プラント運転評価装置
【課題】本発明は、省エネ対策後の期間において省エネ対策を実施しなかった場合のプラント運転を推定し、推定したプラント運転と省エネ対策後の実際のプラント運転とを比較して省エネ効果を評価するプラント運転評価装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明によるプラント運転評価装置は、省エネ対策前のプラント運転に関する第2のプラント運転値に基づいて作成されたプラント運転推定モデル77と、省エネ対策後の所定の期間において、第1のプラント運転値をプラント運転推定モデル77に適用して省エネ対策前のプラント運転を推定するプラント運転推定手段80と、プラント運転推定手段80にて推定された省エネ対策前のプラント運転と、プラント運転データベース79に格納された第1のプラント運転値とを比較してプラント運転を評価する評価手段81とを備える。
【解決手段】本発明によるプラント運転評価装置は、省エネ対策前のプラント運転に関する第2のプラント運転値に基づいて作成されたプラント運転推定モデル77と、省エネ対策後の所定の期間において、第1のプラント運転値をプラント運転推定モデル77に適用して省エネ対策前のプラント運転を推定するプラント運転推定手段80と、プラント運転推定手段80にて推定された省エネ対策前のプラント運転と、プラント運転データベース79に格納された第1のプラント運転値とを比較してプラント運転を評価する評価手段81とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラント運転装置に対して省エネ対策を実施した場合における省エネ効果を評価するプラント運転評価装置に関し、特に、省エネ対策後の期間において省エネ対策前のプラント運転を推定し、当該推定した省エネ対策前の運転と省エネ対策後の実際の運転とを比較して省エネ効果を評価するプラント運転評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のプラント運転評価装置では、省エネ対策前の期間において実プラント計算機モデルを同定し、当該実プラント計算機モデルの最適運用による原単価と実績の原単価との比を最適運転率として算出し、省エネ対策後の期間において実プラント計算機モデルの最適運用による原単価を最適運転率で補正して省エネ対策を実施しなかった場合の原単価を推定し、省エネ対策前後におけるエネルギー変動費を推定していた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、省エネルギー手段非適用時の実績データを用いてエネルギーコストモデルを生成し、生成したエネルギーコストモデルと評価対象の省エネルギー手段適用時の実績データとから省エネルギー手段非適用時のエネルギーコストを計算し、評価対象の省エネルギー手段適用時の実績データから省エネルギー手段適用時のエネルギーコストを計算し、省エネルギー手段の非適用時と適用時とのエネルギーコストを比較して省エネルギー効果を評価していた(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−133596号公報
【特許文献2】特開2005−141403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1および特許文献2では、省エネ対策後の期間において省エネ対策を実施しなかった場合のエネルギーコスト(以下、単にコストとも称する)を推定することができるが、プラントの各設備の運転を推定することができないため、各設備の運転改善などに起因する省エネ対策によるコスト削減効果がどの設備の運転改善によるものであるのかが分からないという問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、省エネ対策後の期間において省エネ対策を実施しなかった場合のプラント運転を推定し、推定したプラント運転と省エネ対策後の実際のプラント運転とを比較して省エネ効果を評価するプラント運転評価装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明によるプラント運転評価装置は、省エネ対策後のプラント運転に関する第1のプラント運転値を格納するプラント運転データベースと、省エネ対策前のプラント運転に関する第2のプラント運転値に基づいて作成されたプラント運転推定モデルと、省エネ対策後の所定の期間において、第1のプラント運転値をプラント運転推定モデルに適用して省エネ対策前のプラント運転を推定するプラント運転推定手段と、プラント運転推定手段にて推定された省エネ対策前のプラント運転と、プラント運転データベースに格納された第1のプラント運転値とを比較してプラント運転を評価する評価手段とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、省エネ対策後のプラント運転に関する第1のプラント運転値を格納するプラント運転データベースと、省エネ対策前のプラント運転に関する第2のプラント運転値に基づいて作成されたプラント運転推定モデルと、省エネ対策後の所定の期間において、第1のプラント運転値をプラント運転推定モデルに適用して省エネ対策前のプラント運転を推定するプラント運転推定手段と、プラント運転推定手段にて推定された省エネ対策前のプラント運転と、プラント運転データベースに格納された第1のプラント運転値とを比較してプラント運転を評価する評価手段とを備えるため、省エネ対策後の期間において省エネ対策を実施しなかった場合のプラント運転を推定し、推定したプラント運転と省エネ対策後の実際のプラント運転とを比較して省エネ効果を評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態1による自家発プラントを有する工場の例を模式的に示す図である。
【図2】本発明の実施形態1によるプラント運転推定モデル構築手段とデータとの関係を模式的に示す構成図である。
【図3】本発明の実施形態1によるプラント運転推定モデルを用いた、評価手段とデータとの関係を模式的に示す図である。
【図4】本発明の実施形態1によるプラント運転推定モデルの構築の動作を示すフロー図である。
【図5】本発明の実施形態1による運転値情報の表示の一例を示す図である。
【図6】本発明の実施形態1による接続情報の表示の一例を示す図である。
【図7】本発明の実施形態1による自家発プラントの運転値のトレンドグラフである。
【図8】本発明の実施形態1による運転値分類情報の表示の一例を示す図である。
【図9】本発明の実施形態1によるプラント運転推定モデルの一例であるデータフローモデルを示す図である。
【図10】本発明の実施形態1によるプラント運転推定モデルの一例であるデータフローモデルを示す図である。
【図11】本発明の実施形態1によるプラント運転推定モデルを用いた評価のフローチャートである。
【図12】本発明の実施形態1による実際のプラント運転と推定したプラント運転との比較の一例を示す図である。
【図13】本発明の実施形態1によるコスト削減効果の内訳の一例を示す図である。
【図14】本発明の実施形態2によるプラント運転推定モデルを用いた、評価手段とデータとの関係を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態について、図面に基づいて以下に説明する。
【0011】
〈実施形態1〉
図1は、本発明の実施形態1による自家発プラントを有する工場の例を模式的に示す図である。図1に示すように、本実施形態1では電力、中圧蒸気、低圧蒸気を使用する工場において、省エネ対策後の所定の期間において省エネ対策を実施しなかった場合のプラント運転を推定し、推定したプラント運転と省エネ対策後の実際のプラント運転とを比較して省エネ効果を評価している。以下に詳細について説明する。
【0012】
図1に示すように、ボイラやタービンなどの発電設備を含む自家発プラントを有する工場では、1号ボイラ11、2号ボイラ12、3号ボイラ13の各々にて燃料14,15,16を使用して高圧蒸気17,18,19を発生させ、発生した高圧蒸気17,18,19は高圧蒸気ヘッダ20で集められている。高圧蒸気ヘッダ20から1号タービン21、2号タービン22、3号タービン23には、高圧蒸気24,25,26がそれぞれ供給されている。1号タービン21では、高圧蒸気24が有する熱エネルギーの一部を発電機27で発電力28に変換し、復水器29で1号タービン21から排気された蒸気から復水30を得ている。また、発電力28を減少させる代わりに中圧蒸気31、低圧蒸気32を抽気することができる。同様に、2号タービン22においても、高圧蒸気25から、発電機33で発電力34を、復水器35で復水36を、抽気により中圧蒸気37、低圧蒸気38をそれぞれ得ることができる。同様に、3号タービン23においても、高圧蒸気26から、発電機39で発電力40を、復水器41で復水42を、抽気により中圧蒸気43、低圧蒸気44をそれぞれ得ることができる。
【0013】
各タービンから得られた発電力28,34,40は、電力線45を介して工場電力46、1号ボイラ所内電力47、2号ボイラ所内電力48、3号ボイラ所内電力49としてそれぞれ供給される。また、電力の不足分は電力会社からの購入電力50として補うことができる。なお、所内電力はボイラの給水ポンプなどで消費される。
【0014】
各タービンから得られた中圧蒸気31,37,43は、中圧蒸気ヘッダ51を介して工場中圧蒸気52、1号ボイラ所内中圧蒸気53、2号ボイラ所内中圧蒸気54、3号ボイラ所内中圧蒸気55としてそれぞれ供給される。なお、所内中圧蒸気はボイラの給水加熱器などで消費される。
【0015】
各タービンから得られた低圧蒸気32,38,44は、低圧蒸気ヘッダ56を介して工場低圧蒸気57、1号ボイラ所内低圧蒸気58、2号ボイラ所内低圧蒸気59、3号ボイラ所内低圧蒸気60としてそれぞれ供給される。なお、所内低圧蒸気はボイラの脱気器などで消費される。
【0016】
図2は、本発明の実施形態1によるプラント運転推定モデル構築手段76とデータとの関係を模式的に示す構成図である。なお、図2におけるプラント運転データベース61には、省エネ対策前のプラント運転に関する情報が保存されているものとする。
【0017】
図2に示すように、プラント運転データベース61には、図1で示すような工場に備えられる自家発プラント62に係わる各設備の運転、購入電力および環境条件などに関するデータ(例えば、ボイラやタービンなどの稼動状態、燃料流量、給水流量、蒸気流量、復水流量、蒸気圧力、蒸気温度、発電量、購入電力量、燃料単価、購入電力単価、工場電力需要、工場蒸気需要、気象データなど)が保存されている。このようなデータの中でも特に、燃料流量、給水流量、蒸気流量、復水流量、蒸気圧力、蒸気温度、発電量、購入電力量など、プラントの運転に係わる値を総称して運転値(第2のプラント運転値)と呼ぶ。なお、プラント運転データは、自家発プラント62において電力計、流量計、圧力計、温度計などの計測器およびセンサなどによって計測されてプラント運転データベース61に格納されている。
【0018】
入力手段63(付与手段)では、プラントの運転値情報64、接続情報65、運用方針情報66、運転制約情報67を入力(付与)する。
【0019】
運転値情報64は、プラントの運転値(第2のプラント運転値)の名称、単位、他の運転値との関係などの情報を含む。また、接続情報65は、プラントの設備系統から同定した運転値(第2のプラント運転値)の接続に関する情報を含む。また、運用方針情報66は、環境条件に応じたプラントの運用(プラント運転)の切り替え方針などに関する情報を含む。また、運転制約情報67は、運転値(第2のプラント運転値)の上下限などに関する情報を含む。
【0020】
マスバランス式決定手段68では、運転値情報64と接続情報65とに含まれるプラントの運転値の接続関係に基づいて、燃料、電力、高圧蒸気、中圧蒸気、低圧蒸気等の各エネルギーに関するエネルギーマスバランス式と、各設備内の蒸気などに関する設備マスバランス式とを含むマスバランス式69を決定する。
【0021】
特性式決定手段70では、運転値情報64とプラント運転データベース61に蓄積されたプラントの運転値(第2のプラント運転値)とに基づいて、各設備における入出力特性を示す入出力特性式(設備入出力特性式)と、各設備内における需要特性を示す所内需要特性式とを含む特性式71を決定する。
【0022】
相関式決定手段72では、運転値情報64とプラント運転データベース61に蓄積されたプラントの運転値(第2のプラント運転値)とに基づいて、所定の運転値における他の運転値に対する相関関係を示す相関式73を決定する。
【0023】
運転値分類決定手段74では、運転値情報64、運用方針情報66、マスバランス式69、特性式71、相関式73の各々に基づいて、プラントの運転値(第2のプラント運転値)の分類に関する情報を含む運転値分類情報75を決定する。
【0024】
プラント運転推定モデル構築手段76では、運転値情報64、運用方針情報66、運転制約情報67、マスバランス式69、特性式71、相関式73、運転値分類情報75の各々に基づいて、プラント運転推定モデル77を構築する。
【0025】
表示手段78では、プラント運転データベース61、運転値情報64、接続情報65、運用方針情報66、運転制約情報67、マスバランス式69、特性式71、相関式73、運転値分類情報75の各々を表示する。
【0026】
なお、入力手段63は、例えばパーソナルコンピュータなどを含む一般的なコンピュータにおいてキーボードやマウスなどの入力装置を利用してデータを入力することにより実現することができる。また、運転値情報64、接続情報65、運用方針情報66、運転制約情報67、マスバランス式69、特性式71、相関式73、運転値分類情報75、プラント運転推定モデル77の各々は、例えばハードディスクドライブなどの磁気記憶装置を含む記憶装置に格納することにより情報を保管することができる。また、マスバランス式決定手段68、特性式決定手段70、相関式決定手段72、運転値分類決定手段74、プラント運転推定モデル構築手段76は、例えばパーソナルコンピュータなどを含む一般的なコンピュータを利用したデータ処理や演算により実現することができる。また、表示手段78は、例えばディスプレイなどの表示装置を利用することにより実現することができる。
【0027】
図3は、本発明の実施形態1によるプラント運転推定モデル77を用いた、評価手段81とデータとの関係を模式的に示す図である。図3に示すように、プラント運転データベース79には、図2に示すプラント運転データベース61と同種のデータが保存されている。ただし、プラント運転データベース79には、少なくともプラント運転推定モデル77の構築後であって、かつ省エネ対策を実施した後の期間におけるデータ(第1のプラント運転値)が保存されている。
【0028】
プラント運転推定手段80では、プラント運転データベース79に蓄積された工場需要(例えば、工場電力、工場中圧蒸気、工場低圧蒸気)、単価(例えば、購入電力単価、発電単価)および気象データを含む環境条件(第1のプラント運転値)をプラント運転推定モデル77に適用して、省エネ対策前のプラント運転を推定する。
【0029】
評価手段81では、プラント運転データベース79に蓄積された省エネ対策後の実際のプラント運転(第1のプラント運転値)と、プラント運転推定手段80にて推定した省エネ対策前のプラント運転とを比較し、省エネ対策前後における運転改善効果および省エネ効果を評価する。
【0030】
表示手段78では、評価手段81にて評価した省エネ対策後の実際のプラント運転と推定したプラント運転との比較、運転改善効果および省エネ効果を表示する。
【0031】
なお、プラント運転推定手段80、評価手段81は、例えばパーソナルコンピュータなどを含む一般的なコンピュータを利用したデータ処理や演算により実現することができる。
【0032】
図4は、本発明の実施形態1によるプラント運転推定モデル77の構築の動作を示すフロー図である。以下、図4のフロー図に基づいてプラント運転推定モデル77の構築の動作の概要を説明する。
【0033】
まず、プラント運転推定モデル77の構築に用いる各値を以下のように定義する。なお、頭文字が小文字の値はプラント運転で変動し得る値とし、頭文字が大文字の値は設定値とする。
1号ボイラ11の燃料14の流量(km3/h): f1B
1号ボイラ11の高圧蒸気17の流量(t/h): s1B
2号ボイラ12の燃料15の流量(km3/h): f2B
2号ボイラ12の高圧蒸気18の流量(t/h): s2B
3号ボイラ13の燃料16の流量(km3/h): f3B
3号ボイラ13の高圧蒸気19の流量(t/h): s3B
1号タービン21の高圧蒸気24の流量(t/h): s1T
1号タービン21の中圧蒸気31の流量(t/h): sm1T
1号タービン21の低圧蒸気32の流量(t/h): sl1T
1号タービン21の復水30の流量(t/h): sr1T
1号タービン21の発電力28の電力量(kW): e1T
2号タービン22の高圧蒸気25の流量(t/h): s2T
2号タービン22の中圧蒸気37の流量(t/h): sm2T
2号タービン22の低圧蒸気38の流量(t/h): sl2T
2号タービン22の復水36の流量(t/h): sr2T
2号タービン22の発電力34の電力量(kW): e2T
3号タービン23の高圧蒸気26の流量(t/h): s3T
3号タービン23の中圧蒸気43の流量(t/h): sm3T
3号タービン23の低圧蒸気44の流量(t/h): sl3T
3号タービン23の復水42の流量(t/h): sr3T
3号タービン23の発電力40の電力量(kW): e3T
購入電力50の電力量(kW): ebuy
1号ボイラ所内電力47の需要(kW): e1Baux
2号ボイラ所内電力48の需要(kW): e2Baux
3号ボイラ所内電力49の需要(kW): e3Baux
1号ボイラ所内中圧蒸気53の需要(t/h): sm1Baux
2号ボイラ所内中圧蒸気54の需要(t/h): sm2Baux
3号ボイラ所内中圧蒸気55の需要(t/h): sm3Baux
1号ボイラ所内低圧蒸気58の需要(t/h): sl1Baux
2号ボイラ所内低圧蒸気59の需要(t/h): sl2Baux
3号ボイラ所内低圧蒸気60の需要(t/h): sl3Baux
工場電力46の需要(kW): Edem
工場中圧蒸気52の需要(t/h): Smdem
工場低圧蒸気57の需要(t/h): Sldem
燃料の単価(円/km3): Funit
購入電力50の単価(円/kW): Eunit
次に、図4のフロー図に基づいてプラント運転推定モデル77の構築の動作について説明する。
【0034】
(ステップS1)
ステップS1では、入力手段63により、運転値情報64、接続情報65をそれぞれ入力する。以下に具体例を示す。
【0035】
運転値情報64は、パーソナルコンピュータなどを含む一般的なコンピュータにおいてキーボードやマウスなどの入力装置を利用して、例えば図5に示すような表形式で作成することができる。
【0036】
接続情報65は、モデリングエディタなどで図1に示すような設備系統のブロック図を作成することにより、ブロック図の接続関係からプラントの運転値の接続関係を同定することが可能である。また、運転値の関係を図6に示すような表形式で作成することにより運転値の接続関係を同定することも可能である。図6では、各行において−が入力、+が出力を示し、各列において+が入力、−が出力を示している。
【0037】
なお、運転値情報64、接続情報65は、ハードディスクドライブなどの磁気記憶装置を含む記憶装置に格納することにより情報を保管できる。また、運転値情報64、接続情報65は、表示手段78により表示することができる。
【0038】
(ステップS2)
ステップS2では、マスバランス式決定手段68により、運転値情報64と接続情報65とに基づいて、燃料、電力、高圧蒸気、中圧蒸気、低圧蒸気等の各エネルギーに関するマスバランス式と、各設備内の蒸気などに関するマスバランス式とを含むマスバランス式69を決定する。以下に具体例を示す。
【0039】
まず、各エネルギーに関するマスバランス式について説明する。
【0040】
電力の場合、電力に関する接続情報に基づき、電力線45に入力される電力は、1号タービン21の発電力28、2号タービン22の発電力34、3号タービン23の発電力40、購入電力50であり、電力線45から出力される電力は、工場電力46、1号ボイラ所内電力47、2号ボイラ所内電力48、3号ボイラ所内電力49である。電力線45における電力量の入出力バランスが常にとれている(平衡である)とすると、以下のマスバランス式(1)が成り立つ。
【数1】
【0041】
高圧蒸気の場合、高圧蒸気に関する接続情報に基づき、高圧蒸気ヘッダ20に入力される高圧蒸気は、1号ボイラ11の高圧蒸気17、2号ボイラ12の高圧蒸気18、3号ボイラ13の高圧蒸気19であり、高圧蒸気ヘッダ20から出力される高圧蒸気は、1号タービン21の高圧蒸気24、2号タービン22の高圧蒸気25、3号タービン23の高圧蒸気26である。高圧蒸気ヘッダ20における蒸気流量の入出力バランスが常にとれている(平衡である)とすると、以下のマスバランス式(2)が成り立つ。
【数2】
【0042】
中圧蒸気の場合、中圧蒸気に関する接続情報に基づき、中圧蒸気ヘッダ51に入力される中圧蒸気は、1号タービン21の中圧蒸気31、2号タービン22の中圧蒸気37、3号タービン23の中圧蒸気43であり、中圧蒸気ヘッダ51から出力される中圧蒸気は、工場中圧蒸気52、1号ボイラ所内中圧蒸気53、2号ボイラ所内中圧蒸気54、3号ボイラ所内中圧蒸気55である。中圧蒸気ヘッダ51における蒸気流量の入出力バランスが常にとれている(平衡である)とすると、以下のマスバランス式(3)が成り立つ。
【数3】
【0043】
低圧蒸気の場合、低圧蒸気に関する接続情報に基づき、低圧蒸気ヘッダ56に入力される低圧蒸気は、1号タービン21の低圧蒸気32、2号タービン22の低圧蒸気38、3号タービン23の低圧蒸気44であり、低圧蒸気ヘッダ56から出力される低圧蒸気は、工場低圧蒸気57、1号ボイラ所内低圧蒸気58、2号ボイラ所内低圧蒸気59、3号ボイラ所内低圧蒸気60である。低圧蒸気ヘッダ56における蒸気流量の入出力バランスが常にとれている(平衡である)とすると、以下のマスバランス式(4)が成り立つ。
【数4】
【0044】
なお、本実施形態1では、燃料に関してはマスバランスをとる必要がないため、燃料に関するマスバランス式は存在しない。副生燃料や廃材など、単位時間あたりの燃料の消費量が予め決まっている場合は、燃料に関するマスバランス式を作成する必要がある。
【0045】
次に、各設備内の蒸気などに関するマスバランス式について説明する。
【0046】
1号タービン21の場合、1号タービン21の蒸気に関する接続情報に基づき、1号タービン21に入力される蒸気は、高圧蒸気24であり、1号タービン21から出力される蒸気は、中圧蒸気31、低圧蒸気32、復水30である。1号タービン21における蒸気流量の入出力バランスが常にとれている(平衡である)とすると、以下のマスバランス式(5)が成り立つ。
【数5】
【0047】
同様に、2号タービン22と3号タービン23における蒸気流量の入出力バランスに関しても、以下のマスバランス式(6)および(7)が成り立つ。
【数6】
【数7】
【0048】
なお、マスバランス式69は、ハードディスクドライブなどの磁気記憶装置を含む記憶装置に格納することにより情報を保管することができる。また、上記の式(1)〜(7)で示されるマスバランス式69は、入力手段63から直接入力してもよい。また、マスバランス式69は、表示手段78により表示することができる。
【0049】
(ステップS3)
ステップS3では、特性式決定手段70により、運転値情報64とプラント運転データベース61に蓄積された運転値(第2のプラント運転値)とに基づいて、各設備の入出力特性式と、各設備の所内需要特性式とを含む特性式71を決定する。以下に具体例を示す。
【0050】
入出力特性式については、燃料の入力に対する高圧蒸気の出力を示すボイラの入出力特性式、蒸気の入力に対する発電力の出力を示すタービンの入出力特性式がある。所内需要特性式については、ボイラの高圧蒸気に対する、ボイラ所内の電力、中圧蒸気、低圧蒸気の需要を示す所内需要特性式がある。
【0051】
まず、ボイラの入出力特性式について説明する。
【0052】
1号ボイラ11の場合、1号ボイラ11に対する入力は燃料14であり、1号ボイラ11からの出力は高圧蒸気17である。1号ボイラ11では、燃料14の増減に伴って高圧蒸気17も増減する。従って、1号ボイラ11の入出力に関しては、以下の特性式(8)が成り立つ。
【数8】
【0053】
ただし、P1Bは1号ボイラ11の入出力特性関数である。P1Bは、例えば以下の特性式(9)のように一次関数で表すことができる。なお、本実施形態1では特性式(9)を採用するものとする。
【数9】
【0054】
ここで、A1B、B1Bは1号ボイラ11に特有の定数であり、例えばプラント運転データベース61に蓄積された運転値を利用して回帰分析などの統計的手法により算出することができる。
【0055】
また、仮に1号ボイラ11の燃料14がn種類(f1B(i),1≦i≦n)ある場合は、1号ボイラ11の入出力に関して以下の特性式(10)が成り立つ。
【数10】
【0056】
ただし、Q1Bは1号ボイラ11の入出力特性関数である。Q1Bは、例えば以下の特性式(11)のように一次関数で表すことができる。
【数11】
【0057】
ここで、A1B(i)(1≦i≦n)、B1Bは1号ボイラ11に特有の定数であり、例えばプラント運転データベース61に蓄積された運転値を利用して回帰分析などの統計的手法により算出することができる。
【0058】
同様に、2号ボイラ12の入出力、3号ボイラ13の入出力に関しても、以下の特性式(12)および特性式(13)が成り立つものとする。
【数12】
【数13】
【0059】
ここで、A2B、B2Bは2号ボイラ12に特有の定数であり、A3B、B3Bは3号ボイラ13に特有の定数である。これらの定数は、例えばプラント運転データベース61に蓄積された運転値を利用して回帰分析などの統計的手法により算出することができる。
【0060】
次に、タービンの入出力特性式について説明する。
【0061】
1号タービン21の場合、1号タービン21の高圧蒸気24、中圧蒸気31、低圧蒸気32の流量に基づいて、1号タービン21の発電力28の電力量が決まる。従って、1号タービン21の入出力に関して、以下の特性式(14)が成り立つ。
【数14】
【0062】
ただし、P1Tは1号タービン21の入出力特性関数である。P1Tは、例えば以下の特性式(15)のように一次関数で表すことができる。なお、本実施形態1では特性式(15)を採用するものとする。
【数15】
【0063】
ここで、A1T、B1T、C1T、D1Tは1号タービン21に特有の定数であり、例えばプラント運転データベース61に蓄積された運転値を利用して回帰分析などの統計的手法により算出することができる。
【0064】
同様に、2号タービン22の入出力、3号タービン23の入出力に関しても、以下の特性式(16)および特性式(17)が成り立つものとする。
【数16】
【数17】
【0065】
ここで、A2T、B2T、C2T、D2Tは2号タービン22に特有の定数であり、A3T、B3T、C3T、D3Tは3号タービン23に特有の定数である。これらの定数は、例えばプラント運転データベース61に蓄積された運転値を利用して回帰分析などの統計的手法により算出することができる。
【0066】
次に、所内需要特性式について説明する。
【0067】
1号ボイラ所内中圧蒸気53の場合、1号ボイラ所内中圧蒸気53の需要は、1号ボイラ11の高圧蒸気17に対して変動するものとする。ボイラ所内中圧蒸気は、主にボイラの補機である給水加熱器において熱交換により給水温度を上げるために供給される。このような場合、1号ボイラ所内中圧蒸気53の需要に関して、以下の特性式(18)が成り立つ。
【数18】
【0068】
ただし、P1Bsmは1号ボイラ所内中圧蒸気53の需要特性関数である。P1Bsmは、例えば、以下の特性式(19)のように一次関数で表すことができる。本実施形態1ではこの特性式(19)を採用するものとする。
【数19】
【0069】
ここで、A1Bsm、B1Bsmは1号ボイラ所内中圧蒸気53に特有の定数であり、例えばプラント運転データベース61に蓄積された運転値を利用して回帰分析などの統計的手法により算出することができる。
【0070】
同様に、2号ボイラ所内中圧蒸気54の需要、3号ボイラ所内中圧蒸気55の需要に関しても、以下の特性式(20)および特性式(21)が成り立つものとする。
【数20】
【数21】
【0071】
ここで、A2Bsm、B2Bsmは2号ボイラ所内中圧蒸気54に特有の定数であり、A3Bsm、B3Bsmは3号ボイラ所内中圧蒸気55に特有の定数である。これらの定数は、例えばプラント運転データベース61に蓄積された運転値を利用して回帰分析などの統計的手法により算出することができる。
【0072】
また、上記と同様に、1号ボイラ所内低圧蒸気58の需要、2号ボイラ所内低圧蒸気59の需要、3号ボイラ所内低圧蒸気60の需要に関しても、以下の特性式(22)、特性式(23)、特性式(24)が成り立つものとする。ボイラ所内低圧蒸気は、主にボイラの補機である脱気器において給水を加熱して、沸騰状態によりボイラを腐食する溶存気体を給水から除去するために供給される。
【数22】
【数23】
【数24】
【0073】
ここで、A1Bsl、B1Bslは1号ボイラ所内低圧蒸気58に特有の定数であり、A2Bsl、B2Bslは2号ボイラ所内低圧蒸気59に特有の定数であり、A3Bsl、B3Bslは3号ボイラ所内低圧蒸気60に特有の定数である。これらの定数は、例えばプラント運転データベース61に蓄積された運転値を利用して回帰分析などの統計的手法により算出することができる。
【0074】
また、上記と同様に、1号ボイラ所内電力47の需要、2号ボイラ所内電力48の需要、3号ボイラ所内電力49の需要に関しても、以下の特性式(25)、特性式(26)、特性式(27)が成り立つものとする。ボイラ所内電力は、主にボイラの補機である給水ポンプにおいて給水を送水するための動力源として供給される。
【数25】
【数26】
【数27】
【0075】
ここで、A1Be、B1Beは1号ボイラ所内電力47に特有の定数であり、A2Be、B2Beは2号ボイラ所内電力48に特有の定数であり、A3Be、B3Beは3号ボイラ所内電力49に特有の定数である。これらの定数は、例えばプラント運転データベース61に蓄積された運転値を利用して回帰分析などの統計的手法により算出することができる。
【0076】
なお、特性式71は、ハードディスクドライブなどの磁気記憶装置を含む記憶装置に格納することにより情報を保管できる。また、上記の式(8)〜(27)で示される特性式71は入力手段63から直接入力してもよい。また、特性式71は、表示手段78により表示することができる。
【0077】
(ステップS4)
ステップS4では、入力手段63により、プラントの運用方針情報66、運転制約情報67をそれぞれ入力する。以下に具体例を示す。
【0078】
運用方針情報66について、例えば、購入電力単価が高い場合は、できるだけ購入電力50を減らすように1号タービン21の発電力28を増やし、購入電力が安い場合は、できるだけ購入電力50を増やすように1号タービン21の発電力28を減らすといった運用方針がある。また、1号ボイラ11の高圧蒸気17、2号ボイラ12の高圧蒸気18、3号ボイラ13の高圧蒸気19を同量にするといった運用方針もあり得る。さらに、2号タービン22の発電力34は、常に3号タービン23の発電力40よりも小さくするといった運用方針もあり得る。このように、運用方針情報66としては、状況に応じた運転の切り替え方、設備や各運転ポイントへの負荷のかけ方などに関する情報が入力される。なお、運転の切り替え方については条件分岐式、設備や各運転ポイントへの負荷のかけ方については比率の制約式として入力することができる。
【0079】
運転制約情報67について、各運転値には運転制約としての上下限値があり、その値を超えないように運転許容範囲を考慮して運転を行う必要がある。運転制約情報67は、このような運転値の上下限値に関する情報を含む。運転値をvとすると、各運転値に関しては、以下の式(28)の上下限制約式が成り立つ。
【数28】
【0080】
ここで、VmaxおよびVminはそれぞれ運転値vの上限値および下限値である。
【0081】
なお、運用方針情報66、運転制約情報67は、ハードディスクドライブなどの磁気記憶装置を含む記憶装置に格納することにより情報を保管できる。また、運用方針情報66、運転制約情報67は、表示手段78により表示することができる。
【0082】
(ステップS5)
ステップS5では、相関式決定手段72により、運転値情報64とプラント運転データベース61に蓄積された運転値(第2のプラント運転値)とに基づいて、所定の運転値における他の運転値に対する相関関係を表した相関式73を決定する。以下に具体例を示す。
【0083】
図1に示す自家発プラントでは、2号ボイラ12の燃料15の流量は設定値として与えられ、プラントの運転が変動しても2号ボイラ12の運転は変動しないものとする。2号ボイラ12の燃料15の流量が与えられると、2号ボイラ12の高圧蒸気18の流量は特性式(12)により決まる。また、2号タービン22は2号ボイラ12の運転に合わせて変動する傾向があり、2号タービン22の高圧蒸気25の流量は2号ボイラ12の高圧蒸気18の流量に対して相関関係があるため、以下の相関式(29)として近似できるものとする。
【数29】
【0084】
ただし、R2Tsは、2号ボイラ12の高圧蒸気18に対する2号タービン22の高圧蒸気25の相関関数である。R2Tsは、例えば以下の相関式(30)のように一次関数で表すことができる。本実施形態1では、相関式(30)を採用するものとする。
【数30】
【0085】
ここで、C2Ts、D2Tsは2号ボイラ12の高圧蒸気18に対する2号タービン22の高圧蒸気25の特有の定数であり、例えばプラント運転データベース61に蓄積された運転値を利用して回帰分析などの統計的手法により算出することができる。
【0086】
また、図7(a)に示すように、2号タービン22の中圧蒸気37および低圧蒸気38の流量が2号タービン22の高圧蒸気25の流量に合わせて変動する傾向があり、2号タービン22の中圧蒸気37および低圧蒸気38の流量は2号タービン22の高圧蒸気25の流量に対して相関関係があり、以下の相関式(31)および相関式(32)として近似できるものとする。
【数31】
【数32】
【0087】
ただし、R2Tsmは2号タービン22の高圧蒸気25に対する中圧蒸気37の相関関数であり、R2Tslは2号タービン22の高圧蒸気25に対する低圧蒸気38の相関関数である。R2TsmおよびR2Tslは、例えば、以下の相関式(33)、相関式(34)のように一次関数で表すことができる。本実施形態1では、相関式(33)、相関式(34)を採用するものとする。
【数33】
【数34】
【0088】
ここで、C2Tsm、D2Tsmは2号タービン22の高圧蒸気25に対する中圧蒸気37の特有の定数であり、C2Tsl、D2Tslは2号タービン22の高圧蒸気25に対する低圧蒸気38の特有の定数であり、例えばプラント運転データベース61に蓄積された運転値を利用して回帰分析などの統計的手法により算出することができる。
【0089】
次に、中圧蒸気について、図7(b)に示すように、工場中圧蒸気52の需要の変動に合わせて1号タービン21の中圧蒸気31および3号タービン23の中圧蒸気43が変動する傾向があり、1号タービン21の中圧蒸気31の流量および3号タービン23の中圧蒸気43の流量は、工場中圧蒸気52の需要に対して相関関係があり、以下の相関式(35)、相関式(36)が成り立つものとする。なお、2号タービン22の中圧蒸気37の流量は、上述したように2号タービン22の高圧蒸気25の流量に相関関係があり、工場中圧蒸気52の需要に対して相関関係はないものとする。
【数35】
【数36】
【0090】
ただし、R1Tsmは工場中圧蒸気52に対する1号タービン21の中圧蒸気31の相関関数であり、R3Tsmは工場中圧蒸気52に対する3号タービン23の中圧蒸気43の相関関数である。また、R1TsmおよびR3Tsmは、例えば、以下の相関式(37)、相関式(38)のように一次関数で表すことができる。本実施形態1では、相関式(37)、相関式(38)を採用するものとする。
【数37】
【数38】
【0091】
ここで、C1Tsm、D1Tsmは工場中圧蒸気52に対する1号タービン21の中圧蒸気31の特有の定数であり、C3Tsm、D3Tsmは工場中圧蒸気52に対する3号タービン23の中圧蒸気43の特有の定数であり、例えばプラント運転データベース61に蓄積された運転値を利用して回帰分析などの統計的手法により算出することができる。
【0092】
同様に、低圧蒸気について、図7(c)に示すように、工場低圧蒸気57の需要の変動に合わせて1号タービン21の低圧蒸気32および3号タービン23の低圧蒸気44が変動する傾向があり、1号タービン21の低圧蒸気32の流量および3号タービン23の低圧蒸気44の流量は工場低圧蒸気57の需要に対して相関関係があり、相関式(39)、相関式(40)として近似できるものとする。なお、2号タービン22の低圧蒸気38の流量は、上述したように2号タービン22の高圧蒸気25の流量に相関関係があり、工場低圧蒸気57の需要に対して相関関係はないものとする。
【数39】
【数40】
【0093】
ただし、R1Tslは工場低圧蒸気57に対する1号タービン21の低圧蒸気32の相関関数であり、R3Tslは工場低圧蒸気57に対する3号タービン23の低圧蒸気44の相関関数である。また、R1TslおよびR3Tslは、例えば、以下の相関式(41)、相関式(42)のように一次関数で表すことができる。本実施形態1では、相関式(41)、相関式(42)を採用するものとする。
【数41】
【数42】
【0094】
ここで、C1Tsl、D1Tslは工場低圧蒸気57に対する1号タービン21の低圧蒸気32の特有の定数であり、C3Tsl、D3Tslは工場低圧蒸気57に対する3号タービン23の低圧蒸気44の特有の定数であり、例えばプラント運転データベース61に蓄積された運転値を利用して回帰分析などの統計的手法により算出することができる。
【0095】
次に、電力について、本実施形態1では、ステップS4にて入力した運用方針情報66に含まれる、購入電力単価が高い場合は、できるだけ購入電力50を減らすように1号タービン21の発電力28を増やし、購入電力が安い場合は、できるだけ購入電力50を増やすように1号タービン21の発電力28を減らすという運用方針に従うとする。すなわち、購入電力単価が発電単価に比べて高い場合は、購入電力50の電力量は下限値をとるものとし、そのときの1号タービン21の発電力28の電力量は工場電力46の需要に対して相関関係があり、以下の相関式(43)が成り立つものとする。一方、購入電力単価が発電単価に比べて安い場合は、1号タービン21の発電力28の電力量は取り得る値の範囲で下限値をとるものとし、そのときの購入電力50の電力量は工場電力46の需要に対して相関関係があり、以下の相関式(44)として近似できるものとする。
【数43】
【数44】
【0096】
ただし、R1Teは工場電力46に対する1号タービン21の発電力28の相関関数であり、Rebuyは工場電力46に対する購入電力50の相関関数である。また、R1TeおよびRebuyは、例えば、以下の相関式(45)、相関式(46)のように一次関数で表すことができる。本実施形態1では、相関式(45)、相関式(46)を採用するものとする。
【数45】
【数46】
【0097】
ここで、C1Te、D1Teは工場電力46に対する1号タービン21の発電力28の特有の定数であり、Cebuy、Debuyは工場電力46に対する購入電力50の特有の定数であり、例えばプラント運転データベース61に蓄積された運転値を利用して回帰分析などの統計的手法により算出することができる。
【0098】
また、1号ボイラ11の高圧蒸気17は、1号タービン21の高圧蒸気24の流量の変動に合わせて変動する傾向があり、1号ボイラ11の高圧蒸気17の流量は1号タービン21の高圧蒸気24の流量に対して相関関係があり、以下の相関式(47)として近似できるものとする。
【数47】
【0099】
ただし、R1Bsは、1号タービン21の高圧蒸気24に対する1号ボイラ11の高圧蒸気17の相関関数である。また、R1Bsは、例えば、以下の相関式(48)のように一次関数で表すことができる。本実施形態1では、相関式(48)を採用する。
【数48】
【0100】
ここで、C1Bs、D1Bsは1号タービン21の高圧蒸気24に対する1号ボイラ11の高圧蒸気17の特有の定数であり、例えばプラント運転データベース61に蓄積された運転値を利用して回帰分析などの統計的手法により算出することができる。
【0101】
なお、相関式73は、ハードディスクドライブなどの磁気記憶装置を含む記憶装置に格納することにより情報を保管できる。また、上記の式(29)〜(48)で示す相関式73は入力手段63から直接入力してもよい。また、相関式73は、表示手段78により表示することができる。
【0102】
(ステップS6)
ステップS6では、運転値分類決定手段74により、運転値情報64、運用方針情報66、マスバランス式69、特性式71、相関式73に基づいて、運転値の分類に関する情報を含む運転値分類情報75を決定する。以下に具体例を示す。
【0103】
本実施形態1では、運転値を、設定値、相関式依存値、特性式依存値、マスバランス値の4種類に分類する。設定値とは、マニュアル運転をする設備の運転値など、プラントの環境条件に係わらず設定される値である。本実施形態1では、工場需要も設定値に分類しておく。また、相関式依存値とは、相関式から決まる値である。また、特性式依存値とは、特性式から決まる値である。また、マスバランス値とは、マスバランス式のバランスをとる値である。
【0104】
運転値分類では、マスバランス式に関して、マスバランス式を構成する運転値のうち少なくとも1つはマスバランス値となるようにする。
【0105】
2号ボイラ12の燃料15の流量はマニュアル運転による設定値であり、2号ボイラ12の高圧蒸気18の流量は特性式(12)から決まるので特性式依存値である。2号タービン22の高圧蒸気25の流量は相関式(30)から決まるので相関式依存値である。2号タービン22の中圧蒸気37、低圧蒸気38の流量は相関式(33)、相関式(34)から決まるので相関式依存値である。従って、マスバランス式(6)について、2号タービン22の高圧蒸気25、中圧蒸気37、低圧蒸気38の流量はそれぞれ相関式依存値であるため、2号タービン22の復水36の流量をマスバランス式(6)のバランスをとるためのマスバランス値とする。
【0106】
次に、中圧蒸気について、工場中圧蒸気52の需要は設定値、1号ボイラ所内中圧蒸気53の需要は特性式(19)から決まるので特性式依存値、2号ボイラ所内中圧蒸気54の需要は特性式(20)から決まるので特性式依存値、3号ボイラ所内中圧蒸気55の需要は特性式(21)から決まるので特性式依存値、1号タービン21の中圧蒸気31の流量は相関式(37)から決まるので相関式依存値、2号タービン22の中圧蒸気37の流量は相関式(33)から決まるので相関式依存値、3号タービン23の中圧蒸気43の流量は相関式(38)から決まるので相関式依存値である。従って、中圧蒸気ヘッダ51におけるマスバランス式(3)のバランスをとるマスバランス値が存在せず、バランスが崩れてしまう恐れがある。そこで、相関式依存値のうち、最も相関関係の弱いものを相関式依存値からマスバランス値へと変更する。本実施形態1では、3号タービン23の中圧蒸気43の流量が最も相関関係が弱いものとして、3号タービン23の中圧蒸気43の流量をマスバランス式(3)のバランスをとるためのマスバランス値とする。
【0107】
次に、低圧蒸気について、工場低圧蒸気57の需要は設定値、1号ボイラ所内低圧蒸気58の需要は特性式(22)から決まるので特性式依存値、2号ボイラ所内低圧蒸気59の需要は特性式(23)から決まるので特性式依存値、3号ボイラ所内低圧蒸気60の需要は特性式(24)から決まるので特性式依存値、1号タービン21の低圧蒸気32の流量は相関式(41)から決まるので相関式依存値、2号タービン22の低圧蒸気38の流量は相関式(34)から決まるので相関式依存値、3号タービン23の低圧蒸気44の流量は相関式(42)から決まるので相関式依存値である。従って、低圧蒸気ヘッダ56におけるマスバランス式(4)のバランスをとるマスバランス値が存在せず、バランスが崩れてしまう恐れがある。そこで、相関式依存値のうち、最も相関関係の弱いものを相関式依存値からマスバランス値へと変更する。本実施形態1では、3号タービン23の低圧蒸気44の流量が最も相関関係が弱いものとして、3号タービン23の低圧蒸気44の流量をマスバランス式(4)のバランスをとるためのマスバランス値とする。
【0108】
次に、電力について、工場電力46の需要は設定値、1号ボイラ所内電力47の需要は特性式(25)から決まるので特性式依存値、2号ボイラ所内電力48の需要は特性式(26)から決まるので特性式依存値、3号ボイラ所内電力49の需要は特性式(27)から決まるので特性式依存値、2号タービン22の発電力34の電力量は特性式(16)から決まるので特性式依存値、購入電力単価が発電単価に比べて高い場合において、1号タービン21の発電力28の電力量は相関式(45)から決まるので相関式依存値、そのときの購入電力50の電力量は下限値となるので設定値となる。一方、購入電力単価が発電単価に比べて安い場合において、1号タービン21の発電力28の電力量は取り得る値の範囲で下限値となるので設定値となり、そのときの購入電力50の電力量は相関式(46)から決まるので相関式依存値となる。マスバランス式(1)に関して、3号タービン23の発電力40の電力量以外は、設定値、特性式依存値、相関式依存値であるので、3号タービン23の発電力40の電力量をマスバランス式(1)のバランスをとるためのマスバランス値とする。
【0109】
次に、1号タービン21について、1号タービン21の中圧蒸気31、低圧蒸気32の流量は相関式(37)、相関式(41)から決まり、1号タービン21の発電力28の電力量は相関式(45)から決まるかあるいは設定値であるので、特性式(15)から1号タービン21の高圧蒸気24の流量が決まる。従って、1号タービン21の高圧蒸気24の流量は特性式依存値である。マスバランス式(5)に関して、1号タービン21の復水30の流量以外は、特性式依存値、相関式依存値であるので、1号タービン21の復水30の流量をマスバランス式(5)のバランスをとるためのマスバランス値とする。
【0110】
次に、3号タービン23について、3号タービン23の中圧蒸気43および低圧蒸気44の流量はそれぞれマスバランス式(3)、マスバランス式(4)から決まり、3号タービン23の発電力40の電力量はマスバランス式(1)から決まるので、3号タービン23の高圧蒸気26の流量は特性式(17)から決まる。従って、3号タービン23の高圧蒸気26の流量は特性式依存値である。マスバランス式(7)に関して、3号タービン23の復水42の流量以外は、特性式依存値、他のマスバランス式から決まる値であるので、3号タービン23の復水42の流量をマスバランス式(7)のバランスをとるためのマスバランス値とする。
【0111】
次に、1号ボイラ11について、1号ボイラ11の高圧蒸気17の流量は相関式(48)から決まるので、特性式(9)から1号ボイラ11の燃料14の流量が決まる。従って、1号ボイラ11の燃料14の流量は特性式依存値である。マスバランス式(2)に関して、3号ボイラ13の高圧蒸気19の流量以外は、特性式依存値、相関式依存値であるので、3号ボイラ13の高圧蒸気19の流量をマスバランス式(2)のバランスをとるためのマスバランス値とする。
【0112】
次に、3号ボイラ13について、3号ボイラ13の高圧蒸気19の流量はマスバランス式(2)から決まるので、特性式(13)から3号ボイラ13の燃料16の流量が決まる。従って、3号ボイラ13の燃料16の流量は特性式依存値である。
【0113】
なお、分類した運転値の情報は、運転値分類情報75として、ハードディスクドライブなどの磁気記憶装置を含む記憶装置に格納することにより情報を保管でき、例えば図8に示すような表形式で保管することが可能である。また、運転値分類情報75は、入力手段63から直接入力してもよい。また、運転値分類情報75は、表示手段78により表示することができる。
【0114】
上記では、各マスバランス式において1つはマスバランス値となるように運転値を分類したが、バランスをとる運転値が2つ以上あり、それらがある比率を保って変動する場合には、例えばそれらをまとめて1つのマスバランス値とし、マスバランス値が決定した後でその比率に基づいて按分するという方法もある。按分の比率については、プラント運転データベース61に蓄積された運転値を利用して算出することが可能である。
【0115】
また、マスバランス値が運転制約情報67に含まれる上限値あるいは下限値に達する可能性がある場合は、その運転値の次にマスバランス値となる運転値の候補を予め決めておくことによってバランスの不平衡を回避することができる。例えば、マスバランス式(3)において3号タービン23の中圧蒸気43の流量が上限あるいは下限に引っ掛かる(達する)場合には、3号タービン23の中圧蒸気43の流量を上限値あるいは下限値の設定値に変更し、1号タービン21の中圧蒸気31の流量をマスバランス値に変更してもよい。
【0116】
(ステップS7)
ステップS7では、プラント運転推定モデル構築手段76により、運転値情報64、運用方針情報66、運転制約情報67、マスバランス式69、特性式71、相関式73、運転値分類情報75に基づき、プラント運転推定モデル77を構築する。以下に具体例を示す。
【0117】
図9および図10は、本発明の実施形態1によるプラント運転推定モデル77の一例であるデータフローモデルを示す図である。運転値情報64に含まれる運転値について、運転値分類情報75に含まれる設定値、相関式依存値、特性式依存値、マスバランス値と、マスバランス式69、特性式71、相関式73、運用方針情報66、運転制約情報67に基づいて、図9および図10に示すような各データの関係性を明確にしたデータフローモデルを作成する。図9および図10に示されるデータフローモデルに設定値を入力すると、各関係式に基づいて次々と値が決定していく。また、値が決定していく過程で、ある運転値が運転制約情報67に含まれる上下限制約式を満たせない場合を想定し、その運転値を上限値あるいは下限値の設定値に変更したデータフローモデルを用意してもよい。また、データフローモデルに限らず、プログラミングで数式を記述することにより、実行形式を作成することも可能である。
【0118】
本実施形態1では、上記のように作成されたデータフローモデルや実行形式をプラント運転推定モデル77とする。なお、プラント運転推定モデル77は、ハードディスクドライブなどの磁気記憶装置を含む記憶装置に格納することにより情報を保管できる。また、プラント運転推定モデル77は、表示手段78により表示することができる。
【0119】
以下では、プラント運転推定モデル77を用いた評価の動作の概要について図3および図11を用いて説明する。
【0120】
(ステップS8)
ステップS8では、プラント運転推定手段80により、プラント運転データベース79に蓄積された工場需要、単価および気象条件を含む環境条件(第1のプラント運転値)をプラント運転推定モデル77に適用して、省エネ対策前のプラント運転を推定する。以下に具体例を示す。
【0121】
プラント運転推定モデル77に、工場需要、単価などの環境条件と、マニュアル運転をする設備の設定値とを入力すると、各関係式に基づいて次々と値が決定し、プラント運転に係わる運転値一式が出力される。
【0122】
例えば、パーソナルコンピュータなどを含む一般的なコンピュータにおいてキーボードを利用してプラント運転を推定する日時を入力し、その日時をプラント運転データベース79に送信し、プラント運転データベース79がプラント運転推定手段80に対して該当する日時のデータを返信することにより、プラント運転推定モデル77に入力する設定値として工場電力46の需要、工場中圧蒸気52の需要、工場低圧蒸気57の需要、購入電力単価、発電単価、2号ボイラ12の燃料15の流量を取得することが可能となる。なお、発電単価は、燃料単価、ボイラ入出力特性、タービン入出力特性などに基づいて算出することが可能である。
【0123】
(ステップS9)
ステップS9では、評価手段81により、プラント運転データベース79に蓄積された省エネ対策後の実際のプラント運転と、プラント運転推定手段80で推定した省エネ対策前のプラント運転とを比較し、省エネ対策前後における運転改善効果および省エネ効果を評価する。以下に具体例を示す。
【0124】
省エネ対策後の実際のプラント運転(以下、実際運転とも称する)と、推定した省エネ対策前のプラント運転(以下、推定運転とも称する)とを比較し、各運転ポイントの差を算出する。図12は、本発明の実施形態1による実際運転と推定運転との比較の一例を示す図である。図12では、発電単価が購入電力単価よりも安い時間において、実際運転、推定運転、実際運転と推定運転との差を示している。
【0125】
以下、省エネ対策を実施したことによって、どのようにして運転が改善され、コストが削減されたかについて詳細に検証する。
【0126】
まず、中圧蒸気について、1号タービン21の中圧蒸気31、2号タービン22の中圧蒸気37、3号タービン23の中圧蒸気43の流量が、それぞれ実際運転で30t/h、12.0992t/h、22.681t/hであり、推定運転で25t/h、10t/h、29.9182t/hであったとする。このとき、1号タービン21、2号タービン22、3号タービン23の高圧蒸気から中圧蒸気までの蒸気単位流量あたりの発電力は、特性式(15)、特性式(16)、特性式(17)に基づき、それぞれA1T+B1T、A2T+B2T、A3T+B3Tと計算することができる。
【0127】
ここで、A1T=300kWh/t、B1T=−180kWh/h、A2T=290kWh/t、B2T=−190kWh/h、A3T=310kWh/t、B3T=−200kWh/tである場合、この蒸気振替による発電力増減は、
【0128】
【数49】
【0129】
と算出され、13.8kWの発電力増加となる。
【0130】
また、中圧蒸気の増減は、
【0131】
【数50】
【0132】
と算出される。この中圧蒸気の減少は、0.138t/hだけボイラ所内中圧蒸気の需要が減少していることに起因する。
【0133】
次に、低圧蒸気について、1号タービン21の低圧蒸気32、2号タービン22の低圧蒸気38、3号タービン23の低圧蒸気44の流量がそれぞれ実際運転で60t/h、17.9008t/h、31.6596t/hであり、推定運転で40t/h、20t/h、49.8364t/hであったとする。このとき、1号タービン21、2号タービン22、3号タービン23の高圧蒸気から低圧蒸気までの蒸気単位流量あたりの発電力は、特性式(15)、特性式(16)、特性式(17)に基づき、それぞれA1T+C1T、A2T+C2T、A3T+C3Tと計算することができる。
【0134】
ここで、C1T=−140kWh/h、C2T=−160kWh/h、C3T=−170kWh/tである場合、この蒸気振替による発電力増減(省エネ対策による発電力増減)は、
【0135】
【数51】
【0136】
と算出され、382.4kWの発電力増加となる。
【0137】
また、低圧蒸気の増減は、
【0138】
【数52】
【0139】
と算出される。この低圧蒸気の減少は、0.2759t/hだけボイラ所内低圧蒸気の需要が減少していることに起因する。
【0140】
次に、復水について、1号タービン21の復水30、2号タービン22の復水36、3号タービン23の復水42の流量が、それぞれ実際運転で10t/h、10t/h、41.2637t/hであり、推定運転で20.3333t/h、20t/h、23.2759t/hであったとする。このとき、1号タービン21、2号タービン22、3号タービン23の高圧蒸気から復水までの蒸気単位流量あたりの発電力は、特性式(15)、特性式(16)、特性式(17)に基づき、それぞれA1T、A2T、A3Tと計算することができる。
【0141】
従って、この復水振替による発電力増減は、
【0142】
【数53】
【0143】
と算出され、423.8kWの発電力減少となる。
【0144】
また、復水の増減は、
【0145】
【数54】
【0146】
と算出される。この復水の減少は、ボイラ所内電力の需要が減少していることと、蒸気振替および復水振替により発電力が増加し、復水による発電を減少できたことに起因する。
【0147】
また、上記の式(49)、式(51)、式(53)より、発電量増減の合計は、
【0148】
【数55】
【0149】
と算出することができる。ここで、購入電力50は、実際運転も推定運転も0kWであるため、この発電量の減少は、27.6kWだけボイラ所内電力の需要が減少していることに起因する。
【0150】
また、式(50)、式(52)、式(54)より、中圧蒸気、低圧蒸気、復水がそれぞれ増減しているので、その供給源である高圧蒸気の増減は、
【0151】
【数56】
【0152】
と算出することができ、2.7594t/hの高圧蒸気減少となる。この高圧蒸気の減少分だけボイラ全体の負荷が下がり、燃料が減少する。
【0153】
次に、高圧蒸気について、1号ボイラ11の高圧蒸気17、2号ボイラ12の高圧蒸気18、3号ボイラ13の高圧蒸気19の流量が、それぞれ実際運転で120t/h、50t/h、65.6044t/hであり、推定運転で94.8148t/h、50t/h、93.549t/hであったとする。このとき、1号ボイラ11、2号ボイラ12、3号ボイラ13の高圧蒸気単位流量あたりの燃料流量は、特性式(10)、特性式(12)、特性式(13)に基づき、それぞれ1/A1B、1/A2B、1/A3Bと計算することができる。
【0154】
ここで、A1B=9.5t/km3、A2B=8.5t/km3、A3B=9.0t/km3である場合、この蒸気振替による燃料増減は、
【0155】
【数57】
【0156】
と算出され、0.4539km3/hの燃料減少となる。
【0157】
また、燃料単価が10000円/km3である場合において、コスト削減効果は、
【0158】
【数58】
【0159】
となる。
【0160】
上記より、各運転ポイントの運転改善によりコストを削減できることがわかる。
【0161】
以下に、各運転ポイントにおけるコスト削減効果を算出する方法について説明する。コスト削減効果を各運転ポイントに配分するのは容易ではなく、その算出方法はさまざま考えられている。ここでは、コスト削減効果を配分する方法の一つについて説明する。
【0162】
まず、ボイラの高圧蒸気の蒸気振替によるコスト削減効果を算出する。高圧蒸気について、推定運転では、1号ボイラ11の高圧蒸気17、2号ボイラ12の高圧蒸気18、3号ボイラ13の高圧蒸気19の流量の合計は、
【0163】
【数59】
【0164】
であるが、実際運転では、
【0165】
【数60】
【0166】
である。そして、推定運転での高圧蒸気の流量の合計を、実際運転の比率で振り分けたと仮定すると、1号ボイラ11の高圧蒸気17、2号ボイラ12の高圧蒸気18、3号ボイラ13の高圧蒸気19の流量はそれぞれ、
【0167】
【数61】
【0168】
【数62】
【0169】
【数63】
【0170】
と算出することができる。算出された流量を改善運転と呼び、推定運転と改善運転との差から、蒸気振替による燃料増減は、
【0171】
【数64】
【0172】
となる。ここで、燃料単価が10000円/km3である場合において、ボイラの高圧蒸気の蒸気振替によるコスト削減効果は、
【0173】
【数65】
【0174】
と算出される。本来のコスト削減効果は4539円/hであり、残りの
【0175】
【数66】
【0176】
と算出される3022円/hについては、発電量増減による効果であるとして、以下に示すようにタービンの蒸気振替によるコスト削減効果を算出する。
【0177】
中圧蒸気について、推定運転では、1号タービン21の中圧蒸気31、2号タービン22の中圧蒸気37、3号タービン23の中圧蒸気43の流量の合計は、
【0178】
【数67】
【0179】
であるが、実際運転では、
【0180】
【数68】
【0181】
である。そして、推定運転での中圧蒸気の流量の合計を、実際運転の比率で振り分けたと仮定すると、1号タービン21の中圧蒸気31、2号タービン22の中圧蒸気37、3号タービン23の中圧蒸気43の流量はそれぞれ、
【0182】
【数69】
【0183】
【数70】
【0184】
【数71】
【0185】
と算出することができる。算出された流量を改善運転と呼び、推定運転と改善運転との差から、蒸気振替による発電力増減は、
【0186】
【数72】
【0187】
と算出することができ、29.4kWの発電力増加となる。
【0188】
同様に、低圧蒸気について、推定運転では、1号タービン21の低圧蒸気32、2号タービン22の低圧蒸気38、3号タービン23の低圧蒸気44の流量の合計は、
【0189】
【数73】
【0190】
であるが、実際運転では、
【0191】
【数74】
【0192】
である。そして、推定運転での低圧蒸気の流量の合計を、実際運転の比率で振り分けたと仮定すると、1号タービン21の低圧蒸気32、2号タービン22の低圧蒸気38、3号タービン23の低圧蒸気44の流量はそれぞれ、
【0193】
【数75】
【0194】
【数76】
【0195】
【数77】
【0196】
と算出することができる。算出された流量を改善運転と呼び、推定運転と改善運転との差から、蒸気振替による発電力増減は、
【0197】
【数78】
【0198】
と算出することができ、423.6kWの発電力増加となる。
【0199】
同様に、復水に関して、推定運転では、1号タービン21の復水30、2号タービン22の復水36、3号タービン23の復水42の流量の合計は、
【0200】
【数79】
【0201】
であるが、実際運転では、
【0202】
【数80】
【0203】
である。そして、推定運転での復水の流量の合計を、実際運転の比率で振り分けたと仮定すると、1号タービン21の復水30、2号タービン22の復水36、3号タービン23の復水42の流量はそれぞれ、
【0204】
【数81】
【0205】
【数82】
【0206】
【数83】
【0207】
と算出することができる。算出した流量を改善運転と呼び、推定運転と改善運転との差から、復水振替による発電力増減は、
【0208】
【数84】
【0209】
と算出することができ、291.9kWの発電力増加となる。
【0210】
上記より、発電量増減は、中圧蒸気振替により29.4kW、低圧蒸気振替により423.6kW、復水振替により291.9kWであり、発電量増減の合計は、
【0211】
【数85】
【0212】
と算出することができ、744.9kWの発電量増加となる。この発電量増減の比率でタービン蒸気振替によるコスト削減効果3022円/hを配分する。すなわち、中圧蒸気振替、低圧蒸気振替、復水振替によるコスト削減効果はそれぞれ、
【0213】
【数86】
【0214】
【数87】
【0215】
【数88】
【0216】
と算出することができる。
【0217】
以上のことから、コスト削減効果の配分により、各運転ポイントの運転改善効果からコスト削減効果を把握することが可能となる。運転改善効果から計算したコスト削減効果の内訳は、例えば図13に示すようなグラフ形式で表示手段78により表示することが可能である。このように、省エネ対策後の期間において省エネ対策を実施しなかった場合のプラント運転を推定し、推定したプラント運転と省エネ対策後の実際のプラント運転とを比較して省エネ効果を評価することができる。
【0218】
なお、本実施形態1では、購入電力50が変化しない例について説明したが、購入電力50が変化する場合は、購入電力50の変化によるコスト変動を式(58)に追加し、購入電力50の電力量の変化を式(85)に追加することによって、購入電力50の増減によるコスト削減効果も算出することが可能である。
【0219】
また、本実施形態1では、発明の理解を容易にするために、自家発プラントとして図1に示すような典型的な例を用いて説明したが、これに限定されるものではなく、例えばボイラや蒸気タービン以外にガスタービンやガスエンジンやディーゼルエンジンなどを用いる場合、燃料電池や太陽光発電システムなどを用いる場合、電力会社以外の電力供給事業者から電力を購入する場合、蒸気を外部から購入することができる場合など、あらゆるエネルギー供給システムに対して本発明のプラント運転評価装置を適用することができる。
【0220】
また、本実施形態1では、エネルギーを消費する施設として工場を想定したが、これに限定されるものではなく、例えばビル、病院、水処理プラントなど、エネルギーを消費するあらゆる施設に本発明のプラント運転評価装置を適用することができる。具体的には、本実施形態1における工場のエネルギー需要を、ビルや病院におけるエレベーター、照明、空調、給湯などに必要となる電力、熱などのエネルギー需要、水処理プラントにおける揚水ポンプや空気を送り込むためのブロア、消化槽の加温などに必要となる電力、熱などのエネルギー需要などに置き換えることにより、本発明のプラント運転評価装置を適用することができる。
【0221】
また、本実施形態1では、ある瞬時の運転データに関して、実際運転と推定運転とを比較、評価したが、これに限定されるものではなく、例えば所定の時間間隔で取得した複数の運転データに関して、実際運転と推定運転の運転値およびコスト削減効果を時系列グラフとして比較、評価することができる。
【0222】
また、本実施形態1では、省エネ効果をコスト削減効果として説明したが、これに限定されるものではなく、例えばエネルギー消費量削減効果、二酸化炭素などの温室効果ガス排出量削減効果などを省エネ効果とすることもできる。
【0223】
〈実施形態2〉
図14は、本発明の実施形態2によるプラント運転推定モデル77を用いた、評価手段81とデータとの関係を模式的に示す図である。図14に示すように、本実施形態2では、プラント運転データベース79に格納される運転値(第1のプラント運転値)に基づいて特性式を更新する特性式更新手段82を備えることを特徴としている。その他の構成および動作は、実施形態1と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0224】
特性式更新手段82は、プラント運転推定モデル77の構築に必要な要素の1つである特性式71(図2参照)について、プラント運転データベース79に蓄積された運転値(第1のプラント運転値)を利用して、省エネ対策後のプラント運転推定モデル77を適用する期間におけるプラントの各設備の入出力特性式(設備入出力特性)と各設備の所内需要特性式とを含む特性式に更新する。なお、特性式更新手段82は、例えばパーソナルコンピュータなどを含む一般的なコンピュータを利用したデータ処理や演算により実現することができる。
【0225】
具体的に、特性式更新手段82では、プラントの設備特性が経年劣化や季節により若干変化することを考慮して、省エネ対策後の実際の運転(実際運転)とプラント運転推定モデルによる省エネ対策前の運転(推定運転)との運転の環境条件の誤差を小さくするために、プラント運転データベース79に蓄積された運転値のうち、実際運転と時間的にできるだけ近い運転値を利用して、図4のステップS3と同様の手順で特性式決定手段70にて特性式71を決定し、決定した特性式71を新たな特性式として更新する。このような動作を行う特性式更新手段82を、図11のステップS8の前に実行することによって、特性式71を更新することが可能となる。
【0226】
以上のことから、特性式更新手段82を備えることによって、省エネ対策後の実際の運転(実際運転)とプラント運転推定モデルによる省エネ対策前の運転(推定運転)との運転の環境条件の誤差を小さくすることができる。
【0227】
〈実施形態3〉
本発明の実施形態3では、プラント運転データベース79に、省エネ対策前のプラント運転に関する運転値(第3のプラント運転値)を格納することを特徴としている。すなわち、実施形態1,2においてプラント運転データベース79に格納されるプラントの運転値(第1のプラント運転値)に代えて、省エネ対策前のプラント運転に関する運転値(第3のプラント運転値)を適用することを特徴としている。その他の構成および動作は、実施形態1,2と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0228】
プラント運転推定モデル77を構築した後、省エネ対策を実施せず、プラント運転データベース79には省エネ対策を実施していない運転値が蓄積されている場合において、評価手段81では、比較の対象となる実際のプラント運転(実際運転)と推定したプラント運転(推定運転)とは、それぞれ省エネ対策を実施していない運転同士となる。従って、評価手段81にて評価したプラント運転の差に基づいて、プラント運転推定モデル77の推定精度を検証することができる。
【0229】
以上のことから、評価手段81にて評価の対象となるプラント運転は、いずれも省エネ対策を実施していない運転であるため、評価手段81の評価結果によりプラント運転推定モデル77の推定精度を検証することができる。
【0230】
〈実施形態4〉
本発明の実施形態4では、プラント運転の評価は、インターネットなどの通信回線を経由して行われることを特徴としている。その他の構成および動作は、実施形態1,2と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0231】
省エネ対策を実施した後の期間におけるデータは、インターネットなどの通信回線を経由してプラント運転データベース79に保存される。そして、評価手段81では、プラント運転データベース79に蓄積された省エネ対策後の実際のプラント運転と、プラント運転推定手段80にて推定した省エネ対策前のプラント運転とを比較し、省エネ対策前後における運転改善効果および省エネ効果を評価する。このように、インターネットなどの通信回線を経由してプラント運転を評価するサービスを提供することができる。
【0232】
以上のことから、インターネットなどの通信回線を経由してプラント運転を評価するサービスを提供することにより、省エネ対策後にリアルタイムで運転改善効果およびコスト削減効果に関する情報を提供することが可能となる。
【0233】
〈実施形態5〉
本発明の実施形態5では、プラント運転データベース79に、省エネ対策を行ったと仮定したときに想定されるプラント運転に関する運転値(第4のプラント運転値)を格納することを特徴としている。すなわち、実施形態1、2においてプラント運転データベース79に格納されるプラントの運転値(第1のプラント運転値)に代えて、省エネ対策を行ったと仮定したときに想定されるプラント運転に関する運転値(第4のプラント運転値)を適用することを特徴としている。その他の構成および動作は、実施形態1,2と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0234】
プラント運転推定モデル77を構築した後、当該プラント運転推定モデル77に対してプラント運転データベース79に格納されている省エネ対策を行ったと仮定したときに想定されるプラント運転に関する運転値を適用することによって、省エネ対策前に省エネ対策を実施する場合と実施しない場合とを比較することができる。そして、比較の結果に基づいて、投資対効果等を評価して省エネ対策を実施するか否かを検討することが可能となる。このように、省エネ対策を計画する段階で、省エネ対策を実施した場合におけるプラントの運転改善効果およびコスト削減効果を予測するサービスを提供することができる。
【0235】
以上のことから、プラント運転推定モデル77を構築した後、省エネ対策前に運転改善効果およびコスト削減効果を予測するサービスを提供することにより、省エネ対策を実施する場合と実施しない場合とを比較することができ、投資対効果等を評価して省エネ対策を実施するか否かを検討することが可能となる。
【符号の説明】
【0236】
11 1号ボイラ、12 2号ボイラ、13 3号ボイラ、14,15,16 燃料、17,18,19 高圧蒸気、20 高圧蒸気ヘッダ、21 1号タービン、22 2号タービン、23 3号タービン、24,25,26 高圧蒸気、27 発電機、28 発電力、29 復水器、30 復水、31 中圧蒸気、32 低圧蒸気、33 発電機、34 発電力、35 復水器、36 復水、37 中圧蒸気、38 低圧蒸気、39 発電機、40 発電力、41 復水器、42 復水、43 中圧蒸気、44 低圧蒸気、45 電力線、46 工場電力、47 1号ボイラ所内電力、48 2号ボイラ所内電力、49 3号ボイラ所内電力、50 購入電力、51 中圧蒸気ヘッダ、52 工場中圧蒸気、53 1号ボイラ所内中圧蒸気、54 2号ボイラ所内中圧蒸気、55 3号ボイラ所内中圧蒸気、56 低圧蒸気ヘッダ、57 工場低圧蒸気、58 1号ボイラ所内低圧蒸気、59 2号ボイラ所内低圧蒸気、60 3号ボイラ所内低圧蒸気、61 プラント運転データベース、62 自家発プラント、63 入力手段、64 運転値情報、65 接続情報、66 運用方針情報、67 運転制約情報、68 マスバランス式決定手段、69 マスバランス式、70 特性式決定手段、71 特性式、72 相関式決定手段、73 相関式、74 運転値分類決定手段、75 運転値分類情報、76 プラント運転推定モデル構築手段、77 プラント運転推定モデル、78 表示手段、79 プラント運転データベース、80 プラント運転推定手段、81 評価手段、82 特性式更新手段。
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラント運転装置に対して省エネ対策を実施した場合における省エネ効果を評価するプラント運転評価装置に関し、特に、省エネ対策後の期間において省エネ対策前のプラント運転を推定し、当該推定した省エネ対策前の運転と省エネ対策後の実際の運転とを比較して省エネ効果を評価するプラント運転評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のプラント運転評価装置では、省エネ対策前の期間において実プラント計算機モデルを同定し、当該実プラント計算機モデルの最適運用による原単価と実績の原単価との比を最適運転率として算出し、省エネ対策後の期間において実プラント計算機モデルの最適運用による原単価を最適運転率で補正して省エネ対策を実施しなかった場合の原単価を推定し、省エネ対策前後におけるエネルギー変動費を推定していた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、省エネルギー手段非適用時の実績データを用いてエネルギーコストモデルを生成し、生成したエネルギーコストモデルと評価対象の省エネルギー手段適用時の実績データとから省エネルギー手段非適用時のエネルギーコストを計算し、評価対象の省エネルギー手段適用時の実績データから省エネルギー手段適用時のエネルギーコストを計算し、省エネルギー手段の非適用時と適用時とのエネルギーコストを比較して省エネルギー効果を評価していた(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−133596号公報
【特許文献2】特開2005−141403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1および特許文献2では、省エネ対策後の期間において省エネ対策を実施しなかった場合のエネルギーコスト(以下、単にコストとも称する)を推定することができるが、プラントの各設備の運転を推定することができないため、各設備の運転改善などに起因する省エネ対策によるコスト削減効果がどの設備の運転改善によるものであるのかが分からないという問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、省エネ対策後の期間において省エネ対策を実施しなかった場合のプラント運転を推定し、推定したプラント運転と省エネ対策後の実際のプラント運転とを比較して省エネ効果を評価するプラント運転評価装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明によるプラント運転評価装置は、省エネ対策後のプラント運転に関する第1のプラント運転値を格納するプラント運転データベースと、省エネ対策前のプラント運転に関する第2のプラント運転値に基づいて作成されたプラント運転推定モデルと、省エネ対策後の所定の期間において、第1のプラント運転値をプラント運転推定モデルに適用して省エネ対策前のプラント運転を推定するプラント運転推定手段と、プラント運転推定手段にて推定された省エネ対策前のプラント運転と、プラント運転データベースに格納された第1のプラント運転値とを比較してプラント運転を評価する評価手段とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、省エネ対策後のプラント運転に関する第1のプラント運転値を格納するプラント運転データベースと、省エネ対策前のプラント運転に関する第2のプラント運転値に基づいて作成されたプラント運転推定モデルと、省エネ対策後の所定の期間において、第1のプラント運転値をプラント運転推定モデルに適用して省エネ対策前のプラント運転を推定するプラント運転推定手段と、プラント運転推定手段にて推定された省エネ対策前のプラント運転と、プラント運転データベースに格納された第1のプラント運転値とを比較してプラント運転を評価する評価手段とを備えるため、省エネ対策後の期間において省エネ対策を実施しなかった場合のプラント運転を推定し、推定したプラント運転と省エネ対策後の実際のプラント運転とを比較して省エネ効果を評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態1による自家発プラントを有する工場の例を模式的に示す図である。
【図2】本発明の実施形態1によるプラント運転推定モデル構築手段とデータとの関係を模式的に示す構成図である。
【図3】本発明の実施形態1によるプラント運転推定モデルを用いた、評価手段とデータとの関係を模式的に示す図である。
【図4】本発明の実施形態1によるプラント運転推定モデルの構築の動作を示すフロー図である。
【図5】本発明の実施形態1による運転値情報の表示の一例を示す図である。
【図6】本発明の実施形態1による接続情報の表示の一例を示す図である。
【図7】本発明の実施形態1による自家発プラントの運転値のトレンドグラフである。
【図8】本発明の実施形態1による運転値分類情報の表示の一例を示す図である。
【図9】本発明の実施形態1によるプラント運転推定モデルの一例であるデータフローモデルを示す図である。
【図10】本発明の実施形態1によるプラント運転推定モデルの一例であるデータフローモデルを示す図である。
【図11】本発明の実施形態1によるプラント運転推定モデルを用いた評価のフローチャートである。
【図12】本発明の実施形態1による実際のプラント運転と推定したプラント運転との比較の一例を示す図である。
【図13】本発明の実施形態1によるコスト削減効果の内訳の一例を示す図である。
【図14】本発明の実施形態2によるプラント運転推定モデルを用いた、評価手段とデータとの関係を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態について、図面に基づいて以下に説明する。
【0011】
〈実施形態1〉
図1は、本発明の実施形態1による自家発プラントを有する工場の例を模式的に示す図である。図1に示すように、本実施形態1では電力、中圧蒸気、低圧蒸気を使用する工場において、省エネ対策後の所定の期間において省エネ対策を実施しなかった場合のプラント運転を推定し、推定したプラント運転と省エネ対策後の実際のプラント運転とを比較して省エネ効果を評価している。以下に詳細について説明する。
【0012】
図1に示すように、ボイラやタービンなどの発電設備を含む自家発プラントを有する工場では、1号ボイラ11、2号ボイラ12、3号ボイラ13の各々にて燃料14,15,16を使用して高圧蒸気17,18,19を発生させ、発生した高圧蒸気17,18,19は高圧蒸気ヘッダ20で集められている。高圧蒸気ヘッダ20から1号タービン21、2号タービン22、3号タービン23には、高圧蒸気24,25,26がそれぞれ供給されている。1号タービン21では、高圧蒸気24が有する熱エネルギーの一部を発電機27で発電力28に変換し、復水器29で1号タービン21から排気された蒸気から復水30を得ている。また、発電力28を減少させる代わりに中圧蒸気31、低圧蒸気32を抽気することができる。同様に、2号タービン22においても、高圧蒸気25から、発電機33で発電力34を、復水器35で復水36を、抽気により中圧蒸気37、低圧蒸気38をそれぞれ得ることができる。同様に、3号タービン23においても、高圧蒸気26から、発電機39で発電力40を、復水器41で復水42を、抽気により中圧蒸気43、低圧蒸気44をそれぞれ得ることができる。
【0013】
各タービンから得られた発電力28,34,40は、電力線45を介して工場電力46、1号ボイラ所内電力47、2号ボイラ所内電力48、3号ボイラ所内電力49としてそれぞれ供給される。また、電力の不足分は電力会社からの購入電力50として補うことができる。なお、所内電力はボイラの給水ポンプなどで消費される。
【0014】
各タービンから得られた中圧蒸気31,37,43は、中圧蒸気ヘッダ51を介して工場中圧蒸気52、1号ボイラ所内中圧蒸気53、2号ボイラ所内中圧蒸気54、3号ボイラ所内中圧蒸気55としてそれぞれ供給される。なお、所内中圧蒸気はボイラの給水加熱器などで消費される。
【0015】
各タービンから得られた低圧蒸気32,38,44は、低圧蒸気ヘッダ56を介して工場低圧蒸気57、1号ボイラ所内低圧蒸気58、2号ボイラ所内低圧蒸気59、3号ボイラ所内低圧蒸気60としてそれぞれ供給される。なお、所内低圧蒸気はボイラの脱気器などで消費される。
【0016】
図2は、本発明の実施形態1によるプラント運転推定モデル構築手段76とデータとの関係を模式的に示す構成図である。なお、図2におけるプラント運転データベース61には、省エネ対策前のプラント運転に関する情報が保存されているものとする。
【0017】
図2に示すように、プラント運転データベース61には、図1で示すような工場に備えられる自家発プラント62に係わる各設備の運転、購入電力および環境条件などに関するデータ(例えば、ボイラやタービンなどの稼動状態、燃料流量、給水流量、蒸気流量、復水流量、蒸気圧力、蒸気温度、発電量、購入電力量、燃料単価、購入電力単価、工場電力需要、工場蒸気需要、気象データなど)が保存されている。このようなデータの中でも特に、燃料流量、給水流量、蒸気流量、復水流量、蒸気圧力、蒸気温度、発電量、購入電力量など、プラントの運転に係わる値を総称して運転値(第2のプラント運転値)と呼ぶ。なお、プラント運転データは、自家発プラント62において電力計、流量計、圧力計、温度計などの計測器およびセンサなどによって計測されてプラント運転データベース61に格納されている。
【0018】
入力手段63(付与手段)では、プラントの運転値情報64、接続情報65、運用方針情報66、運転制約情報67を入力(付与)する。
【0019】
運転値情報64は、プラントの運転値(第2のプラント運転値)の名称、単位、他の運転値との関係などの情報を含む。また、接続情報65は、プラントの設備系統から同定した運転値(第2のプラント運転値)の接続に関する情報を含む。また、運用方針情報66は、環境条件に応じたプラントの運用(プラント運転)の切り替え方針などに関する情報を含む。また、運転制約情報67は、運転値(第2のプラント運転値)の上下限などに関する情報を含む。
【0020】
マスバランス式決定手段68では、運転値情報64と接続情報65とに含まれるプラントの運転値の接続関係に基づいて、燃料、電力、高圧蒸気、中圧蒸気、低圧蒸気等の各エネルギーに関するエネルギーマスバランス式と、各設備内の蒸気などに関する設備マスバランス式とを含むマスバランス式69を決定する。
【0021】
特性式決定手段70では、運転値情報64とプラント運転データベース61に蓄積されたプラントの運転値(第2のプラント運転値)とに基づいて、各設備における入出力特性を示す入出力特性式(設備入出力特性式)と、各設備内における需要特性を示す所内需要特性式とを含む特性式71を決定する。
【0022】
相関式決定手段72では、運転値情報64とプラント運転データベース61に蓄積されたプラントの運転値(第2のプラント運転値)とに基づいて、所定の運転値における他の運転値に対する相関関係を示す相関式73を決定する。
【0023】
運転値分類決定手段74では、運転値情報64、運用方針情報66、マスバランス式69、特性式71、相関式73の各々に基づいて、プラントの運転値(第2のプラント運転値)の分類に関する情報を含む運転値分類情報75を決定する。
【0024】
プラント運転推定モデル構築手段76では、運転値情報64、運用方針情報66、運転制約情報67、マスバランス式69、特性式71、相関式73、運転値分類情報75の各々に基づいて、プラント運転推定モデル77を構築する。
【0025】
表示手段78では、プラント運転データベース61、運転値情報64、接続情報65、運用方針情報66、運転制約情報67、マスバランス式69、特性式71、相関式73、運転値分類情報75の各々を表示する。
【0026】
なお、入力手段63は、例えばパーソナルコンピュータなどを含む一般的なコンピュータにおいてキーボードやマウスなどの入力装置を利用してデータを入力することにより実現することができる。また、運転値情報64、接続情報65、運用方針情報66、運転制約情報67、マスバランス式69、特性式71、相関式73、運転値分類情報75、プラント運転推定モデル77の各々は、例えばハードディスクドライブなどの磁気記憶装置を含む記憶装置に格納することにより情報を保管することができる。また、マスバランス式決定手段68、特性式決定手段70、相関式決定手段72、運転値分類決定手段74、プラント運転推定モデル構築手段76は、例えばパーソナルコンピュータなどを含む一般的なコンピュータを利用したデータ処理や演算により実現することができる。また、表示手段78は、例えばディスプレイなどの表示装置を利用することにより実現することができる。
【0027】
図3は、本発明の実施形態1によるプラント運転推定モデル77を用いた、評価手段81とデータとの関係を模式的に示す図である。図3に示すように、プラント運転データベース79には、図2に示すプラント運転データベース61と同種のデータが保存されている。ただし、プラント運転データベース79には、少なくともプラント運転推定モデル77の構築後であって、かつ省エネ対策を実施した後の期間におけるデータ(第1のプラント運転値)が保存されている。
【0028】
プラント運転推定手段80では、プラント運転データベース79に蓄積された工場需要(例えば、工場電力、工場中圧蒸気、工場低圧蒸気)、単価(例えば、購入電力単価、発電単価)および気象データを含む環境条件(第1のプラント運転値)をプラント運転推定モデル77に適用して、省エネ対策前のプラント運転を推定する。
【0029】
評価手段81では、プラント運転データベース79に蓄積された省エネ対策後の実際のプラント運転(第1のプラント運転値)と、プラント運転推定手段80にて推定した省エネ対策前のプラント運転とを比較し、省エネ対策前後における運転改善効果および省エネ効果を評価する。
【0030】
表示手段78では、評価手段81にて評価した省エネ対策後の実際のプラント運転と推定したプラント運転との比較、運転改善効果および省エネ効果を表示する。
【0031】
なお、プラント運転推定手段80、評価手段81は、例えばパーソナルコンピュータなどを含む一般的なコンピュータを利用したデータ処理や演算により実現することができる。
【0032】
図4は、本発明の実施形態1によるプラント運転推定モデル77の構築の動作を示すフロー図である。以下、図4のフロー図に基づいてプラント運転推定モデル77の構築の動作の概要を説明する。
【0033】
まず、プラント運転推定モデル77の構築に用いる各値を以下のように定義する。なお、頭文字が小文字の値はプラント運転で変動し得る値とし、頭文字が大文字の値は設定値とする。
1号ボイラ11の燃料14の流量(km3/h): f1B
1号ボイラ11の高圧蒸気17の流量(t/h): s1B
2号ボイラ12の燃料15の流量(km3/h): f2B
2号ボイラ12の高圧蒸気18の流量(t/h): s2B
3号ボイラ13の燃料16の流量(km3/h): f3B
3号ボイラ13の高圧蒸気19の流量(t/h): s3B
1号タービン21の高圧蒸気24の流量(t/h): s1T
1号タービン21の中圧蒸気31の流量(t/h): sm1T
1号タービン21の低圧蒸気32の流量(t/h): sl1T
1号タービン21の復水30の流量(t/h): sr1T
1号タービン21の発電力28の電力量(kW): e1T
2号タービン22の高圧蒸気25の流量(t/h): s2T
2号タービン22の中圧蒸気37の流量(t/h): sm2T
2号タービン22の低圧蒸気38の流量(t/h): sl2T
2号タービン22の復水36の流量(t/h): sr2T
2号タービン22の発電力34の電力量(kW): e2T
3号タービン23の高圧蒸気26の流量(t/h): s3T
3号タービン23の中圧蒸気43の流量(t/h): sm3T
3号タービン23の低圧蒸気44の流量(t/h): sl3T
3号タービン23の復水42の流量(t/h): sr3T
3号タービン23の発電力40の電力量(kW): e3T
購入電力50の電力量(kW): ebuy
1号ボイラ所内電力47の需要(kW): e1Baux
2号ボイラ所内電力48の需要(kW): e2Baux
3号ボイラ所内電力49の需要(kW): e3Baux
1号ボイラ所内中圧蒸気53の需要(t/h): sm1Baux
2号ボイラ所内中圧蒸気54の需要(t/h): sm2Baux
3号ボイラ所内中圧蒸気55の需要(t/h): sm3Baux
1号ボイラ所内低圧蒸気58の需要(t/h): sl1Baux
2号ボイラ所内低圧蒸気59の需要(t/h): sl2Baux
3号ボイラ所内低圧蒸気60の需要(t/h): sl3Baux
工場電力46の需要(kW): Edem
工場中圧蒸気52の需要(t/h): Smdem
工場低圧蒸気57の需要(t/h): Sldem
燃料の単価(円/km3): Funit
購入電力50の単価(円/kW): Eunit
次に、図4のフロー図に基づいてプラント運転推定モデル77の構築の動作について説明する。
【0034】
(ステップS1)
ステップS1では、入力手段63により、運転値情報64、接続情報65をそれぞれ入力する。以下に具体例を示す。
【0035】
運転値情報64は、パーソナルコンピュータなどを含む一般的なコンピュータにおいてキーボードやマウスなどの入力装置を利用して、例えば図5に示すような表形式で作成することができる。
【0036】
接続情報65は、モデリングエディタなどで図1に示すような設備系統のブロック図を作成することにより、ブロック図の接続関係からプラントの運転値の接続関係を同定することが可能である。また、運転値の関係を図6に示すような表形式で作成することにより運転値の接続関係を同定することも可能である。図6では、各行において−が入力、+が出力を示し、各列において+が入力、−が出力を示している。
【0037】
なお、運転値情報64、接続情報65は、ハードディスクドライブなどの磁気記憶装置を含む記憶装置に格納することにより情報を保管できる。また、運転値情報64、接続情報65は、表示手段78により表示することができる。
【0038】
(ステップS2)
ステップS2では、マスバランス式決定手段68により、運転値情報64と接続情報65とに基づいて、燃料、電力、高圧蒸気、中圧蒸気、低圧蒸気等の各エネルギーに関するマスバランス式と、各設備内の蒸気などに関するマスバランス式とを含むマスバランス式69を決定する。以下に具体例を示す。
【0039】
まず、各エネルギーに関するマスバランス式について説明する。
【0040】
電力の場合、電力に関する接続情報に基づき、電力線45に入力される電力は、1号タービン21の発電力28、2号タービン22の発電力34、3号タービン23の発電力40、購入電力50であり、電力線45から出力される電力は、工場電力46、1号ボイラ所内電力47、2号ボイラ所内電力48、3号ボイラ所内電力49である。電力線45における電力量の入出力バランスが常にとれている(平衡である)とすると、以下のマスバランス式(1)が成り立つ。
【数1】
【0041】
高圧蒸気の場合、高圧蒸気に関する接続情報に基づき、高圧蒸気ヘッダ20に入力される高圧蒸気は、1号ボイラ11の高圧蒸気17、2号ボイラ12の高圧蒸気18、3号ボイラ13の高圧蒸気19であり、高圧蒸気ヘッダ20から出力される高圧蒸気は、1号タービン21の高圧蒸気24、2号タービン22の高圧蒸気25、3号タービン23の高圧蒸気26である。高圧蒸気ヘッダ20における蒸気流量の入出力バランスが常にとれている(平衡である)とすると、以下のマスバランス式(2)が成り立つ。
【数2】
【0042】
中圧蒸気の場合、中圧蒸気に関する接続情報に基づき、中圧蒸気ヘッダ51に入力される中圧蒸気は、1号タービン21の中圧蒸気31、2号タービン22の中圧蒸気37、3号タービン23の中圧蒸気43であり、中圧蒸気ヘッダ51から出力される中圧蒸気は、工場中圧蒸気52、1号ボイラ所内中圧蒸気53、2号ボイラ所内中圧蒸気54、3号ボイラ所内中圧蒸気55である。中圧蒸気ヘッダ51における蒸気流量の入出力バランスが常にとれている(平衡である)とすると、以下のマスバランス式(3)が成り立つ。
【数3】
【0043】
低圧蒸気の場合、低圧蒸気に関する接続情報に基づき、低圧蒸気ヘッダ56に入力される低圧蒸気は、1号タービン21の低圧蒸気32、2号タービン22の低圧蒸気38、3号タービン23の低圧蒸気44であり、低圧蒸気ヘッダ56から出力される低圧蒸気は、工場低圧蒸気57、1号ボイラ所内低圧蒸気58、2号ボイラ所内低圧蒸気59、3号ボイラ所内低圧蒸気60である。低圧蒸気ヘッダ56における蒸気流量の入出力バランスが常にとれている(平衡である)とすると、以下のマスバランス式(4)が成り立つ。
【数4】
【0044】
なお、本実施形態1では、燃料に関してはマスバランスをとる必要がないため、燃料に関するマスバランス式は存在しない。副生燃料や廃材など、単位時間あたりの燃料の消費量が予め決まっている場合は、燃料に関するマスバランス式を作成する必要がある。
【0045】
次に、各設備内の蒸気などに関するマスバランス式について説明する。
【0046】
1号タービン21の場合、1号タービン21の蒸気に関する接続情報に基づき、1号タービン21に入力される蒸気は、高圧蒸気24であり、1号タービン21から出力される蒸気は、中圧蒸気31、低圧蒸気32、復水30である。1号タービン21における蒸気流量の入出力バランスが常にとれている(平衡である)とすると、以下のマスバランス式(5)が成り立つ。
【数5】
【0047】
同様に、2号タービン22と3号タービン23における蒸気流量の入出力バランスに関しても、以下のマスバランス式(6)および(7)が成り立つ。
【数6】
【数7】
【0048】
なお、マスバランス式69は、ハードディスクドライブなどの磁気記憶装置を含む記憶装置に格納することにより情報を保管することができる。また、上記の式(1)〜(7)で示されるマスバランス式69は、入力手段63から直接入力してもよい。また、マスバランス式69は、表示手段78により表示することができる。
【0049】
(ステップS3)
ステップS3では、特性式決定手段70により、運転値情報64とプラント運転データベース61に蓄積された運転値(第2のプラント運転値)とに基づいて、各設備の入出力特性式と、各設備の所内需要特性式とを含む特性式71を決定する。以下に具体例を示す。
【0050】
入出力特性式については、燃料の入力に対する高圧蒸気の出力を示すボイラの入出力特性式、蒸気の入力に対する発電力の出力を示すタービンの入出力特性式がある。所内需要特性式については、ボイラの高圧蒸気に対する、ボイラ所内の電力、中圧蒸気、低圧蒸気の需要を示す所内需要特性式がある。
【0051】
まず、ボイラの入出力特性式について説明する。
【0052】
1号ボイラ11の場合、1号ボイラ11に対する入力は燃料14であり、1号ボイラ11からの出力は高圧蒸気17である。1号ボイラ11では、燃料14の増減に伴って高圧蒸気17も増減する。従って、1号ボイラ11の入出力に関しては、以下の特性式(8)が成り立つ。
【数8】
【0053】
ただし、P1Bは1号ボイラ11の入出力特性関数である。P1Bは、例えば以下の特性式(9)のように一次関数で表すことができる。なお、本実施形態1では特性式(9)を採用するものとする。
【数9】
【0054】
ここで、A1B、B1Bは1号ボイラ11に特有の定数であり、例えばプラント運転データベース61に蓄積された運転値を利用して回帰分析などの統計的手法により算出することができる。
【0055】
また、仮に1号ボイラ11の燃料14がn種類(f1B(i),1≦i≦n)ある場合は、1号ボイラ11の入出力に関して以下の特性式(10)が成り立つ。
【数10】
【0056】
ただし、Q1Bは1号ボイラ11の入出力特性関数である。Q1Bは、例えば以下の特性式(11)のように一次関数で表すことができる。
【数11】
【0057】
ここで、A1B(i)(1≦i≦n)、B1Bは1号ボイラ11に特有の定数であり、例えばプラント運転データベース61に蓄積された運転値を利用して回帰分析などの統計的手法により算出することができる。
【0058】
同様に、2号ボイラ12の入出力、3号ボイラ13の入出力に関しても、以下の特性式(12)および特性式(13)が成り立つものとする。
【数12】
【数13】
【0059】
ここで、A2B、B2Bは2号ボイラ12に特有の定数であり、A3B、B3Bは3号ボイラ13に特有の定数である。これらの定数は、例えばプラント運転データベース61に蓄積された運転値を利用して回帰分析などの統計的手法により算出することができる。
【0060】
次に、タービンの入出力特性式について説明する。
【0061】
1号タービン21の場合、1号タービン21の高圧蒸気24、中圧蒸気31、低圧蒸気32の流量に基づいて、1号タービン21の発電力28の電力量が決まる。従って、1号タービン21の入出力に関して、以下の特性式(14)が成り立つ。
【数14】
【0062】
ただし、P1Tは1号タービン21の入出力特性関数である。P1Tは、例えば以下の特性式(15)のように一次関数で表すことができる。なお、本実施形態1では特性式(15)を採用するものとする。
【数15】
【0063】
ここで、A1T、B1T、C1T、D1Tは1号タービン21に特有の定数であり、例えばプラント運転データベース61に蓄積された運転値を利用して回帰分析などの統計的手法により算出することができる。
【0064】
同様に、2号タービン22の入出力、3号タービン23の入出力に関しても、以下の特性式(16)および特性式(17)が成り立つものとする。
【数16】
【数17】
【0065】
ここで、A2T、B2T、C2T、D2Tは2号タービン22に特有の定数であり、A3T、B3T、C3T、D3Tは3号タービン23に特有の定数である。これらの定数は、例えばプラント運転データベース61に蓄積された運転値を利用して回帰分析などの統計的手法により算出することができる。
【0066】
次に、所内需要特性式について説明する。
【0067】
1号ボイラ所内中圧蒸気53の場合、1号ボイラ所内中圧蒸気53の需要は、1号ボイラ11の高圧蒸気17に対して変動するものとする。ボイラ所内中圧蒸気は、主にボイラの補機である給水加熱器において熱交換により給水温度を上げるために供給される。このような場合、1号ボイラ所内中圧蒸気53の需要に関して、以下の特性式(18)が成り立つ。
【数18】
【0068】
ただし、P1Bsmは1号ボイラ所内中圧蒸気53の需要特性関数である。P1Bsmは、例えば、以下の特性式(19)のように一次関数で表すことができる。本実施形態1ではこの特性式(19)を採用するものとする。
【数19】
【0069】
ここで、A1Bsm、B1Bsmは1号ボイラ所内中圧蒸気53に特有の定数であり、例えばプラント運転データベース61に蓄積された運転値を利用して回帰分析などの統計的手法により算出することができる。
【0070】
同様に、2号ボイラ所内中圧蒸気54の需要、3号ボイラ所内中圧蒸気55の需要に関しても、以下の特性式(20)および特性式(21)が成り立つものとする。
【数20】
【数21】
【0071】
ここで、A2Bsm、B2Bsmは2号ボイラ所内中圧蒸気54に特有の定数であり、A3Bsm、B3Bsmは3号ボイラ所内中圧蒸気55に特有の定数である。これらの定数は、例えばプラント運転データベース61に蓄積された運転値を利用して回帰分析などの統計的手法により算出することができる。
【0072】
また、上記と同様に、1号ボイラ所内低圧蒸気58の需要、2号ボイラ所内低圧蒸気59の需要、3号ボイラ所内低圧蒸気60の需要に関しても、以下の特性式(22)、特性式(23)、特性式(24)が成り立つものとする。ボイラ所内低圧蒸気は、主にボイラの補機である脱気器において給水を加熱して、沸騰状態によりボイラを腐食する溶存気体を給水から除去するために供給される。
【数22】
【数23】
【数24】
【0073】
ここで、A1Bsl、B1Bslは1号ボイラ所内低圧蒸気58に特有の定数であり、A2Bsl、B2Bslは2号ボイラ所内低圧蒸気59に特有の定数であり、A3Bsl、B3Bslは3号ボイラ所内低圧蒸気60に特有の定数である。これらの定数は、例えばプラント運転データベース61に蓄積された運転値を利用して回帰分析などの統計的手法により算出することができる。
【0074】
また、上記と同様に、1号ボイラ所内電力47の需要、2号ボイラ所内電力48の需要、3号ボイラ所内電力49の需要に関しても、以下の特性式(25)、特性式(26)、特性式(27)が成り立つものとする。ボイラ所内電力は、主にボイラの補機である給水ポンプにおいて給水を送水するための動力源として供給される。
【数25】
【数26】
【数27】
【0075】
ここで、A1Be、B1Beは1号ボイラ所内電力47に特有の定数であり、A2Be、B2Beは2号ボイラ所内電力48に特有の定数であり、A3Be、B3Beは3号ボイラ所内電力49に特有の定数である。これらの定数は、例えばプラント運転データベース61に蓄積された運転値を利用して回帰分析などの統計的手法により算出することができる。
【0076】
なお、特性式71は、ハードディスクドライブなどの磁気記憶装置を含む記憶装置に格納することにより情報を保管できる。また、上記の式(8)〜(27)で示される特性式71は入力手段63から直接入力してもよい。また、特性式71は、表示手段78により表示することができる。
【0077】
(ステップS4)
ステップS4では、入力手段63により、プラントの運用方針情報66、運転制約情報67をそれぞれ入力する。以下に具体例を示す。
【0078】
運用方針情報66について、例えば、購入電力単価が高い場合は、できるだけ購入電力50を減らすように1号タービン21の発電力28を増やし、購入電力が安い場合は、できるだけ購入電力50を増やすように1号タービン21の発電力28を減らすといった運用方針がある。また、1号ボイラ11の高圧蒸気17、2号ボイラ12の高圧蒸気18、3号ボイラ13の高圧蒸気19を同量にするといった運用方針もあり得る。さらに、2号タービン22の発電力34は、常に3号タービン23の発電力40よりも小さくするといった運用方針もあり得る。このように、運用方針情報66としては、状況に応じた運転の切り替え方、設備や各運転ポイントへの負荷のかけ方などに関する情報が入力される。なお、運転の切り替え方については条件分岐式、設備や各運転ポイントへの負荷のかけ方については比率の制約式として入力することができる。
【0079】
運転制約情報67について、各運転値には運転制約としての上下限値があり、その値を超えないように運転許容範囲を考慮して運転を行う必要がある。運転制約情報67は、このような運転値の上下限値に関する情報を含む。運転値をvとすると、各運転値に関しては、以下の式(28)の上下限制約式が成り立つ。
【数28】
【0080】
ここで、VmaxおよびVminはそれぞれ運転値vの上限値および下限値である。
【0081】
なお、運用方針情報66、運転制約情報67は、ハードディスクドライブなどの磁気記憶装置を含む記憶装置に格納することにより情報を保管できる。また、運用方針情報66、運転制約情報67は、表示手段78により表示することができる。
【0082】
(ステップS5)
ステップS5では、相関式決定手段72により、運転値情報64とプラント運転データベース61に蓄積された運転値(第2のプラント運転値)とに基づいて、所定の運転値における他の運転値に対する相関関係を表した相関式73を決定する。以下に具体例を示す。
【0083】
図1に示す自家発プラントでは、2号ボイラ12の燃料15の流量は設定値として与えられ、プラントの運転が変動しても2号ボイラ12の運転は変動しないものとする。2号ボイラ12の燃料15の流量が与えられると、2号ボイラ12の高圧蒸気18の流量は特性式(12)により決まる。また、2号タービン22は2号ボイラ12の運転に合わせて変動する傾向があり、2号タービン22の高圧蒸気25の流量は2号ボイラ12の高圧蒸気18の流量に対して相関関係があるため、以下の相関式(29)として近似できるものとする。
【数29】
【0084】
ただし、R2Tsは、2号ボイラ12の高圧蒸気18に対する2号タービン22の高圧蒸気25の相関関数である。R2Tsは、例えば以下の相関式(30)のように一次関数で表すことができる。本実施形態1では、相関式(30)を採用するものとする。
【数30】
【0085】
ここで、C2Ts、D2Tsは2号ボイラ12の高圧蒸気18に対する2号タービン22の高圧蒸気25の特有の定数であり、例えばプラント運転データベース61に蓄積された運転値を利用して回帰分析などの統計的手法により算出することができる。
【0086】
また、図7(a)に示すように、2号タービン22の中圧蒸気37および低圧蒸気38の流量が2号タービン22の高圧蒸気25の流量に合わせて変動する傾向があり、2号タービン22の中圧蒸気37および低圧蒸気38の流量は2号タービン22の高圧蒸気25の流量に対して相関関係があり、以下の相関式(31)および相関式(32)として近似できるものとする。
【数31】
【数32】
【0087】
ただし、R2Tsmは2号タービン22の高圧蒸気25に対する中圧蒸気37の相関関数であり、R2Tslは2号タービン22の高圧蒸気25に対する低圧蒸気38の相関関数である。R2TsmおよびR2Tslは、例えば、以下の相関式(33)、相関式(34)のように一次関数で表すことができる。本実施形態1では、相関式(33)、相関式(34)を採用するものとする。
【数33】
【数34】
【0088】
ここで、C2Tsm、D2Tsmは2号タービン22の高圧蒸気25に対する中圧蒸気37の特有の定数であり、C2Tsl、D2Tslは2号タービン22の高圧蒸気25に対する低圧蒸気38の特有の定数であり、例えばプラント運転データベース61に蓄積された運転値を利用して回帰分析などの統計的手法により算出することができる。
【0089】
次に、中圧蒸気について、図7(b)に示すように、工場中圧蒸気52の需要の変動に合わせて1号タービン21の中圧蒸気31および3号タービン23の中圧蒸気43が変動する傾向があり、1号タービン21の中圧蒸気31の流量および3号タービン23の中圧蒸気43の流量は、工場中圧蒸気52の需要に対して相関関係があり、以下の相関式(35)、相関式(36)が成り立つものとする。なお、2号タービン22の中圧蒸気37の流量は、上述したように2号タービン22の高圧蒸気25の流量に相関関係があり、工場中圧蒸気52の需要に対して相関関係はないものとする。
【数35】
【数36】
【0090】
ただし、R1Tsmは工場中圧蒸気52に対する1号タービン21の中圧蒸気31の相関関数であり、R3Tsmは工場中圧蒸気52に対する3号タービン23の中圧蒸気43の相関関数である。また、R1TsmおよびR3Tsmは、例えば、以下の相関式(37)、相関式(38)のように一次関数で表すことができる。本実施形態1では、相関式(37)、相関式(38)を採用するものとする。
【数37】
【数38】
【0091】
ここで、C1Tsm、D1Tsmは工場中圧蒸気52に対する1号タービン21の中圧蒸気31の特有の定数であり、C3Tsm、D3Tsmは工場中圧蒸気52に対する3号タービン23の中圧蒸気43の特有の定数であり、例えばプラント運転データベース61に蓄積された運転値を利用して回帰分析などの統計的手法により算出することができる。
【0092】
同様に、低圧蒸気について、図7(c)に示すように、工場低圧蒸気57の需要の変動に合わせて1号タービン21の低圧蒸気32および3号タービン23の低圧蒸気44が変動する傾向があり、1号タービン21の低圧蒸気32の流量および3号タービン23の低圧蒸気44の流量は工場低圧蒸気57の需要に対して相関関係があり、相関式(39)、相関式(40)として近似できるものとする。なお、2号タービン22の低圧蒸気38の流量は、上述したように2号タービン22の高圧蒸気25の流量に相関関係があり、工場低圧蒸気57の需要に対して相関関係はないものとする。
【数39】
【数40】
【0093】
ただし、R1Tslは工場低圧蒸気57に対する1号タービン21の低圧蒸気32の相関関数であり、R3Tslは工場低圧蒸気57に対する3号タービン23の低圧蒸気44の相関関数である。また、R1TslおよびR3Tslは、例えば、以下の相関式(41)、相関式(42)のように一次関数で表すことができる。本実施形態1では、相関式(41)、相関式(42)を採用するものとする。
【数41】
【数42】
【0094】
ここで、C1Tsl、D1Tslは工場低圧蒸気57に対する1号タービン21の低圧蒸気32の特有の定数であり、C3Tsl、D3Tslは工場低圧蒸気57に対する3号タービン23の低圧蒸気44の特有の定数であり、例えばプラント運転データベース61に蓄積された運転値を利用して回帰分析などの統計的手法により算出することができる。
【0095】
次に、電力について、本実施形態1では、ステップS4にて入力した運用方針情報66に含まれる、購入電力単価が高い場合は、できるだけ購入電力50を減らすように1号タービン21の発電力28を増やし、購入電力が安い場合は、できるだけ購入電力50を増やすように1号タービン21の発電力28を減らすという運用方針に従うとする。すなわち、購入電力単価が発電単価に比べて高い場合は、購入電力50の電力量は下限値をとるものとし、そのときの1号タービン21の発電力28の電力量は工場電力46の需要に対して相関関係があり、以下の相関式(43)が成り立つものとする。一方、購入電力単価が発電単価に比べて安い場合は、1号タービン21の発電力28の電力量は取り得る値の範囲で下限値をとるものとし、そのときの購入電力50の電力量は工場電力46の需要に対して相関関係があり、以下の相関式(44)として近似できるものとする。
【数43】
【数44】
【0096】
ただし、R1Teは工場電力46に対する1号タービン21の発電力28の相関関数であり、Rebuyは工場電力46に対する購入電力50の相関関数である。また、R1TeおよびRebuyは、例えば、以下の相関式(45)、相関式(46)のように一次関数で表すことができる。本実施形態1では、相関式(45)、相関式(46)を採用するものとする。
【数45】
【数46】
【0097】
ここで、C1Te、D1Teは工場電力46に対する1号タービン21の発電力28の特有の定数であり、Cebuy、Debuyは工場電力46に対する購入電力50の特有の定数であり、例えばプラント運転データベース61に蓄積された運転値を利用して回帰分析などの統計的手法により算出することができる。
【0098】
また、1号ボイラ11の高圧蒸気17は、1号タービン21の高圧蒸気24の流量の変動に合わせて変動する傾向があり、1号ボイラ11の高圧蒸気17の流量は1号タービン21の高圧蒸気24の流量に対して相関関係があり、以下の相関式(47)として近似できるものとする。
【数47】
【0099】
ただし、R1Bsは、1号タービン21の高圧蒸気24に対する1号ボイラ11の高圧蒸気17の相関関数である。また、R1Bsは、例えば、以下の相関式(48)のように一次関数で表すことができる。本実施形態1では、相関式(48)を採用する。
【数48】
【0100】
ここで、C1Bs、D1Bsは1号タービン21の高圧蒸気24に対する1号ボイラ11の高圧蒸気17の特有の定数であり、例えばプラント運転データベース61に蓄積された運転値を利用して回帰分析などの統計的手法により算出することができる。
【0101】
なお、相関式73は、ハードディスクドライブなどの磁気記憶装置を含む記憶装置に格納することにより情報を保管できる。また、上記の式(29)〜(48)で示す相関式73は入力手段63から直接入力してもよい。また、相関式73は、表示手段78により表示することができる。
【0102】
(ステップS6)
ステップS6では、運転値分類決定手段74により、運転値情報64、運用方針情報66、マスバランス式69、特性式71、相関式73に基づいて、運転値の分類に関する情報を含む運転値分類情報75を決定する。以下に具体例を示す。
【0103】
本実施形態1では、運転値を、設定値、相関式依存値、特性式依存値、マスバランス値の4種類に分類する。設定値とは、マニュアル運転をする設備の運転値など、プラントの環境条件に係わらず設定される値である。本実施形態1では、工場需要も設定値に分類しておく。また、相関式依存値とは、相関式から決まる値である。また、特性式依存値とは、特性式から決まる値である。また、マスバランス値とは、マスバランス式のバランスをとる値である。
【0104】
運転値分類では、マスバランス式に関して、マスバランス式を構成する運転値のうち少なくとも1つはマスバランス値となるようにする。
【0105】
2号ボイラ12の燃料15の流量はマニュアル運転による設定値であり、2号ボイラ12の高圧蒸気18の流量は特性式(12)から決まるので特性式依存値である。2号タービン22の高圧蒸気25の流量は相関式(30)から決まるので相関式依存値である。2号タービン22の中圧蒸気37、低圧蒸気38の流量は相関式(33)、相関式(34)から決まるので相関式依存値である。従って、マスバランス式(6)について、2号タービン22の高圧蒸気25、中圧蒸気37、低圧蒸気38の流量はそれぞれ相関式依存値であるため、2号タービン22の復水36の流量をマスバランス式(6)のバランスをとるためのマスバランス値とする。
【0106】
次に、中圧蒸気について、工場中圧蒸気52の需要は設定値、1号ボイラ所内中圧蒸気53の需要は特性式(19)から決まるので特性式依存値、2号ボイラ所内中圧蒸気54の需要は特性式(20)から決まるので特性式依存値、3号ボイラ所内中圧蒸気55の需要は特性式(21)から決まるので特性式依存値、1号タービン21の中圧蒸気31の流量は相関式(37)から決まるので相関式依存値、2号タービン22の中圧蒸気37の流量は相関式(33)から決まるので相関式依存値、3号タービン23の中圧蒸気43の流量は相関式(38)から決まるので相関式依存値である。従って、中圧蒸気ヘッダ51におけるマスバランス式(3)のバランスをとるマスバランス値が存在せず、バランスが崩れてしまう恐れがある。そこで、相関式依存値のうち、最も相関関係の弱いものを相関式依存値からマスバランス値へと変更する。本実施形態1では、3号タービン23の中圧蒸気43の流量が最も相関関係が弱いものとして、3号タービン23の中圧蒸気43の流量をマスバランス式(3)のバランスをとるためのマスバランス値とする。
【0107】
次に、低圧蒸気について、工場低圧蒸気57の需要は設定値、1号ボイラ所内低圧蒸気58の需要は特性式(22)から決まるので特性式依存値、2号ボイラ所内低圧蒸気59の需要は特性式(23)から決まるので特性式依存値、3号ボイラ所内低圧蒸気60の需要は特性式(24)から決まるので特性式依存値、1号タービン21の低圧蒸気32の流量は相関式(41)から決まるので相関式依存値、2号タービン22の低圧蒸気38の流量は相関式(34)から決まるので相関式依存値、3号タービン23の低圧蒸気44の流量は相関式(42)から決まるので相関式依存値である。従って、低圧蒸気ヘッダ56におけるマスバランス式(4)のバランスをとるマスバランス値が存在せず、バランスが崩れてしまう恐れがある。そこで、相関式依存値のうち、最も相関関係の弱いものを相関式依存値からマスバランス値へと変更する。本実施形態1では、3号タービン23の低圧蒸気44の流量が最も相関関係が弱いものとして、3号タービン23の低圧蒸気44の流量をマスバランス式(4)のバランスをとるためのマスバランス値とする。
【0108】
次に、電力について、工場電力46の需要は設定値、1号ボイラ所内電力47の需要は特性式(25)から決まるので特性式依存値、2号ボイラ所内電力48の需要は特性式(26)から決まるので特性式依存値、3号ボイラ所内電力49の需要は特性式(27)から決まるので特性式依存値、2号タービン22の発電力34の電力量は特性式(16)から決まるので特性式依存値、購入電力単価が発電単価に比べて高い場合において、1号タービン21の発電力28の電力量は相関式(45)から決まるので相関式依存値、そのときの購入電力50の電力量は下限値となるので設定値となる。一方、購入電力単価が発電単価に比べて安い場合において、1号タービン21の発電力28の電力量は取り得る値の範囲で下限値となるので設定値となり、そのときの購入電力50の電力量は相関式(46)から決まるので相関式依存値となる。マスバランス式(1)に関して、3号タービン23の発電力40の電力量以外は、設定値、特性式依存値、相関式依存値であるので、3号タービン23の発電力40の電力量をマスバランス式(1)のバランスをとるためのマスバランス値とする。
【0109】
次に、1号タービン21について、1号タービン21の中圧蒸気31、低圧蒸気32の流量は相関式(37)、相関式(41)から決まり、1号タービン21の発電力28の電力量は相関式(45)から決まるかあるいは設定値であるので、特性式(15)から1号タービン21の高圧蒸気24の流量が決まる。従って、1号タービン21の高圧蒸気24の流量は特性式依存値である。マスバランス式(5)に関して、1号タービン21の復水30の流量以外は、特性式依存値、相関式依存値であるので、1号タービン21の復水30の流量をマスバランス式(5)のバランスをとるためのマスバランス値とする。
【0110】
次に、3号タービン23について、3号タービン23の中圧蒸気43および低圧蒸気44の流量はそれぞれマスバランス式(3)、マスバランス式(4)から決まり、3号タービン23の発電力40の電力量はマスバランス式(1)から決まるので、3号タービン23の高圧蒸気26の流量は特性式(17)から決まる。従って、3号タービン23の高圧蒸気26の流量は特性式依存値である。マスバランス式(7)に関して、3号タービン23の復水42の流量以外は、特性式依存値、他のマスバランス式から決まる値であるので、3号タービン23の復水42の流量をマスバランス式(7)のバランスをとるためのマスバランス値とする。
【0111】
次に、1号ボイラ11について、1号ボイラ11の高圧蒸気17の流量は相関式(48)から決まるので、特性式(9)から1号ボイラ11の燃料14の流量が決まる。従って、1号ボイラ11の燃料14の流量は特性式依存値である。マスバランス式(2)に関して、3号ボイラ13の高圧蒸気19の流量以外は、特性式依存値、相関式依存値であるので、3号ボイラ13の高圧蒸気19の流量をマスバランス式(2)のバランスをとるためのマスバランス値とする。
【0112】
次に、3号ボイラ13について、3号ボイラ13の高圧蒸気19の流量はマスバランス式(2)から決まるので、特性式(13)から3号ボイラ13の燃料16の流量が決まる。従って、3号ボイラ13の燃料16の流量は特性式依存値である。
【0113】
なお、分類した運転値の情報は、運転値分類情報75として、ハードディスクドライブなどの磁気記憶装置を含む記憶装置に格納することにより情報を保管でき、例えば図8に示すような表形式で保管することが可能である。また、運転値分類情報75は、入力手段63から直接入力してもよい。また、運転値分類情報75は、表示手段78により表示することができる。
【0114】
上記では、各マスバランス式において1つはマスバランス値となるように運転値を分類したが、バランスをとる運転値が2つ以上あり、それらがある比率を保って変動する場合には、例えばそれらをまとめて1つのマスバランス値とし、マスバランス値が決定した後でその比率に基づいて按分するという方法もある。按分の比率については、プラント運転データベース61に蓄積された運転値を利用して算出することが可能である。
【0115】
また、マスバランス値が運転制約情報67に含まれる上限値あるいは下限値に達する可能性がある場合は、その運転値の次にマスバランス値となる運転値の候補を予め決めておくことによってバランスの不平衡を回避することができる。例えば、マスバランス式(3)において3号タービン23の中圧蒸気43の流量が上限あるいは下限に引っ掛かる(達する)場合には、3号タービン23の中圧蒸気43の流量を上限値あるいは下限値の設定値に変更し、1号タービン21の中圧蒸気31の流量をマスバランス値に変更してもよい。
【0116】
(ステップS7)
ステップS7では、プラント運転推定モデル構築手段76により、運転値情報64、運用方針情報66、運転制約情報67、マスバランス式69、特性式71、相関式73、運転値分類情報75に基づき、プラント運転推定モデル77を構築する。以下に具体例を示す。
【0117】
図9および図10は、本発明の実施形態1によるプラント運転推定モデル77の一例であるデータフローモデルを示す図である。運転値情報64に含まれる運転値について、運転値分類情報75に含まれる設定値、相関式依存値、特性式依存値、マスバランス値と、マスバランス式69、特性式71、相関式73、運用方針情報66、運転制約情報67に基づいて、図9および図10に示すような各データの関係性を明確にしたデータフローモデルを作成する。図9および図10に示されるデータフローモデルに設定値を入力すると、各関係式に基づいて次々と値が決定していく。また、値が決定していく過程で、ある運転値が運転制約情報67に含まれる上下限制約式を満たせない場合を想定し、その運転値を上限値あるいは下限値の設定値に変更したデータフローモデルを用意してもよい。また、データフローモデルに限らず、プログラミングで数式を記述することにより、実行形式を作成することも可能である。
【0118】
本実施形態1では、上記のように作成されたデータフローモデルや実行形式をプラント運転推定モデル77とする。なお、プラント運転推定モデル77は、ハードディスクドライブなどの磁気記憶装置を含む記憶装置に格納することにより情報を保管できる。また、プラント運転推定モデル77は、表示手段78により表示することができる。
【0119】
以下では、プラント運転推定モデル77を用いた評価の動作の概要について図3および図11を用いて説明する。
【0120】
(ステップS8)
ステップS8では、プラント運転推定手段80により、プラント運転データベース79に蓄積された工場需要、単価および気象条件を含む環境条件(第1のプラント運転値)をプラント運転推定モデル77に適用して、省エネ対策前のプラント運転を推定する。以下に具体例を示す。
【0121】
プラント運転推定モデル77に、工場需要、単価などの環境条件と、マニュアル運転をする設備の設定値とを入力すると、各関係式に基づいて次々と値が決定し、プラント運転に係わる運転値一式が出力される。
【0122】
例えば、パーソナルコンピュータなどを含む一般的なコンピュータにおいてキーボードを利用してプラント運転を推定する日時を入力し、その日時をプラント運転データベース79に送信し、プラント運転データベース79がプラント運転推定手段80に対して該当する日時のデータを返信することにより、プラント運転推定モデル77に入力する設定値として工場電力46の需要、工場中圧蒸気52の需要、工場低圧蒸気57の需要、購入電力単価、発電単価、2号ボイラ12の燃料15の流量を取得することが可能となる。なお、発電単価は、燃料単価、ボイラ入出力特性、タービン入出力特性などに基づいて算出することが可能である。
【0123】
(ステップS9)
ステップS9では、評価手段81により、プラント運転データベース79に蓄積された省エネ対策後の実際のプラント運転と、プラント運転推定手段80で推定した省エネ対策前のプラント運転とを比較し、省エネ対策前後における運転改善効果および省エネ効果を評価する。以下に具体例を示す。
【0124】
省エネ対策後の実際のプラント運転(以下、実際運転とも称する)と、推定した省エネ対策前のプラント運転(以下、推定運転とも称する)とを比較し、各運転ポイントの差を算出する。図12は、本発明の実施形態1による実際運転と推定運転との比較の一例を示す図である。図12では、発電単価が購入電力単価よりも安い時間において、実際運転、推定運転、実際運転と推定運転との差を示している。
【0125】
以下、省エネ対策を実施したことによって、どのようにして運転が改善され、コストが削減されたかについて詳細に検証する。
【0126】
まず、中圧蒸気について、1号タービン21の中圧蒸気31、2号タービン22の中圧蒸気37、3号タービン23の中圧蒸気43の流量が、それぞれ実際運転で30t/h、12.0992t/h、22.681t/hであり、推定運転で25t/h、10t/h、29.9182t/hであったとする。このとき、1号タービン21、2号タービン22、3号タービン23の高圧蒸気から中圧蒸気までの蒸気単位流量あたりの発電力は、特性式(15)、特性式(16)、特性式(17)に基づき、それぞれA1T+B1T、A2T+B2T、A3T+B3Tと計算することができる。
【0127】
ここで、A1T=300kWh/t、B1T=−180kWh/h、A2T=290kWh/t、B2T=−190kWh/h、A3T=310kWh/t、B3T=−200kWh/tである場合、この蒸気振替による発電力増減は、
【0128】
【数49】
【0129】
と算出され、13.8kWの発電力増加となる。
【0130】
また、中圧蒸気の増減は、
【0131】
【数50】
【0132】
と算出される。この中圧蒸気の減少は、0.138t/hだけボイラ所内中圧蒸気の需要が減少していることに起因する。
【0133】
次に、低圧蒸気について、1号タービン21の低圧蒸気32、2号タービン22の低圧蒸気38、3号タービン23の低圧蒸気44の流量がそれぞれ実際運転で60t/h、17.9008t/h、31.6596t/hであり、推定運転で40t/h、20t/h、49.8364t/hであったとする。このとき、1号タービン21、2号タービン22、3号タービン23の高圧蒸気から低圧蒸気までの蒸気単位流量あたりの発電力は、特性式(15)、特性式(16)、特性式(17)に基づき、それぞれA1T+C1T、A2T+C2T、A3T+C3Tと計算することができる。
【0134】
ここで、C1T=−140kWh/h、C2T=−160kWh/h、C3T=−170kWh/tである場合、この蒸気振替による発電力増減(省エネ対策による発電力増減)は、
【0135】
【数51】
【0136】
と算出され、382.4kWの発電力増加となる。
【0137】
また、低圧蒸気の増減は、
【0138】
【数52】
【0139】
と算出される。この低圧蒸気の減少は、0.2759t/hだけボイラ所内低圧蒸気の需要が減少していることに起因する。
【0140】
次に、復水について、1号タービン21の復水30、2号タービン22の復水36、3号タービン23の復水42の流量が、それぞれ実際運転で10t/h、10t/h、41.2637t/hであり、推定運転で20.3333t/h、20t/h、23.2759t/hであったとする。このとき、1号タービン21、2号タービン22、3号タービン23の高圧蒸気から復水までの蒸気単位流量あたりの発電力は、特性式(15)、特性式(16)、特性式(17)に基づき、それぞれA1T、A2T、A3Tと計算することができる。
【0141】
従って、この復水振替による発電力増減は、
【0142】
【数53】
【0143】
と算出され、423.8kWの発電力減少となる。
【0144】
また、復水の増減は、
【0145】
【数54】
【0146】
と算出される。この復水の減少は、ボイラ所内電力の需要が減少していることと、蒸気振替および復水振替により発電力が増加し、復水による発電を減少できたことに起因する。
【0147】
また、上記の式(49)、式(51)、式(53)より、発電量増減の合計は、
【0148】
【数55】
【0149】
と算出することができる。ここで、購入電力50は、実際運転も推定運転も0kWであるため、この発電量の減少は、27.6kWだけボイラ所内電力の需要が減少していることに起因する。
【0150】
また、式(50)、式(52)、式(54)より、中圧蒸気、低圧蒸気、復水がそれぞれ増減しているので、その供給源である高圧蒸気の増減は、
【0151】
【数56】
【0152】
と算出することができ、2.7594t/hの高圧蒸気減少となる。この高圧蒸気の減少分だけボイラ全体の負荷が下がり、燃料が減少する。
【0153】
次に、高圧蒸気について、1号ボイラ11の高圧蒸気17、2号ボイラ12の高圧蒸気18、3号ボイラ13の高圧蒸気19の流量が、それぞれ実際運転で120t/h、50t/h、65.6044t/hであり、推定運転で94.8148t/h、50t/h、93.549t/hであったとする。このとき、1号ボイラ11、2号ボイラ12、3号ボイラ13の高圧蒸気単位流量あたりの燃料流量は、特性式(10)、特性式(12)、特性式(13)に基づき、それぞれ1/A1B、1/A2B、1/A3Bと計算することができる。
【0154】
ここで、A1B=9.5t/km3、A2B=8.5t/km3、A3B=9.0t/km3である場合、この蒸気振替による燃料増減は、
【0155】
【数57】
【0156】
と算出され、0.4539km3/hの燃料減少となる。
【0157】
また、燃料単価が10000円/km3である場合において、コスト削減効果は、
【0158】
【数58】
【0159】
となる。
【0160】
上記より、各運転ポイントの運転改善によりコストを削減できることがわかる。
【0161】
以下に、各運転ポイントにおけるコスト削減効果を算出する方法について説明する。コスト削減効果を各運転ポイントに配分するのは容易ではなく、その算出方法はさまざま考えられている。ここでは、コスト削減効果を配分する方法の一つについて説明する。
【0162】
まず、ボイラの高圧蒸気の蒸気振替によるコスト削減効果を算出する。高圧蒸気について、推定運転では、1号ボイラ11の高圧蒸気17、2号ボイラ12の高圧蒸気18、3号ボイラ13の高圧蒸気19の流量の合計は、
【0163】
【数59】
【0164】
であるが、実際運転では、
【0165】
【数60】
【0166】
である。そして、推定運転での高圧蒸気の流量の合計を、実際運転の比率で振り分けたと仮定すると、1号ボイラ11の高圧蒸気17、2号ボイラ12の高圧蒸気18、3号ボイラ13の高圧蒸気19の流量はそれぞれ、
【0167】
【数61】
【0168】
【数62】
【0169】
【数63】
【0170】
と算出することができる。算出された流量を改善運転と呼び、推定運転と改善運転との差から、蒸気振替による燃料増減は、
【0171】
【数64】
【0172】
となる。ここで、燃料単価が10000円/km3である場合において、ボイラの高圧蒸気の蒸気振替によるコスト削減効果は、
【0173】
【数65】
【0174】
と算出される。本来のコスト削減効果は4539円/hであり、残りの
【0175】
【数66】
【0176】
と算出される3022円/hについては、発電量増減による効果であるとして、以下に示すようにタービンの蒸気振替によるコスト削減効果を算出する。
【0177】
中圧蒸気について、推定運転では、1号タービン21の中圧蒸気31、2号タービン22の中圧蒸気37、3号タービン23の中圧蒸気43の流量の合計は、
【0178】
【数67】
【0179】
であるが、実際運転では、
【0180】
【数68】
【0181】
である。そして、推定運転での中圧蒸気の流量の合計を、実際運転の比率で振り分けたと仮定すると、1号タービン21の中圧蒸気31、2号タービン22の中圧蒸気37、3号タービン23の中圧蒸気43の流量はそれぞれ、
【0182】
【数69】
【0183】
【数70】
【0184】
【数71】
【0185】
と算出することができる。算出された流量を改善運転と呼び、推定運転と改善運転との差から、蒸気振替による発電力増減は、
【0186】
【数72】
【0187】
と算出することができ、29.4kWの発電力増加となる。
【0188】
同様に、低圧蒸気について、推定運転では、1号タービン21の低圧蒸気32、2号タービン22の低圧蒸気38、3号タービン23の低圧蒸気44の流量の合計は、
【0189】
【数73】
【0190】
であるが、実際運転では、
【0191】
【数74】
【0192】
である。そして、推定運転での低圧蒸気の流量の合計を、実際運転の比率で振り分けたと仮定すると、1号タービン21の低圧蒸気32、2号タービン22の低圧蒸気38、3号タービン23の低圧蒸気44の流量はそれぞれ、
【0193】
【数75】
【0194】
【数76】
【0195】
【数77】
【0196】
と算出することができる。算出された流量を改善運転と呼び、推定運転と改善運転との差から、蒸気振替による発電力増減は、
【0197】
【数78】
【0198】
と算出することができ、423.6kWの発電力増加となる。
【0199】
同様に、復水に関して、推定運転では、1号タービン21の復水30、2号タービン22の復水36、3号タービン23の復水42の流量の合計は、
【0200】
【数79】
【0201】
であるが、実際運転では、
【0202】
【数80】
【0203】
である。そして、推定運転での復水の流量の合計を、実際運転の比率で振り分けたと仮定すると、1号タービン21の復水30、2号タービン22の復水36、3号タービン23の復水42の流量はそれぞれ、
【0204】
【数81】
【0205】
【数82】
【0206】
【数83】
【0207】
と算出することができる。算出した流量を改善運転と呼び、推定運転と改善運転との差から、復水振替による発電力増減は、
【0208】
【数84】
【0209】
と算出することができ、291.9kWの発電力増加となる。
【0210】
上記より、発電量増減は、中圧蒸気振替により29.4kW、低圧蒸気振替により423.6kW、復水振替により291.9kWであり、発電量増減の合計は、
【0211】
【数85】
【0212】
と算出することができ、744.9kWの発電量増加となる。この発電量増減の比率でタービン蒸気振替によるコスト削減効果3022円/hを配分する。すなわち、中圧蒸気振替、低圧蒸気振替、復水振替によるコスト削減効果はそれぞれ、
【0213】
【数86】
【0214】
【数87】
【0215】
【数88】
【0216】
と算出することができる。
【0217】
以上のことから、コスト削減効果の配分により、各運転ポイントの運転改善効果からコスト削減効果を把握することが可能となる。運転改善効果から計算したコスト削減効果の内訳は、例えば図13に示すようなグラフ形式で表示手段78により表示することが可能である。このように、省エネ対策後の期間において省エネ対策を実施しなかった場合のプラント運転を推定し、推定したプラント運転と省エネ対策後の実際のプラント運転とを比較して省エネ効果を評価することができる。
【0218】
なお、本実施形態1では、購入電力50が変化しない例について説明したが、購入電力50が変化する場合は、購入電力50の変化によるコスト変動を式(58)に追加し、購入電力50の電力量の変化を式(85)に追加することによって、購入電力50の増減によるコスト削減効果も算出することが可能である。
【0219】
また、本実施形態1では、発明の理解を容易にするために、自家発プラントとして図1に示すような典型的な例を用いて説明したが、これに限定されるものではなく、例えばボイラや蒸気タービン以外にガスタービンやガスエンジンやディーゼルエンジンなどを用いる場合、燃料電池や太陽光発電システムなどを用いる場合、電力会社以外の電力供給事業者から電力を購入する場合、蒸気を外部から購入することができる場合など、あらゆるエネルギー供給システムに対して本発明のプラント運転評価装置を適用することができる。
【0220】
また、本実施形態1では、エネルギーを消費する施設として工場を想定したが、これに限定されるものではなく、例えばビル、病院、水処理プラントなど、エネルギーを消費するあらゆる施設に本発明のプラント運転評価装置を適用することができる。具体的には、本実施形態1における工場のエネルギー需要を、ビルや病院におけるエレベーター、照明、空調、給湯などに必要となる電力、熱などのエネルギー需要、水処理プラントにおける揚水ポンプや空気を送り込むためのブロア、消化槽の加温などに必要となる電力、熱などのエネルギー需要などに置き換えることにより、本発明のプラント運転評価装置を適用することができる。
【0221】
また、本実施形態1では、ある瞬時の運転データに関して、実際運転と推定運転とを比較、評価したが、これに限定されるものではなく、例えば所定の時間間隔で取得した複数の運転データに関して、実際運転と推定運転の運転値およびコスト削減効果を時系列グラフとして比較、評価することができる。
【0222】
また、本実施形態1では、省エネ効果をコスト削減効果として説明したが、これに限定されるものではなく、例えばエネルギー消費量削減効果、二酸化炭素などの温室効果ガス排出量削減効果などを省エネ効果とすることもできる。
【0223】
〈実施形態2〉
図14は、本発明の実施形態2によるプラント運転推定モデル77を用いた、評価手段81とデータとの関係を模式的に示す図である。図14に示すように、本実施形態2では、プラント運転データベース79に格納される運転値(第1のプラント運転値)に基づいて特性式を更新する特性式更新手段82を備えることを特徴としている。その他の構成および動作は、実施形態1と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0224】
特性式更新手段82は、プラント運転推定モデル77の構築に必要な要素の1つである特性式71(図2参照)について、プラント運転データベース79に蓄積された運転値(第1のプラント運転値)を利用して、省エネ対策後のプラント運転推定モデル77を適用する期間におけるプラントの各設備の入出力特性式(設備入出力特性)と各設備の所内需要特性式とを含む特性式に更新する。なお、特性式更新手段82は、例えばパーソナルコンピュータなどを含む一般的なコンピュータを利用したデータ処理や演算により実現することができる。
【0225】
具体的に、特性式更新手段82では、プラントの設備特性が経年劣化や季節により若干変化することを考慮して、省エネ対策後の実際の運転(実際運転)とプラント運転推定モデルによる省エネ対策前の運転(推定運転)との運転の環境条件の誤差を小さくするために、プラント運転データベース79に蓄積された運転値のうち、実際運転と時間的にできるだけ近い運転値を利用して、図4のステップS3と同様の手順で特性式決定手段70にて特性式71を決定し、決定した特性式71を新たな特性式として更新する。このような動作を行う特性式更新手段82を、図11のステップS8の前に実行することによって、特性式71を更新することが可能となる。
【0226】
以上のことから、特性式更新手段82を備えることによって、省エネ対策後の実際の運転(実際運転)とプラント運転推定モデルによる省エネ対策前の運転(推定運転)との運転の環境条件の誤差を小さくすることができる。
【0227】
〈実施形態3〉
本発明の実施形態3では、プラント運転データベース79に、省エネ対策前のプラント運転に関する運転値(第3のプラント運転値)を格納することを特徴としている。すなわち、実施形態1,2においてプラント運転データベース79に格納されるプラントの運転値(第1のプラント運転値)に代えて、省エネ対策前のプラント運転に関する運転値(第3のプラント運転値)を適用することを特徴としている。その他の構成および動作は、実施形態1,2と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0228】
プラント運転推定モデル77を構築した後、省エネ対策を実施せず、プラント運転データベース79には省エネ対策を実施していない運転値が蓄積されている場合において、評価手段81では、比較の対象となる実際のプラント運転(実際運転)と推定したプラント運転(推定運転)とは、それぞれ省エネ対策を実施していない運転同士となる。従って、評価手段81にて評価したプラント運転の差に基づいて、プラント運転推定モデル77の推定精度を検証することができる。
【0229】
以上のことから、評価手段81にて評価の対象となるプラント運転は、いずれも省エネ対策を実施していない運転であるため、評価手段81の評価結果によりプラント運転推定モデル77の推定精度を検証することができる。
【0230】
〈実施形態4〉
本発明の実施形態4では、プラント運転の評価は、インターネットなどの通信回線を経由して行われることを特徴としている。その他の構成および動作は、実施形態1,2と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0231】
省エネ対策を実施した後の期間におけるデータは、インターネットなどの通信回線を経由してプラント運転データベース79に保存される。そして、評価手段81では、プラント運転データベース79に蓄積された省エネ対策後の実際のプラント運転と、プラント運転推定手段80にて推定した省エネ対策前のプラント運転とを比較し、省エネ対策前後における運転改善効果および省エネ効果を評価する。このように、インターネットなどの通信回線を経由してプラント運転を評価するサービスを提供することができる。
【0232】
以上のことから、インターネットなどの通信回線を経由してプラント運転を評価するサービスを提供することにより、省エネ対策後にリアルタイムで運転改善効果およびコスト削減効果に関する情報を提供することが可能となる。
【0233】
〈実施形態5〉
本発明の実施形態5では、プラント運転データベース79に、省エネ対策を行ったと仮定したときに想定されるプラント運転に関する運転値(第4のプラント運転値)を格納することを特徴としている。すなわち、実施形態1、2においてプラント運転データベース79に格納されるプラントの運転値(第1のプラント運転値)に代えて、省エネ対策を行ったと仮定したときに想定されるプラント運転に関する運転値(第4のプラント運転値)を適用することを特徴としている。その他の構成および動作は、実施形態1,2と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0234】
プラント運転推定モデル77を構築した後、当該プラント運転推定モデル77に対してプラント運転データベース79に格納されている省エネ対策を行ったと仮定したときに想定されるプラント運転に関する運転値を適用することによって、省エネ対策前に省エネ対策を実施する場合と実施しない場合とを比較することができる。そして、比較の結果に基づいて、投資対効果等を評価して省エネ対策を実施するか否かを検討することが可能となる。このように、省エネ対策を計画する段階で、省エネ対策を実施した場合におけるプラントの運転改善効果およびコスト削減効果を予測するサービスを提供することができる。
【0235】
以上のことから、プラント運転推定モデル77を構築した後、省エネ対策前に運転改善効果およびコスト削減効果を予測するサービスを提供することにより、省エネ対策を実施する場合と実施しない場合とを比較することができ、投資対効果等を評価して省エネ対策を実施するか否かを検討することが可能となる。
【符号の説明】
【0236】
11 1号ボイラ、12 2号ボイラ、13 3号ボイラ、14,15,16 燃料、17,18,19 高圧蒸気、20 高圧蒸気ヘッダ、21 1号タービン、22 2号タービン、23 3号タービン、24,25,26 高圧蒸気、27 発電機、28 発電力、29 復水器、30 復水、31 中圧蒸気、32 低圧蒸気、33 発電機、34 発電力、35 復水器、36 復水、37 中圧蒸気、38 低圧蒸気、39 発電機、40 発電力、41 復水器、42 復水、43 中圧蒸気、44 低圧蒸気、45 電力線、46 工場電力、47 1号ボイラ所内電力、48 2号ボイラ所内電力、49 3号ボイラ所内電力、50 購入電力、51 中圧蒸気ヘッダ、52 工場中圧蒸気、53 1号ボイラ所内中圧蒸気、54 2号ボイラ所内中圧蒸気、55 3号ボイラ所内中圧蒸気、56 低圧蒸気ヘッダ、57 工場低圧蒸気、58 1号ボイラ所内低圧蒸気、59 2号ボイラ所内低圧蒸気、60 3号ボイラ所内低圧蒸気、61 プラント運転データベース、62 自家発プラント、63 入力手段、64 運転値情報、65 接続情報、66 運用方針情報、67 運転制約情報、68 マスバランス式決定手段、69 マスバランス式、70 特性式決定手段、71 特性式、72 相関式決定手段、73 相関式、74 運転値分類決定手段、75 運転値分類情報、76 プラント運転推定モデル構築手段、77 プラント運転推定モデル、78 表示手段、79 プラント運転データベース、80 プラント運転推定手段、81 評価手段、82 特性式更新手段。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
省エネ対策後のプラント運転に関する第1のプラント運転値を格納するプラント運転データベースと、
省エネ対策前のプラント運転に関する第2のプラント運転値に基づいて作成されたプラント運転推定モデルと、
前記省エネ対策後の所定の期間において、前記第1のプラント運転値を前記プラント運転推定モデルに適用して前記省エネ対策前のプラント運転を推定するプラント運転推定手段と、
前記プラント運転推定手段にて推定された前記省エネ対策前のプラント運転と、前記プラント運転データベースに格納された前記第1のプラント運転値とを比較して前記プラント運転を評価する評価手段と、
を備えるプラント運転評価装置。
【請求項2】
前記プラント運転推定モデルは、
前記第2のプラント運転値の名称、単位、他の運転値との関係の情報を含む運転値情報、前記第2のプラント運転値の接続に関する情報を含む接続情報、環境条件に応じたプラント運転の切り替え方針に関する情報を含む運用方針情報、前記第2のプラント運転値の上下限に関する情報を含む運転制約情報を付与する付与手段と、
前記運転値情報と前記接続情報とに基づいて、プラントの各設備内の蒸気に関する設備マスバランス式と、エネルギーに関するエネルギーマスバランス式とを含むマスバランス式を決定するマスバランス式決定手段と、
前記運転値情報と、前記第2のプラント運転値とに基づいて、前記各設備における入出力特性を示す設備入出力特性式と、前記各設備内における需要特性を示す所内需要特性式とを含む特性式を決定する特性式決定手段と、
前記運転値情報と前記第2のプラント運転値とに基づいて、所定のプラント運転値における他のプラント運転値との相関関係を示す相関式を決定する相関式決定手段と、
前記運転値情報、前記運用方針情報、前記マスバランス式、前記特性式、前記相関式の各々に基づいて、前記第2のプラント運転値の分類に関する情報を含む運転値分類情報を決定する運転値分類決定手段と、
前記運転値情報、前記運用方針情報、前記マスバランス式、前記特性式、前記相関式、前記運転制約情報、前記運転値分類情報に基づいて前記プラント運転推定モデルを作成するプラント運転推定モデル構築手段と、
により構築されることを特徴とする、請求項1に記載のプラント運転評価装置。
【請求項3】
前記第1のプラント運転値に基づいて、前記特性式を更新する特性式更新手段をさらに備えることを特徴とする、請求項1または2に記載のプラント運転評価装置。
【請求項4】
前記プラント運転データベースに格納される前記第1のプラント運転値に代えて、前記省エネ対策前のプラント運転に関する第3のプラント運転値を適用することを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載のプラント運転評価装置。
【請求項5】
前記プラント運転の評価は、通信回線を経由して行われることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載のプラント運転評価装置。
【請求項6】
前記プラント運転データベースに格納される前記第1のプラント運転値に代えて、前記省エネ対策を行ったと仮定したときに想定されるプラント運転に関する第4のプラント運転値を適用することを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載のプラント運転評価装置。
【請求項1】
省エネ対策後のプラント運転に関する第1のプラント運転値を格納するプラント運転データベースと、
省エネ対策前のプラント運転に関する第2のプラント運転値に基づいて作成されたプラント運転推定モデルと、
前記省エネ対策後の所定の期間において、前記第1のプラント運転値を前記プラント運転推定モデルに適用して前記省エネ対策前のプラント運転を推定するプラント運転推定手段と、
前記プラント運転推定手段にて推定された前記省エネ対策前のプラント運転と、前記プラント運転データベースに格納された前記第1のプラント運転値とを比較して前記プラント運転を評価する評価手段と、
を備えるプラント運転評価装置。
【請求項2】
前記プラント運転推定モデルは、
前記第2のプラント運転値の名称、単位、他の運転値との関係の情報を含む運転値情報、前記第2のプラント運転値の接続に関する情報を含む接続情報、環境条件に応じたプラント運転の切り替え方針に関する情報を含む運用方針情報、前記第2のプラント運転値の上下限に関する情報を含む運転制約情報を付与する付与手段と、
前記運転値情報と前記接続情報とに基づいて、プラントの各設備内の蒸気に関する設備マスバランス式と、エネルギーに関するエネルギーマスバランス式とを含むマスバランス式を決定するマスバランス式決定手段と、
前記運転値情報と、前記第2のプラント運転値とに基づいて、前記各設備における入出力特性を示す設備入出力特性式と、前記各設備内における需要特性を示す所内需要特性式とを含む特性式を決定する特性式決定手段と、
前記運転値情報と前記第2のプラント運転値とに基づいて、所定のプラント運転値における他のプラント運転値との相関関係を示す相関式を決定する相関式決定手段と、
前記運転値情報、前記運用方針情報、前記マスバランス式、前記特性式、前記相関式の各々に基づいて、前記第2のプラント運転値の分類に関する情報を含む運転値分類情報を決定する運転値分類決定手段と、
前記運転値情報、前記運用方針情報、前記マスバランス式、前記特性式、前記相関式、前記運転制約情報、前記運転値分類情報に基づいて前記プラント運転推定モデルを作成するプラント運転推定モデル構築手段と、
により構築されることを特徴とする、請求項1に記載のプラント運転評価装置。
【請求項3】
前記第1のプラント運転値に基づいて、前記特性式を更新する特性式更新手段をさらに備えることを特徴とする、請求項1または2に記載のプラント運転評価装置。
【請求項4】
前記プラント運転データベースに格納される前記第1のプラント運転値に代えて、前記省エネ対策前のプラント運転に関する第3のプラント運転値を適用することを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載のプラント運転評価装置。
【請求項5】
前記プラント運転の評価は、通信回線を経由して行われることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載のプラント運転評価装置。
【請求項6】
前記プラント運転データベースに格納される前記第1のプラント運転値に代えて、前記省エネ対策を行ったと仮定したときに想定されるプラント運転に関する第4のプラント運転値を適用することを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載のプラント運転評価装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−38054(P2012−38054A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177030(P2010−177030)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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