説明

プラント用再結合器、及び、かかる再結合器に使用される再結合触媒

【課題】排出ガスに対する耐被毒性に優れ、長期間に渡る連続運転が可能な水素と酸素を再生するプラント用再結合器とその再結合触媒を提供する。
【解決手段】プラントから排出される過熱蒸気を含む排ガス中の水素と酸素を再結合させるプラント用再結合器であって、容器と、その内部に備えられた再結合触媒とを含んでおり、前記再結合触媒は、前記水素と酸素を再結合させる触媒と共に、アルカリ金属とアルカリ土類金属の少なくともいずれか一つを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラント用の再結合器に関し、更には、当該再生器に使用される触媒に関し、特に、原子力プラントおいて使用されるに適したプラント用再結合器、更には、かかる再結合器に使用されるに好適な再結合触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素(以下、「CO」と言う)などによる地球温暖化が深刻になる中、COを発生しない原子力発電システムは、将来のエネルギー供給源として、世界的にも、年々、その需要が高まっている。
【0003】
さて、原子力発電システムの方式には、沸騰水型原子炉(以下、「BWR」と言う)、及び、改良型沸騰水型原子炉(以下、「ABWR」と言う)がある。しかしながら、これらの原子炉の方式では、原子炉内における水の放射線分解により、水素(H)と酸素(O)が発生し、これらが原子炉内で発生した蒸気と共にタービンに移行するようになっている。
【0004】
その後、タービン内で仕事を終えた蒸気は復水器で凝縮水として回収され、一方、非凝縮性の水素(H)と酸素(O)は再結合器において、その内部に備えられた再結合触媒の働きにより、水(HO)に戻されている。
【0005】
なお、かかる原子力プラント用の再結合触媒に関する従来技術としては、以下の特許文献1〜6が既に知られておる。また、一般的に、シール剤からは、室温でも有機ケイ素化合物の一種であるヘキサメチレンジシロキサン(HMDSなどの直鎖有機ケイ素化合物であるヘキサメチレンジシロキサンや、デカメチルシクロペンタシロキサンなどの環状シロキサン)が発生することが、以下の非特許文献1〜3による既に知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭60-86495号公報
【特許文献2】特開昭62-83301号公報
【特許文献3】特開昭60-224100号公報
【特許文献4】特開昭58-15007号公報
【特許文献5】特開昭60-219595号公報
【特許文献6】特許第2680489号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Karl Arnby, Mohammad Rahmani, Mehri Sanati: Applied Catalysis B, pp.1-7(2004)
【非特許文献2】Masahiko Matsumiya, Woosuck Shin, Fabin Qiu et al: Sensors and Actuators B, pp516-522(2003)
【非特許文献3】Jean-Jacques Ehrhardt, Lionel Colin, Didier Jamois, et al: Sensors and Actuators B, pp117-124(1997)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
即ち、原子力プラント用の再結合器に関しては、上記特許文献1によれば、上述した非凝縮性の水素(H)と酸素(O)との再結合を行う再結合器に用いる触媒として、ニッケルクロム合金又はステンレス等の金属担体表面に、アルミナの層を設け、白金属貴金属粒子を担持した構造が提案されている。また、上記特許文献2では、金属触媒として、目開きが0.5〜6.0mmの孔径となるように形成したスポンジ状の金属担体を用いることが提案されている。更に、その他の特許文献3〜6においても、アルミナ層に担持する貴金属として、Pt又はPdを用いたものが報告されている。
【0009】
しかしながら、上述した従来技術により知られる再結合器用の触媒では、復水器から排出された水素(H)と酸素(O)を含むガスによる被毒により、必ずしも想定された長期間に渡る連続運転を行うことが出来ず、そのため、原子力プラント用再結合器の稼働率が著しく低下してしまうという問題点があった。
【0010】
そこで、本発明は、上述した従来技術における問題点に鑑みて達成されてものであり、より具体的には、原子力プラントにおいて、復水器から排出された水素(H)と酸素(O)を含むガスに対する耐被毒性に優れ、もって、長期間に渡る連続運転が可能である、そのため、原子力プラント用再結合器の稼働率を低下することのない原子力プラント用の再結合器に用いるための再結合触媒とそれを用いた原子力プラント用再結合器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明では、以下にも詳述するように、本発明者等による種々の検討の結果、白金等の触媒が、水素(H)や酸素(O)と共に腹水器から排出されるガス中の微量のシリコーンにより被毒されることを確認し、かかる知見に基づいて達成されたものであり、以下のようなプラント用再結合器、及び、かかる再結合器に使用される触媒が提供される。
【0012】
即ち、上述した本発明の目的は、まず、プラントから排出される過熱蒸気を含む排ガス中の水素と酸素を再結合させるプラント用再結合器であって、容器と、その内部に備えられた再結合触媒とを含んでおり、前記再結合触媒は、前記水素と酸素を再結合させる触媒と共に、アルカリ金属とアルカリ土類金属の少なくともいずれか一つを含むプラント用再結合器が提供される。
【0013】
また、本発明では、前記に記載したプラント用再結合器は、沸騰水型原子力発電所の原子炉内において水が放射線により分解されて生じ、復水器から排出される排ガス中の水素と酸素を再結合させるための再結合器であることが好ましい。
【0014】
加えて、本発明によれば、前記に記載したプラント用再結合器において使用される再結合触媒であって、前記水素と酸素を再結合させる触媒と共に、アルカリ金属とアルカリ土類金属の少なくともいずれか一つを含み、前記アルカリ金属としてLi、Na、K、Rb、Csを含み、前記アルカリ土類金属としてMg、Ca、Sr、Baを含んでいる再結合触媒が提供される。
【0015】
そして、本発明では、前記に記載した再結合触媒において、前記アルカリ金属と前記アルカリ土類金属の含有量は、前記再結合触媒に対して0.03wt%以上、及び、0.6wt%以下であることが好ましく、前記水素と酸素を再結合させる触媒と共に、Caを含んでいることが好ましい。また、前記アルカリ金属と前記アルカリ土類金属の含有量は、前記再結合触媒に対して0.03wt%以上、及び、0.6wt%以下であることが好ましい。
【0016】
更に、本発明では、前記に記載した再結合触媒において、再結合触媒は、発泡金属基材の上にアルミナをコーティングし、当該アルミナコーティングは、前記Caと共に、白金族(Pt、Pd、Rh、Ru、Ir)から選ばれた少なくとも一つの成分を含有していることが、更には、前記アルミナコーティングは、前記白金族(Pt、Pd、Rh、Ru、Ir)のPt及びPdの何れか一方を含有していることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
上述した本発明によれば、特に、水素除去システムを備えた原子力プラント等において、有機ケイ素化合物による再結合触媒の劣化を抑制し、再結合器の健全性を維持し、長期間にわたる連続運転を可能とし、即ち、稼働率が高いプラント用再結合器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施例を備えた沸騰水方原子力発電所の放射性気体廃棄物処理系のフロー図である。
【図2】上記放射性気体廃棄物処理系における再結合器の構造の例を示す断面図である。
【図3】本発明になる再結合触媒の有機ケイ素化合物に対する耐被毒性の測定結果を、比較例と比較して示す図である。
【図4】本発明になる再結合触媒の有機ケイ素蓄積速度を、比較例と比較して示す図である。
【図5】本発明になる再結合触媒の有機ケイ素化合物に対する耐被毒性のCa含有量依存性を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図にしたがって具体的に説明するが、その前に、まず、本発明者等による種々の検討の結果について説明する。
【0020】
本発明が対象とする原子炉では、その炉心周囲には上述したように水が張られており、この水に炉心からの放射線が接触すると、水(HO)が水素(H)と酸素(O)に分解すると同時に、発熱による水蒸気が発生する。そこで、この水素と酸素の混合気体が大気中に放出されると爆発の危険性があるため、原子力プラントの回路中には、水素と酸素を水に戻すための再結合器が取り付けられている。この再結合器で水素と酸素を水に戻すときに使用するのが、再結合触媒である。
【0021】
この再結合触媒は、上記従来技術においても述べたように、一般に、ニクロムの上にアルミナの粒子がコーティングされ、アルミナの上に白金がコーティングされたメッシュ状のフィルターが取り付けられている。そして、このフィルターの白金表面で水素と酸素が反応するようになっている。
【0022】
ところで、上記原子力プラントを構成する各種配管等のシール部分には、シリコーン樹脂等のシール剤が充填されるのが一般的である。しかしながら、このシール剤が、下流側の再結合器に思わぬ弊害をもたらすことが分かった。つまり、再結合器に取り付けられた再結合触媒の表面にシール剤のシリコーン樹脂が付着すると水素と酸素の反応が低下してしまい、再結合触媒の性能が劣化することが分かった。
【0023】
即ち、シリコーン樹脂が再結合器の上流側に存在すると、ヘキサメチレンジシロキサン(HMDS)などの直鎖有機ケイ素化合物や、デカメチルシクロペンタシロキサンなどの環状シロキサンが発生する。以降、直鎖有機ケイ素化合物と環状シロキサンを含めた総称として有機ケイ素化合物と記載する。これが再結合触媒に蓄積し続けると、Pt表面も覆い始め、水素と酸素が反応すべき面積が小さくなってしまう。そのため、再結合が時間の経過と共に出来なくなってしまうという問題がある。しかしながら、上記の特許文献及び非特許文献では、その何れにも、かかる有機ケイ素化合物から再結合触媒を保護することについて配慮するものはなかった。
【0024】
そこで、本発明の発明者等が有機ケイ素化合物を詳細に調べたところ、アルミナの粒子上に、接触である白金に加え、アルカリ土類金属を担持させておけば、有機ケイ素化合物が再結合触媒に蓄積し難くなることが分かった。なお、かかるアルカリ土類金属には、カルシウム、ストロンチウム、バリウムの3つの組元素が含まれるが、本発明の発明者らは、特に、カルシウムが再結合触媒の性能劣化抑制に極めて有効であることを見出した。
【0025】
図1は、本発明の一実施例になる再結合器をその一部に備えた沸騰水型原子力発電所において、特に、その放射性気体廃棄物処理系を示したブロック図である。
【0026】
この図1において、原子炉1内で、水の放射線分解によって生じた水素(H)と酸素(O)は、炉内で発生した蒸気と共に、タービン2を経て(タービンを駆動した後)、主復水器3へ運ばれ、当該主復水器中において、炉水に混入した混入空気と共に、空気抽出器4により抽出される。この空気抽出器4では、抽出された蒸気等(所謂、排ガス)は、駆動蒸気(図に矢印で示す)により爆鳴気限界以下に希釈された後、排ガス処理系へ運ばれる。
【0027】
排ガス処理系へ運ばれた排ガスは、先ず、排ガス予熱器5において、所内蒸気により処理ガスの飽和温度以上に加熱され、もって、その水分が除去される。その後、再結合器6に充填された再結合触媒7により、酸素水素再結合反応が行われる。これにより、排ガス中の水素は、再結合器出口での水素濃度で、所定濃度以下(例えば、ドライガス換算で4%以下)に減少される。また、上記酸素水素再結合反応により発生した水蒸気は、排ガス復水器8により凝縮され、除去される。
【0028】
更に、酸素と水素を除去された放射性排ガスは、従来と同様に、半減期の短いクリプトン、キセノンを、排ガスホールドアップ装置9により、規定値以下の放射濃度に減衰される。その後、排ガスは、空気抽出器10により排気筒11より大気に放出される。
【0029】
図2(A)及び(B)は、本発明の一実施例になる再結合器の内部を示す拡大断面図であり、特に、図2(A)は、ペレットタイプのセラミック触媒を充填した再結合器を、他方、図2(B)は、金属触媒を充填した再結合器を示している。なお、これらの図中において、符号17は排ガス入口ノズルを、18は排ガス出口ノズルを、19はセラミック触媒を、20は点検口を、21は触媒出口を、22は温度計を、23は触媒カートリッジを、24は金属触媒を、それぞれ、示している。
【0030】
なお、上記の図2に示した再結合器6の容器の内部に備えられている再結合触媒7としては、セラミック触媒や金属触媒などがある。
【0031】
なお、上述したアルカリ金属としては、Li、Na、K、Rb、Csの何れかが好ましく、及び/又は、アルカリ土類金属としては、Mg、Ca、Sr、Baの何れかが好ましい。特に、発明者等の検討によれば、Caが好適であり、更に、アルカリ金属、及び/又は、アルカリ土類金属の含有量を、再結合触媒に対して0.03wt%以上、0.6wt%以下とすることが好ましい。
【0032】
更には、発泡金属基材の上に多孔性金属酸化物をコーティングし、当該多孔性酸化物に、水素(H)と酸素(O)を水(HO)に変換可能な活性成分と、そして、上述したアルカリ金属/アルカリ土類金属の一つとして、Caとを含有した再結合触媒が好適である。なお、この多孔性金属酸化物としては、活性成分を多孔性金属酸化物の表面に高分散状態で保持する材料である。耐久性の観点からアルミナが好適である。また、水素(H)と酸素(O)を水(HO)に変換可能な活性成分としては、水素分子を解離して活性化する成分である白金族(Pt、Pd、Rh、Ru、Ir)、更には、酸素分子を活性化する成分である金(Au)の中からから選ばれた少なくとも一つとすることが好ましい。特に、Pt、Pdは、再結合反応に必要な155℃の低温領域においても水(HO)への変換性能が高いため、特に、好適である。
【0033】
図3は、上述したアルカリ金属/アルカリ土類金属の一つを含有する再結合触媒による水素分子の解離性能の経時変化、即ち、有機ケイ素化合物による被毒から、再結合触媒を保護する効果(耐被毒性)を示すグラフである。
【0034】
即ち、上記の実施例1の再結合触媒の一例として、Caを含有する実施例触媒1を作成した。また、比較のため、Caを含まない比較例触媒1を作成した。なお、実施例触媒1及び比較例触媒1について、以下に説明する。
【0035】
(実施例触媒1)
Ni-Cr合金製のスポンジ状の金属基材表面にアルミナをコーティングし、当該アルミナに塩化Pt溶液を浸漬した後、乾燥し、更に、焼成した。その後、温水洗浄により脱塩素処理をした後、350℃で水素還元を実施した。更に、酢酸Ca溶液を浸漬した後、乾燥し、その後、350℃で0.5時間焼成することにより、実施例触媒1を得た。なお、スポンジ状の金属基材は、目開きを1個が2〜3mmの孔を有している。また、基材の形状は直径27mm、厚さ11mmとした。金属触媒100gあたり、Ptは金属換算で0.24g、Caは金属換算で0.30gとした。
【0036】
(比較例触媒1)
Ni-Cr合金製のスポンジ状の金属基材表面にアルミナをコーティングし、当該アルミナに塩化Pt溶液を浸漬した後、乾燥、更に、焼成した。その後、温水洗浄により脱塩素処理をした後、350℃で水素還元を実施することで、比較例触媒1を得た。なお、スポンジ状の金属基材は、目開きを1個が2〜3mmの孔を有している。また、基材の形状は直径27mm、厚さ11mmとした。金属触媒100gあたり、Ptは金属換算で0.24gとした。
【0037】
そして、有機ケイ素化合物に対する上記実施例触媒1及び比較例触媒1の耐被毒性を調べた。具体的には、内径28mmの石英製反応管に実施例触媒1又は比較例触媒1を5個充填した。なお、試験条件について、以下に記す。
【0038】
(試験条件)
(1)環状の有機ケイ素化合物の代表例としてデカメチルシクロペンタシロキサン(以下、D5)を用いた。
【0039】
(2)反応ガス組成は、D5を100ppm、水素を0.06%、酸素を0.04%、窒素を0.02%、蒸気を99.88%とした。反応ガス流速は、0℃換算で3m/s、触媒入口温度は155℃とした。
【0040】
(3)触媒出口の水素濃度をガスクロマトグラフ法で調べた。
【0041】
なお、上述した試験の結果は図3の通りである。即ち、水素濃度が20%に達するまでの経過時間を調べると、実施例触媒1よりも比較例触媒1の方が早いこと、即ち、アルカリ金属/アルカリ土類金属の一つを含有する再結合触媒によれば、有機ケイ素化合物による被毒から、再結合触媒を保護する効果(耐被毒性)が得られることが明らかである。
【0042】
続いて、上記の試験を行った後の実施例触媒1と比較例触媒1とにそれぞれ蓄積されたSi量を、エネルギー分散形X線分光装置により調べた。その結果を、添付の図4に示す。即ち、この図4は、Ca含有の有無による、有機ケイ素蓄積速度を示す。
【0043】
この図4において、単位時間当たりのSi蓄積量(以下、「Si蓄積速度」と言う)で示す通り、実施例触媒1のSi蓄積速度は比較例触媒1より遅かった。
【0044】
以上のことから、実施例触媒1は、比較例触媒に比較して、有機ケイ素化合物の蓄積が抑制されたため、有機ケイ素化合物に対する耐被毒性が高いことは明らかである。
【0045】
なお、上述したアルカリ金属/アルカリ土類金属の含有により、有機ケイ素化合物に対する耐被毒性が向上するメカニズムは必ずしも明らかではないが、しかし、以下のように推察される。
【0046】
アルカリ金属やアルカリ土類金属は、再結合触媒の担体であるアルミナ上の水酸(OH)基上に化学結合する性質を有する。また、有機ケイ素化合物もアルミナ上の水酸(OH)基上に化学結合する性質を有する。従って、アルカリ金属やアルカリ土類金属が予め再結合触媒に含有されていることにより、有機ケイ素化合物の蓄積が抑制されるものと推察される。
【0047】
更に、上記実施例触媒1のCa含有量を、金属触媒100gあたりCa金属換算で0.03、0.1、3.0g(表示としては、wt%とする)とした実施例触媒2、実施例触媒3、実施例触媒4を作成した。そして、これらの実施例触媒1〜4と、上記比較例触媒1とを試験用触媒として、有機ケイ素化合物に対する耐被毒性のCa含有量依存性を調べた。
【0048】
即ち、内径28mmの石英製反応管内に、上述した5個の試験用触媒を充填した。さらに、触媒の上にシール剤(スリーボンド社製:TB1211)を固形化させ、シール剤固形物を2g充填した。その後、シール剤固形物の上流からは155℃に加熱された反応ガスを流通させて触媒出口の水素濃度を調べた。なお、この時の試験条件を以下に示す。
【0049】
反応ガス組成は、水素を0.06%、酸素を0.04%、窒素を0.02%、蒸気を99.88%とした。反応ガス流速は0℃換算で3m/s、触媒入口温度は155℃とした。触媒出口の水素濃度をガスクロマトグラフ法で調べた。なお、TB1211に155℃で反応ガスを供給すると、D5を含む有機ケイ素化合物が発生することは、事前に確認済である。
【0050】
添付の図5は、上述した試験の結果をしめすグラフであり、即ち、有機ケイ素化合物に対する耐被毒性のCa含有量依存性を示す図である。
【0051】
即ち、図5において、触媒出口の水素濃度が20%を超える試験経過時間を調べた試験結果によれば、水素濃度が20%に達する経過時間を調べると、Ca含有量0.03wt%以上、0.6wt%以下とすることによれば、比較例触媒1(Ca:0wt%)に比較して優れた、有機ケイ素化合物に対する耐被毒性を有することが明らかである。
【0052】
このことは、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の含有量が0.03wt%より少ないとアルミナ担体上の水酸基がカバーされる量が少ないため有機ケイ素化合物の蓄積抑制効果が低いものと推察される。一方、0.6wt%より多いと、アルミナ担体上の水酸基のみならず活性金属となる貴金属上にも担持されると考えられる。その結果、水素と酸素の反応点(以下、「活性点」と言う)が減少し、少量の有機ケイ素化合物でも活性点が消失してしまうため、有機ケイ素化合物に対する耐被毒性が低下すると考えられる。
【0053】
以上の実験結果によれば、沸騰水型原子力発電システムの再結合器の内部に、その内部に充填された触媒の被毒成分となる有機系ケイ素化物が流入した場合に備え、触媒に当該有機ケイ素化合物を除去する機能を有したアルカリ金属及びアルカリ土類金属を含有させることにより、有機系ケイ素化物を含む排ガスについても、当該有機系ケイ素化物による被毒から触媒を保護し、稼働率が高い排ガス処理装置を提供することができる。
【0054】
そして、特に、沸騰水型原子炉、復水器、蒸気タービン、再結合器から構成される沸騰水原子力発電システムにおいて、上述した再結合触媒を備えた再結合器を用いることによれば、沸騰水型原子力発電所の原子炉水の放射線分解によって生じた水素と酸素と過熱蒸気を含む排ガス中の水素と酸素を、長時間に亘って、効率よく、再結合させることが可能となる。即ち、本発明によれば、この再結合触媒が上述したアルカリ金属又はアルカリ土類金属の少なくとも一つを含むことにより、プラントを構成する各種配管等のシール部分に充填されるシリコーン樹脂等のシール剤から発生する有機ケイ素化合物に対する耐久性(耐被毒性)を高めることが可能となる。
【0055】
また、ここで、アルカリ金属としては、Li、Na、K、Rb、Csが、そして、アルカリ土類金属としては、Mg、Ca、Sr、Baが用いられるが、上述した記載からも明らかなように、特に、Caが好適である。そして、アルカリ金属又はアルカリ土類金属(特に、Ca)の含有量を、再結合触媒に対して0.03wt%以上、0.6wt%以下とすることが好ましい。更に、当該アルカリ金属又はアルカリ土類金属(特に、Ca)は、発泡金属基材の上にアルミナをコーティングすると共に、Pt、Pd、Rh、Ruの少なくとも一つと共に含有されることが好適である。
【符号の説明】
【0056】
1…原子炉、2…タービン、3…主復水器、4…空気抽出器、5…排ガス予熱器、6…再結合器、7…再結合触媒、8…排ガス復水器、9…排ガスホールドアップ装置、10…空気抽出器、10…空気抽出器、11…主排気筒。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントから排出される過熱蒸気を含む排ガス中の水素と酸素を再結合させるプラント用再結合器であって、容器と、その内部に備えられた再結合触媒とを含んでおり、
前記再結合触媒は、前記水素と酸素を再結合させる触媒と共に、アルカリ金属とアルカリ土類金属の少なくともいずれか一つを含むことを特徴とするプラント用再結合器。
【請求項2】
前記請求項1に記載したプラント用再結合器は、沸騰水型原子力発電所の原子炉内において水が放射線により分解されて生じ、復水器から排出される排ガス中の水素と酸素を再結合させるための再結合器であることを特徴とするプラント用再結合器。
【請求項3】
前記請求項1に記載したプラント用再結合器において使用される再結合触媒であって、
前記水素と酸素を再結合させる触媒と共に、アルカリ金属とアルカリ土類金属の少なくともいずれか一つを含み、
前記アルカリ金属としてLi、Na、K、Rb、Csを含み、前記アルカリ土類金属としてMg、Ca、Sr、Baを含んでいることを特徴とする再結合触媒。
【請求項4】
前記請求項3に記載した再結合触媒において、前記アルカリ金属と前記アルカリ土類金属の含有量は、前記再結合触媒に対して0.03wt%以上、及び、0.6wt%以下であることを特徴とする再結合触媒。
【請求項5】
前記請求項3に記載した再結合触媒において、前記水素と酸素を再結合させる触媒と共に、Caを含んでいることを特徴とする再結合触媒。
【請求項6】
前記請求項5に記載した再結合触媒において、前記アルカリ金属と前記アルカリ土類金属の含有量は、前記再結合触媒に対して0.03wt%以上、及び、0.6wt%以下であることを特徴とする再結合触媒。
【請求項7】
前記請求項4に記載した再結合触媒は、発泡金属基材の上にアルミナをコーティングし、当該アルミナコーティングは、前記Caと共に、白金族(Pt、Pd、Rh、Ru、Ir)から選ばれた少なくとも一つの成分を含有していることを特徴とする再結合触媒。
【請求項8】
前記請求項7に記載した再結合触媒において、前記アルミナコーティングは、前記白金族(Pt、Pd、Rh、Ru、Ir)のPt及びPdの何れか一方を含有していることを特徴とする再結合触媒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−232080(P2011−232080A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100875(P2010−100875)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】