説明

プリンタ用の給紙カセット

【課題】 インナーガイドがカセット本体から不用意に外れることを防止する。
【解決手段】 インナーガイドの下部の左右一端に設けた突起を、カセット本体の弾性爪により回動自在に係合する。突起を設けた側のインナーガイドの上部に当接片を設けて、インナーガイドが閉じた状態で、突起が弾性爪から浮き上がると、当接片が搬送ローラの軸に接触するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複写機、複合機などを含むプリンタ用の給紙カセットに関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、複合機などのプリンタの給紙カセットでは、カセット内部のピックアップローラから、インナーガイドを介して搬送ローラまで用紙を搬送する。インナーガイドの外側には別に搬送ガイドを設け、上下多段に配置された給紙カセットの下段からの用紙をガイドして、搬送ローラまで搬送する。そして搬送ガイドに従動ローラを設け、インナーガイドでガイドした用紙も、搬送ガイドでガイドした用紙も、搬送ローラと従動ローラとの間を通過させ、プリンタ本体あるいは上段のカセット側へ搬送する(特許文献1:JP2008-24415A)。
【0003】
インナーガイドと搬送ガイドはカセット本体への取付部品であり、例えばインナーガイドの下部の左右一端をカセット本体側の孔部に挿入し、左右の他端をカセット本体側の係合爪で係合して保持する。係合爪は上下方向に隙間があり、インナーガイドを下向きに押し込むと、係合爪に係合できる。しかしながら係合爪による保持では、輸送時等に給紙カセットに振動が加わると、インナーガイドが係合爪から外れる可能性がある。
【0004】
搬送ガイドはインナーガイドに比べ大がかりな部品なので、係合爪による係合ではなく、より確実な係合手段を用いる。そこで例えば搬送ガイドの下部の左右一端に弾性部材を設けて、ガイドとは反対側の弾性部材の端部に突起を設ける。この突起をカセット本体の孔部に挿入して軸支する。他端には弾性部材を設けず、搬送ガイドの端部の突起をカセット本体の孔部に挿入し、軸支する。しかしながら弾性部材を用いると、輸送中等の振動で弾性部材が縮むと、突起が孔部から抜け出す可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】JP2008-24415A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明の課題は、給紙カセットのインナーガイドについて、簡単な取付構造を用いながら、インナーガイドの取付を容易にし、かつインナーガイドが不用意に外れることを防止することにある。
この発明の追加の課題は、給紙カセットの搬送ガイドについて、簡単な取付構造を用いながら、搬送ガイドの取付を容易にし、かつ搬送ガイドが不用意に外れることを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、ピックアップローラと搬送ローラとを備えたカセット本体の外側に、インナーガイドと搬送ガイドとを、インナーガイドを内側、搬送ガイドを外側に、各々着脱自在に、かつ各ガイドの下部の左右両端部を水平軸を中心に回動自在に前記カセット本体に取り付け、カセット本体内からの用紙をインナーガイドで、カセット本体よりも下部からの用紙を搬送ガイドで、各々搬送ローラまでガイドする、プリンタ用の給紙カセットにおいて、
前記インナーガイドの下部の左右一端に設けた突起を、カセット本体の弾性爪により回動自在に係合し、
前記弾性爪は前記突起の上部に上下方向の隙間が有る形状で、
前記インナーガイドの少なくとも前記左右一端の上部に当接片を設けて、インナーガイドが閉じた状態で、前記突起が前記隙間から浮き上がると、前記当接片が搬送ローラの軸に接触するようにしたことを特徴とする。
【0008】
この発明では、インナーガイドの左右少なくとも一端に当接片を設けるだけで、インナーガイドの突起が弾性爪から外れることを防止でき、しかも突起の取り付け構造は簡単で、取り付けも複雑にならない。なお実施例では、弾性爪を一対設けたが1個でも良く、当接片をインナーガイドの左右端に沿って長く配置したが、左右端の上部にのみ設けても良い。
【0009】
好ましくは、前記インナーガイドの左右他端の下部に設けた突起を、カセット本体に設けた孔部で回動自在に支持し、かつインナーガイドの回動での周方向に沿った、前記当接片の長さを、前記搬送ローラの軸の直径よりも大きくする。インナーガイドの回動方向に沿った当接片の長さを、搬送ローラの軸の直径よりも大きくすると、インナーガイドが、振動等で標準位置から回動していても、当接片が外れ止めとして作用する。
【0010】
より好ましくは、前記搬送ガイドの下部の左右一端に圧縮自在な弾性部を介して突起を設け、左右端に弾性部を介さずに突起を設け、各突起をカセット本体の孔部で支持すると共に、前記搬送ガイドを閉じた際にカセット本体側を向く突起を前記弾性部に設け、前記搬送ガイドが閉じた状態で、前記弾性部が縮むと搬送ガイドの突起と接触するストッパを、前記突起と対向する位置の内側で、カセット本体に設ける。このようにすると、搬送ガイドが閉じた状態で、振動等により弾性部が縮み突起が内側へ移動すると、ストッパと接触して搬送ガイドが外れることを防止できる。必要な部材は突起とストッパで、極めて簡単に構成でき、かつ搬送ガイドの装着が複雑にならない。

【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例のカセットの平面図
【図2】実施例のカセットの、インナーガイドを閉じた状態での、係合端側の要部正面図
【図3】実施例のカセットの、インナーガイドを閉じた状態での、係合端側の要部平面図
【図4】実施例のカセットの、インナーガイドを閉じた状態での挿入端側の要部平面図
【図5】実施例のカセットの、インナーガイドの係合端の付近を拡大して示す、要部拡大平面図
【図6】実施例のカセットの、インナーガイドの係合端の付近を拡大して示す、要部拡大側面図
【図7】実施例のカセットの、インナーガイドの下部の係合端と上部の当接片とを模式的に示す側面図
【図8】実施例のカセットの、閉じた状態のインナーガイド、開いた状態の搬送ガイド、及びその周囲を示す要部平面図
【図9】実施例のカセットの、閉じた状態の搬送ガイドとその周囲とを示す要部平面図
【図10】実施例のカセットの、搬送ガイドの突起と本体ケースのストッパとを示す要部拡大平面図で、搬送ガイドは閉じている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明を実施するための最適実施例を示す。この発明の範囲は、特許請求の範囲の記載に基づき、明細書とこの分野の周知技術を参酌し、当業者の理解に従って定められるべきである。
【実施例】
【0013】
図1〜図10に、実施例を示す。各図において、2はカセットで、複写機,複合機,ファクシミリ装置、プリンタなどの給紙用カセットであり、4はカセット2の天板で、5はカセット本体である。カセット2には側部カバー8と一体に着脱する着脱部6が設けられ、着脱部6の用紙エリア10にA4などの用紙を載置できるようにする。
【0014】
カセット2の一端にピックアップローラ12を設け、用紙エリア10からの用紙を1枚ずつピックアップする。ピックアップした用紙を、カセット本体5の図示しない孔部を介して、後述のインナーガイド18との間へ送り出すことにより、搬送ローラ14側へ搬送する。13はピックアップローラ12の軸で、図示しない駆動部により回転する。14は搬送ローラ、15は搬送ローラ14の軸で、駆動部16により回転する。18はインナーガイドで、カセット2の本体5に対し着脱かつ回動自在に取り付けられている。19はインナーガイド18の上縁、20はインナーガイド18の例えば左右双方に設けた当接片で、その上端の当接端21と軸15の下端との間に僅かな隙間がある。当接片20の内、実際に意味があるのは当接端21なので、特許請求の範囲では当接端21を備えた部材を当接片と呼ぶ。
【0015】
なおこの明細書において、左右は軸13,15の長手方向を意味し、上下は通常の上下方向を意味する。実施例では、インナーガイド18の左右それぞれに当接片20を設けるが、後述の係合端30を設けた側にのみ当接片20を設けても良い。また26はガイドフィルムで、例えばインナーガイド18の左右に設けて、インナーガイド18の内側を通過した用紙をガイドフィルム26により搬送ローラ14から外れないようにする。ガイドフィルム26は設けなくても良い。
【0016】
22は搬送ガイドで、インナーガイド18の外側にあり、図示したカセット2よりも下側のカセットからの用紙を、インナーガイド18と搬送ガイド22の間を通過させて、搬送ローラ14まで搬送する。搬送ガイド22は従動ローラ24を備えている。28はインナーガイド18の下部の軸(図2)で、その一端が図2などに示す係合端30で、他端が図4などに示す挿入端36である。
【0017】
インナーガイド18は軸28を中心に回動自在で、下部の左右方向一端に係合端30(図2等)が、他端には挿入端36(図4)がある。係合端30は係合部32に例えば一対の弾性爪により係合保持され、一対の弾性爪33,33の間に上下方向の隙間があり、係合端30を上から下へセットすることにより係合する。インナーガイド18の左右反対側では、挿入端36を保持部38の孔部39に挿入して支持する。そしてインナーガイド18の取り付けを容易にするため、左右方向一端を挿入端36とし他端を係合端30とする。
【0018】
図5,図6に係合端30とその周囲を拡大して示す。42はインナーガイド18のカバーで、一対の弾性爪33,33の間には上向きの隙間があり、係合端30を係合部32の溝40で受けて、弾性爪33により保持する。インナーガイド18は一端を弾性爪33で係合保持するので、移送中などに上向きの振動が加わると、係合端30が弾性爪33から外れることがある。そこで弾性爪33の構造を変更し外れにくくすると、インナーガイド18の取り付けが複雑になり、係合部32の構造も複雑になる。そこで実施例では、インナーガイド18のカバー42の左右に当接片20を設け、その上端の当接端21を通常は軸15よりも僅かに下側に位置するようにする。そして振動などによりインナーガイド18が上側に変位すると、当接端21が軸15に接触して、インナーガイド18の脱落を防止する(図7)。
【0019】
実施例ではインナーガイド18の左右にそれぞれ当接片20を設けたが、少なくとも係合端30側の上部に設ける。また係合端30と挿入端36との組み合わせに代えて、左右双方とも係合端30とする場合、インナーガイド18の左右それぞれに当接片20を設ける。なおインナーガイド18が上方に移動した場合、上縁19が搬送ローラ14に接触するよりも先に、当接端21が軸15に接触するので、上縁19と搬送ローラ14との間に最小限の隙間が残り、ここを用紙が通過できる。
【0020】
搬送ガイド22はインナーガイド18の外側の部材で、図示したカセット2の下側のカセットから搬送される用紙を、インナーガイド18と搬送ガイド22との間を通過させて、搬送ローラ24まで搬送する。図8〜図10に、搬送ガイド22の構造を示すと、従動ローラ24には軸44を取り付け、例えば軸受46で支持する。カバー48は搬送ガイド22の面状の部材で、カバー48の裏側とインナーガイド18のカバー42との間が用紙のパスとなる。そして搬送ガイド22は、下部の突起52などを中心として回動自在である。
【0021】
搬送ガイド22の下部の左右一方に弾性部50があり、プラスチック部材で構成されて例えばC字状の形状にし、左右方向の弾性を備えている。弾性部50の外側に突起52があり、カセット本体5側の保持部54の挿入孔に突起52を挿入して軸支する。なお搬送ガイド22の左右他端では、弾性部50を設けずに、突起52をカバー48の端部に直接設けて、保持部54で保持する。
【0022】
弾性部50が必要なのは、突起52を保持部54に挿入できるようにするためである。しかしながら搬送ガイド22に左右方向の振動などが加わると、弾性部50が縮み、突起52が保持部54から外れる可能性がある。突起52の脱落を防止するため、突起52の長さを長くすると、取り付けが複雑になる。そこで実施例では、C字状の弾性部50の、搬送ガイド本体(カバー48)から見て左右方向外側に突起56を設け、さらに搬送ガイド22が閉じている際に、突起56の運動を規制するストッパ58を設ける。ストッパ58は、左右方向に関して突起56の内側に設け、弾性部50が縮むと突起56と接触するように設ける。このため振動などにより弾性部50が縮み、突起56が図9,図10の右側(内側)へ移動すると、ストッパ58で止められて、突起52が外れることを防止できる。なお搬送ガイド22の左右双方に弾性部50を設ける場合、突起56とストッパ58を左右双方に設けることが好ましい。
【0023】
実施例では以下の効果が得られる。
(1) インナーガイド18に、当接端21を備えた当接片20を設けることにより、インナーガイド18の係合端30が係合部32から外れることを防止する。
(2) またインナーガイド18が上方に移動した場合、上縁19が搬送ローラ14に接触するよりも先に、当接端21が軸15に接触するので、上縁19と搬送ローラ14との間に最小限の隙間が残り、ここを用紙が通過できる。
(3) インナーガイド18の回動方向に沿った当接端21の長さは、軸15の直径よりも大きいので、インナーガイド18が多少回動していても、当接端21が外れ止めとして作用する。
(4) 弾性部50に突起56を設けると共に、搬送ガイド22が閉じた状態で、左右方向に突起56と向かい合うストッパ58を設け、突起52が外れることを防止する。
(5) このようにしてインナーガイド18と搬送ガイド22の外れ止めを、簡単な機構で実現し、またこれらの取り付けを複雑にすることがない。

【符号の説明】
【0024】
2 カセット
4 天板
5 カセット本体
6 着脱部
8 側部カバー
10 用紙エリア
12 ピックアップローラ
13,15 軸
14 搬送ローラ
16 駆動部
18 インナーガイド
19 上縁
20 当接片
21 当接端
22 搬送ガイド
24 従動ローラ
26 ガイドフィルム
28,44 軸
30 係合端
32 係合部
33 弾性爪
36 挿入端
38 保持部
39 孔部
40 溝
42,48 カバー
46 軸受
50 弾性部
52 突起
54 保持部
56 突起
58 ストッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピックアップローラと搬送ローラとを備えたカセット本体の外側に、インナーガイドと搬送ガイドとを、インナーガイドを内側、搬送ガイドを外側に、各々着脱自在に、かつ各ガイドの下部の左右両端部を水平軸を中心に回動自在に前記カセット本体に取り付け、カセット本体内からの用紙をインナーガイドで、カセット本体よりも下部からの用紙を搬送ガイドで、各々搬送ローラまでガイドする給紙カセットにおいて、
前記インナーガイドの下部の左右一端に設けた突起を、カセット本体の弾性爪により回動自在に係合し、
前記弾性爪は前記突起の上部に上下方向の隙間が有る形状で、
前記インナーガイドの少なくとも前記左右一端の上部に当接片を設けて、インナーガイドが閉じた状態で、前記突起が前記隙間から浮き上がると、前記当接片が搬送ローラの軸に接触するようにしたことを特徴とする、プリンタ用の給紙カセット。
【請求項2】
前記インナーガイドの左右他端の下部に設けた突起を、カセット本体に設けた孔部で回動自在に支持し、
かつインナーガイドの回動での周方向に沿った、前記当接片の長さを、前記搬送ローラの軸の直径よりも大きくしたことを特徴とする、請求項1のプリンタ用の給紙カセット。
【請求項3】
前記搬送ガイドの下部の左右一端に圧縮自在な弾性部を介して突起を設け、左右端に弾性部を介さずに突起を設け、各突起をカセット本体の孔部で支持すると共に、
前記搬送ガイドを閉じた際にカセット本体側を向く突起を前記弾性部に設け、
前記搬送ガイドが閉じた状態で、前記弾性部が縮むと搬送ガイドの突起と接触するストッパを、前記突起と対向する位置の内側で、カセット本体に設けたことを特徴とする、請求項1または2のプリンタ用の給紙カセット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−63343(P2011−63343A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−213404(P2009−213404)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】