説明

プリンタヘッドの補強材の製造方法

【課題】 加熱乾燥で生ずる補強材の熱応力の管理を適切に行い、補強材を平坦化を図るようにしたプリンタヘッドの補強材の製造方法の提供。
【解決手段】第1工程では、金属材料からプレス加工により補強材を成形する。第2工程では、補強材の反りを、第1の工程後の状態から、設定した反りを有する状態へと変化させる。第3工程では、第2工程の処理が終了した補強材を洗浄し、当該洗浄後に補強材を加熱乾燥する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタヘッドを補強するために使用されるプリンタヘッドの補強材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンタヘッドの一例としては、例えばインクジェット式の記録ヘッドが知られている(特許文献1参照)。
特許文献1に記載のプリンタヘッドは、圧電振動子が収容されるヘッドケースと、このヘッドケースのユニット固着面に接着剤などで固着される流路ユニットとを備え、ヘッドケースの壁部にヘッドケースを補強する補強材が取り付けられている。この補強材は、板状であってステンレスなどから構成される部材である。
このようなプリンタヘッドの補強材は、例えば以下の方法で製造される。
まず、金属材料からプレス加工により補強材を成形する。次に、そのプレス加工により発生した補強材の反り矯正するためにレベラーでその反りを矯正し、補強材の平坦化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−71486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、プリンタヘッドの補強材を製造する場合に、上記の処理の他に、補強材の洗浄や加熱乾燥などの処理が必要な場合がある。この場合には、加熱乾燥に伴って補強材に発生する熱応力の管理を行う必要があるが、この熱応力の管理を適切に行わないと最終的に補強材を平坦化することが困難である。
そこで、本発明の目的は、プリンタヘッドの補強材を製造する場合に、補強材の加熱乾燥で生ずる熱応力の管理を適切に行い、補強材の平坦化を図ることができるようにしたプリンタヘッドの補強材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決し本発明の目的を達成するために、本発明は、以下のように構成される。
本発明の態様の1つは、プリンタヘッドの板状の補強材を製造する製造方法であって、金属材料からプレス加工により前記補強材を成形する第1工程と、前記補強材の反りを、前記第1の工程後の状態から、設定した反りを有する状態へと変化させる第2工程と、前記第2工程の処理が終了した前記補強材を洗浄し、当該洗浄後に前記補強材を加熱乾燥する第3工程と、を含む。
【0006】
また、第2工程では、プレス加工により成形された補強材の反りをレベラーで矯正して平坦化し、当該矯正時に、後の工程の加熱乾燥で生ずる補強材の反りを相殺するための反りを、予めレベラーで補償しておく。
さらに、レベラーによる補償は、第3工程における加熱乾燥で生ずる補強材の反りとは反対の反りを、予め補強材に残しまたは与えるようにした。
この方法によれば、プリンタヘッドの補強材を製造する場合に、補強材の加熱乾燥で生ずる熱応力の管理を適切に行うことができ、補強材の平坦化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明方法に適用される補強材の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明方法の実施形態の工程を示すフローチャートである。
【図3】補強材の工程の変化に伴う反り量の推移を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のプリンタヘッドの補強材の製造方法に係る実施形態について、図面を参照して説明する。
(補強材の構成)
この実施形態では、プリンタヘッドの補強材として、例えば図1に示すものを製造するので、これについて説明する。
この補強材1は、図1に示すように板状の部材からなり、全体が長方形である。また、補強材1の厚さ方向には、例えば規則的に複数の小孔2が設けられている。さらに、補強材1の端部の4つの各側面の上下方向には、複数の凹部3がそれぞれ形成されている。補強材1の材料としては、ステンレス板のような金属材料、タングステン合金のような高い比重部材などを用いることができる。
なお、複数の小孔2および複数の凹部3は、上記のように補強材1をプリンタヘッドのヘッドケースの壁部に取り付ける場合に、補強材1がヘッドケースに噛み込むようにするために設けられている。
【0009】
(実施形態の工程)
次に、図1に示すプリンタヘッドの補強材を製造する方法について、図2および図3を参照して説明する。
まず、補強材1となるステンレスなどの金属材料を用意する。そして、プレス加工によりその金属材料から補強材1を成形する(ステップS1)。この成形後の補強材1の長手方向の反り量は、例えば図3の点aで示すような値になる。
上述のプレス加工では、例えば、プレス機械に上下の金型をセットし、この上下の金型の間に金属材料をセットし、このセットした状態で上下の金型がかみ合うことで補強材1が成形される。
【0010】
次に、そのプレス加工により成形された補強材1の反りをレベラーなどで矯正して平坦化する(ステップS2)。また、その反りの矯正時に、後工程の加熱乾燥で生ずる熱応力による補強材1の反りを相殺するための反りを、予めレベラーなどで補償する(ステップS3)。
ここで、レベラーは、複数のローラを所定の位置に配置したものであり、その複数のローラ間を通過することにより補強材1の反りを矯正して平坦化する機能を有する。また、レベラーは、その複数のローラの各位置を任意の位置に設定(調整)でき、この設定により補強材1の長手方向の反り(反り量)を調整できるようになっている。
この実施形態では、後述のように、後工程で補強材1に加熱乾燥を行うので、プレス加工の終了後の段階でレベラーによって補強材1の反りを矯正して平坦化しても、加熱乾燥による熱応力によって補強材1が長手方向に反ることになる。この熱応力による補強材の反りは、例えば0.014〔mm〕である。
【0011】
そこで、上述のレベラーによる補強材1の反りの補償は、その補強材1の熱応力による反りを相殺するために、その反りとは反対の反りを、予め補強材1に残すようにまたは与えるようにした。そして、そのような反りを予め補強材1に残しまたは与えるために、レベラーのローラの位置を設定(調整)するようにした。
言い換えると、レベラーによる補強材1の矯正による平坦化では、例えば、プレス加工による内部応力(残留応力)を全て開放させないで、その後に予定される熱処理に伴う熱応力を開放するための残留応力が残るように、レベラーのロールの位置を設定(調整)するようにした。
このため、レベラーで反りを矯正後の補強材1の長手方向の反り量は、許容範囲内に矯正されることはなく、例えば図3の点bで示すように許容範囲外となる。この結果、補強材1は、加熱乾燥による反りの相殺に必要な反りを有した状態となる。
【0012】
次に、レベラーによる矯正の終えた補強材1を洗浄し、この洗浄後に補強材1を加熱して乾燥する(ステップS4)。
補強材1の洗浄は、例えば所定の温度(例えは常温)の水に洗剤を溶かした洗剤液を用いて行う。また、補強材1の加熱乾燥は、例えば80度の温度の下で30分間にわたって加熱する。
この加熱乾燥により補強材1には熱応力が生じて反りが発生するが、上述のようにその反りを相殺するための反りが補強材1には残されておりまたは与えられているので、熱応力による反りが補強材1に現れるのを防止できる。このため、加熱乾燥後の補強材1の長手方向の反り量は、例えば図3の点cで示すように許容範囲内とすることができる。
【0013】
次に、加熱乾燥が終了後の補強材1について、所定の検査を行う(ステップS5)。この検査は、補強材1について外観、形状、反り量などの各種の検査を行う。そして、この検査結果により、補強材1を良品と不良品に判別する。
以上説明したように、この実施形態では、プレス加工後の補強材1の反りをレベラーなどで矯正し、その反りの矯正時に、後工程の加熱乾燥で生ずる補強材1の反りを相殺するための反りを、予めレベラーなどで補償するようにした。
【0014】
このため、この実施形態によれば、後工程において補強材1に加熱乾燥を行って仕上げるが、この加熱乾燥後に、加熱乾燥に伴う熱応力を開放して補強材1に現れる反りを防止でき、補強材1の反り量を許容範囲内にすることできる。
また、この実施形態では、補強材は複数の小孔を有し、洗浄後に加熱乾燥する場合について説明した。この場合には、加熱乾燥に伴う熱応力の管理が必要になるが、この管理を適切に行うことができる。
【符号の説明】
【0015】
1・・・補強材、2・・・小孔、3・・・凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリンタヘッドの板状の補強材を製造する製造方法であって、
金属材料からプレス加工により前記補強材を成形する第1工程と、
前記補強材の反りを、前記第1の工程後の状態から、設定した反りを有する状態へと変化させる第2工程と、
前記第2工程の処理が終了した前記補強材を洗浄し、当該洗浄後に前記補強材を加熱乾燥する第3工程と、
を含むことを特徴とするプリンタヘッドの補強材の製造方法。
【請求項2】
前記第2工程では、前記プレス加工により成形された前記補強材の反りをレベラーで矯正して平坦化し、当該矯正時に、後の工程の加熱乾燥で生ずる前記補強材の反りを相殺するための反りを、予め前記レベラーで補償しておくことを特徴とする請求項1に記載のプリンタヘッドの補強材の製造方法。
【請求項3】
前記第2工程における前記レベラーによる補償は、前記第3工程における前記加熱乾燥で生ずる前記補強材の反りとは反対の反りを、予め前記補強材に残しまたは与えることを特徴とする請求項2に記載のプリンタヘッドの補強材の製造方法。
【請求項4】
前記補強材は、厚さ方向に複数の小孔を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちのいずれか1項に記載のプリンタヘッドの補強材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−196888(P2012−196888A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62546(P2011−62546)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】