説明

プリンタ装置

【課題】表面コーティング剤を転写後の紙の表面光沢度を安定させることができるプリンタ装置を実現する。
【解決手段】色剤層3A,3B,3Cを紙4に転写後、センサ1により紙4の表面光沢度を測定する。この測定された表面光沢度は、制御手段に送られる。制御手段は、センサ1により送られてきた表面光沢度に基づいて、サーマルヘッド2の印加する印加電圧を制御する。その後、印加電圧を制御されたサーマルヘッド2は、表面コーティング剤層3Dを紙4に転写する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、インクシートの色剤層及び表面コーティング剤層をサーマルヘッドにより紙に転写するプリンタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタル時代の波に拍車がかかり様々な分野で高画質化に対する要求が高まり、プリンタ装置に於いても、更なる高画質化を実現する為に研究が行われ、その過程で着目されたのが光沢度である。
【0003】
従来のプリンタ装置は、紙に表面コーティング剤を転写する時、予めプリンタ装置に設定された一定の電圧(すなわち一定の濃度)でしか転写を行うことができなかった。
【0004】
そのため、紙に転写する際の周囲の環境、サーマルヘッドの温度、表面コーティング剤層の状態及び紙の表面の状態等により転写濃度がばらついてしまい、その結果、光沢度が安定しない等の問題があった。
【0005】
この改善策として、プリンタ内部の温度を制御している(例えば、特許文献1参照。)ものがある。
【0006】
【特許文献1】特開2004−142357号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1の技術によっても、上述した表面コーティング剤層の転写濃度ばらつき要因を十分に抑制することは困難であり、常に満足できる表面光沢度を得ることは難しい。
【0008】
本発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、その目的は、プリンタ装置の転写に於いて、表面コーティング剤層を転写後の紙の表面光沢度を安定させることができるプリンタ装置を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の主題に係るプリンタ装置は、インクシートの色剤層及び表面コーティング剤層を熱によって紙に転写するサーマルヘッドと、前記サーマルヘッドにより前記色剤層を転写後の前記紙の表面光沢度を測定する測定手段と、前記測定手段により測定された前記表面光沢度に基づいて、前記表面コーティング剤層の転写時に前記サーマルヘッドに印加する印加電圧を制御する制御手段とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明の主題によれば、色剤層転写後の紙について測定手段により測定された表面光沢度に基づいて、サーマルヘッドに印加する印加電圧を制御手段により制御するので、表面コーティング剤層の転写後の紙の表面光沢度を安定させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(実施の形態1)
図1は本実施の形態に係るインクシート3の構成を示す詳細図であり、図2は本実施の形態に係るプリンタ装置の構成を示す概略図である。以下、各図面に於いて、同一符号は、同一又は相当の構成要素を示すものとする。
【0012】
先ず、本実施の形態に係るインクシート3について記載する。図1に示す様に、インクシート3は、色剤層3A,3B,3C、表面コーティング剤層3Dの順に繰返し層設されている。但し、層設が繰返される前には空欄部3Eがあり、空欄部3Eには先頭位置の認識をする識別マーク3F、或いは残量プリント可能枚数を検出できる表示等が施されている。尚、色剤層3Aは(イエロー:Y)であり、色剤層3Bは(マゼンタ:M)であり、色剤層3Cは(シアン:C)であり、表面コーティング剤層3Dは(オーバーコート:OP)である。
【0013】
インクシート3は、色剤層3A,3B,3C、表面コーティング剤層3Dの順に搬送方向aに送り出される。
【0014】
次に、本実施の形態に係るプリンタ装置の構成について記載する。図2に於いて、この発明によるプリンタ装置は、通電することで発熱し、インクシート3の色剤層3A,3B,3C及び表面コーティング剤層3Dを紙4に転写するサーマルヘッド2、モータ(図示せず)により駆動され、ギア列及びタイミングベルト等(図示せず)を介して紙4を搬送するグリップローラー6及びサーマルヘッド2に紙4とインクシート3を圧着するプラテンローラ5を備えている。
【0015】
より詳しくは、本発明のプリンタ装置は、サーマルヘッド2と、このサーマルヘッド2に対向して配設されるプラテンローラ5を備えている。そして、サーマルヘッド2とプラテンローラ5の間には搬送路R1があり、この搬送路R1上を紙4が搬送される。サーマルヘッド2は、表面に微小抵抗体を配し、この微小抵抗体に通電することにより発熱させ、インクシート3に配された色剤層3A,3B,3C及び表面コーティング剤層3Dを紙4に転写する。プラテンローラ5は、サーマルヘッド2との間で、インクシート3と紙4を圧着させるものであって、サーマルヘッド2が、付勢手段(図示せず)により、一定のヘッド圧でプラテンローラ5に押圧付勢されている。
【0016】
又、対向する2つの円柱状のグリップローラー6が、搬送路R1上の紙4を挟み込むように配設されており、紙4が+X方向或いは−X方向に搬送される。
【0017】
又、グリップローラー6から見て、サーマルヘッド2側とは反対側の搬送路R1の上方にセンサ1が配設されている。測定手段であるセンサ1は、インクシート3の色剤層3A,3B,3Cを転写後の紙4の表面光沢度を測定する。
【0018】
又、インクシート3の色剤層3A,3B,3C及び表面コーティング剤層3Dを転写後の紙4は、排出口(図示せず)より排出される。
【0019】
次に、動作について記載する。サーマルヘッド2は、表面に微小抵抗体を配し、この微小抵抗体は通電することにより発熱され、この熱によってインクシート3の色剤層3A,3B,3Cを順次、紙4に転写する。
【0020】
先ず、インクシート3の識別マーク3Fにより色剤層3Aの頭出し位置が決まった後に、サーマルヘッド2とプラテンローラ5の間に特定の圧力をかけて、モータによりインクシート3及び紙4を一方向に駆動させ、色剤層3Aを紙4に転写する。そして、色剤層3Aの転写した後、サーマルヘッド2とプラテンローラ5の間の圧力を解除し、紙4をプリント開始位置まで戻す。
【0021】
次に、サーマルヘッド2とプラテンローラ5の間に圧力をかけて、モータによりインクシート3及び紙4を一方向に駆動させ、色剤層3Bを紙4に転写する。そして、色剤層3Bの転写した後、サーマルヘッド2とプラテンローラ5の間の圧力を解除し、紙4をプリント開始位置まで戻す。
【0022】
更に、サーマルヘッド2とプラテンローラ5の間に圧力をかけて、モータによりインクシート3及び紙4を一方向に駆動させ、色剤層3Cを紙4に転写する。そして、色剤層3Cの転写した後、サーマルヘッド2とプラテンローラ5の間の圧力を解除し、紙4をプリント開始位置まで戻す。
【0023】
ここで、色剤層3A,3B,3Cの全てが転写された後に、センサ1は、紙4の表面光沢度を測定する。先ず、センサ1は、センサ1の発光部より紙4に光を照射し、この紙4の表面で反射された光を受光部で受光し、紙4の表面光沢度を測定する。そして、センサ1は、測定した表面光沢度を制御手段(図示せず)に出力する。制御手段は、センサ1から入力された表面光沢度に基づいて、サーマルヘッド2に印加する印加電圧を制御する。
【0024】
そして、印加電圧を制御されたサーマルヘッド2により表面コーティング剤層3Dを紙4に転写する。すなわち、サーマルヘッド2及びプラテンローラ5の間に圧力をかけて、モータによりインクシート3及び紙4を一方向に駆動し、表面コーティング剤層3Dは色剤層3A,3B,3Cが転写された紙4の上に転写される。そして、この色剤層3A,3B,3C及び表面コーティング剤層3Dが転写された紙4は、グリップローラー6により排出口に搬送される。
【0025】
次に、その効果について記載する。上述した様に、制御手段は、センサ1により測定した表面光沢度に基づいて、サーマルヘッド2の印加する印加電圧を制御し、表面コーティング剤層3Dの転写を行わせる。そのため、紙4に転写する際の周囲の環境、サーマルヘッド2の温度、表面コーティング剤層3Dの状態及び紙4の表面の状態等にかかわらず、最適な転写を行うことができる。これにより転写後の紙4の表面を保護するのと同時に紙4の表面光沢度を高め、見栄えの良いカラー画像が得られる。
【0026】
この様に、本発明のプリンタ装置で紙4に転写された画像は、環境にかかわらず紙4の表面光沢度が安定し、見栄えが良くなる。又、表面コーティング剤層3Dが最適に転写されるため、紙4表面の保護能力の向上が見込まれ、更に色あせ等の画質に関する経年劣化を防止する効果もある。ゆえに、経年劣化を防止するから紙4の耐久性が向上する。
【0027】
(実施の形態2)
本実施の形態に係るプリンタ装置は、実施の形態1と比較すると制御手段に於いて、テーブルを用いる点が異なり、その他の点は同一である。
【0028】
テーブルは、表面光沢度と印加電圧の関係を規定したものである。例えば、測定された表面光沢度がL1の時には、印加電圧はV1であり、測定された表面光沢度がL2の時には、印加電圧はV2であり、測定された表面光沢度がL3の時には、印加電圧はV3であるという様に規定されている。
【0029】
色剤層3A,3B,3Cの各々が紙4に転写された後に、センサ1は、紙4の表面光沢度を測定し、その測定された表面光沢度が制御手段に出力される。そして、制御手段は、センサ1により入力された表面光沢度からテーブルに基づいて、サーマルヘッド2に印加する印加電圧を制御する。
【0030】
この様に、テーブルを用いることによって、表面光沢度から印加電圧を簡単に決めることができる。又、実験により様々な条件下での最適印加電圧を得る作業を繰り返して得たテーブルを用いることによって、サーマルヘッド2へのより精密な印加電圧の制御を行うことができる。これにより、サーマルヘッド2は、測定された紙4の表面光沢度に応じた温度に制御されるため、表面コーティング剤層3Dをもっとも最適な状態で転写することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態に係るインクシートの構成を示す詳細図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るプリンタ装置の構成を示す概略図である。
【符号の説明】
【0032】
1 センサ、2 サーマルヘッド、3 インクシート、3A,3B,3C 色剤、3D 表面コーティング剤、4 紙。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクシートの色剤層及び表面コーティング剤層を熱によって紙に転写するサーマルヘッドと、
前記サーマルヘッドにより前記色剤層を転写後の前記紙の表面光沢度を測定する測定手段と、
前記測定手段により測定された前記表面光沢度に基づいて、前記表面コーティング剤層の転写時に前記サーマルヘッドに印加する印加電圧を制御する制御手段とを備える、
プリンタ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプリンタ装置であって、
前記表面光沢度と前記印加電圧との関係を規定するテーブルをさらに備え、
前記制御手段は、前記テーブルに基づいて、前記印加電圧を制御することを特徴とする、
プリンタ装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のプリンタ装置であって、
前記測定手段は、
前記紙に光を照射する発光部と、前記光が前記紙の表面で反射された反射光を受光する受光部とを有するセンサを備える、
プリンタ装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−220541(P2009−220541A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−70654(P2008−70654)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】