説明

プリフォームはんだとともに使用される表面反応性の保護剤

プリフォームはんだの金属表面と反応し、これを保護する組成物及び保護されたプリフォームはんだを開示する。表面保護剤組成物は、プリフォームはんだの物理的な取り扱い及びはんだ付工程の要求に適合する。組成物は、担体、表面反応剤、帯電防止剤及び溶媒を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだ付け可能な金属の表面と反応し、これを保護するとともに、電子パッケージの組み付けに使用される、はんだ付け可能な金属のプリフォームに改善された取扱い性及び濡れ性を提供する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
過去数年にわたり、電子パッケージングは急速な変化を遂げてきた。一時はデュアルインパッケージ(DIG)が、シリコンダイとプリント基板を相互接続する主たる方法とされてきたが、現在の電子工学分野では、表面実装型パッケージ、より具体的には、ボールグリッドアレー(BGAs)、ランドグリッドアレー(LGAs)、チップスケールパッケージ(CSPs)及び、電気光学的な相互接続と高周波/RF機能性を付与する、種々の特殊形状の部品などの表面実装型アレーパッケージが最も有力なパッケージとなっている。
【0003】
これら新規のパッケージはその構造体内に多数の副機能を組み込むことができ、例えば、シリコンダイを抵抗、コンデンサなどの多数の支援副部品と結合した“システムインパッケージ”(SIP)である。このように、過去におけるはんだ付け操作は主に電子パッケージをプリント基板に相互接続することに関するものであったのに対し、今日のパッケージは複数回のはんだ付け工程により与えられる複数レベルの相互接続を可能としている。
【0004】
これらの工程は、プリフォームはんだを用いて、単純な電気的相互接続、物理的な構造体及び支持体、パッケージの内部基板へのシリコンダイの取り付け、湿気や外気に対するパッケージの空洞の封止、又は操作の際にパッケージを冷却するのための熱エネルギーフロー用経路の供給を、プリフォームはんだを使用することで達成することを包含する。プリフォームが遭遇するこのような操作の多様性は、プリフォームを購入して、使用前にしばらく保管する可能性も加味して、プリフォームがより単純なDIP型のシリコンダイパッケージに対する要求を超える、多数の特化した要求事項を満たすことを規定している。さらに、新規のパッケージ組立技術に対する要求によって、はんだ付け工程に加え、実際のはんだ付け工程で使用される前に、プリフォームが相当期間保管され、物理的な取り扱いにさらされることにある。このように、プリフォームはんだは、長期間保管する条件下においてさえも、はんだ付け特性の維持と、使用時における取り扱いの簡便さの両方を必要としている。
【0005】
従来、プリフォームの殆どは大きくて扱いにくかった。はんだ付け工程が一般であったことを考え、環境圧力により、ほとんどの洗浄工程が終了させられている。さらに、電子機器の特徴は、過去の巨大パッケージに取って代わり、相互接続物の数が増加した、より小さなパッケージへと変わってきている。パッケージ自体の組み付けの際、これらの相互接続は、クリアランスの小さなアレー配置のパッケージ内部にある。あるいは、支持基板にパッケージを取り付ける間に、これらの相互接続が行われる。いずれの場合においても、残留物を取り除くための効果的な洗浄は、優れた保存性と取扱い性を付与するために残留物をプリフォームに添加していても、又はんだ付け操作そのものに残留物を添加する、すなわちフラックスであっても、小さな隙間部によって妨げられる。このような清潔ではないはんだ付け可能な環境も、ロジンフラックスの使用及びプリフォームにコーティングしないことにより可能だが、前記フラックスは、その粘着性を考えると、今日の小型高速I/O相互接続パッケージには不適当である。さらに、“コーティングしない”という想定は、はんだ組付け操作の前にプリフォームの取扱い性と保管性に悪影響を及ぼすことを意味している。したがって、前記操作は、最終組立製品と同様、要求されているものよりも低い品質のものとなる。
【0006】
このように、プリフォームに用いられるいかなる保護剤も、以下に挙げる要求の全て又は大部分を満たしていなければならない。
1.その保護剤は、全ての組立部品と適合するが、他の材料特性や工程に反する、又はこれらを妨害してはならない。
2.選択した保護剤が、保管している間にプリフォームの好適なはんだ付け特性を損なわないように、濡れ性保護を付与することが望ましい。
3.適用された前記保護剤は、適用の際は可動性を有するとともに、取り扱いの際には除去に対する耐性を備えていなければならず、言い換えれば、プリフォーム表面と反応して保護しなければならず、いかなる機械的な工程、例えばプリフォームの配置に対しても劣化してはならない。
4.適用された前記保護剤は、プリフォームの機械的な取り扱いに対して適合性がなければならなく、例えば、プリフォームが砕けたり、剥がれ落ちたりすることで、各々互いに若しくは加工器具と接着したり、又はプリフォームに静電気が蓄積されたりしてはならない。
5.前記保護剤は、幾何学的に特異であってはならなく、言い換えれば、処方物は、典型的な電子パッケージ組み付けの際に、箔状、スタンピング状、スラグ状、柱状、球状、又は他の形状のはんだと適合しければならない。
【0007】
従来技術は、上述したような表面アレーパッケージに用いる球状はんだ、はんだ棒、インゴッド、はんだペーストを含む、様々な形状でプリフォーム表面に適用される保護剤の使用を対象としてきた。
【0008】
特許文献1には、抗酸化物の層でコーティングし、保管中の表面酸化物形成を阻害した軟質はんだ棒が記載されている。また、コーティングは、はんだフラックスとして働き、はんだ付け工程で別のはんだフラックスを使用する必要性を取り除く。コーティングは、多価アルコールの中性エステル、及びロジン又は変性ロジン由来のエステルからなる混合物である。
【0009】
特許文献2には、モノカルボン酸及びポリカルボン酸などの有機フラックスの層でコーティングして、電気伝導性を低下させ、かつ、合金粒子表面の共晶領域を覆い隠した錫はんだ合金が記載されている。有機酸は、サリチル酸、琥珀酸等のジカルボン酸である。また、有機フラックスは、エステル、アミン、アルコール、及びリン酸とすることができる。有機フラックスは、使用前に担体溶剤内に配置される。そのフラックスは、はんだ粉末の表面から酸化物を取り除く。そのフラックスは、はんだ粉末のコーティングとして添加され表面に付着する。
【0010】
特許文献3には、フラックス及びはんだを介した電子部品又は組立物へのコーティングの方法であって、アクリル酸等の有機酸中エチレン共重合体が融解して部品又は組立物コーティングされる方法が記載されている。共重合体は、約2,000〜約3,000の分子量、及び約0.93〜約0.95の密度を有する。酸に対するエチレンの比率は、約40/975〜約160/825である。
【0011】
特許文献4には、銅を含有する集積回路接点上でフラックスなしに接着する方法であって、の融合前に銅の酸化物形成を抑制し、かつ融合時には全ての酸化物を還元して濡れを促進させるパラジウム層が厚さ200〜1,000オングストロームである方法が記載されている。
【0012】
特許文献5には、保護層によりコーティングされた、はんだペーストの構成物である、はんだ粉末が記載されている。はんだ粉末は、はんだ粉末の酸化、及びはんだのリフロー特性を阻害しない形でのはんだ粉末とフラックスのはんだペースト内での反応を阻害するために、パリレンによりコーティングされている。
【0013】
特許文献6には、所定の厚さのパリレンでコーティングすることで、プリフォームを保護し、プリフォームはんだに緑、金、青といった色を呈する光学干渉皮膜を付与した、プリフォームが記載されている。多様な色は、合金の種類又は顧客の相違を識別させる。
【特許文献1】米国特許第4,243,440号明細書
【特許文献2】米国特許第4,298,407号明細書
【特許文献3】米国特許第4,369,287号明細書
【特許文献4】米国特許第5,225,711号明細書
【特許文献5】米国特許第5,328,522号明細書
【特許文献6】米国特許第5,789,068号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
いずれの従来技術の保護剤又は保護剤系によっても、上記された複数の段落にて特定している要求を満たすことができないだろう。このため、それらの要求を満たすような保護剤組成物が必要とされている。
【0015】
新規のプリフォームはんだ用保護剤組成物は、担体、非腐食性の有機酸の群から主として選択された1種以上の表面反応剤並びにイオン性及び非イオン性材料、すなわち、表面反応剤及び帯電防止剤により構成される。その組成物は、既存の表面金属酸化物との反応性を有するか、あるいは化学結合及び/又はリガンド錯体化により金属表面に化学的に結合する。その保護剤組成物は、プリフォームへの添加と次いで起こる蒸発のための、好適な溶媒に溶解している。この表面保護剤組成物は、プリフォームの物理的な取り扱い、及びはんだ付け工程の要求に適合しており、プリフォーム組立工程の要求により決まる濡れ性の保護及び静電気の減少のための材料を含んでいる。
【0016】
本発明の目的は、プリフォームはんだの濡れ性を保護する反応性組成物を提供することにある。
【0017】
本発明の他の目的は、組み付け後の洗浄を必要としない電子パッケージ組み付け用の公知のはんだ付け工程との互換性がある、反応性保護剤組成物を提供することにある。
【0018】
本発明の他の目的は、コーティング成分の表面反応性及び化学結合に対しても耐久性の高い保護剤コーティングである組成物を、相互接続の形成、封止、ダイの取り付け、及び加熱シンクの取り付け/温度制御を含む電子パッケージ組立の公知の接続工程を阻害しないようなプリフォーム金属面に設けることにある。
【0019】
本発明の他の目的は、長期間の保管条件及び機械的な取扱い条件下にあってさえも、反応性保護剤材料を担体に封入することで、必要とされるような持続的な活性化を確実にした組成物を提供することにある。
【0020】
さらに、本発明の他の目的は、表面反応性が、コーティング中の電子供与基とプリフォームの金属表面との間での結合形成及び/又は錯体形成により引き起こされる組成物を提供することである。
【0021】
本発明の他の目的は、プリフォームはんだを規定量の保護剤組成物でコーティングし、プリフォーム上に充分量の保護剤組成物を堆積することで、長期保管の一般的な条件下で、保護剤組成物を均一に維持し、かつ、表面濡れ性を可能とする方法を提供することである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
はんだは、錫、鉛、ビスマス、インジウム、銀、亜鉛、及び銅などの軟質金属の様々な組み合わせと配合率、例えば、(錫63%、鉛37%)、(錫62%、鉛36%、銀2%)、(錫10%、鉛90%、)、(錫96.5%、銀3%、銅0.5%)、(錫42%、ビスマス58%)、から構成されており、操作の過程で傷ついたり、空気中の酸素及び/又は二酸化炭素と急速に反応したりして、性能に影響する劣化を引き起こす。本発明においては、任意のはんだ金属が使用可能である。
【0023】
プリフォームは、任意の形状のはんだ金属であって、電子パッケージの他の部品とその形状で後に嵌合するように所定の寸法で製造されたはんだ金属であると定義される。プリフォームは、一般に、電気的なはんだの相互接続、機械的な支持、パッケージの封止、及び熱エネルギーフローのための経路を提供する。
【0024】
はんだのプリフォーム形状は、球状、スタンピング状、ワイヤセグメント状等であり、新規に製造された際には、はんだ表面が比較的汚染されない。しかし、非不活性環境下で保管されたときは、短期間ではんだの表面が、はんだ溶解工程におけるはんだの金属への結合を妨げるおそれのある酸化物及び炭酸塩で覆われる。
【0025】
また、プリフォームはんだ用容器の運搬と取り扱いは、プリフォーム相互の接触や擦れにより表面を損傷することで、軟質はんだ金属表面を損傷させる。アルゴンや窒素などの不活性な無酸素環境でパッケージされない限り、表面の損傷は表面の酸化を促進し、はんだ表面を黒色化する。
【0026】
プリフォームはんだを使用する際は、空気への曝露及び自動化された取り扱い機械により、はんだ表面の更なる損傷や、酸化による黒色化を招くおそれがある。鉛を含有するプリフォームはんだの場合、空気中の酸素と二酸化炭素に曝されることで、水酸化物及び炭酸塩をその表面に形成する。プリフォームはんだの自動化した給送には、内部に螺旋構造軌道を備えた振動ボウルがしばしば使用される。ボウル内で振動して螺旋構造軌道を上がることによるプリフォームはんだの移動は、プリフォームはんだを空気にさらに曝露し、ボウル内に落ちて戻りボウル壁及び他のプリフォームはんだとこすれ合うことでさらに損傷させる。球体を前後に転動してプラテンの穴に入れ、その球体をボールグリッドアレー部品上に配置するような他の工程においてもまた、はんだ表面が傷つき、そして酸化される。
【0027】
表面の損傷、及びプリフォームはんだ上の酸化物及び炭酸塩によるコーティングは、はんだ球体をボールグリッドアレー(BGA)部品の金属パッド上に溶解又ははんだ付けする電子的な用途で使用されるような、プリフォームはんだが加工しやすいフラックスとともに溶解される場合には、はんだ付け工程の信頼性を損なう。はんだ金属表面の酸化物はまた、プリフォームを相互に付着させ、自動化した給送に問題を生じさせる場合がある。また、減圧ピックアップ装置は、プリフォームはんだを掴み取り、配置するが、酸化された又は表面が傷つけられたプリフォームはんだを正確に掴み取ることはできない。幾百ものはんだ球体がひとつの部品上に配置されている場合に、たった1つのはんだ球体の欠陥により、部品全体が機能を失う。ピンをプリント回路基板にはんだ付けしてバックパネルコネクタ盤を構築するのに用いられるワッシャなどの他のプリフォームはんだは、プリフォームがその充分なはんだ付け機能を損なう程の酸化又は損傷を受けた場合に、同様の信頼性の問題を生じうる。
【0028】
本発明は、好ましくはテトラステアリン酸ペンタエリスリトールである長鎖の有機酸エステルなどの水不溶性及び耐摩耗性の担体と、ステアリン酸などの腐食性が低い又は全く無い表面反応剤を含み、必要に応じて、好ましくはイソオクチルリン酸である帯電防止剤を添加することも可能であるが、好適な取り扱い性及び濡れ性の特性に影響してはならない。随意に、ベンジイミダゾールなどのはんだの酸化防止剤を調合物に添加して、長期保管中のプリフォームを保護することも可能である。プリフォームへの適用を容易にするために、イソプロピルアルコールなどの適切な揮発性の溶媒に保護性材料を溶解する。
【0029】
A)担体:
保護剤の担体部は、表面反応性剤と保護剤が組み付けまではプリフォーム表面に均等に分布し、かつ接触を密に保つような、保護性マトリクスを提供することを目的としている。担体は、水不溶性であるか、又は限られた水溶性を有する。担体は、例えば、室温(25℃)で固形物質を産生するために、ロジン又は水添ロジンなどのカルボン酸と反応又はエステル結合したペンタエリスリトール又はグリセロールである多価アルコールのエステルである。適当なグリセロールエステルの他の例として、モノ−、ジ−、及びトリ−ステアリン酸グリセロール及びパルミチン酸グリセロールなどのグリセリドがある。さらに他の適合する担体として、多価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール及びソルビトールのモノ−及びジ−ステアリン酸であるテトラステアリン酸ペンタエリスリトールがある。また、担体として機能するものには、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミトイル(セチル)アルコール、及びステアリルアルコールといった、12個〜約18個の炭素を有する脂肪アルコールがある。また、16個〜約26個の範囲内の炭素分子を一般に有する酸である長鎖カルボン酸のエステルも適当な担体を提供することができ、、例えば、メチルグリコール、エチルグリコール、プロピルグリコール、ブチルグリコール、及び例えばポリエチレングリコールであるポリグリコールのステアリン酸及びパルミチン酸、並びに例えばステアリン酸錫、ステアリン酸鉛、ステアリン酸コバルト、ステアリン酸マグネシウム及びステアリン酸リチウムであるこれら酸の金属塩である、。また、担体として有益であるとして示されているものに、ポリリモネン、及び炭化水素微結晶性ワックス、又は約400〜約800の範囲の高分子量の石油ワックスといった、限られた水不溶性を有した重合したワックス質の物質がある。担体の典型的な質量パーセントの範囲は、溶媒に溶解した固体の全質量に対し測定され、約20〜約90%となる。
【0030】
B):表面反応剤
好適な表面反応剤は、一般に低腐食性のカルボニル/カルボキシル剤の類から得られ、そのカルボニル/カルボキシ基はプリフォーム金属との優れた表面結合性を有する。腐食性は、表面反応剤が金属と反応することで、その金属を薄くし、又は損失させる能力と定義される。カルボン酸剤の例として、それを限定する訳ではないが、有機ジカルボン酸、モノカルボン酸、及びそれらのペルフルオロ類似体がある。これらは、その低腐食性と、要求されているプリフォームの取扱い特性との適合性から選ばれている。しかし、上記の水不溶性担体の使用は、腐食の心配がいらない、すなわち、水不溶性担体が反応性物質を「封入」し、プリフォーム表面との反応を制限することで腐食を阻害する、例えば、酪酸、マロン酸、マレイン酸といった、1〜約6個の炭素を有する低分子量のモノ−、及びジ−カルボン酸である水溶性表面反応剤の使用を可能とする。また、前記物質は、好適な炭素数の範囲が約6〜約18個であるアゼライン酸、ステアリン酸などの、より高分子量のジカルボン酸及びモノカルボン酸とすることも可能であるが、好ましくはモノカルボン酸である。他の好適な高分子量の酸は、イソフタル酸及びテレフタル酸、ウンデカン酸及びそのペルフルオロ類似体、及び上記した全ての酸のアンモニウム塩である。クローダケミカルカンパニー(Croda Chemical Company)よりクロドフォス(Crodofos)CAPとして市販されている、イソオクチルリン酸及びそのペルフルオロ類似体もまた、良好な表面反応性を示す。典型的な表面反応剤の質量パーセントの範囲は、溶媒に溶解した固体の全質量に対し測定したとき、約5〜約80%となる。
【0031】
C):酸化防止剤
プリフォームはんだの保護剤組成物を本発明の目的としているが、特異的な酸化防止剤は、本発明の処方物において任意選択であり必須ではないが、プリフォームの長期の保管寿命を確実にする意味で有益である。一般にはアゾールであり、好ましくはイミダゾール、ベンズイミダゾール及び尿素が好ましく、同様に、10〜20個の原子数からなる炭素鎖のカルボン酸のアミン、及びそのペルフルオロ類似体は、好ましくはペルフルオロウンデカン酸アミンである。酸化防止剤は、プリフォームが「無鉛」の種類であり、銅及び/又は銀を含有するときに、極めて有益である。これまで説明してきた低分子量の表面反応剤と同様に、水不溶性の担体の使用は、酸化防止剤が高湿度環境との相互作用により除去されることを防ぐ。典型的な保護剤の質量パーセントの範囲は、これを使用し、溶媒に溶解した固体の全質量を測定したとき、0〜約40%であった。
【0032】
D):帯電防止剤
帯電防止剤は、取り扱いの際にプリフォーム上に静電気が蓄積しないような電気伝導率レベルを提供する。典型的な帯電防止物質は、前記の低分子量の表面反応剤、それらのアミン塩、及びそのペルフルオロ類似体を含む。好適な帯電防止剤は、例えば、BASFのラロスタット(Larostat)264Aとして市販されている、ジステアリンジメチルアンモニウムエチル硫酸塩といった、脂肪族第四級アンモニウム化合物である。前記のリン酸物質は、帯電防止剤としても利用可能である。低級の非晶質カーボン、グラファイト、及びフラーレンとして公知の類の物質は、プリフォームに添加すると帯電防止性を示す。フラーレンは直径約7〜15Åの巨大な炭素ケージ分子である。これら剤の使用は、溶媒の変化に従ってなされるべきである。一般に、トルエン及び二硫化炭素といった溶媒は、他の成分への添加前に、炭素と混合しなければならない。典型的な帯電防止剤の質量パーセントの範囲は、これを使用し、溶媒に溶解した固体の全質量を測定したとき、約1〜約20%であった。
【0033】
E):溶媒
プリフォーム上への添加の簡便化、及びコーティングの均等な分布を促進するために、活性型の保護剤を適切な揮発性の有機溶媒又は溶媒の混合物に溶解することが好ましい。一般に溶媒は、分子量が約15〜約90の範囲の、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、酢酸メチル、及び酢酸エチルなどの、低分子量のアルコール及びエステルからなる群より選択される。揮発性の酢酸ケトンもまた使用することが可能である。これらの物質は高い溶解性及び揮発性を提供する。この溶解性は、環境上及び取扱い上の理由から、選択された活性型の保護物質が最小量の溶媒に確実に溶解するために必要となる。揮発性はプリフォームの効率的な加工に役立つ。揮発性は、本発明においては、急速に蒸発する傾向として定義される。実際的な見地から、このことは、室温(25℃)にて蒸気圧が2.5kPaより大きく、かつ沸点が100℃より小さくなることを意味している。上記の溶媒、及び他の同様な特性を有した溶媒は、このように高い揮発性を有すると考えられる。実際、プリフォームはんだに保護剤組成物を添加すると、溶媒は急速に蒸発する。溶媒の一般的な質量パーセントの範囲は、全ての成分の全質量に対する溶媒の質量を測定した結果、約60〜約99%であった。
【0034】
F):表面反応性の保護剤組成物の調製
保護剤組成物の調製方法は簡単明白である。溶媒を混合ボウルに加え、そして、混合しつつ、担体構成物、表面反応剤及び酸化防止剤を含む固体成分、並びに使用する場合には帯電防止剤が混合ボウルに添加される。混合物は、固体成分が溶解するまで攪拌される。一般に、溶液内の固体の濃度は約0.01質量%〜約0.12質量%となり、好ましくは約0.07質量%〜約0.26質量%の範囲となる。
【0035】
G):保護剤組成物の使用
保護剤組成物をプリフォームはんだへ添加する方法は比較的単純ではあるが、工程は、その後の取り扱いと輸送の際にプリフォームのぬれ性を保つために、プリフォームはんだ上に保護剤組成物が均一な層となることを確実にするべく制御されていなければならない。適切な分量の保護剤組成物のプリフォームへの適用は、プリフォームはんだ表面に損傷及び酸化がないことと、保護剤組成物のはがれがないことを確実にする。本発明の保護剤組成物は、プリフォームの表面と化学的に反応し、結合を確実にする。保護剤組成物は、若干表面が酸化したプリフォームにも添加され、酸化を阻害し、プリフォーム表面の安定性を確実にする。
【0036】
保護剤組成物をプリフォームに適用する好適な方法は、ふさわしい様式で運搬されたプリフォームに組成物を均一に噴霧することにより、プリフォームに均一にコーティングを適用するというものである。回転制御ドラムがその用途では好適である。そのドラムは、内部にフィンを備え、回転時(タンブリング時)のプリフォームの攪拌を補助する。回転と攪拌はプリフォームと溶液との完全なる混合を確実にする。
【0037】
秤量したプリフォームは回転式タンブラ容器に添加され、実施態様に基づき、秤量した溶液状の表面反応性の保護剤は、溶液状の表面反応保護剤を噴霧器に添加される。均一なコーティングを保障する最も適切な方法は、秤量した表面反応性保護剤組成物を適用することにある。秤量したプリフォームは、反応性保護剤溶液の一様で均一なコーティングを確実にする。保護剤溶液の分量は、プリフォームの累積した表面積に基づいている。表面積は、合金の密度と形状に基づき当量として表現される。
【0038】
ドラムの回転は、コーティングされるプリフォームの寸法と精巧さに応じて、適切な速度に調整される。好ましくは、加圧ガス源を用いて、溶液をプリフォーム上に噴霧する。そのガス圧は、コーティング溶液を霧状にしてプリフォームに適用する。保護剤組成物の性質に応じて、ガスを加熱してもよく、加熱しなくてもよい。そのガスは、窒素、アルゴン及びヘリウムからなる群より選択することができる。
【0039】
保護剤組成物のプリフォームへの適用は、保護剤組成物の量が、コーティングしたプリフォームの全質量に対して1〜90ppmの範囲である場合に、優れた結果を示す。
【0040】
さらに、測定された保護剤組成物の溶液を、適当な容器内にある秤量したプリフォームに添加して、保護剤組成物によりプリフォームを確実に均一に覆うことができる。次いで、溶媒を蒸発させつつ、プリフォームと保護剤溶液を回転して、一様で均一なコーティングを確実にする。
【0041】
保護剤組成物のプリフォームへの他の適用方法には、効果的であることが示されている、流動床又は送風機の使用が含まれる。空気中を浮遊させることができる、個々が約0.15グラムより軽いプリフォームに対しては、同様の手順で保護剤組成物を適用するとともに乾燥させることが可能である。より重いプリフォームに対しては、混合ドラム、回転ドラム、又は振盪台を用いて保護剤物質を予め添加してもよい。混合後、蒸発が完了するまで、空気又は不活性ガスをプリフォーム上に送風することで、流動床又は送風機で溶媒を乾燥する。
【0042】
保護剤組成物をプリフォームに適用する他の方法は、メッシュ状のバスケット又は容器に、秤量されたプリフォームと保護剤溶液を入れたバスケット又は容器を封止した容器内に配置した後、保護剤組成物がプリフォーム上に均一に分布するまで攪拌することである。次に、封止した容器を吸引し、過剰の溶媒を除去する。
【0043】
保護剤組成物をプリフォームに適用する他の方法は、シリンダの底部からプリフォームを装填する、マルチステーションシリンダの利用を可能とする。シリンダの内部壁に底部から上部に向かって横行螺旋状に帯板が取り付けられ、シリンダが回転すると、シリンダの帯板に沿って底部から上部に向かってプリフォームが移動する。保護剤組成物は、噴霧又は飽和により、容器の底部にあるプリフォーム上に適用される。プリフォームすなわち球体が上方に移動するにつれて、これらが撹拌されて溶媒の均一な分布状態を確実にする。過剰の溶媒の除去は、シリンダ上部での蒸発、又は操作後に流動床若しくは送風機を用いることによりなされる。
【0044】
一般に、0.13質量%の保護剤組成物の溶液約1mlを、100グラムのはんだ球体に適用し、プリフォーム、好ましくは球体の表面均一にコーティングするとともに反応させると、約0.001%濃度で約70Å〜約90Åの範囲の厚さで適用される。
【0045】
次の処方物の例は、当業者が具体的な実施形態として本発明の原理を用いることを可能とするためのものであり、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。
【実施例1】
【0046】
A)本発明に従った、好ましい反応性保護剤組成物は、その適用を容易とするため78質量部のイソプロパノール中に溶解した、0.24質量部のステアリン酸メチル、0.25質量部のステアリン酸錫、及び0.51質量部のステアリン酸を含む。この組成物は、乾燥した成分をイソプロパノール中で攪拌することにより形成される。
【0047】
B)本処方物は、78質量部のイソプロパノール中に溶解した、2.18質量部のステアリン酸メチル、0.55質量部のイソフタル酸、及び1.39質量部のペルフルオロオクタン酸アンモニウム塩を含む。組成物は、乾燥した成分をイソプロパノール中で攪拌することにより形成される。
【0048】
C)本処方物は、78質量部のイソプロパノール中に溶解した、0.質量部のポリリモネン、0.5質量部のアゼライン酸、及び0.1質量部の尿素を含む。組成物は、乾燥した原料をイソプロパノール中で攪拌することにより形成されている。
【0049】
D)本処方物は、78質量部のイソプロパノール中に溶解した、0.01質量部のベンズイミダゾール、及び0.4質量部のペルフルオロオクタン酸を含み、この処方物はその後、0.5質量部のC60フラーレン及び99.5質量部のトルエンからなる溶液の0.1質量部と混合される。
【0050】
E)本処方物は、等質量部のイソプロパノール及びアセトンから構成された混合物の78質量部中に溶解した、0.05質量部のステアリン酸、及び0.05質量部の平均分子量500のペトロレンワックスを含む。組成物は、乾燥した成分をイソプロパノール/アセトン混合物に攪拌することにより形成されている。
【0051】
F)本処方物は、78質量部のエタノール中に溶解した、0.1質量部のステアリン酸、及び0.1質量部のポリエチレングリコール(分子量4000)モノステアリン酸を含む。組成物は、乾燥した成分をエタノールと攪拌することにより形成されている。
【0052】
G)本処方物は、78質量部のプロパノール中に溶解した、0.13質量部のパルミチン酸、及び0.13質量部のテトラステアリン酸ペンタエリスリトールを含む。組成物は、乾燥した成分をプロパノールと攪拌することにより形成されている。
【0053】
H)本処方物は、78質量部のイソプロパノール中に溶解した、0.0質量部のステアリン酸、及び0.1質量部のステアリン酸メチル、及び0.02質量部のペンタデカフルオロオクタン酸アンモニウム塩を含む。組成物は、乾燥した成分をイソプロパノールと攪拌することにより形成されている。
【0054】
I)本処方物は、78質量部のイソプロパノール中に溶解した、0.05質量部のステアリン酸、0.1質量部のステアリン酸メチル、及び0.02質量部のペルフルオロアジピン酸を含む。組成物は、乾燥した成分をイソプロパノールと攪拌することにより形成されている。
【0055】
J)本処方物は、78質量部のイソプロパノール中に溶解した、0.05質量部のステアリン酸、0.1質量部のステアリン酸メチル、及び0.02質量部のベンズイミダゾールを含む。組成物は、乾燥した原料をイソプロパノールと攪拌することにより形成されている。
【0056】
K)本処方物は、78質量部のイソプロパノール中に溶解した、0.05質量部のステアリン酸、及び0.05質量部のステアリン酸メチルを含む。組成物は、乾燥した成分をイソプロパノールと攪拌することにより形成されている。
【実施例2】
【0057】
本発明の保護性組成物が、単にプリフォームをコーティングするだけではなく、プリフォームはんだの金属表面と反応しているかを調べるために、試験を行った。
【0058】
化学分析用電子分光法(ESCA)とも呼ばれるX線光電子分光法(XPS)は固体の表面を解析する強力な装置である。表面における元素組成、及び表面上の原子の局所的な化学環境に関する定量的な情報が得られる。単色X線ビームを、真空チャンバ内で表面に照射し、表面内10ミクロンまで貫入する。
【0059】
ある程度のX線エネルギーは吸収され、初期光子エネルギーと元素の核電子の電子結合エネルギーの差分と略同等の運動エネルギーをイオンに与える光電子の放出(光電子放出)が引き起こされる。これは、特定の電子副殻に対する、固体内の原子のイオン化エネルギーである。全ての元素は各々独自の原子軌道を有し、そのことで結合エネルギーにより、どの元素が存在するかを定量的に特定することが可能となる。X線は表面の深部まで貫入することができるが、光電子は拡散せずには50オングストロームまでしか到達することができない。
【0060】
X線を照射した場合、全ての元素は各々異なった強度の一連の結合エネルギー示す。鉛(Pb)及び錫(Sn)の2つのはんだ金属について、具体的な標準結合エネルギー電子ボルト(eV)のピークが選択されている。
元素 原子番号 軌道 結合エネルギー
Sn 50 3d5 484.6
Pb 82 4f7/2 136.2
【0061】
金属表面の核電子の結合エネルギーは、金属表面に結合する化学物質に対し、感受性が高い。金属原子もまた化学コーティングに結合し、その核電子の結合エネルギーを変化させる。化学シフトは、化合物内の元素に対する光電子線のエネルギーとそれに相当する純粋状態にある元素のエネルギーとの差である。例えば、陽イオン化学コーティングと反応した際などの酸化状態にある金属原子は、純金属と比較して、結合エネルギーシフトを示す。化学シフトにより、XPSは、表面化学を調査するための強力な装置となる。
【0062】
金属表面が化学物質によりコーティングされている場合に、結合エネルギーシフトがあるのであれば、コーティングされた表面を対象にX線照射し、光電子放出を測定することで、このシフトを測定することができる。金属に特異的である核電子の測定された結合エネルギーは、化学コーティングと金属表面との反応によっては、10eVまでシフトする。
【0063】
化学コーティングが金属表面と反応しない場合には、化学シフトがほとんど又は全く存在しない。コーティング組成物の特異的な成分と金属との化学反応を証明するために、実際にコーティング組成物とはんだ球体との間で化学反応が起こっていることを示すための試験を行った。
【0064】
X線光電子分光法を用い、表面の元素組成物と、表面原子の局所的な化学環境の定量的な情報を得た。試験用計測器には、最大15kVの電位を有する電子を照射するための二酸化トリウムフィラメントを有するオムニクロン(Omnicron)XPS/ESCA分光器を用いた。照射源レシーバは、マグネシウムによる1486.6eVの弱いX線照射を発する300ワットのマグネシウム陽極である。光電子の検出には、10−9ミリバールより小さい高真空にすることが可能なチャンバ内に試料を配置することが必要となる。この試験用計測器は平面にしなくてはならなく、そのことで寸法が10mm×10mm×4mmの厚さであるSn63Pb37はんだの試料が、表1に記載のコーティングを用いて、全てのコーティングが70〜90Åの厚さになるように調製された。ベンチマーク標準として使用される、コーティングしていないはんだ試料は、湿式に研磨され、洗浄され、分析チャンバ内でスパッタされてエッチングされる。個々のコーティングされた、又はコーティングされていない試料は、XPS/ESCAチャンバ内に配置され、自動ビーム強度、ラスタ、及びシグナルの増幅が実施される。
【0065】
X線ビームは、Sn63Pb37純金属の表面に照射され貫入し、表1に示すように、鉛に対しては136.2eV、錫に対しては484.6eVの光子エネルギーを放出する。この化学シフトは、化合物内の元素の光電子線のエネルギーとそれに対応する純粋状態にある元素のエネルギーとの差である。試験では、鉛(Pb)と錫(Sn)の2種のはんだ金属が利用されている。その結果は表1に示されている。
【0066】
【表1】

【0067】
鉛(Pb)と錫(Sn)の基準ピークは判別しやすく、これら2種の金属の特定に利用することができる。金属試料上への多様なコーティングは化学シフトを引き起こし、コーティングと金属の反応による電子ボルトの差として測定することができる。材料をコーティングした錫の化学シフトは鉛のそれほどではないが、どのコーティングが反応しているかを調べるには充分に有意である。実施例2により保護剤組成物の2種の好適な成分は、ステアリン酸及びステアリン酸メチルであり、表に示されている。カルボン酸は表面反応の性質を有する成分である。それらの酸は、好ましくはステアリン酸であり、金属表面への強い化学結合を表すような顕著な化学シフトを示す。一方、ステアリン酸メチルは、表面反応剤よりも非常に小さな化学シフトを示す。メチルステアリン酸は、組成物内で担体として機能する成分である。担体は、表面反応性剤を均等に分布し、金属との接触を密に保つような保護性マトリクスを提供する。
【0068】
ペルフルオロウンデカン酸アミン及びベンズイミダゾールは組成物中で酸化防止剤として機能し、金属表面と反応するので多少の化学結合を呈する。シリコン及び石油系油分といった不活性物質は、金属表面をコーティングはするがこれとは反応しないが、このことは非常に少ない分量の化学シフトにより証拠付けられている。表1に示されたデータより、実質的な化学反応は、2もしくはそれ以上の化学シフトで起こることが分かる。
【実施例3】
【0069】
この試験では、ボールグリッドアレーに取り付けられる、電子部品産業の典型的な寸法である0.508mm(0.020インチ)のはんだ球体が選択されている。はんだ合金は、63%錫で37%鉛である。大気環境中の自動化した及び半自動化した配置装置により、球体が経験する装填及び転動作用をシミュレートし、制御された、反復可能な結果を得るために、日本の神鋼電機株式会社のC4S3速度コントローラ付ME−14Cモデルである可変振動数ボウルフィーダを用いて、螺旋構造軌道をボウルの上部まで移動させるととも球体がボウルの内部に落ちて戻るまで、球体を振動させた。コーティングしていない球体は、1時間毎にサンプリングを行いつつ、リサイクル振動式ボウルで6時間加工処理された。球体は時間の経過とともに、相当均一に黒色に変色していく。結果については表2を参照。
【0070】
新規に製造されたプリフォームはんだは、本実施例での球体は、明るい淡い灰色を呈した反射面を呈する。球体の酸化が進行すると、反射力が低下し、色が淡い灰色からほとんど黒色にまで変化する。多様な経過期間の試料を比較するための定量的な数値を得るために、グレースケールイメージングを用いた。ツーリングプレートに成型された16.3871立方センチ(1平方インチ)の孔に充填するのに充分な量のはんだプリフォーム球体がイメージングに用いられた。均等に分散し拡散した照明を用いて、単色(黒及び白)デジタルカメラは、分析用のイメージを作成する。コンピュータイメージング分析アルゴリズムは、シミュレーションした経過時間の定量的な数値を決定する。
【0071】
グレースケールイメージ分析は、電子的な組み付けの試験及び検査装置として一般的に使用される。グレースケールは、0〜100のスケールで示す、様々な影又は明るさの灰色の程度であると国際無線技術学会(IRE)で定義されている。時折、そのスケールは白色のピークの比率とも呼ばれる。このことにより、例えば、評価が20のグレースケールならば暗灰色だと想定され、評価が70ならばとても明るい灰色だと想定される。
【0072】
多様な組成物からなる反応性保護剤の有効性の試験を加速するための方法が発達した。振動式フィーダに用いられたものと同じロットの球体を、容器内で振動することで加工し、そして上記したようにグレースケールイメージ分析により評価した。この試験では、20g(球体約35,000個)のプリフォームはんだを、ねじ蓋つきの7ミリリットルプラスチック(HDPE)シンチレーションバイアル内に配置する。バイアルは、カクテル式振盪機とも呼ばれている、手動式振盪機に配置され、多様な試験時間において180rpmに設定する。10分間隔で試料を取り出し、グレースケールの変化を検査した。表2は、1時間毎にサンプリングした工業用振動式フィーダ、及び10分毎にサンプリングした手動式振盪機の比較グレースケール評価を示している。このデータの統計上の相関関係から、手動式振盪機の1時間は振動式フィーダの14時間に相当することが分かる。
【0073】
【表2】

【0074】
手動式振盪機は球体の暗色化を加速することができるという、この知見を用いて、反応性組成物の最適厚みを決定するために、更なる試験を行った。
【0075】
溶液が調製され、球体表面に多様な増加量の表面反応性の保護剤が形成するように球体が加工された。コーティングの厚さは質量パーセントで測定され、例えば、10ppmは0.001質量パーセントとなる。錫63%と鉛37%からなるプリフォームはんだへの10ppmのコーティングは、70〜90オングストロームの厚さと同等となる。コーティングされた後は、球体はグレースケール分析に供され、ある程度まではコーティング自体が球体金属表面の反射力を低下させ、結果としてグレースケール評価を増加させることがわかった。そして、球体は、手動式振盪機に配置され、1時間、2時間、3時間の間の加速攪拌に供され、コーティングされていない球体と比較された。その結果を表3に示す。
【0076】
【表3】

【0077】
この試験から、1ppm〜約90ppmの反応性保護剤のコーティングは、工程中の受けた攪拌による表面の酸化及び損傷を抑制することで、はんだ球体の性能を高めるということがわかる。コーティングははんだ金属表面と反応し、有機物コーティングの反射力ははんだ金属表面のそれよりも低いため、コーティングの厚さの増加に伴い初期のグレースケール評価は減少することとなり、表面の反射力の低下へとつながる。5ppm〜約20ppmの範囲の厚さが、給送、配置、及びはんだ付け工程に妨げられることなく、最適な被覆保護を提供する。しかし、約30ppm(およそ200〜250オングストローム)以上と、コーティングが厚くになるにつれ、なおもはんだ表面の損傷及び酸化からの保護を提供してはいるが、一部の用途では超過したコーティング物質が球体から剥がれ落ち、又は球体同士が互いに結合しはじめる場合がある。
【0078】
具体的で好ましい実施形態とともに本発明を詳細に説明してきたが、当業者にとっては、上記の説明を鑑みて、多数の代替物、変更物、及び変形物明白であることが分かろう。従って、添付した特許請求の範囲が、本発明の真理、範囲及び精神を満たすような、かかる代替物、変更物、及び変形物のいずれをも包含することを企図している。プリフォームを使用して電子パッケージの組み付けるには、良好な濡れ性、良好な濡れ性の保護、及びプリフォームの容易な取り扱いを必要とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属プリフォームの濡れ性を保護する反応性の保護性組成物において、該組成物は、
担体組成物、
表面反応剤、
帯電防止物質、
及び溶媒を含むことを特徴とする。
【請求項2】
前記担体組成物は、長鎖カルボン酸のエステルからなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記カルボン酸の炭素鎖は、約16〜26の炭素原子からなる、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記担体組成物は、長鎖カルボン酸の金属塩からなる群より選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記カルボン酸の炭素鎖は約16〜26の炭素原子からなる、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記担体組成物は、炭素鎖が約12〜約18の炭素の脂肪アルコールからなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記脂肪アルコールは、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、及びステアリルアルコールからなる群より選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記担体は、重合されたワックス状の物質、及び高分子量の微結晶性ワックスからなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記高分子量の微結晶性ワックスの炭素鎖の長さは、約60〜100の炭素原子である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記担体の量は、質量換算で約20〜約90%の範囲である、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記担体組成物は、ステアリン酸メチル、ステアリン酸エチル、ステアリン酸プロピル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ポリグリコール、及びパルミチン酸エステルからなる群より選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項12】
前記担体組成物は、ステアリン酸錫、ステアリン酸鉛、ステアリン酸コバルト、ステアリン酸マグネシウム、及びステアリン酸リチウムからなる群より選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項13】
前記担体組成物は、ポリリモネン、微結晶性ワックス、及び約400〜約800の範囲内にある高分子量の石油ワックスからなる群より選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項14】
前記担体は水不溶性である、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記表面反応剤はカルボン酸である、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記表面反応剤は、ジカルボン酸、及びモノカルボン酸からなる群より選択される、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記表面反応剤は、アゼライン酸、及びステアリン酸からなる群より選択される、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記表面反応剤は、イソフタル酸、テレフタル酸、及びウンデカン酸からなる群より選択される、請求項15に記載の組成物。
【請求項19】
前記表面反応剤は、ジカルボン酸及びモノカルボン酸のペルフルオロ類似体及びアンモニウム塩からなる群より選択される、請求項16に記載の組成物。
【請求項20】
前記表面反応剤は、イソフタル酸及びテレフタル酸のペルフルオロ類似体及びアンモニウム塩からなる群より選択される、請求項18に記載の組成物。
【請求項21】
前記表面反応剤の量は、質量換算で約5〜約80%の範囲である、請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
前記帯電防止物質は、低分子量表面反応剤、表面反応剤と低分子量表面反応剤のペルフルオロ類似体のアミン塩、脂肪族第四級アンモニウム化合物、非晶質炭素、グラファイト、並びにフラーレンからなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項23】
前記帯電防止剤の量は、質量換算で約1〜約20%の範囲である、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
酸化防止剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項25】
前記酸化防止剤は、イミダゾール、ベンジイミダゾール、尿素、炭素鎖が10〜20の原子を有するカルボン酸のアミン、及び該アミンのペルフルオロ類似体からなる群より選択される、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記酸化防止剤は、ペルフルオロウンデカン酸アミンである、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記酸化防止剤は、アゾールである、請求項24に記載の組成物。
【請求項28】
前記溶媒は、有機溶剤、又は有機溶媒の混合物からなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項29】
前記溶媒は、低分子量アルコール、低分子量アルコールのエステル、及び揮発性ケトンからなる群より選択される、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
前記溶媒は、低分子量アルコール、及び分子量が約15〜90の範囲にある低分子量アルコールのエステルからなる群より選択される、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
前記溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、酢酸メチル、及び酢酸エチルからなる群より選択される、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
前記溶媒は、アセトンである、請求項29に記載の組成物。
【請求項33】
金属プリフォームの表面と化学的に反応する、請求項1に記載の組成物。
【請求項34】
外面に保護剤組成物を有するはんだ合金を含み、該組成物がはんだ合金の金属と化学的に反応することを特徴とするプリフォームはんだ。
【請求項35】
前記保護剤組成物は、はんだ合金の表面上で約1ppm〜約90ppmの厚さとなる、請求項34に記載のプリフォームはんだ。
【請求項36】
前記はんだは、錫、鉛、ビスマス、インジウム、銀、亜鉛、及び銅からなる群より選択される金属の様々な組み合わせ及び配合率からなる、請求項34に記載のプリフォームはんだ。
【請求項37】
保護剤組成物が、担体組成物、表面反応剤、及び帯電防止剤を含む、請求項34に記載のプリフォームはんだ。
【請求項38】
前記担体組成物は、長鎖カルボン酸エステルからなる群より選択される、請求項37に記載のプリフォームはんだ。
【請求項39】
前記カルボン酸の炭素鎖は、約14〜26の炭素原子である、請求項37に記載のプリフォームはんだ。
【請求項40】
前記担体組成物は、金属塩、及び長鎖カルボン酸からなる群より選択される、請求項39に記載のプリフォームはんだ。
【請求項41】
前記担体は、重合されたワックス状の物質、及び高分子量の微結晶性ワックスからなる群より選択される、請求項37に記載のプリフォームはんだ。
【請求項42】
前記微結晶性ワックスの分子量が約400〜約800である、請求項37に記載のプリフォームはんだ。
【請求項43】
前記担体の分量が、約20%〜約90%の質量の範囲である、請求項37に記載のプリフォームはんだ。
【請求項44】
前記担体組成物は、ステアリン酸メチル、ステアリン酸エチル、ステアリン酸プロピル、ステアリン酸ブチル、及びパルミチン酸エステルからなる群より選択される、請求項40に記載のプリフォームはんだ。
【請求項45】
前記担体組成物は、ステアリン酸錫、ステアリン酸鉛、ステアリン酸コバルト、ステアリン酸マグネシウム、及びステアリン酸リチウムからなる群より選択される、請求項40に記載のプリフォームはんだ。
【請求項46】
前記担体は、ポリリモネン、微結晶性ワックス、及び石油ワックスからなる群より選択される、請求項37に記載のプリフォームはんだ。
【請求項47】
前記担体は、水不溶性である、請求項37に記載のプリフォームはんだ。
【請求項48】
前記表面反応剤は、カルボン酸である、請求項37に記載のプリフォームはんだ。
【請求項49】
前記表面反応剤は、ジカルボン酸、及びモノカルボン酸からなる群より選択される、請求項48に記載のプリフォームはんだ。
【請求項50】
前記表面反応剤は、アゼライン酸、及びステアリン酸からなる群より選択される、請求項48に記載のプリフォームはんだ。
【請求項51】
前記表面反応剤は、イソフタル酸、テレフタル酸、及びウンデカン酸からなる群より選択される、請求項50に記載のプリフォームはんだ。
【請求項52】
前記表面反応剤は、ジカルボン酸及びモノカルボン酸の、ペルフルオロ類似体及びアンモニウム塩からなる群より選択される、請求項37に記載のプリフォームはんだ。
【請求項53】
前記表面反応剤は、イソフタル酸及びテレフタル酸の、ペルフルオロ類似体及びアンモニウム塩からなる群より選択される、請求項52に記載のプリフォームはんだ。
【請求項54】
前記表面反応剤の分量が、約5%〜約80%の質量の範囲である、請求項37に記載のプリフォームはんだ。
【請求項55】
前記帯電防止物質は、低分子量表面反応剤、表面反応剤、低分子量表面反応剤のペルフルオロアナログ及びアミン塩、脂肪族第四級アンモニウム化合物、無定形炭素、グラファイト、並びにフラーレンからなる群より選択される、請求項37に記載の組成物。
【請求項56】
前記帯電防止物質の分量が、質量換算で約1%〜約20%の範囲である、請求項55に記載のプリフォームはんだ。
【請求項57】
酸化防止剤を含む、請求項37に記載の組成物。
【請求項58】
酸化防止剤は、イミダゾール、ベンジイミダゾール、尿素、炭素鎖が10〜20の原子を有するカルボン酸のアミン、及び該アミンのペルフルオロ類似体からなる群より選択される、請求項57に記載の組成物。
【請求項59】
酸化防止剤は、ペルフルオロウンデカン酸アミンである、請求項58に記載の組成物。
【請求項60】
前記酸化防止剤は、アゾールである、請求項57に記載の組成物。
【請求項61】
前記担体組成物は、炭素鎖が約12〜約18の炭素となる脂肪アルコールからなる群より選択される、請求項37に記載の組成物。
【請求項62】
前記脂肪アルコールは、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、及びステアリルアルコールからなる群より選択される、請求項62に記載の組成物。

【公表番号】特表2007−508938(P2007−508938A)
【公表日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534091(P2006−534091)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【国際出願番号】PCT/US2004/032123
【国際公開番号】WO2005/038070
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(506120817)ケイエイシー ホールディングス インコーポレイテッド (1)