説明

プリンタ装置

【課題】
搬送及び印字において、制御方法が単純で処理時間の早い印字部シャッタ開閉制御方法を提供する。
【解決手段】
媒体を装置内に取込み媒体を装置内の各部に搬送する搬送路と、キャリッジを有する印字ヘッド4と、その印字ヘッド4による印字を行うため電磁ソレノイド等への通電により搬送路を開放する印字部シャッタ8を備え、印字時にはその媒体を印字部に搬送し、印字部シャッタ8を開放して搬送路内の媒体に印字を行うプリンタ装置において、印字時に搬送路を開放する印字部シャッタ8に印字ヘッド4がホームポジションから脱出した際に開放した印字部シャッタ8を固定するロック機構11を設け印字中などは前記ロック機構11の作用により印字部シャッタ8の開放状態を保持するよう構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金融機関で使用する通帳等の媒体に印字を行うプリンタ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の装置としては、媒体を装置内に取込み媒体を装置内の各部に搬送する搬送路と、キャリッジを有する印字ヘッドと、その印字ヘッドによる印字を行うため電磁ソレノイド等への通電により搬送路を開放又は閉鎖する印字部シャッタを備え、印字時にはその媒体を印字部に搬送し、印字部シャッタを開放して搬送路内の媒体に印字を行うものがある。
【0003】
印字部シャッタの電磁ソレノイドを使用した制御には、押し引きラッチ型の電磁ソレノイドにより開閉をラッチさせる方法や、非ラッチ型の電磁ソレノイドにより通電時開放し、スプリング等を用いてその収縮力で閉鎖する方法、あるいはスプリングにより開放、非ラッチ方電磁ソレノイドへの通電により閉鎖する方法等が考えられる。
【0004】
印字対象となる媒体が冊子等である場合は、媒体の使用状態によってはその端が必ずしも整然とした状態であるとは限らないため、媒体を装置内各部位へ搬送する際に媒体端部などが印字部シャッタの開放部等の境目などへの引っかかりなどを考慮する必要があり、印字部シャッタの開閉は精密でかつ強力な押え力が必要であった。
【0005】
このため、印字部シャッタの開閉制御にはラッチ型の電磁ソレノイド制御による開閉制御は押え力が無いために不採用となり、また、通電による開放制御方法では、強力な電磁力が必要であったため、長時間の通電ができない制約から不採用となっていた。よって、特開平9-207402号公報(特許文献1)に示されるような、電磁ソレノイドの通電により印字部シャッタを閉鎖し、スプリング等の収縮力により開放する制御方法が採用されることが多い。
【0006】
【特許文献1】特開平9-207402号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記電磁ソレノイドの通電により印字部シャッタを閉鎖し、スプリング等の収縮力により開放する制御方法では、通電時間を短く抑えるため、通常時は開放状態、媒体搬送により印字部を媒体が通過するタイミングのみ閉鎖するという制御が必要であった。
【0008】
このため、印字部シャッタがメカ的な閉鎖完了までに媒体端部が到達させない最適な待ち時間を算出するため、印字部シャッタ制御用に媒体の位置管理が必要となるだけでなく、その度に開閉完了までの待ち時間が必要で、処理能力の低下にも繋がっていた。
【0009】
本発明は、上記問題は高電力を要する電磁ソレノイドを制御するために長時間の通電ができないという所に起因するとの事実認識に基づき、上記方法でなく、電磁ソレノイドの通電により印字部シャッタが開放する方法でも、通電時間が短い制御にすればこの問題は解決が可能であるとの観点から、この着想を具体化した印字部シャッタ制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的のために本発明による通帳プリンタは、媒体を装置内に取込み媒体を装置内の各部に搬送する搬送路と、キャリッジを有する印字ヘッドと、その印字ヘッドによる印字を行うため電磁ソレノイド等への通電により搬送路を開放する印字部シャッタを備え、印字時にはその媒体を印字部に搬送し、印字部シャッタを開放して搬送路内の媒体に印字を行うプリンタ装置において、印字時に搬送路を開放する印字部シャッタに印字ヘッドがホームポジションから脱出した際に開放した印字部シャッタを固定するロック機構を設け印字中などは前記ロック機構の作用により印字部シャッタの開放状態を保持するよう構成したものである。
【発明の効果】
【0011】
かかる本発明の印字部シャッタ制御によれば、通常搬送時印字部シャッタはスプリング等の収縮力により閉鎖状態であるため、通電等の制御は不要となる。一方、印字時に至っては、搬送路を開放する為に通電制御は必要であるが、一度印字動作に移行する為に印字ヘッドがホームポジションから脱出した時点で、前記ロック機構が作用することで、通電を遮断する事が可能となり、且つ、印字と改行の繰り返し動作も、媒体の端部が印字部シャッタ開放部に到達しない限り電磁ソレノイド通電による印字部シャッタの開放制御は必要なくなり、容易で且つ高速な処理が実現可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
図1及び図2において、図1は本発明の実施形態に係る通帳プリンタを説明する図である。図中の7は通帳プリンタユニットである。
【0014】
1は挿入口で、ここから媒体である通帳を装置内に取込む。2は磁気ヘッドで通帳に書き込まれた磁気情報を読み取り、また、新たに磁気情報を書き込む。3はイメージリーダであり、印字行数、バーコード、あるいは印字濃度の判定を行うための読み取りも行う。4は印字ヘッドであり、キャリッジを有し、キャリッジにて挿入方向に直行する方向へ印字ヘッドを移動させて印字を行う。5は通帳の頁替えユニットであり、通帳の頁をめくる/めくり戻すことが可能である。
【0015】
6は搬送モータであり、モータ駆動により搬送路の各ローラを回転させ、挿入口1より取込んだ通帳を処理に応じ、各ユニットに搬送する。8は印字部内にある印字部シャッタで9は印字部シャッタを駆動する電磁ソレノイドであり、本実施例では電磁ソレノイド9への通電により印字部シャッタ8を駆動し、搬送路の開放を行い、印字ヘッド4により搬送路内の媒体への印字を可能とする。また、本図中には記述していないが、電磁ソレノイドの通電により開放される印字部シャッタ8は通常スプリング等の収縮力により搬送路閉鎖方向への力が作用しており、電磁ソレノイド9の通電を遮断すると、瞬時に開放している印字部シャッタが搬送路閉鎖方向に駆動し、搬送路が閉鎖する構造となっている。
【0016】
図2は、図1の印字部のキャリッジを有する印字ヘッド4の詳細と、通帳へ印字する動作を示す。10はキャリッジモータであり、印字ヘッド4をベルト搬送により通帳搬送方向と直交する方向に移動させる。この時、印字部シャッタ8は搬送路を開放状態であるが、本図2内ではキャリッジモータ10駆動による印字ヘッド4の動作のみを表現するため、印字部シャッタ8の動作を含む記載は省略している。
【0017】
図3及び図4は、本発明を採用した場合の印字部シャッタ機構を含んだ通帳プリンタの印字部を簡易化して示したものである。図中の4は印字ヘッドで、8は印字部シャッタ、11は本発明の特徴とする印字部シャッタロック機構である。図3中の印字部シャッタ8は電磁ソレノイド9への通電により、図中矢印aの方向に回転し、搬送路を開放する。ここで、この印字部シャッタの開閉時に印字ヘッドは駆動の妨げとならないように印字部シャッタ閉鎖時も含めて、印字ヘッドホームポジションで待機する必要がある。この時、印字部シャッタロック機構11は印字ヘッド4によりスプリング等の弱い収縮力が印字ヘッド4方向にかかった状態で矢印bの方向に移動した状態で保持されている。
【0018】
図4中の印字部シャッタ8は電磁ソレノイド9への通電により搬送路を開放した状態である。更に図4は印字の為、印字ヘッドがホームポジションから脱出し、スプリングにより弱い収縮力がかかっていた印字部シャッタロック機構11が矢印cの方向へ移動している状態である。この状態は印字部シャッタロック機構11が印字部シャッタ8を固定可能な状態で、通電状態であった電磁ソレノイド9を通電遮断しても印字部シャッタ8はスプリング等による強い収縮力でも閉鎖方向に駆動しないような構造となっているため、印字ヘッド4の印字動作の妨げにならない。そしてこの印字動作は通帳の印字範囲eの領域内で移動しており、印字部シャッタロック機構11の駆動に影響しない位置となっている。
【0019】
図5は、本発明により印字部シャッタ閉鎖状態から媒体へ印字を行うまでの簡単な印字部シャッタ開放用シーケンスを示したフローチャートである。前提条件として通帳が印字位置に搬送されている状態とし、印字を行う直前とする。まず、電磁ソレノイド9への通電にて印字部シャッタ8が開放状態となる(S101)。次に、印字の為キャリッジモータ10を駆動し、印字ヘッド4を矢印d方向に移動させる(S102)と、この動作でスプリング等の弱い収縮力にて印字部シャッタロック機構11が矢印cの方向に移動する。そして、印字ヘッド4がホームポジション領域fから脱出するまで監視(S103)し、脱出完了すると印字部シャッタロック機構により印字部シャッタが固定された状態となる。その後、電磁ソレノイドの通電を遮断(S104)し、印字部シャッタロック機構による印字部シャッタの固定を確定させる。
【0020】
以上の動作でわかるように、印字部シャッタ8の開放は印字直前の印字ヘッド4が印字ヘッドホームポジション領域eから脱出までで行える簡単な制御方式となっている。
【0021】
図6及び図7は、本発明を採用した場合の印字部シャッタ機構を含んだ通帳プリンタの印字部を簡易化して示し、印字部シャッタ8を閉鎖する動作を示したものである。図6は印字ヘッド4が印字中で印字範囲領域eにあり、印字部シャッタ8が開放状態で、印字部シャッタロック機構11により固定された状態である。印字が終了して印字部シャッタ8を閉鎖するには、印字ヘッド4が印字領域eから抜ける前に、電磁ソレノイド9の通電により印字部シャッタ8を開放した状態とし、印字部シャッタロック機構11による印字部シャッタ8の開放でない状態にする。そして印字ヘッド4をキャリッジモータ10の駆動によりホームポジションに移動させる際、印字ヘッド4がホームポジション領域fを移動することで、印字部シャッタロック機構を矢印g方向に移動する。
【0022】
図7は印字ヘッド4がホームポジションに入り、印字部シャッタロック機構が印字部シャッタ8の閉鎖に影響しない位置まで来ている状態を示している。この状態で電磁ソレノイド9を通電遮断状態にするとスプリング等の強い収縮力により印字部シャッタ8は矢印iの方向に回転し、搬送路開放部を閉鎖し、通帳は搬送路内の搬送が可能となる。
【0023】
図8は、本発明により印字状態から印字を終了し印字部シャッタを閉鎖して通帳搬送可能な状態にするまでの簡単な印字部シャッタ閉鎖用シーケンスを示したフローチャートである。前提条件として通帳への印字が最終状態で、次処理の通帳搬送を行う直前とする。
【0024】
通帳への印字が終了(S201)すると、電磁ソレノイド9を通電状態として(S202)、キャリッジモータ10により印字ヘッド4をホームポジション方向に移動させる。印字ヘッド4がホームポジション突入すると(S203)、印字部シャッタロック機構11が印字部シャッタ8に影響を与えない位置となったら、電磁ソレノイド9の通電を遮断し(S204)、スプリング等の収縮力にて印字部シャッタ8を閉鎖状態にすると、印字部シャッタ8のメカ的な駆動時間経過後、搬送路は通帳搬送可能な状態となる。
【0025】
以上説明したように、本実施形態によれば、搬送中を含めた通常時に印字部シャッタを閉鎖状態とすることが可能となり、たとえば通帳の頁替え実施後にイメージリーダによるバーコード読取など、通帳等の媒体を搬送する制御について印字部シャッタの制御が不要となることで、簡素化することが出来、処理時間についても印字部シャッタを開閉する際の動作完了までの待ち時間が不要となり、大幅に改善することか出来る。
【0026】
なお、本発明は金融機関で使用される通帳プリンタに限定されるものではなく、同様の機構を有する各種プリンタ装置に対しても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態に係る通帳プリンタの概略断面図である
【図2】印字部の詳細を示す図である
【図3】印字部シャッタの開放前状態を示す図である
【図4】印字部シャッタの開放完了状態を示す図である
【図5】印字部シャッタの開放動作を示すフローチャートである
【図6】印字部シャッタの閉鎖前状態を示す図である
【図7】印字部シャッタの閉鎖完了状態を示す図である
【図8】印字部シャッタを閉鎖動作を示すフローチャートである
【符号の説明】
【0028】
1:挿入口
2:磁気ヘッド
3:イメージリーダ
4:印字ヘッド
5:頁替え機構
6:搬送モータ
7:通帳プリンタ
8:印字部シャッタ
9:電磁ソレノイド
10:キャリッジモータ
11:印字部シャッタロック機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を所定の位置に搬送する通帳搬送路と、
媒体の搬送方向と垂直方向に移動しながら媒体に印字を行う印字ヘッドを備えた印字部と、
開閉動作によって前記印字部の通帳搬送路側の一部もしくは全面を覆う印字部シャッタと、
からなる通帳プリンタであって、
前記印字部シャッタは通電することによって前記印字部を前記通帳搬送路側に露出させるよう開動作し、通電遮断することによって前記印字部を覆うよう閉動作し、
前記印字ヘッドには、印字動作中に前記印字部シャッタの開状態を保持するロック機構部を有することを特徴とする通帳プリンタ。
【請求項2】
請求項1に記載の通帳プリンタであって、
印字中は前記印字部シャッタへ通電遮断する制御部を有することを特徴とする通帳プリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−144672(P2007−144672A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−339611(P2005−339611)
【出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】