説明

プリンター用塗工紙

【課題】 平判断裁時、断裁加工機部材との接触による擦れキズや搬送ベルト痕等の表面欠陥が発生しにくく、且つ高光沢性と安定したプリンター走行性を有するプリンター用塗工紙を提供する。
【解決手段】 紙基材と、その少なくとも一面上に、顔料と接着剤を主成分とする塗工層とを設け、前記塗工層中に、JIS K 2207で規定される針入度が1.0mm未満のポリエチレン樹脂を含有し、前記塗工層表面が下記(1)〜(3)の状態であり、かつ前記塗工紙の、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.5−2:2000に基づく透気度が7000秒以下であることを特徴とするものである。
(1)前記ポリエチレン樹脂が海島状に存在
(2)前記ポリエチレン樹脂の、前記塗工層表面に占める面積の割合が0.5〜5.0%
(3)JIS P 8142に基づく75度における白紙光沢度が60%以上

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の複写機、プリンターなどに用いられるカット用に適した高光沢塗工紙に関し、特に、平判加工時の表面欠陥発生の防止効果に優れたプリンター用塗工紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式の複写機、プリンターのカラー化、高速化及び高画質化が進んでおり、特に、オンデマンド出版物の分野では、より手軽に、また小部数の複写への対応が可能なことから、これまで印刷により得ていた出版物をカラー複写機、カラープリンターで作成する動きが顕著になっている。
【0003】
商業用印刷分野でオフセット印刷等に用いられてきた高白紙光沢の塗工紙は、通常、各種コーターを用いて、平均粒子径が2μm以下の顔料を主原料とする塗工液を基紙の片面当たり10g/m以上塗布した後、キャレンダ掛けにより表面を平滑化したものであるが、電子写真方式の複写機やプリンターの分野においても、鮮やかな画像を形成するために、従来の上質紙系のPPC用紙、プリンター用紙に代わり塗工紙を使用するケースが増えてきている。
【0004】
しかし、通常の印刷に用いられる前記高白紙光沢塗工紙は、高光沢度を得るために高平滑化処理を行うため、透気度が高くなる傾向があり、電子写真方式での印刷に使用した場合は、定着工程でのブリスターを生じやすい。そこで、高光沢度と低透気度を両立する用紙が種々提案されている。
【0005】
これまで、高光沢度と低透気度を両立させる方法として、塗工層中に、内部に空隙を有する非造膜性樹脂である有機顔料を特定量配合させて、平滑化処理条件を軽減する方法(例えば特許文献1参照)、塗工層を多層構成とし、内側塗工層に、特定形状の顔料を使用し、最外側塗工層中には、特定のガラス転移温度を有する熱可塑性有機微粒子を含有させて、塗工層中にクラックを発生させる方法(特許文献2参照)等が提案されている。一般にこれら有機顔料を用いた塗工層は無機顔料を主成分とする塗工層と比べて光沢発現性が高いことを利用して、平滑化条件を軽減することによって、透気度の上昇を抑えているため、塗工層自体の光沢発現能力に余力を残した状態で製造される。このことにより、上質紙や通常の印刷に用いられる前記高光沢塗工紙では問題とならなかった、平判断裁時の工程内搬送ベルトや裁断台との接触により、部分的に光沢度が上昇し易く、部材との接触キズや搬送ベルト痕等の表面欠陥が発生しやすくなるという新たな問題が発生した。塗工紙の擦れキズ防止方法としては、無機顔料を主体とする塗工層の厚みに対して0.5〜2倍の平均粒子径を持つポリオレフィン樹脂粒子を塗工層中に含有させる方法(特許文献3参照)が提案されている。しかしこの方法では、所望の光沢度を得るためには、平滑化条件を強化する必要があり、透気度が上昇するため、定着時のブリスター発生の虞があるため好ましくなく、満足なプリンター用塗工紙は得られていないのが実状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許特―02745431号公報
【特許文献2】特開2005−036379号公報
【特許文献3】特開2008−249847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、平判断裁時、断裁加工機部材との接触による擦れキズや搬送ベルト痕等の表面欠陥が発生しにくく、且つ高光沢性と安定したプリンター走行性を有するプリンター用塗工紙を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは前記問題を解決するために鋭意検討した結果、塗工層表面に特定の針入度を有するポリエチレン樹脂からなる部分を、特定の割合で存在させることにより、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明に係るプリンター用塗工紙は、紙基材と、その少なくとも一面上に、顔料と接着剤を主成分とする塗工層とを設け、前記塗工層中に、JIS K 2207で規定される針入度が1.0mm未満のポリエチレン樹脂を含有し、前記塗工層表面が下記(1)〜(3)の状態であり、かつ前記塗工紙の、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.5−2:2000に基づく透気度が7000秒以下であることを特徴とするものである。
(1)前記ポリエチレン樹脂が海島状に存在
(2)前記ポリエチレン樹脂の、前記塗工層表面に占める面積の割合が0.5〜5.0%
(3)JIS P 8142に基づく75度における白紙光沢度が60%以上
前記塗工層中に、有機顔料を全顔料の10〜50質量%含有することが好ましく、前記塗工層表面に島状に存在するポリエチレン樹脂部分一個当りの面積が、50〜500μmであることがより好ましく、前記塗工層表面に存在するポリエチレン樹脂部分の高さが1.0μm以下であることがさらに好ましい。
また前記塗工層中に、内部に空隙を有する非造膜性樹脂からなる中空型有機顔料を、全顔料中に1〜5質量%含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、平判断裁時、断裁加工機部材との接触による擦れキズや搬送ベルト痕等の表面欠陥が発生せず、且つ高光沢性と安定したプリンター走行性を有するプリンター用塗工紙が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明では、有機顔料を含有する塗工層表面の擦れキズや搬送ベルト痕の発生を防止する方法として、JIS K 2207で規定される針入度が1.0mm未満のポリエチレン樹脂からなる部分を前記塗工紙表面に特定の割合で存在させるものである。従来の無機顔料を主成分とする塗工層では、塗工層自体が比較的硬いため、擦れキズや搬送ベルト痕は発生しにくく、また擦れキズ防止のためにポリエチレン樹脂を使用する場合、ポリエチレン樹脂の針入度が上記規定よりも大きい場合においても、塗工層形成時の乾燥工程でポリエチレン樹脂が溶融し表面にマイグレーションして、無機顔料表面を覆うことによって、擦れキズを防止することができた。一方、塗工層に有機顔料を含有する場合は、塗工層自体が比較的柔らかいため、針入度が1.0以上のポリエチレン樹脂では、十分な擦れキズ防止効果は得られず、また多用すると光沢度が低下するため好ましくない。ポリエチレン樹脂の針入度としては、0.5mm未満がより好ましい。前記ポリエチレン樹脂としては、塗工層形成時の乾燥工程で、溶融しないことが好ましく、ポリエチレン樹脂の融点としては、120℃以上、また軟化点としては、125℃以上が好ましい。
【0012】
前記ポリエチレン樹脂の、塗工層表面に占める面積の割合としては、0.5〜5.0%好ましく、より好ましくは0.5〜3%である。0.5%未満の場合、十分な擦れキズ防止効果が得られないことがある。また5.0%を超える場合は、光沢度の低下を生じ易いため、やはり好ましくない。
【0013】
さらに前記塗工層表面に島状に存在するポリエチレン樹脂部分一個当りの面積が50〜500μmであることが好ましい。前記一個当りの面積が50μm未満の場合は、十分な擦れキズ防止効果が得られないことがある。また500μmを超える場合は、表面の光沢ムラが発生し易くなり、外観上好ましくない。
【0014】
また前記塗工層表面に存在するポリエチレン樹脂部分の高さとそれ以外の部分との高さの差が1.0μm以下であることが好ましい。本発明で用いられるポリエチレン樹脂からなる部分とそれ以外の部分との高さの差が1.0μmを超える場合は、紙同士の接触により擦れキズが発生する虞があるため好ましくない。ポリエチレン樹脂からなる部分の高さの制御方法としては、例えば所定の面積になるように適当な粒子径のポリエチレン樹脂を塗工層に配合し、スーパーカレンダー等の平滑化処理を行うことによって得られるが、もちろんこの方法に限定するものではない。
【0015】
なお本発明におけるポリエチレン樹脂からなる部分の塗工層表面全体に占める割合および個々のポリエチレン樹脂部分一個当りの面積の測定については、たとえば電子顕微鏡による観察により行うことができる。またポリエチレン樹脂からなる部分とそれ以外の部分との高さの差はレーザー顕微鏡(例えばキーエンス社製VK−8500等)で測定することができる。
【0016】
本発明では、その効果を損なわない限りにおいて、前記以外の滑剤を併用することも可能である。滑剤の具体例としては、例えば、脂肪族炭化水素系滑剤、高級脂肪族アルコール系滑剤、高級脂肪酸系滑剤、高級脂肪酸アミド系滑剤、高級脂肪酸金属塩系滑剤、高級脂肪酸エステル系滑剤、およびそれらの二種以上を適宜併用した複合滑剤を挙げることが出来る。更に具体的には、脂肪族炭化水素系滑剤:C16以上の流動パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、天然パラフィン、合成パラフィン、ポリオレフィンワックスおよびこれらの部分酸化物、あるいはフッ化物、塩化物など、高級脂肪族アルコール系滑剤:C16以上の高級脂肪族アルコール、高級脂肪酸系滑剤:C16以上の高級脂肪酸、高級脂肪酸アミド系滑剤:C16以上の高級脂肪酸のアミドおよびビスアミド、高級脂肪酸金属塩系滑剤:C10以上の脂肪酸の金属塩、高級脂肪酸エステル系滑剤:1価アルコールの高級脂肪酸エステル、多価アルコールの高級脂肪酸(部分)エステルが挙げられる。
【0017】
本発明に塗工層で用いられる顔料については、有機顔料が含まれるものである。使用される有機顔料の全顔料に対する割合としては、10〜50質量%が好ましい。20〜35質量%がより好ましい。有機顔料の具体例としては、例えば、ポリイソプレン、ポリネオプレン、ポリブタジエン等のポリジエン類、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリプロピレン等のポリアルケン類、ビニルハライド、酢酸ビニル、スチレン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、メチルビニルエーテル等のビニル系重合体や共重合体類、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、尿素系樹脂、メラミン系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂等の密実型、中空型、あるいは貫通孔型粒子等が挙げられる。中でも表面光沢度を向上させるためには、中空型の有機顔料を塗工層全顔料の1〜5質量%含有させることが好ましい。中空型の有機顔料を5質量%以上用いると、表面強度が低下するおそれがあるため好ましくない。
【0018】
塗工層中に用いられる無機顔料としては、例えば重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、カオリン、焼成カオリン、構造性カオリン、デラミカオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、シリカ、アルミノ珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、ホワイトカーボン、ベントナイト、ゼオライト、セリサイト、スメクタイト等の鉱物質が挙げられる。もちろんこれらの有機または無機顔料は、これらの中から1種あるいは2種以上が適宜選択して用いられる。
【0019】
顔料の粒子径は特に限定されないが、通常0.1〜5μmの範囲のものが用いられる。顔料は、通常、塗工液全固形分当り60〜90質量%の範囲で配合される。
【0020】
塗工紙表面の75度における白紙光沢度(JIS P8142)は60%以上にすることにより、優れた外観が得られるため好ましい。より好ましくは70%以上である。
【0021】
塗工紙のJAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.5−2:2000に基づく王研式透気度は、7000秒以下にすることで、プリンターの定着部分でのブリスター発生が抑えられるため好ましい。4000秒以下がより好ましい。
【0022】
本発明に用いる接着剤としては、例えば、スチレン−ブタジエン系、スチレン−アクリル系、エチレン−酢酸ビニル系、メチルメタクリレート−ブタジエン系、酢酸ビニル−ブチルアクリレート系等の各種共重合体、及び、ポリビニルアルコール、無水マレイン酸共重合体、アクリル酸−メチルメタクリレート系共重合体などの合成系接着剤、酸化澱粉、酵素変性澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉、カチオン性澱粉、両性澱粉、熱化学変性澱粉、ゼラチン、カゼイン等の天然系接着剤などを挙げることが出来る。接着剤は必要に応じて1種あるいは2種以上を適宜選択して使用することができる。接着剤は、通常、塗工液の全固形分当り0.5〜40質量%の範囲で配合される。
【0023】
塗工液には、顔料、接着剤の他に各種助剤、例えば界面活性剤、pH調節剤、粘度調節剤、保水剤、柔軟剤、光沢付与剤、ワックス類、分散剤、流動変性剤、導電防止剤、安定化剤、帯電防止剤、架橋剤、サイズ剤、蛍光増白剤、着色剤、紫外線吸収剤、消泡剤、耐水化剤、可塑剤、防腐剤、香料等を必要に応じて適宜配合することが可能である。
【0024】
本発明に用いられる紙基材の主原料となるパルプは、製法や種類等について特に限定されないが、KP、SPのような化学パルプ、SGP、RGP、BCTMP、CTMP等の機械パルプや、ECFパルプやTCFパルプ等の塩素フリーパルプ、脱墨パルプのような古紙パルプ、あるいはケナフ、バガス、竹、藁、麻等のような非木材パルプ、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリノジック繊維等の有機合成繊維、さらにはガラス繊維、セラミック繊維、カーボン繊維等の無機質繊維も使用出来る。
【0025】
また紙形成に用いられる紙料中には、必要に応じて填料が配合出来る。填料としては、特に限定するものではないが、一般に上質紙に用いられる各種の顔料、例えばカオリン、焼成カオリン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、タルク、酸化亜鉛、アルミナ、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、シリカ、ホワイトカーボン、ベントナイト、ゼオライト、セリサイト、スメクタイト等の鉱物質顔料や、ポリスチレン系樹脂、尿素系樹脂、メラミン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂並びにそれらの密実型、微小中空型、貫通孔型の粒子である有機顔料が挙げられる。
【0026】
紙料中には前記パルプ繊維や填料の他に、従来から使用されている各種のアニオン性、ノニオン性、カチオン性あるいは両性の歩留向上剤、濾水性向上剤、紙力増強剤、定着剤や内添サイズ剤等の各種抄紙用内添助剤を、必要に応じて適宜選択して使用することができる。さらに染料、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等の抄紙用内添助剤も紙の用途に応じて適宜添加することができる。
【0027】
紙基材の抄紙方法については特に限定するものではなく、例えば抄紙pHが4.5付近である酸性抄紙法、また中性サイズ剤および/または炭酸カルシウム等のアルカリ性填料を主成分として含み、抄紙pH約6の弱酸性から抄紙pH約9の弱アルカリ性の中性抄紙法等、全ての抄紙方法を用いることができ、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、丸網抄紙機、ヤンキー抄紙機、傾斜ワイヤー抄紙機等の通常用いられている抄紙機を適宜使用することができる。
【0028】
ブリスターが発生し難い透気性の良好な塗工紙を得る為には、紙基材の透気性の極端に劣るものを使用することが出来ない。本発明における紙基材は、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.5−2:2000に基づく透気度が、30秒以下のものが好ましく、20秒以下のものが特に好ましい。
【0029】
本発明に用いられる紙基材の坪量は、特に限定されるものではないが、通常40〜300g/mの範囲のものが用いられる。
【0030】
紙基材への前記塗工液の塗工量は、特に限定されるものではないが、通常片面当り固形分量で2〜25g/mであり、好ましくは5〜20g/mである。塗工量が2g/mに満たない場合、白紙光沢の良好なものが得られにくく、一方、25g/mを超える場合、塗工速度が上がらず、コスト高となることがある。
【0031】
塗工には、一般に公知の塗工装置、例えばブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、バーコーター、カーテンコーター、スロットダイコーター、グラビアコーター、チャンプレックスコーター、ブラシコーター、スライドビードコーター、ツーロールあるいはメータリングブレード式のサイズプレスコーター、ビルブレードコーター、ショートドウェルコーター、ゲートロールコーター等が適宜用いられる。なかでもブレードコーターは、優れた表面性が得られるため好ましい。
【0032】
塗工層は、紙基材の片面或いは両面に形成され、同一面に2層以上の積層にすることも可能である。両面塗工及び積層塗工する場合、各々の塗工液は同一組成或いは同一塗工量である必要はなく、所望の品質レベルに応じて決定される。なお積層の場合、最表面層を形成する塗工液には、前記ポリエチレン樹脂粒子を配合した塗工液が用いられ、また下層を形成する塗工液にも、前記ポリエチレン樹脂粒子を配合してもよい。
【0033】
また片面塗工品の裏面には、カール防止、印刷適性付与等の目的で、合成樹脂層、帯電防止層等を設けることも可能である。また他の用途適性付与の目的で、粘着、感熱、磁性、難燃、耐熱、耐水、耐油、防滑、熱転写受容層、インクジェット受理層等の後加工を施すことが出来る。
【0034】
このようにして得られた塗工紙は、必要に応じて平滑化処理が施される。平滑化処理は、通常のスーパーキャレンダ、グロスキャレンダ、ソフトキャレンダ等の平滑化処理装置を用いてオンマシンやオフマシンで行われ、所望の光沢度に調整される。
【0035】
本発明のプリンター用塗工紙は、水分が3〜10質量%の範囲、好ましくは4〜8質量%の範囲となるように調整して仕上げられる。
【0036】
なお本発明により得られたプリンター用塗工紙は、電子写真方式の用紙以外に、オフセット印刷等の通常の印刷用紙としても用いることが出来る。
【実施例】
【0037】
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが,本発明はそれらに限定されるものでない。なお、例中の「部」及び「%」は特に断わらない限り、「質量部(固型分)」及び「質量%」を示す。
【0038】
実施例1
[紙基材の調製]
LBKP(フリーネス(CSF)=450ml)90部、NBKP(フリーネス(CSF)=450ml)10部のパルプスラリーに、軽質炭酸カルシウム(PC:白石カルシウム社製)を5部となるように添加し、対パルプ100部当り澱粉1.5部、アルケニル無水コハク酸0.1部、および硫酸バンド0.6部を添加した紙料を用いて長網抄紙機で抄紙し、その抄紙工程中に澱粉の塗工量が乾燥重量で1g/mとなるようにサイズプレス装置で塗布・乾燥し、マシンキャレンダで王研式透気度平滑度測定器による平滑度が30秒になるように平滑化処理し、坪量が80g/mの紙基材を得た。
【0039】
[塗工液の調製]
水、カオリン(商品名:ハイドラグロス90、ヒューバー社製)100質量部と分散剤としてポリアクリル酸ナトリウム(商品名:アロンT−50、東亜合成社製)の40%水溶液0.1質量部を加え、コーレス分散機を用いて水分散して固形分濃度70%のカオリンスラリーを調整した。この顔料スラリー107質量部に合成樹脂顔料(商品名:T2577A、50%水分散品、JSR社製)40質量部、中空有機顔料(商品名:AE852、26%水分散品、JSR社製)15質量部、ポリエチレン樹脂粒子(商品名:SNダルアクト1001W、針入度 <0.5mm、融点125℃、平均粒子径 12μm、42%水分散品、サンノプコ社製)4.8質量部、酸化澱粉(商品名:エースA、王子コーンスターチ社製)の20%水溶液15質量部およびSBRラテックス(商品名:OJ2000H、50%分散品、JSR社製)12質量部を添加、攪拌し、さらに水を加えて、固形分濃度60%の塗工液を調製した。
【0040】
[塗工層の形成]
前記塗工液を、前記紙基材の両面に片面当たり乾燥重量で10g/mとなるようにブレードコーターを用いて300m/minの塗工速度、熱風温度160℃で塗工した。その後、金属ロールと弾性ロールで構成された加圧ニップのスーパーキャレンダ処理し、白紙光沢65%、坪量100g/mのプリンター用塗工紙を得た。
【0041】
実施例2
実施例1の塗工液の調製において、ポリエチレン樹脂粒子(商品名:SNダルアクト1001W、針入度 <0.5mm、融点125℃、平均粒子径 12μm、42%水分散品、サンノプコ社製)4.8質量部の代わりに、ポリエチレン樹脂粒子(商品名:SNコート950、針入度<0.5mm、融点140℃、平均粒子径20μm、40%水分散品、サンノプコ社製)5質量部を使用し、塗工層の形成において片面当たり乾燥重量で16g/mとなるように塗工した以外は実施例1と同様にして、白紙光沢65%、坪量112g/mのプリンター用塗工紙を得た。
【0042】
比較例1
実施例1の塗工液の調製において、ポリエチレン樹脂粒子(商品名:SNダルアクト1001W、針入度 <0.5mm、融点125℃、平均粒子径 12μm、42%水分散品、サンノプコ社製)4.8質量部の代わりに、ポリエチレン樹脂粒子(商品名:ケミパールW410、針入度:3mm、環球法軟化点(JIS K2207)110℃、平均粒子径9.5μm、40%水分散品、三井化学社製)の5質量部を使用し、塗工層の形成において片面当たり乾燥重量で8g/mとなるように塗工した以外は実施例1と同様にして、白紙光沢65%、坪量96g/mのプリンター用塗工紙を得た。
【0043】
比較例2
実施例1の塗工液の調製において、ポリエチレン樹脂粒子(商品名:SNダルアクト1001W、針入度 <0.5mm、融点125℃、平均粒子径 12μm、42%水分散品、サンノプコ社製)4.8質量部の代わりに、ポリエチレン樹脂粒子(商品名:ケミパールW900、針入度<1mm、環球法軟化点(JIS K2207)132℃、平均粒子径0.6μm、40%水分散品、三井化学社製)5質量部を使用し、塗工層の形成において片面当たり乾燥重量で10g/mとなるように塗工した以外は実施例1と同様にして、白紙光沢65%、坪量100g/mのプリンター用塗工紙を得た。
【0044】
比較例3
実施例1の塗工液の調製において、合成樹脂顔料(商品名:T2577A、50%水分散品、JSR社製)40質量部、中空有機顔料(商品名:AE852、26%水分散品、JSR社製)15質量部を使用せず、代わりに70%カオリンスラリーの使用量を141質量部に増やした以外は実施例1と同様にして、白紙光沢65%、坪量100g/mのプリンター用塗工紙を得た。
【0045】
得られたプリンター用塗工紙について以下の評価を行い、結果を表1に示した。
[透気度の測定] 王研式透気度平滑度計を用いて透気度を測定した。
[表面のポリエチレン樹脂部分の大きさの平均および全体に占める割合の観察]
走査型電子顕微鏡により、プリンター用塗工紙表面1mmの大きさの部分について観察を行った。
[ポリエチレン樹脂部分とその他の部分との高さの差の測定]
レーザー顕微鏡(型式:VK−8500、キーエンス社製)を用いて、プリンター用塗工紙表面のポリエチレン樹脂部分10カ所を測定し、その平均値を出した。
[断裁時の擦れキズ評価]
電動断裁機シュアーカッター(型番661015、シュアー工業社製)を用いて、プリンター用塗工紙を250枚束ねて、4辺をギロチン断裁し、最も下のプリンター用塗工紙が断裁台と接触する側表面の、キズの入り具合の評価を行った。
○:擦れキズがない。
○−:顕著な擦れキズが5本以下
△:顕著な擦れキズが6〜10本
×:顕著な擦れキズが11本以上
[ブリスター評価]
28℃85%RHの環境下において、レーザープリンター(商品名:IPSiO SPC810、リコー社製)を用いて、プリンター用塗工紙の両面にカラー画像を印画し、ブリスター発生の有無を評価した。
○:発生なし
×:発生あり
【0046】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明に係る塗工紙は、平判断裁時における断裁加工機部材との接触による擦れキズや搬送ベルト痕等の表面欠陥が発生しにくく、且つ高光沢性と安定したプリンター走行性を有するものであり、実用上、極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材と、その少なくとも一面上に、顔料と接着剤を主成分とする塗工層とを設けてなるプリンター用塗工紙において、前記塗工層中に、JIS K 2207で規定される針入度が1.0mm未満のポリエチレン樹脂を含有し、前記塗工層表面が下記(1)〜(3)の状態であり、かつ前記塗工紙の、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.5−2:2000に基づく透気度が7000秒以下であることを特徴とするプリンター用塗工紙。
(1)前記ポリエチレン樹脂が海島状に存在
(2)前記ポリエチレン樹脂の、前記塗工層表面に占める面積の割合が0.5〜5.0%
(3)JIS P 8142に基づく75度における白紙光沢度が60%以上
【請求項2】
前記塗工層中に、有機顔料を全顔料の10〜50質量%含有する請求項1記載のプリンター用塗工紙。
【請求項3】
前記塗工層表面に島状に存在するポリエチレン樹脂部分一個当りの面積が、50〜500μmである請求項1〜2記載のプリンター用塗工紙。
【請求項4】
前記塗工層表面に存在するポリエチレン樹脂部分の高さが1.0μm以下である請求項1〜3記載のプリンター用塗工紙。
【請求項5】
前記塗工層中に、内部に空隙を有する非造膜性樹脂からなる中空型有機顔料を、全顔料中に1〜5質量%含有する請求項1〜4記載のプリンター用塗工紙。

【公開番号】特開2010−185950(P2010−185950A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−28597(P2009−28597)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】