説明

プリンタ

【課題】 記録媒体に接触させながら記録ユニットもしくはプラテンをその圧接方向もしくは離間方向に移動させる際に、記録媒体に対する搬送ユニットのスリップを防止することにより、カラー画像の印画品質を向上させるプリンタの提供。
【解決手段】 記録媒体5を所定の搬送方向FDへ搬送する搬送ユニット4と、記録ユニット2とプラテン3とを圧接もしくは離間させる方向へプラテン3を移動させるための制御、および搬送ユニット4による記録媒体5の搬送速度の制御を行なう制御部が、記録媒体5にプラテン3を接触させながらその圧接方向に移動させる所定の時間内に、当該記録ユニット2に対して最も近接した下流側の搬送ユニット4の搬送速度を所定の値まで低下させる制御を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタに係り、その記録媒体の搬送方向に沿って複数の記録ユニットを有するタンデム式プリンタに好適に用いられるプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、記録用紙や普通紙などの記録媒体に品質の良いカラー画像を高速記録するために、その記録媒体の搬送方向に沿って、複数の記録ユニットおよび搬送ユニットを有するタンデム式プリンタ(以下、単に「プリンタ」という。)が用いられている。
【0003】
この従来のプリンタ101は、一例として、図6に示すように、インクを熱転写する記録ユニット102と、記録ユニット102に記録媒体105を圧接するプラテン103と、記録媒体105を搬送する搬送ユニット104と、各部材を制御する制御部(図示せず)とを記録媒体5の搬送方向FDに複数組備えている。
【0004】
記録ユニット102は、インクリボン102bに固着しているインクを熱転写するためのサーマルヘッド102aを有している。また、この記録ユニット102は、インクが熱転写される記録媒体105の搬送方向FD(図6においては左側から右側へ向かって搬送される方向)に沿って4個配列されている。なお、図6においては、これら4個の記録ユニット102は、搬送方向FDの上流側(図6においては左側)から順に、第1記録ユニット102A、第2記録ユニット102B、第3記録ユニット102C、第4記録ユニット102Dと名付けられており、それら各記録ユニット102A、102B、102C、102Dが、イエロー、マゼンダ、シアン、ブラックのインクのいずれか一色が固着されたインクリボン102bを、他の記録ユニットのインク色と重複しないように有している。
【0005】
プラテン103は、搬送方向FDに対して回動自在となるようにローラ状に形成されている。また、このプラテン103は、記録媒体105を介在させながら、前述した4個の記録ユニット102の各サーマルヘッド102Aa、102Ba、102Ca、102Daと対向する位置に、個別に配設されている。なお、図6においては、これら4個のプラテン103は、搬送方向FDの上流側から順に、第1プラテン103A、第2プラテン103B、第3プラテン103C、第4プラテン103Dと名付けられている。
【0006】
搬送ユニット104は、搬送用モータと連動して搬送方向FDに回動する搬送ローラ104a、および搬送ローラ104aの圧胴になる回動自在の圧接ローラ104bを有している。また、この搬送ユニット104は、所定の搬送方向FDに基づいて、各記録ユニット102A、102B、102C、102Dの下流側に個別に配設されている。なお、図6においては、これら4個の搬送ユニット104は、搬送方向FDの上流側から順に、第1搬送ユニット104A、第2搬送ユニット104B、第3搬送ユニット104C、第4搬送ユニット104Dと名付けられている。
【0007】
制御部(図示せず)は、プリンタ101の各部材に対して所定の制御を行えるように、前述した各部材と連結して形成されている。この制御部が行なう所定の制御としては、例えば、記録ユニット102とプラテン103とを圧接もしくは離間させる方向へ記録ユニット102もしくはプラテン103を移動させるための制御や、搬送ユニット104による記録媒体の搬送速度の制御などがある。なお、この従来のプリンタにおいては、記録ユニット102を固定し、プラテン103を可動させることによって、プラテン103を記録ユニット102へ圧接もしくは離間させている。
【0008】
前述した各部材を備えていることにより、この従来のプリンタ101は、搬送方向FDに搬送される記録媒体105に、イエロー、マゼンダ、シアンおよびブラックのインクを、高速熱転写することが可能となっている。具体的には、搬送方向FDの上流側から供給された記録媒体105は、各搬送ユニット104によって、所定の搬送方向FDの下流側に所定の搬送量だけ搬送される。また、記録ユニット102とプラテン103とを圧接させる方向(以下、「圧接方向」という。)に移動させることによって、搬送されたこの記録媒体105が各記録ユニット102のサーマルヘッド102aおよびインクリボン102bに圧接させられるとともに、そのサーマルヘッド102aによって、インクリボン102bのインクが記録媒体105に熱転写される。そして、前述した熱転写が、記録媒体105の搬送方向FDを変化させずに、各インクごとに搬送方向FDに沿って行なわれているため、記録媒体105にカラー画像を高速記録することが可能となっている。さらに、この従来のプリンタ101は熱転写方式による記録を行なうため、印画品質を高くすることが可能となっている。
【0009】
ここで、前述したプラテン103が圧接方向に移動することによって、記録媒体105がその圧接方向に引っ張られてしまうと、搬送ユニット104の搬送ローラ104aがその記録媒体105を搬送しきれずにスリップを起こし、記録媒体105を所定の搬送量だけ搬送することができなくなってしまう。すると、記録ユニット102は、記録媒体105の所定の位置に、インクリボン102bのインクを熱転写することができないため、記録されたカラー画像に色ずれが生じてしまう。よって、この従来のプリンタは、前述した色ずれを防止するため、図6に示すように、各記録ユニットに対して最も近接した上流側もしくは下流側の搬送ユニット104(例えば、第2記録ユニット102Bにおいては、最も近接した上流側の搬送ユニットは、第1搬送ユニット104Aであり、最も近接した下流側の搬送ユニットは、第2搬送ユニット104Bである。)の搬送速度を制御することにより、各記録ユニットに対して最も近接した当該上流側および下流側の搬送ユニット104の間に、予め、記録媒体105のたわみを形成していた(特許文献1を参照)。
【0010】
【特許文献1】特開平9−156142号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来のプリンタ101は、普通紙よりも厚手に形成された光沢紙やはがきなどの記録媒体(以下、「厚手の記録媒体」という。)105に所定のたわみ量を形成させることが困難であるため、前述したカラー画像の色ずれを防止することができないという問題があった。前述した問題は、光沢紙やはがきなどの厚手の記録媒体105の厚さが一般的な普通紙の厚さと比較して約2倍程度ほど厚く形成されていることから、その厚手の記録媒体105の伸張方向に対して、普通紙などの一般的な厚さの記録媒体よりも大きな力が生じてしまうことに起因している。
【0012】
記録媒体105の伸張方向に生じる力は、その記録媒体105をたわませるために必要な応力に比例している。記録媒体105をたわませるために必要な応力は、たわませる記録媒体105の断面形状が長方形であることから、記録媒体105の長方形断面に生じる応力と断面二次モーメントの関係により、記録媒体105の幅方向の長さに比例し、記録媒体105の厚さの3乗に比例する。たとえば、厚手の記録媒体105の幅方向の長さを変更せずに、その厚さを普通紙の2倍の厚さにすると、その厚手の記録媒体105をたわませるために必要な応力は8倍に増加する。そのため、各記録ユニット102に対して最も近接した上流側もしくは下流側の搬送ユニット104の搬送速度の制御のみによって厚手の記録媒体105をたわませようとすると、普通紙などの一般的な厚さの記録媒体をたまわせるよりも大きな力が搬送ユニット104の搬送ローラ104aに生じ、搬送ユニット104の搬送ローラ104aがスリップを起こすため、光沢紙やはがきなどの厚手の記録媒体105に所定のたわみ量を形成させることが困難であった。
【0013】
そのため、厚手の記録媒体105にカラー画像を記録する場合、従来のプリンタは、図7(a)、(b)、(c)に示すように、記録媒体105に接触させながらプラテン103をその圧接方向に移動させることによって、記録媒体105をその圧接方向に持ち上げるようにして引っ張り、強制的に記録媒体105にたわみを形成させていた。すると、すべてのプラテン103A、103B、103C、103Dがすべてのサーマルヘッド102Aa、102Ba、102Ca、102Daに圧接して記録媒体105を狭持するまでの間、各プラテン103の圧接方向への移動に伴って各搬送ユニット104の搬送ローラ104aに各プラテン103に向かう力F1が生じることとなる。その各プラテン103方向へ働く力F1が搬送ローラ104aに生じる摩擦力f1よりも大きな値となると、搬送ユニット104の搬送ローラ104aがスリップを起こすため、厚手の記録媒体105を所定の搬送量だけ搬送することが困難であった。これにより、すべてのプラテン103A、103B、103C、103Dをすべてのサーマルヘッド102Aa、102Ba、102Ca、102Daに圧接させるまでの間、各記録ユニット102は厚手の記録媒体105に各インクを熱転写することができず、厚手の記録媒体105に色ずれが生じるおそれのある搬送量(第1搬送ユニット104Aから第4搬送ユニット104Dまでの記録媒体105の搬送量)だけ多く余計に搬送し、記録媒体105に必要のない余白を形成する必要が生じていた。
【0014】
また、すべてのプラテン103A、103B、103C、103Dをすべてのサーマルヘッド102Aa、102Ba、102Ca、102Daに圧接させたとしても、図8(a)、(b)、(c)に示すように、プラテン103を記録ユニット102から離間させる方向(以下、「離間方向」という。)に移動させることによって、厚手の記録媒体105がそのたわみを解消して伸びようとする方向(以下、「記録媒体の伸張方向」という。)へ働く力F2が生じることとなる。記録媒体の伸張方向へ働く力F2が搬送ローラ104aに生じる摩擦力f2よりも大きな値となると、搬送ユニット104の搬送ローラ104aがスリップを起こすため、前述のプラテン103を圧接方向へ移動させた場合と同様、厚手の記録媒体105を所定の搬送量だけ搬送することが困難であった。これにより、プラテン103を離間方向へ移動させた場合も、前述のプラテン103を圧接方向へ移動させた場合と同様、記録媒体105に必要のない余白を形成する必要が生じていた。
【0015】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、記録媒体に接触させながら記録ユニットもしくはプラテンをその圧接方向もしくは離間方向に移動させる際において、記録媒体に対する搬送ユニットのスリップを防止することができ、カラー画像などの印画品質を向上させることができるプリンタを提供することを本発明の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前述した目的を達成するため、本発明のプリンタは、サーマルヘッドを有しているとともに、インクが熱転写される記録媒体の搬送方向に沿って複数個配列されている記録ユニットと、記録媒体を介在させながらサーマルヘッドと対向する位置に個別に配設されており、インクの熱転写時において記録媒体をサーマルヘッドに圧接させるためのプラテンと、記録媒体の搬送方向に基づいて各記録ユニットの下流側に個別に配設されており、記録媒体を所定の搬送方向へ搬送する搬送ユニットと、記録ユニットとプラテンとを圧接もしくは離間させる方向へ記録ユニットもしくはプラテンを移動させるための制御、および搬送ユニットによる記録媒体の搬送速度の制御を行なう制御部とを備えている
そして、本発明の第1の態様のプリンタは、制御部が、記録媒体に接触させながら記録ユニットもしくはプラテンを圧接方向に移動させる所定の時間内に、当該記録ユニットに対して最も近接した下流側の搬送ユニットの搬送速度を所定の値まで低下させる制御を行なうように形成されていることを特徴としている。
【0017】
本発明の第2の態様は、第1の態様のプリンタにおいて、制御部が、記録ユニットもしくはプラテンを記録媒体に接触させながら離間方向に移動させる所定の時間内に、当該記録ユニットに対して最も近接した上流側の搬送ユニットの搬送速度を所定の値まで低下させる制御を行なうように形成されていることを特徴としている。
【0018】
本発明の第3の態様は、第1または第2の態様のプリンタにおいて、制御部が、下流側の搬送ユニットに対する上流側の搬送ユニットの相対速度が、記録ユニットもしくはプラテンを記録媒体に接触させながら圧接方向もしくはその離間方向に移動させる際の単位時間当たりに変化する、当該上流側の搬送ユニットから下流側の搬送ユニットまでの記録媒体の経路長の変化量と、同程度になるように、上流側もしくは下流側の搬送ユニットの搬送速度を制御するように形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明の第1の態様のプリンタによって、記録ユニットもしくはプラテンの圧接方向の移動にあわせて、当該記録ユニットに近接する当該上流側の搬送ユニットから下流側の搬送ユニットまでの記録媒体の経路長を長くすることが可能となる。そのため、本発明の第1の態様のプリンタは、記録媒体を引っ張りながら記録ユニットもしくはプラテンをその圧接方向に移動させても、記録ユニットに近接する上流側および下流側の搬送ユニットがスリップすることなく記録媒体を所定の搬送量だけ搬送できるという効果を奏する。
【0020】
本発明の第2の態様のプリンタによって、記録ユニットもしくはプラテンの離間方向の移動にあわせて、当該記録ユニットに近接する当該上流側の搬送ユニットから下流側の搬送ユニットまでの記録媒体の経路長を短くすることが可能となる。そのため、本発明の第2の態様のプリンタは、記録ユニットもしくはプラテンをその離間方向に移動させても、記録ユニットに近接する上流側および下流側の搬送ユニットがスリップすることなく記録媒体を所定の搬送量だけ搬送できるという効果を奏する。
【0021】
本発明の第3の態様のプリンタによって、記録ユニットもしくはプラテンが圧接方向もしくは離間方向に移動する際、搬送ユニットに生じる記録媒体の引張方向もしくは伸張方向の力を一定の値にすることが可能となるとともに、その記録媒体の引張方向もしくは伸張方向の力を記録媒体に対して生じる搬送ユニットの最大摩擦力よりも小さくすることが可能となる。そのため、本発明の第3の態様のプリンタは、記録ユニットもしくはプラテンをその圧接方向もしくは離間方向に移動させても、記録ユニットに近接する上流側および下流側の搬送ユニットがスリップすることなく記録媒体を所定の搬送量だけ搬送できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図1から図3を用いて、本発明のプリンタの実施形態を説明する。ここで、図1は本実施形態のプリンタ内部に備わる記録ユニット、プラテンおよび搬送ユニットに係る部分をその側方から示したものである。図2(a)、(b)、(c)は、本実施形態のプリンタにおけるプラテンの圧接方向への移動を時系列的に示したものである。図3(a)、(b)、(c)は、本実施形態のプリンタにおける記録ユニットの離間方向への移動を時系列的に示したものである。また、図4(a)、(b)、(c)は、本実施形態のプリンタにおけるプラテンの圧接方向への移動を時系列的に示したものである。そして、図5(a)、(b)、(c)は、本実施形態のプリンタにおける記録ユニットの離間方向への移動を時系列的に示したものである。
【0023】
なお、本実施形態のプリンタは、普通紙などの一般的な厚さの記録媒体に対してもその効果を発揮しうるが、光沢紙やはがきなどの厚手の記録媒体に対して最も大きな効果を発揮するものであるため、以下の説明においては、厚手の記録媒体に限って説明する。
【0024】
本実施形態のプリンタ1は、図1に示すように、インクを熱転写する記録ユニット2と、記録ユニット2に記録媒体5を圧接するプラテン3と、記録媒体5を搬送する搬送ユニット4と、各部材を制御する制御部(図示せず)とを備えている。
【0025】
記録ユニット2は、インクリボン2bに固着しているインクを熱転写するためのサーマルヘッド2aを有している。また、この記録ユニット2は、インクが熱転写される記録媒体5の搬送方向FDに沿って4個配列されている。なお、本実施形態のプリンタ1においては、これら4個の記録ユニット2は、搬送方向FDの上流側(図1においては左側)から順に、第1記録ユニット2A、第2記録ユニット2B、第3記録ユニット2C、第4記録ユニット2Dと名付けられており、それら各記録ユニット2A、2B、2C、2Dが、イエロー、マゼンダ、シアン、ブラックのインクのいずれか一色が固着されたインクリボン2bを、他の記録ユニットのインク色と重複しないように有している。
【0026】
プラテン3は、搬送方向FDに対して回動自在となるようにローラ状に形成されている。また、このプラテン3は、記録媒体5を介在させながら、前述した4個の記録ユニット2の各サーマルヘッド2Aa、2Ba、2Ca、2Daと対向する位置に、個別に配設されている。なお、本実施形態のプリンタ1においては、これら4個のプラテン3は、搬送方向FDの上流側から順に、第1プラテン3A、第2プラテン3B、第3プラテン3C、第4プラテン3Dと名付けられている。また、本実施形態のプリンタ1は、記録ユニット2を固定し、プラテン3を可動させることによって、プラテン3を記録ユニット2へ圧接もしくは離間させることが可能となるように形成されている。
【0027】
搬送ユニット4は、搬送用モータと連動して搬送方向FDに回動する搬送ローラ4a、および搬送ローラ4aの圧胴になる回動自在の圧接ローラ4bを有している。また、この搬送ユニット4は、所定の搬送方向FDに基づいて、各記録ユニット2A、2B、2C、2Dの下流側に個別に配設されている。なお、本実施形態のプリンタ1においては、これら4個の搬送ユニット4は、搬送方向FDの上流側から順に、第1搬送ユニット4A、第2搬送ユニット4B、第3搬送ユニット4C、第4搬送ユニット4Dと名付けられている。
【0028】
制御部(図示せず)は、本実施形態のプリンタ1の各部材に対して所定の制御を行えるように、前述した各部材と連結して形成されている。この制御部が行なう所定の制御としては、例えば、記録ユニット2とプラテン3とを圧接もしくは離間させる方向へプラテン3を移動させる制御や、搬送ユニット4による記録媒体5の搬送速度の制御などが挙げられる。特に、この制御部は、単位時間当たりのプラテン3の移動量に連動して搬送ユニット4の搬送速度を変化させる制御を行なうように形成されている。
【0029】
次に、図2および図3を用いて、本実施形態のプリンタの作用を説明する。
【0030】
本実施形態のプリンタ1は、搬送方向FDに搬送される記録媒体5に、イエロー、マゼンダ、シアンおよびブラックのインクを、高速熱転写することが可能となっている。具体的には、搬送方向FDの上流側から供給された記録媒体5は、各搬送ユニット4によって、所定の搬送方向FDに所定の搬送量だけ搬送される。また、プラテン3を圧接方向に移動させることによって、搬送される記録媒体5が各記録ユニット2のサーマルヘッド2aおよびインクリボン2bに圧接させられるとともに、そのサーマルヘッド2aによって、インクリボン2bのインクが記録媒体5に熱転写される。そして、前述した熱転写が、記録媒体5の搬送方向FDを変化させずに、各インクごとに搬送方向FDに沿って行なわれているため、記録媒体5にカラー画像を高速記録することが可能となっている。さらに、本実施形態のプリンタ1は、熱転写方式による記録を行なうため、印画品質を高くすることが可能となっている。
【0031】
ここで、本実施形態のプリンタ1の制御部は、記録媒体5に接触させながらプラテン3をその圧接方向に移動させる所定の時間内に、当該プラテン3に対向した記録ユニット2に対して最も近接した下流側の搬送ユニット4の搬送速度を所定の値まで低下させる制御を行なうことが可能となっている。
【0032】
たとえば、図2(a)、(b)、(c)に示すように、第2記録ユニット2Bに対向した第2プラテン3Bを記録媒体5と接触させながらその圧接方向に移動させると、第2記録ユニット2Bに最も近接した下流側の搬送ユニット4となる第2搬送ユニット4Bの搬送ローラ4Baの回転速度が遅くなるように制御部が制御することによって、第2搬送ユニット4Bの搬送速度が遅くなる。しかし、第2記録ユニット2Bに最も近接した上流側の搬送ユニット4である第1搬送ユニット4Aの搬送ローラ4Aaの回転速度は変化していないため、第1搬送ユニット4Aの搬送速度は依然として一定のままである。そのため、第1搬送ユニット4Aと第2搬送ユニット4Bとの搬送速度に速度差が生じ、第1搬送ユニット4Aから第2搬送ユニット4Bまでの記録媒体5の経路長が長くなる。
【0033】
そして、第2記録ユニット2Bのサーマルヘッド2Baと第2プラテン3Bとの圧接に必要な所定の時間が経過すると、第2搬送ユニット4Bの搬送速度が増速されて以前の搬送速度に戻り、当該記録媒体5の経路長を一定に保ちながら、記録媒体5が搬送される。
【0034】
つまり、本実施形態のプリンタ1は、第2プラテン3Bの圧接方向の移動にあわせて、第2記録ユニット2Bに対して最も近接する上流側の搬送ユニット4Aから下流側の搬送ユニット4Bまでの記録媒体5の経路長を長くすることが可能となる。それによって、記録媒体5を引っ張りながら第2プラテン3Bを圧接方向に移動させても、搬送方向FDの上下流側の搬送ユニット4A、4Bと第2プラテン3Bとの間の記録媒体5の引張方向に働く力F1が搬送ローラ104Aa、104Baに働く摩擦力f1を超えることがないため、第2記録ユニット2Bに近接する上流側の第1搬送ユニット4Aおよび下流側の第2搬送ユニット4Bがスリップすることなく、記録媒体5を所定の搬送量だけ搬送することができる。
【0035】
また、この制御部は、記録媒体5に接触させながらプラテン3をその離間方向に移動させる所定の時間内に、当該プラテン3に対向する記録ユニット2に対して最も近接した上流側の搬送ユニット4の搬送速度を所定の値まで低下させる制御を行なうことも可能となっている。
【0036】
たとえば、図3(a)、(b)、(c)に示すように、第2記録ユニット2Bに対向した第2プラテン3Bを記録媒体5と接触させながらその離間方向に移動させると、第2記録ユニット2Bに最も近接した上流側の搬送ユニット4となる第1搬送ユニット4Aの搬送ローラ4Aaの回転速度が遅くなるように制御部が制御することによって、第1搬送ユニット4Aの搬送速度が遅くなる。しかし、第2記録ユニット2Bに最も近接した下流側の搬送ユニット4である第2搬送ユニット4Bの搬送ローラ4Baの回転速度は変化していないため、第2搬送ユニット4Bの搬送速度は依然として一定のままである。そのため、第1搬送ユニット4Aと第2搬送ユニット4Bとの搬送速度に速度差が生じ、第1搬送ユニット4Aから第2搬送ユニット4Bまでの記録媒体5の経路長が短くなる。
【0037】
そして、第2記録ユニット2Bのサーマルヘッド2Baと第2プラテン3Bとの圧接に必要な所定の時間が経過すると、第1搬送ユニット4Aの搬送速度が以前の搬送速度に戻り、当該記録媒体5の経路長を一定に保ちながら、記録媒体5が搬送される。
【0038】
つまり、本実施形態のプリンタ1は、第2プラテン3Bの離間方向の移動にあわせて、第2記録ユニット2Bに対して最も近接する上流側の搬送ユニット4Aから下流側の搬送ユニット4Bまでの記録媒体の経路長を短くすることが可能となる。それによって、記録媒体5がたわみを解消しようとする力と釣り合いをとりながら第2プラテン3Bを離間方向に移動させることが可能となる。そして、記録媒体5の伸張方向に働く力F2が搬送ローラ104Aa、104Baに働く摩擦力f2を超えることがないことから、第2記録ユニット2Bに近接する上流側の第1搬送ユニット4Aおよび下流側の第2搬送ユニット4Bがスリップすることなく、記録媒体5を所定の搬送量だけ搬送することができる。
【0039】
さらに、本実施形態のプリンタの制御部は、下流側の搬送ユニットに対する上流側の搬送ユニットの相対速度が、記録媒体に接触させながら記録ユニットもしくはプラテンをその圧接方向もしくはその離間方向に移動させる際の単位時間当たりに変化する当該上流側の搬送ユニットから下流側の搬送ユニットまでの記録媒体の経路長の変化量と同程度になるように、上流側もしくは下流側の搬送ユニットの搬送速度を制御している。
【0040】
例えば、図2や図3に示すように、第2記録ユニット2B、第2プラテン3B、上流側にある第1搬送ユニット4Aおよび下流側にある第2搬送ユニット4Bを想定し、上流側の搬送ユニット4Aの搬送速度をV1、下流側の搬送ユニット4Bの搬送速度をV2とする。また、記録媒体5が第1搬送ユニット4Aから第2搬送ユニット4Bまでの間に搬送される量、すなわち第1搬送ユニット4Aから第2搬送ユニット4Bまでの間の記録媒体5の経路長の初期値をL1とし、第2プラテン3Bの移動によって変化した記録媒体5の経路長をL2とする。そして、第2プラテン3Bが記録媒体5を接触させながら圧接方向もしくは離間方向に移動させるのに必要な時間をTとする。このとき、本実施形態のプリンタの制御部は、(V1−V2)=(L2−L1)/Tとなるように制御を行なう。
【0041】
これによって、本実施形態のプリンタ1は、第2プラテンが圧接方向もしくは離間方向に移動する際、第1搬送ユニット4Aおよび第2搬送ユニット4Bに生じる記録媒体5の引張方向もしくは伸張方向の力F1、F2を一定の値にすることが可能となる。また、第2プラテン3Bが記録媒体5と接触しながら移動することによって、第2プラテン3Bが記録媒体5を支えつつ移動することが可能となるため、その記録媒体5の引張方向もしくは伸張方向の力F1、F2を搬送ユニット4A、4Bに生じる最大摩擦力よりも小さくすることが可能となる。よって、本実施形態のプリンタ1は、第2プラテン3Bをその圧接方向もしくは離間方向に移動させても、第2記録ユニット2Bに近接する第1搬送ユニット4Aおよび第2搬送ユニット4Bがスリップすることなく記録媒体5を所定の搬送量だけ搬送できるという効果を奏する。
【0042】
なお、前述においては、主に第2記録ユニット2B周辺を例にして説明したが、各記録ユニット2に対して上流側および下流側の搬送ユニットが配設されている第3記録ユニット2Cおよび第4記録ユニット2D周辺においても同様の作用となる。また、本実施形態のプリンタ1とは異なるが、第1記録ユニット2Aの上流側に搬送ユニット4を設けることによって、第1記録ユニット2A周辺に対しても同様の作用が得られる。
【0043】
すなわち、本実施形態のプリンタ1によって、プラテン3の圧接もしくは離間に係わらず、記録媒体5を所定の搬送量だけ搬送することが可能となる。そのため、記録媒体5に記録されるカラー画像の色ずれを防止することが可能となり、記録媒体5に記録されるカラー画像の印画品質が向上する効果を奏する。また、搬送ユニット5がスリップしないため、記録媒体5に必要のない余白を形成することも防止することが可能となる。
【0044】
なお、本発明は、前述した実施形態などに限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
【0045】
たとえば、前述した実施形態のプリンタ1においては、プラテン3を記録ユニット2に対して圧接方向もしくは離間方向に移動させることによって、プラテン3に接触させながら記録媒体5を記録ユニット2のサーマルヘッド2aに圧接もしくは離間させたが、他の実施形態のプリンタにおいては、図4および図5に示すように、記録ユニット2をプラテン3に対して圧接方向もしくは離間方向に移動させることによって、記録ユニット2のサーマルヘッド2aおよびその周辺に接触させながらプラテン3に記録媒体5を圧接もしくは離間させてもよい。
【0046】
また、記録ユニット2およびプラテン3のどちらか一方を固定せずに両方を圧接方向もしくは離間方向に相対移動させても、図2から図5に示す場合と同様に、記録ユニット2もしくはプラテン3の相対移動方向に記録媒体5が変形することになるために、記録ユニット2およびプラテン3の両方を移動可能としたプリンタにおいても、前述の各実施形態のプリンタと同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明のプリンタ内部に備わる記録ユニット、プラテンおよび搬送ユニットに係る部分をその側方から示した側面図
【図2】本発明のプリンタにおけるプラテンの圧接方向への移動を(a)、(b)、(c)の順に時系列的に示した概略図
【図3】本発明のプリンタにおけるプラテンの離間方向への移動を(a)、(b)、(c)の順に時系列的に示した概略図
【図4】本発明のプリンタにおける記録ユニットの圧接方向への移動を(a)、(b)、(c)の順に時系列的に示した概略図
【図5】本発明のプリンタにおける記録ユニットの離間方向への移動を(a)、(b)、(c)の順に時系列的に示した概略図
【図6】従来のプリンタ内部に備わる記録ユニット、プラテンおよび搬送ユニットに係る部分をその側方から示した側面図
【図7】従来のプリンタにおけるプラテンの圧接方向への移動を(a)、(b)、(c)の順に時系列的に示した概略図
【図8】従来のプリンタにおけるプラテンの離間方向への移動を(a)、(b)、(c)の順に時系列的に示した概略図
【符号の説明】
【0048】
1 プリンタ
2 記録ユニット
2a サーマルヘッド
2b インクリボン
3 プラテン
4 搬送ユニット
4a 搬送ローラ
4b 搬送用圧接ローラ
5 記録媒体
FD 搬送方向
F1 記録媒体の引張方向に働く力(プラテンの圧接方向に働く力)
F2 記録媒体の伸張方向の力
f1、f2 搬送ユニットに働く摩擦力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーマルヘッドを有しているとともに、前記インクが熱転写される記録媒体の搬送方向に沿って複数個配列されている記録ユニットと、
前記記録媒体を介在させながら前記サーマルヘッドと対向する位置に個別に配設されており、インクの熱転写時において前記記録媒体を前記サーマルヘッドに圧接させるためのプラテンと、
前記記録媒体の搬送方向に基づいて前記各記録ユニットの下流側に個別に配設されており、前記記録媒体を所定の搬送方向へ搬送する搬送ユニットと、
前記記録ユニットと前記プラテンとを圧接もしくは離間させる方向へ前記記録ユニットもしくは前記プラテンを移動させるための制御、および前記搬送ユニットによる前記記録媒体の搬送速度の制御を行なう制御部と
を備えているプリンタであって、
前記制御部は、前記記録ユニットもしくは前記プラテンを前記記録媒体に接触させながら前記圧接方向に移動させる所定の時間内に、当該記録ユニットに対して最も近接した下流側の搬送ユニットの搬送速度を所定の値まで低下させる制御を行なうように形成されている
ことを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
前記制御部は、前記記録ユニットもしくは前記プラテンを前記記録媒体に接触させながら前記離間方向に移動させる所定の時間内に、当該記録ユニットに対して最も近接した上流側の搬送ユニットの搬送速度を所定の値まで低下させる制御を行なうように形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
前記制御部は、前記下流側の搬送ユニットに対する前記上流側の搬送ユニットの相対速度が、前記記録ユニットもしくは前記プラテンを前記記録媒体に接触させながら前記圧接方向もしくはその離間方向に移動させる際の単位時間当たりに変化する当該上流側の搬送ユニットから下流側の搬送ユニットまでの記録媒体の経路長の変化量と、同程度になるように、前記上流側もしくは下流側の搬送ユニットの搬送速度を制御するように形成されている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−289905(P2006−289905A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−117076(P2005−117076)
【出願日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】