説明

プラント制御システムの模擬装置及び模擬画面の作成方法

【課題】サイトで稼動している操作机・操作箱等の操作装置の模擬を含めたシミュレーション環境の構築のための工数を軽減し、作業効率を大幅に改善できるようにする。また、現地の操作装置をそのまま再現した試験用の操作画面を容易に作成できるようにする。
【解決手段】操作机或いは操作箱等の操作装置を撮影し、撮影により得られた操作装置の画像から操作画面の背景として用いる画像を取り込むとともに、操作装置の画像から操作装置が備える操作用品の画像を抽出する。そして、抽出した操作用品画像について、予め登録されている操作用品の画像情報に基づくパターン認識を行うことにより、対象操作用品の種別及びタイプを特定し、予め登録されている操作画面用の操作用品部品の中から、特定した操作用品の種別及びタイプに対応した操作用品部品を選択する。そして、選択した操作用品部品を背景画像に重ねて貼り付けることによって操作画面を作成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラント制御システムの模擬装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
既存のプラント制御システムの改造・更新時には、新たなシステムの納入に先立って工場側にて試験が行われる。その場合には、現地で稼動中のシステムを模擬したシミュレーション環境が必要とされる。また、10年以上の長期間使い続けられる制御システムの場合、メンテナンス用員の育成が重要な課題となる。しかし、操業で使用している実際の操作机・操作箱等の操作装置を使った操作訓練は難しい。このため、メンテナンス用員の操作訓練のためには、現地の制御システムを模擬した訓練用の模擬システムが使用されている。そのような訓練用の模擬システムの例は、特開平6−59843号公報に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−59843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような模擬システムの構築時には、現地サイトで稼動中の操作装置ごとに、対応する操作画面(HMI画面)が作成されている。ところが、多いシステムでは1つのサイトで100台以上もの操作装置が稼動しているケースがある。このため、操作装置ごとの操作画面を新規に作成するだけでも多大な工数や費用が掛かる場合があった。
【0005】
また、現地で稼動中の操作装置と同じ形状・配置・機能の画面を模擬システムにおいて再現することは工数や費用の点において容易ではない。このため、画面のイメージは異なっても機能的には類似した操作用品部品を必要数分だけを並べた模擬画面を作成することによって、既存システムと機能的に等価の模擬システムを構築することが行われていた。しかし、模擬システムを用いた試験や訓練の効率を考えると、模擬システムの操作画面は現地で稼動中の操作装置にできるだけ似せたものであることが望ましい。
【0006】
本発明は、上述のような課題に鑑みなされたもので、既存のプラント制御システムの改造・更新時における工場での試験作業やメンテナンス用員の操作訓練等のためのシミュレーション環境を安価に且つ容易に構築可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明が提供するプラント制御システムの模擬画面の作成方法では、操作机或いは操作箱等の操作装置を撮影して得られた画像から操作画面の背景として用いる画像を取り込むとともに、操作装置の画像から操作装置が備える操作用品の画像を抽出する。そして、抽出した操作用品画像について、予め登録されている操作用品の画像情報に基づくパターン認識を行うことにより、対象操作用品の種別及びタイプを特定し、予め登録されている操作画面用の操作用品部品の中から、特定した操作用品の種別及びタイプに対応した操作用品部品を選択する。そして、選択した操作用品部品を背景画像に重ねて貼り付けることによって操作画面を作成する。以上の一連の処理は装置、すなわち、本発明が提供するプラント制御システムの模擬装置によって実行することができる。
【0008】
本発明が提供するプラント制御システムの模擬装置は、操作用品部品を新規に作成して登録する機能を付加することもできる。操作用品部品の登録方法としては、次のような方法を採ることができる。第1の登録方法では、操作装置を撮影して得られた画像から表示器の画像を抽出し、抽出した表示器画像を加工してランプ点灯時及び消灯時の各画像を生成する。そして、生成したランプ点灯時の表示器画像とランプ消灯時の表示器画像とを一組にして表示器部品として登録する。第2の登録方法では、操作装置を撮影して得られた画像から切り替えスイッチのハンドルの画像を抽出し、抽出したハンドル画像を加工して全てのノッチの傾きパターンに合わせてハンドル画像を生成する。そして、ノッチごとに作成した全てのハンドル画像を一組にして切り替えスイッチ部品として登録する。第3の登録方法では、操業中の操作装置を一定時間撮影して得られた動画から表示器のランプ点灯時及び消灯時の各画像を抽出し、抽出したランプ点灯時の表示器画像とランプ消灯時の表示器画像とを一組にして表示器部品として登録する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、サイトで稼動している操作机・操作箱等の操作装置の模擬を含めたシミュレーション環境の構築のための工数を軽減し、作業効率を大幅に改善することができる。また、現地の操作装置をそのまま再現した試験用の操作画面を容易に作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態の模擬装置が適用されるプラント制御システムの構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態の試験システムの構築方法を示したフローチャートである。
【図3】既設のプラント制御システムの操作箱の画像の取得方法を説明するための図である。
【図4】操作画面の背景画像に合わせて予め準備された操作用品部品を貼り付ける操作を説明するための図である。
【図5】操作用品部品へI/F信号一覧から信号名を選択してドラッグ&ドロップ等のマウス操作にて紐付ける作業を説明するための図である。
【図6】本発明の実施の形態のプラント制御システムの模擬装置における操作画面の生成方法を示したフローチャートである。
【図7】操作箱の画像に操作用品ごとに切り分けするための枠を付けた状態を表わした図である。
【図8】図7の枠の付け方を説明するための図である。
【図9】操作用品の種別を選択するためのパターン認識について説明するための図である。
【図10】本発明の実施の形態のプラント制御システムの模擬装置における操作箱画像からの操作用品部品の生成方法を示したフローチャートである。
【図11】ランプ表示器の消灯用画像の例である。
【図12】ランプ表示器の点灯用画像の例である。
【図13】切り替えスイッチの画像例である。
【図14】切り替えスイッチのノッチの傾きに合わせたハンドル画像を生成する順序を示した図である。
【図15】本発明の実施の形態のプラント制御システムの模擬装置における操作箱の動画からの表示器部品の生成方法を示したフローチャートである。
【図16】取得した動画から表示器部品の表示パターン情報を抽出するまでの方法を説明するための図である。
【図17】動画からサンプリングする静止画像の差分抽出を行う際に用いる表示器以外の画像サンプルの取得位置の例を表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。
【0012】
図1には、稼働中のプラント制御システムと、このシステムの更新・改造時に用いられる試験システムがそれぞれ例示されている。図1に例示される稼働中のプラント制御システム10は、操作箱1、PLC(コントローラ)2、操作箱1の操作用品とインターフェースするI/O4、そのI/O4に繋がるリモートI/O3、及び、PLC2とリモートI/O3とを繋ぐ制御用LAN8から構成されている。一方、図1に例示される試験用システム11は、PLC2、PLC2に繋がる制御用LAN8、制御用LAN8に繋がるシミュレーションサーバPC5、複数のシミュレーションクライアントPC6(6a,6b,6c)、及び、シミュレーションサーバPC5とシミュレーションクライアントPC6とを繋ぐ試験用LAN9から構成される。本実施の形態では、各シミュレーションクライアントPC6がプラント制御システムの模擬装置として機能する。また、各シミュレーションクライアントPC6に表示される操作画面12が本実施の形態において作成されるプラント制御システムの模擬画面である。
【0013】
図2は、試験用システム11の構築方法を示したフローチャートである。このフローチャートによれば、まず初めに、現地の既設の操作机・操作箱等の操作装置が撮影され、試験用システム11に用いる操作装置の画像が取得される(ステップS1)。図3には、現地の既設の操作箱1をカメラ7で写真撮影する様子が図示されている。
【0014】
次に、ステップS1で取得した操作装置の画像が操作画面12の背景として取り込まれる(ステップS2)。続くステップS3では、ステップS2で取り込まれた背景画像に合わせてHMI用の操作用品部品が操作用品ごとに貼り付けられる。例えば、操作用品がランプ表示器の場合には、図4に示すように、色換え表示を行うための表示器用部品13が各ランプ表示器の位置に配置される。背景画像に操作用品部品が貼り付けたものがシミュレーションクライアントPC6の操作画面12となる。以上のステップS2及びステップS3の処理は、オペレータのマニュアル操作によって実施することは可能である。しかし、本実施の形態では、模擬装置がそのメモリに記憶しているプログラムを起動することによって模擬装置内にて自動で行われる。なお、操作画面の作成方法は本発明の要旨に係わることであるので、これに関しては追って詳細に説明する。同様の理由により、操作画面に配置する操作用品部品の作成方法についても追って詳細に説明する。
【0015】
ステップS4では、操作用品ごとに貼り付けられた操作用品部品に対して、制御用LAN8上のPLC2との間のインターフェース信号の紐付けが行われる。この紐付けのための操作はマニュアルで行うことができる。例えば、図5に示すように、インターフェース信号リストから変数名をドラッグ&ドロップする等の操作によって行うことができる。次のステップS5では、制御用LAN8上の信号登録情報を元にして、試験用LAN9の側においてもシミュレーションサーバPC5とシミュレーションクライアントPC6との間のインターフェース信号の登録が行われる。
【0016】
ステップS6では、作成した操作画面をシミュレーションクライアントPC6上で操作可能な操作画面として登録することが行われる。次のステップS7では、登録された試験用LAN9上の信号を制御用LAN8へインターフェースするためのGW設定がシミュレーションサーバPC5に対して行われる。そして、最後のステップS8において、制御用LAN8のPLC2と操作箱間の信号を、試験用LAN9を経由したシミュレーションクライアントPC6上の模擬画面とのインターフェースに置き換えるシミュレーション設定が行なわれる。
【0017】
以上の方法によれば、既設制御システム10の制御用LAN8に繋がる操作装置の操作用品を試験システム11の試験用LAN9上のシミュレーションクライアントPC6の操作画面上に再現することができる。そして、これにより、既設制御システム10の操作装置とPLC間のインターフェースをシミュレーション環境の試験システム11の側に構築することが可能となる。
【0018】
次に試験システム11での操作信号の流れについて、既設制御システム10の実際の信号の流れと対比して説明する。
【0019】
まず、既設制御システム10の操作装置からPLC2への入力信号の流れについて、操作装置上の押しボタン操作を例に説明する。操作装置の押しボタンを操作した場合のPLC2への入力信号は、押しボタンと接続されるI/O4の入力モジュールから取り込まれる。そして、リモートI/O3を経由して制御用LAN8に出力され、制御用LAN8に繋がるPLC2へ届く。試験システム11でも同様に、既設の操作装置を模擬して作成された操作画面12からの入力操作信号がシミュレーションクライアントPC6(例えば6a)により試験用LAN9に出力される。そして、同じ試験用LAN9に繋がるシミュレーションサーバPC5が他のシミュレーションクライアントPC6(6bまたは6c)が出力する分とまとめて制御用LAN8へ出力する。制御用LAN8に繋がるPLC2がこれを受けて、操作画面12からの入力信号に対して実際の既設操作装置からの信号に対するのと同じ入力処理を行なう。
【0020】
次に、操作装置へのPLC2の出力信号の流れについて、操作装置上のランプ表示器を点灯させるケースを例に説明する。PLC2が出力するランプ表示用の信号は、制御用LAN8を経由してリモートI/O3に届く。そして、リモートI/O3に繋がるI/O4の出力モジュールから操作装置のランプ表示器を点灯させる出力電流が流れ、ランプ表示器が点灯する。試験システム11の場合は、PLC2が制御用LAN8上に出力した信号を制御用LAN8に繋がるシミュレーションサーバPC5が拾う(ただし、この場合の伝送方式は、PLC2の出力がシミュレーションサーバPC5の側でも拾えるような方式になっている必要がある)。シミュレーションサーバPC5はPLC2に出力した信号を試験用LAN9に繋がるシミュレーションクライアントPC6へ送信する。シミュレーションサーバPC5からの信号を受信したシミュレーションクライアントPC6は、操作画面12上のランプ表示を点灯状態に更新する。
【0021】
以上のような信号処理により、既設制御システム10の実際の操作装置を模擬した操作画面12による試験システム11の運用が可能となる。
【0022】
次に、既設制御システム10の実際の操作装置の画像情報を基にして試験システム11の操作画面12を作成する方法について、図6のフローチャートと図7、図8及び図9の補足説明図とを用いて詳細に説明する。図6のフローチャートの最初のステップS301では、現地の操作装置を撮影して得られた画像が取得される。次のステップS302では、取得した操作装置の画像が操作画面12の背景画像として登録される。さらに、ステップS303では、ステップS302で登録された背景画像上に、全ての操作用品の画像情報を操作用品ごとに抽出するための枠が貼り付けられる。図7に示す例では、操作箱の画像上において表示器や切り替えスイッチ等の操作用品ごとに枠が設定されている。操作用品ごとに枠を設定するための処理は、パターン認識プログラムによって自動で行われる。ただし、オペレータがマニュアルで枠の設定を行うこともできる。その場合のオペレータの操作は、例えば図8に示すように、操作用品を囲む四角形の対角線上の2点をポインタで指定してマウスをクリックする等、簡単なマウス操作で足りる。
【0023】
次に、ステップS304では、ステップS303で操作用品ごとに設定された枠線内から操作用品の画像が抽出される。そして、予め登録されている操作用品の画像情報に基づくパターン認識が行われて、対象操作用品画像に対応した操作用品の種別及びタイプが特定される。具体的には、図9に示すように、操作用品の画像はデータベース化されて模擬装置に記憶されている。模擬装置は、対象操作用品画像をデータベースの登録画像に照合し、該当する登録画像が存在した場合には、その登録画像に紐付けされている操作用品の種別及びタイプを確認する。
【0024】
ステップS305では、予め登録されている操作画面用の操作用品部品の中から、特定した操作用品の種別及びタイプに対応した操作用品部品が選択される。そして、ステップS306では、ステップS305で選択した操作用品部品のサイズと座標が操作用品画像のサイズと座標に合わせられ、背景画像に重ねて操作用品部品が貼り付けられる。
【0025】
以上により、既設制御システム10の実際の操作装置を模擬した操作画面12の作成が完了する。
【0026】
次に、既設制御システム10の実際の操作装置の画像情報を基にして操作用品部品を作成する方法について、図10のフローチャートと図11、図12及び図13の補足説明図とを用いて詳細に説明する。ここでは、現地の既設制御システム10に設置されている操作箱の画像から操作用品部品を作成する場合を例にとる。なお、本方法に係る処理は、模擬装置がそのメモリに記憶しているプログラムを起動することによって模擬装置内にて自動で行われる。
【0027】
図10のフローチャートの最初のステップS101では、現地の操作箱の写真が撮られ、模擬用操作画面の背景にも使用する画像が取得される。ステップS102では、ステップS101で撮影した画像が操作画面の背景として取り込まれる。さらにステップS103では、操作用品ごとに画像を切り出すために、背景画像上の操作用品位置の座標設定が行われ、同時に操作用品ごとの種別設定と状態設定とが行われる。操作用品の種別設定とは、表示器や切り替えスイッチ等の種類分けを行なう事である。状態設定とは、例えば表示器の場合には、取り込んだ画像の状態で表示器が点灯か消灯かを設定することを意味する。切り替えスイッチの場合は、ノッチ数とノッチの位置を設定することを意味する。
【0028】
まず、操作用品がランプ表示器の場合を例に操作用品部品の作成方法について説明する。ステップS104では、ステップS103で設定した座標の画像の明るさとの違いから表示器の外枠が判別される。そして、その枠内の画像が表示器の点滅範囲の画像として抽出される。なお、ステップS103で設定した表示器の状態設定が点灯の場合は、設定範囲の明るさを超える明るい範囲を含んだエリアも点滅範囲イメージとして抽出される。
【0029】
ステップS103で設定した状態設定が点灯の場合は、次のステップS105にて、ステップS104で抽出した画像が点灯用画像として登録される。そして、ステップS106では、ステップS104で抽出した明るい画像が予め設定した消灯時の暗い画像に加工され、消灯用画像として登録される。一方、ステップS103で設定した状態設定が消灯の場合は、ステップS115にて、ステップS104で抽出した画像が消灯用画像として登録される。そして、ステップS116では、ステップS104で抽出した暗い画像が予め設定した消灯時の明るい画像に加工され、点灯用画像として登録される。図11は、登録されたランプ表示器の消灯用画像の例であり、図12は、登録されたランプ表示器の点灯用画像の例である。
【0030】
次に、操作用品が切り替えスイッチの場合を例に操作用品部品の作成方法について説明する。ステップS124では、表示器の場合と同様、ステップS103で設定した座標の画像の明るさとの違いから切り替えスイッチの外枠が判別される。図13は、判別された切り替えスイッチの画像例である。ステップS125では、ステップS124で得られた切り替えスイッチの画像が、一つのノッチ位置に対応する切り替えスイッチ画像として登録される。
【0031】
次のステップS126では、図14の(1)に示す切り替えスイッチの画像内において、明るさと色合いが一定範囲内のエリアが特定され、図14の(2)に示すようにハンドル部分の画像として抽出される。そして、ステップS103で設定した状態設定に基づいてハンドルの角度が設定される。例えばノッチ数が3つでノッチ位置が左から1つ目の場合は、図14の(3)に示すように、床面に対して鉛直方向の天井側の角度を零度として左に45度傾けた角度にハンドルが傾けられる。これにより、図14の(4)に示すようなハンドル角度が45度の切り替えスイッチの画像が作成される。作成された新たな切り替えスイッチ画像は、別のノッチ位置に対応する切り替えスイッチ画像として登録される。このようにして全てのノッチ位置に対応する切り替えスイッチ画像が作成され登録されることで、切り替えスイッチ用の操作用品部品の登録が完了する。
【0032】
以上の方法によれば、現地の操作装置の画像情報を取得するだけで、その操作装置に含まれる操作用品に対応する操作画面用の部品を作成することができる。このようにして作成された操作用品部品をデータベースに登録しておくことで、既設の操作装置のイメージに近い模擬用操作画面を効率良く作成することが可能となる。
【0033】
次に、操業中の既設制御システム10の操作装置を撮影して取得する動画から操作用品部品を作成する方法について、図15のフローチャートと図16及び図17の補足説明図とを用いて詳細に説明する。ここでは、現地の既設制御システム10に設置されている操作箱の動画から表示器部品を作成する場合を例にとる。なお、本方法に係る処理は、模擬装置がそのメモリに記憶しているプログラムを起動することによって模擬装置内にて自動で行われる。
【0034】
図15のフローチャートの最初のステップS401では、図16の(1)に示すように、操業中の既設制御システム10の操作箱を一定時間動画撮影して得られた動画情報が取得される。そして、ステップS402では、撮影した動画情報の中からある時間の静止画像が抽出して表示される。次のステップS403では、表示された静止画上の全ての表示器を抽出するために、図17に示すように、表示器ごとにその画像を囲む枠が設定されるとともに、表示器以外の位置にサンプルデータ抽出用の枠(図中の405A,405B,405C,405D)が設定される。ステップS404では、ステップS403で設定された各枠内の表示器画像が抽出され、予め登録されている表示器の画像情報との間でパターン認識が行われる。そのパターン認識の結果、対象表示器の用品タイプが特定される。
【0035】
次のステップS405では、図16の(2)に示すように、ステップS403で設定した枠内の表示器画像が全ての動画データから一定のサンプリング時間で抽出される。これにより各表示器の静止画データが得られる。ステップS406では、図16の(3)に示すように、ステップS405で抽出した静止画データ同士が時系列で比較され、パターン認識によって異なる画像が抽出される。このとき、図17に示すサンプルデータ抽出用の枠内の画像のパターンは全て一致していることを条件とすることで、表示器の点灯状態以外の外部要因によるノイズ的な画像パターンの不一致が発生することを防ぐことができる。
【0036】
次のステップS407では、ステップS404で特定された用品タイプに合わせて、図16の(4)に示すように、ステップS406で抽出された異なる表示パターンの画像と表示器の状態とが登録される。ランプ表示器の場合には、ランプの点灯、消灯状態が予め設定される一定の明るさの閾値から判定され、ON/OFF状態を区別して登録される。
【0037】
最後のステップS408では、ステップS406の判定処理で抽出・登録されなかったために、ある表示器部品において全ての表示パターンの登録できなかった場合の処理が行われる。この場合、ステップS406で抽出・登録された表示パターン情報の中から類似した表示パターンや表示器部品が指定される。そして、類似の表示パターンからコピーして不足する表示器部品の表示パターンの補完設定が行なわれる。
【0038】
以上の方法により、実際の表示器とほぼ同じイメージの表示器部分を作成することが可能となる。
【0039】
以上が本発明の実施の形態である。ただし、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、上述の実施の形態では、本発明のプラント制御システムの模擬画面の作成方法に係る処理をシミュレーションクライアントPC(模擬装置)によって実行しているが、一部の処理或いは全部の処理をオペレータによる手作業で行うこともできる。
【0040】
1 操作箱
2 PLC
3 リモートI/O
4 I/O
5 シミュレーションサーバPC
6(6a,6b,6c) シミュレーションクライアントPC
7 カメラ
8 制御用LAN
9 試験用LAN
10 稼動中の制御システム
11 試験用システム
12 操作画面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作机或いは操作箱等の操作装置を撮影して得られた画像から操作画面の背景として用いる画像を取り込む背景画像取込手段と、
前記操作装置の画像から前記操作装置が備える操作用品の画像を抽出する操作用品画像抽出手段と、
抽出した操作用品画像について、予め登録されている操作用品の画像情報に基づくパターン認識を行うことにより、対象操作用品の種別及びタイプを特定する操作用品種別特定手段と、
予め登録されている操作画面用の操作用品部品の中から、特定した操作用品の種別及びタイプに対応した操作用品部品を選択する操作用品部品選択手段と、
選択した操作用品部品を前記背景画像に重ねて貼り付けることによって操作画面を作成する操作画面作成手段と、
を備えることを特徴とするプラント制御システムの模擬装置。
【請求項2】
操作用品部品を新規に作成して登録する操作用品部品登録手段をさらに備え、
前記操作用品部品登録手段は、
操作装置を撮影して得られた画像から表示器の画像を抽出し、抽出した表示器画像を加工してランプ点灯時及び消灯時の各画像を生成する手段と、
生成したランプ点灯時の表示器画像とランプ消灯時の表示器画像とを一組にして表示器部品として登録する手段と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載のプラント制御システムの模擬装置。
【請求項3】
前記操作用品部品登録手段は、
操作装置を撮影して得られた画像から切り替えスイッチのハンドルの画像を抽出し、抽出したハンドル画像を加工して全てのノッチの傾きパターンに合わせてハンドル画像を生成する手段と、
ノッチごとに作成した全てのハンドル画像を一組にして切り替えスイッチ部品として登録する切り替えスイッチ部品登録手段と、
をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載のプラント制御システムの模擬装置。
【請求項4】
前記操作用品部品登録手段は、
操業中の操作装置を一定時間撮影して得られた動画から表示器のランプ点灯時及び消灯時の各画像を抽出する手段と、
抽出したランプ点灯時の表示器画像とランプ消灯時の表示器画像とを一組にして表示器部品として登録する手段と、
をさらに含むことを特徴とする請求項2又は3に記載のプラント制御システムの模擬装置。
【請求項5】
操作机或いは操作箱等の操作装置を撮影するステップと、
撮影により得られた前記操作装置の画像から操作画面の背景として用いる画像を取り込むステップと、
前記操作装置の画像から前記操作装置が備える操作用品の画像を抽出するステップと、
抽出した操作用品画像について、予め登録されている操作用品の画像情報に基づくパターン認識を行うことにより、対象操作用品の種別及びタイプを特定するステップと、
予め登録されている操作画面用の操作用品部品の中から、特定した操作用品の種別及びタイプに対応した操作用品部品を選択するステップと、
選択した操作用品部品を前記背景画像に重ねて貼り付けることによって操作画面を作成するステップと、
を実行することを特徴とするプラント制御システムの模擬画面の作成方法。
【請求項6】
操作装置を撮影して得られた画像から表示器の画像を抽出し、抽出した表示器画像を加工してランプ点灯時及び消灯時の各画像を生成するステップと、
生成したランプ点灯時の表示器画像とランプ消灯時の表示器画像とを一組にして表示器部品として登録するステップと、
を実行することを特徴とする請求項1に記載のプラント制御システムの模擬画面の作成方法。
【請求項7】
操作装置を撮影して得られた画像から切り替えスイッチのハンドルの画像を抽出し、抽出したハンドル画像を加工して全てのノッチの傾きパターンに合わせてハンドル画像を生成するステップと、
ノッチごとに作成した全てのハンドル画像を一組にして切り替えスイッチ部品として登録するステップと、
を実行することを特徴とする請求項6に記載のプラント制御システムの模擬画面の作成方法。
【請求項8】
操業中の操作装置を一定時間撮影して得られた動画から表示器のランプ点灯時及び消灯時の各画像を抽出するステップと、
抽出したランプ点灯時の表示器画像とランプ消灯時の表示器画像とを一組にして表示器部品として登録するステップと、
を実行することを特徴とする請求項6又は7に記載のプラント制御システムの模擬画面の作成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−160134(P2012−160134A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21099(P2011−21099)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(501137636)東芝三菱電機産業システム株式会社 (904)
【Fターム(参考)】