説明

プリンタ

【課題】所定の搬送経路に沿って搬送される記録紙に対して該搬送経路上の所定の印刷位置で印刷を行う印刷部と、該印刷部の搬送上流側及び下流側にそれぞれ配設される第1搬送ローラ対及び第2搬送ローラ対とを備えたプリンタにおいて、第1搬送ローラ対のみで記録紙を搬送した後に第2搬送ローラ対のみで記録紙を搬送する踏換え動作を実行する場合に、踏換え動作時における下流側搬送ローラ対の圧着動作に起因する印刷品質の低下を防止する。
【解決手段】プリント制御部において、記録紙の一側面にテスト画像としてベタ画像を印刷する(ステップ4の処理を実行する)とともに、該一側面のうち踏換え動作時に印刷位置を通過する特定位置に所定マークを印刷する(ステップ8及びステップS9の処理を実行する)テスト印刷モードを備えるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタに関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、所定の搬送経路に沿って搬送される記録紙に対して画像を印刷する印刷部と、印刷部の搬送上流側及び搬送下流側にそれぞれ配設される圧着型の搬送ローラ対とを備えたレーザプリンタやインクジェットプリンタは知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。これらのプリンタにおいては、各搬送ローラ対は2つのローラが前記記録紙を挟持して搬送可能に互いに圧着された圧着状態と該圧着が解除された非圧着状態とに切り換え可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-251627号公報
【特許文献2】特開2004-216651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前述のプリンタでは、両ローラ対が共に記録紙を挟持して搬送する場合に、両搬送ローラ対の回転速度差や搬送力の差に起因して、記録紙が過度に引っ張られたり撓んだりするという問題がある。
【0005】
そこで、記録紙が所定位置に達するまでは上流側搬送ローラ対のみで記録紙Pを搬送して、記録紙が所定位置を通過した後は下流側搬送ローラ対のみで記録紙Pを搬送するようにすることが考えられる。
【0006】
しかしながら、この場合には、記録紙の印刷中に、上流側搬送ローラ対を非圧着状態に切り換えるとともに下流側搬送ローラ対を非圧着状態から圧着状態に切り換える踏換え動作が必要になる。このため、記録紙が該踏換え動作時に下流側搬送ローラ対により圧着される際の衝撃で搬送方向に動いてしまうという問題がある。この結果、例えば、インクジェットプリンタであれば、インクの着弾位置が所望の位置からずれて印刷画像にムラが生じ、延いては印刷品質が低下するという問題がある。
【0007】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、所定の搬送経路に沿って搬送される記録紙に対して該搬送経路上の所定の印刷位置で印刷を行う印刷部と、該印刷部の搬送上流側及び下流側にそれぞれ配設される上流側搬送ローラ対及び下流側搬送ローラ対と、を備えたプリンタにおいて、印刷時には両搬送ローラ対の踏換え動作を行うことによって記録紙に過度の張力や撓みが生じるのを防止しながら、該踏換え動作時における下流側搬送ローラ対の圧着動作に起因する印刷品質の低下を防止しようとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、この発明では、記録紙の一側面にテスト画像を印刷するとともに、該一側面のうち、踏換え動作時に印刷位置を通過する特定位置に所定マークを印刷するようにした。
【0009】
具体的には、所定の搬送経路に沿って搬送される記録紙に対し該搬送経路上に設定された印刷位置において印刷を行う印刷部と、該印刷位置の搬送上流側及び下流側にそれぞれ配設され、従動ローラと駆動ローラとが前記記録紙を挟持して搬送可能に互いに圧着された圧着状態と該圧着が解除された非圧着状態とに切り換え可能に構成された上流側搬送ローラ対及び下流側搬送ローラ対と、該各搬送ローラ対の該切換え動作を制御する切換え手段と、を備えたプリンタを対象とする。
【0010】
そして、前記切換え手段は、前記印刷部における前記記録紙への印刷時には、前記上流側搬送ローラ対を圧着状態とし且つ前記下流側搬送ローラ対を非圧着状態として前記記録紙を搬送した後に、前記上流側搬送ローラ対を非圧着状態に切り換えるとともに前記下流側搬送ローラ対を圧着状態に切り換えて前記記録紙を搬送するように構成されており、前記印刷部において前記記録紙の一側面にテスト画像を印刷するとともに、該一側面の特定位置に所定マークを印刷するテスト印刷制御手段をさらに備え、前記記録紙の一側面の特定位置は、前記テスト印刷制御手段が前記印刷部における前記記録紙へのテスト画像の印刷を実行する際に、前記切換え手段が前記下流側搬送ローラ対を非圧着状態から圧着状態へ切り換える時に前記印刷位置を通過するような位置であるものとする。
【0011】
この構成によれば、テスト印刷制御手段により前記記録紙の一側面にテスト画像が印刷されるとともに、当該一側面における特定位置に所定マークが印刷される。
【0012】
ここで、前記特定位置は、前記テスト印刷制御手段が前記印刷部における前記記録紙へのテスト画像の印刷を実行する際に、前記切換え手段が前記下流側搬送ローラ対を非圧着状態から圧着状態へ切り換える時に前記印刷位置を通過するような位置とされている。
【0013】
したがって、ユーザは、記録紙に印刷されたテスト画像のうち所定マークが印刷された位置を見れば、下流側搬送ローラ対の切換え動作に起因して発生する印刷不良(例えば印刷ムラ)を容易に検出することができる。延いては、ユーザは印刷不良の程度を正確に見積もってその後の調整作業により印刷不良の発生を確実に防止することができる。この調整作業としては、例えば、下流側搬送ローラ対の圧着動作の動作速度を調整したり記録紙の送り量を調整したりすることが考えられる。
【0014】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、前記印刷部は、前記記録紙の片側の面に印刷を行うように構成されており、前記印刷部にて印刷された記録紙を表裏反転させて該印刷部へ再供給する記録紙再供給部を備え、前記テスト印刷制御手段は、前記印刷部において記録紙の一側面に前記テスト画像及び所定マークを印刷した後に、前記記録紙再供給部により当該記録紙を表裏反転させて該印刷部に再供給して、該印刷部において当該記録紙の他側面に対して前記一側面と同様に、前記テスト画像及び所定マークを印刷するように構成されているものとする。
【0015】
この構成によれば、記録紙Pの一側面のみならず他側面にもテスト画像及び所定マークを印刷することができる。したがって、ユーザは、記録紙Pの表側面(一側面)と裏側面(他側面)とのそれぞれについて印刷不良の程度を精度良く見積もることができる。したがって、ユーザは、記録紙の表側面と裏側面とでそれぞれの印刷不良の程度に応じた適切な調整作業を行うことで、記録紙Pの印刷品質を可及的に向上させることができる。
【0016】
請求項3の発明では、請求項1又は2の発明において、前記テスト画像は、前記記録紙の搬送方向に連続するグレーのベタ画像であるものとする。
【0017】
この構成によれば、テスト画像が搬送方向に連続するグレーのベタ画像とされているので、ユーザは、前記所定マークが印刷された位置においてベタ画像の濃淡を目で確認することにより印刷不良を容易に検出することができる。
【0018】
請求項4の発明では、請求項1又は2の発明において、前記テスト画像は、前記記録紙の搬送方向に直交する方向に延び且つ該搬送方向に互いに所定間隔を隔てて並ぶ複数の直線からなる画像であるものとする。
【0019】
この構成によれば、ユーザは前記所定マークが印刷された位置において直線同士の間隔を測定することで印刷不良を容易に検出することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明のインクジェットプリンタによると、両搬送ローラ対の踏換え動作を行うことによって記録紙に過度の張力や撓みが生じるのを防止しながら、踏換え動作時における下流側搬送ローラ対の圧着動作に起因する印刷品質の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタの外観を示す斜視図である。
【図2】インクジェットプリンタの内部の構成を示す、側方から見た概略図である。
【図3】カセットの内部の詳細を示す断面図である。
【図4】印刷部及びUターン部の詳細を示す側面図である。
【図5】印刷部の詳細を示す平面図である。
【図6】スイッチバック部のスイッチバックローラ対が、リバース搬送部より搬送されてきた記録紙を受け取っている状態を示す概略図である。
【図7】スイッチバックローラ対の従動ローラが第2の位置に切り換えられた状態を示す図6相当図である。
【図8】スイッチバックローラ対が記録紙を供給ローラ対のところまでスイッチバックさせた状態を示す図6相当図である。
【図9】記録紙が手差し挿入用開口部より手差し挿入されている状態を示す図6相当図である。
【図10】両面印刷ユニットをプリンタ本体部から外した状態を示す図2相当図である。
【図11】印刷搬送機構の構成を示す概念図である。
【図12】印刷部及び印刷搬送部周辺を示した斜視図である。
【図13】印刷搬送部の要部を示す側面図である
【図14】搬送制御部における踏み換え制御実行時の第1及び第2搬送ローラ対の動作を説明するための図であり、(a)は第1搬送ローラ対のみを圧着状態として記録紙を搬送している様子を示し、(b)は第1搬送ローラ対を非圧着状態に切り換えるとともに第2搬送ローラ対を圧着状態に切り換える直前の様子を示し(c)は該切換え後に第2搬送ローラ対のみを圧着状態として記録紙を搬送する様子を示している。
【図15】プリンタの制御系の構成を示すブロック図である。
【図16】受付ブロックの液晶モニタに表示される画面を示す図であり(a)はモード選択画面を示し、(b)は補正値入力画面を示す。
【図17】プリント制御部における印刷制御を示すフローチャートである。
【図18】プリント制御部にてテスト印刷制御を実行することで記録紙に印刷された画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0023】
−プリンタの全体構造について−
図1は、本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタAの外観を示し、図2は、インクジェットプリンタAの内部の構成を概略的に示す。このインクジェットプリンタAは、写真プリントシステムに用いられるものであって、例えば、画像データの取得及びオーダ情報の取得を行い必要な補正処理等を行う受付ブロック200(図15参照)から通信ケーブルを介して伝送される画像データを、オーダ情報に基づいて記録紙Pに対して印刷を行うように構成されている。ここで、インクジェットプリンタAは、前述した受付ブロックからの画像データに基づく通常印刷モードと、予め記憶しておいたテスト画像データに基づくテスト印刷モードとを有しており、いずれのモードにより印刷を行うかをユーザが選択可能になっている。印刷対象となる前記記録紙Pは、所定の大きさに裁断された単票紙であり、この大きさとしては複数種類の大きさが予め設定されている。
【0024】
前記インクジェットプリンタAは、下面にキャスター3が設けられた筐体2を有するプリンタ本体部1と、このプリンタ本体部1の筐体2の一側面の上部に着脱自在に取り付けられかつ複数枚の記録紙Pをその厚み方向に重ねた状態で収容可能なカセット5と、前記筐体2の上面に着脱自在に取り付けられた両面印刷ユニット7とを備えている。尚、本実施形態では、前記カセット5が取り付けられる側(図2の左側)をプリンタ前側といい、その反対側(図2の右側)をプリンタ後側という。また、図2の紙面と垂直な方向は、プリンタ左右方向であって、前記カセット5に収容されかつプリンタ本体部1及び両面印刷ユニット7において搬送される記録紙Pの幅方向と一致している。
【0025】
図2に示すように前記両面印刷ユニット7がプリンタ本体部1に取り付けられた状態で、後に詳細に説明するように記録紙Pの表裏両面に印刷することが可能になる。一方、記録紙Pの片面のみに印刷し、両面印刷が必要でない場合には、通常、両面印刷ユニット7をプリンタ本体部1から外しておく(図10参照)。但し、両面印刷ユニット7がプリンタ本体部1に取り付けられた状態であっても、記録紙Pの片面のみに印刷することは可能である。両面印刷した記録紙Pを複数枚束ねることで、フォトアルバムないしフォトブックを作製することができる。
【0026】
前記カセット5は、記録紙Pの大きさ毎に異なるものであり、ユーザは、カセット5をプリンタ本体部1に取り付けたときに、そのカセット5に対応した記録紙Pの大きさ(長さ及び幅)を、不図示の操作スイッチにより入力する。尚、カセット5に例えばICチップを設けて、このICチップに記録紙Pの大きさ等を記憶するようにしておき、カセット5が取り付けられたときに、プリンタ本体部1が該ICチップの記憶内容を読み取るようにしてもよい。こうすれば、ユーザの前記入力作業は不要になる。
【0027】
図3に詳細に示すように、前記カセット5内には、記録紙Pをその厚み方向に重ねた状態でセットするためのセットトレイ11が配設されている。このセットトレイ11は、カセット5内において、該セットトレイ11のプリンタ前後方向の略中央にてプリンタ左右方向に延びる軸11a回りに回動可能に支持されている。セットトレイ11は、そのプリンタ後側端が上昇する側に回動するようにバネで付勢されている。これにより、セットトレイ11上にセットされた複数枚の記録紙Pのうち最上部の記録紙Pが、カセット5内のプリンタ後側端部の上部に配設された送出しローラ14に当接することになる。
【0028】
前記送出しローラ14は、プリンタ本体部1の側に配設された不図示のモータにより図3で反時計回り方向に駆動されるようになっており、このモータにより送出しローラ14が回転駆動されると、最上部の記録紙Pが1枚だけプリンタ後側へ移動してカセット5の外側へ送り出される。このとき、最上部の記録紙Pの下側に位置する記録紙Pが最上部の記録紙Pに引き摺られて複数枚の記録紙Pがカセット5の外側へ同時に送り出されないようにするために、送出しローラ14が所定量だけ回転すると、トレイ押下げ機構16によって、セットトレイ11のプリンタ後側端が下降するようになされている。
【0029】
前記トレイ押下げ機構16は、前記プリンタ本体部1に、プリンタ左右方向に延びる軸17a回りに回動可能に支持されたトレイ押下げレバー17と、このトレイ押下げレバーを前記軸17a回りに回動させるためのレバー回動カム18とを有している。このレバー回動カム18は、不図示のモータにより軸18a回りに回動するようになされている。また、トレイ押下げレバー17の一端部は、カセット5をプリンタ本体部1に取り付けたときに、カセット5内に、セットトレイ11のプリンタ後側端部の上側に位置するように進入する。一方、トレイ押下げレバー17の他端部は、レバー回動カム18のカム面に当接している。この当接状態を常に維持するためにトレイ押下げレバー17は、前記他端部がレバー回動カム18の側へ移動するように(つまり一端部が上側に移動するように)バネで付勢されている。
【0030】
そして、送出しローラ14が所定量だけ回転したときに、レバー回動カム18が回転し、これにより、トレイ押下げレバー17の前記一端部がセットトレイ11のプリンタ後側端部に当接してこれを押し下げる。これにより、最上部の記録紙Pの下側に位置する記録紙Pが最上部の記録紙Pに引き摺られるのが防止され、複数枚の記録紙Pがカセット5の外側へ同時に送り出されなくなる。尚、レバー回動カム18が半回転すると、トレイ押下げレバー17の前記一端部が上昇し始め、これに伴って、セットトレイ11のプリンタ後側端が前記バネにより上昇して、次に最上部となる記録紙Pが送出しローラ14に当接する。レバー回動カム18が1回転したとき、レバー回動カム18の回転が停止し、トレイ押下げレバー17は初期の状態に戻る。
【0031】
前記送出しローラ14によりカセット5の外側に送り出された記録紙Pは、プリンタ本体部1における後述の印刷部21へ供給されるようになっている。
【0032】
前記プリンタ本体部1の筐体2内の上部における前記カセット5の取付部近傍には、前記画像データに基づいて印刷を行う印刷部21が設けられている。この印刷部21は、図4及び図5に詳細に示すように、記録紙Pの片側面に印刷するプリントヘッドHと、前記送出しローラ14より供給された記録紙Pを、該記録紙Pへの印刷時に該送出しローラ14とは反対側へ搬送する印刷搬送部22と、この印刷搬送部22より搬送される記録紙Pを支持するプラテン23とを備えている。
【0033】
前記印刷搬送部22の上流側端部(印刷部21の搬送上流側)には圧着型の第1搬送ローラ対24が配設され、また印刷搬送部22の下流側端部(印刷部21の搬送下流側)には圧着型の第2搬送ローラ対25が配設されている。前記第1搬送ローラ対24を挟んでその上流側及び下流側には、記録紙Pを検出する第1及び第2センサ27,28(共に投光部と受光部とからなる)がそれぞれ配設されている。
【0034】
尚、印刷搬送部22等のこれらの詳細については別途後述する。
【0035】
前記プリントヘッドHは、記録紙Pの上側位置において記録紙Pの幅方向(プリンタ左右方向)と一致する主走査方向X(図5参照)に延びる2本のガイドレール31に沿って移動可能に構成されている。また、プリントヘッドHは、主走査方向Xと垂直であって記録紙Pの移動方向(プリンタ前後方向)と一致する副走査方向Y(図5参照)に並ぶ2つのヘッドユニット32を有しており、これら2つのヘッドユニット32の下面に設けられている多数のインク吐出ノズル(図示省略)から複数色のインクを下側へ向けて吐出することで、記録紙Pの上側面に対して所定の画像を印刷できるようになっている。すなわち記録紙Pの搬送経路における各ヘッドユニット32の直下に印刷位置(記録紙Pにインクを着弾させて画像を印刷する位置)が設定されている。本実施形態では、ヘッドユニット32が副走査方向Yに2段に並んで配設されているが、ヘッドユニット32は2段である必要はなく、1段や3段以上であってもよい。尚、以下の説明では、搬送上流側に位置するヘッドユニット32を上流側ヘッドユニット32と呼び、搬送下流側に位置するヘッドユニット32を下流側ヘッドユニット32と呼ぶものとする。
【0036】
前記両ヘッドユニット32は同一構成であり、各々、主走査方向Xに配設された、各色のインクを吐出するための複数のノズルアレイを有している。この各ノズルアレイにおいて、前記インク吐出ノズルが副走査方向Yに列状に配設されている。これにより、各ヘッドユニット32は、単体でカラー画像を形成可能な構成とされている。そして、記録紙Pは、前記第1搬送ローラ対24又は第2搬送ローラ対25により単位搬送量ずつ間欠的に(ステップ状に)副走査方向Yに搬送され、この間欠搬送時における記録紙Pの各停止時に、プリントヘッドHが主走査方向Xに一走査(一往動作又は一復動作)されて、この走査時に、主走査方向Xの各位置で、各ヘッドユニット32の各色のインク吐出ノズルからインクが記録紙Pの上側面に対して同時に吐出される。つまり、プリントヘッドHの一走査後に、記録紙Pが単位搬送量だけ搬送され、その後、再びプリントヘッドHが一走査され、この動作が繰り返し行われて、所望の画像が印刷されることになる。
【0037】
ここで、本実施形態におけるプリントヘッドHのインク吐出のための構成としては、一般的なピエゾ方式のものを採用している。
【0038】
前記プラテン23は板状の部材からなり、その上面が記録紙Pを支持する支持面23aとされている。このプラテン23には、厚み方向(上下方向)に貫通して支持面23aに開口する多数の吸引孔23b(図5参照)が設けられている。
【0039】
各吸引孔23bは、プリンタの左右方向及び前後方向に沿ってそれぞれ一列に並ぶように配列されている。詳しくは、記録紙の搬送方向に沿って見たときには、プラテンの支持面上に、一群の吸引孔23b,23b,・・・(吸引孔群)が記録紙Pの搬送方向に略直交するプリンタ左右方向に一列に並んでいて、これら個々の吸引孔群がプリンタ前後方向に所定の間隔で複数配置されている。
【0040】
プラテン23の下側には、該プラテン23と共に空間を形成するケース体35(図4参照)が配設され、このケース体35の下側に、ファン等を含む吸引装置36が配設されている。そして、前記吸引孔23bは、前記ケース体35内の空間と連通し、この空間は、吸引装置36の吸込み口と連通しており、吸引装置36の作動により吸引孔23bを介してプラテン23の支持面23a側に負圧が生じ、このことで、記録紙Pがプラテン23の支持面23a上に吸着保持されることになる。これにより、印刷時の記録紙Pの平面性を確保して印刷品質を向上させることが可能になる。
【0041】
また、プラテン23の支持面23aには、インク吸収材38を収容するための、副走査方向Yに延びる凹部23c(図5参照)が形成されている。このインク吸収材38は、記録紙P全体に画像を印刷する縁なし印刷を行う際に、プリントヘッドH(ヘッドユニット32)より吐出したインクの一部が前記支持面23a上の記録紙Pの幅方向の端縁から外側に外れてはみ出したとしても、その外側に外れたインクによりプラテン23の支持面23aが汚れるのを防止するために設けられたものである。このため、前記凹部23cは、支持面23aにおいて該支持面23a上の記録紙Pの幅方向の端縁に対応する位置でかつ副走査方向YにおけるプリントヘッドHに対応する位置において、該端縁に沿って延びる(つまり副走査方向Yに延びる)ように形成されている。図5の例では、5種類の幅の記録紙Pに対応可能にするべく、片側5個ずつの合計10個の凹部23cが設けられている。前記インク吸収材38は、インク吸収性に優れた、例えばスポンジ状のものが好ましい。
【0042】
ここで、前記縁なし印刷を行う場合、記録紙Pの幅方向については端縁ぎりぎりにインクを吐出し、その端縁からはみ出したインクを前記インク吸収材38により吸収するようにしているが、記録紙Pの先端及び後端ぎりぎりにはインクを吐出せず、所定量(例えば2mm)だけ余白をあけて印刷を行う。そして、この余白を後述のカッター40により切断することで、縁なしに仕上げる。このようにするのは、記録紙Pの先端又は後端に向けてインクを吐出すると、そのインクが前記吸引孔23bによる吸い込み作用により吸引孔23bへ引き込まれて印刷品質が低下するとともに、支持面23aがインクで汚れるからである。
【0043】
前記プリンタ本体部1の筐体2内の上部における前記印刷搬送部22の下流側には、印刷搬送部22の下流側端部(第2搬送ローラ対25)より送り出された記録紙Pを、表裏反転しかつ搬送の向きが逆向きになるようにUターンさせるUターン部45が設けられている。
【0044】
前記Uターン部45と印刷搬送部22との間には、前記縁なし印刷を行う場合において記録紙Pの先端及び後端における前記余白を切断するカッター40が配設されている。このカッター40は、記録紙Pの搬送経路の上側に配置された固定刃40aと、記録紙Pの搬送経路の下側に配置され、不図示のモータにより該固定刃40aに対して上下方向に移動する可動刃40bとで構成され、可動刃40bが記録紙Pの下側から上側に移動することで記録紙Pを切断する。この切断による切り屑は、筐体2の下部に配設された屑箱41(図2参照)に落下して収容される。尚、記録紙Pの両面に印刷を行う場合には、両面に印刷を行った後にカッター40により前記余白を切断する。
【0045】
前記Uターン部45には、該Uターン部45の上流側部分に配設されかつ印刷搬送部22からの記録紙Pを挟持して更にプリンタ後側へ搬送する圧着型の2組の搬送ローラ対46と、該搬送ローラ対46により搬送されてきた記録紙Pの搬送の向きを上側へ変更する第1向き変更部材47と、この第1向き変更部材47の下流側に配設されかつ記録紙Pを挟持して上側へ搬送する圧着型の2組の搬送ローラ対48と、該搬送ローラ対48により搬送されてきた記録紙Pの搬送の向きをプリンタ前側へ変更する第2向き変更部材49と、Uターン部45の下流側端部に配設され、記録紙Pを挟持してUターン部45から排出する圧着型の搬送ローラ対50と、この搬送ローラ対50の近傍位置に配設されかつ記録紙Pが当該位置にあることを検出する第3センサ51(投光部と受光部とからなる)とが設けられている。尚、前記2組の搬送ローラ対48の間には、下側の搬送ローラ対48から送り出された記録紙Pの先端を上側の搬送ローラ対48へと導く一対のガイド板52が、搬送路を挟むように配設されている。
【0046】
Uターン部45の上流側部分における2組の搬送ローラ対46の間には、前記印刷部21において記録紙Pの上側面に付着したインクを乾燥させるための乾燥風Wを該記録紙Pの上側面に吹き付ける乾燥装置53が設けられている。この乾燥装置53は、該乾燥装置53内に空気を取り込むための吸入ファン54と、この吸入ファン54で取り込んだ空気を加熱する加熱ヒータ55と、乾燥装置53の下端部に開口して、加熱ヒータ55で加熱された空気を乾燥風Wとして記録紙Pの上側面に吹き付ける排気ノズル部56と、乾燥装置53内の温度を検出して加熱ヒータ55を緊急停止させる安全サーモ57とを備えている。
【0047】
前記Uターン部45の全搬送ローラ対46,48,50において、記録紙Pにおける前記印刷部21による印刷面とは反対側の面に接触するローラ(上流側部分における2組の搬送ローラ対46では下側のローラであり、その下流側の2組の搬送ローラ対48ではプリンタ後側のローラであり、搬送ローラ対50では、上側のローラである)は、それぞれ駆動ローラ46a,48a,50aとされ、前記印刷面に接触するローラ(搬送ローラ対46では上側のローラであり、搬送ローラ対48ではプリンタ前側のローラであり、搬送ローラ対50では、下側のローラである)は、それぞれ従動ローラ46b,48b,50bとされている。これら従動ローラ46b,48b,50bは、駆動ローラ46a,48a,50aよりも軟質な材料で構成されている。例えば、駆動ローラ46a,48a,50aはポリプロピレンからなり、従動ローラ46b,48b,50bは発泡ウレタンからなる。このように前記印刷面に接触する従動ローラ46b,48b,50bを軟質にすることで、記録紙Pの搬送速度の許容速度を高めることが可能になる。また、前記印刷面とは反対側の面に接触する駆動ローラ46a,48a,50aを硬質にすることで、記録紙Pの搬送精度を確保して、蛇行等を生じ難くすることができる。
【0048】
前記全ての駆動ローラ46a,48a,50aは同じモータ(図示せず)により駆動される。そして、この駆動ローラ46a,48a,50aの回転速度、つまり搬送ローラ対46,48,50による記録紙Pの搬送速度は可変に構成されている。すなわち、前記乾燥装置53による前記インクの乾燥度合いは、インクジェットプリンタAが設置された環境条件(温度や湿度等)に応じて変化するため、これに応じて搬送速度を変更する。また、前記両面印刷ユニット7がプリンタ本体部1に取り付けられている場合には、記録紙Pが両面印刷ユニット7により搬送されている間に前記インクが乾燥すればよいので、乾燥装置53により前記インクが完全には乾燥しないような比較的速い速度に設定する。一方、両面印刷ユニット7がプリンタ本体部1に取り付けられていない場合(図10参照)には、Uターン部45から搬送ローラ対50により排出された記録紙Pは、そのまま筐体2の外側に排出されて筐体2の上面に重ねて載置されるようになっており、このため、乾燥装置53により前記インクがほぼ完全に乾燥するような遅めの速度に設定する。
【0049】
前記第3センサ51は、記録紙Pの後端を検出して、該記録紙PのUターン部45からの排出を検出するものである。前記両面印刷ユニット7がプリンタ本体部1に取り付けられていない場合には、記録紙Pの筐体2外側への排出を検出することになる。一方、両面印刷ユニット7がプリンタ本体部1に取り付けられている場合には、記録紙Pの後端の検出から、該後端が搬送ローラ対50から外れる量だけ記録紙Pが搬送されたときに、両面印刷ユニット7での記録紙Pの搬送速度を変更(アップ)する。
【0050】
前記両面印刷ユニット7は、筐体2の上面を覆う第1ユニット8と、前記カセット5の上方に位置する第2ユニット9との2分割構造になっている。そして、両面印刷ユニット7がプリンタ本体部1に取り付けられている状態で、第1ユニット8のみを筐体2から取り外すことが可能になっている。この第1ユニット8が取り外された状態で、筐体2の上面に設けたメンテナンス開口(通常時は蓋で塞がれる)を介して印刷部21(特にプリントヘッドH等)のメンテナンス作業を行うことができる。したがって、両面印刷ユニット7をプリンタ本体部1に取り付けた後においても、印刷部21のメンテナンス作業を容易に行うことができる。
【0051】
前記両面印刷ユニット7の第1ユニット8内には、前記Uターン部45から送り出された記録紙Pを、前記印刷部21を超えて前記カセット5の側(印刷部21に対してプリンタ前側)へ搬送するリバース搬送部61が設けられている。このリバース搬送部61には、記録紙Pを挟持してプリンタ前側へ搬送する圧着型の3組の搬送ローラ対62と、リバース搬送部61の下流側端部(第1ユニット8のプリンタ前側端部)の位置に配設されかつ記録紙Pが当該位置にあることを検出する第4センサ63(投光部と受光部とからなる)とが設けられている。
【0052】
前記リバース搬送部61における搬送路は、プリンタ前側へ向かって下側に僅かに傾斜する直線路とされている。この傾斜の理由は以下の通りである。すなわち、前記Uターン部45の搬送ローラ対50の高さ位置は、両面印刷ユニット7がプリンタ本体部1に取り付けられていない場合に記録紙Pが載置される筐体2上面に、十分な枚数の記録紙Pが載置可能な高さ位置にする必要がある。一方、第2ユニット9内における後述のスイッチバック部66では、スイッチバックした記録紙Pを印刷搬送部22の上流側端部へ供給する後述の供給ローラ対69の数を、記録紙Pの最小長さとの関係を考慮して出来る限り減らすことが望ましく、このためにはスイッチバック部66は印刷搬送部22に近い高さ位置にする必要がある。このことから、Uターン部45とスイッチバック部66とを接続するリバース搬送部61における搬送路を前記の如く傾斜させている。
【0053】
前記リバース搬送部61の全搬送ローラ対62において、記録紙Pにおける前記印刷部21による印刷面とは反対側の面に接触するローラ(上側のローラ)は、駆動ローラ62aとされ、前記印刷面に接触するローラ(下側のローラ)は、従動ローラ62bとされている。前記Uターン部45の搬送ローラ対46,48,50と同様に、従動ローラ62bは、駆動ローラ62aよりも軟質な材料で構成されている。
【0054】
前記全ての駆動ローラ62aは同じモータ(図示せず)により駆動される。そして、この駆動ローラ62aの回転速度、つまり搬送ローラ対62による記録紙Pの搬送速度は、前記Uターン部45の搬送ローラ対46,48,50の駆動ローラ46a,48a,50aと同様に、可変に構成されている。前述の如く、第3センサ51による記録紙Pの後端の検出から、該後端が搬送ローラ対50から外れる量だけ記録紙Pが搬送されたときに、搬送速度をアップする。すなわち、Uターン部45では搬送経路が曲線であるため、印刷面を傷付けることなく安定して搬送できる速度にする必要があり、また、記録紙Pの後端が搬送ローラ対50よりも上流側に位置する状態では、搬送ローラ対62による記録紙Pの搬送速度をUターン部45での搬送速度と同じにする必要があるが、記録紙Pの後端が搬送ローラ対50から外れれば、記録紙Pを直線の搬送経路で搬送するので、許容速度が上昇し、搬送速度をアップする。但し、下流側に存在する記録紙Pの状況(存在枚数や存在位置)によって、搬送速度を調整する。
【0055】
前記第2ユニット9内には、前記リバース搬送部61より搬送されてきた記録紙Pを、スイッチバックさせて該記録紙Pの後端側から前記印刷搬送部22の上流側端部へ供給するスイッチバック部66が設けられている。このスイッチバック部66には、下側の駆動ローラ67aと上側の従動ローラ67bとからなる圧着型のスイッチバックローラ対67と、このスイッチバックローラ対67の上流側において搬送路を挟むように設けられ、前記リバース搬送部61より搬送されてきた記録紙Pをスイッチバックローラ対67へ導く一対の第1ガイド部材68と、スイッチバックした記録紙Pを印刷搬送部22の上流側端部へ供給する圧着型の供給ローラ対69と、スイッチバックローラ対67と供給ローラ対69との間において搬送路を挟むように設けられ、スイッチバックした記録紙Pを供給ローラ対69へ導く一対の第2ガイド部材70とが設けられている。
【0056】
前記スイッチバックローラ対67の駆動ローラ67aは、不図示のモータにより、記録紙Pを挟持してプリンタ前側へ搬送する正回転と、記録紙Pを挟持してプリンタ後側へ搬送する逆回転とが可能に構成されている。
【0057】
前記スイッチバックローラ対67及び第1ガイド部材68は、不図示のモータにより、スイッチバックローラ対67の駆動ローラ67aの回転軸回りに一体的に回動可能になっており、これにより、スイッチバックローラ対67の従動ローラ67bが、駆動ローラ67aに対してほぼ真上に位置する第1の位置(図6参照)と、駆動ローラ67aに対してプリンタ後側に位置する第2の位置(図7参照)とに切り換えられるようになっている。また、第1ガイド部材68は、従動ローラ67bが第1の位置にあるときには、リバース搬送部61における搬送路の延長上に位置し(図6参照)、従動ローラ67bが第2の位置にあるときには、前記第2ガイド部材70の延長上に位置する(図7参照)。
【0058】
ここで、リバース搬送部61より搬送されてきた記録紙Pをスイッチバックさせる方法を説明する。スイッチバックローラ対67が、リバース搬送部61より搬送されてきた記録紙Pを受け取る際には、駆動ローラ67aは正回転しており、従動ローラ67bは第1の位置にある。そして、前記第4センサ63が記録紙Pの後端を検出してから、当該後端が第1ガイド部材68に位置するような量だけスイッチバックローラ対67により記録紙Pをプリンタ前側へ搬送したところで(図6参照)、駆動ローラ67aの正回転を停止する。このとき、記録紙Pの少なくとも先端部は、後述の載置トレイ74上に位置する。
【0059】
続いて、スイッチバックローラ対67及び第1ガイド部材68を図6で時計回り方向に回動させて従動ローラ67bを第1の位置から第2の位置へ切り換える。これにより、記録紙Pの先端側(プリンタ前側)が持ち上げられて、スイッチバックローラ対67に対して上側でかつプリンタ前側に配設された2つの補助ローラ72に当接した状態で湾曲する(図7参照)。
【0060】
その後、駆動ローラ67aを逆回転させて、記録紙Pをその後端側から供給ローラ対69の側へ向けて搬送する。このとき、記録紙Pの搬送に伴って補助ローラ72が回転し、これにより、スイッチバックする記録紙Pの後端側部分(駆動ローラ67aの正回転時の先端側部分に相当)がスムーズに移動するとともに、第2ユニット9の内壁面等に擦れて傷が付くようなこともない。スイッチバックローラ対67によりスイッチバックする記録紙Pは、第1ガイド部材68及び第2ガイド部材70を通って、供給ローラ対69のところに達する(図8参照)。
【0061】
前記供給ローラ対69は、不図示のモータにより駆動される駆動ローラ69aと、この駆動ローラ69aに対して圧着される従動ローラ69bとからなる。この従動ローラ69bの駆動ローラ69aに対する圧着状態は、後述の如く解除することが可能になっている(スイッチバックローラ対67の従動ローラ67bも同様)。
【0062】
前記供給ローラ対69の下側には、プリンタ本体部1の筐体2におけるプリンタ前側面の上部に設けられた一対の第3ガイド部材73が、搬送路を挟むように配設されており、この第3ガイド部材73を介して記録紙Pが印刷搬送部22の上流側端部へ供給されることになる。このように両面印刷ユニット7を介して印刷搬送部22に供給された記録紙Pの上側面は、当該記録紙Pに対して印刷部21にて最初に印刷される面(以下、表側面という)とは反対側の面(以下、裏側面という)であり、未だ印刷されていない面である。そして、最初の印刷時と同様に裏側面に印刷することで、当該記録紙Pの両面に印刷されることになる。
【0063】
前記スイッチバックローラ対67は、リバース搬送部61より搬送されてきた記録紙Pを、スイッチバックさせないで第2ユニット9の外側へ排出する役目もしている。すなわち、スイッチバックローラ対67は、記録紙Pを第2ユニット9の外側へ排出する際には、駆動ローラ67aの正回転を途中で停止しないで回転し続ける。そして、第2ユニット9の外壁のプリンタ前側面には、スイッチバックローラ対67により送り出された記録紙Pを受け止めて載置する載置トレイ74が設けられている。前記のように両面に印刷された記録紙Pや、表側面のみの印刷で済ませる記録紙Pは、スイッチバックローラ対67によって第2ユニット9の外側へ排出されて載置トレイ74上に載置されることになる。
【0064】
前記第2ユニット9の外壁のプリンタ前側面における前記載置トレイ74の上側には、載置トレイ74に載置された記録紙Pに埃等が付着するのを防止するカバー部材75が、載置トレイ74の上側を覆うように片持ち状に支持されている。このカバー部材75は、その基端部(プリンタ後側端部)にてプリンタ左右方向に延びる軸75a回りに回動可能に支持されており、カバー部材75を軸75a回りに回動させて基端部から上側へ延びるように立てた状態にすることも可能である。
【0065】
前記第2ユニット9の外壁の上面における前記スイッチバックローラ対67の近傍には、記録紙Pを手差し挿入することが可能な手差し挿入用開口部77が形成されている。この手差し挿入用開口部77には、一対の手差し用ガイド部材78が、手差し挿入される記録紙Pを厚み方向に挟むように配設され、この手差し用ガイド部材78により、手差し挿入された記録紙Pの先端をスイッチバックローラ対67の側へ導く。また、手差し挿入用開口部77は、蓋部材79(図1参照)により覆われており、ユーザは、記録紙Pを手差し挿入する際には、この蓋部材79を開けるとともに、不図示のモードスイッチを操作して、手差しモードに切り換える。これにより、図9に示すように、スイッチバックローラ対67の従動ローラ67bが第2の位置に切り換えられるとともに、駆動ローラ67aが逆回転する。そして、ユーザが記録紙Pを手差し挿入用開口部77から挿入する。このとき、前記カバー部材75を立てた状態にしておけば、カバー部材75が記録紙Pを支持する受け皿の役目を果たし、記録紙Pの挿入が容易になる。こうして記録紙Pを手差し挿入用開口部77から挿入すると、その記録紙Pがスイッチバックローラ対67によって供給ローラ対69の側へ向けて搬送され、スイッチバックして搬送される記録紙Pと同様に、供給ローラ対69によって、印刷搬送部22(印刷部21)へ供給される。
【0066】
前記スイッチバック部66における第2ガイド部材70のプリンタ左右両側には、印刷搬送部22へ供給される記録紙Pの幅方向両側端に当接する左右一対の幅規制部材(図示省略)が設けられている。この左右の幅規制部材は、互いの対向面に開口する矩形の溝部が形成されるように折り曲げられてなり、これらの溝部の底面が記録紙Pの幅方向両側端にそれぞれ当接する。各幅規制部材はプリンタ左右方向の位置を調整可能になっている。
【0067】
前記Uターン部45、リバース搬送部61及びスイッチバック部66は、前記印刷搬送部22の下流側端部と上流側端部とを接続して該印刷搬送部22と共にプリントヘッドHを囲むような周回搬送路を形成しかつ該印刷搬送部22の下流側端部より送り出された、表側面に印刷された記録紙Pを、表裏反転させて該印刷搬送部22の上流側端部へ供給する記録紙再供給部88を構成する。この記録紙再供給部88により、表側面に印刷された記録紙Pを、表裏反転させて印刷部21へ再供給することができ、この記録紙Pの裏側面にも印刷することで、記録紙Pの両面に印刷を行うことができる。
【0068】
前記裏側面に印刷された記録紙Pは、Uターン部45及びリバース搬送部61により、表側面に印刷された後の搬送時(当該記録紙Pの1回目の搬送時)と同様に、スイッチバック部66へと搬送される。このとき、スイッチバック部66のスイッチバックローラ対67は正回転し続けて、記録紙Pを載置トレイ74上に排出する。尚、裏側面に印刷された記録紙PがUターン部45及びリバース搬送部61により搬送される際、搬送ローラ対46,48,50,62の駆動ローラ46a,48a,50a,62aが記録紙Pの表側面に接触することになるが、この時点では、表側面に付着したインクは既に完全に乾燥しているので、記録紙Pを1回目の搬送時と同じ速度で搬送しても問題はない。但し、より一層印刷品質を向上させるべく、2回目の搬送時の搬送速度を1回目の搬送時よりも遅くすることも可能である。
【0069】
前記記録紙再供給部88は、前記印刷部21にて1枚の記録紙Pへの印刷中に、当該記録紙Pよりも前に印刷した少なくとも1枚の記録紙Pを保持可能な搬送経路長さに設定されている。これにより、1枚の記録紙Pの表側面に印刷してから裏側面に印刷するまでの期間を、後続の少なくとも1枚の記録紙Pの印刷に利用することができる。
【0070】
例えば、前記複数種類の大きさのうち最も小さい記録紙Pに対して両面印刷を行う場合、1枚目から4枚目までの記録紙Pを連続してカセット5から印刷部21へ供給して、印刷部21にてそれら記録紙Pの表側面に連続して印刷を行う。4枚目の記録紙Pに対して印刷を行っているときに、先に印刷された3枚の記録紙Pは、記録紙再供給部88のいずれかの部分に位置している(通常、1枚目の記録紙Pはスイッチバック部66に、2枚目の記録紙Pはリバース搬送部61に、3枚目の記録紙PはUターン部45にそれぞれ位置している)。そして、4枚目の記録紙Pへの印刷が終了すると、今度は、表側面に印刷した前記1枚目の記録紙Pを印刷部21へ供給して該1枚目の記録紙Pの裏側面に印刷を行い、続けて前記2枚目から4枚目までの記録紙Pの裏側面に連続して印刷を行う。この4枚目の記録紙Pの裏側面に印刷を行っているときに、1枚目の記録紙Pはスイッチバックローラ対67によって載置トレイ74上に排出され、2枚目及び3枚目の記録紙Pはリバース搬送部61及びUターン部45にそれぞれ位置する。
【0071】
前記4枚目の記録紙Pの裏側面への印刷が終了すると、今度は5枚目から8枚目までの記録紙Pを連続してカセット5から印刷部21へ供給し、印刷部21にてそれら記録紙Pの表側面に連続して印刷を行う。こうして4枚の記録紙Pを1組として記録紙Pの表側面及び裏側面に印刷を順次行っていく。尚、両面印刷を行う2組の間に、片面印刷を行う組を介在させることも可能である。
【0072】
したがって、1枚の記録紙Pのみに対して両面印刷を行う場合には、表側面に印刷された記録紙Pが記録紙再供給部88の長い搬送経路を通った後に該記録紙Pの裏側面に印刷されるので、処理時間が長くなるが、業務用途等の所定枚数以上の記録紙に対して両面印刷を行う場合には、記録紙再供給部88により少なくとも1枚の記録紙Pを搬送中に他の記録紙Pに対して印刷を行うことができ、印刷処理能力を向上させることができる。また、印刷部21にて記録紙Pの表側面に付着したインクを、裏側面に印刷を行うまでの間に十分に乾燥させることができ、この乾燥状態で裏側面に印刷することで、記録紙Pの両面がインクで同時に濡れるようなことはなくなり、インクの染み込みによる裏写り等が生じるのを確実に防止することができる。また、記録紙Pにカールや波打現象が生じ難くなる。よって、記録紙Pの印刷品質が低下するのを防止することができる。
【0073】
図11に示すように、印刷時における記録紙Pの搬送を担う印刷搬送機構は、プラテン23の支持面23a上に記録紙Pを搬入する第1印刷搬送部101と、プラテン23の支持面23a上から記録紙Pを搬出する第2印刷搬送部102と、踏み換え機構とを備えている。これら第1印刷搬送部101及び第2印刷搬送部102は後述する搬送制御部202により制御される。
【0074】
前記第1印刷搬送部101は、先に述べた第1搬送ローラ対24と、この第1搬送ローラ対24を駆動する第1モータ104と、この第1モータ104用の第1ロータリエンコーダ105とを有している。具体的には、第1搬送ローラ対24は、下側に位置する第1駆動ローラ24aと上側に位置する第1従動ローラ24bとで構成されていて、第1駆動ローラ24aはスプロケット106とベルト107で構成された伝動機構を介して第1モータ104に連結されている。第1モータ104には、その回転角度や回転速度を高精度に計測することができる第1ロータリエンコーダ105が付設されている。
【0075】
前記第2印刷搬送部102も同様に、先に述べた第2搬送ローラ対25と、この第2搬送ローラ対25を駆動する第2モータ108と、この第2モータ108用の第2ロータリエンコーダ110とを有し、第2搬送ローラ対25は、下側に位置する第2駆動ローラ25aと上側に位置する第2従動ローラ25bとで構成されていて、第2駆動ローラ25aはスプロケット106とベルト107で構成された伝動機構を介して第2モータ108に連結されている。第2モータ108にも第2ロータリエンコーダ110が付設されている。
【0076】
−踏み換え機構−
踏み換え機構は、図11や図13に示すように、一対のアーム112,112、カム部材114などで構成されている。
【0077】
各アーム112は、基端部がプリンタ左右方向に延びる軸115,116回りに回動自在に支持されたアーム基部112aと、前記基端部に連なってアーム基部112aと略直交状に延びるローラ受部112bと、アーム基部112aの先端部に連なってローラ受部112bと対向状に延びるカム係合部112cとを有している。カム係合部112cはローラ受部112bよりも十分長く形成されているため、アーム112は外観視L字状となっている。各アーム112は、それぞれのカム係合部112cの先端部側が互いに向かい合うように配設されていて、これらカム係合部112cの先端側がそれぞれ下方に向かう方向に不図示のバネで付勢されている。各ローラ受部112bの先端側には、それぞれ前記第1従動ローラ24b、前記第2従動ローラ25bが回動自在に支持されており、各カム係合部112cの先端側にはカム部材114と係合するカム係合ローラ117,117がそれぞれ回動自在に支持されている。
【0078】
カム部材114は、その周囲の一部を切り取ったような切欠部114aを有する比較的大径のローラ部材からなり、前記2つのカム係合ローラ117,117に近接してこれら間の下方位置に配設されている。カム部材114は、プリンタ左右方向に延びる軸に回動自在に支持されていて、伝動機構を介してモータ118(以下、踏換えモータ118という)で回転駆動される。この踏換えモータ118は後述する搬送制御部202によってその動作が制御されるようになっている。
【0079】
カム部材114の切欠部114aが上方に位置して各アーム112のカム係合ローラ117と当接しない状態では、バネの付勢力により、それぞれのローラ受部112bに支持された第1従動ローラ24b及び第2従動ローラ25bが第1駆動ローラ24a及び第2駆動ローラ25aにそれぞれ圧着し、図13に示すように、各アーム112のカム係合部112cが同一直線上を延びるように略水平に位置している(圧着状態)。
【0080】
そして、カム部材114が回動変位し、その円周部分がいずれかのアーム112のカム係合ローラ117に当接すると、バネに抗してそのカム係合部112cの先端側が上方に向かう方向にアーム112が回動する。そうすることによって第1従動ローラ24bと第2従動ローラ25bの両方、あるいはいずれか一方が、それぞれの駆動ローラ24a,25aから離れて圧着状態が解除されることとなる(解除状態)。
【0081】
すなわち、各搬送ローラ対24,25の圧着状態と解除状態とが切り換わることによって記録紙Pの踏み換えが行われていて、先に述べた第1センサ27及び第2センサ28との協働により搬送制御部202がその制御を実行している(踏み換え制御)。
【0082】
第1センサ27は、前記カセット5又は両面印刷ユニット7より記録紙Pの先端がプリンタ本体部1の筐体2内に入ったことを検出するものであり、例えばこの検出により、搬送制御部202によって第1駆動ローラ24aが駆動される。第2センサ28は、第1搬送ローラ対24によってプラテン23側に送り出された記録紙Pの先端を検出するものであり、例えばこの第2センサ28による記録紙Pの先端の検出によって記録紙Pの印刷タイミングが算出され、その印刷タイミングで当該記録紙Pへの印刷が開始されるようになっている。また、この第2センサ28による記録紙Pの先端の検出は踏み換え制御の基点ともなっている。
【0083】
−受付ブロックの構成−
受付ブロック200(図15参照)は、DVD等の記録媒体に記録された画像データを読み出すための受付装置(図示省略)と、タッチパネル式の液晶モニタを含む入力装置とを備えている。受付装置及び入力装置は、図示は省略するが、前記通信インタフェース206を介してプリント制御部204に接続されている。
【0084】
前記入力装置は、インクジェットプリンタAの電源が投入されると、液晶モニタにモード選択画面130(図16(a)参照)を表示させる。モード選択画面130は、ユーザが印刷モードを設定するための画面であり、該画面130には、ユーザが指で触れて選択可能な「通常印刷モード」ボタン131及び「テスト印刷モード」ボタン132が表示されている。
【0085】
前記入力装置は、「通常印刷モード」ボタン131が選択された場合には該選択信号をプリント制御部204(図15参照)へと出力するとともに、モニタの表示画面をオーダ情報の入力画面(図示省略)に切り換える。ここで、オーダ情報には印刷を行う記録紙Pの大きさ等を特定するためのプリントチャンネル情報や、印刷枚数等を特定するためのプリントフォーム情報が含まれる。また、入力装置は、「テスト印刷モード」ボタン132が選択された場合には該選択信号をプリント制御部204へと出力するとともに、前記液晶モニタの表示画面をモード選択画面130から補正値入力画面133(図16(b)参照)へと切り換える。
【0086】
補正値入力画面133は、ユーザがテスト印刷の結果を基に記録紙Pの送り量(間欠搬送時の一回の搬送量)を補正するための画面である。該補正値入力画面133には、電卓形式で配列された数値入力ボタン134が表示されており、ユーザはこの数値入力ボタン134を介して所望の補正送り量を入力可能になっている。前記入力装置は、入力された補正送り量の情報をプリント制御部204へと出力する。
【0087】
−制御系の構成−
本インクジェットプリンタAは、制御系として、図15に示すように、マイクロプロセッサ201(以下、CPUという)と、このCPU201とデータバスを介して接続された搬送制御部202、ヘッド制御部203、プリント制御部204、半導体メモリRAM/ROM205、通信インタフェース206とを備えている。
【0088】
プリント制御部204は、前記受付ブロック200から通信インタフェース206を介して画像データ、オーダ情報、及びモード情報を受信する。プリント制御部204は、通常印刷モードが選択されたことを示す選択信号を受信したときには、前記受付ブロック200から受信した画像データを記録紙Pに印刷するための通常印刷制御を実行する。プリント制御部204は、テスト印刷モードが選択されたことを示す選択信号を受信したときには、ROM205内に予め記憶されたテスト画像データを記録紙Pの一側面に印刷するとともに、該一側面の特定位置に所定マークを印刷するテスト印刷制御を実行する。各印刷制御の詳細については後述する。
【0089】
前記搬送制御部202は、プリント制御部204からの指令を受けて印刷搬送機構の動作制御を行う。搬送制御部202は、プリント制御部204による印刷制御実行時には、各搬送部101、102に対して必要な制御信号を出力することで前記踏換え制御を実行する。
【0090】
ヘッド制御部203は、プリント制御部204からの指令を受けてプリントヘッドHを主走査方向に往復移動させるとともに、各圧電素子に所定波形の電圧を供給することによってプリントヘッドHの制御を行うものである。
【0091】
−搬送制御部における踏み換え制御−
図14は、前記搬送制御部202による踏み換え制御実行時における各搬送ローラ対24,25の動作を模式的に表している。まず、同図の(a)に示すように、記録紙Pの先端がプリンタ本体部1の筐体2内に入って第1駆動ローラ24aが駆動され、第1搬送ローラ対24によって当該記録紙Pがプラテン23上に搬入されると、第2センサ28によってその先端が検出される。そうすると、搬送制御部202は当該記録紙Pの先端部が第2搬送ローラ対25に達するタイミングを算出する。そして、同図の(b)に示すようにそのタイミングになると、搬送制御部202はカム部材114を制御、つまりカム部材114を所定角度まで回動変位させる。この結果、第1従動ローラ24bがローラ受部112bと共に軸115回りに図の反時計回り方向に回動して、第1搬送ローラ対24の圧着状態が解除される。また、この圧着解除と略同時に第2従動ローラ25bがローラ受部112bと共に軸116回りに図の反時計回り方向に回動して、第2搬送ローラ対25が非圧着状態から圧着状態に切り換わる。そしてその後は、同図の(c)に示すように、第2搬送ローラ対25によって当該記録紙Pがプラテン23上から搬出される。
【0092】
このように第1搬送ローラ対24と第2搬送ローラ対25とを交互に切り換える踏み換え制御を行うのは、一枚の記録紙Pが同時に両搬送ローラ対24,25に圧着して搬送されるような状態になると、両搬送ローラ対24,25の搬送力のずれによって記録紙Pが過度に引っ張られたり、撓んだりして印刷に不具合を招くおそれがあるからである。
【0093】
従って、このように踏み換え機構及び踏み換え制御によって記録紙Pが第1搬送ローラ対24と第2搬送ローラ対25で同時に搬送されるのを確実に防止することで、高品質な画像を安定して得られるようになっている。
【0094】
−プリント制御部における印刷制御−
次に、プリント制御部204における印刷制御処理を図17のフローチャートに基づいて説明する。
【0095】
最初のステップS1では、受付ブロック200からの画像データ、オーダ情報、及びモード選択信号を読み込むとともに、各センサからの記録紙検出信号、各搬送ローラ対24,25の回転速度情報(第1及び第2ロータリエンコーダ105,110からの信号等)及び、踏換えモータ118の回転位相情報を読み込む。
【0096】
ステップS2では、ステップS1で読み込んだモード選択信号を基に、テスト印刷モードが選択されたか否かを判定し、この判定がYESであるときにはステップS3に進み、NOであるときにはステップS14に進む。
【0097】
ステップS3では、テスト印刷制御を開始するために、ROM205に予め記憶されたテスト画像データを読み込む。このテスト画像データは、グレーのベタ画像データである。
【0098】
ステップS4では、ステップS3で読み込んだベタ画像データを基に1ドット行分のベタ画像を記録紙Pに印刷するよう、ヘッド制御部203に対して制御信号を出力する。
【0099】
ステップS5では、前記記録紙Pの幅方向両側の各端縁からそれぞれ所定距離d1,d2だけ離間した位置に、記録紙搬送方向に延びるセンタずれ検出用ライン152(図18参照)を印刷するように、ヘッド制御部203に対して必要な制御信号を出力する。
【0100】
ステップS6では、記録紙Pの搬送位置が予め設定した位置を通過したときに、ヘッド制御部203に対して所定の制御信号を出力することで、記録紙Pの先端縁から所定距離h1の位置、及び記録紙Pの後端縁から所定距離h2の位置にそれぞれ、主走査方向に並ぶ複数個(本実施形態では3個)の吸われ検出用マーク153(図18参照)を印刷する。
【0101】
ステップS7では、ステップS1で読み込んだ踏換えモータ118の位相情報(エンコーダの回転信号等)を基に、前回の本ステップ実行時から現時点までの間に、第2搬送ローラ対25が非圧着状態から圧着状態に切り換わる踏換えタイミングを検出したか否かを判定し、この判定がNOであるときにはステップS9に進む一方、YESであるときにはステップS8に進む。
【0102】
ステップS8では、ベタ画像の幅方向両端部に所定マークとしての送りムラ検出用マーク154(図18参照)を印刷するよう、ヘッド制御部203に対して制御信号を出力する。
【0103】
ステップS9では、記録紙Pを単位搬送量の設定値分だけ搬送するように搬送制御部202に対して制御信号を出力する。
【0104】
ステップS10では、記録紙Pの表側面(一側面)の印刷が終了しているか否かを判定し、この判定がNOであるときにはステップS4に戻る一方、YESであるときにはステップS11に進む。尚、表面印刷が終了して裏面印刷を開始する際には、ステップS4の処理を実行する前に予め記録紙Pを所定の印刷開始位置まで搬送する。
【0105】
ステップS11では、記録紙Pの裏側面(他側面)の印刷が終了しているか否かを判定し、この判定がNOであるときにはステップS4に戻る一方、YESであるときにはステップS12に進む。
【0106】
ステップS12では、前記液晶モニタの表示画面をモード選択画面130から補正値入力画面133に切り換えるように前記入力装置に対して指令を行う。
【0107】
ステップS13では、補正値入力画面133を介してユーザが入力した補正送り量を読み込んで、前記踏み換えタイミングにおける記録紙Pの単位搬送量の設定値を、この補正送り量を反映した値に変更する。具体的には、読み込んだ補正送り量を現在の設定値に足し合わせて新たな設定値とすればよい。したがって、例えば、補正送り量が負の値であれば新たな設定値は現在の設定値よりも小さくなる。本ステップS14が終了した後はリターンする。
【0108】
ステップS2の判定がNOであるときに進むステップS14では通常印刷制御を実行する。具体的には、ステップS1で受信した受付ブロック200からの画像データを記録紙Pに印刷するべく、搬送制御部202及びヘッド制御部203に対して必要な制御信号を出力する。
【0109】
ステップS15では印刷が終了したか否かを判定し、この判定がNOであるときにはステップS15に戻る一方、YESであるときにはリターンする。
【0110】
図18は、前記プリント制御部204により前記テスト印刷制御(ステップS2〜ステップS11の処理)を実行することで記録紙Pの表側面に印刷された画像の一例を示している。本実施形態ではこのような画像が記録紙Pの両面に印刷されるが、表側面と裏側面とで同じ印刷制御を実行するようにしているので、以下の説明では表側面に印刷された画像についてのみ説明を行う。同図に示すように、記録紙Pの表側面にはその全面に亘ってグレーのベタ画像がテスト画像151(図では色を省略して白色で示している)として印刷されている。
【0111】
記録紙Pの幅方向の両端部には記録紙長さ方向(記録紙搬送方向)に延びる左右一対のセンタずれ検出用ライン152が白色で印刷されている。この検出用ライン152は、印刷時における記録紙Pの幅方向の位置ずれの有無を検出するためのものである。各ライン152は、印刷時に記録紙Pの幅方向の位置ずれが生じない限り、該各ライン152と記録紙Pの幅方向両側の各端縁との距離d1及び距離d2が等しくなるように印刷されている。ユーザは、この距離d1及び距離d2をマイクロスコープ等で実際に測定して該測定した距離d1及び距離d2が異なっている場合には、記録紙Pの幅方向の位置ずれが生じていると判断することができる。この場合、ユーザは、前記幅規制部材の幅方向位置を調整することで記録紙Pの幅方向の位置ずれを防止することができる。
【0112】
記録紙Pの先端寄り及び後端寄りの位置にはそれぞれ、3つの吸われ検出用マーク153(本実施形態では白色の三角形)が主走査方向に等間隔で印刷されている。このマーク153は、プラテン23の吸引孔23bによるインクの吸い込みの影響で発生する印刷不良を検出し易くするためのものである。前記記録紙Pの先端寄りに位置するマーク153は、それよりも前側の印刷領域で印刷不良が生じやすいことを示し、記録紙Pの後端寄りに位置するマーク153はそれよりも後側の領域で印刷不良が生じやすいことを示している。ユーザは、この各領域に印刷されたベタ画像の色合い等を目で確認することで、前記インクの吸い込みに起因した印刷不良を容易に検出することができる。ユーザは、該印刷不良を検出した場合には、例えば吸引装置36の吸引力を記録紙Pの平面性を確保できる範囲で弱める等して吸引孔23bによるインクの吸い込みの影響を低減すればよい。
【0113】
記録紙Pの幅方向の両端部にはそれぞれ、記録紙搬送方向に並ぶ一対の送りムラ検出用マーク154(本実施形態では白色のV字型マーク)が印刷されている。このマークは、前述した踏換え制御に伴う印刷不良を検出しやすくするためのものである。
【0114】
この印刷不良は、搬送制御部202により踏換え制御を実行する際に第2搬送ローラ対25が非圧着状態から圧着状態に切り換わるときの衝撃で発生する。すなわち、第2搬送ローラ対25が非圧着状態から圧着状態に切りわる際には、前述の如く、第2従動ローラ25bが軸116を支点に反時計回り方向に回動して圧着動作を行うため、第2従動ローラ25bが記録紙Pに当接する際の衝撃で記録紙Pが搬送上流側に動くことによって、印刷画像中に主走査方向に延びる帯状のムラ(以下、送りムラという)発生する。画像の診断に不慣れな一般ユーザは、テスト画像(ベタ画像)151中にこのような送りムラが発生していても見逃してしまう場合がある。
【0115】
これに対して本実施形態では、ステップS7及びS8の処理を実行することで、前記記録紙Pに対するテスト画像151の印刷中に第2搬送ローラ対25が非圧着状態から圧着状態に切換わるときに(前記踏換えタイミング時に)、該記録紙Pにおける各ヘッドユニット32の直下を通過する位置(特定位置)に前記送りムラ検出用マーク154を印刷するようにした。このことで、ユーザは、このマーク154が印刷された位置において、送りムラが生じているか否かを目視により重点的に検査することで該送りムラの発生を容易に検出することができる。
【0116】
ユーザは、送りムラを検出した場合には、前記ステップS12の処理で液晶モニタに表示させる補正値入力画面133を介して所望の補正送り量を入力すればよい。本実施形態の如く、踏換えタイミングにおいて記録紙Pが搬送上流側に動くケースでは、補正送り量としてプラスの値を入力すればよい。これにより、前記踏換えタイミングにおける記録紙Pの単位搬送量が増加するようにその設定値が更新されるので、再度、ユーザがテスト印刷モードを選択することでこの更新された設定値により記録紙Pのテスト印刷が実行される。ユーザは記録紙Pに印刷されたテスト画像151を見て送りムラが発生しなくなるまでこの調整作業を繰り返せばよい。
【0117】
こうして本実施形態では、記録紙Pの幅方向の位置ずれに起因する印刷不良、吸引孔23bによるインクの吸い込みに起因する印刷不良、及び、前記踏換え動作に起因する印刷不良を、簡単な調整作業でもって容易に且つ確実に防止することができる。
【0118】
(他の実施形態)
本発明の構成は、前記実施形態に限定されるものではなく、それ以外の種々の構成を包含するものである。すなわち、前記実施形態では、テスト画像151としてグレーのベタ画像を印刷するようにしているが、これに限ったものではなく、例えば、テスト画像151として記録紙Pの搬送方向に設定間隔で並ぶ複数の直線を印刷するようにしてもよい。この場合、ユーザは、前記送りムラ検出用マーク154の近傍にある直線同士の間隔をマイクロスコープで測定して、該測定した間隔が設定間隔と異なる場合にはその差分量に応じた補正送り量を前記補正値入力画面133から入力するようにすればよい。また、直線間隔の測定及び補正送り量の設定といった一連の処理をCPU201により行うようにしてもよい。この場合、例えば、画像センサ等により直線間隔を測定してその情報をCPU201に出力するようにすればよい。
【0119】
また、前記実施形態では、テスト画像151をグレー色のベタ画像としているが、グレー色に限らずその他の色を使用するようにしてもよい。
【0120】
前記実施形態では、プリント制御部204は、前記踏換えタイミングにおいて、各ヘッドユニット32からインクを吐出して記録紙Pの特定位置に送りムラ検出用マーク154を印刷するようにしているが、これに限ったものではなく、例えば、印刷部21の搬送下流側にマーク印刷専用の印刷ユニットを設けておき、印刷部21にて記録紙Pにテスト画像(ベタ画像)151を印刷した後に該印刷ユニットにより記録紙Pの特定位置にマーク154を印刷するようにしてもよい。すなわち、マーク154の印刷のタイミングは必ずしも前記切り換えタイミングと同時である必要はなく、また、マーク154を印刷するための印刷ユニットと、テスト画像151を印刷する印刷ユニットとが同じである必要もない。
【0121】
また、前記実施形態では、印刷対象となる記録紙Pを単票紙として説明しているが、例えばロール状の記録紙であってもよい。
【0122】
また、前記実施形態では、各搬送ローラ対24,25は、それぞれの従動ローラ24b,25bを軸115,116回りに回動させることで圧着状態と非圧着状態とを切り換えるように構成されているが、これに限ったものではなく、例えば従動ローラ24b,25bを上下移動させることで圧着状態と非圧着状態とを切り換えるものであってもよい。
【0123】
また、前記実施形態では、インクジェットプリンタAについて説明したが、これに限ったものではなく、例えばレーザプリンタ等であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明は、所定の搬送経路に沿って搬送される記録紙に対して該搬送経路上の所定の印刷位置で印刷を行う印刷部と、該印刷部の搬送上流側及び下流側にそれぞれ配設される上流側搬送ローラ対及び下流側搬送ローラ対とを備えたプリンタに有用であり、特にインクジェットプリンタに有用である。
【符号の説明】
【0125】
A インクジェットプリンタ
P 記録紙
21 印刷部
24 第1搬送ローラ対(上流側搬送ローラ対)
25 第2搬送ローラ対(下流側搬送ローラ対)
88 記録紙再供給部
151 テスト画像(ベタ画像)
154 送りムラ検出用マーク(所定マーク)
202 搬送制御部(切換え手段)
204 プリント制御部(テスト印刷制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の搬送経路に沿って搬送される記録紙に対し該搬送経路上に設定された印刷位置において印刷を行う印刷部と、該印刷位置の搬送上流側及び下流側にそれぞれ配設され、従動ローラと駆動ローラとが前記記録紙を挟持して搬送可能に互いに圧着された圧着状態と該圧着が解除された非圧着状態とに切り換え可能に構成された上流側搬送ローラ対及び下流側搬送ローラ対と、該各搬送ローラ対の該切換え動作を制御する切換え手段と、を備えたプリンタであって、
前記切換え手段は、前記印刷部における前記記録紙への印刷時には、前記上流側搬送ローラ対を圧着状態とし且つ前記下流側搬送ローラ対を非圧着状態として前記記録紙を搬送した後に、前記上流側搬送ローラ対を非圧着状態に切り換えるとともに前記下流側搬送ローラ対を圧着状態に切り換えて前記記録紙を搬送するように構成されており、
前記印刷部において前記記録紙の一側面にテスト画像を印刷するとともに、該一側面の特定位置に所定マークを印刷するテスト印刷制御手段をさらに備え、
前記記録紙の一側面の特定位置は、前記テスト印刷制御手段が前記印刷部における前記記録紙へのテスト画像の印刷を実行する際に、前記切換え手段が前記下流側搬送ローラ対を非圧着状態から圧着状態へ切り換える時に前記印刷位置を通過するような位置であることを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
請求項1記載のプリンタにおいて、
前記印刷部は、前記記録紙の片側の面に印刷を行うように構成されており、
前記印刷部にて印刷された記録紙を表裏反転させて該印刷部へ再供給する記録紙再供給部を備え、
前記テスト印刷制御手段は、前記印刷部において記録紙の一側面に前記テスト画像及び所定マークを印刷した後に、前記記録紙再供給部により当該記録紙を表裏反転させて該印刷部に再供給して、該印刷部において当該記録紙の他側面に対して前記一側面と同様に、前記テスト画像及び所定マークを印刷するように構成されていることを特徴とするプリンタ。
【請求項3】
請求項1又は2記載のプリンタにおいて、
前記テスト画像は、前記記録紙の搬送方向に連続するグレーのベタ画像であることを特徴とするプリンタ。
【請求項4】
請求項1又は2記載のプリンタにおいて、
前記テスト画像は、前記記録紙の搬送方向に直交する方向に延び且つ該搬送方向に互いに所定間隔を隔てて並ぶ複数の直線からなる画像であることを特徴とするプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−189638(P2011−189638A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58081(P2010−58081)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(311001347)NKワークス株式会社 (96)
【Fターム(参考)】