説明

プリンタの制御装置

【課題】情報漏洩事故を防止できる印刷システムを提供する。
【解決手段】プリンタ11からの出力を確保する位置に設置される制御装置(SPB)20を提供する。SPB20は、PCからLAN2を介してプリンタ11から出力するように送信された印刷ジョブ51の実行を、SPB20の至近距離における認証情報の提供により認証する認証機能29と、認証機能29の認証によりプリンタ11に対する電源供給を開始する電源制御機能27と、認証機能29の認証により印刷ジョブ51をプリンタ11に対して提供する仮想PC機能28とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタの制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、暗証符号を記憶して印刷装置に入力するという面倒な作業を必要とせず、他人の暗証符号と一致して印刷されてしまうおそれを防止し、しかも機密性の高い親展印刷を行うことが記載されている。そのため、特許文献1のプリンタは、携帯用端末からローカルインタフェースを経て受信された暗証符号および電話番号が、パソコンからネットワークを介して受信された印刷ジョブに付加された暗証符号および電話番号と一致する場合に、当該印刷ジョブの実行を許可するようにしている。
【0003】
特許文献2には、親展印刷における印刷物の機密性をより向上させることが記載されている。そのため、特許文献2においては、クライアント端末により、印刷ジョブを生成してHDDにスプールすると共に印刷ジョブ番号とクライアント端末のIPアドレスとを印刷用情報としてフラッシュメモリに出力し、プリンタでは、装着されたフラッシュメモリから印刷用情報を取得すると共にこの印刷用情報のIPアドレスにより特定されるクライアント端末のHDDにスプールされている印刷ジョブのうち印刷用情報の印刷ジョブ番号により識別される印刷ジョブを受信して印刷することが記載されている。この結果、ユーザーがフラッシュメモリを携帯してプリンタ側へ移動してから印刷ジョブを受信するから、印刷ジョブを予めプリンタへ送信する場合と比較して機密性を向上させることができると共に出力先のプリンタをより柔軟に変更することができる。
【0004】
特許文献3には、クライアント端末が印刷を実行する場合に、すぐに印刷ジョブをプリンタ端末に送信しないで、ユーザーがプリンタ端末側に移動してから、クライアント端末が印刷ジョブを送信できる、機密性が高くユーザーの利便性に優れた印刷システムを提供することが記載されている。そのため、特許文献3においては、クライアント端末から電子メールを用いて印刷ジョブ用認証データを携帯端末に取得させ、携帯端末から認証装置に非接触でデータを取得させることで、印刷ジョブの所在情報を保存した記憶媒体のやり取り、そして記憶媒体の装着作業を不要とすることが記載されている。また、携帯端末から認証装置に非接触でデータを取得させる手段としては、印刷ジョブ用認証データを2次元バーコードデータとし、携帯端末の表示画面に表示された2次元バーコードを認証装置に備えられたバーコードリーダを用いて読み込ませることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−163094号公報
【特許文献2】特開2005−324497号公報
【特許文献3】特開2008−192051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、単機能プリンタ、複合機を含むプリンタに対して、機密性、利便性、さらには省電力であることが要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、プリンタからの出力を確保する位置に設置される、またはプリンタに内蔵される制御装置である。この制御装置は、ホスト装置から通信網を介してプリンタから出力するように送信された印刷ジョブの実行を、当該制御装置の至近距離における認証情報の提供により認証する認証機能と、認証機能の認証によりプリンタに対する電源供給を開始する電源制御機能と、認証機能の認証により印刷ジョブをプリンタに対して提供する仮想ホスト機能とを有する。
【0008】
この制御装置に印刷ジョブまたは印刷ジョブを識別する情報が登録されていれば、至近距離で提供される認証情報、たとえば、認証用のカードや携帯電話に搭載された非接触ICカード情報、IDおよびパスワードのキー入力、音声識別、生体情報識別などに基づく認証情報によりその印刷ジョブの実行が認証されたときにのみ印刷ジョブが行われ、認証を得ない人による印刷や、印刷物の持ち出しを抑制でき、印刷出力の機密性を保持できる。さらに、ホスト装置から印刷ジョブを実行するプリンタが指定されるので、印刷ジョブを実行するプリンタを知っていることと、印刷ジョブを実行するための認証情報を取得していることとの両方の条件が満たされた場合にのみ印刷ジョブが実行され、さらに機密性を向上できる。
【0009】
また、印刷ジョブが認証されたときにプリンタに対する電源供給を開始(再開)することにより、プリンタ(プリンタ本体)を完全に停止しても認証により再起動できる。したがって、プリンタで発生する待機電力を抑制できる。また、この制御装置においては、印刷ジョブの機密性を高めるための認証の機構および手続きを用いて、プリンタに対する電源供給を開始する。このため、簡易な構成で、ユーザーの利便性と出力の機密性とを保持しながらプリンタの待機電力をさらに削減できる。また、認証されないとき、および認証されるべき印刷ジョブがないときはプリンタが起動しないので消費電力をさらに低減できる。さらに、認証されないとプリンタが起動せず、プリンタ側に印刷ジョブの情報が提供されない。このため、制御装置のセキュリティーを確保することにより、ローカルプリンタ側における機密漏えいを抑制できる。
【0010】
仮想ホスト機能の一例はプリントサーバ機能であり、LANなどの通信網を介して接続されたサーバーまたはホスト装置(クライアント端末)から印刷ジョブを受信してプリンタに送信してもよい。
【0011】
この制御装置は、さらに、印刷ジョブを一時的に格納する第1のストレージと、プリンタのステータスを一時的に格納する第2のストレージと、ホスト装置に対してプリンタとして印刷ジョブを受信し、ステータスを送信する仮想プリンタ機能とを有することが望ましい。印刷管理用のサーバー機を別途用意しなくても、機密性および利便性を備え、プリンタの電量消費を抑制できる制御装置を提供できる。
【0012】
また、この制御装置は、印刷ジョブの送信から所定の時間が経過した後に印刷ジョブをキャンセルする機能をさらに有することが好ましい。印刷ジョブを実行するプリンタを知っていることと、印刷ジョブを実行するための認証情報を取得していることとに加え、時間のファクタを加えることによりさらに機密性を向上できる。認証情報は、ホスト装置のユーザーを識別するための情報に限定されることはなく、第3者に認証情報を割り当てることも可能であり、第3者にプリンタの場所またはIDなどの識別情報とともに有効時間をメールなどで伝達することによりプリンタからの出力の機密性を確保できる。さらに、印刷ジョブをキャンセルすることにより、第1のストレージが印刷ジョブで満杯になることを抑制できる。
【0013】
また、この制御装置は、ホスト装置に対して印刷ジョブのステータスをフィードバックする機能をさらに有することが望ましい。第3者に予定通り出力されたこと、第3者に出力されなかったこと、出力されなかった場合はスプールデータを戻すことにより、印刷をリトライすることができる。
【0014】
当該制御装置の一形態は、プリンタに対して外配置される、独立した制御装置である。この制御装置は、プリンタの電源プラグを装着する電源インターフェイスと、プリンタと通信する通信インターフェイスとを有することが望ましい。既存のプリンタをこの制御装置に接続するだけで上述した機能をプリンタに付加できる。
【0015】
また、上記の制御装置が内蔵されているプリンタであってもよい。外置き、またはプリンタ内蔵タイプの制御装置と、制御装置により電源がオンされるプリンタとを有するシステムを構築することにより、機密性が高く、さらに、プリンタの消費電力を低減できるシステムを提供できる。
【0016】
本発明の他の態様の1つは、プリンタの制御方法である。この制御方法は、以下のステップを含む。
1.ホスト装置から通信網を介してプリンタから出力するように送信された印刷ジョブの実行を、プリンタの近傍における認証情報の提供により認証すること。
2.認証によりプリンタに対する電源供給を開始すること。
【0017】
この制御方法は、さらに、以下の工程を含んでいてもよい。
3.印刷ジョブの送信から所定の時間が経過した後に印刷ジョブをキャンセルすること。
4.ホスト装置に対して印刷ジョブのステータスをフィードバックすること。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】プリンタとSPBとを含むシステムの概要を示す図。
【図2】SPBの概略構成を示すブロック図。
【図3】SPBの処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に、幾つかのプリンタをLANおよび/またはインターネットで接続したシステムの概要を示している。このシステム1は、複数のプリンタ、パーソナルコンピュータ(PC)、サーバーなどの機器を接続し、相互にデータ通信を可能とする通信網、たとえば、インターネット、LAN2を含む。さらにシステム1は、LAN2に接続され、プリンタに対してホスト装置(クライアント端末)となるPC5と、PC5とLAN2を介して通信できるように接続された複数のプリントステーション6a、6bおよび6cを含む。これらのプリントステーション6a、6bおよび6cは、距離が離れた異なる場所において複数のユーザーに対して印刷するサービスを提供するステーションであってもよい。また、これらのプリントステーション6a、6bおよび6cは、距離の近い場所で、プリンタ11、12および30により異なる印刷するサービス、たとえば、モノクロ印刷、カラー印刷、コピーなどを提供するためのステーションであってもよい。
【0020】
プリントステーション6aは、印刷に機能が限定された単機能のプリンタ(以降においてはSFP)11と、SFP11の電源制御を行うことができる独立した制御装置20とを含む。この制御装置20は、後述するように情報漏洩を未然に防止するための機能を含み、以降においてはセキュアプリントボックス(SPB)20と称する。SFP11はSPB20を介してLAN2と接続され、また、SFP11に対する電源もSPB20を介して供給されるようになっている。
【0021】
プリントステーション6bは、印刷機能のみならず、スキャナー機能、コピー機能などを備えた複合タイプのプリンタ(以降においては複合機、MFP)12と、SPB20とを含む。MFP12はSPB20を介してLAN2と接続され、また、MFP12に対する電源もSPB20を介して供給されるようになっている。プリントステーション6cは、MFP機能を備えたプリンタセクション31と、SPBの機能を備えたコントロールセクション32とを内蔵したプリンタ30により構成されている。
【0022】
このシステム1においては、まず、ユーザー8がホスト装置であるPC5において稼働しているアプリケーションから、ユーザー8が出力を希望するプリンタを指定して印刷を行う。たとえば、ユーザー8は、プリントステーション6aのプリンタ11を指定して印刷を行う。プリントステーション6aのSPB20は、プリントステーション6aのプリンタ(SFP)11を上位で制御する制御装置であり、仮想プリンタとしての機能を含み、PC5から供給された印刷ジョブ51をプリンタ11に代わって受信する。印刷ジョブ51としてPC5から送信されるデータには、出力を許可する者を認証するための情報、この場合は、ユーザー8を認証するための情報51aが含まれる。また、SPB20は、プリンタ11に代わって、プリンタ11の最新のステータス、たとえば、印刷用紙の残量、トナーの残量などの情報をPC5に供給する。
【0023】
PC5において印刷ジョブ51の送信が終了すると、ユーザー8はプリントステーション6aに移動する。プリントステーション6aでは、SPB20はSFP11の近傍で、SPB20とそれに接続されたSFP11との対応関係が明確であり、さらに、SPB20を操作したユーザー8がSFP11からの出力を確実に取得できる位置に設置されている。プリントステーション6aにおいてユーザー8は、ユーザー認証用のカードまたは端末、たとえば、非接触ICカード機能付きの携帯電話(携帯端末)8tをSPB20のアクセスポイント29aに押し付ける。SPB20は、印刷ジョブ51の認証情報51aと携帯電話8tから得られた識別情報によりユーザー8を印刷ジョブ51の許可された出力者として認識する。
【0024】
SPB20は、印刷ジョブ51の出力が認証されると、電源線15を介してSFP11に電力を供給してSFP11を起動する。また、SPB20は、PC5に代わって、PC5から予め取得した印刷ジョブ51を、USB規格などの通信線16を介してSFP11に送り、SFP11は印刷ジョブ51を実行する。ユーザー8は、SFP11から出力されたプリントアウト59を確実に得ることができ、プリントアウト59に含まれる機密は保持される。SFP11は、印刷ジョブ51を実行後、適当な時間が経過すると自動的にシャットダウンし、SPB20も、その後、SFP11に対する電源供給を停止する。したがって、SFP11は、先の印刷ジョブと連続するなどの特別な状況でないかぎり、印刷ジョブ51があり、その出力が認証されたときにSPB20により電源供給され、稼働状態になる。このため、SFP11の待機電量消費を低減できる。
【0025】
ユーザー8は、PC5から他のユーザーを出力者として印刷ジョブ52を出力することも可能である。たとえば、ユーザー9を出力者として認証情報52aを添付した印刷ジョブ52をプリンタ(MFP)12に宛てて送信する。プリントステーション6bのSPB20は、MFP12としてのアドレスおよび仮想的なサービス(仮想プリンタ機能)をPC5に提供し、印刷ジョブ52および認証情報52aを取得する。ユーザー8はユーザー9の携帯端末9tに基地局3を経由してメールなどにより、印刷ジョブ52を送ったプリントステーション6bを指示する。
【0026】
ユーザー9は、指示されたプリントステーション6bに行き、ユーザー9を認識する情報を備えた媒体、たとえば、ICカード9cをプリントステーション6bのSPB20のアクセスポイント29aに近づける。プリントステーション6bのSPB20がユーザー9を印刷ジョブ52の許可された出力者として認識すると、MFP12に電力を供給してMFP12を起動(再起動)する。MFP12がレディーになると、SPB20は、PC5の代わりに仮想的なホストサービス(仮想ホスト機能)を提供し、MFP12で印刷ジョブ52を実行する。したがって、印刷ジョブ52の出力は、出力するプリントステーション(プリンタ)の物理的な位置情報と、許諾された出力者9の認証とにより2重に保護され、一方の情報が漏えいしても印刷ジョブ52の機密を保持できる。
【0027】
また、SPB20は、PC5により指定された時間が経過すると印刷ジョブ52をキャンセルする。この機能により、印刷ジョブ52の出力は、出力するプリントステーション(プリンタ)の物理的な位置情報と、許諾された出力者9の認証と、許可された印刷可能な時間とにより3重に保護される。さらに、SPB20に印刷ジョブが無用に蓄積されることを抑制できる。
【0028】
また、上記と同様に、MFP12には、プリントステーション6bのSPB20に印刷ジョブ52が登録されており、その出力が許諾されないと電力が供給されない。したがって、MFP12の消費電力を削減できる。SPB機能32を内蔵したプリンタ30においても同様の手続きで印刷ジョブを出力できる。SFP11およびMFP12に対して独立した装置(ユニット、ボックス)として提供されるSPB20は、既存のSFP11およびMFP12に対して、単に電源系と通信系とをSPB20を介して繋がるように繋ぎかえるだけで、セキュリティーの向上を図り、消費電力のさらなる低減を図ることができる。
【0029】
図2に、プリンタとは個別に供給されるSPB20の概略構成をブロック図により示している。SPB20は、接続されたプリンタ11および12またはプリンタセクション(プリンタ本体)31をローカルで制御する制御装置である。SPB20は、プリンタ11または12の近傍で、プリンタ11または12との関係をユーザーが混乱することなく、制御しているプリンタを間違いなく把握でき、さらに、プリンタ11または12から出力された記録媒体を確保できる位置に設置される。SPB20はプリンタ11または12の出力(プリントアウト、印刷用紙)をユーザーが監視できる、または出力されればすぐに手に取れる位置に設置される。典型的にはSPB20は接続されたプリンタ11または12に隣接するように配置される。SPB20は、プリンタ11または12のハウジングに適当な方法、たとえば、粘着テープ、ボルトナットなどにより取り付けられてもよい。
【0030】
SPB20は、LAN2を介してLAN2に接続された機器、およびLAN2が接続されている上位の通信網、たとえばインターネットに接続されている機器と通信するためのLANインターフェイス21を含む。SPB20は、さらに、PC5からLAN2を介して供給された印刷ジョブ51および52を、SPB20が接続されているプリンタ(以降においてはSFP11を例に説明する)11の代わりに受信する仮想プリンタ機能(仮想プリンタユニット)22と、受信した印刷ジョブ51および52を一時的に格納するストレージ23とを含む。なお、以降においては印刷ジョブ51を代表して説明する。ストレージ23は、瞬停などのトラブルに対応できるようにフラッシュメモリ、ハードディスクなどの不揮発性のメモリであることが望ましい。また、SPB20の盗難などによる印刷ジョブ51の機密性を確保するために、RAMなどの揮発性のメモリを採用することも有効である。さらに、ストレージ23では、印刷ジョブ51が暗号化されたデータで保持されるようにしてもよい。
【0031】
仮想プリンタ機能22は、PC5から印刷ジョブ51の印刷データとともに、印刷ジョブ51の出力を許諾する情報(認証情報)51aを取得する。認証情報51aとしては、出力を許諾するユーザーを識別する情報、ユーザーを認証するための情報、各ユーザーあるいはジョブ毎に設定されたパスワードなどがある。仮想プリンタ機能22は、さらに、後述する仮想PC機能28により取得され、ストレージ23に格納されたSFP11のステータス、たとえば、インク量、セットされた用紙サイズ、量などをPC5に連絡する機能も含む。
【0032】
SPB20は、さらに、ストレージ23に格納された印刷ジョブ51を受信してから所定の時間、または印刷ジョブ51の受信とともにPC5から設定された時間が経過した後に、印刷ジョブ51をキャンセルする機能25を含む。印刷ジョブ51が長期間にわたりSPB20に保持された状態となり、セキュリティーが低下することを防止することができる。また、印刷ジョブ51が出力できる限られた時間を設定することにより印刷ジョブ51の機密性を向上できる。さらに、ストレージ23に未出力のジョブが蓄積されることを防止できる。
【0033】
SPB20は、さらに、ストレージ23に格納された印刷ジョブ51のステータスをPC5または印刷ジョブ51の依頼元にフィードバックする機能24を含む。この機能24は、たとえば、許諾された状態で印刷ジョブ51が出力されたこと、印刷ジョブ51が出力されずにタイムアップ(タイムオーバー)によりキャンセルされたことなどをPC5にフィードバックする。印刷ジョブ51がキャンセルされた場合は、印刷ジョブ51のスプールをPC5またはLAN2に接続されたスプールサーバーなどへ退避させ、再度印刷ジョブ51を実行できるようにすることも可能である。
【0034】
SPB20は、ストレージ23に格納された印刷ジョブ51の出力を所定の情報の入力により認証する認証機能(認証ユニット)29を含む。認証機能29は、このSPB(制御装置)20に印刷ジョブ51を識別する情報51aが登録されていれば、アクセスポイント29aなどの至近距離で提供される認証情報に基づき印刷ジョブ51の実行を認証する。認証情報は、認証用のカード、携帯電話に搭載された非接触ICカード情報、IDおよびパスワードのキー入力、音声識別、生体情報識別などであり、アクセスポイント29aは、それらの情報の入力に適したものを採用できる。アクセスポイント29aは、たとえば、磁気センサー、RF、キーボード、タッチセンサー、マイク、指紋認証装置などである。認証機能29は、ストレージ23に格納された認証用の情報51aに基づき、LAN2を介してユーザー管理サーバーなどから認証に必要な情報を取得する機能を備えていてもよい。
【0035】
SPB20は、さらに、SFP11に供給される電力をオンオフする電源制御機能(電源制御ユニット)27と、SFP11の電源線15を接続するためのインターフェイス27aと、オフィスなどの電源プラグと接続するためインターフェイス27bとを含む。電源制御機能27は、認証機能29が印刷ジョブ51の出力を認証すると、SFP11に対して電力を供給しSFP11を起動する。また、電源制御機能27は、SFP11が印刷ジョブ51を実行した後、SFP11が休止モードまたは停止した後に、SFP11に対する電力供給を遮断し、SFP11の電力消費を完全に停止する。
【0036】
SPB20は、さらに、SFP11に対して印刷ジョブ51を実行させる仮想PC機能(仮想PCユニット)28と、SFP11と通信するためのインターフェイス28aとを含む。仮想PC機能28は、たとえば、プリントサーバ機能であり、認証機能29が印刷ジョブ51の出力を認証し、SFP11が起動(再起動)し、SFP11よりレディーであることを示すコマンドがSPB20に返された後、ストレージ23に予め格納された印刷ジョブ51のデータ(スプールデータ)をインターフェイス28aに接続された通信線16を介してSFP11に供給して印刷を行う。インターフェイス28aは、USB、イーサネット(登録商標)などのシリアルインターフェイスであってもよく、パラレルインターフェイスであってもよい。さらに、仮想PC機能28は、SFP11が起動している間に、SFP11のステータス56を取得してストレージ23に格納されている情報をアップデートする。また、仮想PC機能28は、LAN2を介してLAN2に接続されているスプールサーバーなどから印刷ジョブ51のデータを取得し、SFP11に供給するものであってもよい。
【0037】
SPB20のこれらの機能22、24、25、27〜29は、ハードウェアで供給されてもよく、CPUで実行するプログラム(アプリケーションプログラム)で供給されてもよい。SPB20のハードウェアの典型的なものは、ストレージ23およびプログラムの記録媒体となるメモリと、プログラムをダウンロードすることにより上記の機能を実現するためのCPUなどのプロセッサと、周辺装置とを含むものである。
【0038】
図3に、SPB20の処理の概要をフローチャートにより示している。ステップ71で、ホスト装置(PC、クライアント端末)5からのアクセスがあると、ステップ72で仮想プリンタ機能22によりSFP11に代わり印刷ジョブ51を受信する。ステップ73で、PC5から印刷ジョブ51と認証用のデータ(認証情報)51aをストレージ23に格納する。仮想プリンタ機能22は、PC5に印刷終了を返し、PC5においては印刷を終了する。
【0039】
ステップ74において、SFP11の近傍に設置されたSPB20の認証機能29がアクセスポイント29aに近接された携帯端末8tなどの認証情報を取得し、PC5からLAN(通信網)2を介してSFP11から出力するように送信された印刷ジョブ51の実行を認証する。認証機能29が印刷ジョブ51の出力を認証すると、ステップ75において、電源制御機能27がSFP11に対する電源供給を開始し、SFP11を起動する。さらに、ステップ76において、SPB20の仮想PC機能28が印刷ジョブ51をSFP11に送り、SFP11は印刷ジョブ51を実行する。
【0040】
ステップ74において認証がおこなわれず、ステップ77において設定された時間が経過すると、ステップ78において、キャンセル機能25は印刷ジョブ51をキャンセルする。そしてステップ79において、フィードバック機能24は、印刷ジョブ51の出力成功およびキャンセルなどのステータスをPC5にフィードバックする。キャンセル機能25は、スケジュール管理機能を含んでいてもよい。スケジュール管理機能の1つは、SFP11に電源が供給可能な時間帯を制限することである。たとえば、営業時間帯(9時から17時まで等)に限り認証情報を受け付け、時間帯以外では認証を受け付けず、SFP11がオンにならず、印刷ジョブを実行しないようにすることが可能である。営業時間帯以外の、夜間などにおける機密漏えいを未然に防止できる。印刷ジョブ51のキャンセルは、スケジュール管理機能に基づいて、印刷可能な時間帯における経過時間により、予約された印刷ジョブ51をキャンセルしてもよい。
【0041】
このようにSPB20を用いることにより、ローカルで印刷ジョブ51の出力を認証できるので、印刷ジョブ51はプリンタ、たとえばSFP11の近傍で認証されたときにのみ行われ、認証を得ない人による印刷や、印刷物の持ち出しを抑制でき、印刷出力の機密性を保持できる。さらに、このシステム1においては、PC5から印刷ジョブ51を実行するプリンタが指定される。このため、印刷ジョブ51を実行するプリンタを知っていることと、印刷ジョブを実行するための認証情報を取得していることとの両方の条件が満たされた場合にのみ印刷ジョブ51が実行され、さらに機密性を向上できる。
【0042】
また、SPB20は、印刷ジョブ51が認証されたときにプリンタに対する電源供給を開始(再開)する。このため、印刷ジョブ51を実行しないときには、プリンタ(プリンタ本体)を完全に停止でき、プリンタにおける電力消費をゼロにできる。したがって、このシステム1においては、各プリントステーション6a、6bおよび6cにおいて、印刷ジョブ51の機密性を高めるための認証の機構および手続きを用いて、プリンタに対する電源供給を開始する。このため、簡易な構成で、ユーザーの利便性とプリントアウトの機密性を保持しながらプリンタの待機電力をさらに削減できる。また、認証されないとき、および認証されるべき印刷ジョブ51がないときは、ユーザーが認証の手続きを行ってもプリンタは起動しない。したがって、プリンタの消費電力をさらに低減できる。さらに、認証されないと各プリントステーション6a、6bおよび6cの各プリンタ11、12、30が起動せず、プリンタ側に印刷ジョブ51の情報が提供されない。このため、SPB20またはSPB機能32のセキュリティーを確保することにより、ローカルプリンタ側における機密漏えいを抑制できる。
【0043】
また、このSPB20は、プリンタ30に内蔵されているものであってもよいが、プリンタとは独立した制御装置として提供することにより、既存のプリンタ11および12にセキュリティー機能および省電力機能とを付加することが可能となる。特に、ストレージ23を内蔵したSPB20を採用することにより、スプールサーバーなどの高価でシステムの調整に手間取る装置を導入しなくても、簡易な構成で情報漏洩事故の発生を抑制できるシステム1を構築できる。
【符号の説明】
【0044】
1 システム、 6a、6b、6c プリントステーション
11、12、30 プリンタ
20 セキュアプリントボックス(SPB、制御装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリンタからの出力を確保する位置に設置される、または前記プリンタに内蔵される制御装置であって、
ホスト装置から通信網を介して前記プリンタから出力するように送信された印刷ジョブの実行を、当該制御装置の至近距離における認証情報の提供により認証する認証機能と、
前記認証機能の認証により前記プリンタに対する電源供給を開始する電源制御機能と、
前記認証機能の認証により前記印刷ジョブを前記プリンタに対して提供する仮想ホスト機能とを有する制御装置。
【請求項2】
請求項1において、前記印刷ジョブを一時的に格納する第1のストレージと、
前記プリンタのステータスを一時的に格納する第2のストレージと、
前記ホスト装置に対して前記プリンタとして前記印刷ジョブを受信し、前記ステータスを送信する仮想プリンタ機能とを、さらに有する制御装置。
【請求項3】
請求項1または2において、前記印刷ジョブの送信から所定の時間が経過した後に前記印刷ジョブをキャンセルする機能を、さらに有する制御装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、前記ホスト装置に対して前記印刷ジョブのステータスをフィードバックする機能を、さらに有する制御装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかにおいて、当該制御装置は、前記プリンタに対して外配置される装置であり、
前記プリンタの電源プラグを装着する電源インターフェイスと、
前記プリンタと通信する通信インターフェイスとを、さらに有する制御装置。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれかに記載の制御装置が内蔵されているプリンタ。
【請求項7】
請求項1ないし4のいずれかに記載の制御装置と、
前記制御装置により電源がオンされるプリンタとを有するシステム。
【請求項8】
ホスト装置から通信網を介してプリンタから出力するように送信された印刷ジョブの実行を、前記プリンタの近傍における認証情報の提供により認証することと、
前記認証により前記プリンタに対する電源供給を開始することとを有するプリンタの制御方法。
【請求項9】
請求項8において、前記印刷ジョブの送信から所定の時間が経過した後に前記印刷ジョブをキャンセルすることを、さらに有する制御方法。
【請求項10】
請求項8または9において、前記ホスト装置に対して前記印刷ジョブのステータスをフィードバックすることを、さらに有する制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−93127(P2011−93127A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−247154(P2009−247154)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(399063013)ナルテック株式会社 (30)
【Fターム(参考)】