説明

プリンタ

【課題】 高精度な記録用紙の搬送を行い、高品質な画像印刷が可能なプリンタを提供する。
【解決手段】 記録用紙の搬送方向におけるプラテンローラ1の上流側および下流側にそれぞれ回転可能に配設された第1紙送りローラ2および第2紙送りローラ3と、前記第1紙送りローラ2および第2紙送りローラ3の一端部にそれぞれ連結されたギア6、7と、前記ギア6、7を介して前記第1紙送りローラ2および第2紙送りローラ3を回転駆動する回転駆動機構11と、前記第1紙送りローラ2および第2紙送りローラ3の他端部にそれぞれ摺接され、第1紙送りローラ2および第2紙送りローラ3の回転負荷トルクが等しくなるように、第1紙送りローラ2および第2紙送りローラ3にかかる軸方向の側圧が調整されたスラストプレート16、17とを備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録用紙を正逆方向に搬送しながらインク色の画像を重ねて、所望のカラー印刷を行うプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、カラー印刷を行うプリンタとして、記録用紙を正逆方向に搬送しながらインク色を重ねて、所望のカラー印刷を行うプリンタが利用されている。このプリンタの一般的な構成を説明すると、記録用紙の搬送方向におけるプラテンローラの上流側および下流側に、それぞれ駆動源としてのステッピングモータによって回転駆動される第1紙送りローラおよび第2紙送りローラが配設されている。また、第1紙送りローラおよび第2紙送りローラの上方には、それぞれ第1紙送りローラおよび第2紙送りローラに圧接して従動回転可能とされる第1圧接ローラおよび第2圧接ローラが配設されている。
【0003】
これらのプランテンローラ、第1紙送りローラおよび第2紙送りローラは、それぞれの支軸の両端部がプリンタのフレームの両側面に回転自在に支持されている。
【0004】
また、プランテンローラ、第1紙送りローラおよび第2紙送りローラの一端部には、それぞれハス歯ギアが装着され、互いに噛合されている。これらのハス歯ギアを、ステッピングモータのモータ軸に装着されたギアと噛合させることにより、前記ステッピングモータの回転駆動力がプラテンローラ、第1紙送りローラおよび第2紙送りローラに伝達されるように構成されている。
【0005】
また、前記プラテンローラの上方には、当該プラテンローラに記録用紙を介して接離(ヘッドダウン/ヘッドアップ)可能とされたサーマルヘッドが配設され、このサーマルヘッドとプラテンローラの圧接、対向する位置は印刷部とされている。このサーマルヘッドと記録用紙との間には、インクリボンが引き回しされて配設されている。また、カラー印刷可能な熱転写プリンタにおいては、このインクリボンの表面には、例えば、イエロー、マゼンダ、シアン、オーバーコートの4色のインク層が連続して形成されている。
【0006】
ここで、このような構成を備えたプリンタにおいてカラー記録を行なう場合の前記第1紙送りローラおよび第2紙送りローラの作用について説明する。
【0007】
まず、第1紙送りローラとこれに圧接して従動回転する第1圧接ローラとの間に記録用紙を挟持し、この状態で所定量だけ第1紙送りローラを正回転させることにより搬送方向(下流側)へ搬送して、最初の頭出しを行なう。
【0008】
続いて、サーマルヘッドをヘッドダウン状態として記録用紙をプラテンローラとの間に挟持し、この状態で、さらに前記第1紙送りローラを所定量だけ正回転させて記録用紙を搬送するとともに、サーマルヘッドに形成された複数の発熱素子に選択的に通電して1色目のインク層のインクを熱転写し、1色目のインクによる画像を形成する。
【0009】
画像が形成されつつ下流側へ搬送される記録用紙の先端が第2紙送りローラとこれに従動回転する第2圧接ローラとの間に到ったところで、第2紙送りローラと第2圧接ローラとの間に挟持し、記録用紙の後端が第1紙送りローラと第1圧接ローラとによる挟持から抜けて開放されるまで前記第1紙送りローラと第2紙送りローラを所定量だけ正回転させて記録用紙を下流側へ搬送する。また、記録用紙の後端が第1紙送りローラと第1圧接ローラとによる挟持から抜けて開放された後は、1色目のインク層のインクの熱転写が完了するまで第2紙送りローラのみを正回転させることにより記録用紙を下流側へ搬送する。
【0010】
そして、1色目のインク層のインクの熱転写が完了し、1色目のインク色の画像が形成されたら、サーマルヘッドをヘッドアップ状態とし、第2圧接ローラとの間に記録用紙を挟持している第2紙送りローラを所定量だけ逆回転させることにより記録用紙を逆搬送方向(上流側)へ搬送する(フィードバック)。
【0011】
逆搬送される記録用紙は、後端が第1紙送りローラと第1圧接ローラとの間に到ったところでこれらの間に挟持する。そして、記録用紙の先端が第2紙送りローラと第2圧接ローラとによる挟持から抜けて開放されるまで前記第1紙送りローラと第2紙送りローラを所定量だけ逆回転させて上流側へ搬送する。記録用紙の先端が第2紙送りローラと第2圧接ローラとによる挟持から抜けて開放された後は、記録用紙が頭出し位置に戻るまで、前記第1紙送りローラのみを逆回転させることにより記録用紙を下流側へ搬送する。
【0012】
その後は、同様にして、記録用紙の正逆搬送を行ないながら、2色目乃至4色目のインク層のインクを、既に形成されている画像の上に重ねるようにして熱転写し、所望のカラー印刷を得る(例えば、特許文献1参照)。
【0013】
また、従来、第1紙送りローラおよび第2紙送りローラの一端にスラストプレートの自由端を摺接させ、アース機能、スラスト動作機能として側圧をかける構成のプリンタも開発されている(例えば、特許文献2参照)。
【0014】
【特許文献1】特開2007−45577号公報
【特許文献2】特開2004−191526号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところが、特許文献1に開示されているプリンタにおいては、回転負荷トルクが高くなる場合は、低温環境下で急激なトルクアップが生じ、第1紙送りローラおよび第2紙送りローラの回転開始遅れが生じることがある。
【0016】
また、第1紙送りローラおよび第2紙送りローラのそれぞれの負荷トルクの大きさが互いに異なった場合には、記録用紙の搬送量をステッピングモータのステップ数で制御すると、主に第1紙送りローラによって搬送方向へ搬送する際の搬送量と、主に第2紙送りローラによって逆搬送方向へのフィードバックする際の搬送量との間に誤差が生じていた。この場合、記録用紙を4往復搬送させながら、順に各インク層の画像を熱転写していくと、印刷された印刷画像には、各インク層の画像の位置のずれ、いわゆる色ずれが生じてしまうという問題があった。
【0017】
また、特許文献2に開示されているプリンタにおいては、前記スラストプレートによって第1紙送りローラおよび第2紙送りローラの回転負荷トルクをコントロールすることまでは配慮されていない。
【0018】
そこで、本発明はこのような点に鑑み、高精度な記録用紙の搬送を行い、高品質な画像印刷が可能なプリンタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前述した目的を達成するため、請求項1に記載のプリンタは、記録用紙の搬送方向におけるプラテンローラの上流側および下流側にそれぞれ回転可能に配設された第1紙送りローラおよび第2紙送りローラと、前記第1紙送りローラおよび第2紙送りローラの一端部にそれぞれ連結されたギアと、前記ギアを介して前記第1紙送りローラおよび第2紙送りローラを回転駆動する回転駆動機構と、前記第1紙送りローラおよび第2紙送りローラの他端部にそれぞれ摺接され、第1紙送りローラおよび第2紙送りローラの回転負荷トルクが等しくなるように、第1紙送りローラおよび第2紙送りローラにかかる軸方向の側圧が調整されたスラストプレートとを備えていることを特徴とする。
【0020】
この請求項1に記載のプリンタによれば、第1紙送りローラおよび第2紙送りローラの回転負荷トルクを等しくすることで、記録用紙の搬送方向および反対方向への搬送時における第1紙送りローラおよび第2紙送りローラによる記録用紙の搬送量の誤差を少なくすることができる。これにより、インクリボンの各インク層によって形成される画像の位置のずれ、いわゆる色ずれなどの印刷不良を防止することができる。
【0021】
また、請求項2に記載のプリンタは、請求項1に記載のプリンタであって、前記スラストプレートは、前記第1紙送りローラおよび第2紙送りローラの回転負荷トルクがともに0.6Ncm以下となるように、第1紙送りローラおよび第2紙送りローラにかかる軸方向の側圧が調整されていることを特徴とする。
【0022】
この請求項2に記載のプリンタによれば、後述する実験結果(図4および図5)に基づいて、第1紙送りローラおよび第2紙送りローラの負荷トルクを良好な画像が得られる範囲で可能な限り小さい数値、すなわち0.6Ncm以下とすることで、搬送開始時および逆搬送時における第1紙送りローラおよび第2紙送りローラの回転開始遅れを防止し、第1紙送りローラおよび第2紙送りローラによる記録用紙の高精度な搬送を行うことができる。
【0023】
また、請求項3に記載のプリンタは、請求項1または請求項2に記載のプリンタであって、前記スラストプレートは、前記第1紙送りローラおよび第2紙送りローラの回転負荷トルクの差が0.2Ncm以下となるように、第1紙送りローラおよび第2紙送りローラにかかる軸方向の側圧が調整されていることを特徴とする。
【0024】
この請求項3に記載のプリンタによれば、後述する実験結果(図4および図5)に基づいて、第1紙送りローラと第2紙送りローラの負荷トルクの差を小さくし、すなわち両者の差を0.2Ncm以下とすることで、搬送方向および反対方向への記録用紙の搬送時における第1紙送りローラおよび第2紙送りローラによる搬送量の誤差を少なくすることができ、色ずれなどの印刷不良を防止することができる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、本発明のプリンタによれば、スラストプレートは、第1紙送りローラおよび第2紙送りローラの回転負荷トルクが等しくなるように、第1紙送りローラおよび第2紙送りローラにかかる側圧が調整されているため、搬送方向および反対方向への記録用紙の搬送時における第1紙送りローラおよび第2紙送りローラによる搬送量の誤差を少なくすることができる。これにより、第1紙送りローラおよび第2紙送りローラによる高精度な搬送を行い、いわゆる色ずれなどの印刷不良を防止し、高品質な印刷画像を印刷することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に、本発明のプリンタについて、図1から図5に基づいて実施形態により説明する。
【0027】
図1は、本発明のプリンタの要部斜視図、図2は図1をスラストプレート側からみた側面図である。また、図3は第1紙送りローラに摺接させて配設されるスラストプレートの配設状態を示す説明図である。なお、本実施形態のプリンタは、カラー画像を印刷可能な熱転写プリンタとしての基本構成を備えたものとし、その詳細については省略する。
【0028】
本実施形態のプリンタは、回転可能に配設されたプラテンローラ1と、プラテンローラ1の上方に配置され、搬送される記録用紙を介してプラテンローラ1に接離(ヘッドダウン/ヘッドアップ)可能に配設されたサーマルヘッド(不図示)とを有している。
【0029】
プラテンローラ1上に搬送される記録用紙とサーマルヘッドとの間には、インクリボン(不図示)が引き回しされて配設されている。本実施形態のインクリボンの表面には、イエロー、マゼンダ、シアン、オーバーコートの4色のインク層が連続して形成されている。
【0030】
図1に示すように、記録用紙の搬送方向(図1および図2における矢印Tの方向)におけるプラテンローラ1の上流側および下流側には、それぞれ後述する回転駆動機構11によって回転駆動される第1紙送りローラ2および第2紙送りローラ3が回転可能に配設されている。
【0031】
なお、前記第1紙送りローラ2および第2紙送りローラ3は、ベアリング4を介してフレーム5に両側面に回転可能に支持されている(第1紙送りローラ2については、図3参照)。
【0032】
第1紙送りローラ2、第2紙送りローラ3およびプラテンローラ1の一端部には、第1紙送りギア6、第2紙送りギア7およびプラテンギア8としてのハス歯ギアがそれぞれ連結されている。また、前記第1紙送りギア6と第2紙送りギア7の間には、第1中間ギア9および第2中間ギア10が配設されている。図1に示すように、これらの第1中間ギア9および第2中間ギア10は、大径、小径の2枚のギア体を同心状に配置させて一体形成された2段ギアであり、これらの大径のギア体は、それぞれ前記第1紙送りギア6および第2紙送りギア7に噛合し、小径のギア体は、共に前記プラテンギア8と噛合している。
【0033】
また、図1および図2に示すように、前記第1中間ギア9および第2中間ギア10の近傍には、前記回転駆動機構11が配設されている。この回転駆動機構11は、駆動源としてのステッピングモータ12を有しており、このステッピングモータ12のシャフトにはピニオンギア13が連結されている。また、このピニオンギア13には、動力伝達ギアとしてのギア14とギア15を介して前記プラテンギア8が噛合している。詳しくは、前記ギア14およびギア15は、それぞれ大径、小径の2枚のギア体を同心状に配置させて一体形成された2段ギアである。そして、前記ピニオンギア13にはギア14の大径のギア体が噛合し、ギア14の小径のギア体にはギア15の大径のギア体が噛合し、さらに、ギア15の小径のギア体にはプラテンギア8が噛合している。
【0034】
そして、前記ステッピングモータ12の回転駆動力は、順に、ピニオンギア13、ギア14、ギア15を介してプラテンギア8に伝達され、さらに、プラテンギア8、第1中間ギア9および第2中間ギア10を介して前記第1紙送りギア6および第2紙送りギア7に伝達されるようになっている。したがって、ステッピングモータ12が正逆回転すると、複数のギアを介して第1紙送りローラ2、第2紙送りローラ3およびプラテンローラ1が同一方向に正逆回転するようになっている。なお、ステッピングモータ12のステップ数を制御することによって、記録用紙の正逆方向への搬送量は制御されている。
【0035】
また、第1紙送りローラ2および第2紙送りローラ3の他端部には、それぞれ側圧を調整するための第1スラストプレート16および第2スラストプレート17の自由片16a、17aの先端が摺接されている。
【0036】
これらの第1スラストプレート16および第2スラストプレート17は、前述したスラスト荷重を抑制する機能の他、搬送時における記録用紙との摩擦によって、第1紙送りローラ2や第2紙送りローラ3の周側面に帯電した静電気をフレーム5に逃すためのアースとしても機能するものである。
【0037】
本実施形態においては、前記第1スラストプレート16は導電性を有する部材からなり、図3に示すように、平板状の板ばねであって、下方側の固定片16bは、ねじ18によってフレーム5に固定されている。また、第1スラストプレート16の上方側は自由片16aとされ、その先端は第1紙送りローラ2の端部に、スラスト方向(図1および図3における矢印Aの方向)と反対方向(図1および図3における矢印Bの方向)の側圧がかかるように摺接されており、第1紙送りギア6により生じるスラスト荷重を抑制する機能を果たしている。
【0038】
また、本実施形態においては、前記第2スラストプレート17は導電性を有する部材からなり、図3に示すように、全体形状がY字状であって、1つの固定片17bは、ねじ18によってフレーム5に固定されている。また、前記固定片17bから二股状に分岐した2つの自由片17aの先端は、それぞれ第2紙送りローラ3およびプラテンローラ1の端部に、スラスト方向(図1における矢印Aの方向)と反対方向(図1における矢印Bの方向)の側圧がかかるように摺接されている。これらの自由片17aは、それぞれ第2紙送りギア7およびプラテンギア8により生じるスラスト荷重を抑制する機能を果たしている。また、第2スラストプレート17の2つの自由片17bの長手方向の長さは、第1スラストプレート16の自由片16bと同じ長さとなっている。なお、本実施形態においては、第2紙送りローラ3およびプラテンローラ1の端部に摺接させるためのスラストプレートとして、Y字状の板ばねを1つ設け、二股状に分岐した2つの自由片17aをそれぞれに摺接させることによって、部品点数の削減を図っている。
【0039】
なお、前記第1スラストプレート16および第2スラストプレート17の形状は、上記のような形状に限定されない。例えば、第1スラストプレート16における長手方向中間部や第2スラストプレート17の1つの固定片17aと2つの自由片17bとの間に段部を形成してもよい。
【0040】
また、本実施形態においては、これらの第1スラストプレート16および第2スラストプレート17は、それぞれ第1紙送りローラ2および第2紙送りローラ3の回転負荷トルクが、後述する実験結果(図4および図5参照)に基づく適正値(第1紙送りローラ2および第2紙送りローラ3の負荷トルクがともに0.6Ncm以下であって、第1紙送りローラ2および第2紙送りローラ3の負荷トルクの差が0.2Ncm以下)となるように、第1紙送りローラ2および第2紙送りローラ3にかかる側圧が調整されている。具体的には、固定片16b、17bを固定しているねじ18のねじ込み量を調整したり、板厚などによって側圧を調整して設計された板ばねを使用することで、第1スラストプレート16および第2スラストプレート17にかかる側圧を調整する。また、前述のように、前記第1スラストプレート16および第2スラストプレート17に段部を形成した場合には、自由片16a、17a側の折り曲げ角度を調整することで、比較的容易に第1スラストプレート16および第2スラストプレート17にかかる側圧を調整する。
【0041】
ここで、図4は、第1紙送りローラ2および第2紙送りローラ3の負荷トルクの測定結果とそれぞれの条件で印刷された印刷画像の良否との関係を示すグラフである。また、図5は、第1紙送りローラ2および第2紙送りローラ3の負荷トルクの測定値、両者の負荷トルクの差、各条件の時に印刷された印刷画像の評価結果を示した表である。
【0042】
この実験では、第1スラストプレート16および第2スラストプレート17としての板ばねの自由片16a、17aの曲げ角度や板厚などを調整して、第1紙送りローラ2および第2紙送りローラ3にかかる側圧を変更した24の試料を用意し、その他の条件を同じにして印刷を行った時の回転負荷トルクの測定と、そのときに実際に印刷された印刷画像の良否とを判断することを目的とする。本実験においては、印刷画像の良否は、いわゆる色ずれが生じているかどうかを目視により確認し、良好(図中○)、可(図中△)、不良(図中×)の3段階で評価した。
【0043】
この測定結果によれば、第1紙送りローラ2および第2紙送りローラ3の負荷トルクがともに0.6Ncm以下であって、第1紙送りローラ2および第2紙送りローラ3の負荷トルクの差が0.2Ncm以下となるときに、良好な印刷画像が得られることが分かった。
【0044】
この結果に基づいて、本実施形態のプリンタは、第1スラストプレート16および第2スラストプレート17は、第1紙送りローラ2および第2紙送りローラ3の回転負荷トルクが等しくなるように、すなわち第1紙送りローラ2および第2紙送りローラ3の回転負荷トルクがともに0.6Ncm以下であって、両者の差が0.2Ncm以下となるように、それぞれ第1紙送りローラ2および第2紙送りローラ3にかかる側圧が調整されている。これにより、主に第1紙送りローラ2によって搬送方向へ搬送する際の搬送量と、主に第2紙送りローラ3によって逆搬送方向へ搬送する際の搬送量との誤差を少なくし、記録用紙の高精度な搬送を行い、インクリボンの各インク層による印刷画像の位置ずれ、いわゆる色ずれなどの印刷不良を防止し、高品質な印刷画像を印刷することができる。
【0045】
また、本実施形態のプリンタは、第1スラストプレート16および第2スラストプレート17は、良好な画像が得られる範囲で可能な限り小さくし、すなわち第1紙送りローラ2および第2紙送りローラ3の回転負荷トルクがともに0.6Ncm以下となるように、それぞれ第1紙送りローラ2および第2紙送りローラ3にかかる側圧が調整されている。これにより、搬送開始時および逆搬送時における第1紙送りローラ2および第2紙送りローラ3の回転開始遅れを防止し、第1紙送りローラ2および第2紙送りローラ3による高精度な搬送を行い、高品質な印刷画像を印刷することができる。
【0046】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々変更できるものとする。
【0047】
例えば、プラテンローラ1の端部に摺接されている第2スラストプレート17の一方の自由片17aからプラテンローラ1にかかる側圧についても調整し、プラテンローラ1の回転負荷トルクをコントロールしてもよい。例えば、プラテンローラ1の回転負荷トルクを第1紙送りローラ2および第2紙送りローラ3と等しくなるように、すなわち0.6Ncm以下となるように、第2スラストプレート17の一方の自由片17aからプラテンローラ1にかかる側圧を調整することで、より高精度な搬送を行うようにしてもよい。また、上記実施形態における測定と同様の実験を行うことでプラテンローラ1の回転負荷トルクの適正値を求めて、その負荷トルクとなるように、第2スラストプレート17の自由片17aの側圧を調整してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明のプリンタの要部斜視図
【図2】図1をスラストプレート側からみた側面図
【図3】第1紙送りローラに摺接させて配設されるスラストプレートの配設状態を示す説明図
【図4】第1紙送りローラおよび第2紙送りローラの負荷トルクの測定結果と印刷画像の良否との関係を示すグラフ
【図5】第1紙送りローラおよび第2紙送りローラの負荷トルクの測定値、両者の負荷トルクの差、各条件の時に印刷された印刷画像の評価結果を示した表
【符号の説明】
【0049】
1 プラテンローラ
2 第1紙送りローラ
3 第2紙送りローラ
6 第1紙送りギア
7 第2紙送りギア
11 回転駆動機構
12 ステッピングモータ
13 ピニオンギア
14 ギア
15 ギア
16 第1スラストプレート
16a 自由片
16b 固定片
17 第2スラストプレート
17a 自由片
17b 固定片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録用紙の搬送方向におけるプラテンローラの上流側および下流側にそれぞれ回転可能に配設された第1紙送りローラおよび第2紙送りローラと、
前記第1紙送りローラおよび第2紙送りローラの一端部にそれぞれ連結されたギアと、
前記ギアを介して前記第1紙送りローラおよび第2紙送りローラを回転駆動する回転駆動機構と、
前記第1紙送りローラおよび第2紙送りローラの他端部にそれぞれ摺接され、第1紙送りローラおよび第2紙送りローラの回転負荷トルクが等しくなるように、第1紙送りローラおよび第2紙送りローラにかかる軸方向の側圧が調整されたスラストプレートと、
を備えていることを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
前記スラストプレートは、前記第1紙送りローラおよび第2紙送りローラの回転負荷トルクがともに0.6Ncm以下となるように、第1紙送りローラおよび第2紙送りローラにかかる軸方向の側圧が調整されていることを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
前記スラストプレートは、前記第1紙送りローラおよび第2紙送りローラの回転負荷トルクの差が0.2Ncm以下となるように、第1紙送りローラおよび第2紙送りローラにかかる軸方向の側圧が調整されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−125838(P2010−125838A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−306514(P2008−306514)
【出願日】平成20年12月1日(2008.12.1)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】