説明

プリンタおよび記録用紙の搬送量調整方法

【課題】記録用紙の搬送量調整を容易に行い、高精度搬送し、色ずれ等の印刷不良を防止し、高品質印刷画像を印刷する。
【解決手段】駆動源1により回転する軸にプラテンギア3を装着したプラテンローラ2と、プラテンローラの上流側で、軸に第1紙送りギアを装着した第1紙送りローラ7と、プラテンローラの下流側で、軸に第2紙送りギアを装着した第2紙送りローラと、プラテンギアと第1紙送りギア間で、駆動力伝達する1乃至複数のギアの第1分岐伝達ギア群13と、プラテンギアと第2紙送りギアとの間で、駆動力伝達する1乃至複数のギアの第2分岐伝達ギア群14とを備え、第1および第2分岐伝達ギア群のギアのうち1つは、歯筋が軸方向に対して傾斜し、互いの歯筋傾斜方向が同一の傾斜ギア部である第1アイドルギア15および第2アイドルギア16であり、第1アイドルギアおよび第2アイドルギアのスラストによる可動距離を調整する手段を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録用紙の搬送方向における上流側および下流側に配設された紙送り手段により、記録用紙を往復搬送しながらインク色を重ねて、カラー印刷を行うプリンタおよび記録用紙の搬送量調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、記録用紙を往復搬送しながら、熱転写によりインク色を重ねて、カラー印刷を行うプリンタが利用されている(特許文献1参照)。一般に、このようなプリンタは、記録用紙の搬送方向における上流側に配設された第1紙送り手段と、下流側に配設された第2紙送り手段とを備えている。前記第1、第2紙送り手段は、それぞれ回転駆動可能とされた第1紙送りローラおよび第2紙送りローラと、前記第1紙送りローラおよび第2紙送りローラに対して圧接し、従動回転可能とされた第1圧接ローラおよび第2圧接ローラとからなり、記録用紙を各紙送り手段においてそれぞれ第1紙送りローラおよび第2紙送りローラと第1圧接ローラおよび第2圧接ローラとの間に挟持し、紙送りローラの正逆回転により正逆方向に搬送するように構成されている。
【0003】
また、前記第1紙送り手段と第2紙送り手段との間には、記録用紙に所望の印刷を行う印刷手段が配設されている。前記印刷手段は、駆動モータから伝達される駆動力により回転駆動可能とされたプラテンローラと、前記プラテンローラに対して接離可能とされるサーマルヘッドとを備えている。また、前記サーマルヘッドと記録用紙との間には、複数色のインク層が連続形成されたインクリボンが引き回しされており、サーマルヘッドをヘッドダウンさせてインクリボンと記録用紙をプラテンローラとの間に挟持し、サーマルヘッドの発熱素子を選択的に通電させて、インクリボンのインクを記録用紙に熱転写するように構成されている。
【0004】
また、プラテンローラおよび各紙送りローラの端部にはそれぞれギアが装着され(以下、それぞれプラテンギア、第1紙送りギアおよび第2紙送りギアという。)、プラテンギアと第1紙送りギアとの中間位置、およびプラテンギアと第2紙送りギアとの中間位置にはそれぞれ中間ギアが配設されており、前記駆動モータからプラテンギアに伝達される駆動力を分岐して伝達することにより、各紙送りローラが回転駆動されるように構成されている。
【0005】
前記各中間ギアはそれぞれギア支持軸により軸支されており、各ギア支持軸はそれぞれ各中間ギアと紙送りギアとの軸間距離を変化させることで、各中間ギアと紙送りギアの間のバックラッシュ量をそれぞれ調整し、プラテンギアに伝達された駆動モータの駆動力が各中間ギアを介して各紙送りギアにそれぞれ伝達されるタイミングを調整可能に配設されている。すなわち、前記駆動モータが動作してから各紙送りローラがそれぞれ回転し始めるタイミング(以下、起動タイミングという。)を調整することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−114415
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来のプリンタにおいては、記録用紙の搬送量を駆動モータのステップ数で制御しているため、第1紙送りローラおよび第2紙送りローラにおいて、前記起動タイミングにずれが生じるなどの原因により、搬送方向へ搬送する際の搬送量と、逆搬送方向へフィードバックさせる際の搬送量との間に誤差が生じることがあった。その場合、記録用紙を往復搬送しながら、順に各インク色の画像を熱転写していくと、実際に印刷された印刷画像には、各インク色の画像の位置のずれ、いわゆる色ずれなどの印刷不良が生じてしまうという問題があった。
【0008】
また、前述したようなプリンタにおいては、前記各中間ギアのギア支持軸の位置調整、すなわち、各中間ギアと各紙送りギアとの軸間距離の調整は、所望の軸間距離だけ離間して形成された一対の装着孔を有する複数のブロックを、各ギア支持軸、各紙送りローラおよびプラテンローラの支持軸にそれぞれ装着させることにより行われていたた。この調整においては、予め、所定の距離だけ離間して形成された一対の装着孔を有する複数のブロックを製作しておく必要があり、調整作業が困難であるという問題があった。また、各ギア支持軸の軸間距離は、前記一対の装着孔の形成位置により決定されるため、シビアな調整を行うことはできない。また、このような調整の結果、第1アイドルギアと第1紙送りギアの間のバックラッシュの量、および第2アイドルギアと第2紙送りギアの間のバックラッシュの量が小さすぎた場合には、印刷画像にいわゆるジッタが発生することがあった。
【0009】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、簡単な調整作業によって記録用紙の搬送量の調整を行うことができ、高精度な記録用紙の搬送を行い、いわゆる色ずれなどの印刷不良を防止して、高品質な印刷画像を印刷可能なプリンタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の課題を解決するために、本発明のプリンタは、駆動源の駆動力により正逆方向に回転駆動可能とされ、回転軸の一端部にプラテンギアが装着されたプラテンローラと、記録用紙の搬送方向における前記プラテンローラの上流側において、前記駆動源の駆動力により正逆方向に回転駆動可能に配設され、回転軸の一端部に第1紙送りギアが装着された第1紙送りローラと、記録用紙の搬送方向における前記プラテンローラの下流側において、前記駆動源の駆動力により回転駆動可能に配設され、回転軸の一端部に第2紙送りギアが装着された第2紙送りローラと、前記プラテンギアと第1紙送りギアとの間の動力伝達経路上に配設され、前記駆動源の駆動力を伝達する1乃至複数のギアにより構成された第1分岐伝達ギア群と、前記プラテンギアと第2紙送りギアとの間の動力伝達経路上に配設され、前記駆動源の駆動力を伝達する1乃至複数のギアにより構成された第2分岐伝達ギア群とを備え、前記第1および第2分岐伝達ギア群は、それぞれを構成するギアのうち1つが、歯筋が軸方向に対して傾斜角を有し、互いの歯筋の傾斜方向が同一方向とされた傾斜ギア部が形成されている第1アイドルギアおよび第2アイドルギアとされており、前記第1アイドルギアおよび前記第2アイドルギアのスラストによる可動距離を調整可能とされたスラスト量調整手段を備えていることを特徴とする。
【0011】
さらに、本発明のプリンタは、前記スラスト量調整手段は、プリンタのフレーム部に片持ち状に軸支され、その先端を前記第1アイドルギアおよび第2アイドルギアの反スラスト端部側近傍に臨ませた第1ストッパ部材および第2ストッパ部材とされ、前記第1ストッパ部材および第2ストッパ部材の前記フレーム部からの突出量を調整することにより、前記第1アイドルギアおよび前記第2アイドルギアのスラストによる可動距離を調整可能とされていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の記録用紙の搬送量調整方法は、前記第1分岐伝達ギア群および第2分岐伝達ギア群のそれぞれを構成するギアとして、歯筋の傾斜方向を互いに同一方向とする少なくとも1つのハス歯ギアをスラスト可能に配設するとともに、反スラスト側における前記各ハス歯ギアの近傍に臨んで前記ハス歯ギアの可動距離を規制するスラスト量調整手段を、前記ハス歯ギアのスラスト方向においてそれぞれ移動可能に配設しておき、前記スラスト量調整手段の前記ハス歯ギアのスラスト方向における位置を調整し、ハス歯ギアのスラスト量を変化させることにより、前記第1紙送りローラおよび前記第2紙送りローラの起動タイミングを調整することを特徴とする。
【0013】
さらに、本発明の記録用紙の搬送量調整方法は、前記スラスト量調整手段の前記ハス歯ギアのスラスト方向における位置調整は、前記第1紙送りローラと第2紙送りローラの起動タイミングのズレ量を勘案して実行することを特徴とする。
【0014】
さらに、本発明の記録用紙の搬送量調整方法は、前記第1紙送りローラと第2紙送りローラの起動タイミングのズレ量は、前記駆動源としてステッピングモータの駆動開始タイミングから前記第1紙送りローラと第2紙送りローラのそれぞれの起動タイミングまでをステップ数でカウントして求めることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明のプリンタによれば、前記スラスト量調整手段で前記第1紙送りギアおよび第2紙送りギアのスラスト量を調整することにより、第1紙送りローラおよび第2紙送りローラの前記起動タイミングを調整することで、記録用紙の搬送量を高精度に調整することができる。これにより、第1紙送りローラおよび第2紙送りローラの正逆回転による往復搬送によるカラー画像印刷において、記録用紙の搬送量のずれを原因とするいわゆる色ずれの発生を未然に防止し、高品質な画像印刷を行うことができる。また、前記ストッパ部材からなるスラスト量調整手段により、プリンタのフレーム部材に貫挿された調整ねじ部のねじ込みにより行うため、簡単な調整作業により行うことができる。また、プリンタ本体のフレーム部に組み込んだ完成品の状態で調整作業を行うことができるため、従来のように半製品の段階で調整し、完成品の段階で搬送不良が再検出されることなどがないため、生産性を向上させることができるなどの効果を有している。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のプリンタの一実施形態を示す要部斜視図(a)と、調整ねじ部の拡大斜視図(b)
【図2】図1の平面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本実施形態のプリンタおよび記録用紙の搬送量調整方法について、図1および図2に基づいて説明する。なお、図1(a)は、本発明のプリンタの一実施形態を示す要部斜視図であり、図1(b)は、調整ねじ部の拡大斜視図である。また、図2は図1の平面図である。
【0018】
本実施形態のプリンタは、記録用紙を搬送方向(図1(a)および図2における矢印Aの方向)および逆搬送方向に搬送可能とされ、記録用紙の搬送経路における中間部には印刷手段が配設されている。
【0019】
前記印刷手段は、記録用紙の搬送方向と直交させて配設されたプラテンローラ2と、記録用紙およびインクリボンを介してプラテンローラ2に対し、接離可能に配設されたサーマルヘッド(図示せず)とから構成されている。
【0020】
前記プラテンローラ2は、その回転軸の一端部に、大径、小径のギアを同心状に配置させて一体形成された2段ギアであるプラテンギア3が装着されており、その小径のギアと前記駆動モータ1のシャフトに装着されたシャフトギア4との間に第1中間ギア5および第2中間ギア6を介在させ、前記駆動モータ1の駆動力をシャフトギア4、第1中間ギア5、第2中間ギア6と順次伝達させることにより回転駆動するように構成されている。なお、本実施形態において、プラテンギア3の大径のギアはハス歯ギアとされている。
【0021】
また、記録用紙の搬送方向におけるプラテンローラ2の下流側および上流側には、それぞれ第1紙送り手段および第2紙送り手段が配設されている。前記第1紙送り手段および第2紙送り手段は、それぞれ正逆方向に回転可能に配設された第1紙送りローラ7および第2紙送りローラ8と、前記第1紙送りローラ7および第2紙送りローラ8の上方に配設され、第1紙送りローラ7および第2紙送りローラ8に対して圧接可能とされた第1圧接ローラ(図示せず)および第2圧接ローラ(図示せず)とから構成されている。前記第1紙送りローラ7および第2紙送りローラ8には、それぞれ回転軸の一端部に、第1紙送りギア11および第2紙送りギア12が装着されており、前記プラテンギア3の大径のギアとの間の動力伝達経路上に、それぞれ配設された第1分岐伝達ギア群13および第2分岐伝達ギア群14を介して伝達された駆動モータ1の動力をそれぞれ分岐して伝達される駆動モータ1の駆動力により、回転駆動するように構成されている。前記第1分岐伝達ギア群13および第2分岐伝達ギア群14は、それぞれを構成するギアのうち1つが、歯筋が軸方向に対して傾斜角を有し、互いの歯筋の傾斜方向が同一方向とされた傾斜ギア部が形成された第1アイドルギア15および第2アイドルギア16とされている。なお、本実施形態においては、前記第1分岐伝達ギア群13は、第1アイドルギア15のみにより構成され、前記第1分岐伝達ギア群13は、第2アイドルギア16のみにより構成されているものとし、説明を続ける。
【0022】
ここで、前記第1アイドルギア15および第2アイドルギア16はそれぞれ、小径および大径のギア部を同心状に配置させて一体形成された2段ギアとされており、小径のギア部には前記傾斜ギア部としてのハス歯ギア15a、16aが形成されている。そして、第1アイドルギア15および第2アイドルギア16は、それぞれ小径のギア部のハス歯ギア15a、16aを、互いの歯筋のねじれ方向が同一方向となるようにして、前記プラテンギア3の大径のギア部に噛合させるとともに、それぞれ大径のギア部を第1紙送りギア11および第2紙送りギア12にそれぞれ噛合させて配設されている。
【0023】
第1アイドルギア15および第2アイドルギア16は、それぞれ第1支持軸17および第2支持軸18により軸支されており、これらの第1支持軸17および第2支持軸18は、プリンタ本体の記録用紙の搬送方向一端側において、前記搬送方向に沿って対向配置された1対のフレーム部9間に懸架させて固定されている。そして、第1支持軸17および第2支持軸18の一端部側(図2における下端部側)には、それぞれ第1アイドルギア15および第2アイドルギア16を係止するための係止部17a、18aが形成されている。また、第1支持軸17および第2支持軸18の他端部側(図2における上端部側)にはそれぞれ軸受10が軸方向に摺動可能に装着されている。
【0024】
本実施形態においては、第1支持軸17および第2支持軸18の近傍には、それぞれ、第1アイドルギア15および第2アイドルギア16のスラスト量を調整するスラスト量調整手段としての第1ストッパ部材19および第2ストッパ部材20が配設されている。
【0025】
前記第1ストッパ部材19および第2ストッパ部材20は、それぞれ円柱状の支持部19a、20aと、前記支持部19a、20aの先端部に装着された円盤状の当接部19b、20bとから形成されており、前記支持部19a、20aの基端部は、ねじが螺刻された第1調整ねじ部19cおよび第2調整ねじ部20cとされている。そして、前記支持部19a、20aをフレーム部9に穿設されたねじ孔に嵌挿させるとともに、前記当接部19b、20bを第1支持軸17および第2支持軸18に装着された前記軸受10の一端部側(図2における上端部側)に当接可能に配置し、これらの第1調整ねじ部19cおよび第2調整ねじ部20cのねじ込み量を調整することにより、前記当接部19b、20bを適切な位置に調節するように構成されている。なお、第1ストッパ部材19および第2ストッパ部材20の構成は上記のような形態に限定されない。
【0026】
したがって、本実施形態においては、第1調整ねじ部19cおよび第2調整ねじ部20cの調整を行うことにより、第1当接部19bおよび第2当接部20bの位置をそれぞれ、図2中矢印B方向または矢印C方向に調整し、第1アイドルギア15および第2アイドルギア16が、スラスト可能な距離を規制することでスラスト量を調節することができる。これにより、駆動モータ1からプラテンローラ2に伝達された駆動力が第1アイドルギア15および第2アイドルギア16にそれぞれ伝達されるタイミングを調整し、さらには、駆動モータ1の動作開始時から第1紙送りローラ7および第2紙送りローラ8が起動するタイミングを調整することが可能となっている。
【0027】
具体的には、本実施形態においては、図1(a)および図2に示すように、プラテンギア3の大径のギア部の歯筋のねじれ方向が左巻きであるのに対して、これに噛合している第1アイドルギア15および第2アイドルギア16の小径のギア部の歯筋のねじれ方向はともに右巻きとなっている。したがって、図1(b)に示すように、第1紙送りローラ7および第2紙送りローラ8を正回転させて正搬送する時のスラスト量を調整する場合において、第1アイドルギア15のスラスト量を増加させたい場合には、第1調整ねじ部19cを緩め、第1アイドルギア15のスラスト量を減少させたい場合には、第1調整ねじ部19cを締めることによって調整することができる。
【0028】
次に、上記のような構成を備えた本発明のプリンタにおける記録用紙の搬送量調整方法について説明する。
【0029】
まず、駆動モータ1の動作開始時点から、実際に、第1紙送りローラ7および第2紙送りローラ8が回転し始める起動タイミングをそれぞれ測定する。具体的には、駆動モータ1の動作開始時点から、第1紙送りローラ7および第2紙送りローラ8が起動するまでに要する駆動モータ1の駆動ステップ数をそれぞれカウントすることにより行う。
【0030】
次に、第1紙送りローラ7および第2紙送りローラ8のそれぞれの起動タイミングから両者の起動タイミングのズレ量を算出する。
【0031】
そして、第1紙送りローラ7および第2紙送りローラ8のそれぞれの起動タイミングのズレ量を勘案して、第1調整ねじ部19cまたは第2調整ねじ部20cによるねじ込み量を調整することにより、前記第1ストッパ部材19および第2ストッパ部材20の位置調整を行う。
【0032】
例えば、前述した測定の結果、第1紙送りローラ7は、駆動モータ1が動作開始した時点から10ステップ目に、第2紙送りローラ8は5ステップ目に起動することが確認されたとする。この場合において、第1紙送りローラ7および第2紙送りローラ8の起動タイミングを同一にする場合には、第2紙送りローラ8の起動タイミングを5ステップ分遅らせるように調整することで行うことができる。この際に、予め、先に行われているプリンタの調整結果に基づいて、第1紙送りローラ7および第2紙送りローラ8の起動タイミングを1ステップ分、早めたり、または遅らせるために必要な第1調整ねじ部19cおよび第2調整ねじ部20cのねじ込み量を換算しておく。そして、この換算結果に基づいて、第2紙送りローラ8の起動タイミングを5ステップ分遅らせるように、第2調整ねじ部20cを緩め、第2紙送りギア12のスラスト量を増加させる。これにより、プラテンギア3に伝達される駆動モータ1からの駆動力が第2紙送りギア12に伝達するタイミングを駆動モータ1の5ステップ数分遅くし、第2紙送りローラ8の起動タイミングを第1紙送りローラ7と同一にすることができる。
【0033】
なお、第2紙送りローラ8の起動タイミングを5ステップ分遅らせる代わりに、第1紙送りローラ7の起動タイミングを5ステップ分早めるように調整してもよい。また、第1紙送りローラ7および第2紙送りローラ8の起動タイミングを同一にすることで、必ずしも第1紙送りローラ7および第2紙送りローラ8の搬送量のずれを解消できない場合には、両者の起動タイミングのずれが理想のステップ数となるように調整する。
【0034】
なお、上記のように、第1紙送りローラ7および第2紙送りローラ8の起動タイミングのずれを駆動モータ1の駆動ステップ数で測定する代わりに、実際の記録用紙に印刷された印刷画像において視認される各インク色の色ずれの寸法を測定することにより行うことも可能である。
【0035】
このように、本実施形態のプリンタおよび記録用紙の搬送量調整方法によれば、第1調整ねじ部19cおよび第2調整ねじ部20cのねじ込み量を調整するという、簡単な調整作業によって、第1紙送りギア11および第2紙送りギア12のスラスト量を調整し、第1紙送りギア11および第2紙送りギア12の前記起動タイミングを調整することができる。
【0036】
これにより、第1紙送りローラ7および第2紙送りローラ8による記録用紙の往復搬送における各搬送量のずれを原因とするいわゆる色ずれを防止し、高品質な印刷画像を行うことができる。
【0037】
また、本実施形態のプリンタおよび記録用紙の搬送量の調整方法によれば、第1調整ねじ部19cおよび第2調整ねじ部20cにより調整しているため、微調整を行うことが可能であるため、より確実に色ずれなどの印刷不良を解消することができる。
【0038】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々変更できるものとする。
【符号の説明】
【0039】
1 駆動モータ
2 プラテンローラ
3 シャフトギア
4 プラテンギア
5 第1中間ギア
6 第2中間ギア
7 第1紙送りローラ
8 第2紙送りローラ
9 フレーム部
10 軸受
11 第1紙送りギア
12 第2紙送りギア
13 第1分岐伝達ギア群
14 第2分岐伝達ギア群
15 第1アイドルギア
15a ハス歯ギア
16 第2アイドルギア
16a ハス歯ギア
17 第1支持軸
17a 係止部
18 第2支持軸
18a 係止部
19 第1ストッパ部材
19a 支持部
19b 当接部
19c 第1調整ねじ部
20 第2ストッパ部材
20a 支持部
20b 当接部
20c 第2調整ねじ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録用紙の搬送経路上に配設された印刷手段と前記記録用紙の搬送経路方向における前記印刷手段の上流側および下流側に配設された紙送り手段とを備え、
前記紙送り手段により、前記記録用紙を往復搬送しながらインク色を重ねてカラー印刷を行うプリンタにおいて、
駆動源の駆動力により正逆方向に回転駆動可能とされ、回転軸の一端部にプラテンギアが装着されたプラテンローラと、
記録用紙の搬送方向における前記プラテンローラの上流側において、前記駆動源の駆動力により正逆方向に回転駆動可能に配設され、回転軸の一端部に第1紙送りギアが装着された第1紙送りローラと、
記録用紙の搬送方向における前記プラテンローラの下流側において、前記駆動源の駆動力により回転駆動可能に配設され、回転軸の一端部に第2紙送りギアが装着された第2紙送りローラと、
前記プラテンギアと第1紙送りギアとの間の動力伝達経路上に配設され、前記駆動源の駆動力を伝達する1乃至複数のギアにより構成された第1分岐伝達ギア群と、
前記プラテンギアと第2紙送りギアとの間の動力伝達経路上に配設され、前記駆動源の駆動力を伝達する1乃至複数のギアにより構成された第2分岐伝達ギア群と、
を備え、
前記第1および第2分岐伝達ギア群は、それぞれを構成するギアのうち1つが、歯筋が軸方向に対して傾斜角を有し、互いの歯筋の傾斜方向が同一方向とされた傾斜ギア部が形成されている第1アイドルギアおよび第2アイドルギアとされており、
前記第1アイドルギアおよび前記第2アイドルギアのスラストによる可動距離を調整可能とされたスラスト量調整手段を備えていることを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
前記スラスト量調整手段は、プリンタのフレーム部に片持ち状に軸支され、その先端を前記第1アイドルギアおよび第2アイドルギアの反スラスト端部側近傍に臨ませた第1ストッパ部材および第2ストッパ部材とされ、
前記第1ストッパ部材および第2ストッパ部材の前記フレーム部からの突出量を調整することにより、前記第1アイドルギアおよび前記第2アイドルギアのスラストによる可動距離を調整可能とされていることを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
プラテンローラとサーマルヘッドが配設された印刷手段と、
記録用紙の搬送方向における前記印刷手段の上流側に配設され、第1紙送りローラとこれに当接従動する第1圧接ローラとからなる第1紙送り手段と、
記録用紙の搬送方向における前記印刷手段の下流側に配設され、第2紙送りローラとこれに当接従動する第2圧接ローラとからなる第2紙送り手段と、
を備え、
前記プラテンローラを回転させる駆動源の駆動力を、プラテンローラの回転軸に配設されたプラテンギアおよび第1分岐伝達ギア群を介して第1紙送りローラの回転軸に配設された第1紙送りギアに伝達し、前記第1紙送りローラを正逆方向に回転させるとともに、前記プラテンギアおよび第2分岐伝達ギア群を介して第2紙送りローラの回転軸に配設された第2紙送りギアに伝達し、前記第2紙送りローラを正逆方向に回転させることにより記録用紙を往復搬送させるとともに前記印刷手段においてインク色を重ねて所望のカラー記録を得るように構成されたプリンタにおける、記録用紙の搬送量調整方法であって、
前記第1分岐伝達ギア群および第2分岐伝達ギア群のそれぞれを構成するギアとして、歯筋の傾斜方向を互いに同一方向とする少なくとも1つのハス歯ギアをスラスト可能に配設するとともに、
反スラスト側における前記各ハス歯ギアの近傍に臨んで前記ハス歯ギアの可動距離を規制するスラスト量調整手段を、前記ハス歯ギアのスラスト方向においてそれぞれ移動可能に配設しておき、
前記スラスト量調整手段の前記ハス歯ギアのスラスト方向における位置を調整し、ハス歯ギアのスラスト量を変化させることにより、前記第1紙送りローラおよび前記第2紙送りローラの起動タイミングを調整することを特徴とする記録用紙の搬送量調整方法。
【請求項4】
前記スラスト量調整手段の前記ハス歯ギアのスラスト方向における位置調整は、前記第1紙送りローラと第2紙送りローラの起動タイミングのズレ量を勘案して実行することを特徴とする請求項3に記載の記録用紙の搬送量調整方法。
【請求項5】
前記第1紙送りローラと第2紙送りローラの起動タイミングのズレ量は、前記駆動源としてステッピングモータの駆動開始タイミングから前記第1紙送りローラと第2紙送りローラのそれぞれの起動タイミングまでをステップ数でカウントして求めることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の記録用紙の搬送量調整方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−214762(P2010−214762A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−64119(P2009−64119)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】