説明

プリンタ

【課題】 プリンタに必要となる複数の加圧機構を連結、連動させることにより、プリンタの小型化および簡略化を図ることを目的とする。
【解決手段】 フレーム部材9の端部にはサーマルヘッド1とサーマルヘッドばね10が設けられている。また、フレーム部材の記録紙収納部5側には、加圧版7と加圧版ばね11が設けられている。そのため、フレーム部材を移動させることにより、サーマルヘッドと加圧板が移動可能な構成となっている。
また、180度回転する搬送経路中に段差溝16が設けてあるので、記録紙Pは、この段差溝に沿って、整列搬送される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルヘッドにより、インクシートのインクを記録紙に転写させて印刷を行うプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタは、画像情報に基づいて印刷用紙等の被記録材に画像(文字や記号等を含む)を印刷するように構成されている。被記録材としては、紙、布、プラスチックシート、OHP用シートなど、種々の材質のシート材が使用される。プリンタにおける印刷方式にはシリアル方式とライン方式がある。シリアル方式では、印刷用のヘッドを被記録材に沿って移動させる主走査と被記録材の紙送り(副走査)とを交互に繰り返しながら画像を印刷していく。一方、ライン方式では、被記録材の幅方向に延びる長尺の印刷用ヘッドを用いることにより、一括して1ライン分を印刷しながら被記録材の紙送り(副走査)のみで画像を印刷していく。
【0003】
また、プリンタは、記録方式により、熱転写式、感熱式、インクジェット式、レーザービーム式、ワイヤドット式などに分けることができる。その中で、熱転写式は、インクシートを挟んで被記録材とサーマルヘッドとを押圧し、被記録材の搬送と同期させてインクシートを走行させながらインクシートのインクを加熱転写することで画像を被記録材に記録するものである。この熱転写プリンタには、昇華型及び溶融型がある。
【0004】
図7に従来の熱転写式プリンタの構成を模式図で示す。
【0005】
以下、図7の模式図に従って印刷動作について説明する。図7に示すように、サーマルヘッド1は複数の発熱素子1aを有する加熱部で構成されており、記録情報に応じて発熱素子1aを選択的に加熱し、インクシート3上に一様に塗布されたインクを記録紙Pに転写する。記録紙Pは、記録紙収納部5に積載されており、不図示の操作部材により印刷開始指示が入力されると、給紙ローラ8が回転することにより記録紙収納部5から1枚ずつ給紙される。このとき、加圧版15が収納部に収納されている記録紙を給紙ローラ側に加圧することで、記録紙収納部5に収納されている記録紙Pが少なくなっても、給紙ローラ8により給紙が可能となる。記録紙収納部5から排紙された記録紙Pは、A1、A2の搬送経路6を通りサーマルヘッド1のある印刷位置まで搬送される。サーマルヘッド1とプラテンローラ2は、記録紙Pとインクシート3の搬送経路を挟んで対向している。印刷時には、供給側ボビン3aから引き出されたインクシート3と記録紙Pは、このサーマルヘッド1とプラテンローラ2により適当な圧力で圧着されることで、記録紙Pへのインクの転写が可能な状態となる。搬送経路6を挟んで対向した位置にキャプスタンローラ4aとピンチローラ4bが設けられている。この2つのローラの回転駆動によって記録紙Pを印刷開始位置から印刷終了位置まで印刷方向に搬送しながらサーマルヘッドによりインクを記録紙Pへ転写し、印刷動作が実行される。この時、記録紙Pから引き剥がされ、インクが記録紙に転写された後のインクシート3は、巻き取りボビン3bに巻きとられる。カラー熱転写プリンタにおいては、イエロー、マゼンダ、シアンの3色、および、オーバーコートが記録紙に転写される。そのため、一度印刷終了位置まで搬送された記録紙Pを、キャプスタンローラ4aとピンチローラ4bの逆方向の回転駆動によって逆搬送して再び印刷開始位置まで戻し、前述の印刷動作を複数回繰り返す。オーバーコートの転写が完了し印刷が終了したら、記録紙Pは、A3方向に搬送され、プリンタ内部から排紙される。
【0006】
このような熱転写プリンタにおいて、インクシート3塗布されたインクを精度よく記録紙Pに転写させるためには、インクシート3と記録紙Pとを十分に圧着させなければならず、サーマルヘッド1とプラテンローラ2とを適切な圧力で押圧する必要がある。また、サーマルヘッド1の発熱素子1aを主走査方向において高精度に選択して加熱するため、サーマルヘッド1の発熱素子1aはプラテンローラ2に対して、高い位置精度を保つ必要もある。
【0007】
その一方で、印刷動作時(インクを記録紙Pに転写させている間)以外の、例えば、記録紙Pを逆搬送したり、インクシートのみを搬送させたり、インクシートを交換したりする場合には、サーマルヘッド1とプラテンローラ2は、離間させた状態である必要がある。
【0008】
そのため、特許文献1では、プラテンローラに圧接させるサーマルヘッドをヘッドレバーを回動軸に固定されたヘッドレバーの先端部に取り付け、この回動軸の回動に伴って前記サーマルヘッドをプラテンローラに対して接離自在に動作させる技術が開示されている。
【特許文献1】特開2001−063174号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら従来例においては、サーマルヘッドやプラテンローラを離間させるための機構が大型化し、それに伴ってプリンタも大型化していた。これに対して、装置全体の小型化を実現するために、サーマルヘッドを固定し離間させるための機構を小型化することが考えられるが、これを小型化してしまうと、サーマルヘッドを固定し離間させるための機構の剛性が損なわれる可能性がある。剛性が損なわれるとサーマルヘッド1の発熱素子1aとプラテン2との位置精度の低下や、サーマルヘッド1とプラテン2との押圧によるサーマルヘッドを移動させるためのフレーム部材の変形が懸念される。
【0010】
また、熱転写プリンタには、印刷動作を行う印刷部の他にも、記録紙を記録紙収納部から分離し、記録紙搬送経路内まで給紙する給紙部、給紙部から印刷部まで記録紙を搬送する搬送部などが必要である。近年、モータやセンサなどの単体部品は小型化される傾向にあり、給紙部や搬送部のスペースは縮小されてきている。こうしたなか、サーマルヘッドとプラテンローラと離間させる部材が大型化してしまうと、装置全体に占めるその割合は大きくなる。そのため、プリンタ全体の大型化の直接的な要因となっていた。
【0011】
また、上述のような熱転写プリンタにおいては、サーマルヘッドとプラテンローラの圧接機構だけでなく、給紙ローラに対して記録紙を圧接させるための機構も必要なため、複数の加圧機構が必要となっていた。
【0012】
本発明は以上のような技術的課題に鑑みてなされたものであり、プリンタの小型化および簡略化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
給紙時に記録紙収納部に収納された記録紙を給紙するための給紙ローラと、インクシートのインクを記録紙に転写させて印刷するサーマルヘッドと、サーマルヘッドと対向する位置に設けられ、サーマルヘッドとの間で、インクシートと記録紙とを重ね合わせた状態で搬送するプラテンローラと、を有し、記録紙収納部からサーマルヘッドへの記録紙の搬送経路は略180度回転する円弧状の形状をなし、搬送経路中に、記録紙の幅に対応した段差溝が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、搬送経路を略180°回転させることによりプリンタの小型化を図ることができる。また、180度回転している円弧状の搬送経路に、段差溝を設けることにより、記録紙の搬送位置が規制されるので、従来用紙収納部や用紙搬送経路に設けていた同様の構成が簡素化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の実施形態を具体的に説明する。なお、各図面を通して同様の機能をもつ部材や構成には同一符号を付している。
【0016】
まず、本実施形態のプリンタについて、図1〜3を参照して説明する。図1は印刷動作時のプリンタの状態、図2は給紙時のプリンタの状態、図3は印刷待機時のプリンタの状態を表した図である。
【0017】
図1〜図3に示したプリンタは、画像情報に基づいてサーマルヘッド1の発熱素子を駆動し、インクシートに塗布されたインクを印刷用紙等の記録紙に熱転写することにより、画像を形成していくプリンタである。
【0018】
1はサーマルヘッドで、複数の発熱素子を有する加熱部を有してており、画像情報に応じて発熱素子を選択的に加熱して記録紙Pに画像の印刷を行う。2はプラテンローラで、サーマルヘッドと記録紙Pの搬送経路を挟んで対向した位置に設けられている。3はインクが塗布されているインクシートで、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、オーバーコート(OC)が周期的に塗布されている。インクシート3は、供給側ボビン3aに巻きつけられており、印刷時には供給側ボビン3aからインクシートを引き出し、印刷に使用されたインクシートは巻き取り側ボビン3bに巻き取られる。印刷時には、サーマルヘッド1とプラテンローラ2によりインクシート3と記録紙Pを重ね合わせて加圧した状態でサーマルヘッド1の発熱素子を選択的に加熱することにより、インクシート3に塗布されたインクが記録紙Pに転写される。4aはキャプスタンローラ、4bはピンチローラで、この2つのローラは記録紙Pの搬送経路を挟んで対向した位置に設けられている。印刷時にはこの2つのローラで記録紙を挟み、ローラの回転駆動によって記録紙Pを印刷開始位置から印刷終了位置まで印刷方向に搬送しながらサーマルヘッドによりインクを記録紙Pへ転写し、印刷動作が実行される。
【0019】
5は記録紙収納部で、印刷に用いる記録紙が複数枚積載した状態で収納されている。
【0020】
7は加圧版、8は給紙ローラで、これらは、記録紙収納部5の記録紙を挟んで対抗する位置に設けられている。
【0021】
9はフレーム部材で9aを回転軸として回動可能に構成されている。このフレーム部材の回転軸と逆側の端部にはサーマルヘッド1とサーマルヘッドばね10が設けられている。また、フレーム部材の記録紙収納部側には、加圧版7と加圧版ばね11が設けられている。そのため、フレーム部材を回転させることにより、サーマルヘッドと加圧板が移動可能な構成となっている。12は記録紙搬送のための搬送ローラである。
【0022】
本実施形態のプリンタの印刷時の動作について、図8のフローチャートと図1〜図3の図面を参照して説明する。図8のフローチャートの処理は、プリンタのCPU(不図示)が、プログラムメモリ(不図示)から読み出したプログラムに基づいて各部の制御や演算処理を行うことにより実行される。
【0023】
まず、不図示の操作部を介してユーザから印刷開始の指示が入力されると(S101)、フレーム部材9をフレーム軸9aを回転軸として図2の給紙位置まで回転させて移動させる。フレーム部材9を給紙位置に移動させることにより、の加圧版7が記録紙Pに当接し、さらに、加圧板ばね11が縮む。また、これと同時に、サーマルヘッド1がプラテンローラ2から大きく離間するため、インクシート3aおよび記録紙Pはサーマルヘッド1がプラテンローラ2間の搬送経路を自由に搬送させることができる状態となる。加圧ばね11と加圧版7により記録紙収納部5内の記録紙Pが給紙ローラ側に押し付けられ、給紙ローラを回転することで、給紙ローラ側にある記録紙が1枚ずつ記録紙収納部5から送出され、給紙動作が行われる(S103)。記録紙収納部5からB1方向に送出された記録紙Pは搬送ローラ12によりB2方向に搬送され、サーマルヘッド1がある記録開始位置まで搬送される(S105)。本実施形態では、記録紙Pがサーマルヘッド1がある記録開始位置まで到達するのに、記録紙がプリンタ内を略180度回転するような搬送経路となっており、記録紙収納部5から上方へ湾曲した円弧状の搬送経路が設けられている。この円弧状の搬送経路が、記録紙収納部5から給紙される記録紙をサーマルヘッド1まで案内する。つまり、給紙ローラ8によって送り出される記録紙Pは、湾曲した搬送経路6の湾曲面で第1の搬送ローラ12によって案内されながら、プリンタ内の印刷部へ向けて搬送される。このとき、第1の搬送ローラ12は搬送経路6の搬送面に対して、一定の押圧力で付勢されており、給紙ローラ8と同一の駆動手段で、給紙ローラ8と同期して回転するものが好適である。
【0024】
また、記録紙Pの搬送動作と並行して、インクシートの頭だしが行われ、インクシートのイエロー(Y)の印画面を印刷開始位置まで引き出す(S104)。インクシートと記録紙Pとが印刷開始位置まで搬送されたら、フレーム部材9を印刷時の位置まで回動させる。図1は、フレーム部材9を印刷位置に移動させた時のプリンタの様子を表している。図1では、サーマルヘッド1がプラテンローラ側に付勢され、供給側ボビン3aから引き出されたインクシート3と記録紙Pは、このサーマルヘッド1とプラテンローラ2により適当な圧力で圧着される。この状態で、キャプスタンローラ4aとピンチローラ4bにより記録紙を搬送させ、さらに巻き取り側ボビンを回転駆動させてインクシートを搬送させながら、画像情報に応じてサマールヘッドを加熱させることにより、記録紙Pにインクが転写される(S107)。昇華型熱転写プリンタにおいては、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)の3色、および、保護層であるオーバーコート(OC)が記録紙に転写される。そのため、1色分の転写が終わると、Y,M、C、OC全ての転写が終了したかを確認する(S108)。3色と保護層の転写が終わっていない場合は、フレーム部材9を図3のような待機位置に移動させる(S109)。その後、次の色(またはOC)の転写を行うために、印刷終了位置にある記録紙Pをキャプスタンローラ4aとピンチローラ4bの逆方向の回転駆動によって逆搬送して再び印刷開始位置まで戻す(S110)。また、インクシートについても、次の色の印刷開始位置まで搬送させておく。S109で、フレーム部材9を印刷待機位置に移動させることにより、サーマルヘッド1がプラテンローラ2から離間する方向に移動する。サーマルヘッド1とプラテンローラ2は離れた状態になるので、記録紙Pとインクシートとがそれぞれ干渉せずに自由に搬送することができ、記録紙Pを印刷方向とは逆方向に搬送しながらインクシートを印刷方向に搬送してすることができる。インクシートと記録紙Pを印刷開始位置まで搬送させたら、再びS106〜S110の処理を行い次の色またはOCの転写を行う。
【0025】
OCまで転写が終わったら、S108からS111に進み、フレーム部材9を図3のような待機位置に移動させ、記録紙Pを図1のB3方向に搬送し、プリンタから排出させる排紙動作を行う(S112)。次に、他にも、印刷ジョブがあるかを確認し(S113)、受部がある場合は、S103〜からの処理を再び行う。ジョブがない場合は、そのまま印刷動作を終了する。
【0026】
このように、本実施形態では、フレーム部材9が、サーマルヘッド1によりインクの転写が行われている時には図1の印刷時位置に移動し、記録紙収納部5から記録紙を給紙する時には図2の給紙時位置に移動ずる。それ以外の、記録紙を逆搬送させたり、印刷待機状態のときには、フレーム部材9は、図3の待機位置に移動する。
【0027】
インクシートのインクを記録紙に転写させる印刷時は、サーマルヘッド1の発熱素子とプラテン2とを精度よく固定し、且つ、サーマルヘッド1とプラテンローラ2とで、挟持している記録紙とインクシートに一定の圧力をかける必要がある。そのため、印刷時の図1の状態では、フレーム部材9がフレーム軸9aを回転軸としてインクシート3やプラテンローラ2と記録紙収納部5との間の空間内を回転し、インクシート3およびプラテンローラ2側に移動した状態になっている。印刷待機時にはプラテンローラ2から離間していたサーマルヘッド1が、プラテンローラ2に当接し、さらに、サーマルヘッドばね10に弾性よりサーマルヘッド1とプラテンローラは圧着された状態になる。これと同時に、フレーム部材9に連続して一体的に設けられている加圧板7は記録紙Pから離間する方向に移動して、記録紙Pから加圧板7が完全に離れ、記録紙Pと給紙ローラ8との押圧状態は解消された状態になっている。この状態であれば、例えば給紙ローラ8、キャプスタンローラ4a、ピンチローラ4bが、1つの駆動モータにより回転する構成であっても、キャプスタンローラ4a、ピンチローラ4bが回転駆動している間に給紙ローラ8により記録紙Pが給紙されることはない。インク転写時には記録紙Pに圧着させる必要があるため、サーマルヘッド1とプラテンローラ2だけが押圧状態にある。それに対し、フレーム部材9や加圧板7は、記録紙や他の部材と十分離れた状態にあるので、記録Pや他の部材と干渉することがなく、安定して印刷を行うことができる。
【0028】
次に、給紙時は、フレーム部材9がインクシート3やプラテンローラ2と記録紙収納部5との間の空間を記録紙収納部5側に移動する。これにより、加圧板7が記録紙収納部5側に移動し、記録紙収納部5に積載された記録紙Pに当接する。そしてさらに、フレーム部材9が給紙時の位置まで移動することにより、加圧板ばね11が縮み、積載された記録紙Pを加圧板7が所望の押圧力で給紙ローラ8側に押圧する。この状態で、給紙ローラ8を搬送方向に回転させることで、記録紙Pを一枚ずつ、記録紙収納部から分離して送り出すことが可能である。これと同時に、サーマルヘッド1がプラテンローラ2から離間する方向に移動するので、サーマルヘッド1とプラテンローラ2との押圧状態は解消され、インクシート3や記録紙Pはサーマルヘッド1とプラテンローラ2に間を自由に行き来させることが可能となる。
【0029】
印刷待機時や、インクを転写した後にS110で記録紙を逆搬送させるときには、フレーム部材9は図3のような待機位置に移動する。この待機位置に移動することにより、サーマルヘッド1とプラテンローラ2の押圧状態と加圧板7による記録紙Pへの押圧状態は解消される。また、サーマルヘッド1とプラテンローラ2、加圧板7と記録紙Pはそれぞれ離間した状態にあるので、お互いに干渉しない状態になる。そのため、サーマルヘッド1とプラテンローラ2の間の搬送経路においてサーマルヘッド1やプラテンローラ2と干渉せずに記録紙Pやインクシート3を自由に搬送させることができる。また、記録紙搬送のための複数のローラ(4a,4b,8,12)を1つの駆動モータにより回転させるような構成である場合を考える。もし、加圧板7により記録紙Pを押圧した状態で記録紙を逆搬送させたら、給紙ローラ側の記録紙Pが逆搬送されて記録紙収納部に当たり、記録紙が傷んでしまう可能性がある。しかし、本実施形態のプリンタでは給紙しないときにはフレーム部材を移動させ、加圧板7により記録紙を給紙ローラ側に押圧しない状態になるので、例え給紙ローラを駆動させたとしても記録紙が搬送されることはない。
【0030】
なお、本実施形態では、サーマルヘッドを固定し離間させるフレーム部材9の回動中心となるフレーム回転軸9aは、記録紙収納部5とインクシートが収納されるボビン3a、3bとの間の空間の外に配置されている。さらに、サーマルヘッドを固定し離間させるフレーム部材9はレバー形状で回転可能な構成となっている。もし、このフレーム部材9を小型化しようとするならば、フレームの形状をより薄いものにするか、フレームの板圧や幅を縮小しなければならない。このような方法で小型化を実施すると、フレーム部材9の剛性が損なわれる可能性があり、サーマルヘッド1や記録紙Pを加圧することができなくなってしまう可能性がある。また、印刷時にサーマルヘッド1の発熱素子を発熱させるため、フレーム部材9は高温になりやすい。そのため、フレーム部材9に放熱フィン(不図示)を設けたり、フレーム部材9に対して送風する方向に冷却ファン(不図示)を設けるのが一般的である。こうした理由からも、フレーム部材の板圧や幅を小さくせずに、本実施形態ように板圧や幅が大きいレバー状にして冷却ファンに当たる面積が大きくなるようにしたほうが冷却の効果が高く、さらに剛性を保てるというメリットがある。
【0031】
また、S110において記録紙Pを逆搬送させるときに、記録紙Pの後端が記録紙収納部5にまで到達し、記録紙Pが傷んでしまわないようにに注意が必要である。具体的には、本実施形態のように、サーマルヘッド1がある印刷開始位置から記録紙収納部5までの搬送経路を、記録紙Pの搬送方向の長さよりも長くして構成することが考えられる。また、一時排出口(不図示)を設けて、記録紙Pを逆搬送させても、記録紙収納部5に当たらないような機構を用意しておいても良い。
【0032】
また、本実施形態の搬送経路6には図9に示すように、搬送される記録紙の幅に対応して段差溝16が設けてあるので、記録紙Pは、この段差溝に沿って、整列搬送される。また、搬送経路中に、プリンタで用いられる複数の記録紙の幅に対応して、複数の幅の段差溝16が設けてもよい。複数の記録紙Pは、其々の段差溝に沿って、整列搬送される。特に本実施形態の搬送経路は円弧状であるので、搬送経路の壁面と記録紙の先端が当接し摩擦力により用紙の斜行が補正されやすい。それに加えて段差溝を設けることにより確実に記録紙の斜行を補正し整列搬送することが可能となる。
【0033】
また、異なる複数の幅の段差溝は、幅の狭い順に、内側から設けられているので、他のサイズの幅の段差溝によって影響を受けることなく、整列搬送される。
【0034】
さらに、異なる複数の幅の段差溝は、溝の幅の中心が略一致するように形成されているので、印画部に対して、記録紙の幅に依存して、片寄せにならず、給送することが可能である。
【0035】
また、本実施形態のプリンタは、記録紙収納部5の上部にサーマルヘッド1がもうけられているため、記録紙搬送経路が、記録紙収納部5からサーマルヘッド1がある印刷開始位置まで180度湾曲している。この湾曲面の曲率半径が小さいと記録紙が記録紙搬送中に傷ついたり、折れ曲がったりする恐れがあるので、曲率半径は大きいほうが望ましい。このような理由により曲率半径を大きくすると、記録紙収納部5とサーマルヘッド1の間のスペースも大きくなる。本実施形態のように、記録紙収納部5とサーマルヘッド1の間のスペースにレバー形状のフレーム部材を配置すると、このスペースを有効に活用できる。
【0036】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態を図4〜図6を参照して説明する。
【0037】
第2の実施形態に係るプリンタは、基本的には第1の実施形態と同じ構成であるので、第1の実施形態と異なる部分について説明する。
【0038】
第2の実施形態では、記録紙Pとインクシート3とが、1つのカセットに収納されている。カセット13には記録紙Pと、記録紙Pの枚数に対応した枚数のインクシートが収納されており、記録紙とインクシートは同じタイミングで消耗するようになっている。そのため、従来、インクと記録紙の残量をそれぞれ検出し、残量がなくなったときにはそれぞれ交換、補充が必要であったが、本実施形態では、記録紙とインクシートの残量はどちらか一方を検出すれば、両方の残量を認識することができる。また、残量がなくなったときの交換、補充についても、カセット13を新しいものに交換するだけでよいので使い勝手に優れている。
【0039】
本実施形態に係るプリンタの構成について、図4〜図6を用いて説明する。図4はサーマルヘッド1による印刷時、図2は給紙時、図6は印刷待機時の状態を表している。
【0040】
本実施形態のカセット13には記録紙Pを収納するための記録紙収納部5とインクシートを収納するためのインクシート収納部とが設けられている。また、カセット装着時にサーマルヘッド1とプラテンローラ2でインクシート3を挟めるように、インクシート収納部から引き出されて露出しているインクシートと記録紙収納部の間にサーマルヘッドが進入可能なスペースが設けられている。
【0041】
第2の実施形態でも第1の実施形態と同様に、サーマルヘッド1をプラテンローラ2側に押圧するための機構と、記録紙Pを給紙ローラ側に押圧するための機構が1つのフレーム部材14の両端に設けられている。しかし、本実施形態では、レバー形状を採用していない。それは、記録紙とインクシートを1つのカートリッジに収納する図4のようなカートリッジの構成を取っており、サーマルヘッドを設置可能なスペースが限られてしているためである。フレーム部材をレバー形状にして大型化した場合は、このサーマルヘッドが進入するスペースも大きくする必要がある。しかし、このスペースを大きくすると、カセット13も必然的に大きくなってしまうため、本実施形態においては移動部材であるフレーム部材14をレバー形状でなく小型の部材を採用している。また、フレーム部材14は、第1の実施形態のフレーム部材9と同様に、印刷動作に応じて移動する。つまり、図8のフローチャートのS106では、図4ように、サーマルヘッドがプラテンローラ側に付勢するような位置に移動する。また、S103では、図5の状態になるようにフレーム部材14が移動して、加圧板7が記録紙Pを給紙ローラ8側に加圧する状態となり、加圧板7が押圧部材として機能する。S109、S110では、図6のように、フレーム部材14待機位置に移動し、サーマルヘッドや加圧板の押圧状態が解消され、また、他の部材に干渉しないような位置に移動している。
【0042】
本実施形態の場合、待機状態については、インクシートがサーマルヘッド1に接触しないことと同時に、加圧板7が記録紙Pに接触しないことが特に必須である。カセット13を装填する際には、記録紙やインクシートが他の部材に接触し痛んでしまわないように、上述の待機状態である必要がある。そのため、プリンタの電源の入切の際や印刷開始前や終了後の度に、上述の待機状態まで移動させると好適である。また、印刷待機時と給紙時には、フレーム部材と共にプラテンローラもサーマルヘッドから離間する方向へ移動させることにより、記録紙の搬送やカセットの装填時に、記録紙やインクシートがプラテンローラと接触して傷んでしまうのを防ぐことができる。
【0043】
上述の実施形態では、フレーム部材には加圧板とサーマルヘッドが一体的に設けられていたが、サーマルヘッドでなくプラテンヘッドをフレーム部材側に設けて、その向かい側にサーマルヘッド配置しても良い。
【0044】
また、上述の実施形態では、加圧板とサーマルヘッドとか、1つのフレーム部材に連結して一体的に設置されていた。しかし、1つの部材で構成せずに、それぞれ別部材として構成して、同じ駆動源により2つの部材が常に連動して同じように移動するような構成にしても良い。
【0045】
(第3の実施形態)
本発明の実施形態を、以下、説明する。
【0046】
本実施形態では、図10に示すように、搬送経路6には、一方側16aは、段差で形成され、他方側16bは、この段差の底にむかっての斜面に形成される形状で、段差溝16が形成される。そのため、記録紙が、段差溝よりはずれる様に、記録紙収納部より、給送されてきても、搬送経路6を搬送されるにしたがって、一方の段差に突き当たるように搬送され、一段と精度良く、整列搬送される。
【0047】
(第4の実施形態)
本発明の実施形態を、以下、説明する。
【0048】
本実施形態では、図11に示すように、搬送経路6には、段差溝16が、記録紙収納部側が、記録紙の幅より広く形成され、サーマルヘッド側の段差溝の幅は、記録紙の幅と同じ幅に設定される。このサーマルヘッド側の段差溝の幅については、記録紙の大きさのばらつきや、記録紙が搬送されやすくすることを考慮して、記録紙の幅よりも少しだけ広くしたりすることも考えられる。そのため、全く同じ幅でなくても、記録紙の幅とほぼ同じ幅であれば良い。溝を形成する其々の側は、記録紙収納部側とサーマルヘッド側で、滑らかに、略直線で接続されている形状で形成される。そのため、記録紙収納部から記録紙が斜行した状態で給送されてきても、搬送経路6の段差溝に進入可能であり、搬送されるにしたがって、記録紙の幅に沿うように搬送され、一段と精度良く、整列搬送されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施形態に係る印刷時のプリンタの構成を示す概略図である。
【図2】本発明の実施形態に係る給紙時のプリンタの構成を示す概略図である。
【図3】本発明の実施形態に係る印刷待機時のプリンタの構成を示す概略図である。
【図4】本発明の実施形態に係る印刷時のプリンタの構成を示す概略図である。
【図5】本発明の実施形態に係る印刷給紙時のプリンタの構成を示す概略図である。
【図6】本発明の実施形態に係る印刷待機時のプリンタの構成を示す概略図である。
【図7】従来のプリンタの構成を示す概略図である。
【図8】本発明の実施形態に係るプリンタの処理のフローチャートである。
【図9】本発明の実施形態に係る搬送経路6の構成を示す図である。
【図10】本発明の実施形態に係る搬送経路6の構成を示す図である。
【図11】本発明の実施形態に係る搬送経路6の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
1 サーマルヘッド
2 プラテンローラ
3 インクシート
3a インクシート供給側収納部
3b インクシート巻取り側収納部
4a キャプスタンローラ
4b ピンチローラ
5 記録紙収納部
6 搬送経路
7 加圧板
8 給紙ローラ
9 フレーム部材
9a フレーム回転軸
10 サーマルヘッドばね
11 加圧板ばね
12 搬送ローラ
13 カセット
14 フレーム部材
15 加圧版
16 段差溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給紙時に記録紙収納部に収納された記録紙を給紙するための給紙ローラと、
インクシートのインクを記録紙に転写させて印刷するサーマルヘッドと、
前記サーマルヘッドと対向する位置に設けられ、前記サーマルヘッドとの間で、前記インクシートと前記記録紙とを重ね合わせた状態で搬送するプラテンローラと、を有し、
前記記録紙収納部から前記サーマルヘッドへの記録紙の搬送経路は略180度回転する円弧状の形状をなし、前記搬送経路中に、記録紙の幅に対応した段差溝が設けられていることを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
前記段差溝は、前記プリンタにおいて用いられる複数の異なるサイズの記録紙の幅に対応した、複数の段差溝が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
前記複数の段差溝は、幅の狭い順に内側から設けられていることを特徴とする、請求項2に記載のプリンタ。
【請求項4】
前記段差溝は、一方側は段差で形成され、他方の側は段差ではなく前記段差の底にむかっての斜面で形成されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のプリンタ。
【請求項5】
前記段差溝は、前記記録紙収納部側が、記録紙の幅より広く形成され、前記サーマルヘッド側が、記録紙の幅とほぼ同じ幅で形成されていることを特徴とする項1ないし4のいずれか1項に記載のプリンタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2009−107757(P2009−107757A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−280443(P2007−280443)
【出願日】平成19年10月29日(2007.10.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】