139】
図13は本実施例であるプラントの制御装置において、図12に示した学習結果一覧表示画面上で選択した学習結果に対する統計モデル500のモデル特性と、操作前のモデル入出力条件の値3203を示しているものである。
【0140】
図13は、更に学習結果に基づく操作後のモデル入出力条件の予測値3204を確認するために、画像表示装置920に表示される画面であり、図2に示した本実施例のプラントの制御装置の制御動作フローにおける、ステップ1900の制御実行判定時に用いる画面の一例である。
【0141】
図13に示す画面が前記画像表示装置920に表示された状態で、外部入力装置900のマウス902を操作して画面上の数値ボックスにフォーカスを移し、キーボード901を用いることで数値を入力できる。また、マウス902を操作して画面上のボタンをクリックすることで、ボタンを選択する(押す)ことができる。同様に、マウス902を操作して画面上のチェックボックスをクリックすることで、チェックを入れることができる。
【0142】
図13に示した画面では、グラフエリア3201に、選択した学習結果に対応する統計モデル500が演算した統計モデルの特性グラフが描画される。その際、多入力・多出力からなる統計モデル特性をできるだけ簡易にグラフ上で表現するため、統計モデル特性をそれぞれ1入力・1出力の特性に写像したものを表示する。
【0143】
図13の画面に示すように、グラフエリア3201の左上から順に、モデル入力1−モデル出力1特性、モデル入力1−モデル出力2特性・・・と順次表示される。各グラフにおいては、1次元のモデル入力空間に対するモデル出力の特性曲線3202が描画される。また、図12で示された、操作前のモデル入出力条件及び学習後の最適なモデル入出力条件を、同グラフ上にプロット点3203及びプロット点3204として重ねて表示させる。このようにすることで、プラントの運転員は、モデル特性グラフ上で、学習結果に基づくプラントの操作が妥当であるかを確認することができる。
【0144】
図13の画面では、更にチェックボックス3207を選択することで、統計モデルの構築に使用したガウス基底関数をグラフ中に図形3206として表示させることができる。これにより、本実施例の制御装置における半径調整アルゴリズムによってガウス基底関数の半径パラメータがどのように調整されたかを確認できる。
【0145】
更に、図13の画面のチェックボックス3208を選択することで、図11の画面表示で設定した各モデル出力の目標条件を点線3205としてグラフ中に表示させることができる。これにより、学習結果に基づく操作が目標条件を満足する妥当なものであるかを判断することができる。
【0146】
プラントの運転員は、以上の特徴を持つ画面表示内容を確認後、操作実行の可否を決定できる。学習結果が妥当と判断され操作を実行する場合は、図13の画面のボタン3209を選択し、そうでない場合はボタン3210を選択する。
【0147】
以上が本実施例であるプラントの制御装置の画像表示装置920に表示される画面についての説明である。
【0148】
以上説明したように、本実施例によれば、プラントの計測データを使用してRBFネットワークによる統計モデルをオンラインで調整する場合に、制御周期以内での最適化計算の終了を可能にして、統計モデルの推定精度を向上させたプラントの制御装置を実現することができる。
【実施例2】
【0149】
次に、本発明に係わるプラントの制御装置を、火力発電プラントに適用した第2実施例である火力発電プラントの制御装置について図14及び図15を用いて説明する。
【0150】
本実施例の火力発電プラントの制御装置に適用されるプラントの制御装置200の構成及び機能は、図1乃至図13に示した第1実施例であるプラントの制御装置における制御装置200と同じものであるので、ここで制御装置200について説明することは省略する。
また、本発明に係わるプラントの制御装置を火力発電プラント以外のプラントを制御する際にも、図1乃至図13に示した第1実施例のプラントの制御装置200が適用できることは言うまでもない。
【0151】
図14は、本実施例の火力発電プラントの制御装置を示すものであり、本実施例に係わる制御装置200が適用される火力発電プラント100aの構成を示す概略図である。先ず、火力発電プラント100aによる発電の仕組みについて簡単に説明する。
【0152】
図14において、火力発電プラント100aを構成するボイラ101には、ミル110で石炭を細かく粉砕した燃料である微粉炭と、微粉炭搬送用の1次空気及び燃焼調整用の2次空気とを供給する複数のバーナ102が設けられており、このバーナ102を通じて供給した微粉炭を、ボイラ101の内部で燃焼させる。尚、微粉炭と1次空気は配管134から、2次空気は配管141から夫々バーナ102に導かれる。
【0153】
また、ボイラ101には、2段燃焼用の空気をボイラ101に投入するアフタエアポート103が設けられている。2段燃焼用の空気は、配管142からアフタエアポート103に導かれる。
【0154】
ボイラ101の内部で微粉炭を燃焼することによって発生した高温の燃焼ガスは、ボイラ101の内部の経路に沿って下流側に流下して、ボイラ101の内部に配置された熱交換器106で給水と熱交換して蒸気を発生させた後に、排ガスとなってボイラ101の下流側に設置されたエアーヒーター104に流入し、このエアーヒーター104で熱交換してボイラ101に供給する空気を昇温する。
【0155】
そして、このエアーヒーター104を通過した排ガスは、図示していない排ガス処理を施した後に、煙突から大気に放出される。
【0156】
ボイラ101の熱交換器106を循環する給水は、給水ポンプ105を介して熱交換器106に供給され、熱交換器106においてボイラ101を流下する燃焼ガスによって過熱され、高温高圧の蒸気となる。尚、本実施例では熱交換器の数を1つとしているが、熱交換器を複数配置するようにしてもよい。
【0157】
熱交換器106で発生した高温高圧の蒸気は、タービンガバナ107を介して蒸気タービン108に導かれ、蒸気の持つエネルギーによって蒸気タービン108を駆動して発電機109で発電する。
【0158】
上記した本実施例の火力発電プラント100aには、火力発電プラントの運転状態を示す状態量を検出する様々な計測器が配置されている。
【0159】
前記火力発電プラント100aは図1のプラント100に該当しているので、これらの計測器から取得された火力発電プラントの計測信号は、図1に示したプラントの制御装置200と同様に、プラント100から計測信号1として制御装置200の外部入力インターフェイス201に送信される。
【0160】
計測器としては、例えば図14の火力発電プラント100aに示すように、熱交換器106から蒸気タービン108に供給される高温高圧の蒸気の温度を計測する温度計測器151、蒸気の圧力を計測する圧力計測器152、発電機9で発電される電力量を計測する発電出力計測器153が図示されている。
【0161】
蒸気タービン108の復水器(図示せず)によって蒸気を冷却して生じた給水は、給水ポンプ105によってボイラ101の熱交換器106に供給されるが、この給水の流量は流量計測器150によって計測されている。
【0162】
また、ボイラ101から排出する燃焼ガスである排ガス中に含まれている成分(窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)、及び硫化水素(H2S)など)の濃度に関する状態量の計測信号は、ボイラ101の下流側に設けた濃度計測器154によって計測される。
【0163】
即ち、火力発電プラント100aに適用した本実施例の火力発電プラントの制御装置においては、計測器150〜154で計測されて制御装置200に入力する火力発電プラント100aの計測データ項目には、上記各計測器によって計測した火力発電プラント100aの状態量であるボイラ101に供給される燃料流量、ボイラ101に供給される空気流量、ボイラ101の熱交換器106に供給される給水流量、ボイラ101の熱交換器106で発生して蒸気タービン108に供給される蒸気温度、ボイラ101の熱交換器106に供給される給水の給水圧力、ボイラ101から排出される排ガスのガス温度、前記排ガスのガス濃度、及びボイラ101から排出される排ガスの一部をボイラ101に再循環させる排ガス再循環流量等が含まれる。
【0164】
これらの計測データ項目は、図1で示したプラントの制御装置200における制御信号生成部700で演算して出力された制御信号15によって決定される計測データ項目である。
【0165】
尚、一般的には図14に図示した以外にも多数の計測器が火力発電プラント100aに配置されるが、ここでは図示を省略する。
【0166】
次に、ボイラ101の内部に投入される空気の経路、すなわちバーナ102からボイラ101の内部に投入される1次空気と2次空気の経路、及びアフタエアポート103からボイラ101の内部に投入される空気の経路について図14に示した火力発電プラント100aを用いて説明する。
【0167】
図14に示した火力発電プラント100aのボイラ101において、1次空気は、ファン120から配管130に導かれ、途中でボイラ101の下流側に設置されたエアーヒーター104を通過する配管132と、エアーヒーター104を通過せずにバイパスする配管131とに分岐するが、エアーヒーター104の下流側に配設した配管133となって再び合流し、バーナ102の上流側に設置された微粉炭を製造するミル110に導かれる。
【0168】
エアーヒーター104を通過する1次空気は、ボイラ101を流下する燃焼ガスと熱交換することによって加熱される。この加熱された1次空気と共に、エアーヒーター104をバイパスした1次空気は、ミル110において粉砕した微分炭をバーナ102に搬送する。
【0169】
ファン121を用いて配管140から投入された空気は、エアーヒーター104で同様にして加熱された後に、2次空気用の配管141とアフタエアポート用の配管142とに分岐して、夫々、ボイラ101のバーナ102とアフタエアポート103とに導かれる。
【0170】
本実施例である火力発電プラントの制御装置200においては、ファン121から送られてバーナ102とアフタエアポート103からボイラ101の内部へ投入される空気流量を制御する例として、2次空気用の配管141とアフタエアポート用の配管142の上流側に操作端機器となるエアダンパ162及びエアダンパ163をそれぞれ設け、制御装置200によってこれらのエアダンパ162及びエアダンパ163の開度を調節して、ボイラ101の内部に供給される2次空気とアフタエアの流量をそれぞれ制御できるように構成している。
【0171】
また、ファン120から送られてバーナ102から微粉炭と共にボイラ101の内部へ投入される空気流量を制御する例として、配管133に合流する直前部分の配管131及び配管132に操作端機器となるエアダンパ160及びエアダンパ161をそれぞれ設け、制御装置200によってこれらのエアダンパ160及びエアダンパ161の開度を調節して、ボイラ101の内部に供給される空気の流量をそれぞれ制御できるように構成している。
【0172】
前記制御装置200は、他の計測データ項目を制御することもできるので、操作端機器の設置場所を制御対象に応じて変えてもよい。
【0173】
図15は、図14に示した火力発電プラント100aのボイラ101の下流側に設置したエアーヒーター104と関連する配管部の拡大図である。
【0174】
図15に示したように、エアーヒーター104には空気を供給する配管130、及び配管140がそれぞれ設置されており、このうち、配管140はエアーヒーター104を貫通して配設され、配管130は途中から分岐した配管131と配管132によって構成されており、前記配管131はエアーヒーター104をバイパスして配設され、前記配管132はエアーヒーター104を貫通して配設されている。
【0175】
そして配管132はエアーヒーター104を貫通した後に配管131と合流した配管133となってミル110に導かれ、このミル110から該配管133を通じて微粉炭と共に空気をボイラ101のバーナ102に導くように配設されている。
【0176】
また、配管140はエアーヒーター104を貫通した後に配管141と配管142とに分岐し、このうち、配管141はボイラ101のバーナ102に、配管142はボイラ101のアフタエアポート103に、それぞれ空気を導くように配設されている。
【0177】
また、前記配管133に合流する直前部分の配管131及び配管132には、流通する空気量を調節するエアダンパ160及びエアダンパ161がそれぞれ設置され、前記配管141及び配管142の上流部分には、流通する空気量を調節するエアダンパ162及びエアダンパ163がそれぞれ設置されている。
【0178】
そして、これらのエアダンパ160〜163を操作することにより、配管131、132、141、142を空気が通過する面積を変更することができるので、配管131、132、141、142を通過してボイラ101の内部に供給される空気流量を個別に調整できる。
【0179】
制御装置200の制御信号生成部700によって演算された制御信号15を外部出力インターフェイス202を介して火力発電プラント100aに対する操作信号16として出力し、ボイラ101の配管131、132、141、142にそれぞれ設置したエアダンパ160、161、162、163などの制御端の機器を操作する。
【0180】
尚、本実施例では、エアダンパ160、161、162、163などの機器のことを操作端と呼び、これを操作するのに必要な制御装置200で演算した制御信号15が該制御装置200から前記操作端に指令する出力信号を操作信号16と呼ぶ。
【0181】
また、制御信号生成部700によって演算されて前記操作端に出力される操作信号16としては、ボイラ101に配管131、132、141、142を通じて供給される空気流量、ボイラ101に空気を供給する配管131、132、141、142にそれぞれ設置された空気の流量を調節する空気ダンパ160〜163の開度、ボイラ101のバーナ102に供給される微粉炭の燃料流量、及びボイラ101から排出される排ガスの一部をボイラ101に再循環させる排ガス再循環流量等が含まれる。
【0182】
以降では、本実施例の火力発電プラントの制御装置において、制御装置200で制御される火力発電プラント100aに設置された操作端を、ボイラ101に設置したバーナ102に供給する空気量を調節する配管131、132にそれぞれ設置されたエアダンパ160、161、及びボイラ101に設置したアフタエアポート103に供給する空気量を調節する配管141、142にそれぞれ設置されたエアダンパ162、163として、被制御量をボイラ101から排出される排ガス中のCO、NOx、及びH2Sの濃度とする場合について説明する。
【0183】
尚、本実施例の火力発電プラントの制御装置では、ボイラ101の操作端の操作量(エアダンパ160、161、162、163の開度)が制御装置200を構成する統計モデル500のモデル入力に、ボイラ101から排出される排ガスに含まれるNOx、CO及びH2S濃度が統計モデル500のモデル出力になり、モデル入出力夫々の最小化が学習の目的となる。
【0184】
以上説明したように、本発明のプラントの制御装置を火力発電プラントに適用すれば、環境規制や運用コストに対する要求を満たす操作方法を学習することにより、火力発電プラントから排出されるNOx、CO、及びH2S濃度の目標値を達成することができる。
【0185】
本実施例によれば、プラントの計測データを使用してRBFネットワークによる統計モデルをオンラインで調整する機能を備え、かつ計測データの蓄積による計算コストへの影響を抑制し、制御周期以内で統計モデルを調整して、推定精度を向上させる機能を備えた火力発電プラントの制御装置を実現することができる。
【0186】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0187】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル、測定情報、算出情報等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。よって、各処理、各構成は、処理部、処理ユニット、プログラムモジュールなどとして各機能を実現可能である。
【0188】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【0189】
以上説明したように、本実施例によれば、プラントの計測データを使用してRBFネットワークによる統計モデルをオンラインで調整する場合に、制御周期以内での最適化計算の終了を可能にして、統計モデルの推定精度を向上させた火力発電プラントの制御装置を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0190】
本発明は、プラントの制御装置及び火力発電プラントの制御装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0191】
1:計測信号、16:制御信号、90:入出力データ情報、100:プラント、100a:火力発電プラント、101:ボイラ、102:バーナ、103:アフタエアポート、130〜133:配管、140〜142:配管、160〜163:エアダンパ、200:制御装置、201:外部入力インターフェイス、202:外部出力インターフェイス、210:計測信号データベース、220:モデル構築データベース、230:学習情報データベース、240:制御ロジックデータベース、250:制御信号データベース、300:データ前処理部、400:数値解析部、500:統計モデル、600:モデル調整部、700:制御信号生成部、800:操作方法学習部、900:外部入力装置、901:キーボード、902:マウス、910:保守ツール、911:外部入力インターフェイス、912:データ送受信処理部、913:外部出力インターフェイス、920:画像表示装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラントの制御装置に関するものであり、特に石炭等の化石燃料を用いて発電する火力発電プラントの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラントの制御装置は、制御対象であるプラントから得られるプラントの状態量の計測信号を処理し、制御対象に与える制御信号(操作信号)を算出して制御対象の運転を制御する。
【0003】
プラントの前記制御装置には、プラントの状態量の計測信号がその目標値を満足するように、操作信号を計算するアルゴリズムが実装される。
【0004】
プラントの制御に用いられている制御アルゴリズムとして、PI(比例・積分)制御アルゴリズムがある。PI制御では、プラントの状態量の計測信号とその目標値との偏差に比例ゲインを乗じた値に、偏差を時間積分した値を加算して、制御対象に与える操作信号を導出する。
【0005】
PI制御を用いた制御アルゴリズムは、ブロック線図などで入出力関係を記述することができるため、入力と出力の因果関係が分かりやすく、多くの適用実績がある。しかし、プラントの運転状態の変更や環境の変化など、事前に想定していない条件でプラントを運転する場合には、制御ロジックを変更するなどの作業が必要になる場合がある。
【0006】
一方、プラントの運転状態や環境の変化に適応できる制御方式には、制御アルゴリズムやパラメータ値を自動的に修正する適応制御や学習アルゴリズムを用いた制御方式がある。
【0007】
学習アルゴリズムを用いてプラントの制御装置の操作信号を導出する方法としては、プラントの計測データや数値解析を基に構築したデータを用いて、それらを統計的に処理してプラントの特性を推定する統計モデルを構築し、この統計モデルに対して最適な制御ロジックを自律学習させる手法が一般的である。
【0008】
上記の手法を用いて得られた制御ロジックの性能は、統計モデルの推定精度に依存することが知られている。即ち、学習アルゴリズムは統計モデルに対して最大の制御効果が得られる制御ロジックを学習するため、統計モデルが学習したプラントの特性が実際のプラント特性に近づくほど、実際のプラントに対する制御効果も大きくなる。そのため、学習アルゴリズムを用いた適応制御技術では、より高精度な統計モデルの構築が課題となる。
【0009】
またこの統計モデルには、一般にニューラルネットワーク(NN)に代表される非線形近似手法が適用されることが多く、プラント計測データを用いてプラントの特性を表現する非線形曲面を学習する。また近年では、プラント適用時に統計モデル特性のオンライン調整が容易となる理由から、NNの1手法であるRBF(Radial Basis Function)ネットワークが注目され、適用が進められている。
【0010】
RBFネットワークによる統計モデルの推定精度を決定する因子の一つとして、RBFネットワークを構成するガウス基底関数の半径パラメータがある。RBFネットワークは後述する式(1)で与えられるガウス基底関数を、統計モデルの構築に使用するモデル構築データのプラント特性空間上の分布に応じて配置し、それらを重ね合わせることによってプラント特性を推定する。
【0011】
ここで、式(1)において、iはガウス基底関数の添字、biは基底関数値、xはモデル入力ベクトル、ciは基底関数の中心座標ベクトル、riは半径パラメータを夫々表す。
【0012】
高い推定精度の統計モデルを得るには、プラント特性空間をガウス基底関数で適切に被覆する必要があり、それにはガウス基底関数の広がりを決定する半径パラメータriを適切に調整する必要がある。
【0013】
【数1】
【0014】
上記に鑑み、RBFネットワークを用いた統計モデルの精度を向上させる技術として、特許文献1にはRBFネットワークのガウス基底関数の半径パラメータを、最適化アルゴリズムの1つであるトンネリングアルゴリズムを用いて調整する技術が記載されている。
【0015】
また、非特許文献1には、RBFネットワークの学習に使用するデータの、モデル特性空間上の疎密分布を考慮して、半径パラメータを最適に調整する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2005−115639公報
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】T. Eguchi, T. Sekiai, A. Yamada, S. Shimizu, M. Fukai: “An Adaptive Radius Adjusting Method for RBF Networks Considering Data Densities and Its Application to Plant Control Technology”, in Proc. of ICCAS-SICE2009, pp.4188-4194(2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
前記特許文献1及び/又は非特許文献1に開示された技術をプラントの制御装置へ適用した場合、ガウス基底関数がプラント特性空間を適切に被覆できるように半径パラメータを調整するため、統計モデルの推定精度を向上させることができる。
【0019】
一方、プラント制御においては、制御による操作条件の変更後、プラントの運転特性が安定するまでに数分から十数分の時間を要するため、この時間を制御周期とするのが一般的である。したがって、上記の統計モデルのオンライン調整(半径パラメータの調整及びプラント特性曲面の学習)は、この制御周期以内に終了することが望ましい。
【0020】
ところで、前記特許文献1の技術をプラントの制御装置に適用する場合、最適化アルゴリズムが探索する半径パラメータの解候補に対する評価値を、学習データであるモデル構築データと推定結果の誤差評価により計算する必要がある。
【0021】
この誤差評価に要する計算コストはモデル構築データの数に応じて増加するため、プラント制御に適用した場合に、計測データが蓄積されるにつれて計算時間が増加し、制御周期以内での最適化計算が終了しなくなる可能性がある。
【0022】
計算時間の増加によって制御周期以内での最適化計算が終了しない場合には、統計モデルの推定精度が低下するのでプラントを望ましい状態に運転することが困難となる。
【0023】
また、前記非特許文献1の技術をプラントの制御装置に適用する場合、上記のような誤差評価は不要であるが、計測データが蓄積される度に全てのガウス基底関数の半径パラメータをモデル構築データ間の疎密を考慮して調整することになる。そのため、前記技術による半径パラメータの調整でも、前記特許文献1の技術の場合と同様に、計測データの蓄積により計算コストが増加して制御周期以内での最適化計算が終了せず、統計モデルの推定精度の低下によってプラントを望ましい状態に運転することが困難となる可能性がある。
【0024】
本発明の目的は、プラントの計測データを使用してRBFネットワークによる統計モデルをオンラインで調整する場合に、制御周期以内での最適化計算の終了を可能にして、統計モデルの推定精度を向上させたプラントの制御装置及び火力発電プラントの制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明のプラントの制御装置は、プラントから該プラントの状態量である計測信号を取り込み、前記計測信号を用いて前記プラントを制御する操作信号を演算する制御装置を備えたプラントの制御装置において、前記制御装置は、プラントの状態量である計測信号を取り込んで保存する計測信号データベースと、前記計測信号データベースに保存されたプラントの計測データに対して信頼区間に基づく統計的処理を施すことでモデル構築データを生成するデータ前処理部と、前記データ前処理部で生成した前記モデル構築データを保存するモデル構築データベースと、前記モデル構築データベースに保存されたモデル構築データを用いて前記プラントに制御信号を与えた時に該プラントの状態量である計測信号の値を推定するプラントの制御特性を模擬する統計モデルと、前記統計モデルを用いて前記計測信号に相当するモデル出力が目標値を達成するようにプラントに与える前記制御信号に相当するモデル入力の生成方法を学習する操作方法学習部と、前記操作方法学習部における学習の制約条件及び学習結果に関する学習データを保存する学習情報データベースと、前記計測信号データベースの計測信号、及び前記学習情報データベースの学習データを用いてプラントに対して送信される制御信号を演算する制御信号生成部とをそれぞれ備えて構成し、更に前記モデル構築データベースに保存されるモデル構築データに含まれる統計モデルの基底半径パラメータを調整するモデル調整部を設けて、前記統計モデルが前記モデル調整部による基底半径パラメータの調整結果を用いて前記モデル出力を生成し、このモデル出力を前記操作方法学習部に出力するように構成したことを特徴とする。
【0026】
本発明の火力発電プラントの制御装置は、ボイラを備えた火力発電プラントから該プラントの状態量である計測信号を取り込み、前記計測信号を用いて前記プラントを制御する操作信号を演算する制御装置を備えた火力発電プラントの制御装置において、前記制御装置は、前記プラントの状態量である計測信号を取り込んで保存する計測信号データベースと、前記計測信号データベースに保存されたプラントの計測データに対して信頼区間に基づく統計的処理を施すことでモデル構築データを生成するデータ前処理部と、生成した前記モデル構築データを保存するモデル構築データベースと、前記モデル構築データベースに保存されたモデル構築データを用いて前記プラントに制御信号を与えた時に該プラントの状態量である計測信号の値を推定するプラントの制御特性を模擬する統計モデルと、前記統計モデルを用いて前記計測信号に相当するモデル出力が目標値を達成するようにプラントに与える前記制御信号に相当するモデル入力の生成方法を学習する操作方法学習部と、前記操作方法学習部における学習の制約条件及び学習結果に関する学習データを保存する学習情報データベースと、前記計測信号データベースの計測信号、及び前記学習情報データベースの学習データを用いてプラントに対して送信される制御信号を演算する制御信号生成部とをそれぞれ備えて構成し、更に前記モデル構築データベースに保存されるモデル構築データに含まれる統計モデルの基底半径パラメータを調整するモデル調整部を設けて、前記統計モデルが前記モデル調整部による基底半径パラメータの調整結果を用いてモデル出力を生成し、このモデル出力を前記操作方法学習部に出力するようにするように構成し、前記計測信号は、前記火力発電プラントのボイラから排出される排ガスに含まれる窒素酸化物、一酸化炭素、二酸化炭素、窒素、酸素、灰中未燃分及び硫化水素の濃度のうち少なくとも1つを表す状態量の信号を含むようにし、前記制御信号は、前記火力発電プラントのボイラに供給する空気流量、この空気流量を調節する空気ダンパの開度、ボイラに供給される燃料流量、ボイラから排出された排ガスを該ボイラに再循環させる排ガス再循環流量のうち少なくとも1つを表す信号を含むようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、プラントの計測データを使用してRBFネットワークによる統計モデルをオンラインで調整する場合に、制御周期以内での最適化計算の終了を可能にして、統計モデルの推定精度を向上させたプラントの制御装置及び火力発電プラントの制御装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施例であるプラントの制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】実施例1のプラントの制御装置における一連の制御動作フローを示すフローチャートである。
【図3】実施例1のプラントの制御装置における前処理部の動作手順を表すフローチャートである。
【図4】実施例1のプラントの制御装置における前処理部のモデル出力信頼区間計算の概念を示す概略図である。
【図5】実施例1のプラントの制御装置におけるモデル構築データベースに保存されるデータの態様を示す図である。
【図6】実施例1のプラントの制御装置における統計モデルを構成するRBFネットワーク概略図である。
【図7】実施例1のプラントの制御装置におけるモデル調整部の動作手順を表すフローチャートである。
【図8】実施例1のプラントの制御装置におけるモデル調整部の動作時における半径調整対象となるガウス基底関数を決定する方式の概念を示す概略図である。
【図9】実施例1のプラントの制御装置におけるモデル調整部の動作時における半径調整アルゴリズムの動作手順を表すフローチャートである。
【図10】実施例1のプラントの制御装置におけるモデル調整部の動作時における半径調整対象となるガウス基底関数の寄与度計算の概念を示す概略図である。
【図11】実施例1のプラントの制御装置における実行条件を設定する際に画像表示装置に表示される画面の一例である。
【図12】実施例1のプラントの制御装置における表示させたい学習結果一覧を選択する際に画像表示装置に表示される画面の一例である。
【図13】実施例1のプラントの制御装置における学習結果の統計モデル特性及びガイダンス条件を表示させる際に画像表示装置に表示される画面の一例である。
【図14】実施例2の制御装置が適用される火力発電プラントの構成を示す概略構成図である。
【図15】実施例2の制御装置が適用される火力発電プラントのエアーヒーターの構成を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明によるプラントの制御装置及び火力発電プラントの制御装置の実施例について図面を参照して以下に説明する。
【実施例1】
【0030】
本発明の第1実施例であるプラントの制御装置について図1乃至図13を参照して説明する。
【0031】
図1は、本発明の第1実施例であるプラントの制御装置のシステム構成図である。図1に示すように、本実施例であるプラントの制御装制において、御対象のプラント100は、制御装置200によって制御される。
【0032】
プラント100を制御する制御装置200は保守ツール910と接続されているので、プラント100の運転員は、保守ツール910に接続された外部入力装置900と画像表示装置(例えばCRTディスプレイ)920とを介して、制御装置200を制御することができる。
【0033】
制御装置200には、演算装置として、データ前処理部300、数値解析部400、統計モデル500、モデル調整部600、制御信号生成部700、及び操作方法学習部800がそれぞれ備えられた構成となっている。
【0034】
また制御装置200には、データベース(DB)として、計測信号データベース210、モデル構築データベース220、学習情報データベース230、制御ロジックデータベース240、及び制御信号データベース250が設けられている。
【0035】
また制御装置200には、外部とのインターフェイスとして、外部入力インターフェイス201、及び外部出力インターフェイス202が設けられている。
【0036】
この制御装置200では、前記プラント100から取り込んだプラント100の状態量を計測した計測信号1は外部入力インターフェイス201を介して計測信号データベース210に保存される。
【0037】
また、制御装置200に設けた制御信号生成部700にて生成される制御信号15は、制御装置200に設けた制御信号データベース250に保存されると共に、外部出力インターフェイス202から前記プラント100に対する操作信号16、例えば、プラント100に供給する空気流量等を制御する操作信号16として出力するように構成されている。
【0038】
制御装置200に設けたデータ前処理部300では、計測信号データ210に保存された計測データ3、ならびにプラント100の挙動を模擬する物理モデルを用いる数値解析部400を実行して得られた数値解析データ5を、統計的処理を用いてモデル構築データ4に変換する。
【0039】
数値解析部400とはプラント100の運転特性を数値解析によって演算する機能を有するものである。また、数値解析部400で得られた数値解析データ5とはプラント100の特性値である。
【0040】
このモデル構築データ4は、モデル構築データベース220に保存される。また、計測データ3の一部は、制御装置200に設けた制御信号生成部700に入力される。
【0041】
制御装置200に設けたモデル調整部600では、モデル構築データベース220から取り込んだモデル構築データ7に含まれるモデルパラメータ情報を更新(モデルを調整)し、更新後のモデル構築データ8をモデル構築データベース220に保存する。
【0042】
制御装置200に設けた操作方法学習部800では、学習データ12を生成し、学習情報データベース230に保存する。
【0043】
制御装置200に設けた統計モデル500は、制御対象となるプラント100の制御特性を模擬する機能を持つ。すなわち、前記統計モデル500は、操作信号16をプラント100に与え、その制御結果に対する計測信号1を得るのと同等の機能を模擬演算する。この模擬演算のために、統計モデル500は、操作方法学習部800より受けたモデル入力9と、モデル構築データベース220に保存されたモデル構築データ6とを使用する。
【0044】
このモデル入力9は、操作信号16に相当する。モデル入力9とモデル構築データ6とから、前記統計モデル500では、この統計モデル500を構成しているニューラルネットワークの1手法であるRBFネットワークによってプラント100の制御による特性変化を模擬演算して、モデル出力10を出力する。
【0045】
統計モデル500で得られたモデル出力10は、プラント100の計測信号1の予測値となる。尚、モデル入力9、モデル出力10は共に、その数は1種類に限定されず、夫々複数種類用意することができる。
ここで、前記統計モデル500としては、上述のようにRBFネットワークを使用することを前提とするが、その基底関数としてはガウス関数の他にも公知の関数群(thin-plate-spline, Inverse Multiquadrics等)を用いても良い。その場合も、基底関数の広がりを決定するパラメータが調整対象となる。
【0046】
制御装置200に設けた制御信号生成部700では、学習情報データベース230より出力された学習情報データ13、及び制御ロジックデータベース250に保存された制御ロジックデータ14を用いて、計測信号1が望ましい値となるように制御信号15を生成する。
【0047】
この制御ロジックデータベース250には、制御ロジックデータ14を算出する制御回路、及び制御パラメータが保存される。この制御ロジックデータ14を算出する制御回路には、従来技術として公知のPI(比例・積分)制御を用いることができる。
【0048】
操作方法学習部800は、学習情報データベース230に保存された学習の制約条件及び学習のパラメータ設定条件等を含む学習情報データ11を用いて、モデル入力9の操作方法を学習する。学習結果である学習データ12は、学習情報データベース230に保存される。
【0049】
このように、制御装置200の動作において、モデル構築データベース220に保存されるモデル構築データ7に含まれるモデルパラメータ情報をモデル調整部600において調整するメカニズムを具備することにより、モデル構築データ7の特性に応じた適切なモデルパラメータが提供されるため、統計モデル500におけるプラント特性の推定精度を向上できる。
【0050】
また、かかる半径パラメータ調整は本発明のプラント制御装置の適用時に追加される計測データに対して、その近傍に分布する必要最小限のガウス基底関数に対してのみ実施されるため、計測データの蓄積による計算コストの増加を回避し、制御周期以内に統計モデル調整を完了することが期待できる。
【0051】
尚、制御装置200に設置したデータ前処理部300、統計モデル500、モデル調整部600、及び操作方法学習部800の詳細な機能については、後述する。
【0052】
また、操作方法学習部800から学習情報データベース230に保存される学習データ12には、操作前後のモデル入力、及びその操作の結果得られるモデル出力に関する情報が含まれている。
【0053】
学習情報データベース230では、現在の運転条件に対応する学習データ12が選択され、学習情報データ13として制御信号生成部700に入力される。
【0054】
プラント100の運転員は、キーボード901とマウス902で構成される外部入力装置900、制御装置200とデータを送受信できる保守ツール910、及び画像表示装置920を用いることにより、制御装置200に備えられている種々のデータベースに保存された情報にアクセスすることができる。制御装置200は保守ツール910と入出力データ情報90をやり取りするための入力部又は出力部を有する。
【0055】
また、これらの装置を用いることにより、制御装置200の数値解析部400、統計モデル500、モデル調整部600、及び操作方法学習部800で用いるパラメータ設定値、学習の制約条件、及び得られた学習結果の確認に必要な設定情報を入力することができる。
【0056】
保守ツール910は、外部入力インターフェイス911、データ送受信処理部912、及び外部出力インターフェイス913で構成され、データ送受信処理部912を介して制御装置200とデータを送受信できる。
【0057】
外部入力装置900で生成した保守ツール入力信号91は、外部入力インターフェイス911を介して保守ツール910に取り込まれる。保守ツール910のデータ送受信処理部912では、保守ツール入力信号92の情報に従って、制御装置200から入出力データ情報90を取得する。
【0058】
また、データ送受信処理部912では、保守ツール入力信号92の情報に従って、制御装置200の数値解析部400、統計モデル500、モデル調整部600、及び操作方法学習部800で用いるパラメータ設定値、学習の制約条件、及び得られた学習結果の視認に必要な設定情報を含む入出力データ情報90を出力する。
【0059】
データ送受信処理部912では、入出力データ情報90を処理した結果得られる保守ツール出力信号93を、外部出力インターフェイス913に送信する。外部出力インターフェイス913から送信された保守ツール出力信号94は、画像表示装置920に表示される。
【0060】
尚、上記の制御装置200では、計測信号データベース210、モデル構築データベース220、学習情報データベース2300、制御ロジックデータベース240、及び制御信号データベース250が制御装置200の内部に配置されるが、これらの全て、あるいは一部を制御装置200の外部に配置することもできる。
【0061】
また、数値解析部400が制御装置200の内部に配置されるが、これを制御装置200の外部に配置することもできる。
【0062】
例えば、数値解析部400、及びモデル構築データベース220を制御装置200の外部に配置し、数値解析データ5をインターネット経由で制御装置200に送信するようにしてもよい。
【0063】
図2は、図1に示した本実施例であるプラントの制御装置における制御の手順を示すフローチャート図である。
【0064】
図2では、本実施例のプラントの制御装置200の動作を表すフローチャートであり、これらのフローチャートは、ステップ1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000及び2100の各ステップを組み合わせて実行される。以下では、夫々のステップについて説明する。
【0065】
制御装置200の動作開始後、制御装置200の実行条件を設定するステップ100では、データ前処理部300、統計モデル500、モデル調整部600及び操作方法学習部800の実行時に使用する種々のパラメータ条件を設定する。
【0066】
次に、プラントで計測された計測信号を取得するステップ1100では、制御装置200に設置された外部入力インターフェイス201を通じてプラント100の計測信号1を取得し、計測信号データベース210に計測データ3として保存する。
【0067】
次に、データ前処理を実行するステップ1200では、制御装置200のデータ前処理部300を動作させ、計測信号データベース210に保存された計測データ3及び数値解析部400を実行して得られた数値解析データ5に対して統計処理を施し、モデル構築データ4へ変換する。尚、データ前処理部300の詳細な機能及び動作については、後述する。
【0068】
次に、ステップ1300では、前処理により変換したモデル構築データ4をモデル構築データベース220へ保存する。
【0069】
次に、統計モデルを調整するステップ1400では、制御装置200のモデル調整部600を動作させ、モデル構築データ7に応じて配置されるガウス基底関数の半径パラメータを更新する。ここで、前記モデル構築データ7は、各データのモデル特性空間におけるモデル入力値、モデル出力値、データ上に配置されるガウス基底関数の半径パラメータ値、及び統計モデル500を構成するRBFネットワークの重みパラメータを含む。尚、モデル調整部600の詳細な機能及び動作については、後述する。
【0070】
次に、統計モデルを学習するステップ1500では、制御装置200の統計モデル500を動作させ、統計モデル500を構成するRBFネットワークの重みパラメータを学習する。学習手段については、公知の方式を用いることができる。
【0071】
次に、操作方法を学習するステップ1600では、制御装置200の操作方法学習部800を動作させ、統計モデル500が計算したモデル出力推定値10が、予め画像表示装置920を通じて設定した目標条件以下となるようなモデル入力9の操作方法を学習する。また、操作方法学習部800には、強化学習等の公知の方式を用いることができ、その実行条件を含む学習情報データ11は学習情報データベース230より入力する。
【0072】
次に、ステップ1700では、前記操作方法学習部800による学習結果データ12を学習情報データベース230に保存する。
【0073】
次に、制御信号を生成するステップ1800では、制御装置200の制御信号生成部700を動作させ、学習情報データベース230及び制御ロジックデータベース240に保存されている学習結果データ13及び制御ロジック14を用いて制御信号15を生成する。生成した制御信号15はプラント100の制御に使用される他、制御信号データベース250に保存される。
【0074】
次の、制御の実行を判定するステップ1900は分岐である。学習結果に基づくプラント操作のシミュレーション結果から、制御結果が所望の結果となる見通しが得られた場合はステップ2000へ進み、そうでない場合はステップ2100へ進む。
【0075】
次に、プラント100を制御するステップ2000では、生成した制御信号15を制御装置200に設置された外部出力インターフェイス202を通じて制御信号16として出力し、プラントを制御する。
【0076】
最後に、一連の処理動作の終了を判定するステップ2100は分岐である。外部入力装置900を通じて本発明の制御装置200の動作を終了させる信号が入力された場合は処理を終了させるステップに進み、そうでない場合はステップ1100に戻る。
【0077】
以上の動作によって、本実施例の制御装置200の動作では、プラント100の運転員が設定した実行条件に基づき、データ前処理、モデル調整・学習、操作方法学習、制御信号生成及び制御実施に至る一連の処理を自律的に獲得・実行できる。
【0078】
次に、前記制御装置200におけるデータ前処理部300の詳細な動作について、図3のフローチャート、及び図4、5、6の概念図を用いて説明する。
【0079】
本実施例の制御装置200では、制御周期の間に得られるプラントの計測データまたは数値解析データに対して、前処理を施すことによりモデル入力値及びモデル出力値へ変換し、モデル構築データを生成する。
【0080】
本実施例のデータ前処理部300では、時系列のプラント計測データが変動を持つ点を考慮し、制御周期間内に獲得する、変動を含む計測データに対して信頼区間に基づく統計的処理を施し、最大・平均・最小の3種類のモデル出力値を算出する。
【0081】
ここで、信頼区間とは、得られる計測データ分布の真の母数(平均、分散)の値が、ある区間(L,U)に入る確率を1−θ以上になるように保証する区間のことであり、Lを下側信頼限界、Uを上側信頼限界、1−θを信頼係数と呼ぶ。即ち、前記の最大・平均・最小の3種類のモデル出力値は、計測データ分布に対する信頼区間計算によると、それぞれ上側信頼限界、平均、下側信頼限界に該当する。
【0082】
図3は、データ前処理部300の動作を表すフローチャートであり、図2に示したフローチャートのステップ1200の動作を詳細に示したものである。図3に示したフローチャートは、ステップ1210、1220及び1230を組み合わせて実行する。以下では、夫々のステップについて説明する。
【0083】
データ前処理部300の動作開始後、初めにステップ1210では、モデル入力のバイアスを決定する。プラント100が整定状態の場合であっても、計測データは変動を持つため、その計測データを変換して得られるモデル入力条件も同様に変動する。そのため、得られるモデル入力の平均に対してバイアスを考慮し、その範囲内に収まるモデル出力値に対して分布を考慮した信頼区間を計算する。
【0084】
図4は、あるモデル出力に関する計測データの分布をモデル入力空間上にプロットした模式図(縦軸:モデル出力値、横軸:モデル入力値)である。
【0085】
図4において、xは計測データより得られるモデル入力値の平均であり、Δxがバイアスを示す。ここで、バイアスは任意の値に設定可能であるが、通常はデータのモデル入力値の標準偏差とすればよい。
【0086】
次に、モデル出力信頼区間を計算するステップ1220では、図4中にグレーで示したバイアスを考慮したモデル入力範囲内に存在する計測データに対して、予め設定した信頼係数(1−θ)に基づき、データの最大・平均・最小値の各統計量を計算する。
【0087】
次に、モデル構築データを作成するステップ1230では、ステップ1220で求めた、モデル入力条件に対する最大・平均・最小の3種類のモデル出力値を含むモデル構築データ4をモデル構築データベース220へ保存する。ここで、保存されるモデル構築データベース220の態様及び統計モデルの構成について、図5及び6を用いて説明する。
【0088】
図5において、モデル構築データは、夫々固有のデータID221を持つ。また、図5に示すように、1ケースのモデル入力222に対して、3(最大・平均・最小)×K(モデル出力数)種類のモデル出力223を持つ。
【0089】
図6は、本実施例の制御装置200に設置された統計モデル500を構成するRBFネットワークの構造を示した概略図であり、モデル構築データ1ケースに対して1個の中間層ノードが相当する。したがって1個の中間層ノードに対して3×K個のガウス基底関数が配置される。これは図5において、1つのデータ(モデル入力)が3×K個の半径パラメータ224、及びRBFネットワークの重みパラメータ225を持つことを示している。
【0090】
即ち、1つのネットワーク上で3種類のデータ特性(最大・平均・最小)及びモデル出力数Kに応じたプラント特性を表現することが可能となり、中間層ノードに単一のガウス基底関数を配置する場合に比べてより高精度な推定が可能となる。
【0091】
操作方法学習部600では、上記のように構成された統計モデル500を組み合わせて操作方法の学習を実行する(図2のステップ1600)。具体的には、各モデル出力に対して、3種類のデータ特性(最大・平均・最小)より選択された1種類のモデル構築データを用いて統計モデルを組み合わせる。
【0092】
したがって、最大3のK乗通りの組み合わせに対して操作方法を学習できる。本発明におけるモデル調整の計算コスト低減により、上記の多様な統計モデルの組み合わせによる学習が可能となる。
【0093】
プラントの運転員は、後述する画像表示装置及び保守ツールを用いて、多様な統計モデルの組み合わせにより得られた学習結果の中から、制御ニーズに適応したものを任意に選択し、プラントの制御を実行することができる。
【0094】
以上で、本発明の制御装置200におけるデータ前処理部300の動作に関する説明を終了する。
【0095】
次に、前記制御装置200におけるモデル調整部600の詳細な動作について、図7、9のフローチャート、及び図8、11、12の概念図を用いて説明する。
【0096】
図7は、前記モデル調整部600によるモデル調整のアルゴリズム動作を示すフローチャートであり、図2のフローチャートにおける統計モデルを調整するステップ1400に相当する。
【0097】
図7に示したフローチャートは、ステップ1410、1420、1430、1440及び1450を組み合わせて実行する。
【0098】
統計モデル調整のアルゴリズム開始後、各基底関数の追加データに対する距離近傍を計算するステップ1410では、図2のステップ1300で新たに追加されたモデル構築データに対して、既存のガウス基底関数との距離を基に、距離近傍なる指標を計算する。ここで、ガウス基底関数と追加データとの距離は、基底関数の中心座標と追加データ座標とのユークリッド距離とする。
【0099】
ここで、距離近傍の計算手段について、図8の概念図を用いて説明する。図8は、2次元モデル入力空間上のガウス基底関数の中心座標、ならびに追加データの分布を示している。距離近傍の計算では、まず追加データの座標を分点として、モデル入力空間を分割する。
【0100】
図8に示した概念図では2種類のモデル入力に対して追加データの座標上に描画した破線を分点として、領域を4分割する。即ち、モデル入力の次数をJとすると、モデル入力空間の分割数は2のJ乗となる。分割した各領域に含まれるガウス基底関数をグループとして、グループ毎に距離近傍を計算する。
【0101】
図8の概念図に示すように、グループ内で追加データとの距離が最小となる基底関数の距離近傍を1とし、距離が小さい順に距離近傍を1ずつ加算する(各基底関数の右肩の数字が距離近傍を示す)。距離近傍が小さいほど、データ追加による基底関数への影響が大きく、半径パラメータ調整の必要性も大きくなる。また、分割した領域毎に距離近傍を計算することで、半径調整対象となるガウス基底関数が追加データを囲むように均等に選択される。
【0102】
次に、距離近傍を基にガウス基底関数を選択するステップ1420では、ステップ1410求めた各ガウス基底関数の距離近傍と予め設定した基準値を比較し、基準値以下であれば半径調整対象とする。
【0103】
図8の概念図では基準値を3とした場合を示しており、距離近傍が3以下となるガウス基底関数が半径調整対象となっている(図中にグレーの点で表示)。
【0104】
該基準値を大きくとれば半径調整対象となる基底関数の数を多くし、よりきめ細かなモデル調整を実施できるが、計算コストは増加する。一方、該基準値を小さく取れば逆に計算コストを軽減できるが、修正後のモデル精度は比較的低くなる。プラントの運転員は、精度と時間に関するニーズに応じて任意に基準値を設定することができる。
【0105】
次に、ステップ1430では、ステップ1420で選択したガウス基底関数の半径パラメータを調整するが、詳細な調整アルゴリズムについては、後述する。
【0106】
次に、ステップ1440では、調整したガウス基底関数の半径パラメータを用いて、モデル構築データベース220に保存されている情報を更新して、統計モデル調整のアルゴリズムを終了するステップへ進む。
【0107】
図9は、前記モデル調整部600によるガウス基底関数の半径パラメータ調整の詳細なアルゴリズム動作を示すフローチャートであり、図7のフローチャートにおける、半径パラメータを調整するステップ1430に相当する。
【0108】
図9に示したフローチャートは、ステップ1431、1432、1433、1434、1435、及び1436を組み合わせて実行する。
【0109】
本発明における前記モデル調整部600では、まずモデル特性空間上にランダムに決定したモデル入力条件xt(t:ステップ1432〜1436の反復回数)に対して、選択したガウス基底関数との距離情報を基に、各ガウス基底関数のxtの被覆に対する寄与度を求める。そして、寄与度を基に算出した半径パラメータ目標値に近づくように半径パラメータを修正する。以上の一連の動作を定数回反復実行することで、半径パラメータの調整を実行する。
【0110】
半径パラメータ調整のアルゴリズム開始後、半径パラメータ調整の反復回数tを初期化(t=1)するステップ1431では、反復回数tを初期化(t=1に設定)する。
【0111】
次に、ランダムにモデル入力条件を決定するステップ1432では、モデル特性空間上でランダムに入力条件xtを生成する。
【0112】
次に、各基底関数の寄与度を計算するステップ1433では、モデル調整部600に備えた関数式である以下の式(2)を使用して各基底関数の寄与度ρiを計算する。
【0113】
【数2】
【0114】
式(2)において、dminは選択したガウス基底関数とxtとの距離の最小値、diは選択したガウス基底関数とxtとの距離を表す。式(2)によって、寄与度ρiはxtとの距離が小さい基底関数ほど大きくなり、距離が大きいほど指数的に減少する。即ち、xtを被覆する際に、xtに近い基底関数ほど被覆の寄与度が大きいことを意味する。
【0115】
図10は前記ステップ1432及び1433の、2次元モデル入力空間における処理の概念図であり、グレーの点が半径調整対象となるガウス基底関数の中心座標、白の点が半径調整対象とならないガウス基底関数の中心座標、×がxtを示す。選択したガウス基底関数の右肩の数値は寄与度であり、xtに近いほど大きい値を示していることがわかる。
【0116】
次に、各基底関数の被覆度目標値を計算するステップ1434では、計算した寄与度を基に、xtにおける各基底関数の被覆度目標値φikを、モデル調整部600に備えた関数式である以下の式(3)を用いて計算する。ここで、被覆度とは、あるモデル入力条件を式(1)に代入して得られるガウス基底関数値の合計により定義される。
【0117】
【数3】
【0118】
ここで被覆度目標値φikは、ガウス基底関数iのモデル出力のk成分に関する被覆度目標値を意味する。Ckはモデル出力成分に応じて固有に設定される定数値であり、φikはCkを寄与度に応じて比例配分した値となる。Ckを適切に設定することにより、任意のモデル入力条件における被覆度が所望の値となるように各基底関数の半径パラメータを調整することが可能となり、統計モデルの推定精度を向上させることができる。
【0119】
次に、各基底関数の半径パラメータを更新するステップ1435では、計算した被覆度目標値に対して、モデル調整部600に備えた関数式である以下の式(4)、及び式(5)に従い半径パラメータrikを更新する。
【0120】
【数4】
【0121】
【数5】
【0122】
式(4)において、r*ikは、半径パラメータrikの更新目標値であり、これはガウス関数基底iのxtにおける基底関数値がφikに一致するように決定される。また、式(5)において、αは半径調整のステップサイズパラメータ(≦1)であり、rikは半径更新目標値r*ikに近づくように更新される。
【0123】
次の、tが最大反復回数に達したかを判定するステップ1438は分岐である。反復回数tが予め設定した最大反復回数以上となれば、半径パラメータ調整アルゴリズムを終了するステップに進み、そうでなければt=t+1としてステップ1432に戻る。
【0124】
以上の一連の説明から明らかなように、前記制御装置200のモデル調整部600では、プラント計測データを前処理して追加されるモデル構築データに対して、追加データ近傍のガウス基底関数の半径パラメータのみを調整することで、計算コストを低減できる。
【0125】
さらに、データ信頼区間に基づく3種類のモデル構築データを組み合わせて学習を実行することにより、プラントの制御ニーズに応じた多様な制御が可能となる。以上で、モデル調整機能600の詳細な動作の説明を終了する。
【0126】
次に、本実施例であるプラントの制御装置において、制御装置200とデータを送受信できる保守ツール910の外部出力インターフェイス913から送信された保守ツール出力信号94を表示する画像表示装置920にて表示される画面について、図11、12及び13を用いて説明する。図11〜図13は、画像表示装置920に表示される画面の一具体例である。
【0127】
図11は本実施例であるプラントの制御装置において、制御装置200に備えられたデータ前処理部300、モデル調整部600及び操作方法学習部800の実行条件を設定する際に画像表示装置920に表示される画面例であり、本実施例のプラントの制御装置の動作手順を示す図2のフローチャートにおける、実行条件を設定するステップ1000の画面仕様の一例である。
【0128】
この図11に示した実行条件の設定画面では、モデル調整部600において使用する統計モデルの半径調整アルゴリズムのパラメータ、データ前処理部300にて使用するモデル入力のバイアスや信頼区間設定、操作方法学習部800で使用する学習時のモデル出力の目標条件、学習対象とする統計モデルの選択について、夫々設定することができる。
【0129】
図11に示す画面が前記画像表示装置920に表示された状態で、外部入力装置900のマウス902を操作して画面上の数値ボックスにフォーカスを移し、キーボード901を用いることで数値を入力できる。また、マウス902を操作して画面上のボタンをクリックすることで、ボタンを選択する(押す)ことができる。同様に、マウス902を操作して画面上のチェックボックスをクリックすることで、チェックを入れることができる。
【0130】
図11に示した画面では、まず、モデル調整部600における統計モデルの半径調整アルゴリズムに使用するパラメータ(Ck、α)を設定する。具体的には、パラメータ項目リスト3000に表示されたパラメータに対する数値ボックス3001に設定値を入力する。
【0131】
次に、データ前処理部300における統計処理で使用する、モデル入力のバイアス(Δx)及び、モデル出力信頼区間設定値(θ)を図11に示された数値ボックス3002、3003から夫々設定する。
【0132】
更に、図11に示した目標条件の設定リストにおいては、操作方法学習部800による、操作方法の学習時に考慮するモデル出力値の目標条件を設定する。具体的には、モデル出力リスト3004に表示された各モデル出力に対する数値ボックス3005に、目標条件の設定値を入力する。
【0133】
最後に、図11に示した学習対象モデルの設定リストにおいては、データ前処理部300で作成したモデル構築データを用いて構築した統計モデルについて、操作方法の学習対象とする統計モデルを選択する。具体的には、モデル出力リスト3006に表示された各モデル出力に対して、“最大”、“平均”、“最小”、及び“全て”の各項目のチェックボックス3007、3008、3009、3010を夫々選択することで、操作方法学習部800の学習対象となる統計モデルを選択することができる。操作方法学習部800は、選択された統計モデルに対して、操作方法を夫々学習する。
【0134】
以上の実行条件選定の修了後、ボタン3011を選択すると、実行条件設定画面を終了し、図2におけるステップ1100の実行へ進む。
【0135】
図12は本実施例であるプラントの制御装置において、図11に示した実行条件の設定画面で設定した、学習対象となる統計モデル500に対する学習結果を表示する際に、画像表示装置920に表示される画面例である。
【0136】
図12に示す画面が前記画像表示装置920に表示された状態で、外部入力装置900のマウス902を操作して画面上のボタンをクリックすることで、ボタンを選択する(押す)ことができる。
【0137】
図12に示された画面では、操作前及び、学習した各統計モデル500に対する学習結果が学習結果一覧のリスト上に表示される。具体的には、項目ID欄3100に対して、操作前及び各学習結果を用いた操作後のモデル入力値3101、モデル出力値3102の予測値、ならびに学習時に選択した統計モデル設定3103が表示される。
【0138】
該リストには、図11の画面表示において設定した全ての統計モデルの組み合わせに対する学習結果が表示され、それは統計モデル設定3103より識別することができる。プラントの運転員は、リストに表示された学習結果の中から、制御ニーズを考慮して任意の学習結果を選択できる。選択した結果は、オフセット3104によって強調表示される。その後、ボタン3105を選択すると、図13に示した画面が起動する。
【0139】
図13は本実施例であるプラントの制御装置において、図12に示した学習結果一覧表示画面上で選択した学習結果に対する統計モデル500のモデル特性と、操作前のモデル入出力条件の値3203を示しているものである。
【0140】
図13は、更に学習結果に基づく操作後のモデル入出力条件の予測値3204を確認するために、画像表示装置920に表示される画面であり、図2に示した本実施例のプラントの制御装置の制御動作フローにおける、ステップ1900の制御実行判定時に用いる画面の一例である。
【0141】
図13に示す画面が前記画像表示装置920に表示された状態で、外部入力装置900のマウス902を操作して画面上の数値ボックスにフォーカスを移し、キーボード901を用いることで数値を入力できる。また、マウス902を操作して画面上のボタンをクリックすることで、ボタンを選択する(押す)ことができる。同様に、マウス902を操作して画面上のチェックボックスをクリックすることで、チェックを入れることができる。
【0142】
図13に示した画面では、グラフエリア3201に、選択した学習結果に対応する統計モデル500が演算した統計モデルの特性グラフが描画される。その際、多入力・多出力からなる統計モデル特性をできるだけ簡易にグラフ上で表現するため、統計モデル特性をそれぞれ1入力・1出力の特性に写像したものを表示する。
【0143】
図13の画面に示すように、グラフエリア3201の左上から順に、モデル入力1−モデル出力1特性、モデル入力1−モデル出力2特性・・・と順次表示される。各グラフにおいては、1次元のモデル入力空間に対するモデル出力の特性曲線3202が描画される。また、図12で示された、操作前のモデル入出力条件及び学習後の最適なモデル入出力条件を、同グラフ上にプロット点3203及びプロット点3204として重ねて表示させる。このようにすることで、プラントの運転員は、モデル特性グラフ上で、学習結果に基づくプラントの操作が妥当であるかを確認することができる。
【0144】
図13の画面では、更にチェックボックス3207を選択することで、統計モデルの構築に使用したガウス基底関数をグラフ中に図形3206として表示させることができる。これにより、本実施例の制御装置における半径調整アルゴリズムによってガウス基底関数の半径パラメータがどのように調整されたかを確認できる。
【0145】
更に、図13の画面のチェックボックス3208を選択することで、図11の画面表示で設定した各モデル出力の目標条件を点線3205としてグラフ中に表示させることができる。これにより、学習結果に基づく操作が目標条件を満足する妥当なものであるかを判断することができる。
【0146】
プラントの運転員は、以上の特徴を持つ画面表示内容を確認後、操作実行の可否を決定できる。学習結果が妥当と判断され操作を実行する場合は、図13の画面のボタン3209を選択し、そうでない場合はボタン3210を選択する。
【0147】
以上が本実施例であるプラントの制御装置の画像表示装置920に表示される画面についての説明である。
【0148】
以上説明したように、本実施例によれば、プラントの計測データを使用してRBFネットワークによる統計モデルをオンラインで調整する場合に、制御周期以内での最適化計算の終了を可能にして、統計モデルの推定精度を向上させたプラントの制御装置を実現することができる。
【実施例2】
【0149】
次に、本発明に係わるプラントの制御装置を、火力発電プラントに適用した第2実施例である火力発電プラントの制御装置について図14及び図15を用いて説明する。
【0150】
本実施例の火力発電プラントの制御装置に適用されるプラントの制御装置200の構成及び機能は、図1乃至図13に示した第1実施例であるプラントの制御装置における制御装置200と同じものであるので、ここで制御装置200について説明することは省略する。
また、本発明に係わるプラントの制御装置を火力発電プラント以外のプラントを制御する際にも、図1乃至図13に示した第1実施例のプラントの制御装置200が適用できることは言うまでもない。
【0151】
図14は、本実施例の火力発電プラントの制御装置を示すものであり、本実施例に係わる制御装置200が適用される火力発電プラント100aの構成を示す概略図である。先ず、火力発電プラント100aによる発電の仕組みについて簡単に説明する。
【0152】
図14において、火力発電プラント100aを構成するボイラ101には、ミル110で石炭を細かく粉砕した燃料である微粉炭と、微粉炭搬送用の1次空気及び燃焼調整用の2次空気とを供給する複数のバーナ102が設けられており、このバーナ102を通じて供給した微粉炭を、ボイラ101の内部で燃焼させる。尚、微粉炭と1次空気は配管134から、2次空気は配管141から夫々バーナ102に導かれる。
【0153】
また、ボイラ101には、2段燃焼用の空気をボイラ101に投入するアフタエアポート103が設けられている。2段燃焼用の空気は、配管142からアフタエアポート103に導かれる。
【0154】
ボイラ101の内部で微粉炭を燃焼することによって発生した高温の燃焼ガスは、ボイラ101の内部の経路に沿って下流側に流下して、ボイラ101の内部に配置された熱交換器106で給水と熱交換して蒸気を発生させた後に、排ガスとなってボイラ101の下流側に設置されたエアーヒーター104に流入し、このエアーヒーター104で熱交換してボイラ101に供給する空気を昇温する。
【0155】
そして、このエアーヒーター104を通過した排ガスは、図示していない排ガス処理を施した後に、煙突から大気に放出される。
【0156】
ボイラ101の熱交換器106を循環する給水は、給水ポンプ105を介して熱交換器106に供給され、熱交換器106においてボイラ101を流下する燃焼ガスによって過熱され、高温高圧の蒸気となる。尚、本実施例では熱交換器の数を1つとしているが、熱交換器を複数配置するようにしてもよい。
【0157】
熱交換器106で発生した高温高圧の蒸気は、タービンガバナ107を介して蒸気タービン108に導かれ、蒸気の持つエネルギーによって蒸気タービン108を駆動して発電機109で発電する。
【0158】
上記した本実施例の火力発電プラント100aには、火力発電プラントの運転状態を示す状態量を検出する様々な計測器が配置されている。
【0159】
前記火力発電プラント100aは図1のプラント100に該当しているので、これらの計測器から取得された火力発電プラントの計測信号は、図1に示したプラントの制御装置200と同様に、プラント100から計測信号1として制御装置200の外部入力インターフェイス201に送信される。
【0160】
計測器としては、例えば図14の火力発電プラント100aに示すように、熱交換器106から蒸気タービン108に供給される高温高圧の蒸気の温度を計測する温度計測器151、蒸気の圧力を計測する圧力計測器152、発電機9で発電される電力量を計測する発電出力計測器153が図示されている。
【0161】
蒸気タービン108の復水器(図示せず)によって蒸気を冷却して生じた給水は、給水ポンプ105によってボイラ101の熱交換器106に供給されるが、この給水の流量は流量計測器150によって計測されている。
【0162】
また、ボイラ101から排出する燃焼ガスである排ガス中に含まれている成分(窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)、及び硫化水素(H2S)など)の濃度に関する状態量の計測信号は、ボイラ101の下流側に設けた濃度計測器154によって計測される。
【0163】
即ち、火力発電プラント100aに適用した本実施例の火力発電プラントの制御装置においては、計測器150〜154で計測されて制御装置200に入力する火力発電プラント100aの計測データ項目には、上記各計測器によって計測した火力発電プラント100aの状態量であるボイラ101に供給される燃料流量、ボイラ101に供給される空気流量、ボイラ101の熱交換器106に供給される給水流量、ボイラ101の熱交換器106で発生して蒸気タービン108に供給される蒸気温度、ボイラ101の熱交換器106に供給される給水の給水圧力、ボイラ101から排出される排ガスのガス温度、前記排ガスのガス濃度、及びボイラ101から排出される排ガスの一部をボイラ101に再循環させる排ガス再循環流量等が含まれる。
【0164】
これらの計測データ項目は、図1で示したプラントの制御装置200における制御信号生成部700で演算して出力された制御信号15によって決定される計測データ項目である。
【0165】
尚、一般的には図14に図示した以外にも多数の計測器が火力発電プラント100aに配置されるが、ここでは図示を省略する。
【0166】
次に、ボイラ101の内部に投入される空気の経路、すなわちバーナ102からボイラ101の内部に投入される1次空気と2次空気の経路、及びアフタエアポート103からボイラ101の内部に投入される空気の経路について図14に示した火力発電プラント100aを用いて説明する。
【0167】
図14に示した火力発電プラント100aのボイラ101において、1次空気は、ファン120から配管130に導かれ、途中でボイラ101の下流側に設置されたエアーヒーター104を通過する配管132と、エアーヒーター104を通過せずにバイパスする配管131とに分岐するが、エアーヒーター104の下流側に配設した配管133となって再び合流し、バーナ102の上流側に設置された微粉炭を製造するミル110に導かれる。
【0168】
エアーヒーター104を通過する1次空気は、ボイラ101を流下する燃焼ガスと熱交換することによって加熱される。この加熱された1次空気と共に、エアーヒーター104をバイパスした1次空気は、ミル110において粉砕した微分炭をバーナ102に搬送する。
【0169】
ファン121を用いて配管140から投入された空気は、エアーヒーター104で同様にして加熱された後に、2次空気用の配管141とアフタエアポート用の配管142とに分岐して、夫々、ボイラ101のバーナ102とアフタエアポート103とに導かれる。
【0170】
本実施例である火力発電プラントの制御装置200においては、ファン121から送られてバーナ102とアフタエアポート103からボイラ101の内部へ投入される空気流量を制御する例として、2次空気用の配管141とアフタエアポート用の配管142の上流側に操作端機器となるエアダンパ162及びエアダンパ163をそれぞれ設け、制御装置200によってこれらのエアダンパ162及びエアダンパ163の開度を調節して、ボイラ101の内部に供給される2次空気とアフタエアの流量をそれぞれ制御できるように構成している。
【0171】
また、ファン120から送られてバーナ102から微粉炭と共にボイラ101の内部へ投入される空気流量を制御する例として、配管133に合流する直前部分の配管131及び配管132に操作端機器となるエアダンパ160及びエアダンパ161をそれぞれ設け、制御装置200によってこれらのエアダンパ160及びエアダンパ161の開度を調節して、ボイラ101の内部に供給される空気の流量をそれぞれ制御できるように構成している。
【0172】
前記制御装置200は、他の計測データ項目を制御することもできるので、操作端機器の設置場所を制御対象に応じて変えてもよい。
【0173】
図15は、図14に示した火力発電プラント100aのボイラ101の下流側に設置したエアーヒーター104と関連する配管部の拡大図である。
【0174】
図15に示したように、エアーヒーター104には空気を供給する配管130、及び配管140がそれぞれ設置されており、このうち、配管140はエアーヒーター104を貫通して配設され、配管130は途中から分岐した配管131と配管132によって構成されており、前記配管131はエアーヒーター104をバイパスして配設され、前記配管132はエアーヒーター104を貫通して配設されている。
【0175】
そして配管132はエアーヒーター104を貫通した後に配管131と合流した配管133となってミル110に導かれ、このミル110から該配管133を通じて微粉炭と共に空気をボイラ101のバーナ102に導くように配設されている。
【0176】
また、配管140はエアーヒーター104を貫通した後に配管141と配管142とに分岐し、このうち、配管141はボイラ101のバーナ102に、配管142はボイラ101のアフタエアポート103に、それぞれ空気を導くように配設されている。
【0177】
また、前記配管133に合流する直前部分の配管131及び配管132には、流通する空気量を調節するエアダンパ160及びエアダンパ161がそれぞれ設置され、前記配管141及び配管142の上流部分には、流通する空気量を調節するエアダンパ162及びエアダンパ163がそれぞれ設置されている。
【0178】
そして、これらのエアダンパ160〜163を操作することにより、配管131、132、141、142を空気が通過する面積を変更することができるので、配管131、132、141、142を通過してボイラ101の内部に供給される空気流量を個別に調整できる。
【0179】
制御装置200の制御信号生成部700によって演算された制御信号15を外部出力インターフェイス202を介して火力発電プラント100aに対する操作信号16として出力し、ボイラ101の配管131、132、141、142にそれぞれ設置したエアダンパ160、161、162、163などの制御端の機器を操作する。
【0180】
尚、本実施例では、エアダンパ160、161、162、163などの機器のことを操作端と呼び、これを操作するのに必要な制御装置200で演算した制御信号15が該制御装置200から前記操作端に指令する出力信号を操作信号16と呼ぶ。
【0181】
また、制御信号生成部700によって演算されて前記操作端に出力される操作信号16としては、ボイラ101に配管131、132、141、142を通じて供給される空気流量、ボイラ101に空気を供給する配管131、132、141、142にそれぞれ設置された空気の流量を調節する空気ダンパ160〜163の開度、ボイラ101のバーナ102に供給される微粉炭の燃料流量、及びボイラ101から排出される排ガスの一部をボイラ101に再循環させる排ガス再循環流量等が含まれる。
【0182】
以降では、本実施例の火力発電プラントの制御装置において、制御装置200で制御される火力発電プラント100aに設置された操作端を、ボイラ101に設置したバーナ102に供給する空気量を調節する配管131、132にそれぞれ設置されたエアダンパ160、161、及びボイラ101に設置したアフタエアポート103に供給する空気量を調節する配管141、142にそれぞれ設置されたエアダンパ162、163として、被制御量をボイラ101から排出される排ガス中のCO、NOx、及びH2Sの濃度とする場合について説明する。
【0183】
尚、本実施例の火力発電プラントの制御装置では、ボイラ101の操作端の操作量(エアダンパ160、161、162、163の開度)が制御装置200を構成する統計モデル500のモデル入力に、ボイラ101から排出される排ガスに含まれるNOx、CO及びH2S濃度が統計モデル500のモデル出力になり、モデル入出力夫々の最小化が学習の目的となる。
【0184】
以上説明したように、本発明のプラントの制御装置を火力発電プラントに適用すれば、環境規制や運用コストに対する要求を満たす操作方法を学習することにより、火力発電プラントから排出されるNOx、CO、及びH2S濃度の目標値を達成することができる。
【0185】
本実施例によれば、プラントの計測データを使用してRBFネットワークによる統計モデルをオンラインで調整する機能を備え、かつ計測データの蓄積による計算コストへの影響を抑制し、制御周期以内で統計モデルを調整して、推定精度を向上させる機能を備えた火力発電プラントの制御装置を実現することができる。
【0186】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0187】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル、測定情報、算出情報等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。よって、各処理、各構成は、処理部、処理ユニット、プログラムモジュールなどとして各機能を実現可能である。
【0188】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【0189】
以上説明したように、本実施例によれば、プラントの計測データを使用してRBFネットワークによる統計モデルをオンラインで調整する場合に、制御周期以内での最適化計算の終了を可能にして、統計モデルの推定精度を向上させた火力発電プラントの制御装置を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0190】
本発明は、プラントの制御装置及び火力発電プラントの制御装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0191】
1:計測信号、16:制御信号、90:入出力データ情報、100:プラント、100a:火力発電プラント、101:ボイラ、102:バーナ、103:アフタエアポート、130〜133:配管、140〜142:配管、160〜163:エアダンパ、200:制御装置、201:外部入力インターフェイス、202:外部出力インターフェイス、210:計測信号データベース、220:モデル構築データベース、230:学習情報データベース、240:制御ロジックデータベース、250:制御信号データベース、300:データ前処理部、400:数値解析部、500:統計モデル、600:モデル調整部、700:制御信号生成部、800:操作方法学習部、900:外部入力装置、901:キーボード、902:マウス、910:保守ツール、911:外部入力インターフェイス、912:データ送受信処理部、913:外部出力インターフェイス、920:画像表示装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントから該プラントの状態量である計測信号を取り込み、前記計測信号を用いて前記プラントを制御する操作信号を演算する制御装置を備えたプラントの制御装置において、
前記制御装置は、プラントの状態量である計測信号を取り込んで保存する計測信号データベースと、前記計測信号データベースに保存されたプラントの計測データに対して信頼区間に基づく統計的処理を施すことでモデル構築データを生成するデータ前処理部と、前記データ前処理部で生成した前記モデル構築データを保存するモデル構築データベースと、前記モデル構築データベースに保存されたモデル構築データを用いて前記プラントに制御信号を与えた時に該プラントの状態量である計測信号の値を推定するプラントの制御特性を模擬する統計モデルと、前記統計モデルを用いて前記計測信号に相当するモデル出力が目標値を達成するようにプラントに与える前記制御信号に相当するモデル入力の生成方法を学習する操作方法学習部と、前記操作方法学習部における学習の制約条件及び学習結果に関する学習データを保存する学習情報データベースと、前記計測信号データベースの計測信号、及び前記学習情報データベースの学習データを用いてプラントに対して送信される制御信号を演算する制御信号生成部とをそれぞれ備えて構成し、
更に前記モデル構築データベースに保存されるモデル構築データに含まれる統計モデルの基底半径パラメータを調整するモデル調整部を設けて、前記統計モデルが前記モデル調整部による基底半径パラメータの調整結果を用いて前記モデル出力を生成し、このモデル出力を前記操作方法学習部に出力するように構成したことを特徴とするプラントの制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプラントの制御装置において、
前記データ前処理部は、前記計測信号データベースに保存された計測信号データを用いて、データの信頼区間を考慮した最大・平均・最小の3種類に分類されたモデル構築データのうち少なくとも1つのデータを作成する機能を備えることを特徴とするプラントの制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載のプラントの制御装置において、
前記モデル構築データベースに保存される情報には、各データのモデル入力値と、それに対する最大・平均・最小の3種類のモデル出力値、各データ上に配置されるガウス基底関数の半径パラメータ値、及び該データを用いて構築する前記統計モデルを構成しているRBFネットワークの重みパラメータ値のうち、少なくとも1つの情報が含まれることを特徴とするプラントの制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載のプラントの制御装置において、
前記モデル構築データベースに保存されるモデル構築データを用いて構築される前記統計モデルを構成しているRBFネットワークは、中間層の各ノードに(モデル出力の成分数)×3個のガウス関数基底を備えた構造を有することを特徴とするプラントの制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載のプラントの制御装置において、
前記モデル調整部は、半径パラメータの調整対象となるガウス基底関数を決定する際に、距離近傍なる指標を使用し、該距離近傍の計算においては、プラントより取得する計測データを基準としてグループ化したガウス基底関数に対し、各グループにおいて前記計測データとの距離が最小となる基底関数の距離近傍を1と決定し、その他の基底関数については前記計測データとの距離が小さい順に1ずつ加算するように距離近傍を計算する機能を備えることを特徴とするプラントの制御装置。
【請求項6】
請求項1に記載のプラントの制御装置において、
前記モデル調整部では、前記距離近傍が予め設定した基準値以下となるガウス基底関数に対して、その半径パラメータを調整することを特徴とするプラントの制御装置。
【請求項7】
請求項1に記載のプラントの制御装置において、
前記モデル調整部における半径パラメータの調整では、あるランダムに決定したモデル入力条件における各ガウス基底関数の寄与度を考慮し、該寄与度の計算においては、前記モデル入力条件との距離が最小となるガウス基底関数の寄与度を1と計算し、その他の基底関数については前記モデル入力条件との距離に応じて指数的に減少するように寄与度を計算する機能を備えることを特徴とするプラントの制御装置。
【請求項8】
請求項1に記載のプラントの制御装置において、
前記モデル調整部における半径パラメータの調整では、ランダムに決定したモデル入力条件に対して、各ガウス基底関数値が予め決定された被覆度目標値を前記寄与度により比例配分した値に一致するように半径パラメータの目標値を計算し、該半径パラメータ目標値へ近づけるように半径パラメータを更新する機能を備えることを特徴とするプラントの制御装置。
【請求項9】
請求項1に記載のプラントの制御装置において、
前記操作方法学習部は、前記モデル調整部によって調整された前記モデル構築データを用いて構築した複数の統計モデルの中から任意に選択されたものに対して、最適なモデル入力の生成方法を学習する機能を備えることを特徴とするプラントの制御装置。
【請求項10】
請求項1に記載のプラントの制御装置において、
前記制御装置は画像表示装置と接続され、前記モデル構築データを用いて構築した複数の前記統計モデルに対して、前記操作方法学習部が学習した結果の一覧を画像表示装置に表示する出力部を備えることを特徴とするプラントの制御装置。
【請求項11】
ボイラを備えた火力発電プラントから該プラントの状態量である計測信号を取り込み、前記計測信号を用いて前記プラントを制御する操作信号を演算する制御装置を備えた火力発電プラントの制御装置において、
前記制御装置は、前記プラントの状態量である計測信号を取り込んで保存する計測信号データベースと、前記計測信号データベースに保存されたプラントの計測データに対して信頼区間に基づく統計的処理を施すことでモデル構築データを生成するデータ前処理部と、生成した前記モデル構築データを保存するモデル構築データベースと、前記モデル構築データベースに保存されたモデル構築データを用いて前記プラントに制御信号を与えた時に該プラントの状態量である計測信号の値を推定するプラントの制御特性を模擬する統計モデルと、前記統計モデルを用いて前記計測信号に相当するモデル出力が目標値を達成するようにプラントに与える前記制御信号に相当するモデル入力の生成方法を学習する操作方法学習部と、前記操作方法学習部における学習の制約条件及び学習結果に関する学習データを保存する学習情報データベースと、前記計測信号データベースの計測信号、及び前記学習情報データベースの学習データを用いてプラントに対して送信される制御信号を演算する制御信号生成部とをそれぞれ備えて構成し、
更に前記モデル構築データベースに保存されるモデル構築データに含まれる統計モデルの基底半径パラメータを調整するモデル調整部を設けて、前記統計モデルが前記モデル調整部による基底半径パラメータの調整結果を用いてモデル出力を生成し、このモデル出力を前記操作方法学習部に出力するようにするように構成し、
前記計測信号は、前記火力発電プラントのボイラから排出される排ガスに含まれる窒素酸化物、一酸化炭素、二酸化炭素、窒素、酸素、灰中未燃分及び硫化水素の濃度のうち少なくとも1つを表す状態量の信号を含むようにし、
前記制御信号は、前記火力発電プラントのボイラに供給する空気流量、この空気流量を調節する空気ダンパの開度、ボイラに供給される燃料流量、ボイラから排出された排ガスを該ボイラに再循環させる排ガス再循環流量のうち少なくとも1つを表す信号を含むようにしたことを特徴とする火力発電プラントの制御装置。
【請求項12】
請求項11に記載の火力発電プラントの制御装置において、
前記データ前処理部は、前記計測信号データベースに保存された計測信号データを用いて、データの信頼区間を考慮した最大・平均・最小の3種類に分類されたモデル構築データのうち少なくとも1つのデータを作成する機能を備えることを特徴とする火力発電プラントの制御装置。
【請求項13】
請求項11に記載の火力発電プラントの制御装置において、
前記モデル構築データベースに保存される情報には、各データのモデル入力値と、それに対する最大・平均・最小の3種類のモデル出力値、各データ上に配置されるガウス基底関数の半径パラメータ値、及び該データを用いて構築する前記統計モデルを構成しているRBFネットワークの重みパラメータ値のうち、少なくとも1つの情報が含まれることを特徴とする火力発電プラントの制御装置。
【請求項14】
請求項11に記載の火力発電プラントの制御装置において、
前記モデル構築データベースに保存されるモデル構築データを用いて構築される前記統計モデルを構成している統計モデルのRBFネットワークは、中間層の各ノードに(モデル出力の成分数)×3個のガウス関数基底を備えた構造を有することを特徴とする火力発電プラントの制御装置。
【請求項15】
請求項11に記載のプ火力発電プラントの制御装置において、
前記モデル調整部は、半径パラメータの調整対象となるガウス基底関数を決定する際に、距離近傍なる指標を使用し、該距離近傍の計算においては、プラントより取得する計測データを基準としてグループ化したガウス基底関数に対し、各グループにおいて前記計測データとの距離が最小となる基底関数の距離近傍を1と決定し、その他の基底関数については前記計測データとの距離が小さい順に1ずつ加算するように距離近傍を計算する機能を備えることを特徴とする火力発電プラントの制御装置。
【請求項16】
請求項11に記載の火力発電プラントの制御装置において、
前記モデル調整部では、前記距離近傍が予め設定した基準値以下となるガウス基底関数に対して、その半径パラメータを調整することを特徴とする火力発電プラントの制御装置。
【請求項17】
請求項11に記載の火力発電プラントの制御装置において、
前記モデル調整部における半径パラメータの調整では、あるランダムに決定したモデル入力条件における各ガウス基底関数の寄与度を考慮し、該寄与度の計算においては、前記モデル入力条件との距離が最小となるガウス基底関数の寄与度を1と計算し、その他の基底関数については前記モデル入力条件との距離に応じて指数的に減少するように寄与度を計算する機能を備えることを特徴とする火力発電プラントの制御装置。
【請求項18】
請求項11に記載の火力発電プラントの制御装置において、
前記モデル調整部における半径パラメータの調整では、ランダムに決定したモデル入力条件に対して、各ガウス基底関数値が予め決定された被覆度目標値を前記寄与度により比例配分した値に一致するように半径パラメータの目標値を計算し、該半径パラメータ目標値へ近づけるように半径パラメータを更新する機能を備えることを特徴とする火力発電プラントの制御装置。
【請求項19】
請求項11に記載の火力発電プラントの制御装置において、
前記操作方法学習部は、前記モデル調整部によって調整された前記モデル構築データを用いて構築した複数の統計モデルの中から任意に選択されたものに対して、最適なモデル入力の生成方法を学習する機能を備えることを特徴とする火力発電プラントの制御装置。
【請求項20】
請求項11に記載の火力発電プラントの制御装置において、
前記制御装置は画像表示装置と接続され、前記モデル構築データを用いて構築した複数の前記統計モデルに対して、前記操作方法学習部が学習した結果の一覧を画像表示装置に表示する出力部を備えることを特徴とする火力発電プラントの制御装置。
【請求項1】
プラントから該プラントの状態量である計測信号を取り込み、前記計測信号を用いて前記プラントを制御する操作信号を演算する制御装置を備えたプラントの制御装置において、
前記制御装置は、プラントの状態量である計測信号を取り込んで保存する計測信号データベースと、前記計測信号データベースに保存されたプラントの計測データに対して信頼区間に基づく統計的処理を施すことでモデル構築データを生成するデータ前処理部と、前記データ前処理部で生成した前記モデル構築データを保存するモデル構築データベースと、前記モデル構築データベースに保存されたモデル構築データを用いて前記プラントに制御信号を与えた時に該プラントの状態量である計測信号の値を推定するプラントの制御特性を模擬する統計モデルと、前記統計モデルを用いて前記計測信号に相当するモデル出力が目標値を達成するようにプラントに与える前記制御信号に相当するモデル入力の生成方法を学習する操作方法学習部と、前記操作方法学習部における学習の制約条件及び学習結果に関する学習データを保存する学習情報データベースと、前記計測信号データベースの計測信号、及び前記学習情報データベースの学習データを用いてプラントに対して送信される制御信号を演算する制御信号生成部とをそれぞれ備えて構成し、
更に前記モデル構築データベースに保存されるモデル構築データに含まれる統計モデルの基底半径パラメータを調整するモデル調整部を設けて、前記統計モデルが前記モデル調整部による基底半径パラメータの調整結果を用いて前記モデル出力を生成し、このモデル出力を前記操作方法学習部に出力するように構成したことを特徴とするプラントの制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプラントの制御装置において、
前記データ前処理部は、前記計測信号データベースに保存された計測信号データを用いて、データの信頼区間を考慮した最大・平均・最小の3種類に分類されたモデル構築データのうち少なくとも1つのデータを作成する機能を備えることを特徴とするプラントの制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載のプラントの制御装置において、
前記モデル構築データベースに保存される情報には、各データのモデル入力値と、それに対する最大・平均・最小の3種類のモデル出力値、各データ上に配置されるガウス基底関数の半径パラメータ値、及び該データを用いて構築する前記統計モデルを構成しているRBFネットワークの重みパラメータ値のうち、少なくとも1つの情報が含まれることを特徴とするプラントの制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載のプラントの制御装置において、
前記モデル構築データベースに保存されるモデル構築データを用いて構築される前記統計モデルを構成しているRBFネットワークは、中間層の各ノードに(モデル出力の成分数)×3個のガウス関数基底を備えた構造を有することを特徴とするプラントの制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載のプラントの制御装置において、
前記モデル調整部は、半径パラメータの調整対象となるガウス基底関数を決定する際に、距離近傍なる指標を使用し、該距離近傍の計算においては、プラントより取得する計測データを基準としてグループ化したガウス基底関数に対し、各グループにおいて前記計測データとの距離が最小となる基底関数の距離近傍を1と決定し、その他の基底関数については前記計測データとの距離が小さい順に1ずつ加算するように距離近傍を計算する機能を備えることを特徴とするプラントの制御装置。
【請求項6】
請求項1に記載のプラントの制御装置において、
前記モデル調整部では、前記距離近傍が予め設定した基準値以下となるガウス基底関数に対して、その半径パラメータを調整することを特徴とするプラントの制御装置。
【請求項7】
請求項1に記載のプラントの制御装置において、
前記モデル調整部における半径パラメータの調整では、あるランダムに決定したモデル入力条件における各ガウス基底関数の寄与度を考慮し、該寄与度の計算においては、前記モデル入力条件との距離が最小となるガウス基底関数の寄与度を1と計算し、その他の基底関数については前記モデル入力条件との距離に応じて指数的に減少するように寄与度を計算する機能を備えることを特徴とするプラントの制御装置。
【請求項8】
請求項1に記載のプラントの制御装置において、
前記モデル調整部における半径パラメータの調整では、ランダムに決定したモデル入力条件に対して、各ガウス基底関数値が予め決定された被覆度目標値を前記寄与度により比例配分した値に一致するように半径パラメータの目標値を計算し、該半径パラメータ目標値へ近づけるように半径パラメータを更新する機能を備えることを特徴とするプラントの制御装置。
【請求項9】
請求項1に記載のプラントの制御装置において、
前記操作方法学習部は、前記モデル調整部によって調整された前記モデル構築データを用いて構築した複数の統計モデルの中から任意に選択されたものに対して、最適なモデル入力の生成方法を学習する機能を備えることを特徴とするプラントの制御装置。
【請求項10】
請求項1に記載のプラントの制御装置において、
前記制御装置は画像表示装置と接続され、前記モデル構築データを用いて構築した複数の前記統計モデルに対して、前記操作方法学習部が学習した結果の一覧を画像表示装置に表示する出力部を備えることを特徴とするプラントの制御装置。
【請求項11】
ボイラを備えた火力発電プラントから該プラントの状態量である計測信号を取り込み、前記計測信号を用いて前記プラントを制御する操作信号を演算する制御装置を備えた火力発電プラントの制御装置において、
前記制御装置は、前記プラントの状態量である計測信号を取り込んで保存する計測信号データベースと、前記計測信号データベースに保存されたプラントの計測データに対して信頼区間に基づく統計的処理を施すことでモデル構築データを生成するデータ前処理部と、生成した前記モデル構築データを保存するモデル構築データベースと、前記モデル構築データベースに保存されたモデル構築データを用いて前記プラントに制御信号を与えた時に該プラントの状態量である計測信号の値を推定するプラントの制御特性を模擬する統計モデルと、前記統計モデルを用いて前記計測信号に相当するモデル出力が目標値を達成するようにプラントに与える前記制御信号に相当するモデル入力の生成方法を学習する操作方法学習部と、前記操作方法学習部における学習の制約条件及び学習結果に関する学習データを保存する学習情報データベースと、前記計測信号データベースの計測信号、及び前記学習情報データベースの学習データを用いてプラントに対して送信される制御信号を演算する制御信号生成部とをそれぞれ備えて構成し、
更に前記モデル構築データベースに保存されるモデル構築データに含まれる統計モデルの基底半径パラメータを調整するモデル調整部を設けて、前記統計モデルが前記モデル調整部による基底半径パラメータの調整結果を用いてモデル出力を生成し、このモデル出力を前記操作方法学習部に出力するようにするように構成し、
前記計測信号は、前記火力発電プラントのボイラから排出される排ガスに含まれる窒素酸化物、一酸化炭素、二酸化炭素、窒素、酸素、灰中未燃分及び硫化水素の濃度のうち少なくとも1つを表す状態量の信号を含むようにし、
前記制御信号は、前記火力発電プラントのボイラに供給する空気流量、この空気流量を調節する空気ダンパの開度、ボイラに供給される燃料流量、ボイラから排出された排ガスを該ボイラに再循環させる排ガス再循環流量のうち少なくとも1つを表す信号を含むようにしたことを特徴とする火力発電プラントの制御装置。
【請求項12】
請求項11に記載の火力発電プラントの制御装置において、
前記データ前処理部は、前記計測信号データベースに保存された計測信号データを用いて、データの信頼区間を考慮した最大・平均・最小の3種類に分類されたモデル構築データのうち少なくとも1つのデータを作成する機能を備えることを特徴とする火力発電プラントの制御装置。
【請求項13】
請求項11に記載の火力発電プラントの制御装置において、
前記モデル構築データベースに保存される情報には、各データのモデル入力値と、それに対する最大・平均・最小の3種類のモデル出力値、各データ上に配置されるガウス基底関数の半径パラメータ値、及び該データを用いて構築する前記統計モデルを構成しているRBFネットワークの重みパラメータ値のうち、少なくとも1つの情報が含まれることを特徴とする火力発電プラントの制御装置。
【請求項14】
請求項11に記載の火力発電プラントの制御装置において、
前記モデル構築データベースに保存されるモデル構築データを用いて構築される前記統計モデルを構成している統計モデルのRBFネットワークは、中間層の各ノードに(モデル出力の成分数)×3個のガウス関数基底を備えた構造を有することを特徴とする火力発電プラントの制御装置。
【請求項15】
請求項11に記載のプ火力発電プラントの制御装置において、
前記モデル調整部は、半径パラメータの調整対象となるガウス基底関数を決定する際に、距離近傍なる指標を使用し、該距離近傍の計算においては、プラントより取得する計測データを基準としてグループ化したガウス基底関数に対し、各グループにおいて前記計測データとの距離が最小となる基底関数の距離近傍を1と決定し、その他の基底関数については前記計測データとの距離が小さい順に1ずつ加算するように距離近傍を計算する機能を備えることを特徴とする火力発電プラントの制御装置。
【請求項16】
請求項11に記載の火力発電プラントの制御装置において、
前記モデル調整部では、前記距離近傍が予め設定した基準値以下となるガウス基底関数に対して、その半径パラメータを調整することを特徴とする火力発電プラントの制御装置。
【請求項17】
請求項11に記載の火力発電プラントの制御装置において、
前記モデル調整部における半径パラメータの調整では、あるランダムに決定したモデル入力条件における各ガウス基底関数の寄与度を考慮し、該寄与度の計算においては、前記モデル入力条件との距離が最小となるガウス基底関数の寄与度を1と計算し、その他の基底関数については前記モデル入力条件との距離に応じて指数的に減少するように寄与度を計算する機能を備えることを特徴とする火力発電プラントの制御装置。
【請求項18】
請求項11に記載の火力発電プラントの制御装置において、
前記モデル調整部における半径パラメータの調整では、ランダムに決定したモデル入力条件に対して、各ガウス基底関数値が予め決定された被覆度目標値を前記寄与度により比例配分した値に一致するように半径パラメータの目標値を計算し、該半径パラメータ目標値へ近づけるように半径パラメータを更新する機能を備えることを特徴とする火力発電プラントの制御装置。
【請求項19】
請求項11に記載の火力発電プラントの制御装置において、
前記操作方法学習部は、前記モデル調整部によって調整された前記モデル構築データを用いて構築した複数の統計モデルの中から任意に選択されたものに対して、最適なモデル入力の生成方法を学習する機能を備えることを特徴とする火力発電プラントの制御装置。
【請求項20】
請求項11に記載の火力発電プラントの制御装置において、
前記制御装置は画像表示装置と接続され、前記モデル構築データを用いて構築した複数の前記統計モデルに対して、前記操作方法学習部が学習した結果の一覧を画像表示装置に表示する出力部を備えることを特徴とする火力発電プラントの制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−141862(P2012−141862A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−301(P2011−301)
【出願日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]