説明

プリンタ

【課題】 印刷ずれを簡易に防止することが可能なプリンタを提供する。
【解決手段】 ラベルプリンタ100は、台紙310に仮着されたラベル320を搬送するラベル搬送機構104と、ラベル320に印刷を行うサーマルヘッド110とを有するものであって、変位センサ108が検出するラベル320のエッジ位置に基づいて、ラベル320の搬送方向に対して直交する方向について、基準位置に対する変位量を導出し、この変位量に基づいて、サーマルヘッド110における搬送方向に対して直交する方向の印刷位置を補正する制御を行う制御部102を有し、サーマルヘッド110によりラベル320の適切な位置に印刷が行われるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙を搬送する搬送機構と、その搬送される用紙に印刷を行う印刷機構とを有するプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタは、一般にプラテンローラ等の搬送機構が用紙を搬送し、サーマルヘッド等の印刷機構が搬送されてきた用紙に印刷を行う。このように用紙が搬送される場合、当該用紙における搬送方向に対して直交する方向の位置がずれ、印刷ずれが生じやすい。このため、印刷ずれを防止するための方法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載されるプリンタでは、用紙の蛇行を検出するセンサと、蛇行を補正する駆動部とを備え、センサが用紙の蛇行を検出した場合に、駆動部がその蛇行を補正して用紙の直進性を維持する。このように、用紙の直進性が維持されることによって、当該用紙に印刷される文字等の位置ずれが防止される。
【0004】
また、特許文献2に記載されるプリンタでは、ラベルの領域に対応するイメージ記憶部を有し、当該イメージ記憶部内に印字イメージに対応するフレーム記憶部を設定して、イメージ記憶部内におけるフレーム記憶部の位置をシフトさせることによって印字ずれを修正する。
【特許文献1】特開2003−182896号公報
【特許文献2】特開平4−118260号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に記載のプリンタでは、例えば駆動部の用紙ガイドを移動させ、当該用紙ガイドに当接する用紙の位置を変えること等によって、用紙の蛇行が補正されることになる。しかし、このように用紙に対して物理的な力が加えられる場合、その力に対する用紙の反発力の大きさによっては、蛇行が十分に補正されない場合がある。
【0006】
一方、特許文献2に記載のプリンタでは、用紙位置の補正はない。しかし、プリンタ内のイメージ記憶部は、本来であれば印字イメージを記憶するだけの容量で十分であるが、印字イメージをシフトさせることに対応して、印字イメージの格納領域だけでなくラベルの領域に対応する格納領域を有する必要があり、記憶容量が大きくなって無駄が多く、更には、印字イメージをシフトさせるための構成が複雑である。
【0007】
本発明は、前述したような従来の問題を解決するためになされたもので、印刷ずれを簡易に防止することが可能なプリンタを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るプリンタは、用紙を搬送する搬送機構と、前記用紙に印刷を行う印刷機構とを有するものであって、前記用紙の搬送方向に対して直交する方向について、基準位置に対する変位量を導出する変位量導出手段と、前記変位量導出手段により導出される変位量に基づいて、前記印刷機構における前記搬送方向に対して直交する方向の印刷位置を補正する制御を行う印刷位置補正制御手段とを有し、前記印刷機構により前記用紙の所定位置に印刷が行われるようにする。
【0009】
この構成により、用紙の搬送方向に対して直交する方向についてずれが生じた場合には、印刷機構における搬送方向に対して直交する方向の印刷位置が補正され、用紙の所定位置に印刷が行われるようにする。従って、用紙に対しては何ら位置の補正は行われず、印刷機構における印刷位置が補正されるだけであるため、印刷ずれを簡易に防止することができる。
【0010】
また、本発明に係るプリンタは、前記印刷機構が、前記用紙の搬送方向に対して直交する方向に沿って配列される複数の印刷用素子によって構成され、前記印刷位置補正制御手段が、前記複数の印刷用素子のうち、前記用紙への印刷に使用される印刷用素子を選択する制御を行う。
【0011】
この構成により、印刷機構の機械的な動作を伴うことなく、印刷に使用される印刷用素子の選択によって印刷位置が補正されるため、迅速な印刷を可能にすることができる。
【0012】
また、本発明に係るプリンタは、前記変位量導出手段が、前記用紙の所定単位長における複数の前記変位量の平均を導出する。
【0013】
この構成により、用紙の所定単位、例えば、1枚の用紙としてのラベルや用紙の1ページ分における複数の変位量の平均が導出されるため、用紙の所定単位の全体における基準位置からの変位が求められ、印刷ずれをより適切に防止することができる。
【0014】
また、本発明に係るプリンタは、前記印刷位置補正制御手段が、前記変位量導出手段により導出される変位量を、前記印刷機構における印刷位置の補正量に変換する変換手段を有する。
【0015】
この構成により、印刷位置の補正量を簡易に導出することが可能となる。
【0016】
また、本発明に係るプリンタは、前記変位量導出手段が、前記用紙の端部位置について、基準位置に対する変位量を導出する。
【0017】
また、本発明に係るプリンタは、前記変位量導出手段が、前記用紙に予め印刷されている図形又は文字の位置について、基準位置に対する変位量を導出する。
【0018】
例えば、予め用紙に印刷されている枠内に印刷する必要がある場合には、当該枠の位置の変位量が導出されることによって、適切な印刷位置の補正が可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るプリンタによれば、用紙の搬送方向に対して直交する方向についてずれが生じた場合には、印刷機構における搬送方向に対して直交する方向の印刷位置が補正されて用紙の所定位置に印刷が行われており、用紙に対しては何ら位置の補正は行われず、しかも印刷機構における印刷位置が補正されるだけであるため、印刷ずれを簡易に防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態のラベルプリンタについて、図面を用いて説明する。
【0021】
本発明の実施の形態におけるラベルプリンタのブロック図を図1に示す。図1において、ラベルプリンタ100は、制御部102、ラベル搬送機構(プラテンローラ)104、供給ローラ106、変位センサ108、サーマルヘッド(印刷ヘッド)110、通信インタフェース(I/F)部112及び操作・表示パネル114を有する。このラベルプリンタ100は、ラベル用紙300において帯状の台紙310に仮着されたラベル320の表面(印刷面)に印刷を行う。
【0022】
供給ローラ106の回転軸には、ロール状に巻回されたラベル用紙300が装着される。ラベル搬送機構104は、回転駆動することにより、ラベル用紙300を供給ローラ106から繰り出す。
【0023】
図2は、変位センサ108及びサーマルヘッド110の斜視図である。図2に示すように、変位センサ108及びサーマルヘッド110は、供給ローラ106から繰り出されるラベル用紙300の搬送経路上に配置される。
【0024】
変位センサ108は、ラベル用紙300において台紙310に仮着されたラベル320について、搬送方向に直交する方向の端部(エッジ)の位置を検出する。
【0025】
図3は、変位センサ108の側面図である。図3において、ラベル用紙300は、紙面の垂直方向に搬送される。同図に示すように、変位センサ108は、ラベル用紙300を挟み込むような形状を有し、ラベル用紙300の上方に照射部151が構成され、下方に受光部152が構成される。照射部151は、ラベル用紙300に対して上方からレーザ光を照射する。受光部152は、照射部151から照射され、ラベル320によって遮られることなく通過したレーザ光を受ける。この受光部152におけるレーザ光の受光状態によってラベル320のエッジ位置が検出される。変位センサ108は、このようにして、搬送される1枚のラベル320の搬送方向下流側から上流側にかけて複数のエッジ位置を検出する。なお、検出されるエッジ位置は、ラベル320の搬送方向下流側から上流側に向かって右側及び左側の双方でも良く、いずれか一方でも良い。検出されたエッジ位置は、制御部102へ送られる。
【0026】
なお、台紙310がレーザ光を透過させない材質であって、且つ、搬送方向に直交する方向について、台紙310におけるラベル320の搬送方向に直交する方向の位置が固定され、各ラベル間で当該位置が同一である場合には、変位センサ108は、台紙310のエッジ位置を検出するようにしてもよい。あるいは、図4に示すようにラベル320の印刷面において予め位置が固定されている枠322等の図形や文字が印刷されている場合には、変位センサ108は、これらの図形や文字のエッジ位置を検出するようにしてもよい。
【0027】
制御部102は、ラベルプリンタ100の全体を制御する。具体的には、制御部102には、通信I/F部112を介してパーソナルコンピュータ500から出力される印刷データが入力される。更に、制御部102は、操作・表示パネル114から入力される作業者の印刷指示に対応する信号が入力されると、その操作指示に応じて、サーマルヘッド110に対して印刷データを出力し、当該サーマルヘッド110にラベル320への印刷を行わせる。
【0028】
サーマルヘッド110は、ラベル用紙300を挟んでラベル搬送機構104に対向する位置に配置され、ラベル320の表面に、制御部102からの印刷データに対応する情報(例えば、文字、バーコード、2次元コード等の視認あるいは光学的認識が可能な情報)を印刷する。
【0029】
図5は、サーマルヘッド110の構造を示す図である。図5に示すサーマルヘッド110は、ラベル320の搬送方向に対して直交する方向に沿って配列される複数の印刷用素子としての発熱素子111−1乃至111−n(以下、適宜「発熱素子111」と称する)を有する。これら発熱素子111は、印刷データに応じて選択的に発熱し、ラベル320の表面を感熱発色させる。なお、サーマルヘッド110の印刷方式は、感熱発色式に限定されるものではなく、熱転写式やインクジェット方式であっても良い。この場合、印刷用素子は、各印刷方式に対応するものが用いられ、ラベル用紙300の搬送方向に対して直交する方向に沿って配列される。
【0030】
また、制御部102は、サーマルヘッド110における印刷の位置を補正する機能を有し、当該印刷位置を制御する。以下、フローチャートを参照しつつ、制御部102によるサーマルヘッド110における印刷位置の制御を説明する。
【0031】
図6は、制御部102によるサーマルヘッド110における印刷位置の制御を示すフローチャートである。制御部102は、変位センサ108からのラベル320のエッジ位置を取得したか否かを判定する(S101)。
【0032】
ラベル320のエッジ位置が取得されている場合、制御部102は、そのラベル320のエッジ位置について、予め定められた基準位置に対する変位量を導出する(S102)。ここで、基準位置とは、ラベル320が適切な位置に存在する場合におけるエッジ位置である。また、変位量は、ラベル320の基準位置に対する変位の方向(例えば、ラベル320が搬送方向の上流から下流に向かって右方向に変位しているか左方向に変位しているかを表す情報)と、その変位の数値とからなる。
【0033】
なお、変位センサ108が台紙310のエッジ位置を検出する場合や、ラベル320に印刷されている図形や文字等のエッジ位置を検出する場合には、制御部102は、これらのエッジ位置について、予め定められた基準位置に対する変位量を導出する。
【0034】
次に、制御部102は、1枚のラベル320について検出される複数のエッジ位置のそれぞれについて導出した複数の変位量の平均を導出する(S103)。変位量の平均とは、各変位量を構成する変位の数値の平均値を表す。
【0035】
更に、制御部102は、内蔵するメモリ(図示せず)内に保持されている補正テーブルを参照し、サーマルヘッド110における印刷位置の補正量を導出する(S104、S105)。ここで、補正量は、補正値と補正方向からなる。
【0036】
図7は、補正テーブルの一例を示す図である。図7に示す補正テーブルは、変位量を構成する変位数値と、当該変位数値に対応して、サーマルヘッド110における印刷位置をどれだけ補正すればよいかを表す補正値とによって構成される。図7は、8ドット/mm、すなわち、1mmの間に8つの発熱素子111が配列されている場合の例である。例えば、変位数値が0.25mmの場合には、補正値は2ドットとなる。このように補正テーブルが用いられることにより、補正量を簡易に導出することが可能となる。但し、制御部102は、予め発熱素子111の間隔を認識しておき、補正テーブルによらずに、変位数値から補正値を導出するようにしてもよい。
【0037】
補正方向は、上述した変位量におけるラベル320の変位方向と同一の方向である。例えば、ラベル320が搬送方向の上流から下流に向かって右方向に変位している場合には、補正方向は右方向となり、左方向に変位している場合には、補正方向は左方向となる。
【0038】
制御部102は、導出した補正値と補正方向とからなる補正量を含んだ補正指示をサーマルヘッド110に出力する(S106)。この際、制御部102は、ラベル320の搬送速度に基づいて、サーマルヘッド110において、補正量の導出対象となったラベル320の1つ前に搬送されているラベル320の印刷が終了してから補正量の導出対象となったラベル320の印刷が開始されるまでの間のタイミングを決定する。そして、制御部102は、この決定したタイミングになった時に、当該サーマルヘッド110に対して補正指示を出力する。
【0039】
サーマルヘッド110は、制御部102からの補正指示が入力されると、当該補正指示に含まれる補正量を構成する補正値及び補正方向に基づいて、発熱させる発熱素子111を選択する。例えば、補正値が2ドットであり、補正方向が右方向である場合には、補正後に選択される発熱対象の各発熱素子111は、補正がない場合に選択される発熱対象の各発熱素子111のそれぞれから2つ右側にシフトして配置されているものとなる。
【0040】
このような処理により、サーマルヘッド110における印刷位置がラベル320の搬送方向に直交する方向のずれに応じて補正され、当該ラベル320の適切な位置に文字、図形等の情報が印刷される。従って、ラベル320に対しては何ら位置の補正は行われず、サーマルヘッド110における印刷位置が補正されるだけであるため、印刷ずれを簡易に防止することができる。
【0041】
また、サーマルヘッド110の機械的な動作は伴わず、印刷に使用される発熱素子111の選択によって印刷位置が補正されるため、迅速な印刷を可能にすることができる。更には、1枚のラベル320について検出される複数のエッジ位置について導出される複数の変位量の平均が導出されるため、ラベル320の全体における基準位置からの変位が求められ、印刷ずれをより適切に防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
以上、説明したように、本発明に係るプリンタは、印刷ずれを簡易に防止することが可能となるという効果を奏し、プリンタとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】ラベルプリンタのブロック図である。
【図2】変位センサ及びサーマルヘッドの斜視図である。
【図3】変位センサの側面図である。
【図4】ラベルの印刷面の一例を示す図である。
【図5】サーマルヘッドの構造を示す図である。
【図6】印刷位置の制御を示すフローチャートである。
【図7】補正テーブルの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
100 ラベルプリンタ
102 制御部
104 ラベル搬送機構
106 供給ローラ
108 変位センサ
110 サーマルヘッド
112 通信I/F部
114 操作・表示パネル
300 ラベル用紙
310 台紙
320 ラベル
500 PC

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙を搬送する搬送機構と、前記用紙に印刷を行う印刷機構とを有するプリンタであって、
前記用紙の搬送方向に対して直交する方向について、基準位置に対する変位量を導出する変位量導出手段と、
前記変位量導出手段により導出される変位量に基づいて、前記印刷機構における前記搬送方向に対して直交する方向の印刷位置を補正する制御を行う印刷位置補正制御手段とを有し、
前記印刷機構により前記用紙の所定位置に印刷が行われるようにすることを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。
【請求項2】
前記印刷機構は、前記用紙の搬送方向に対して直交する方向に沿って配列される複数の印刷用素子によって構成され、
前記印刷位置補正制御手段は、前記複数の印刷用素子のうち、前記用紙への印刷に使用される印刷用素子を選択する制御を行うことを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
前記変位量導出手段は、前記用紙の所定単位長における複数の前記変位量の平均を導出することを特徴とする請求項1又は2に記載のプリンタ。
【請求項4】
前記印刷位置補正制御手段は、前記変位量導出手段により導出される変位量を、前記印刷機構における印刷位置の補正量に変換する変換手段を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のプリンタ。
【請求項5】
前記変位量導出手段は、前記用紙の端部位置について、基準位置に対する変位量を導出することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のプリンタ。
【請求項6】
前記変位量導出手段は、前記用紙に予め印刷されている図形又は文字の位置について、基準位置に対する変位量を導出することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−76032(P2006−76032A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−260250(P2004−260250)
【出願日】平成16年9月7日(2004.9.7)
【出願人】(000130581)株式会社サトー (1,153)
【Fターム(参考)】